(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20230705BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20230705BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F41/04 B
(21)【出願番号】P 2017178179
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将典
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】井上 信一
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-103354(JP,A)
【文献】特開2016-9858(JP,A)
【文献】特開2013-135208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線部及び前記巻線部を覆う絶縁部を含む平面コイルを有するコイル部と、
前記コイル部の上方を被覆し、磁性フィラーを含む磁性樹脂層と、を備え、
前記磁性樹脂層は、前記コイル部の側面を全て覆い、
前記磁性樹脂層は、前記コイル部に接触する第1磁性樹脂層と、前記第1磁性樹脂層上に積層された第2磁性樹脂層と、を有し、
前記第2磁性樹脂層は前記磁性樹脂層の主面を構成し、
前記第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、前記第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さく、
前記平面コイルは、前記磁性樹脂層の上方の主面上に配置された一対の外部端子に対して下方に設けられ、
前記一対の外部端子と前記平面コイルとは、前記磁性樹脂層を貫通するように形成された導体ポストを介して接続され
、
前記第2磁性樹脂層の厚さは、積層方向における前記コイル部の前記第2磁性樹脂層側の主面と、前記第2磁性樹脂層の前記コイル部とは反対側の主面との間の距離以上である、コイル部品。
【請求項2】
前記第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、積層方向における前記コイル部の前記第2磁性樹脂層側の主面と、前記第2磁性樹脂層の前記コイル部とは反対側の主面との間の距離の10%以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記磁性樹脂層は、前記第1磁性樹脂層に対して前記第2磁性樹脂層とは反対側に積層された第3磁性樹脂層を有し、
前記第3磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、前記第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さい、請求項1
または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
巻線部及び前記巻線部を覆う絶縁部を含む平面コイルを有するコイル部を形成する工程と、
前記コイル部の周囲において前記コイル部に接触し、磁性フィラーを含む第1磁性樹脂層を形成する工程と、
前記第1磁性樹脂層上に、前記第1磁性樹脂層に含まれる前記磁性フィラーよりも最大粒径が小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層を積層することで、前記第1磁性樹脂層及び前記第2磁性樹脂層により、前記コイル部の側面を全て覆った状態で前記コイル部を被覆する磁性樹脂層を形成する工程と、
前記第2磁性樹脂層を研磨し、前記磁性樹脂層の主面を形成する工程と、を含み、
前記磁性樹脂層を形成する工程では、前記磁性樹脂層の主面上に配置される一対の外部端子と、前記一対の外部端子に対して下方に設けられる前記平面コイルとを接続する導体ポストの周囲を前記第1磁性樹脂層及び前記第2磁性樹脂層が覆うように前記磁性樹脂層を形成
し、
前記第2磁性樹脂層の厚さは、積層方向における前記コイル部の前記第2磁性樹脂層側の主面と、前記第2磁性樹脂層の前記コイル部とは反対側の主面との間の距離以上である、コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイル部品が記載されている。このコイル部品は、2層のコイル導体及び2層のコイル導体を覆う絶縁樹脂体を有するコイル基板と、コイル基板の一部を覆う磁性樹脂体と、を有する。磁性樹脂体は、磁性体分を含有する樹脂材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイル部品の製造過程においては、磁性樹脂層の平坦性を確保するために、磁性樹脂層を研磨する工程が行われる。このとき、磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーが磁性樹脂層から脱落する事態が起こり得る。このように磁性樹脂層から磁性フィラーが脱落すると、磁性樹脂層の体積が減少するので、磁束が通過できる部分が少なくなる。したがって、コイル部品の透磁率が低下し、その結果インダクタンスが低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、インダクタンスの低下を抑制することが可能なコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るコイル部品は、巻線部及び巻線部を覆う絶縁部を含む平面コイルを有するコイル部と、コイル部を被覆し、磁性フィラーを含む磁性樹脂層と、を備え、磁性樹脂層は、コイル部に接触する第1磁性樹脂層と、第1磁性樹脂層上に積層された第2磁性樹脂層と、を有し、第2磁性樹脂層は磁性樹脂層の主面を構成し、第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さい。
【0007】
上記のコイル部品の磁性樹脂層は、コイル部に接触する第1磁性樹脂層と、第1磁性樹脂層上に積層された第2磁性樹脂層と、を有している。また、第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さい。このように、相対的に小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層が第1磁性樹脂層に対して積層され、第2磁性樹脂層が磁性樹脂層の主面を構成しているので、コイル部品の製造過程においては第2磁性樹脂層が研磨される。第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は相対的に小さいので、第2磁性樹脂層から磁性フィラーが脱落したとしても、磁性フィラーの脱落による磁性樹脂層の体積の減少量が少ない。したがって、コイル部品の透磁率の低下が抑制され、その結果インダクタンスの低下を抑制することができる。
【0008】
一形態において、第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、積層方向におけるコイル部の第2磁性樹脂層側の主面と、第2磁性樹脂層のコイル部とは反対側の主面との間の距離の10%以下であってもよい。このように第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径を設定することにより、磁束が通過する部分の大きさに対する磁性フィラーの大きさの割合が小さくなる。したがって、磁性フィラーの脱落による透磁率への影響が小さくなり、コイル部品のインダクタンスの低下が抑制される。
【0009】
一形態において、第2磁性樹脂層の厚さは、積層方向におけるコイル部の第2磁性樹脂層側の主面と、第2磁性樹脂層のコイル部とは反対側の主面との間の距離より小さくてもよい。この構成によれば、磁性樹脂層において第1磁性樹脂層が占める割合を大きくすることができる。第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より大きいので、第1磁性樹脂層の透磁率は第2磁性樹脂層の透磁率より大きい。したがって、コイル部品の透磁率を大きくすることができる。
【0010】
一形態において、第2磁性樹脂層の厚さは、積層方向におけるコイル部の第2磁性樹脂層側の主面と、第2磁性樹脂層のコイル部とは反対側の主面との間の距離以上であってもよい。この構成によれば、第2磁性樹脂層はコイル部に接触する。第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さいので、第2磁性樹脂層とコイル部との密着性は、第1磁性樹脂層とコイル部との密着性より高い。したがって、第2磁性樹脂層とコイル部とが接触することにより、磁性樹脂層とコイル部との密着性を高めることができる。
【0011】
一形態において、磁性樹脂層は、第1磁性樹脂層に対して第2磁性樹脂層とは反対側に積層された第3磁性樹脂層を有し、第3磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さくてもよい。この構成によれば、コイル部の主面側に第2磁性樹脂層が設けられ、コイル部の主面とは反対側に相対的に小さい磁性フィラーを含む第3磁性樹脂層が形成されるので、積層方向におけるコイル部品の対称性が向上する。したがって、応力等によるコイル部品の反りを抑制することができる。
【0012】
本発明の一形態に係るコイル部品の製造方法は、巻線部及び巻線部を覆う絶縁部を含む平面コイルを有するコイル部を形成する工程と、コイル部の周囲においてコイル部に接触し、磁性フィラーを含む第1磁性樹脂層を形成する工程と、第1磁性樹脂層上に、第1磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーよりも最大粒径が小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層を積層することで、第1磁性樹脂層及び第2磁性樹脂層によりコイル部を被覆する磁性樹脂層を形成する工程と、第2磁性樹脂層を研磨し、磁性樹脂層の主面を形成する工程と、を含む。
【0013】
上記のコイル部品の製造方法では、第2磁性樹脂層を研磨し、磁性樹脂層の主面を形成する。第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は相対的に小さいので、研磨により第2磁性樹脂層から磁性フィラーが脱落したとしても、磁性フィラーの脱落による磁性樹脂層の体積の減少量が少ない。したがって、コイル部品の透磁率の低下が抑制され、その結果インダクタンスの低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インダクタンスの低下を抑制することが可能なコイル部品及びコイル部品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図4】
図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
【
図5】
図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図1のコイル部品の製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図1のコイル部品1の効果を説明するための図である。
【
図9】変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
【
図10】変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
【
図11】
図9のコイル部品の変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1~
図3を参照して、コイル部品1の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図1のコイル部品1の一部分解斜視図である。なお、
図3においては、後述の磁性樹脂層7の図示を省略している。
【0018】
図1に示されるコイル部品1は、例えば、直流回路の電圧変換を行うスイッチング電源回路ユニット等に搭載される部品である。
図1~
図3に示されるように、コイル部品1は、磁性基板10と、コイル部20と、磁性樹脂層7と、導体ポスト19A,19Bと、カバー絶縁層30と、外部端子40A,40Bとを備えている。
【0019】
なお、本明細書中において「積層方向」とは、磁性基板10、コイル部20、磁性樹脂層7、カバー絶縁層30、外部端子40A,40Bというように、磁性基板10から外部端子40A,40Bに向けて各層が順次重なる方向である。また、以下の説明では、積層方向に沿って外部端子40A,40B側を「上」、積層方向に沿って磁性基板10側を「下」として説明する場合がある。
【0020】
磁性基板10は、例えばフェライト等の磁性材料によって構成された平板状の基板である。磁性基板10上には、コイル部20が積層されている。コイル部20は磁性樹脂層7に覆われている。磁性樹脂層7は、磁性フィラー及びバインダ樹脂(樹脂)を含む混合物である。磁性樹脂層7は主面7aを有しており、主面7a上には、カバー絶縁層30が積層されている。カバー絶縁層30上には、外部端子40A,40Bが設けられている。
【0021】
コイル部20は、下部絶縁層21と、下部絶縁層21に対して積層された第1平面コイル22と、第1平面コイル22に対して積層された第2平面コイル23と、第1平面コイル22と第2平面コイル23とを電気的に接続するビア導体25と、第1平面コイル22と導体ポスト19Bとを電気的に接続する連結部26と、を備えている。また、コイル部20は、磁性樹脂層7側の主面20aと、主面20aとは反対側(磁性基板10側)の主面20bと、を有している。
【0022】
下部絶縁層21は、磁性基板10上に積層されている。下部絶縁層21は、磁性基板10の全面に設けられている。下部絶縁層21の下側(磁性基板10側)の主面は、コイル部20の主面20bに相当する。
【0023】
第1平面コイル22は、磁性基板10に直交し、積層方向に沿った軸線Aを有し、矩形環状を呈している。第1平面コイル22は、軸線Aを中心として矩形状に巻回された第1巻線部(巻線部)221と、第1巻線部221を覆う第1絶縁部222とを含む。ここで、第1絶縁部222が「第1巻線部221を覆う」とは、少なくとも第1巻線部221の一方側(上側、すなわち第2平面コイル23側)の主面221a、及び主面221aに連続する第1巻線部221の側面が第1絶縁部222に接触する状態をいう。第1巻線部221は、下部絶縁層21に対して積層されており、第1巻線部221の下側(磁性基板10側)の主面は、下部絶縁層21に接触している。第1巻線部221は、例えば銅(Cu)等の金属材料によって構成されている。
【0024】
第1絶縁部222は、2つの絶縁層222A,222Bを含んでいる。絶縁層222Aは、第1巻線部221と同一層内において、第1巻線部221の周囲を埋めている。また、絶縁層222Aは、第1巻線部221の巻回部分同士の間を埋めている。絶縁層222Bは、第1巻線部221の一方側の主面221aに接触している。コイル部20の内径に対応する第1絶縁部222の領域には、積層方向に第1絶縁部222を貫通する貫通孔が形成されている。また、第1絶縁部222には、第1絶縁部222を貫通する貫通孔22aが設けられている。貫通孔22aは、第1絶縁部222の絶縁層222Bに形成されている。なお、本実施形態では、絶縁層222A,222Bは一体に設けられているが、絶縁層222Aと絶縁層222Bとは別の層として設けられていてもよい。また、第1絶縁部222は、下部絶縁層21を含んでいてもよい。
【0025】
第2平面コイル23は、第1平面コイル22と同様に矩形環状を呈している。第2平面コイル23は、軸線Aを中心として矩形状に巻回された第2巻線部231と、第2巻線部231を覆う第2絶縁部232とを含む。ここで、第2絶縁部232が「第2巻線部231を覆う」とは、少なくとも第2巻線部231の一方側(上側、すなわち磁性樹脂層7側)の主面231a、及び主面231aに連続する第2巻線部231の側面が第2絶縁部232に接触する状態をいう。第2巻線部231は第1絶縁部222に対して積層されており、第2巻線部231の下側(第1絶縁部222側)の主面は、第1絶縁部222(絶縁層222B)に接触している。第2巻線部231は、例えば銅(Cu)等の金属材料によって構成されている。
【0026】
第2絶縁部232は、2つの絶縁層232A,232Bを含んでいる。絶縁層232Aは、第2巻線部231と同一層内において、第2巻線部231の周囲を埋めている。また、絶縁層232Aは、第2巻線部231の巻回部分同士の間を埋めている。絶縁層232Bは、第2巻線部231の一方側(上側、すなわち磁性樹脂層7側)の主面231aを覆っている。コイル部20の内径に対応する第2絶縁部232の領域には、積層方向に第2絶縁部232を貫通する貫通孔が形成されている。第2絶縁部232の上側の主面は、コイル部20の主面20aに相当する。なお、本実施形態では、絶縁層232A,232Bは一体に設けられているが、絶縁層232Aと絶縁層232Bとは別の層として設けられていてもよい。
【0027】
下部絶縁層21、第1絶縁部222、及び第2絶縁部232は、絶縁性樹脂によって構成されている。絶縁性樹脂としては、例えばポリイミド、又はポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。なお、下部絶縁層21、第1絶縁部222、及び第2絶縁部232は、それぞれ同じ材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0028】
ビア導体25は、第1絶縁部222を貫通する貫通孔22a内に設けられている。ビア導体25は、第1巻線部221の最も内側の巻回部分と、第2巻線部231の最も内側の巻回部分とを電気的に接続している。これにより、第1平面コイル22及び第2平面コイル23によって1つのコイルが形成されている。なお、
図2に示されるようにビア導体25は、第2巻線部231と一体に設けられていてもよい。連結部26は、第1巻線部221の外側の端部から絶縁層222B及び絶縁層232Aを貫通して磁性樹脂層7の主面7a側に延び、第1巻線部221と導体ポスト19Bとを電気的に接続している。
【0029】
磁性樹脂層7は、コイル部20の周囲を被覆している。磁性樹脂層7は、直方体形状の外形を有している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされた直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められた直方体の形状が含まれる。磁性樹脂層7の主面7aは、長辺及び短辺を有する矩形状をなしている。磁性樹脂層7は、第1磁性樹脂層71と、第2磁性樹脂層72と、を有している。
【0030】
第1磁性樹脂層71は、コイル部20に接触しながら、コイル部20の周囲を覆っている。本実施形態においては、第1磁性樹脂層71はコイル部20の側面及びコイル部20の主面20aを全て覆っており、コイル部20の主面20aに接触している。また、第1磁性樹脂層71は、コイル部20の内径に対応する部分に充填されている。
【0031】
第1磁性樹脂層71は、磁性フィラー及びバインダ樹脂(樹脂)を含む混合物によって構成されている。第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの構成材料は、例えば鉄、カルボニル鉄、ケイ素、クロム、ニッケル、又はホウ素等である。バインダ樹脂の構成材料は、例えばエポキシ樹脂等である。第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの割合は、例えば第1磁性樹脂層71の全体に対して90重量%以上である。第1磁性樹脂層71に含まれるバインダ樹脂の割合は、例えば第1磁性樹脂層71の全体に対して3重量%以上である。第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、例えば40μm以上80μm以下である。
【0032】
第2磁性樹脂層72は、第1磁性樹脂層71に対して積層されている。本実施形態においては、第2磁性樹脂層72はコイル部20の主面20aを覆う第1磁性樹脂層71上に設けられている。したがって、第2磁性樹脂層72とコイル部20とは互いに離間している。第2磁性樹脂層72は、コイル部20とは反対側の主面72aを有している。第2磁性樹脂層72の主面72aは、磁性樹脂層7の主面7aに相当する。
【0033】
第2磁性樹脂層72は、第1磁性樹脂層71と同様に、磁性フィラー及びバインダ樹脂(樹脂)を含む混合物によって構成されている。第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの構成材料は、例えば鉄、カルボニル鉄、ケイ素、クロム、ニッケル、又はホウ素等である。バインダ樹脂の構成材料は、例えばエポキシ樹脂等である。第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの割合は、例えば第2磁性樹脂層72の全体の90重量%以上である。第2磁性樹脂層72に含まれるバインダ樹脂の割合は、例えば第2磁性樹脂層72の全体に対して3重量%以上である。第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さく、例えば1μm以上10μm以下である。また、第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側(磁性樹脂層7側)の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側の主面72a(磁性樹脂層7の主面7a)との間の距離Lの10%以下とすることができる。距離Lは、コイル部20の主面20aの上方に設けられた磁性樹脂層7の厚さに相当する。第2磁性樹脂層72の厚さT72は、距離Lより小さくなっている。一例として、距離Lは100μm以上200μm以下程度であり、第2磁性樹脂層72の厚さT72は10μm以上20μm以下程度である。
【0034】
一対の導体ポスト19A,19Bは、例えば銅(Cu)で構成されており、積層方向に交差する交差方向におけるコイル部20の両端部から積層方向に沿って延びている。導体ポスト19Aは、第2巻線部231の外側の端部に接続されている。導体ポスト19Aは、磁性樹脂層7(第1磁性樹脂層71及び第2磁性樹脂層72)を貫通するように第2巻線部231から磁性樹脂層7の主面7aまで延びて、主面7aに露出している。導体ポスト19Aの露出した部分に対応する位置には、外部端子40Aが設けられている。導体ポスト19Aは、カバー絶縁層30の貫通孔31a内の導体部31によって、外部端子40Aに接続されている。これにより、導体ポスト19A及び導体部31を介して、第2巻線部231の外側の端部(コイル部20の一端部)と外部端子40Aとが電気的に接続されている。
【0035】
導体ポスト19Bは、連結部26に接続されている。導体ポスト19Bは、磁性樹脂層7を貫通するように連結部26から磁性樹脂層7の主面7aまで延びて、主面7aに露出している。導体ポスト19Bの露出した部分に対応する位置には、外部端子40Bが設けられている。導体ポスト19Bは、カバー絶縁層30の貫通孔32a内の導体部32によって、外部端子40Bに接続されている。これにより、連結部26、導体ポスト19B、及び導体部32を介して、第1巻線部221の外側の端部(コイル部20の他端部)と外部端子40Bとが電気的に接続されている。
【0036】
外部端子40Aは、主面7aにおける一方の短辺に沿っており、外部端子40Bは、主面7aにおける他方の短辺に沿っている。外部端子40A,40Bは、主面7aにおける長辺に沿った方向に互いに離間している。一対の外部端子40A,40Bはいずれも膜状であり、平面視で長方形状である。外部端子40A,40Bは、それぞれ、導体ポスト19A,19Bと電気的に接続されている。外部端子40A,40Bは、例えば銅(Cu)等の導電性材料によって構成されている。外部端子40A,40Bは、例えばめっきにより形成され得る。なお、外部端子40A,40Bは、単層構造であってもよいし、複数の層が積層された積層構造であってもよい。
【0037】
カバー絶縁層30は、磁性樹脂層7(第1磁性樹脂層71)の主面7a上に設けられ、積層方向において導体ポスト19A,19Bと外部端子40A,40Bとの間に位置している。カバー絶縁層30は、導体ポスト19A,19Bに対応する位置に貫通孔31a,32aを有している。貫通孔31a,32a内には、銅(Cu)等の導電性材料よって構成された導体部31,32が設けられている。カバー絶縁層30は、絶縁性材料によって構成されており、例えば、ポリイミド、エポキシ等の絶縁性樹脂で構成されている。
【0038】
次に、
図4~
図7を参照して、コイル部品1の製造方法について説明する。
図4~
図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための図である。
【0039】
まず、磁性基板10上にコイル部20を形成する。具体的には、
図4(a)に示されるように、磁性基板10の上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより下部絶縁層21を形成する。続いて、
図4(b)に示されるように、下部絶縁層21の上に金属層14を形成する。金属層14は、例えばめっき又はスパッタリング等により形成することができる。その後、所定のマスクを用いてパターニングを行うことにより、第1巻線部221が形成される。続いて、
図4(c)に示されるように、第1絶縁部222を形成する。第1絶縁部222は、金属層14上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより形成することができる。このとき、第1絶縁部222の絶縁層222A及び絶縁層222Bが一度に形成される。
【0040】
続いて、
図5(a)に示されるように、第1絶縁部222(絶縁層222B)をエッチングすることにより、貫通孔22a及び連結部26の一部を形成するための開口16を形成する。これにより、第1平面コイル22が形成された状態となる。
【0041】
次に、
図5(b)に示されるように、めっき又はスパッタリング等により、第2絶縁部232の上に再び金属層14を形成する。その後、所定のマスクを用いてパターニングを行うことにより、第2巻線部231が形成される。このとき、貫通孔22a内にはビア導体25が形成される。また、開口16に対応する位置に連結部26が形成される。
【0042】
次に、
図5(c)に示されるように、第2絶縁部232を形成する。第2絶縁部232は、金属層14(第2巻線部231)上に絶縁性ペーストパターンを塗布して硬化させることにより形成することができる。このとき、第2絶縁部232の絶縁層232A及び絶縁層232Bが一度に形成される。これにより、第2平面コイル23が形成された状態となる。
【0043】
次に、
図6(a)に示されるように、第2絶縁部232(絶縁層232B)をエッチングし、導体ポスト19A,19Bを形成するための開口19A’,19B’を形成する。以上の工程により、コイル部20が形成された状態となる。
【0044】
次に、
図6(b)に示されるように、金属層14のうち、第1巻線部221及び第2巻線部231を構成していない部分(第1平面コイル22及び第2平面コイル23の内径部及び外周部に対応する部分)をエッチング処理等によって除去する。
【0045】
次に、
図6(c)に示されるように、導体ポスト19A,19Bを形成する。具体的には、所定のマスクを用いてめっきやスパッタリング等により、第2絶縁部232の開口19A’,19B’上にシード部を形成し、このシード部を用いて導体ポスト19A,19Bをめっき形成する。導体ポスト19A,19Bをめっき形成する際には、例えば絶縁性の犠牲層(二点鎖線で示される部分)を用いることができる。
【0046】
次に、
図7(a)に示されるように、磁性基板10の全面に磁性フィラー及び樹脂を含む磁性樹脂を塗布し、硬化処理を行うことにより、第1磁性樹脂層71を形成する。これにより、コイル部20の主面20a及び導体ポスト19A,19Bの周囲の一部が第1磁性樹脂層71によって覆われた状態となる。このとき、コイル部20の内径部分にも第1磁性樹脂層71が充填される。その後、第1磁性樹脂層71に対し、第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーよりも最大粒径が小さい磁性フィラーを含む磁性樹脂を塗布し、第2磁性樹脂層72を形成する。これにより、導体ポスト19A,19Bの周囲が第1磁性樹脂層71及び第2磁性樹脂層72によって覆われた状態となる。
【0047】
次に、第2磁性樹脂層72の表面を研磨することにより、磁性樹脂層7の主面7aを形成する。第2磁性樹脂層72は、例えばグラインディング等の公知の方法によって研磨することができる。一例として、#400程度のホイールを300~6000rpmで回転させることにより、第2磁性樹脂層72の研磨が行われる。このように研磨を行うことにより、平坦な主面7aが得られる。
【0048】
次に、
図7(b)に示されるように、磁性樹脂層7の主面7aの上に絶縁性樹脂ペースト等の絶縁性材料を塗布することにより、カバー絶縁層30を形成する。カバー絶縁層30を形成する際、主面7aの全体を覆うと共に、一対の導体ポスト19A、19Bに対応する位置に貫通孔31a、32aを形成し、カバー絶縁層30から一対の導体ポスト19A、19Bを露出させる。具体的には、主面7aの全領域に絶縁性材料を塗布し、その後、導体ポスト19A、19Bに対応する箇所のカバー絶縁層30を除去する。
【0049】
次に、所定のマスクを用いてめっきやスパッタリング等により、カバー絶縁層30上に外部端子40A,40Bに対応する領域にシード部を形成する。シード部は、カバー絶縁層30の貫通孔31a,32aから露出する導体ポスト19A,19B上に形成される。次に、シード部を用いて、無電解めっきにより外部端子40A,40Bを形成する。このとき、カバー絶縁層30の貫通孔31a,32aを埋めるようにめっきが成長して導体部31,32が形成される。以上の工程により、
図2に示されるコイル部品1が形成される。
【0050】
以上説明したように、コイル部品1の磁性樹脂層7は、コイル部20に接触する第1磁性樹脂層71と、第1磁性樹脂層71に対して積層された第2磁性樹脂層72と、を有している。また、第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さい。このように、相対的に小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層72が第1磁性樹脂層71に対して積層され、第2磁性樹脂層72が磁性樹脂層7の主面7aを構成しているので、コイル部品1の製造過程においては第2磁性樹脂層72が研磨される。第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は相対的に小さいので、研磨時に第2磁性樹脂層72から磁性フィラーが脱落したとしても、磁性フィラーの脱落による磁性樹脂層の体積の減少量が少ない。したがって、コイル部品1の透磁率の低下が抑制され、その結果インダクタンスの低下を抑制することができる。
【0051】
図8は、
図1のコイル部品1の効果を説明するための図である。
図8は、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側(磁性樹脂層7側)の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側(図示上方)の主面72a(磁性樹脂層7の主面7a)との間の距離Lとインダクタンスとの関係のシミュレーション結果を示している。なお、シミュレーションには三次元電磁界シミュレータ(有限要素法)を使用し、マクスウェルの電磁界方程式を数値シミュレーションにより解いた。
図8は1MHzにおけるインダクタンス値を示している。このシミュレーションでは、距離Lの値を160μm、135μm(約15%減少)、110μm(約30%減少)と変化させたときのコイル部品1のインダクタンスの値をそれぞれ調べている。すなわち、このシミュレーションでは、距離Lの値が160μmである場合を基準とし、距離Lの値を135μm、110μmと減少させることにより、磁性フィラーの脱落によって磁性樹脂層7の体積が減少した状態を擬似的に表している。
【0052】
図8に示されるように、距離Lを減少させるにつれて、コイル部品1のインダクタンスの値が低下している。すなわち、磁性樹脂層7の体積が減少するほど、コイル部品1のインダクタンスが低下する。このように、
図8に示されるシミュレーション結果から、第2磁性樹脂層72に含まれる最大粒径が相対的に小さい磁性フィラーが脱落したとしても、磁性樹脂層7の体積の減少量が少ないので、コイル部品1のインダクタンスの低下が抑制されることが確認できる。
【0053】
また、第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側の主面7aとの間の距離Lの10%以下である。このように第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径を設定することにより、磁束が通過する部分の大きさに対する磁性フィラーの大きさの割合が小さくなる。したがって、磁性フィラーの脱落による透磁率への影響が小さくなり、コイル部品1のインダクタンスの低下が抑制される。
【0054】
また、第2磁性樹脂層72の厚さT72は、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側の主面7aとの間の距離Lより小さい。これにより、磁性樹脂層7において第1磁性樹脂層71が占める割合を大きくすることができる。第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径は第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径より大きいので、第1磁性樹脂層71の透磁率は第2磁性樹脂層72の透磁率より大きい。したがって、磁性樹脂層7において第1磁性樹脂層71が占める割合を大きくすることで磁性樹脂層7全体での透磁率を大きくすることができる。よって、コイル部品1としての透磁率を大きくすることができる。
【0055】
また、本実施形態に係るコイル部品1の製造方法では、第2磁性樹脂層72を研磨することにより、磁性樹脂層7の主面7aが形成される。第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は相対的に小さいので、研磨により第2磁性樹脂層72から磁性フィラーが脱落したとしても、磁性フィラーの脱落による磁性樹脂層7の体積の減少量が少ない。したがって、コイル部品1の透磁率の低下が抑制され、その結果インダクタンスの低下を抑制することができる。
【0056】
また、第2磁性樹脂層72を研磨して磁性樹脂層7の主面7aを形成することにより、コイル部品1の表面の平坦性の向上を図ることができる。これにより、コイル部品1を基板等に実装する際に、コイル部品1の取り付けを容易に行うことができる。一例として、コイル部品1と、コイル部品1が実装される基板との間にアンダーフィル材を充填する場合、コイル部品1の表面が平坦であることによりアンダーフィル材の充填を容易に行うことができる。
【0057】
次に、
図9を参照して、変形例に係るコイル部品2について説明する。
図9は、変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
図9に示されるように、コイル部品2は、コイル部品1と同様に、磁性基板10と、コイル部20と、第1磁性樹脂層71と、第2磁性樹脂層72と、導体ポスト19A,19Bと、カバー絶縁層30と、外部端子40A,40Bとを備えている。コイル部品2がコイル部品1と相違する点は、第2磁性樹脂層72の厚さが、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側の主面7aとの間の距離L以上である点である。第2磁性樹脂層72はコイル部20の主面20aに接触している。第1磁性樹脂層71は、コイル部20の主面20aよりも下側(磁性基板10側)においてコイル部20の周囲及びコイル部20の内径に対応する部分に充填されている。
【0058】
上記のコイル部品2においても、コイル部品1と同様に、相対的に小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層72が第1磁性樹脂層71に対して積層されているので、コイル部品2の製造過程においては第2磁性樹脂層72が研磨される。第2磁性樹脂層に含まれる磁性フィラーの最大粒径は相対的に小さいので、第2磁性樹脂層72から磁性フィラーが脱落したとしても、磁性フィラーの脱落による磁性樹脂層の体積の減少量が少ない。したがって、コイル部品2の透磁率の低下が抑制され、その結果インダクタンスの低下を抑制することができる。
【0059】
また、第2磁性樹脂層72の厚さT72は、積層方向におけるコイル部20の第2磁性樹脂層72側の主面20aと、第2磁性樹脂層72のコイル部20とは反対側の主面20aとの間の距離L以上である。これにより、第2磁性樹脂層72はコイル部20に接触する。第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径は第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さいので、第2磁性樹脂層72とコイル部20との密着性は、第1磁性樹脂層71とコイル部20との密着性より高い。したがって、第2磁性樹脂層72とコイル部20とが接触することにより、磁性樹脂層7とコイル部20との密着性を高めることができる。
【0060】
次に、
図10を参照して、変形例に係るコイル部品3について説明する。
図10は、変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
図10に示されるように、コイル部品3は、コイル部品1と同様に、コイル部20と、第1磁性樹脂層71と、第2磁性樹脂層72と、導体ポスト19A,19Bと、カバー絶縁層30と、外部端子40A,40Bとを備えている。コイル部品3がコイル部品1と相違する点は、磁性樹脂層7が、第1磁性樹脂層71に対して第2磁性樹脂層72とは反対側(コイル部20の主面20aとは反対側)に積層された第3磁性樹脂層73を更に有する点である。すなわち、コイル部品3は、磁性基板10に代えて、磁性樹脂層7に含まれる第3磁性樹脂層73を備えている。第3磁性樹脂層はコイル部20の主面20bに接触している。
【0061】
第3磁性樹脂層73は、第2磁性樹脂層72と同様に、磁性フィラー及びバインダ樹脂(樹脂)を含む混合物によって構成されている。第3磁性樹脂層73に含まれる磁性フィラーの構成材料は、例えば鉄、カルボニル鉄、ケイ素、クロム、ニッケル、又はホウ素等である。バインダ樹脂の構成材料は、例えばエポキシ樹脂等である。第3磁性樹脂層73に含まれる磁性フィラーの割合は、例えば第3磁性樹脂層73の全体の90重量%以上である。第3磁性樹脂層73に含まれるバインダ樹脂の割合は、例えば第3磁性樹脂層73の全体の3重量%以上である。第3磁性樹脂層73に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第1磁性樹脂層71に含まれる磁性フィラーの最大粒径より小さく、例えば1μm以上10μm以下である。
【0062】
次に、コイル部品3の製造方法について説明する。コイル部品3の製造方法では、コイル部品1の製造方法と同様の工程を行った後、磁性基板10を研磨又は機械的な剥離等によって除去する。その後、磁性基板10の除去によって露出した面(コイル部20の主面20b)に磁性樹脂を塗布して第3磁性樹脂層73を形成することにより、
図10に示されるコイル部品3が形成される。なお、コイル部品3の製造方法では、
図4(a)に示される最初の工程から磁性基板10を用いずに、研磨又は剥離が容易な基材を用いてもよい。
【0063】
上記のコイル部品3においても、コイル部品1と同様に、相対的に小さい磁性フィラーを含む第2磁性樹脂層72が第1磁性樹脂層71に対して積層されているので、コイル部品1と同様の効果を得ることができる。また、コイル部品3では、コイル部20の主面20a側に第2磁性樹脂層72が設けられ、コイル部20の主面20aとは反対側(主面20b側)に、相対的に小さい磁性フィラーを含む第3磁性樹脂層73が形成されるので、積層方向におけるコイル部品3の対称性が向上する。したがって、応力等によるコイル部品3の反りを抑制することができる。なお、対称性の観点から、第3磁性樹脂層73に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、第2磁性樹脂層72に含まれる磁性フィラーの最大粒径と同様であることが好ましい。
【0064】
次に、
図11を参照して、コイル部品3の変形例に係るコイル部品4について説明する。
図11は、変形例に係るコイル部品を概略的に示す断面図である。
図11に示されるように、コイル部品4は、コイル部品3と同様に、第1磁性樹脂層71と、第2磁性樹脂層72と、第3磁性樹脂層73と、外部端子40A,40Bとを備えている。コイル部品4がコイル部品3と相違する点は、コイル部20に代えてコイル部50を備える点、及び外部端子40A,40Bがコイル部品4の一方の主面ではなく側面に設けられている点である。
【0065】
コイル部50では、第1巻線部221の最も外側の一端及び第2巻線部231の最も外側の一端は、それぞれコイル部50の側面から露出している。第1巻線部221及び第2巻線部231が露出するコイル部50の側面は、第1磁性樹脂層71の側面から露出している。すなわち、第1巻線部221の最も外側の一端及び第2巻線部231の最も外側の一端は、コイル部品4の側面において露出している。外部端子40Aは第2巻線部231が露出した部分においてコイル部品4の側面に設けられており、第2巻線部231と直接電気的に接続されている。外部端子40Bは、第1巻線部221が露出した部分においてコイル部品4の側面に設けられており、第1巻線部221と直接電気的に接続されている。
【0066】
上記のコイル部品4は、コイル部品3と同様に、コイル部50の主面50a側に第2磁性樹脂層72が設けられ、コイル部50の主面50aとは反対側(主面20b側)に、相対的に小さい磁性フィラーを含む第3磁性樹脂層73が設けられている。したがって、コイル部品4においてもコイル部品3と同様の効果を得ることができる。また、コイル部品4では、第1磁性樹脂層71及び第2磁性樹脂層72内に導体ポストが設けられていないので、導体ポストによって第1磁性樹脂層71及び第2磁性樹脂層72の体積が減少することを抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態においては、コイル部20が2つの巻線部(第1巻線部221及び第2巻線部231)を有する例について説明したが、コイル部20は、1つの巻線部を有していてもよいし、3つ以上の巻線部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4…コイル部品、7…磁性樹脂層、7a,20a,50a…主面、20,50…コイル部、22…第1平面コイル(平面コイル)、71…第1磁性樹脂層、72…第2磁性樹脂層、73…第3磁性樹脂層、221…第1巻線部(巻線部)、222…第1絶縁部(絶縁部)、L…距離。