(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】水晶振動子回路、及び水晶振動子の起動方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
H03B5/32 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018080070
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508223789
【氏名又は名称】スティヒティング・イメック・ネーデルラント
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】ディン・ミン
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-171810(JP,A)
【文献】特開2009-031007(JP,A)
【文献】特開2006-129459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0030085(US,A1)
【文献】米国特許第06977557(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037527(US,A1)
【文献】特開2002-344242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子(102)と、
前記水晶振動子(102)の信号を検知して、検知した信号を増幅するように構成された注入周波数発生回路(104)とを備え、
さらに、前記注入周波数発生回路(104)は、増幅した信号を前記水晶振動子(102)に注入するように構成され、
前記水晶振動子(102)が、前記水晶振動子(102)の初期の起動期間中に前記増幅した信号を受信して、前記初期の起動期間の終端に、前記増幅した信号の受信を停止するように構成され、
前記注入周波数発生回路(104)は、注入周波数の窓拡張信号に基づいて、前記水晶振動子(102)に注入される信号の周波数を変化させるように構成される
水晶振動子回路。
【請求項2】
前記起動期間中に前記注入周波数発生回路(104)を有効化し、前記起動期間の終端に前記注入周波数発生回路(104)を無効化する注入周波数制御回路(110)をさらに備える
請求項1に記載の水晶振動子回路。
【請求項3】
前記注入周波数発生回路(104)は、前記水晶振動子(102)の信号を検知して増幅する二段の演算増幅回路を備える
請求項1又は2に記載の水晶振動子回路。
【請求項4】
前記注入周波数発生回路(104)は、前記信号を検知して増幅した信号を注入するように、前記水晶振動子(102)と対向する側においてピン(114,116)に接続される
請求項1~
3のいずれか1項に記載の水晶振動子回路。
【請求項5】
前記注入周波数の窓拡張信号は、前記注入周波数発生回路(104)の演算増幅器のレイテンシを変化させるパラメータに影響を与える
請求項
1に記載の水晶振動子回路。
【請求項6】
前記注入周波数の窓拡張信号は、前記注入周波数発生回路(104)の遅延発生器(124)に、前記遅延発生器(124)のレイテンシを変化させるように影響を与える
請求項
1に記載の水晶振動子回路。
【請求項7】
少なくとも1つの負荷キャパシタのバンク(130,132)をさらに備え、
前記負荷キャパシタのバンク(130,132)は、前記水晶振動子(102)の起動中に小さい容量となるように調整可能な容量を提供するように構成される
請求項1~
6のいずれか1項に記載の水晶振動子回路。
【請求項8】
前記水晶振動子(102)からクロック信号を受信して、前記クロック信号の品質が、前記水晶振動子回路(100)からの出力に対して充分であるか否かを判断するように構成されたクロック検出回路(150)をさらに備える
請求項
7に記載の水晶振動子回路。
【請求項9】
前記クロック信号の品質が前記水晶振動子回路(100)からの出力に対して充分であると判断されると、負荷容量制御回路(152)にレディ信号を出力するように、前記クロック検出回路(150)が構成され、
前記レディ信号は、前記水晶振動子回路(100)の少なくとも1つの負荷キャパシタのバンク(130,132)による容量の増大をトリガする
請求項
8に記載の水晶振動子回路。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の水晶振動子回路(100)を備え、
前記水晶振動子回路(100)は、基準クロック信号または実時間カウンタを提供する
無線センサノード(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、水晶振動子回路に関し、特に、水晶振動子の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は、種々の応用において、基準クロック又は実時間カウンタとして広くも用いられている。水晶振動子は、携帯または小型デバイスに用いられる場合がある。この場合、電力が限られていることから、デバイスの電力消費が重要である。
【0003】
水晶振動子が高い品質係数(Q値)を有すると、電源を投入してから起動するまでに長い期間を要することがある。このため、デバイスの電力消費は、起動時間に影響を受けることとなる。
【0004】
水晶振動子の起動時間は、無線ネットワークにおける小型の無線デバイスにおいて、特に重要になり得る。無線センサノードは、主にスリープモードであり、データパケットが無線ネットワーク上に送信されるときのみに電源を入れるように構成され得る。水晶振動子の起動時間は、デバイスがデータパケットを送信するためにアクティブである期間と同程度の大きさ(数ミリ秒)、又はこれよりも大きい場合もある。
【0005】
よって、水晶振動子の起動時間の短縮は、無線センサノードの電力消費に顕著な影響を与える。
【0006】
周波数注入、すなわち水晶振動子をアクティブ化するための外部周波数の供給は、水晶振動子の起動時間を顕著に削減することができる。しかしながら、周波数注入によって起動時間を削減するためには、注入信号の周波数は、水晶振動子の周波数と非常に近い必要がある。特に、注入周波数発生器によって供給される周波数が、温度などの環境の変化によって典型的にはドリフトし得ることから、水晶振動子および注入周波数発生器の周波数が、環境の変化に対して同じ様には影響されない場合がある。このため、或る条件において注入周波数は、起動時間を削減するための、水晶振動子の周波数と非常に近い周波数とはならない場合がある。
【0007】
特許文献1においては、回路における出力周波数を発生させる水晶振動子を備えた回路が開示されている。駆動発生器は、水晶振動子をアクティブ化するために供給される駆動周波数を有する起動信号を発生する。起動信号の駆動周波数は、水晶振動子の起動を促進するために、水晶振動子の動作周波数を包含する周波数範囲にわたって変えられる。駆動発生器は、水晶振動子の周波数を含んだ範囲の周波数を発生させるが、それであっても駆動発生器は、キャリブレーションして水晶振動子に適応させる必要がある。
【0008】
よって、水晶振動子の起動時間の短縮において、環境の変化に対して頑健であり、設計し易い水晶振動子を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第2015/0333694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明概念の目的は、高速の起動時間を有する水晶振動子回路において、環境の変化のような外部パラメータによる影響を殆ど受けない水晶振動子回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明概念による上記および他の目的は、独立項において規定されるとおりの本発明によって、少なくとも部分的に達成される。好ましい実施形態は、従属項において規定される。
【0012】
第1の態様によると、水晶振動子回路が提供される。水晶振動子回路は、水晶振動子と、注入周波数発生回路とを備える。注入周波数発生回路は、水晶振動子の信号を検知して、検知した信号を増幅するように構成される。さらに、注入周波数発生回路は、増幅した信号を水晶振動子に注入するように構成される。水晶振動子回路は、水晶振動子が、水晶振動子の初期の起動期間中に増幅した信号を受信して、初期の起動期間の終端には増幅した信号の受信を停止するように構成される。
【0013】
水晶振動子回路において増幅器に基づく周波数注入を用いることにより、注入周波数発生回路は、水晶振動子が出力する周波数と同じ又は類似の周波数の自己注入を提供できる。これにより、注入周波数発生回路によって注入された、増幅した信号は、水晶振動子からの信号自体と相関する。これにより、注入周波数発生回路は、水晶振動子と高度に相関し得る。これに加えて、増幅器に基づく注入周波数発生回路によると、注入された周波数のレイテンシが環境の変動に対して一定になる。このことは、注入周波数発生回路を用いる効果が、プロセス、電圧及び温度(PVT)変動などの如何なる環境の変動によっても、最小限の影響となることを示唆する。よって、水晶振動子回路は、水晶振動子において頑健な起動スキームを提供する。
【0014】
注入周波数発生回路は、水晶振動子からの低電力の信号を受信する。この信号を増幅して、増幅した信号を水晶振動子に注入し戻すことにより、水晶振動子における内部雑音が増大し、これによって水晶振動子の起動時間が削減できる。注入周波数発生回路からのフィードバックが、水晶振動子からのより強い信号出力を生じさせることから、注入周波数発生回路が形成する増幅した信号も迅速に強くなり、水晶振動子の内部雑音を素早く増大させる。よって、注入周波数発生回路を用いることにより、水晶振動子の起動時間を顕著に削減可能である。
【0015】
水晶振動子の周波数の自己注入は、初期には水晶振動子が出力する信号を改善し得る。しかしながら、起動処理が一旦、自己注入によってブーストされると、水晶振動子への増幅した信号の注入は停止される。これにより、注入周波数発生回路が無効化され、更なる電力を消費しないようにすることができる。
【0016】
増幅した信号が水晶振動子に供給される期間である、初期の起動期間は、必ずしも水晶振動子がフルスイングに到る起動時間の全体に一致する必要はない。寧ろ、初期の起動期間は、水晶振動子がフルスイングに到る前または後に終了してもよい。注入周波数発生回路の電力消費を削減するためには、初期の起動期間は、水晶振動子がフルスイングに到る前に終了してもよい。
【0017】
水晶振動子は、水晶振動子が初期の起動期間の終端に増幅した信号の受信を停止するための様々な方法において構成可能である。例えば、注入周波数発生回路は、初期の起動期間の終端に、内部又は外部信号に基づいて無効化または非アクティブ化されてもよい。これに代えて又は加えて、水晶振動子は、注入周波数発生回路から切断されてもよい。
【0018】
本明細書で用いられる文言「水晶振動子」は、一般的な技術用語の意味で解釈されるべきである。水晶振動子は、その周波数決定素子として圧電共振器を用いる。周波数決定素子は、水晶のウエハ又はセラミックなどの結晶性固体であり得る。このことから、名称「水晶振動子」が与えられている。しかしながら、厳密に結晶でなくてもよく、圧電共振器を用いた如何なる振動子デバイスも、本明細書で用いられる文言「水晶振動子」に含まれるものと理解されるべきである。
【0019】
一実施形態によると、水晶振動子回路は、起動期間中に注入周波数発生回路を有効化し、起動期間の終端に注入周波数発生回路を無効化する注入周波数制御回路をさらに備える。
【0020】
つまり、水晶振動子回路は、注入周波数発生回路を制御する注入周波数制御回路を備えてもよい。これにより、水晶振動子回路自体が水晶振動子の起動を制御して、水晶振動子回路を完全自律化することができる。
【0021】
注入周波数制御回路は、注入周波数発生回路を有効化および無効化するための内部信号を供給することができる。初期の起動期間の終端は、所定値に設定される場合がある。所定値は、水晶振動子回路の製造段階中の検査によって設定可能である。これにより、注入周波数制御回路は、所定値に対応する時間後に、注入周波数発生回路を無効化し得る。所定値は、初期の起動期間が短い又は長い場合に、外部信号に基づき注入周波数制御回路において更新されることも可能である。
【0022】
注入周波数制御回路は、水晶振動子からの信号を受信して、当該信号の品質又は特性(例えば出力のレベル又はクロックサイクルの数)に基づき注入周波数発生回路を無効化してもよい。これに代えて、水晶振動子からの信号は、当該信号をチェックして注入周波数制御回路をトリガし、注入周波数発生回路を無効化する別体の回路に入力されてもよい。
【0023】
一実施形態によると、注入周波数発生回路は、水晶振動子の信号を検知して増幅する二段の演算増幅回路を備える。二段の演算増幅回路は、一段目において高いゲインを提供し、二段目において大きいスイングを提供して、演算増幅器におけるゲイン及びスイングの要求を分離することができる。さらに、二段の演算増幅回路は、環境の変化又は変動に対して頑健であり得る。
【0024】
特定の実施形態において、二段の演算増幅回路は、外部のプロセス、供給電圧又は温度の変動に対して安定的であるゲイン帯域幅を有する。演算増幅器のレイテンシは、演算増幅器のゲイン帯域幅に依存する。演算増幅器のゲイン幅をPVT変動に対して安定的にすることにより、注入周波数発生回路がPVT変動に対して頑健になる。
【0025】
一実施形態によると、注入周波数発生回路は、信号を検知して増幅した信号を注入するように、水晶振動子と対向する側においてピンに接続される。この際、注入周波数発生回路は、水晶振動子が出力する信号の検知と、その後の水晶振動子への増幅した信号のフィードバックとの双方に、水晶振動子と対向する側におけるピンを用いることができる。
【0026】
一実施形態によると、注入周波数発生回路は、注入周波数の窓拡張信号に基づいて、水晶振動子に注入される信号の周波数を変化させるように構成される。水晶振動子に注入される信号の周波数は、例えば検知された信号が非常に小さいため、及び/又は注入周波数発生回路が、検知した信号の周波数に完全には追従しないために、水晶振動子の周波数に完全に合致しない場合がある。水晶振動子に注入される信号の周波数を変化させることにより、注入された信号の或る期間中に、信号の周波数が水晶振動子の周波数に、水晶振動子の起動を加速するために充分に近くなることが保障される。このことから、注入周波数の窓拡張信号は、注入された信号の周波数を調整するために入力を変化させてもよい。
【0027】
一実施形態によると、注入周波数の窓拡張信号は、注入周波数発生回路の演算増幅器のレイテンシを変化させるパラメータに影響を与える。演算増幅器のレイテンシを変化させることにより、注入された信号の周波数が変化し得る。当該パラメータは、例えば、注入周波数発生回路の入力バイアス電流、演算増幅器のトランジスタの寸法、又は演算増幅器の出力における負荷容量であってもよい。
【0028】
別の実施形態によると、注入周波数の窓拡張信号は、注入周波数発生回路の遅延発生器に、遅延発生器のレイテンシを変化させるように影響を与える。この場合、検知された信号の増幅後に、遅延発生器の付加によって、注入周波数発生回路の周波数の変化を生じさせることができる。遅延発生器は、例えばデジタル時間変換器(DTC)又はデジタル制御遅延線(DCDL)であってもよく、デジタル制御ビットに基づき増幅された信号にレイテンシを付加してもよい。
【0029】
一実施形態によると、水晶振動子回路は、負荷キャパシタのバンクを少なくとも1つ、さらに備える。負荷キャパシタのバンクは、水晶振動子の起動中に小さい容量となるように、調整可能な容量を提供するように構成される。
【0030】
水晶振動子の起動時間の削減において注入周波数を用いることに加えて、水晶振動子回路は、調整可能な容量を用いてもよい。水晶振動子の起動時間は、負荷容量の2乗の逆数と近似的に比例する。このことから、水晶振動子の起動中に容量を小さくすることにより、水晶振動子の起動時間を削減することができる。
【0031】
一実施形態によると、水晶振動子回路は、クロック検出回路をさらに備える。クロック検出回路は、水晶振動子からクロック信号を受信して、クロック信号の品質が、水晶振動子回路からの出力に対して充分であるか否かを判断するように構成される。この場合、クロック検出回路は、起動中に回路特性を変化させて、水晶振動子がフルスイングに到るときにクロック信号を出力することを完全自律化するように、クロック信号の検出を提供できる。
【0032】
クロック信号検出回路は、エンベロープ検出器を備えてもよい。エンベロープ検出器は、水晶振動子からの信号の信号強度を判断するように構成されてもよい。
【0033】
クロック信号検出回路は、エンベロープ検出器からのエンベロープ信号を入力する比較器をさらに備えてもよい。比較器は、水晶振動子からの信号の振幅がしきい値を超えるか否かを判断するように構成されてもよい。この場合、エンベロープ検出器と比較器の組み合わせにより、水晶振動子が出力する信号の信号強度を有利に判断することができる。
【0034】
一実施形態によると、クロック検出回路は、クロック信号の品質が水晶振動子回路からの出力に対して充分であると判断されると、負荷容量制御回路にレディ信号を出力するように構成される。レディ信号は、水晶振動子回路の負荷キャパシタのバンクの少なくとも1つによる容量の増大をトリガする。この場合、クロック検出回路が、水晶振動子が起動したことを判断すると、負荷容量制御回路は信号を受信して、負荷キャパシタのバンクの少なくとも1つによる調整可能な容量をその目標値まで増やすように制御することができる。
【0035】
負荷容量制御回路及び注入周波数制御回路は、負荷容量及び注入周波数の双方を制御する単一の回路に組み合わされてもよい。また、注入周波数制御回路は、クロック検出回路からの入力に基づいて、注入周波数発生回路を制御してもよい。なお、クロック検出回路は、調整可能な容量を含まない水晶振動子回路において用いられてもよい。この際、クロック検出回路は、注入周波数制御回路によって用いられる入力を提供してもよい。
【0036】
第2の態様によると、第1の態様に係る水晶振動子回路を備えた無線センサノードが提供される。水晶振動子回路は、基準クロック信号または実時間カウンタを提供する。
【0037】
このような第2の態様の効果および特徴は、第1の態様について上述したものと大部分で相似する。第1の態様に関して説明される実施形態は、第2の態様と大部分で両立可能である。
【0038】
第1の態様の水晶振動子回路の使用は、起動時間を高速化することから、特に無線センサノードにおいて有利である。無線センサノードは、例えば無線ネットワーク上でデータパケットを送信するときに、短い時間区間のみアクティブにするように構成できる。水晶振動子が短い起動時間を有することにより、無線センサノードに電源投入してから無線センサノードが再度スリープモードに到るまでの期間を顕著に短くすることができる。よって、無線センサノードの電力消費が実質的に低減でき、これによって、無線センサノードのバッテリの寿命が増大できる。
【0039】
第3の態様によると、水晶振動子を起動する方法が提供される。本方法は、水晶振動子が信号を出力するように、水晶振動子による発振の開始をトリガするステップと、注入周波数発生回路が、水晶振動子によって出力された信号を検知して、増幅するステップと、水晶振動子の起動時間を減らすべく、水晶振動子における内部雑音を増大させるように、増幅された信号を水晶振動子に注入するステップとを含む。
【0040】
このような第3の態様の効果および特徴は、第1及び第2の態様について上述したものと大部分で相似する。第1及び第2の態様に関して説明される実施形態は、第3の態様と大部分で両立可能である。
【0041】
一実施形態によると、本方法は、水晶振動子の初期の起動期間の終端に、注入周波数発生回路を無効化するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
初期の起動期間の終端は、水晶振動子回路がフルスイングに到るときと一致してもよいし、一致しなくてもよい。一実施形態において、初期の起動期間は、水晶振動子がフルスイングに到る前に終了し得る。この場合、自己注入は、水晶振動子の起動を早期にブーストするように作用するが、その後に無効化され、注入周波数発生回路による電力消費が低減される。
【0043】
一実施形態によると、本方法は、クロック信号の品質が水晶振動子回路からの出力に対して充分であることの検出に応答して、水晶振動子回路の負荷容量を増大させるステップをさらに含む。
【0044】
上記の場合に、本方法は、水晶振動子の負荷容量を調整するステップをさらに含んでもよい。起動中に小さい負荷容量を有すると起動時間に正の影響を与えることから、起動時間を短くするために、負荷容量は初期には小さくてもよい。クロック信号が水晶振動子からの出力に対して充分になると、負荷容量は目標値まで増やされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
上記については、本発明概念の追加の目的、特徴および利点と共に、以下の説明目的で非限定的である詳細な説明により、添付の図面を参照してより良く理解される。図面においては、同様の符号は、特に言及されない限り、同様の要素に用いられる。
【0046】
【
図2】水晶振動子回路における注入周波数発生回路の概略図
【
図3A】注入周波数発生回路における注入周波数窓の拡張を説明する概略図
【
図3B】注入周波数発生回路における注入周波数窓の拡張を説明する概略図
【
図4】水晶振動子回路のインピーダンスを説明する概略図
【
図5】水晶振動子回路における動的調整可能な負荷回路の概略図
【
図6】動的調整可能な負荷回路に関する時間領域における信号を説明する図
【
図7】水晶振動子回路によって出力される信号を説明する図
【
図8】水晶振動子回路を含む無線センサノードの概略図
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、実施形態に係る水晶振動子回路100の概略図である。水晶振動子回路100は、水晶振動子102を備える。水晶振動子102は、予め規定された周波数を有するクロック信号を供給できる。
【0048】
水晶振動子回路100は、水晶振動子102の起動時間を短くするように構成され得る。水晶振動子回路100は、注入周波数発生回路104を備えてもよい。注入周波数発生回路104は、水晶振動子102の初期の起動期間中に水晶振動子102の信号を検知し、検知した信号を増幅して、増幅した信号を水晶振動子102に戻し注入するように構成され得る。これにより、水晶振動子102の内部雑音が増大し、起動時間が削減される。
【0049】
水晶振動子回路100は、動的に調整される負荷回路106を備えてもよい。動的調整の負荷回路106は、水晶振動子回路100の負荷容量を制御するように構成される。これにより、負荷容量は、起動時間を削減するべく、起動中に小さい負荷容量となるように調整され得る。
【0050】
水晶振動子回路100は、水晶振動子の起動のイネーブル信号を入力するための、一つの入力ピン108を備えてもよい。水晶振動子回路100は、入力ピン108に入力されたイネーブル信号に基づいて、水晶振動子102の起動を高速にするように、完全自律的であってもよい。
【0051】
なお、本明細書に記載の水晶振動子回路100は、デジタル制御水晶振動子(DCXO)の実装と両立可能である。
【0052】
この場合、水晶振動子回路100は、内部で注入周波数発生回路104を制御して、水晶振動子102による初期の起動期間中に注入される、増幅した信号を水晶振動子102に供給してもよい。水晶振動子回路100は、初期の起動期間中に注入周波数発生回路104を有効化して、初期の起動期間の終端に注入周波数発生回路104を無効化する注入周波数制御回路110を備えてもよい。
【0053】
注入周波数制御回路110は、水晶振動子102からの信号を受信してもよい。これにより、注入周波数制御回路110は、水晶振動子102の起動の進度を判断し、注入周波数発生回路104からの増幅された信号がいつ不要になるかを決定することができる。これと共に又は代えて、注入周波数制御回路110は、(例えば水晶振動子回路100における別の回路からの)外部信号を受信してもよい。外部信号は、例えば水晶振動子による信号の品質の検出に基づいて、注入周波数発生回路104を無効化するタイミングを注入周波数制御回路110に通知する。
【0054】
上記の代わりに、注入周波数制御回路110は、水晶振動子回路100のシミュレーション又は検査に基づき、初期の起動期間の適切な長さを示す情報を用いてもよい。この場合、注入周波数制御回路110の情報が示す時間が過ぎたときに、注入周波数発生回路104を無効化するように、注入周波数制御回路110が構成されてもよい。
【0055】
さらに、注入周波数制御回路110は、負荷容量制御回路112を備えてもよい。負荷容量制御回路112は、水晶振動子回路100の負荷容量を制御するように構成できる。負荷容量制御回路112は、充分な品質のクロック信号が水晶振動子102によって出力されたと判断されたときに、負荷容量の増大をトリガするように構成されてもよい。
【0056】
注入周波数制御回路110および負荷容量制御回路112は、注入周波数発生回路104の無効化/有効化と水晶振動子102の負荷容量の調整とにおいて別々の制御信号を出力する、共通のユニットで構成されてもよい。共通の制御回路は、例えば、注入周波数発生回路104の制御と負荷容量の調整との双方において水晶振動子102の起動についての進度の入力を用いてもよい。
【0057】
しかしながら、
図1に示すように、注入周波数発生回路104と負荷容量制御回路112とは、別体のユニットであってもよい。
【0058】
図2を参照して、注入周波数発生回路104の実施形態を更に説明する。演算増幅器などの増幅器は、水晶振動子102と対向する側においてピン114,116と共にフィードバックループを構成するように用いられてもよい。スイッチ117a,117bが閉じると(又はそれ以外の方法で注入周波数発生回路104が有効化されると)、注入周波数発生回路104の要素が、増幅された振動の信号を発生する。この増幅された信号は、ピン114,116を介して水晶振動子102に注入される。
【0059】
図2に示すように、注入周波数発生回路104は、二段の演算増幅器に基づく演算器を備えてもよく、注入信号の発生は二段の演算増幅器に基づいてもよい。二段の演算増幅器は、ピン114,118に接続された入力部と、入力バイアス電流を入力する入力部118とを備え得る。さらに、二段の演算増幅器は、二段の演算増幅器を形成するように接続された複数のトランジスタを備えてもよい。二段の演算増幅器の回路は、一段目においてゲインを高くし、二段目においてスイングを大きくしてもよい。これにより、演算増幅器においてゲインとスイングとを別個に扱うことができる。
【0060】
外部のRCに基づく発振器が発生させる注入周波数と比較して、二段の演算増幅器は、製造工程、電圧および温度(PVT)変動などの環境変化に対して、より頑健である。
【0061】
演算増幅器の頑健性について、以下説明する。演算増幅器のレイテンシは、Iop/Copの影響を受ける。Iopは演算増幅器のバイアス電流であり、Copは演算増幅器が駆動する容量負荷を表す。ここで、トランスコンダクタンスgmはIopに比例し、演算増幅器のレイテンシはgm,op/Copとも近似できる。また、gm,op/Copは、演算増幅器のゲイン帯域幅(GBW)と類似しており、演算増幅器のレイテンシは、演算増幅器のGBWによって表すことも可能である。よって、注入周波数を得るためには、演算増幅器のレイテンシが安定する必要があり、このため、演算増幅器のGBWは安定しなければならない。ここで、容量CopはPVT変動に対して比較的、安定しており、gmは通常、演算増幅器において安定したバンドギャップ基準発生器によって提供でき、演算増幅器のGBWはPVT変動に対して比較的、安定的であり得る。よって、二段の演算増幅器に基づく注入周波数発生回路104は、PVT変動に対して比較的、頑健である。
【0062】
図3A,3Bを参照して、注入周波数発生回路104は、注入周波数発生回路104のパラメータを変えるように拡張されてもよい。これにより、注入周波数の窓サイズが効率良く増大できる。窓サイズの増大は周波数注入のために用いられなくてもよいが、増大された窓サイズを用いて、水晶振動子102の周波数に対応する注入周波数を提供する際の注入周波数発生回路104をより頑健にしてもよい。
【0063】
図3Aでは、演算増幅器のレイセンシを変化させるパラメータに影響を及ぼすように入力が供給される場合を示している。
図3Aに示すように、演算増幅器のパラメータを変化させるアプローチが幾つか在り得る。演算増幅器において、トランスコンダクタンス又はバイアス電流は、電流源120によって変えられる。電流源120は、可変のバイアス電流を供給するための入力を受信してもよい。電流源120は、例えばデジタル制御ビットの調整を通して、演算増幅器の入力バイアス電流において変化する出力を供給してもよい。入力バイアス電流の変化は、注入周波数発生回路104が発生させた注入周波数が、演算増幅器が検知する周波数周辺の範囲内で変えられ、水晶振動子102から入力され得るように、演算増幅器のレイテンシを変化させ得る。
【0064】
さらに
図3Aに示すように、演算増幅器のレイテンシは、演算増幅器の出力において負荷容量122の変化を介して変えられる場合もあり得る。
【0065】
これと共に又は代えて、注入周波数発生回路104に複数のトランジスタ素子を備え、何れのトランジスタ素子をアクティブにするか切り替えることにより、演算増幅器のレイテンシが変えられる場合がある。トランジスタの寸法は、演算増幅器のレイテンシを変化させるために変えられてもよい。
【0066】
また、これと共に又は代えて、注入周波数の窓サイズが変えられる場合も、演算増幅器が出力する周波数を変化させるように外部要素を演算増幅器に提供することによって実現し得る。
図3Bに示すように、遅延発生器124が、演算増幅器の出力側に設けられ、変化する遅延期間を出力に付加してもよい。このことから、デジタル時間変換器またはデジタル制御遅延線が、例えば遅延発生器124のデジタル制御ビットに基づき、変化する遅延期間(又はレイテンシ)を提供するように設けられてもよい。
【0067】
注入周波数の窓サイズを増大させるような注入周波数の変化は、上述したように注入周波数発生回路104のレイテンシを変えるための要素に供給され得る、注入周波数の窓拡張信号に基づいてもよい。注入周波数の窓拡張信号は、変化する信号であってもよいし、上述したように、注入周波数発生回路104の要素を制御するデジタル制御ビットとして供給されてもよい。
【0068】
注入周波数の窓拡張信号は、制御部126によって供給されてもよい。制御部126は、注入周波数制御回路110に統合されてもよいが、これに代えて別体の制御部であってもよい。
【0069】
注入周波数の窓拡張信号は、少なくとも2つのレベル間でトグル又はスイッチングするように構成されてもよい。しかしながら、注入周波数の窓拡張信号は、固定されたパターン(例えばランプ)又はランダムパターンによる複数のレベル間で変化するコードであってもよい。制御部126は適宜、注入周波数発生回路104のレイテンシを変化させるための入力として様々なコードをデジタルで供給するデジタル制御部であってもよい。
【0070】
注入周波数発生回路104によって提供される注入周波数に加えて、水晶振動子102の起動時間は、動的に調整される負荷回路106も用いて削減されてもよい。
【0071】
動的調整の負荷回路106の原理を説明するために、水晶振動子回路100の一部を
図4に示す。水晶振動子回路100は、水晶振動子102と、2つの負荷キャパシタ130,132と、図中でトランジスタとして示す能動回路134とを備える。水晶振動子102は、抵抗値R
mを有する抵抗136と、容量C
mを有するキャパシタ138と、インダクタ140との直列接続によって表すことができる。また、キャパシタ142は、水晶振動子102自体の寄生容量を表す。2つの負荷容量130,132の等しい容量C
1,C
2における全体の負荷容量C
Lは、C
1/2になる。さらに、水晶振動子の起動条件は、次式のように表される。
-Re(Z
C)>=R
S
すなわち、水晶振動子回路のインピーダンスZ
Cの実部による負の抵抗値が、発振を開始して維持するために、水晶振動子102の抵抗136の抵抗値R
S以上でなければならない。
【0072】
Z
Cの実部は、次式のように表すことができる。
ここで、g
mは、水晶振動子回路のトランスコンダクタンスである。C
1及びC
2は、それぞれ負荷キャパシタ130,132の容量である。C
3は、キャパシタ142の寄生容量である。ωは、発振の角速度である。
【0073】
最小の電力消費のオーバヘッドを維持しながら水晶振動子102の起動時間を削減するためには、負荷容量CLを低減することが、gmを増大することと比較して、2つの観点からより有用である。第1に、インピーダンスZCによる負の抵抗値RNは、-gm/(2ωCL)2と近似できる。RNは、gmに線形比例するが、1/CLには2次であることが分かる。よって、1/CLの低減は、起動時により高い|RN|を得るためにより有効である。第2に、要求される最小のgmはRm(2ωCL)2に比例することから、より小さいCLが、起動時に消費電力の要求を低くすることを示唆する。よって、起動時により小さいCLは、高速起動と低消費電力の双方において望ましい。しかしながら、定常状態において小さいCLは、Cm/(C3+2CL)に比例する周波数引き込み因子を悪くすることとなり、環境の変動に対して水晶振動子の周波数を不安定かつ予測不能にしてしまう。
【0074】
図5に示すように、水晶振動子回路100は、初期には高速起動のために負荷容量C
Lを最小化し、その後に定常状態では安定的な動作のためにC
Lをインクリメントするという、動的に調整される負荷を提供するように構成されてもよい。動的調整の負荷の技術は、C
Lの値に比較的、影響されず、寄生容量等の変化に対する許容誤差を改善するように採用可能である。
【0075】
図5を参照して、動的調整の負荷回路106について更に詳細に説明する。動的調整の負荷回路106は、水晶振動子102の高速起動を促進するための最小値まで負荷キャパシタ130,132の容量を低減して、負の抵抗値R
Nをブーストするように動作する。これにより、水晶振動子102の振幅は、短時間で強化することができる。
【0076】
動的調整の負荷回路106は、クロック検出器150を備える。クロック検出器150は、デジタル回路を制御するべく出力クロック信号を供給するために水晶振動子102が充分な出力スイングを有するか否かを判定するように構成される。水晶振動子102が充分な出力スイングを有すると判定された場合、負荷容量制御回路112は、負荷キャパシタ130,132の負荷容量を目標の値まで自動的に増大させる。
【0077】
クロック検出器150は、エンベロープ検出器154と比較器156とを備えてもよい。エンベロープ検出器154は比較器156と共に、水晶振動子102によって出力される信号出力の振幅を検知する。これに加えて、クロック検出器は、デジタルクロック検出回路158を備えてもよい。デジタルクロック検出回路158は、比較器156からの入力を受信して、クロックの品質がデジタル制御のために充分であるか否かをチェックする。デジタルクロック検出回路158は、クロックの品質が充分であることを検出すると、レディ信号を負荷容量制御回路112に出力する。
【0078】
負荷容量制御回路112は、有限状態機械(FSM)152を備えてもよい。FSM152は、水晶振動子102が出力するクロック信号に基づいて、デジタルクロック検出回路158からクロック信号を受信する。当該クロック信号は、水晶振動子102による出力に基づいて分周された周波数で受信されてもよい。これにより、動的調整負荷のフィードバックループのより良い動作及びより低い動作周波数を示し得る。FSM152は、負荷キャパシタ130,132の容量を調整するための調整コードを生成する。調整コードは、バイナリコードからサーモメータコードに変換するためのブロック160に提供されてもよい。この際、サーモメータコードは、負荷キャパシタ130,132の容量を制御し得る。
【0079】
負荷キャパシタ130,132は、負荷キャパシタのバンクとして形成されてもよい。さらにサーモメータ符号化の調整入力を供給することにより、バイナリコードに応じた可能なクロックのグリッチが回避されてもよい。
【0080】
水晶振動子の周波数は、周波数引き込みに応じて起動時には数ppmほど外れる。負荷キャパシタ130,132の容量が一度、自動的に目標値に設定されると、水晶振動子の周波数は目標周波数に落ち着く。起動の処理全体は、イネーブル信号のみ用いて、完全に自動化されてもよい。
【0081】
クロック検出器150は、水晶振動子102からの出力信号の品質を解析するが、注入周波数制御回路104に入力を供給するためにも、用いられてもよい。この際、クロック検出器150は、注入周波数発生回路104の無効化をトリガするために、トリガ信号を注入周波数発生回路104に出力し得る。負荷容量制御回路112にレディ信号を出力するために用いられるレベルとは別の(より低い)、水晶振動子が出力する信号のレベルに関連して、トリガ信号が出力されてもよい。
【0082】
図6では、動的調整可能な負荷回路106を用いた水晶振動子回路100の時間領域における起動の振る舞いを説明する。
図6に示すように、イネーブル信号EN_XOによって、起動が開始される。ピン114,116上の信号XOP(N)は、クロック信号が増大する振幅を有することを示す。振幅が充分に大きくなったときに、レディ信号RDYはハイになる。レディ信号RDYは、FSM152に供給される。FSM152は、調整コードD
Tを生成する。調整コードD
Tは、レディ信号を受信すると徐々に増大して、負荷キャパシタ130,132を目標値に設定する。ラインFreqに示すように、出力クロック信号の周波数は、負荷容量が増大したときに、目標値に落ち着く。
【0083】
図7を参照して、注入周波数発生回路104及び/又は動的調整可能な負荷回路106を用いる効果について、概略を説明する。
図7に示すように、イネーブル信号EN_XOが入力されると、同時に注入周波数発生回路104は、注入周波数制御回路110から注入周波数発生回路104への信号EN_INJによって有効化され得る。
【0084】
図7では、注入周波数発生回路104又は動的調整可能な負荷回路106を用いるか否かに応じて異なった、ピン114,116での信号を示している。上側の信号は、動的調整可能な負荷回路106を用いた水晶振動子の信号を実線で、動的調整可能な負荷回路106を用いていない水晶振動子の信号を破線で、これらの振幅を示す。
【0085】
下側の信号は、注入周波数発生回路104を用いた場合の水晶振動子の信号を示す。注入周波数発生回路104が有効化されたときに、ピン114での信号強度が高くなり、無効化されたときに、水晶振動子の信号が起動時間におけるブーストを受けて、フルスイングに素早く到っていることが分かる。
【0086】
注入周波数発生回路104が有効化される起動期間は、典型的には3~5μ秒などの数μ秒となり得る。注入周波数発生回路104を用いる効果は、起動期間の適切な長さを決定するためにシミュレーションされてもよい。これに加えて又は代えて、起動期間の適切な長さは、水晶振動子回路100の製造時における検査で決定されてもよい。注入周波数制御回路110は、起動期間の長さを示す情報を用いて、格納された起動期間の長さに対応する時間の長さ分、ハイになるイネーブル信号EN_INJを供給するように提供されてもよい。
【0087】
DAL及び注入におけるシーケンス制御は、理論的には、外部の制御シーケンスを要することなく完全自律化でき、よってハードウェア実装もできる。これにより、水晶振動子の起動についての従来手法と比較して、顕著に電力のオーバヘッド、回路面積およびシステムの複雑性を低減することができる。
【0088】
この場合、水晶振動子回路100は、起動時にRNを増やすための動的調整可能な負荷、並びに内部調和の収穫及び注入を用いて、さらに起動時間を削減することもできる。シミュレーションされた性能は、水晶振動子102の起動時間が10よりも大きい因子で削減できることを示している。これに加えて、注入周波数は、供給電圧および温度における変動に対して安定的になる。
【0089】
図8を参照して、水晶振動子102の高速起動を提供する水晶振動子回路100は、無線センサノード200において有利に用いることができる。
【0090】
無線センサノード200は、無線センサネットワーク上の通信における送受信機202を備える場合がある。無線センサノード200は、短い時間区間においてアクティブとし、当該区間の間隔中では非アクティブとなるように構成される場合がある。無線センサノード200は、アクティブなとき、無線センサネットワーク上に情報を提供するデータパケットを送信してもよい。データパケットが一旦、送信されると、無線センサノード200はスリープモードに戻ることができる。
【0091】
水晶振動子回路100は、データパケットを送信するべく送受信機202を有効化するために、送受信機202にクロック信号を供給するように構成されてもよい。
【0092】
この際、無線センサノード200の電力消費は、水晶振動子102の起動時間が無線センサノード200のアクティブ期間の長さに影響を与えることから、水晶振動子102の起動時間に対して高い依存性を有する。上述したように水晶振動子回路100を用いることで、水晶振動子102の起動時間が非常に短くなり、これによって無線センサノード200の電力消費を低くすることができる。
【0093】
図9を参照して、水晶振動子102を起動する方法について説明する。
【0094】
本方法は、水晶振動子による発振の開示をトリガするステップ302を含む。トリガ信号は、水晶振動子102が起動開始するために必要な外部入力のみであってもよい。
【0095】
本方法は、注入周波数発生回路104により、水晶振動子102が出力した信号を検知して増幅するステップ304をさらに含む。水晶振動子102からの信号を用いる手段により、増幅した信号は、水晶振動子102の周波数と同一の周波数を有してもよい。
【0096】
本方法は、増幅した信号を水晶振動子102に注入するステップ306をさらに含む。注入された信号は、水晶振動子102の内部雑音を増大させ、これによって水晶振動子102の起動をブーストする。
【0097】
本方法は、起動期間の終端において注入周波数発生回路104を無効化するステップ308をさらに含む。この際、注入周波数発生回路104は、水晶振動子102の起動を初期にブーストするためだけに用いられ、その後は省電力のために無効化される。
【0098】
水晶振動子102を起動するための本方法は、起動中に小さい容量を提供して、水晶振動子102からの信号が充分な品質となったときに負荷容量を増やすように、水晶振動子回路100の調整可能な負荷容量を用いてもよい。
【0099】
以上では、本発明の概念について主に限られた数の実施例を説明した。しかしながら、本技術分野における当業者によって容易に理解されるように、以上のように開示した実施例以外の実施例が、添付の特許請求の範囲によって規定されるとおりの本発明概念の範囲内で等しく成し得る。