(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】基板作業装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20230705BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H05K13/04 A
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019022024
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 主章
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081282(JP,A)
【文献】特開2016-178134(JP,A)
【文献】特開昭51-102790(JP,A)
【文献】特開平05-208343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、
サーボモータと、
前記サーボモータにより駆動される被駆動部と、
前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づく前記被駆動部の摩耗劣化の状態に応じて、前記サーボモータの制御ゲインを段階的に設定する制御を行うように構成されている、基板作業装置。
【請求項2】
部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、
サーボモータと、
前記サーボモータにより駆動される被駆動部と、
前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、複数種類の前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記被駆動部の摩耗劣化の状態を判断する制御を行うように構成されており、
前記制御部は、複数種類の前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報の各々による前記被駆動部の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい前記被駆動部の摩耗劣化の状態に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている、基板作業装置。
【請求項3】
前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報は、前記サーボモータの実効負荷率に関する情報、前記サーボモータのアラームの頻度に関する情報、前記サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項1
または2に記載の基板作業装置。
【請求項4】
前記基板に前記部品を実装する実装ヘッドをさらに備え、
前記被駆動部は、前記実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部であり、
前記制御部は、前記被駆動部である前記軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項5】
部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、
サーボモータと、
前記サーボモータにより駆動される被駆動部と、
前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、
前記基板に前記部品を実装する実装ヘッドと、を備え、
前記被駆動部は、前記実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部であり、
前記制御部は、前記被駆動部である前記軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されており、
前記実装ヘッドは、前記基板に前記部品を実装する場合、前記被駆動部である前記軸部により水平方向に移動されつつ、前記基板における前記部品の実装位置に向かって下降される第1動作、および、部品供給装置から前記部品を吸着する場合、前記被駆動部である前記軸部により水平方向に移動されつつ、前記部品供給装置における前記部品の吸着位置に向かって下降される第2動作のうちの少なくとも一方を行うように構成されており、
前記制御部は、前記被駆動部である前記軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、前記サーボモータの制御ゲインを設定するとともに、設定された前記サーボモータの制御ゲインに対応するように、前記第1動作を行う際、または、前記第2動作を行う際の、前記実装ヘッドの下降開始タイミングを設定する制御を行うように構成されている、基板作業装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づく前記被駆動部の摩耗劣化の状態をユーザに通知するユーザ通知部を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板作業装置に関し、特に、サーボモータを備える基板作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーボモータを備える基板作業装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、プリント基板に電子部品を実装する電子部品実装機(基板作業装置)が開示されている。この電子部品実装機は、サーボモータと、サーボモータにより移動されるヘッド部とを備えている。また、この電子部品実装機では、サーボモータにかかる荷重負荷に応じて制御ゲインを設定することにより、サーボモータに異音や振動が発生することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電子部品実装機では、サーボモータにかかる荷重負荷に応じて制御ゲインを設定することにより、サーボモータに異音や振動が発生することが抑制される一方、被駆動部であるヘッド部が摩耗劣化した場合、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することが可能な基板作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、サーボモータと、サーボモータにより駆動される被駆動部と、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、を備える。
この発明の第1の局面による基板作業装置では、上記のように、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部を設ける。これにより、被駆動部が摩耗劣化した場合、摩耗劣化した被駆動部に適した値にサーボモータの制御ゲインを設定することができるので、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。その結果、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。また、サーボモータの制御ゲインを制御部により設定することができるので、サーボモータの制御ゲインを作業者が手動により設定する必要がなく、被駆動部の摩耗劣化時のサーボモータの制御ゲインの作業者による設定の手間を省くことができる。
また、上記第1の局面による基板作業装置では、制御部は、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づく被駆動部の摩耗劣化の状態に応じて、サーボモータの制御ゲインを段階的に設定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、被駆動部の摩耗劣化の状態に応じて摩耗劣化した被駆動部により適した値にサーボモータの制御ゲインを設定することができるので、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することをより抑制することができる。
【0011】
この発明の第2の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、サーボモータと、サーボモータにより駆動される被駆動部と、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、を備える。
この発明の第2の局面による基板作業装置では、上記のように、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部を設ける。これにより、被駆動部が摩耗劣化した場合、摩耗劣化した被駆動部に適した値にサーボモータの制御ゲインを設定することができるので、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。その結果、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。また、サーボモータの制御ゲインを制御部により設定することができるので、サーボモータの制御ゲインを作業者が手動により設定する必要がなく、被駆動部の摩耗劣化時のサーボモータの制御ゲインの作業者による設定の手間を省くことができる。
また、上記第2の局面による基板作業装置では、制御部は、複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部の摩耗劣化の状態を判断する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、1つの種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部の摩耗劣化の状態を判断する場合に比べて、被駆動部の摩耗劣化の状態をより精度良く判断することができる。その結果、精度良く判断された被駆動部の摩耗劣化の状態に応じて、摩耗劣化した被駆動部により一層適した値にサーボモータの制御ゲインを設定することができる。
また、上記第2の局面による基板作業装置では、制御部は、複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい被駆動部の摩耗劣化の状態に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部の摩耗劣化の状態を簡単かつ精度良く判断することができる。
【0012】
上記第1および第2の局面による基板作業装置において、好ましくは、被駆動部の摩耗劣化に関する情報は、サーボモータの実効負荷率に関する情報、サーボモータのアラームの頻度に関する情報、サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報のうちの少なくとも1つを含む。このように構成すれば、サーボモータの実効負荷率に関する情報、サーボモータのアラームの頻度に関する情報、サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報のうちの少なくとも1つを含む摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを容易に設定することができる。
【0013】
上記第1および第2の局面による基板作業装置において、好ましくは、基板に部品を実装する実装ヘッドをさらに備え、被駆動部は、実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部であり、制御部は、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、被駆動部が、実装ヘッドの高速移動が要求されるために摩耗劣化が発生しやすい軸部である場合に、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部である軸部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。
【0014】
この発明の第3の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に作業を行う基板作業装置であって、サーボモータと、サーボモータにより駆動される被駆動部と、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部と、を備える。
この発明の第3の局面による基板作業装置では、上記のように、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行う制御部を設ける。これにより、被駆動部が摩耗劣化した場合、摩耗劣化した被駆動部に適した値にサーボモータの制御ゲインを設定することができるので、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。その結果、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。また、サーボモータの制御ゲインを制御部により設定することができるので、サーボモータの制御ゲインを作業者が手動により設定する必要がなく、被駆動部の摩耗劣化時のサーボモータの制御ゲインの作業者による設定の手間を省くことができる。
また、上記第3の局面による基板作業装置では、基板に部品を実装する実装ヘッドをさらに備え、被駆動部は、実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部であり、制御部は、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、被駆動部が、実装ヘッドの高速移動が要求されるために摩耗劣化が発生しやすい軸部である場合に、制御ゲインが摩耗劣化した被駆動部である軸部に適していないことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することができる。
また、上記第3の局面による基板作業装置では、実装ヘッドは、基板に部品を実装する場合、被駆動部である軸部により水平方向に移動されつつ、基板における部品の実装位置に向かって下降される第1動作、および、部品供給装置から部品を吸着する場合、被駆動部である軸部により水平方向に移動されつつ、部品供給装置における部品の吸着位置に向かって下降される第2動作のうちの少なくとも一方を行うように構成されており、制御部は、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定するとともに、設定されたサーボモータの制御ゲインに対応するように、第1動作を行う際、または、第2動作を行う際の、実装ヘッドの下降開始タイミングを設定する制御を行うように構成されている。ここで、被駆動部である軸部の摩耗劣化に応じてサーボモータの制御ゲインを変更した場合、制御ゲインの変更に起因してサーボモータの応答性が変化するため、応答性が変化したサーボモータにより駆動される軸部の動特性が変化する。その結果、単に通常時の下降開始タイミングにおいて実装ヘッドを下降させるだけでは、実装ヘッドを目標位置(実装位置または吸着位置)に正確に下降させることができない。そこで、上記のように、制御部を、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定するとともに、設定されたサーボモータの制御ゲインに対応するように、第1動作を行う際、または、第2動作を行う際の、実装ヘッドの下降開始タイミングを設定する制御を行うように構成すれば、変更された制御ゲインに適したタイミングに下降開始タイミングを設定することができる。その結果、制御ゲインの変更に起因してサーボモータの応答性が変化した場合にも、実装ヘッドを目標位置(実装位置または吸着位置)に正確に下降させることができる。
【0015】
上記第1~第3の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づく被駆動部の摩耗劣化の状態をユーザに通知するユーザ通知部を含む。このように構成すれば、ユーザが被駆動部の摩耗劣化の状態を確認することができる。その結果、被駆動部の摩耗劣化の程度が過度に大きくなる前に、被駆動部の保守点検を行ったり、基板作業装置の買い替えや被駆動部の部品の買い替えなどの買い替え計画を立てたりすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、被駆動部が摩耗劣化したことに起因してサーボモータに異音や振動が発生することを抑制することが可能な基板作業装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の基板作業装置を示す模式的な平面図である。
【
図2】一実施形態の基板作業装置の制御的な構成を示すブロック図である。
【
図3】(A)は、一実施形態の基板作業装置の実装ヘッドによる部品の吸着動作を説明するための模式図である。(B)は、一実施形態の基板作業装置の実装ヘッドによる部品の実装動作を説明するための模式図である。
【
図4】一実施形態の基板作業装置のサーボモータに関する構成を説明するための模式図である。
【
図5】サーボモータの速度と時間との関係を説明するためのグラフである。
【
図6】一実施形態の基板作業装置による軸部の摩耗劣化の状態の判断を説明するための模式図である。
【
図7】(A)は、X軸モータ用の設定情報を説明するための模式図である。(B)は、Y軸モータ用の設定情報を説明するための模式図である。
【
図8】一実施形態の基板作業装置による実装ヘッドの下降開始タイミングを説明するための模式図である。
【
図9】一実施形態の基板作業装置による軸部の摩耗劣化の状態の通知を説明するための模式図である。
【
図10】一実施形態の基板作業装置による制御ゲイン設定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態による基板作業装置100の構成について説明する。なお、以下の説明では、基板搬送方向に沿った方向をX方向とし、水平面内でX方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向とする。
【0020】
(基板作業装置の構成)
基板作業装置100は、
図1および
図2に示すように、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの部品E(電子部品)を、プリント基板などの基板Pに実装する部品実装装置である。
【0021】
基板作業装置100は、基台1と、搬送部2と、ヘッドユニット3と、軸部4と、部品撮像部5と、基板撮像部6と、表示部7(
図2参照)と、制御部8(
図2参照)と、機械状態監視部9(
図2参照)とを備えている。なお、軸部4は、特許請求の範囲の「被駆動部」の一例である。
【0022】
基台1は、基板作業装置100において各構成要素を配置する基礎となる台である。基台1上には、搬送部2、レール部42および部品撮像部5が設けられている。また、基台1内には、制御部8が設けられている。また、基台1には、Y方向の両側(Y1方向側およびY2方向側)に、部品供給装置11がそれぞれ配置されている。
【0023】
部品供給装置11は、基板Pに実装される部品Eを供給する装置である。部品供給装置11は、たとえば、テープフィーダ12を含んでいる。テープフィーダ12は、複数の部品Eを保持した部品供給テープ(図示せず)が巻き回されたリール(図示せず)を保持している。また、テープフィーダ12は、ヘッドユニット3による部品Eの取出しのための部品吸着動作に応じて、保持されたリールを回転させて部品供給テープを送り出すことにより、部品Eを供給するように構成されている。基台1では、Y方向の両側のそれぞれにおいて、複数のテープフィーダ12がX方向に並んで配列されている。なお、部品供給装置11は、部品Eを保持したトレイにより部品Eを供給するトレイフィーダを含んでいてもよい。
【0024】
搬送部2は、実装前の基板Pを搬入し、基板搬送方向(X方向)に搬送し、実装後の基板Pを搬出するように構成されている。また、搬送部2は、搬入された基板Pを実装停止位置Aまで搬送するとともに、実装停止位置Aにおいて基板固定機構(図示せず)により固定するように構成されている。また、搬送部2は、一対の搬送ベルト21を含んでおり、一対の搬送ベルト21により、基板PのY方向の両端を下方(Z2方向側)から支持しつつ、基板Pを基板搬送方向に搬送するように構成されている。
【0025】
ヘッドユニット3は、部品実装用のヘッドユニットである。ヘッドユニット3は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pに部品Eを実装する。ヘッドユニット3は、複数(5つ)の実装ヘッド31を含んでいる。実装ヘッド31の先端には、部品Eを吸着するための吸着ノズル31a(
図3参照)が着脱可能に装着されている。実装ヘッド31は、負圧供給部(図示せず)から供給された負圧により、吸着ノズル31aに部品Eを吸着可能に構成されている。
【0026】
また、ヘッドユニット3は、実装ヘッド31を上下方向(Z方向)に移動させるZ軸モータ32(
図2参照)と、実装ヘッド31をZ方向に延びる回転軸線周りに回転させるR軸モータ33(
図2参照)とを含んでいる。実装ヘッド31は、Z軸モータ32により、部品Eを吸着する際かまたは吸着された部品Eを実装する際の下降位置と、吸着された部品Eを基板Pに搬送する際の上昇位置との間で、上下方向に移動可能に構成されている。また、実装ヘッド31は、部品Eを吸着した状態でR軸モータ33により回転されることにより、吸着している部品Eの向きを調整可能に構成されている。
【0027】
また、
図3(A)に示すように、ヘッドユニット3の実装ヘッド31は、部品供給装置11から部品Eを吸着する場合、軸部4により水平方向に移動されつつ、部品供給装置11における部品Eの吸着位置B1に向かって下降される動作Cを行うように構成されている。また、
図3(B)に示すように、ヘッドユニット3の実装ヘッド31は、基板Pに部品Eを実装する場合、軸部4により水平方向に移動されつつ、基板Pにおける部品Eの実装位置B2に向かって下降される動作Dを行うように構成されている。すなわち、ヘッドユニット3の実装ヘッド31は、部品供給装置11から部品Eを吸着する場合、および、基板Pに部品Eを実装する場合に、水平方向への移動と下方向への移動とがオーバーラップするように駆動される。これにより、オーバーラップ駆動されない場合と比べて、目標位置(吸着位置B1または実装位置B2)への実装ヘッド31の移動に要する時間を短縮することができる。なお、動作CおよびDは、それぞれ、特許請求の範囲の「第2動作」および「第1動作」の一例である。
【0028】
図1および
図2に示すように、軸部4は、ヘッドユニット3を水平方向(X方向およびY方向)に移動させるように構成されている。軸部4は、ヘッドユニット3を基板搬送方向(X方向)に移動可能に支持する支軸部41(軸部本体)と、支軸部41をY方向に移動可能に支持するレール部42とを含んでいる。支軸部41は、基板搬送方向に延びるボールねじ軸41aと、ボールねじ軸41aを回転させるX軸モータ41bとを有している。X軸モータ41bは、回転モータであるサーボモータである。ヘッドユニット3には、支軸部41のボールねじ軸41aと係合するボールナット(図示せず)が設けられている。ヘッドユニット3は、X軸モータ41bによりボールねじ軸41aが回転されることにより、ボールねじ軸41aと係合するボールナットとともに、支軸部41に沿って基板搬送方向に移動可能に構成されている。レール部42は、支軸部41のX方向の両端部をY方向に移動可能に支持する一対のガイドレール42aと、ガイドレール42aに沿って支軸部41をY方向に直線移動させるY軸モータ42bとを有している。Y軸モータ42bは、リニアモータであるサーボモータである。なお、X軸モータ41bおよびY軸モータ42bは、特許請求の範囲の「サーボモータ」の一例である。また、以下では、X軸モータ41bおよびY軸モータ42bを特に区別する必要がない場合、サーボモータ43と称することがある。
【0029】
軸部4の支軸部41およびレール部42により、ヘッドユニット3は、基台1上を水平方向に移動可能に構成されている。これにより、ヘッドユニット3の実装ヘッド31は、部品供給装置11の上方に移動して、部品供給装置11から供給される部品Eを吸着可能である。また、ヘッドユニット3の実装ヘッド31は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの上方に移動して、吸着された部品Eを基板Pに実装可能である。
【0030】
また、
図4に示すように、サーボモータ43(X軸モータ41bおよびY軸モータ42b)は、たとえばPID制御によるフィードバック制御により駆動されるように構成されている。具体的には、サーボモータ43の位置検出器であるエンコーダ44は、サーボモータ43の位置情報を、サーボモータ43の駆動制御を行うサーボドライバ45に送信する。サーボドライバ45は、エンコーダ44から送信されたサーボモータ43の位置情報に基づいて、サーボモータ43をたとえばPID制御によるフィードバック制御により駆動する。サーボドライバ45は、たとえば、以下に示す式(1)により、サーボモータ43をPID制御によるフィードバック制御により駆動する。サーボドライバ45には、K
p、K
i、K
dなどの制御ゲイン46が設定されている。
U(s)=(K
p+K
i×1/s+K
ds)×E(s) ・・・(1)
ここで、
U(s):伝達関数(制御入力)
K
p:比例速度制御ゲイン
K
i:積分制御ゲイン
K
d:位置制御ゲイン
E(s):偏差
である。
【0031】
図1および
図2に示すように、部品撮像部5は、部品認識用のカメラである。部品撮像部5は、ヘッドユニット3の実装ヘッド31による基板Pへの部品Eの搬送中に、実装ヘッド31の吸着ノズル31aに吸着された部品Eを撮像する。部品撮像部5は、基台1の上面上に固定されており、部品Eの下側(Z2方向側)から、実装ヘッド31の吸着ノズル31aに吸着された部品Eを撮像する。部品撮像部5による部品Eの撮像画像に基づいて、制御部8は、部品Eの吸着状態(回転姿勢および実装ヘッド31に対する吸着位置)を取得(認識)する。
【0032】
基板撮像部6は、基板認識用のカメラである。基板撮像部6は、ヘッドユニット3の実装ヘッド31による基板Pへの部品Eの実装開始前に、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの上面に付された位置認識マークF(フィデューシャルマーク)を撮像する。位置認識マークFは、基板Pの位置を認識するためのマークである。基板撮像部6による位置認識マークFの撮像画像に基づいて、制御部8は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの正確な位置および姿勢を取得(認識)する。表示部7は、たとえば液晶モニタを含んでおり、情報を表示する。
【0033】
制御部8は、基板作業装置100の動作を制御する制御回路である。制御部8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)などを含んでいる。制御部8は、搬送部2、部品供給装置11、X軸モータ41bおよびY軸モータ42bなどを生産プログラムに従って制御することにより、ヘッドユニット3により基板Pに部品Eを実装させる制御を行うように構成されている。
【0034】
機械状態監視部9は、基板作業装置100における軸部4の摩耗劣化の状態を監視する。機械状態監視部9は、軸部4の摩耗劣化の状態を監視するためのセンサ91と、センサ91から送信された信号を処理する信号処理部92とを含んでいる。センサ91は、たとえば、音センサ、温度センサ、振動センサ、ひずみセンサなどのセンサを含んでいる。センサ91は、たとえば、軸部4の音の検知結果、軸部4の温度の検知結果、軸部4の振動の検知結果、軸部4のひずみの検知結果などを信号処理部92に送信する。信号処理部92は、マイクロコンピュータなどのプロセッサを含んでおり、センサ91から送信された信号に基づいて、軸部4の異常を判断する処理を行う。また、信号処理部92は、軸部4の異常の判断結果に応じた信号を制御部8に送信する。
【0035】
(軸部の摩耗劣化時の制御に関する構成)
ここで、軸部4のボールねじ軸41aやガイドレール42aでは、ヘッドユニット3の移動に伴って摺動が発生するために摩耗劣化が発生する。また、軸部4のボールねじ軸41aやガイドレール42aが摩耗劣化した場合、摩耗劣化した軸部4のボールねじ軸41aやガイドレール42aに適した値にサーボモータ43(X軸モータ41bおよびY軸モータ42b)の制御ゲイン46が設定されていないと、
図5に示すように、発振が発生するために、サーボモータ43に異音や振動が発生する。
【0036】
そこで、本実施形態では、制御部8は、軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定する制御を行うように構成されている。
図6に示すように、軸部4の摩耗劣化に関する情報は、複数種類(4種類)の軸部4の摩耗劣化に関する情報を含んでいる。具体的には、軸部4の摩耗劣化に関する情報は、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報、サーボモータ43のアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部9からの信号に関する情報を含んでいる。サーボモータ43の実効負荷率に関する情報は、サーボモータ43の実効負荷率の情報を含んでいる。サーボモータ43のアラームの発生頻度に関する情報は、過負荷および過速度によるサーボモータ43のアラームの発生頻度の情報を含んでいる。サーボモータ43の累積移動距離に関する情報は、サーボモータ43の累積移動距離の情報を含んでいる。機械状態監視部9からの信号に関する情報は、機械状態監視部9からの信号の値(デジタル値)の情報を含んでいる。
【0037】
まず、制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態を判断する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々について、軸部4の摩耗劣化の状態を判断する制御を行うように構成されている。この際、制御部8は、予め決められたしきい値に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態を段階的に判断する制御を行うように構成されている。制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々による軸部4の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい軸部4の摩耗劣化の状態を、現在の軸部4の摩耗劣化の状態であると判断する制御を行うように構成されている。
【0038】
図6に示す例では、制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々について、軸部4の摩耗劣化の状態を4段階で判断している。4段階の軸部4の摩耗劣化の状態は、摩耗劣化「なし」の状態と、摩耗劣化「小」の状態と、摩耗劣化「中」の状態と、摩耗劣化「大」の状態とを含んでいる。なお、摩耗劣化「なし」の状態とは、摩耗劣化が全くない状態だけでなく、摩耗劣化があったとしても無視できるほどに小さい状態を含んでいる。
【0039】
図6に示す例では、制御部8は、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態が、摩耗劣化「小」の状態であると判断している。また、制御部8は、サーボモータ43のアラームの発生頻度に関する情報に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態が、摩耗劣化「なし」の状態であると判断している。また、制御部8は、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態が、摩耗劣化「中」の状態であると判断している。また、制御部8は、機械状態監視部9からの信号に関する情報に基づいて、軸部4の摩耗劣化の状態が、摩耗劣化「なし」の状態であると判断している。この場合、制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々による軸部4の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい軸部4の摩耗劣化の状態である、摩耗劣化「中」の状態を、現在の軸部4の摩耗劣化の状態であると判断する。
【0040】
そして、
図7(A)(B)に示すように、制御部8は、軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて判断された軸部4の摩耗劣化の状態に応じて、値が徐々に小さくなるように、サーボモータ43の制御ゲイン46を段階的に設定する制御を行うように構成されている。この際、制御部8は、複数種類の軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々による軸部4の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい軸部4の摩耗劣化の状態に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定する制御を行うように構成されている。また、制御部8は、サーボモータ43の制御ゲイン46である位置制御ゲインK
dおよび速度制御ゲインK
pの2つの制御ゲインを設定する制御を行うように構成されている。なお、上記した軸部4の摩耗劣化の状態の判断と、制御ゲイン46の設定とは、X軸モータ41bとY軸モータ42bとの各々について個別に行われる。
【0041】
ここで、上記のように、軸部4の摩耗劣化に応じてサーボモータ43の制御ゲイン46を変更した場合、制御ゲイン46の変更に起因してサーボモータ43の応答性が変化するため、応答性が変化したサーボモータ43により駆動される軸部4の動特性が変化する。その結果、
図3(A)に示す吸着動作C、および、
図3(B)に示す実装動作Dを実装ヘッド31が行う際、単に通常時の下降開始タイミングT(
図3参照)において実装ヘッド31を下降させるだけでは、実装ヘッド31を目標位置(実装位置B2または吸着位置B1)に正確に下降させることができない。
【0042】
そこで、本実施形態では、制御部8は、軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定するとともに、設定されたサーボモータ43の制御ゲイン46に対応するように、
図3(A)に示す吸着動作Cを行う際、または、
図3(B)に示す実装動作Dを行う際の、実装ヘッド31の下降開始タイミングTを設定する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部8は、軸部4の摩耗劣化の状態に応じて、
図3(A)に示す吸着動作Cを行う際、または、
図3(B)に示す実装動作Dを行う際の、実装ヘッド31の下降開始タイミングTを段階的に設定する制御を行うように構成されている。実装ヘッド31の下降開始タイミングTの設定は、通常時(軸部4の摩耗劣化がない状態)の実装ヘッド31の下降開始タイミングTに予め決められた遅延時間をタイマにより設定することにより行われる。また、実装ヘッド31の下降開始タイミングTの遅延時間の設定は、制御ゲイン46の設定と同様に、X軸モータ41bとY軸モータ42bとの各々について個別に行われる。
【0043】
ここで、
図8を参照して、実装ヘッド31の下降開始タイミングTについて説明する。
図8に示すように、基板作業装置100では、X方向とY方向との両方において、実装ヘッド31の下降開始可能位置が設定されている。また、実装ヘッド31の下降開始タイミングTは、実装ヘッド31が、X方向の下降開始可能位置と、Y方向の下降開始可能位置との両方を通過したタイミングとして設定されている。すなわち、実装ヘッド31の下降開始タイミングは、実装ヘッド31が、X方向の下降開始可能位置と、Y方向の下降開始可能位置とのうち、いずれか遅い方を通過したタイミングとして設定されている。この点は、X軸モータ41bとY軸モータ42bとの各々について(X方向とY方向との各々について)、実装ヘッド31の下降開始タイミングTの遅延時間の設定が行われた場合も同様である。すなわち、遅延時間が設定された場合、実装ヘッド31の下降開始タイミングTは、実装ヘッド31が、遅延時間が設定されたX方向の下降開始可能位置と、遅延時間が設定されたY方向の下降開始可能位置とのうち、いずれか遅い方を通過したタイミングとして設定される。
【0044】
また、本実施形態では、
図9に示すように、制御部8は、軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて判断された軸部4の摩耗劣化の状態を、ユーザに通知するユーザ通知部81(
図2参照)を含んでいる。制御部8は、各種のプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、ユーザ通知部81として機能する。すなわち、
図2では、ユーザ通知部81は、ソフトウェア的な機能ブロックとして図示されている。制御部8は、ユーザ通知部81により、軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて判断された軸部4の摩耗劣化の状態を、ユーザに通知する制御を行うように構成されている。制御部8は、ユーザ通知部81を用いて、たとえば、表示部7に表示することにより、軸部4の摩耗劣化の状態を、ユーザに通知する制御を行う。なお、軸部4の摩耗劣化の状態の通知は、軸部4の摩耗劣化の程度によらずに行われてもよい。すなわち、
図6に示す例であれば、摩耗劣化「なし」の状態、摩耗劣化「小」の状態、摩耗劣化「中」の状態、および、摩耗劣化「大」の状態のいずれの状態であっても、軸部4の摩耗劣化の状態の通知が行われてもよい。あるいは、軸部4の摩耗劣化の状態の通知は、軸部4の摩耗劣化の程度が予め決められた程度以上の場合に行われてもよい。たとえば、
図6に示す例であれば、摩耗劣化「なし」の状態の場合、軸部4の摩耗劣化の状態の通知が行われず、摩耗劣化「小」の状態、摩耗劣化「中」の状態、および、摩耗劣化「大」の状態の場合、摩耗劣化の状態の通知が行われてもよい。
【0045】
(制御ゲイン設定処理)
次に、
図10を参照して、本実施形態の基板作業装置100による制御ゲイン設定処理をフローチャートに基づいて説明する。フローチャートの各処理は、制御部8により行われる。また、制御ゲイン設定処理は、たとえば、基板Pの生産開始時に行われる。また、基板Pの生産開始時に行う場合、制御ゲイン設定処理は、最初の基板Pの取り込み待ちの間に行われる。
【0046】
図10に示すように、まず、ステップS1において、軸部4の摩耗劣化に関する情報の取得が行われる。すなわち、ステップS1では、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報、サーボモータ43のアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部9からの信号に関する情報の4種類の情報の取得が行われる。
【0047】
そして、ステップS2において、軸部4の摩耗劣化の状態の判断が行われる。すなわち、ステップS2では、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報、サーボモータ43のアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部9からの信号に関する情報の各々について、軸部4の摩耗劣化の状態の判断が行われる。
【0048】
そして、ステップS3において、サーボモータ43の制御ゲイン46の設定と、実装ヘッド31の下降開始タイミングTの設定とが行われる。
【0049】
そして、ステップS4において、軸部4の摩耗劣化の状態のユーザへの通知が行われる。その後、制御ゲイン設定処理が終了される。なお、ステップS3およびS4の処理は、順番が逆であってもよいし、互いに並行して行われてもよい。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定する制御を行う制御部8を設ける。これにより、被駆動部である軸部4が摩耗劣化した場合、摩耗劣化した被駆動部である軸部4に適した値にサーボモータ43の制御ゲイン46を設定することができるので、制御ゲイン46が摩耗劣化した被駆動部である軸部4に適していないことに起因してサーボモータ43に異音や振動が発生することを抑制することができる。その結果、被駆動部である軸部4が摩耗劣化したことに起因してサーボモータ43に異音や振動が発生することを抑制することができる。また、サーボモータ43の制御ゲイン46を制御部8により設定することができるので、サーボモータ43の制御ゲイン46を作業者が手動により設定する必要がなく、被駆動部である軸部4の摩耗劣化時のサーボモータ43の制御ゲイン46の作業者による設定の手間を省くことができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づく被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態に応じて、サーボモータ43の制御ゲイン46を段階的に設定する制御を行うように構成する。これにより、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態に応じて摩耗劣化した被駆動部である軸部4により適した値にサーボモータ43の制御ゲイン46を設定することができるので、制御ゲイン46が摩耗劣化した被駆動部である軸部4に適していないことに起因してサーボモータ43に異音や振動が発生することをより抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、複数種類の被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態を判断する制御を行うように構成する。これにより、1つの種類の被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態を判断する場合に比べて、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態をより精度良く判断することができる。その結果、精度良く判断された被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態に応じて、摩耗劣化した被駆動部である軸部4により一層適した値にサーボモータ43の制御ゲイン46を設定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、複数種類の被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定する制御を行うように構成する。これにより、複数種類の被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態を簡単かつ精度良く判断することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報を、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報、サーボモータ43のアラームの頻度に関する情報、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部9からの信号に関する情報を含むように構成する。これにより、サーボモータ43の実効負荷率に関する情報、サーボモータ43のアラームの頻度に関する情報、サーボモータ43の累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部9からの信号に関する情報を含む摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を容易に設定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、基板作業装置100を、基板Pに部品Eを実装する実装ヘッド31を備えるように構成する。また、被駆動部を、実装ヘッド31を水平方向に移動させるための軸部4であるように構成する。また、制御部8を、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定する制御を行うように構成する。これにより、被駆動部が、実装ヘッド31の高速移動が要求されるために摩耗劣化が発生しやすい軸部4である場合に、制御ゲイン46が摩耗劣化した被駆動部である軸部4に適していないことに起因してサーボモータ43に異音や振動が発生することを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、実装ヘッド31を、基板Pに部品Eを実装する場合、被駆動部である軸部4により水平方向に移動されつつ、基板Pにおける部品Eの実装位置B2に向かって下降される第1動作D(
図3(B)に示す動作)、および、部品供給装置11から部品Eを吸着する場合、被駆動部である軸部4により水平方向に移動されつつ、部品供給装置11における部品Eの吸着位置B1に向かって下降される第2動作C(
図3(A)に示す動作)を行うように構成する。また、制御部8を、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータ43の制御ゲイン46を設定するとともに、設定されたサーボモータ43の制御ゲイン46に対応するように、第1動作Dを行う際、または、第2動作Cを行う際の、実装ヘッド31の下降開始タイミングTを設定する制御を行うように構成する。これにより、変更された制御ゲイン46に適したタイミングに下降開始タイミングTを設定することができる。その結果、制御ゲイン46の変更に起因してサーボモータ43の応答性が変化した場合にも、実装ヘッド31を目標位置(実装位置B2または吸着位置B1)に正確に下降させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、被駆動部である軸部4の摩耗劣化に関する情報に基づく被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態をユーザに通知するユーザ通知部81を含むように構成する。これにより、ユーザが被駆動部である軸部4の摩耗劣化の状態を確認することができる。その結果、被駆動部である軸部4の摩耗劣化の程度が過度に大きくなる前に、被駆動部である軸部4の保守点検を行ったり、基板作業装置100の買い替えや被駆動部である軸部4の部品の買い替えなどの買い替え計画を立てたりすることができる。
【0059】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0060】
たとえば、上記実施形態では、部品実装装置である基板作業装置に本発明が適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、摩耗劣化が発生する被駆動部を備える基板作業装置であれば、部品実装装置以外の基板作業装置に適用されてもよい。たとえば、本発明は、実装ラインを構成する印刷装置、塗布装置、検査装置などの基板作業装置に適用されてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、サーボモータにより駆動される被駆動部が、実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、サーボモータにより駆動される被駆動部が、実装ヘッドを水平方向に移動させるための軸部以外であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、X軸モータが、回転モータであり、Y軸モータが、リニアモータである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X軸モータが、リニアモータであってもよいし、Y軸モータが、回転モータであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態に応じて、サーボモータの制御ゲインが段階的に設定される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部の摩耗劣化の状態に応じて、サーボモータの制御ゲインが必ずしも段階的に設定されなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報が、サーボモータの実効負荷率に関する情報、サーボモータのアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報が、サーボモータの実効負荷率に関する情報、サーボモータのアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報のうちの一部のみを含んでいてもよい。また、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報が、サーボモータの実効負荷率に関する情報、サーボモータのアラームの発生頻度に関する情報、サーボモータの累積移動距離に関する情報、および、機械状態監視部からの信号に関する情報以外の情報を含んでいてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、4種類の被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態が判断される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部の摩耗劣化の状態が判断されてもよいし、4種類以外の複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、被駆動部の摩耗劣化の状態が判断されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、複数種類の被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態のうち、最も摩耗劣化の程度が大きい被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態に基づいて、サーボモータの制御ゲインが設定される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数種類の被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態の組み合わせに基づいて、サーボモータの制御ゲインが設定されてもよい。この場合、たとえば、複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部の摩耗劣化の状態の平均の状態に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定することができる。また、たとえば、複数種類の被駆動部の摩耗劣化に関する情報の各々による被駆動部の摩耗劣化の状態のうち、最も数が多い状態に基づいて、サーボモータの制御ゲインを設定することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、実装ヘッドが、
図3(A)に示す動作と、
図3(B)に示す動作との両方を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、実装ヘッドが、
図3(A)に示す動作と、
図3(B)に示す動作とのうちのいずれか一方のみを行うように構成されていてもよい。また、実装ヘッドが、
図3(A)に示す動作と、
図3(B)に示す動作との両方を行わないように構成されていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインと、実装ヘッドの下降開始タイミングとが設定される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、サーボモータの制御ゲインが設定されれば、必ずしも被駆動部である軸部の摩耗劣化に関する情報に基づいて、実装ヘッドの下降開始タイミングが設定されなくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態が、ユーザに通知される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部である軸部の摩耗劣化の状態が、必ずしもユーザに通知されなくてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0071】
4 軸部(被駆動部)
8 制御部
9 機械状態監視部
11 部品供給装置
31 実装ヘッド
41b X軸モータ(サーボモータ)
42b Y軸モータ(サーボモータ)
43 サーボモータ
46 制御ゲイン
81 ユーザ通知部
100 基板作業装置
B1 吸着位置
B2 実装位置
C 吸着動作(第2動作)
D 実装動作(第1動作)
E 部品
P 基板