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▶ エバラ食品工業株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】液体調味料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230705BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20230705BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L7/109 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019050223
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020150804
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成30年12月9日「エバラ食品 商品のご案内 SPRING&SUMMER PRODUCT LINEUP 2019」エバラ食品工業株式会社 2.平成31年1月11日「https://www.ebarafoods.com/company/20190111_petit_udon.pdf」 3.平成31年1月17日~同年同月18日「株式会社日本アクセス春季フードコンベンション2019」 4.平成31年1月17日~同年同月18日「加藤産業株式会社第42回2019春&夏の新製品発表会」 5.平成31年1月22日「2019年国分グループ首都圏春季新商品試食・試飲勉強会」 6.平成31年1月23日~同年同月24日「株式会社日本アクセス春季フードコンベンション2019」 7.平成31年1月23日~同年同月24日「伊藤忠食品株式会社主催東海展示会」 8.平成31年1月24日~同年同月25日「旭食品フーデム2019」 9.平成31年1月29日~同年同月30日「日本ドラッグチェーン会平成31年第101回下期展示商品約定会」 10.平成31年2月6日「2019年2月新商品メディア説明会」 11.平成31年2月8日「https://www.ebarafoods.com/products/detail/PUYY88.html」 12.平成31年2月13日~同年同月15日「第53回スーパーマーケット・トレードショー2019」 13.平成31年2月13日~同年同月14日「ユアサ・フナショク株式会社2019春のフードフェア」 14.平成31年2月21日「2019オール日本スーパーマーケット協会春期商品展示会」 15.平成31年3月13日~同年同月15日「加藤産業株式会社第42回2019春&夏の新製品発表会」
(73)【特許権者】
【識別番号】301032517
【氏名又は名称】エバラ食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】秦 真以子
(72)【発明者】
【氏名】駒野 雅嘉
【審査官】正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-120074(JP,A)
【文献】特開2005-040010(JP,A)
【文献】特開2006-042806(JP,A)
【文献】特開2017-018002(JP,A)
【文献】特開平11-178550(JP,A)
【文献】特開2013-172648(JP,A)
【文献】特開平09-009910(JP,A)
【文献】特開2005-073614(JP,A)
【文献】特開平10-304852(JP,A)
【文献】特開2004-154028(JP,A)
【文献】特開2010-284160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)食用油脂を5~25質量%
b)醤油を5~15質量%
c)畜肉エキスを0.3~1.0質量%
を含む液体調味料の製造方法であって、
少なくとも前記a)、b)、c)を混合した状態で50℃~105℃に達温後5~15分間温度を保持する条件で間接加熱することを特徴とする、加熱調理した麺類の調味に用いる液体調味料の製造方法
【請求項2】
前記a)、b)、c)の合計量が液体調味料全体に対して10.3~40質量%である請求項1に記載の液体調味料の製造方法
【請求項3】
前記食用油脂が、10~20質量%配合されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体調味料の製造方法
【請求項4】
前記食用油脂が、動物性油脂、及び/又は、植物性油脂であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法
【請求項5】
前記食用油脂は、動物性油脂:植物性油脂の比率が1:10~1:110であることを特徴とする、請求項4に記載の液体調味料の製造方法
【請求項6】
前記醤油が、7.5~12.5質量%配合されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法
【請求項7】
前記畜肉エキスは、畜肉の熱水抽出又は酵素分解による抽出液を濃縮又は乾燥したものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味対象に添加後に加熱しなくてもロースト感が付与できる調味料の製造方法、とりわけ、加熱調理した麺類に絡めるだけで、あたかも炒めたような風味を呈する調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭において、家族が別々に食事を摂る、いわゆる「個食化」が進展しているほか、人口動態の変化に伴い、一人暮らしの割合も増加している。こうした傾向に伴い、一人用の調理に適した小容量の調味料が広く支持されている。そうした調味料には粉末状、固形状、ペースト状、液状ストレートタイプ、液状高濃度タイプなど種々の性状で流通し販売されており、その調理法も希釈して加熱するだけ、或いは混ぜるだけなど簡便なものが求められている。例えば本願出願人は非特許文献1に記載の液状タイプの調味料の提供を行っている。
【0003】
一方で、調理法として簡便でありつつも本格的な味わいや風味を呈する方が消費者からの支持はより高い。例えば焼うどんは、ホットプレートやフライパンで醤油やだしつゆ等の調味料を添加しながら焼き調理することで独特の香ばしい風味が生じるところ、こうした香ばしい風味を、焼かずとも付与する手段が求められている。
【0004】
この点、ロースト風味を付与するため香味油や炒め野菜、例えば「ローストポークオイル」や「ローストガーリックペースト」といったものが存在するが、いずれも簡便な調理法に用いる調味料に配合しても満足の得られるロースト感を付与するには至っていない。
【0005】
特許文献1にはラーメン専門店の味を再現すべく、醤油および畜肉エキスを含む溶液を加熱後、食用油脂を添加し該溶液上に該食用油脂層を形成せしめ、2~8時間90~95℃に保持して得られることを特徴とする調味液油脂混合物が開示されている。また特許文献2には風味を改善する香味油が開示されている。具体的には、食用油脂に香味野菜と共に醤油を添加して、加熱して得られる香味油において、醤油の添加量が香味油原料全量に対する全窒素濃度として0.04~0.22w/w%となる量とした香味油が提案されている。
【0006】
しかし上述のいずれの特許文献においても、加熱調理した麺類に添加後に加熱することなくロースト感を付与し得る調味料に関しては開示が無い。特許文献1はラーメンスープへの風味添加のための調味液油脂混合物に言及するにとどまり、絡めるという簡便な調理手法だけで焼うどんのような風味を呈する旨の言及はない。特許文献2に開示の香味油は、焼き調理に当たって添加するものであり、添加した上で更に加熱することが必要である。また高温での加熱を行う仕様となっており、焦げが生じるなど均一充填を行うにあたって障害が生じることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-42806
【文献】特開2016-41044
【非特許文献】
【0008】
【文献】「エバラ食品工業株式会社Webサイト」[2019年1月30日検索]<URL:https://www.ebarafoods.com/sp/petit/about/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、調味対象に添加後に加熱しなくてもロースト感が付与できる調味料の製造方法、とりわけ、加熱調理した麺類に絡めるだけで、あたかも炒めたような風味を呈する調味料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者らは鋭意検討を行った結果、以下に述べる構成を有する製造方法により得られる調味料は、加熱調理した麺類にそのままかけて和えるだけであたかも炒めたような風味を呈することを知見するに至った。
【0011】
すなわち本発明にかかる液体調味料の製造方法は、以下に示す特徴を有する。
【0012】
a)食用油脂を5~25質量%、b)醤油を5~15質量%、c)畜肉エキスを0.3~1.0質量%含む液体調味料の製造方法であって、少なくとも前記a)、b)、c)を混合した状態で50℃~105℃に達温後5~15分間温度を保持する条件で間接加熱することを特徴とする、加熱調理した麺類の調味に用いる液体調味料の製造方法
【0013】
また、a)、b)、c)の合計量が液体調味料全体に対して10.3~40質量%である、加熱調理した麺類の調味に用いる液体調味料の製造方法
【0014】
食用油脂は10~20質量%配合されることが好ましい。食用油脂は、動物性油脂、及び/又は、植物性油脂であることが好ましい。なお食用油脂の構成として、動物性油脂:植物性油脂の比率が1:10~1:110であることを特徴とすることもできる。醤油が、7.5~12.5質量%配合されることが好ましい。畜肉エキスは、畜肉の熱水抽出又は酵素分解による抽出液を濃縮又は乾燥したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱調理した麺類に添加後に加熱することなく和えるだけで炒め調理をしたようなロースト感を付与し得る液体調味料を提供することができる。
【0016】
加熱調理した麺類とは小麦粉等の穀粉類を主原料として製めん、成形した後「ゆで」、「蒸し」、「お湯を注ぐ」、「お湯でほぐす」、「電子レンジ解凍」等、「焼く」「炒める」以外の加熱工程を経たものであって、うどん、そば、中華麺、マカロニ類、スパゲッティ類、米粉めん等を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における食用油脂は、動物性または植物性または、これらを複数混合して使用することも可能である。食用油脂の種類としては、牛脂、鶏脂、豚脂等の動物性油脂、または、これらの動物性油脂を加工、抽出等したもの、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、ココナッツ油、クルミ油、及びそれらのサラダ油等の植物性油脂から1又は複数の組み合わせを採用し得る。
【0018】
本発明に係る液体調味料は、食用油脂が5~25質量%、より好ましくは10~20質量%配合されている。食用油脂が5質量%に満たないと、十分なコクが得られず、結果炒めたような風味が得られない。また25質量%を超えると過剰な油分により香ばしさが減殺されてしまう。
【0019】
その際、植物性油脂のみでも、または動物性油脂のみでも醤油と畜肉エキスの香ばしさを感じることができるが、動物性油脂と植物性油脂の組み合わせとすることにより、まろやかさが加わり優れたロースト感が実現され得る。具体的には、動物性油脂:植物性油脂が、1:10~1:110であることにより、よりしっかりとしたロースト感を付与することができる。
【0020】
また本発明に用いる醤油としては、市販されている通常の液状醤油であれば特に限定されるものではない。液状醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、たまり醤油、再仕込醤油、又はそれらの減塩タイプ、うす塩タイプ、またさらに生醤油等を用いることができる。
【0021】
本発明に係る液体調味料においては、醤油が、5~15質量%、好ましくは7.5~12.5質量%配合されている。醤油が5質量%に満たないとき、十分な香ばしさを得ることができない。一方15質量%を超えて配合すると他の配合要素とのバランスが崩れ、やはり適度な香ばしさが実現されない。
【0022】
本発明に用いる畜肉エキスは、畜肉の熱水抽出又は酵素分解による抽出液を濃縮又は乾燥したもの等をいう。畜肉エキスの種類は特に限定されるものではなく、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス等から1又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明に係る液体調味料においては、畜肉エキスが0.3~1.0質量%配合されている。0.3質量%に満たない場合、醤油等他の配合要素が際立ってしまい適度な香ばしさが実現されない。また1.0質量%を超えると旨味が前面に押し出されてしまい、バランスの取れた風味が実現されない。
【0024】
本発明係る液体調味料においては、前記の食用油脂、醤油、畜肉エキスを混合した状態で50℃~105℃まで間接加熱して達温後5分~15分温度を保持する。間接加熱とは、ジャケットを有する釜、例えばクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)等の蒸気を介して加熱することを言う。また、加熱中は、継続的に撹拌(例えば、斜軸撹拌器で20rpmの条件下)することとする。直火等で直接加熱すると加熱褐変反応が進み過ぎ、好ましいロースト風味を付与することができない。また、温度を保持する目的は、好ましいロースト感を付与する為であり、達温後の温度保持時間が5分より短いとロースト感が弱すぎてしまい、15分より長いとロースト感が強すぎてしまう。
【0025】
本発明に係る液体調味料においては、食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量が液体調味料全体に対して好ましくは、5~40質量%のとき、より好ましくは10.3~40質量%のとき、よりさらに好ましくは、15~30質量%のときに十分なロースト感、またはバランスの取れた風味が得られる。10.3質量%とは、食用油脂、醤油、畜肉エキスそれぞれの原材料を調味料全体に対して配合した量[3-3][3-4][3-5]から評価した重量である。5質量%に満たない場合、十分なロースト感、またバランスの取れた風味が得られない。また逆に40質量%を超えると調味料全体のバランスが崩れてしまい、却ってロースト感もコクも発揮されない。
【0026】
本発明に係る液体調味料においては、調味料として使用されている素材、例えば蔗糖・果糖ぶどう糖液糖などの糖類、食塩、みりん・清酒などやオイスターソースなどの調味類、加工でん粉・ガム質などの増粘剤、カラメル、着色料、香辛料等を適宜混合して液体調味料とすることができる。
【実施例
【0027】
以下に、本発明の実施例を示す。但し、本発明は以下の実施例に開示された範囲に限定されるものではない。
【0028】
[1]各構成原料の種類に関する検証
[1-1]ロースト感の由来に関する検証
ロースト感(香ばしさ)が何に由来するものかを確認すべく検証を行った。表1記載の各原料、大豆油(昭和産業株式会社)、ローストポークオイル(横関油脂工業株式会社)、ポークオイル(横関油脂工業株式会社)、ローストガーリックペースト(ファインフーズ株式会社)、すりにんにく(ヤスマ株式会社)、たまり醤油(正田醤油株式会社)、濃口醤油(正田醤油株式会社)、チキンエキス(日本ピュアフード株式会社)を混合し、試験例1、試験例3、試験例5についてはクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、95℃達温後15分保持の条件で加熱を行い、ロースト感について3名のパネルによる官能評価を行った。試験例2、試験例4、試験例6はそれぞれ試験例1、試験例3、試験例5の非加熱品である。ロースト感の評価法は次の通りである。◎:ロースト感が感じられ、非常に液体調味料全体のバランスが取れている。〇:ロースト感が感じられ、液体調味料のバランスが取れている。×:ロースト感が感じられない、または、ロースト感を感じられるが、液体調味料のバランスが取れていない。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1からも明らかなように、適切な温度での加熱はロースト感を生じさせるために必要である。一方、たまり醤油は必須ではなく、濃口醤油でもロースト感を付与することができた。また、適切な温度での加熱は、ローストした香味油や香味野菜を使用せずともロースト感を付与することができた。
【0031】
[1-2]畜肉エキスの種類に関する検討
ロースト感を発揮する畜肉エキスの種類に関する検討を行った。使用した畜肉エキスは、チキンエキス(日本ピュアフード株式会社)、ビーフエキス(日本ピュアフード株式会社)、ポークエキス(日本ピュアフード株式会社)であり、各畜肉エキスの窒素量と食塩量は、表2の通りである。また、その他の原料は、[1-1]と同様のものを使用した。各試料の畜肉エキス由来の窒素量と食塩量を合わせた表3記載のレシピに従い、各原料を混合し、クッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、95℃達温後15分保持の条件で加熱を行い、ロースト感について3名のパネルによる官能評価を行った。ロースト感の評価法は次の通りである。◎:ロースト感が感じられ、非常に液体調味料全体のバランスが取れている。〇:ロースト感が感じられ、液体調味料のバランスが取れている。×:ロースト感が感じられない、または、ロースト感を感じられるが、液体調味料のバランスが取れていない。その結果を表3に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表3から明らかなように、ローストした香味油や香味野菜の(ローストポークオイル、ローストガーリックペースト)存在下にあっても、畜肉エキスを含むことによってロースト感の差が生じる。また、畜肉エキスの種類はチキンに限定されるものではなく、ビーフエキスを添加した場合、より調理感を感じられた。
【0035】
[1-3]食用油脂の種類に関する検討
次に、ロースト感を生じるのに適した食用油脂の種類を検討した。表4記載の原料、鶏油(DSP五協フード&ケミカル株式会社)、ビーフオイル(横関油脂株式会社)、その他の原料は、[1‐1]と同様のものを使用した。各原料を混合し、クッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、95℃達温後15分保持の条件で加熱を行い、ロースト感について3名のパネルによる官能評価を行った。ロースト感の評価法は次の通りである。◎:ロースト感が感じられ、非常に液体調味料全体のバランスが取れている。〇:ロースト感が感じられ、液体調味料のバランスが取れている。×:ロースト感が感じられない、または、ロースト感を感じられるが、液体調味料のバランスが取れていない。その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
表4記載の各試料のうち、試験例11の食用油脂は大豆油とポークオイルの併用、試験例12は大豆油のみ、試験例13はポークオイルのみ、試験例14は鶏油のみ、試験例15はビーフオイルのみを配合したものである。いずれにおいても適度なロースト感を生じた。試験例11のコメントに示した通り、植物性油脂と動物性油脂を組み合わせることにより、まろやかさが加わるが、植物性油脂のみでも醤油と畜肉エキスの香ばしさを感じることができた。一方、動物性油脂のみでも醤油と畜肉エキスの香ばしさを感じることができた。
【0038】
[2]配合及び製造工程
以上を踏まえ、以下の表5に示す割合で各原料を配合し、後述の検証を行うこととした。加熱条件としては、表5の原料群b記載の各原料をクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、後述の各条件にて間接加熱を行った。その後原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。
【0039】
【表5】
【0040】
[3]実施例
[3-1]加熱温度に関する検証
表5記載のうち原料群b記載の各原料をクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、間接加熱にて50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、105℃、110℃に達温後、15分間加熱保持した。その後原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。得られたものを、10人のパネルにて官能評価を実施した。評価方法としては、先述した[1‐1]~[1-3]の試験でロースト感が十分に確認できた加熱達温温度95℃に近似した温度である100℃を基準として、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。評価結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、100℃加熱品を100%とした時の各点数を◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下で表記した。ロースト感、コク(旨味)、風味のバランスの平均点を総合評価とした。その結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
上記に示すように、間接加熱での加熱温度が50℃に満たない場合、ロースト感や旨みといった風味を十分に発揮することができなかった。一方105℃を超過した場合、焦げ臭によりロースト感が損なわれたものとなった。総合評価が許容範囲にある50~105℃の中でも、60~70℃にかけて、また90℃から100℃にかけてのものがロースト感も適度に生じ、風味のバランスもとれていた。
【0043】
[3-2]加熱保持時間の違いによる検証
[3-1]の評価結果から、食用油脂、醤油、畜肉エキスの加熱の温度条件は、間接加熱で、50~105℃に達温後、特に90~100℃に達温後、温度を保持することで、好ましいロースト感が実現できることがわかった。そこで、最も好ましいロースト感を実現するための95℃の達温後の温度保持時間を評価した。表5記載のうち原料群b記載の各原料をクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、間接加熱にて95℃に達温後、表7記載通りの時間で保持し、その後原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。5人のパネルにて官能評価を実施した。評価方法は、◎:ロースト感が感じられ、非常に液体調味料全体のバランスが取れている。〇:ロースト感が感じられ、液体調味料のバランスが取れている。×:ロースト感が感じられない、または、ロースト感を感じられるが、液体調味料のバランスが取れていない。その結果を表7に示す。
【0044】
【表7】
【0045】
表7の通り、95℃達温後の保持時間は、5~15分において、好ましくは、10~15分で、所望のロースト感を付与することができた。
【0046】
[3-3]食用油脂の濃度の違いによる評価
表8記載の通り、表5記載の配合の原料群bの食用油脂(大豆油)を0%から30%の間、5%刻みで設計した試料をその他の原料群b記載の各原料とともにクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、間接加熱にて95℃達温後15分保持の加熱条件で加熱した後、原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工澱でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。得られたものを10人のパネルにて官能評価を実施した。なお、全体量の調整は、水で行った。評価方法としては、表5記載の配合を実施例13として基準とし、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。「「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下で表記した。その結果を表8に示す。
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
上記のとおり、食用油脂(大豆油)が10%より少ないとロースト感が著しく変化し、コク(旨味)や風味のバランスにも変化が生じたのに対し、20%より多くなるにつれロースト感およびコク(旨味)の変化が大きくなったが、いずれにしても5%から25%の間では許容し得る調理感が実現された。特に10%から20%の間では適切なロースト感が実現された。
【0050】
[3-4]醤油の濃度の違いによる評価
表9記載の通り、表5記載の原料群bの濃口醤油の濃度を0%から、20%の間2.5%刻みで設計した試料をその他の原料群b記載の各原料とともにクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、間接加熱にて95℃達温後15分保持の加熱条件で加熱した後、原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。得られたものを10人のパネルにて官能評価を実施した。なお、全体量の調整は、水で行った。評価方法は、表5記載の配合を実施例1として基準とし、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。「〇」、「△」、「×」の3点評価で、基準の10%配合品に対して評価した結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下として表記した。その結果を表11に示す。
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
液体調味料全体に対しての醤油の濃度が、5~15質量%のとき、適切なロースト感が実現された。特に、7.5%~12.5%のとき、好ましいロースト感が実現された。
【0054】
[3-5]畜肉エキスの濃度の違いによる評価
表11記載の通り、表5記載の原料群bの畜肉エキス(チキンエキス)の濃度を0%、0.3%、0.6%、1.0%、1.2%にそれぞれ調整し、その他の原料群b記載の各原料とともにクッキングミキサー(OAM)(株式会社カジワラ)で継続攪拌し(斜軸攪拌:20rpm)、間接加熱にて95℃達温後15分保持の加熱条件で加熱した後、原料群aを投入し、適切に分散させるため、また、加工でん粉を膨潤させ、粘度を付ける目的で、継続撹拌し、95℃達温後5分間保持の条件で加熱を行った。得られたものを10人のパネルにて官能評価を実施した。なお、全体量の調整は、水で行った。評価方法は、表5記載の配合を実施例1として基準とし、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。「〇」、「△」、「×」の3点評価で、基準の0.6%配合品に対して評価した結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下として表記した。その結果を表12に示す。
【0055】
【表12】
【0056】
【表13】
【0057】
畜肉エキスの濃度が1.2%では、ロースト感よりも醤油かどとコクが強く感じられ、風味のバランスが悪い結果になった。畜肉エキスの濃度は、0.3%~1.0%で好ましいロースト感が実現された。
【0058】
[3-6]食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量の違いによる評価
以上の評価を踏まえ、個々の配合要素のみでなく、ロースト感に強い影響を与える食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量に基づく検証を行った。配合は、表13の通りである。表5における大豆油、濃口醤油、チキンエキスの合計量である24.6%に近似する25%を基準とし、同じ配合割合を保ちつつ液体調味料全体に対しての合計量を0%、5%、15%、25%、30%、40%、50%と調整し、それぞれについて10人のパネルにて官能評価を実施した。なお、全体量の調整は、水で行った。評価方法は、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。「〇」、「△」、「×」の3点評価で、基準の25%配合品に対して評価した結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下として表記した。その結果を表15に示す。
【0059】
【表14】
【0060】
【表15】
【0061】
食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量が全体に占める割合が5%~40%のとき、好ましくは15~30%のとき、適度なロースト感を有する液体調味料が実現された。
【0062】
[3-7]動物性油脂と植物性油脂の比率の評価
本発明によれば、動物性油脂と植物性油脂は、併用せずともその効果を発揮することは、[1-3]食用油脂の種類に関する検討表4より明らかであるが、併用することによって、より好ましいロースト感とバランスが実現できることも明らかになったので、表5記載の配合を基準とし、表16の通り、動物性油脂と植物性油脂の混合割合を変えた試料について、3名のパネルにて官能評価を行った。評価方法は、「〇:基準と同等である」、「△:基準とやや異なる」、「×:基準と異なる」で評価した。「〇」、「△」、「×」の3点評価で、基準の25%配合品に対して評価した結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下として表記した。その結果を表17に示す。
【0063】
【表16】
【0064】
【表17】
【0065】
表17より動物性油脂:植物性油脂が1:10~1:110のとき、好ましくは、1:10~1:70加熱調理した麺類に絡めただけにもかかわらず、好適なロースト感を有する焼きうどんのような風味が実現された。
【0066】
[3-8]うどんと絡めた場合の評価
次に、本実施例に係る液体調味料を実際に加熱調理したうどんに絡めた際のロースト感、旨味、風味のバランスについて検証した。上記表13記載と同様に、表5における大豆油、濃口醤油、チキンエキスの合計量である24.6%に近似する25%を基準とし、同じ配合割合を保ちつつ液体調味料全体に対しての合計量を0%、5%、15%、25%、30%、40%、50%と調整した試料をうどん180g(1玉)(テーブルマーク株式会社製の「かときち さぬきうどん 5食入り」を電子レンジで解凍した)に対して22gずつ絡めたものについて10人のパネルにて官能評価を実施した。評価方法は、「〇」、「△」、「×」の3点評価で、基準の25%配合品に対して評価した結果を「〇」=5点、「△」=3点、「×」=0点で集計し、◎:100~80%、〇:79~60%、△:59~50%、×:49%以下として表記した。結果を表18に示す。
【0067】
【表18】
【0068】
食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量が全体に占める割合が5~40%、好ましくは15~30%のとき、加熱調理した麺に絡めただけにもかかわらず、好適なロースト感を有する焼きうどんのような風味が実現された。
【0069】
[3-9]スパゲッティと絡めた場合の評価
[3-8]と同様に、本実施例に係る液体調味料22gを実際に茹でたスパゲッティ(日本製粉株式会社製「オーマイ スパゲッティ1.5mmチャック付き」)180g絡めた際のロースト感、旨味、風味のバランスについて検証した。結果を表19に示す。
【0070】
【表19】
【0071】
食用油脂、醤油、畜肉エキスの合計量が全体に占める割合が5~40%のとき、好ましくは15~30%のとき、茹でた麺に絡めただけで好適な炒め感を感じられる風味のスパゲッティとなった。