(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】フィルム包装ティシュー
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20230705BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20230705BHJP
A47K 10/20 20060101ALI20230705BHJP
A47K 10/42 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B65D83/08 B
A47K10/16 C
A47K10/20 Z
A47K10/42 B
(21)【出願番号】P 2019068914
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏彦
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-215379(JP,A)
【文献】特開2016-188092(JP,A)
【文献】特開2018-058654(JP,A)
【文献】米国特許第05316177(US,A)
【文献】特開2017-178356(JP,A)
【文献】実開昭52-076433(JP,U)
【文献】実開昭49-106735(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01072534(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 10/16
A47K 10/20
A47K 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の包装フィルムにより、ポップアップ式のティシュペーパーの束が包装されている、フィルム包装ティシューであって、
天面に環状かつ束長手方向に沿って形成された取出口形成用ミシン目を有し、
その取出口形成用ミシン目の長手方向縁部に連続又は近接して、取出口形成用ミシン目の長手方向中心において短手方向に延在する中心線と並行又は中心線より離れる方向に向かって延在し、かつ天面の縁にまで至らない2~20mmのスリット又はミシン目
が、一方の長手方向縁部あたり2~5本形成され、
前記取出口形成用ミシン目で囲まれる範囲を取り除いて形成される取出口の長手方向縁部に柔軟な可撓性の小縁片を形成可能とした、
ことを特徴とするフィルム包装ティシュー。
【請求項2】
取出口形成用ミシン目の長手方向縁部は、短手方向中央に向かって膨出する湾曲形状をなし、その湾曲する部分から取出口形成用ミシン目で囲まれる範囲より外方に向かってスリット又はミシン目が形成されている、請求項1記載のフィルム包装ティシュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のティシュペーパーを折り畳み重ねたポップアップ式の束をフィルムで包装したフィルム包装ティシューに関する。
【背景技術】
【0002】
ポップアップ式のティシュペーパーの束を収納容器に収納したティシュー製品は、収納容器が紙箱であるいわゆるボックスティシューと称される製品のほか、包装容器を樹脂製の包装フィルムとするフィルム包装ティシューがある。
【0003】
このフィルム包装ティシューは、使用後に廃棄物となる収納容器をコンパクトにすることができ、また、持ち運び性や販売単価を低減することができる利点がある。
【0004】
フィルム包装ティシューは、収納容器たる包装フィルムの天面の短手方向中央部に、長手方向に沿って、その全幅または長手方向の一部に亘る一本の直線状の取出口形成用のミシン目が形成され、使用時にこのミシン目を裂開してスリット状の取出口を形成して使用される(特許文献1)。
【0005】
そして、使用時に取出口から束の最上位のティシュペーパーの一部を露出させ、この露出部分を順次に引き出すことで、一枚ずつ使用する。
【0006】
しかし、このような直線スリット状の取出口のフィルム包装ティシューは、紙箱に比して包装フィルムの重量が軽量であるため、ティシュぺーパーを引き出す際に、包装フィルムごと持ちあがり、スムーズに引き出せないことがある。このような持ちあがりの現象は、スリット長さが天面の長手方向に比して短い場合に生じやすくなる。さらに、スリット状の取出口は、最初の一枚が取り出し難い。
【0007】
一方で、取出口をスリット状ではなく、奥行側(短手方向)にある程度の幅を有するようにダイカットして取出口を形成したものもあるが、このような製品は、取出口の開口幅が広くなるため持ちあがりの現象は生じ難くなるが、内包されるティシュぺーパーの枚数が少なくなり束の高さが低くなった際に、ティシュペーパーが取出口から一部露出せずに、内部に落ち込む現象が生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-52559号公報
【文献】特開2018-58654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、内部の束の高さが低くなっても包装容器内にティシュペーパーが落ち込みがたく、かつ、取出口からティシュペーパーを引き出す際に包装容器が持ち上がりがたく、取出口からティシュペーパーを引き出した後に、次に取出口から露出されるティシュペーパーの一部が起立した状態になりやすいフィルム包装ティシューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため手段は次のとおりである。
【0011】
その第一の手段は、
樹脂製の包装フィルムにより、ポップアップ式のティシュペーパーの束が包装されている、フィルム包装ティシューであって、
天面に環状かつ束長手方向に沿って形成された取出口形成用ミシン目を有し、
その取出口形成用ミシン目の長手方向縁部に連続又は近接して、取出口形成用ミシン目の長手方向中心において短手方向に延在する中心線と並行又は中心線より離れる方向に向かって延在し、かつ天面の縁にまで至らないスリット又はミシン目が形成されている、ことを特徴とするフィルム包装ティシューである。
【0012】
第二の手段は、
取出口形成用ミシン目の長手方向縁部は、短手方向中央に向かって膨出する湾曲形状をなし、その湾曲する部分から取出口形成用ミシン目で囲まれる範囲より外方に向かってスリット又はミシン目が形成されている、上記第一の手段に係るフィルム包装ティシューである。
【0013】
第三の手段は、
一方の縁部あたり2~5のスリット又はミシン目が形成されている、上記第一又は第二の手段に係るフィルム包装ティシューである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内部の束の高さが低くなっても包装容器内にティシュペーパーが落ち込みがたく、かつ、取出口からティシュペーパーを引き出す際に包装容器が持ち上がりがたく、取出口からティシュペーパーを引き出した後に、次に取出口から露出されるティシュペーパーの一部が起立した状態になりやすいフィルム包装ティシューが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るフィルム包装ティシューの斜視図である。
【
図2】本発明に係るティシュペーパー束を説明するための斜視図である。
【
図3】本発明に係るフィルム包装ティシューの取出口を説明するための平面図である。
【
図4】本発明に係るフィルム包装ティシューの取出口の他の形態を説明するための平面図である。
【
図5】本発明に係るフィルム包装ティシューの取出口の他の複数の形態を説明するための平面図である。
【
図6】本発明に係るフィルム包装ティシューの取出口の使用時の態様を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係るフィルム包装ティシューの製造方法例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を
図1~
図7を参照しながら説明する。
【0017】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、複数組のティシュペーパー2を折り畳み重ねてなるティシュペーパー束3が柔軟性のある樹脂製の包装フィルム4によって包装されているものである。
【0018】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1において内包されているティシュペーパー束3は、ティシュペーパー2が二つ折りされ、その折り返した内側2Aに上下に位置する他のティシュペーパー2の折り返した片2Bが位置するようにして、複数のティシュペーパー2が折り畳み積層されたものであり、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、上方に引きずられて持ち上げられるポップアップ式のティシュペーパー束3である。
【0019】
このティシュペーパー束3は、マルチスタンド式、ロータリー式の既知のインターフォルダにより製造することができる。なお、ティシュペーパー2の束3を構成する個々のティシュペーパー2は、クレープを有する2枚~3枚の薄葉紙が積層されて組とされたプライ構造を有するものである。また、このティシュペーパー2は、乾燥されたドライタイプのものであり、薬液が含浸されている所謂ウェットタイプのものではない。
【0020】
他方、この本発明に係るティシュペーパー束3は、各ティシュペーパー2の折り返し縁2Cが並ぶ一対の長手側面3Bと、折り返し縁2Cが並ばない一対の短手側面3Aとを有し、さらに短手側面3Aと長手側面3Bとに連接する一対の平面(上下面)3Cを有する略直方体形状をなしている。
【0021】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1の包装形態は、既知の包装種から選択される。例えば、三方閉じ包装、四方閉じ包装、ガセット包装、ピロー包装、キャラメル包装が例示できる。ガセット包装、ピロー包装が適し、特に、図示のガセット付きピロー包装である。特に、本発明の効果が顕著となるのは、ティシュペーパー束3におけるティシュペーパー2の折り返し縁2Cが並ばない短手側面3Aに対面する位置に、包装フィルムの重ね合わせ部分が熱融着されてなる熱融着部30が位置するガセット付きピロー包装である。
【0022】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、包装フィルム4の束3の最上位のティシュペーパー2に対面する天面10に環状かつ束長手方向3yに沿って形成された取出口形成用ミシン目5が形成されている。この取出口形成用ミシン目5を裂開することで、フィルム包装ティシュー1の天面に取出口6が形成される。本発明に係るフィルム包装ティシュー1では、ティシュペーパー束3がポップアップ式であるため、取出口6の形成により束3の最上位のティシュペーパー2を引き出すと、その直近下方に位置する次のティシュペーパーの一部が取出口6より露出される。
【0023】
本発明に係る取出口形成用ミシン目5はダイカットにより形成された環状をなし、特に、束3の短手方向3xの中央部でティシュペーパー2の折り返し縁2Cの延在方向である束3の長手方向3yに沿って細長でありかつ束3の長手方向長さL1より短い長さL2に形成されている。したがって、取出口形成用ミシン目5を裂開して、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲を取り除くことで、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲と同形状の取出口6が形成される。なお、環状に配された取出口形成用ミシン目で囲まれる範囲内に、当該範囲を取り除きやすいようにする等のため他のミシン目が配されていてもよい。
【0024】
取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲の大きさとしては、必ずしも限定されないが、概ね束3の短手方向3xに沿う方向に5~25mm、束3の長手方向3yに沿う方向に100~150mmである。取出口形成用ミシン目のカットタイ比は特に限定されない。フィルムの素材や厚みを考慮して、適宜に切剥がししやすい範囲とすることができる。
【0025】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、特徴的に、その取出口形成用ミシン目5の長手方向縁部5E,5Eに連続又は近接して、取出口形成用ミシン目5の長手方向中心において短手方向に延在する中心線Cと並行又は中心線より離れる方向に向かって延在し、かつ天面10の縁にまで至らないスリット50,50…が形成されている。スリットではなく裂開によりスリットが形成されるミシン目でもよい。スリットの場合は、取出口形成用ミシン目の長手方向縁部5Eに連続するのであれば、スリットの端は、ミシン目のカット部とタイ部のうちタイ部に連続するようにし、カット部とは連続しないようにするのがよい。このようにすると、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲を取り除くだけでスリットが形成されるとともに、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲を取り除く際に意図せずスリットが避けるおそれが小さくなる。ミシン目の場合又はスリットを近接に設けた場合には、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲を取り除く操作の際に意図せずスリットが避け難い利点がある。
【0026】
【0027】
このようにスリット等50が形成されていると、取出口形成用ミシン目5を裂開して、取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲を取り除いた状態において、取出口6の長手方向縁部6y,6yに柔軟な可撓性の小縁片6B,6Bが形成される。
【0028】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1は、このような小縁片6B,6Bが形成されるため、取出口6からティシュペーパー2を引き出す際には、小縁片6B,6B間のスリット6Aが広がって引き出し抵抗が小さくなりスムーズに引き出されるようになり、引き出し時に包装フィルム4ごと持ち上がり難くなる。それとともに、次に取出口6から引き出されて露出されるティシュペーパー2の縁部2Eが、スリット6Aに入り込んで挟持されたり、例えば、小縁片6B,6Bが逆止弁のようにティシュペーパー2に作用するなどして、特に
図5に示すように、ティシュペーパー2の縁部2E,2Eに小縁片6B,6Bがもたれかかって押持するようになり、そのティシュペーパー2の一部が起立した状態になりやすく、次に使用する際には、その起立した状態の一部が掴みやすくなるとともに、包装フィルム4内へ落ち込み難くなる。 このスリット等50の長さとしては、2~20mm、好ましくは3~10mmであり、特に好ましくは、3~6mmである。2mm未満であると小縁片6Bによる支持やスリット6Aの開きが十分ではなくティシュペーパーの引き出し抵抗の低下とティシュペーパー2の支持が十分に行われない場合がある。また、20mmを超えるとティシュペーパー2の支持が十分に行われないおそれが高まる。
【0029】
このスリット等50は、一方の縁部5Eあたり2~5本であるのが望ましい。3~6の小縁片6Bが形成され、取出口6からティシュペーパー2を引き出す際における、ティシュペーパーの複雑な形状変化に応じて、各スリット6A間が広がることができるため、よりスムーズに引き出すことができ、さらに、取出口6から引き出されて露出される次のティシュペーパー2の縁部2Eの形状に対応しやすく支持しやすくなる。5本を超える場合には、意図せず包装フィルム4が破れやすくなるおそれが高まる。上記のように2~5本のスリット等を形成するのであれば、短手方向中心に対して対称、または、間隔均等かつ放射状とするのが望ましい。ティシュペーパー2の縁部の支持が均等に行われやすくなり、ティシュペーパーの起立性が高まる。
【0030】
ここで、上記の取出口形成用ミシン目5の具体的な形状は、必ずしも限定されないが、楕円形、細長矩形、角取の細長矩形があげられる。好ましい形態としては、取出口形成用ミシン目5の長手方向縁部5E,5Eが、半円等、短手方向中央に向かって膨出する湾曲形状をなしているのがよい。
図1に示す形態は、長手方向に平行な所定間隔で離間する一対二本のミシン目5A,5Aの端部間が半円の短手方向中央に向かって膨出する湾曲形状をなす形状となっている。さらに
図3における長手方向に平行な一対二本のミシン目5A,5Aが、短手方向中央に向かって漸次膨出するような形状であってもよい。この場合、取出口6は、
図4に示す形状となる。これらのように、長手方向縁部5E,5Eが、湾曲する形状の場合は、その湾曲する部分から取出口形成用ミシン目5で囲まれる範囲より外方に向かってスリット等50が形成されているのが望ましい。
【0031】
このように、長手方向縁部5E,5Eが、短手方向中央に向かって膨出する湾曲形状をなしていると、取出口6とした際に、束3の最上位のティシュペーパー2を引き出すと、その直近下方に位置する次のティシュペーパー2の一部が開口より引き出される過程で、その引き出されるティシュペーパー2の束長手方向の各側縁部2E,2Eが、膨出形状に沿って巻き込むように移動させられやすい。その結果、取出口6から露出されるティシュペーパー2の一部は、例えば、
図6に示すように長手方向両側部2E,2Eにおいて略筒型部分が形成されやすくなり、これが柱構造となる自立性が高い形状となりやすく、起立した状態の一部が掴みやすくなるとともに、落ち込み防止性が高まる。
【0032】
ここで、本発明に係る取出口形成用ミシン目5の長手方向長さ範囲L2は、束3の長手方向長さL1の80%~90%となるのが望ましく、より好適には、84%~88%となるのが望ましい。係る範囲であれば、取出口6からティシュペーパーを引き出した後に、次に取出口6から露出されるティシュペーパー2の縁部が、取出口の長手方向縁部で支持されやすくなって落ち込み防止性が高まるとともに、取出口6からティシュペーパーを引き出す際の抵抗も過度に高まらない。
【0033】
本発明に係る包装フィルム4を構成する具体的な柔軟性のある樹脂製のフィルム材は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、塩化ビニリデンフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体の単層フィルム、または、それらのフィルムを含む適宜積層されたラミネートフィルムや、それらのフィルムにアルミ蒸着などの表面処理を施したガスバリアフィルムが例示できる。コストの観点からはポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムが好適である。フィルム材の厚さは20~60μmであるのが望ましい。スリットが開きやすくスムーズにティシュペーパーを引き出しやすく、また小縁片6Bによるティシュペーパー2の支持が好適に行われやすくなる。なお、厚みが20μm未満であると、使用時に簡単に破れてしまうという問題があり、前記厚みが60μm以上であると、フィルムが硬質となり、使用性が悪化する。なお、フィルム材の厚さの測定方法は、標準状態において、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G-1A型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値とする。具体的な測定の手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0034】
また、本発明に係るフィルム包装ティシュー1におけるティシュペーパー束3及びティシュペーパー2の物性は次のものであるのが望ましい。小縁片6Bがあってもスムーズにティシュペーパーを引き出すことができ、また小縁片6Bによるティシュペーパー2の支持が好適に行われやすい。
【0035】
ティシュペーパー束3を構成するティシュペーパー2のプライ数及び組数は、2プライ(2枚重ね)を1組として100~220組であるのが望ましい。また、ティシュペーパー束3の形状としては、高さが30~50mm、長手方向長さが、155~215mm、短手方向長さが、100~130mmであるのが望ましい。ティシュペーパー製品として十分に必要な組数とすることができるとともに、ティシュペーパー2として使用するに十分な大きさ及び組数とすることができ、また、使用によって束を構成する組数が少なくなっても極めて落ち込み難くなる。
【0036】
また、ティシュペーパー束3は、ロータリー式のインターフォルダで製造したものであるのが望ましい。ロータリー式のインターフォルダで束を製造すると、その束は、ティシュペーパーのMD方向と、束の短手方向とが一致したものとなる。すなわち、取出口から露出されるティシュペーパーの一部が起立した状態となると紙力の高いMD方向が上下方向となるため、ティシュペーパーの一部が自立した状態が維持されやすくなり、落ち込みが防止されやすくなる。
【0037】
また、本発明に係るティシュペーパー2は、保湿剤等が付与されている薬液付与タイプであってもよいが、本発明は特に保湿剤などが塗布されていない非保湿の汎用タイプのティシュペーパー2のほうが自立性が高くなりやすく望ましい。
【0038】
ティシュペーパー2の各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの坪量は、10.0~15.0g/m2であるのが望ましい。ここでの坪量は、JIS P 8124(1998)の測定方法による。ティシュペーパーとしての使用感の観点から、ティシュペーパー一組の具体的な紙厚は80~200μmの範囲であるのが望ましい。
【0039】
紙厚の測定方法は、ティシュペーパーをJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値とする。具体的な測定の手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。上記の坪量及び紙厚の範囲であれば小縁片6Bがあってもスムーズにティシュペーパーを引き出すことができ、また小縁片によるティシュペーパーの支持が好適に行われやすい。
【0040】
ティシュペーパー2の紙力は、MD方向の乾燥紙力強度が200~700cN/25mm、CD方向の乾燥紙力強度が50~300cN/25mmであるのが望ましい。なお、紙力は、抄紙時における紙力剤の添加など抄紙原料を調整することで達成できる。また、ティシュペーパーのMD方向の伸び率(引張破断伸び率)が5~20%であるのが望ましい。小縁片があってもスムーズにティシュペーパーを引き出すことができ、また小縁片によるティシュペーパーの支持が好適に行われやすい。
【0041】
また、ティシュペーパー2は、ソフトネスが0.90~1.30cN/100mmであるのが望ましい。ソフトネスは、柔らかさの指標の一つである。本発明に係るソフトネスはJIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に従って測定する。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとして測定する。測定は、1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を、cN/100mmを単位として表す。このソフトネスの範囲であれば、スムーズにティシュペーパーを引き出すことができる。
【0042】
ティシュペーパー2は、MMDが7.5~9.0であるのが望ましい。MMDは滑らかさの指標である。MMDが上記範囲であると包装フィルムとの滑り性が適度となり、このソフトネスの範囲であれば、ティシュペーパーが案内縁部によって案内されやすい。なお、MMDは、カトーテック株式会社製の摩擦感テスター KES-SE、KES-SESRU及びこれらの相当機を用いて測定される値である。MMDは、MIU(平均摩擦係数)からどれだけ変動があるかという変動の度合いであり、数値が小さいほど滑らかとされる。本発明に係る測定条件は、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させる。測定は、10回測定し、その平均値をMMDとする。なお、摩擦子は、標準付属のピアノワイヤセンサーを用いる。このピアノワイヤセンサーは、直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものである。接触面には、先端が20本のピアノ線(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されている。
【0043】
なお、ティシュペーパー2を構成する薄葉紙の原料パルプとしては、NBKP、NUKP、NOKP等の針葉樹由来のパルプとLBKP、LUKP、LOKP等広葉樹由来のパルプとを配合したものである。古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。配合割合としては、NBKP:LBKP=10:90~80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=20:80~60:40がよい。
【0044】
本発明に係るフィルム包装ティシュー1は特に
図7に示すように製造することができる。まず、マルチスタンド式やロータリー式等のインターフォルダによって、ティシュペーパー2が二つ折りされ、その折り返した内側2Aに上下に位置する他のティシュペーパー2の折り返した片2Bが位置するようにして、複数のティシュペーパー2が折り畳み積層されたポップアップ式の略直方体形状のティシュペーパー束3を形成する。
【0045】
次いで、このティシュペーパー束3をティシュペーパー2の折り返し縁2Cが並ばない短手側面3Aを前後方向にして搬送する。この搬送はベルトコンベアなどによって行なうことができる。それとともに、連続する長尺の包装フィルム14が巻かれたフィルム原反ロール40から連続包装フィルム14を繰り出し、この搬送される連続包装フィルム14にダイカットロール16によって一定間隔でティシュペーパー2の取出口形成部となる取出口形成用ミシン目5及びスリット等50を形成する。取出口形成用ミシン目5及びスリット等50の形状は、ダイカットロール周面のカッター刃のパターンを適宜に形成すればよい。なお、図示はしないが、取出口形成用ミシン目5及びスリット等50は、ダイカットロール16ではなく、連続包装フィルムの搬送をストップアンドゴーとし、ストップ時にダイカット版を押し当てて形成するようにしてもよい。
【0046】
次いで、ティシュペーパー束3の搬送方向と連続包装フィルム14の搬送方向を一致させ、ティシュペーパー束3を搬送しつつ、ティシュペーパー束3を連続包装フィルムの前記取出口形成用ミシン目5の下側に位置させて、連続包装フィルム14の縁部でティシュペーパー束3を巻き込み包みこむとともに、ティシュペーパー束3の短手側面3Aに対面する位置で熱融着処理し、この熱融着処理と同時又はその後に裁断処理して、個々の包装体とする(包装工程)。熱融着時にティシュペーパー束3の長手側面3B側にガセットを形成してガセット付きのピロー包装としてもよい。
【実施例】
【0047】
次いで、本発明に係るフィルム包装ティシューと、比較例となるフィルム包装ティシューとについて、内包されているティシュペーパーを引き出して、その取出抵抗値、フィルムの浮き、落ち込みについて試験した。なお、ティシュペーパー及び束の構成、包装フィルムによる包装形態は全て同一とし、取出口及びスリットの配置形態のみ各例において異なるようにした。取出口及びスリットの配置形態は、
参考例1は
図5(A)、実施例2は
図5(B)、実施例3は
図5(C)、実施例4は
図5(D)、実施例5は
図5(E)、実施例6は
図5(F)に示されるものとした。比較例1は、ミシン目を環状にせず直線一本としてスリット状の取出口としたものであり、比較例2は、
図5(A)においてスリットを形成しないものとした。より具体的な各例に係るフィルム包装ティシューの形態、取出口の寸法、内包されるティシュペーパー束の形状・物性、包装フィルムの物性等は、結果とともに下記表1に示す。
【0048】
取出抵抗値は、下記の(1)~(3)の手順で測定した。
【0049】
(1)取出口から露出しているティシュペーパーの一部の長手方向中央先端部を、クリップ(コクヨ株式会社製、目玉クリップ クリー17)で挟み固定する。
【0050】
(2)クリップの一方の穴に、プッシュプルゲージ(株式会社イマダ製、型番Z2-20)のフックを通し、プッシュプルゲージを垂直上方に引いて、0.4秒~0.6秒でティシューを引き出して取り出す。その取出し操作時の抵抗値の最大値を測定する。
【0051】
(3)束の最上層から1~5組目の平均値と、6~10組目の平均値をそれぞれ算出する。
【0052】
フィルムの浮きは、束を構成するティシュペーパーを引き出す操作を連続して行い、包装フィルムごと浮き上がった際の束上部からの組数を測定した。
【0053】
落ち込みは、束を構成するティシュペーパーを引き出す操作を連続して行い、引き出したティシュペーパーの次のティシュペーパーの一部が取出口から露出されず、内部に落ち込んだ際の束上部からの組数を測定した。
【0054】
【0055】
表1に示すとおり、参考例、実施例及び比較例ともに、取出口の長手方向長さ(表中では取り出し口の幅と記載)が135mmで同一であり、束の長手方向長さ(表中ではウェブ寸法の幅と記載)も179mmと同一であり、束の長手方向長さに対して取出口の長手方向長さが短いものであるが、本発明の参考例1、実施例2~6は、フィルムの浮きに関しては、比較例に対して格段に底側に近い組数でしか発生していない。落ち込みに関しては、スリット長さが10mmと長い実施例4において、159組目の最後の一組において、落ち込みが見られるが極めて発生し難いといえる。特にティシュペーパーの引き出し抵抗が低いにも関わらず、落ち込みが発生し難くなっている。なお、比較例1及び比較例2の取出口形状において、表中の実施例4の最も長手方向端側に位置するスリット端間長(135m+10m+10m=155mm)と同程度の取出口の長手方向長さとすると、落ち込みは、実施例4よりも早く発生することを知見している。
【0056】
このように、本発明に係るフィルム包装ティシューは、スリット等による小縁片が機能しており、内部の束の高さが低くなっても包装容器内にティシュペーパーが落ち込みがたく、かつ、取出口からティシュペーパーを引き出す際に包装容器が持ち上がりがたく、取出口からティシュペーパーを引き出した後に、次に取出口から露出されるティシュペーパーの一部が起立した状態になりやすいフィルム包装ティシューをとなっている。
【符号の説明】
【0057】
1・・・フィルム包装ティシュー、2…ティシュペーパー、2E…ティシュペーパーの縁部、3…ティシュペーパー束、2A…折り返した内側、2B…折り返した片、4…包装フィルム、10…天面、2C…折り返し縁、3A…短手側面、3B…長手側面、3C…平面(上下面)、30…熱融着部、5…取出し口形成用ミシン目、5E…取出し口形成用ミシン目の長手方向縁部、50…スリット又はミシン目、6…取出口、6A…小縁片間のスリット、6B…小縁片、6y…取出口の長手方向縁部、C…中心線、3x…束の短手方向、3y…束の長手方向、L1…束の長手方向長さ、L2…取出口形成用ミシン目の束長手方向の長さ、L3…束の短手方向幅、L4…束の高さ、14…連続包装フィルム、40…フィルム原反ロール、16…ダイカットロール。