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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】パイロットチェック弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/18 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
F16K15/18 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116652
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001678
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】593056543
【氏名又は名称】株式会社タカコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】辻井 喜勝
(72)【発明者】
【氏名】辻田 友貴
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-025602(JP,A)
【文献】特開2016-173155(JP,A)
【文献】特開2008-002570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22
21/14
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導圧ポートが形成されるバルブボディと、
前記一対の導圧ポートの互いの連通を切り換える弁体と、
前記一対の導圧ポートの連通を遮断するように前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記バルブボディに形成される収容孔に収容されるスリーブと、
前記バルブボディの端面に対する前記収容孔の開口を塞ぐ封止部材と、
前記スリーブに摺動自在に挿入され、前記封止部材との間で形成されるパイロット圧室に導かれるパイロット圧を受けて前記弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して移動させるパイロットピストンと、
前記バルブボディに形成され前記パイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、
前記バルブボディの前記収容孔の内周と前記スリーブの外周との間に形成され前記パイロットポートから供給されるパイロット圧を前記パイロット圧室へ導く連通路と、
前記封止部材と前記スリーブとの間に設けられ前記連通路と前記パイロット圧室とを接続する接続通路と、を備えることを特徴とするパイロットチェック弁。
【請求項2】
一対の導圧ポートが形成されるバルブボディと、
前記一対の導圧ポートの互いの連通を切り換える弁体と、
前記一対の導圧ポートの連通を遮断するように前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記バルブボディに形成される収容孔に収容されるスリーブと、
前記バルブボディの端面に対する前記収容孔の開口を塞ぐ封止部材と、
前記スリーブに摺動自在に挿入され、前記封止部材との間で形成されるパイロット圧室に導かれるパイロット圧を受けて前記弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して移動させるパイロットピストンと、
前記バルブボディに形成され前記パイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、
前記バルブボディの前記収容孔の内周と前記スリーブの外周との間に形成され前記パイロットポートから供給されるパイロット圧を前記パイロット圧室へ導く連通路と、を備え、
前記パイロットポートは、前記スリーブの軸方向における前記スリーブが設けられる範囲内において前記パイロット圧室から軸方向に離間した位置に設けられ前記連通路に開口することを特徴とするパイロットチェック弁。
【請求項3】
前記封止部材は、前記バルブボディの前記端面と面接触し前記収容孔の前記開口を塞ぐ接触面を有し、
前記接続通路は、前記封止部材に形成されることを特徴とする請求項1に記載のパイロットチェック弁。
【請求項4】
前記パイロットポートは、前記スリーブの軸方向における前記スリーブが設けられる範囲内において前記パイロット圧室から軸方向に離間した位置に設けられ前記連通路に開口することを特徴とする請求項1または3に記載のパイロットチェック弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットチェック弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流路を遮断するために弁座方向にスプリングにより付勢されたプランジャと、プランジャをパイロット圧力により開閉するためのパイロットピストンと、をケーシング内に備えたパイロットチェック弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-2570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたパイロットチェック弁では、パイロットピストンとケーシングの端部との間に、パイロット圧が導かれるパイロット圧室が形成される。また、ケーシングには、パイロット圧室に開口するようにパイロットポートが形成される。特許文献1のパイロットチェック弁では、パイロット圧室にパイロットポートを連通させるために、ケーシングの端部付近にパイロットポートが設けられている。
【0005】
一方、このようなパイロットチェック弁には、小型化のニーズがある。特許文献1に開示されたパイロットチェック弁を小型化する場合、パイロットポートとケーシングの端部との間の壁厚が薄いため、強度確保が難しくなる。パイロットポートとケーシングの端部との間の壁部の強度を確保しようとすれば、その分ケーシングが大型化してしまう。
【0006】
また、パイロットチェック弁を小型化するほど、流路等の加工は難しくなる。このため、特許文献1のようにケーシングの端部付近に流路等は形成しにくい。
【0007】
以上のように、特許文献1に開示されるようなパイロットチェック弁の構造では、小型化に限界がある。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、パイロットチェック弁を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パイロットチェック弁であって、一対の導圧ポートが形成されるバルブボディと、一対の導圧ポートの互いの連通を切り換える弁体と、一対の導圧ポートの連通を遮断するように弁体を付勢する付勢部材と、バルブボディに形成される収容孔に収容されるスリーブと、バルブボディの端面に対する収容孔の開口を塞ぐ封止部材と、スリーブに摺動自在に挿入され、封止部材との間で形成されるパイロット圧室に導かれるパイロット圧を受けて弁体を付勢部材の付勢力に抗して移動させるパイロットピストンと、バルブボディに形成されパイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、バルブボディの収容孔の内周とスリーブの外周との間に形成されパイロットポートから供給されるパイロット圧をパイロット圧室へ導く連通路と、封止部材とスリーブとの間に設けられ連通路とパイロット圧室とを接続する接続通路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明では、パイロット圧をパイロットポートからパイロット圧室に導く連通路が、スリーブの外周と当該スリーブを収容する収容孔の内周とによって形成される。連通路を通じてパイロット圧がパイロットポートからパイロット圧室に導かれるため、バルブボディの端部から離れた位置にパイロットポートを形成することができる。また、スリーブの外周と収容孔の内周とを利用して連通路を形成することができるため、バルブボディに流路を別途加工する必要がなく、従来のスリーブ又は収容孔の加工条件を変更するだけで連通路を容易に形成することができる。また、この発明では、連通路を通じて導かれるパイロット圧を、接続通路を通じてパイロット圧室に導くことができる。
【0011】
また、本発明は、パイロットチェック弁であって、一対の導圧ポートが形成されるバルブボディと、一対の導圧ポートの互いの連通を切り換える弁体と、一対の導圧ポートの連通を遮断するように弁体を付勢する付勢部材と、バルブボディに形成される収容孔に収容されるスリーブと、バルブボディの端面に対する収容孔の開口を塞ぐ封止部材と、スリーブに摺動自在に挿入され、封止部材との間で形成されるパイロット圧室に導かれるパイロット圧を受けて弁体を付勢部材の付勢力に抗して移動させるパイロットピストンと、バルブボディに形成されパイロット圧室にパイロット圧を導くパイロットポートと、バルブボディの収容孔の内周とスリーブの外周との間に形成されパイロットポートから供給されるパイロット圧をパイロット圧室へ導く連通路と、を備え、パイロットポートは、スリーブの軸方向におけるスリーブが設けられる範囲内においてパイロット圧室から軸方向に離間した位置に設けられ連通路に開口することを特徴とする。
【0012】
この発明では、パイロット圧をパイロットポートからパイロット圧室に導く連通路が、スリーブの外周と当該スリーブを収容する収容孔の内周とによって形成される。連通路を通じてパイロット圧がパイロットポートからパイロット圧室に導かれるため、バルブボディの端部から離れた位置にパイロットポートを形成することができる。また、スリーブの外周と収容孔の内周とを利用して連通路を形成することができるため、バルブボディに流路を別途加工する必要がなく、従来のスリーブ又は収容孔の加工条件を変更するだけで連通路を容易に形成することができる。また、パイロット圧は、連通路によってパイロットポートからパイロットピストンのパイロット圧による移動方向の後方に向けてパイロット圧室へ導かれる。これにより、パイロットポートをバルブボディの端面から離れた位置に形成することができ、パイロットポートとバルブボディの端面との間の壁部の肉厚を確保できる。したがって、パイロットポートを容易に形成することができ、バルブボディを小型化できる。
【0013】
また、本発明は、封止部材が、バルブボディの端面と面接触し収容孔の開口を塞ぐ接触面を有し、接続通路が、封止部材に形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明では、封止部材は、接触面によって収容孔の開口を塞ぐため、収容孔に螺合して開口を塞ぐプラグと比較して、ねじ部を収容孔に形成しなくてもよいため、収容孔の全長を短くすることができる。よって、バルブボディを小型化することができる。
【0015】
また、本発明は、パイロットポートが、スリーブの軸方向におけるスリーブが設けられる範囲内においてパイロット圧室から軸方向に離間した位置に設けられ連通路に開口することを特徴とする。
【0016】
この発明では、パイロット圧は、連通路によってパイロットポートからパイロットピストンのパイロット圧による移動方向の後方に向けてパイロット圧室へ導かれる。これにより、パイロットポートをバルブボディの端面から離れた位置に形成することができ、パイロットポートとバルブボディの端面との間の壁部の肉厚を確保できる。したがって、パイロットポートを容易に形成することができ、バルブボディを小型化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パイロットチェック弁を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るパイロットチェック弁が適用される流体圧システムの油圧回路である。
図2】本発明の実施形態に係るパイロットチェック弁の断面図であり、閉弁状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るパイロットチェック弁の断面図であり、開弁状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係るパイロットチェック弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るパイロットチェック弁100a,100bについて説明する。
【0020】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るパイロットチェック弁100a,100bが適用される流体圧システム101について説明する。
【0021】
図1に示すように、流体圧システム101は、アクチュエータとしての油圧シリンダ1と、作動液としての作動油を貯留するタンクTと、タンクTから作動油を吸い込んで吐出し油圧シリンダ1を駆動する油圧ポンプPと、油圧ポンプPを駆動するモータMと、を備える。
【0022】
油圧シリンダ1は、シリンダチューブ2と、シリンダチューブ2内に摺動自在に挿入され、シリンダチューブ2内をロッド側室1aと反ロッド側室1bに区画するピストン3と、一端がピストン3に連結され他端がシリンダチューブ2の外部へと突出するピストンロッド4と、を備える片ロッド型シリンダである。
【0023】
油圧ポンプPは、モータMの回転方向に応じて2つの第1及び第2ポンプポートP1,P2の一方からタンクTの作動油を吸い込み、他方から吐出する。油圧ポンプPの第1ポンプポートP1は、第1給排通路5aを通じて油圧シリンダ1のロッド側室1aに接続される。油圧ポンプPの第2ポンプポートP2は、第2給排通路5bを通じて油圧シリンダ1の反ロッド側室1bに接続される。
【0024】
また、流体圧システム101は、第1及び第2給排通路5a,5bにそれぞれ接続されるリリーフ弁6a,6bと、第1給排通路5aに接続されタンクTに連通する第1リターン通路7aと、第2給排通路5bに接続されタンクTに連通する第2リターン通路7bと、第1リターン通路7a及び第2リターン通路7bにそれぞれ設けられる一対のパイロットチェック弁100a,100bと、を備える。
【0025】
リリーフ弁6a,6b及び一対のパイロットチェック弁100a,100bは、それぞれ一体化されバルブブロックを構成する。また、油圧ポンプP、タンクT、及びバルブブロックは、ユニット化されて一体的に構成される。
【0026】
一方のパイロットチェック弁100aには、第2給排通路5bを通過する作動油の圧力がパイロット圧として第1パイロット通路8aを通じて導かれる。他方のパイロットチェック弁100bには、第1給排通路5aを通過する作動油の圧力がパイロット圧として第2パイロット通路8bを通じて導かれる。
【0027】
油圧ポンプPと片ロッド型の油圧シリンダ1とを図1に示すように閉回路で接続すると、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でシリンダチューブ2の容積にピストンロッド4の体積分だけ差が生じる。一対のパイロットチェック弁100a,100bは、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でのシリンダチューブ2の容積差を補償して、油圧シリンダ1を安定して伸縮作動させるためのものである。また、一対のパイロットチェック弁100a,100bは、油圧ポンプPの高圧部から作動油がリークして閉回路中の作動油が減少したときに、タンクTから閉回路中に作動油を補給して閉回路中の作動油の不足を防止する機能も有する。
【0028】
油圧シリンダ1を伸長作動させる場合には、モータMの駆動により油圧ポンプPが一方の方向に回転される。油圧ポンプPが一方の方向に回転すると、油圧ポンプPは、第1給排通路5aから第1ポンプポートP1を通じて作動油を吸い込み、第2ポンプポートP2から吐出する。油圧ポンプPの第2ポンプポートP2から吐出された作動油は、第2給排通路5bを通じて油圧シリンダ1の反ロッド側室1bに供給される。これにより、油圧シリンダ1は伸長作動する。また、油圧シリンダ1が伸長作動する際は、油圧ポンプPの吐出圧によって一方のパイロットチェック弁100aが開弁する。これにより、油圧ポンプPには、ロッド側室1aから退出するピストンロッド4の体積分だけ、パイロットチェック弁100aを通じて第2ポンプポートP2からタンクTの作動油が吸い込まれる。
【0029】
反対に、油圧シリンダ1を収縮作動させる場合には、モータMの駆動により油圧ポンプPが他方の方向に回転される。油圧ポンプPが他方の方向に回転すると、油圧ポンプPは、第2給排通路5bから第2ポンプポートP2を通じて作動油を吸い込み、第1ポンプポートP1から吐出する。油圧ポンプPの第1ポンプポートP1から吐出された作動油は、第1給排通路5aを通じて油圧シリンダ1のロッド側室1aに供給される。これにより、油圧シリンダ1は収縮作動する。また、油圧シリンダ1が収縮作動する際には、油圧ポンプPの吐出圧によって他方のパイロットチェック弁100bが開弁する。これにより、ロッド側室1aに進入するピストンロッド4の体積分だけ、反ロッド側室1bから排出される作動油が、パイロットチェック弁100bを通じてタンクTに導かれる。
【0030】
このように、一対のパイロットチェック弁100a,100bは、油圧ポンプPの第1又は第2ポンプポートP1,P2から吐出される作動油によって開弁し、第1又は第2給排通路5a,5bをタンクTと連通させる。これにより、油圧シリンダ1の伸長作動時と収縮作動時でのシリンダチューブ2の容積差が補償され、油圧シリンダ1を安定して伸縮作動させることができる。
【0031】
なお、油圧シリンダ1は、片ロッド型シリンダに限られるものではなく、両ロッド型シリンダであってもよい。また、油圧シリンダ1に代えて、油圧モータを適用するようにしてもよい。
【0032】
次に、パイロットチェック弁100a,100bの具体的構成について説明する。なお、パイロットチェック弁100a,100bは、互いに同様の構成を有するため、以下では、一方のパイロットチェック弁100aを例に説明し、他方のパイロットチェック弁100bについては説明を適宜省略する。また、以下では、パイロットチェック弁100aを単に「パイロットチェック弁100」と称する。
【0033】
パイロットチェック弁100は、図2に示すように、バルブボディ10と、バルブボディ10に収装されるバルブ機構20と、バルブボディ10に収装されバルブ機構20を駆動するパイロット機構40と、を有する。
【0034】
バルブボディ10には、一対の導圧ポートとしての第1導圧ポート11及び第2導圧ポート12と、パイロット圧が導かれるパイロットポート13と、バルブ機構20を収容するバルブ収容孔14と、パイロット機構40を収容する収容孔としてのパイロット収容孔15と、バルブ収容孔14とパイロット収容孔15とを接続する接続孔19と、が形成される。
【0035】
第1導圧ポート11は、第1給排通路5aを通じて油圧ポンプPの第1ポンプポートP1に連通すると共に(図1参照)、バルブ収容孔14に開口する。第2導圧ポート12は、タンクTに連通すると共に(図1参照)、バルブ収容孔14とパイロット収容孔15とを接続する接続孔19に開口する。パイロットポート13は、第2給排通路5bに接続される第1パイロット通路8aに連通する(図1参照)。
【0036】
バルブ収容孔14とパイロット収容孔15とは、互いに同軸に設けられる。また、接続孔19は、バルブ収容孔14及びパイロット収容孔15と同軸に設けられる。第1導圧ポート11、第2導圧ポート12、及びパイロットポート13は、それぞれバルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して略垂直に延びて形成される。
【0037】
バルブ収容孔14は、バルブボディ10の一端面10aに開口する。パイロット収容孔15は、第1収容孔16と、第1収容孔16よりも内径が大きく形成されバルブボディ10の他端面10bに開口する第2収容孔17と、を有する。第1収容孔16は、接続孔19を通じてバルブ収容孔14に連通する。第2収容孔17には、パイロットポート13が開口する。
【0038】
バルブ機構20は、バルブ収容孔14に収容される有底筒状のシート部材21と、シート部材21内に移動自在に設けられ第1導圧ポート11と第2導圧ポート12との互いの連通を切り換える弁体としてのボール部材30と、シート部材21に設けられるシート面23bに向けてボール部材30を付勢する付勢部材としてのスプリング31と、スプリング31の端部を支持するばね座部材35と、バルブボディ10の端面10aに対するバルブ収容孔14の開口を塞ぐプラグ32と、を有する。
【0039】
シート部材21は、円筒状の側壁部22と、側壁部22の一端部に設けられる底部23と、を有する。側壁部22と底部23によって、シート部材21の内側には、ボール部材30が収容される弁体収容孔21aが形成される。
【0040】
シート部材21の底部23は、バルブ収容孔14の底部14a(バルブ収容孔14と接続孔19とによって形成される傾斜状の段差部)に着座する。シート部材21の底部23には、当該底部23を貫通し、接続孔19とシート部材21の内部の弁体収容孔21aとを連通する底部孔23aが形成される。弁体収容孔21aに面する底部孔23aの端部に、ボール部材30が着座するシート面23bが形成される。
【0041】
シート部材21の側壁部22には、側壁部22を径方向に貫通し、内周面と外周面とに開口する側壁孔22aが形成される。弁体収容孔21aは、側壁孔22aを通じてバルブ収容孔14に連通する。
【0042】
スプリング31は、ボール部材30とばね座部材35との間に圧縮状態で設けられるコイルスプリングである。スプリング31の付勢力によって、ボール部材30は、シート部材21の底部23に設けられるシート面23bに押し付けられる。
【0043】
ばね座部材35は、スプリング31の一端が着座するベース部36と、ベース部36から突出してスプリング31の内周を支持する支持部37と、を有する。支持部37は、ベース部36よりも外径が小さく形成される。
【0044】
プラグ32には、シート部材21の一端部を収容する第1凹部32aと、ばね座部材35のベース部36を収容する第2凹部32bと、が形成される。第1凹部32aの内径は、第2凹部32bの内径よりも大きく、第1凹部32aと第2凹部32bとの内径差によって環状の段差面32cが形成される。プラグ32は、バルブボディ10のバルブ収容孔14に形成されるねじ部14bに螺合して、バルブボディ10に取り付けられる。プラグ32がバルブボディ10に取り付けられることにより、第1凹部32aと第2凹部32bとの間に設けられた段差面32cと、バルブ収容孔14の底部23と、の間でシート部材21がバルブ収容孔14の軸方向に位置決めされる。
【0045】
パイロット機構40は、パイロット収容孔15に収容される有底筒状のスリーブ41と、スリーブ41に摺動自在に挿入されるパイロットピストン45と、バルブボディ10の他端面10bに対するパイロット収容孔15の開口を塞ぐ封止部材としてのカバー50と、を有する。
【0046】
パイロットピストン45は、第1ピストン部46と、第1ピストン部46の一端部から軸方向に突出しスリーブ41を挿通する第2ピストン部47と、を有する。第2ピストン部47は、第1ピストン部46よりも外径が小さく形成される。
【0047】
スリーブ41には、パイロットピストン45が摺動自在に挿入される摺動孔42が形成される。摺動孔42は、第1ピストン部46が摺動自在に挿入される第1摺動孔42aと、第1摺動孔42aと同軸的に接続され第2ピストン部47が摺動自在に挿通する第2摺動孔42bと、を有する。つまり、第1摺動孔42aの内径は、第2摺動孔42bの内径よりも大きい。第1摺動孔42aと第2摺動孔42bの内径差によって、環状の段差面42cが形成される。また、第2摺動孔42bによって、第1摺動孔42aと接続孔19とが連通する。
【0048】
スリーブ41の外径は、軸方向に一様に形成されており、その外径は、パイロット収容孔15の第1収容孔16の内径の大きさと略同一である。また、上述のように、パイロットポート13が開口する第2収容孔17は、第1収容孔16よりも内径が大きい。よって、スリーブ41とパイロット収容孔15の第1収容孔16との間のクリアランスは、スリーブ41とパイロット収容孔15の第2収容孔17との間のクリアランスよりも小さい。これにより、スリーブ41が第1収容孔16によって径方向に位置決めされると共に、スリーブ41の外周とパイロット収容孔15の第2収容孔17の内周との間には、環状空間である連通路40bが形成される。連通路40bは、バルブボディ10の端面10bにまで延びて形成される。
【0049】
カバー50は、ボルト(図示省略)によってバルブボディ10に取り付けられる。カバー50は、バルブボディ10の端面10bに面接触する接触面51を有する板状に形成される。接触面51は、平坦面である。カバー50の接触面51とパイロットピストン45の第1ピストン部46の端面46aとの間には、パイロット圧室40aが形成される。
【0050】
また、カバー50には、パイロット収容孔15とスリーブ41との間の連通路40bをパイロット圧室40aに接続する接続通路としての接続溝52が形成される。接続溝52は、パイロット収容孔15の中心軸を中心とする環状溝である。
【0051】
よって、パイロットポート13とパイロット圧室40aとは、パイロット収容孔15とスリーブ41との間の連通路40bと、カバー50に形成される接続溝52と、を通じて互いに連通する。
【0052】
次に、パイロットチェック弁100の作動について説明する。
【0053】
パイロットポート13に供給されたパイロット圧は、パイロット収容孔15の内周の連通路40bを通じてバルブボディ10の端面10bに向けて流れ、カバー50の接続溝52を通じてパイロット圧室40aへ導かれる(図2中矢印参照)。
【0054】
パイロット圧室40aにパイロット圧が導かれることで、パイロット圧を受けるパイロットピストン45は、図3に示すように、第1ピストン部46が摺動孔42の段差面42cに当接するまで移動する。このようなパイロットピストン45の移動に伴い、ボール部材30は、パイロットピストン45の第2ピストン部47によって押圧され、スプリング31の付勢力に抗して移動する。これにより、ボール部材30がシート部材21のシート面23bから離間し、第1導圧ポート11と第2導圧ポート12とが連通する。
【0055】
パイロットポート13へのパイロット圧の供給が遮断されると、パイロット圧室40aのパイロット圧は、接続溝52及び連通路40bを通じてパイロットポート13から排出される。よって、ボール部材30は、スプリング31の付勢力によって移動してシート部材21のシート面23bに着座する。これにより、第1導圧ポート11と第2導圧ポート12との連通が、ボール部材30によって遮断される(図2参照)。また、スプリング31の付勢力によって移動するボール部材30の移動に伴って、摺動孔42の段差面42cから第1ピストン部46が離間するようにパイロットピストン45が移動する。
【0056】
ここで、パイロットポート13は、パイロット圧室40aよりも、パイロット圧によるパイロットピストン45の移動方向の前方側(図2中左側)の位置において、連通路40bに開口する。言い換えれば、ボール部材30がシート部材21のシート面23bに着座した状態(図2に示す状態)において、パイロット収容孔15の軸方向における位置は、パイロットポート13よりも、パイロット圧室40aを区画する第1ピストン部46の端面46aの方が、バルブボディ10の端面10b側に位置している。これにより、パイロットポート13から供給されるパイロット圧は、連通路40bによってパイロットピストン45の移動方向の後方(図2中右方向)に向けて導かれ、パイロット圧室40aに供給される(図2中矢印参照)。つまり、連通路40bは、パイロット圧によるパイロットピストン45の移動方向の前方から後方に向けてパイロット圧を導くものである。
【0057】
このように、パイロット圧によるパイロットピストン45の移動方向の後方に向けてパイロット圧を導く連通路40bが形成されることにより、パイロットポート13をバルブボディ10の端面10bから離れた位置に形成することができる。これにより、パイロットポート13とバルブボディ10の端面10bとの間の壁部の肉厚を確保できる。また、バルブボディ10の端面10b付近にパイロットポート13を形成しなくてよいため、パイロットポート13の加工が容易となる。したがって、バルブボディ10を小型化しても、パイロットポート13を容易に形成することができ、パイロットチェック弁100を小型化することができる。
【0058】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0059】
パイロットチェック弁100では、パイロット収容孔15の第2収容孔17の内周面とパイロットピストン45の外周面とによって、パイロットポート13からパイロット圧室40aへパイロット圧を導く連通路40bが形成される。このため、パイロット圧室40aよりも、パイロットピストン45のパイロット圧による移動方向の前方の位置にパイロットポート13を形成することができる。よって、パイロットポート13とバルブボディ10との間の肉厚を確保することができ、バルブボディ10を小型化しても、バルブボディ10の耐久性を確保することができる。
【0060】
また、スリーブ41の外周とパイロット収容孔15の内周とを利用して連通路40bを形成することができるため、バルブボディ10に流路を別途加工する必要がない。つまり、第1収容孔16の内径を第2収容孔17よりも大きく形成するだけで、連通路40bを形成することができる。このように、パイロット収容孔15の加工条件を変更するだけで連通路40bを容易に形成することができる。よって、流路の形成が容易になるため、バルブボディ10を小型化することができる。
【0061】
また、第1導圧ポート11、第2導圧ポート12、及びパイロットポート13は、バルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して略垂直に延びて形成される。これにより、バルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して垂直とはならずに傾斜する場合と比較して、第1導圧ポート11、第2導圧ポート12、及びパイロットポート13の加工が容易となり、バルブボディ10を小型化することができる。
【0062】
また、プレートは、接触面51によってパイロット収容孔15の開口を塞ぐため、パイロット収容孔15に螺合するプラグによって開口を塞ぐ場合と比較して、ねじ部を形成しなくてもよいため、パイロット収容孔15の全長を短くすることができる。よって、バルブボディ10を小型化することができる。
【0063】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0064】
まず、図4を参照して、連通路40bの構成に関する変形例について説明する。
【0065】
上記実施形態では、スリーブ41は、外径が軸方向に沿って一様に形成され、パイロット収容孔15は、相対的に内径が小さい第1収容孔16と内径が大きい第2収容孔17とを有する。これにより、スリーブ41とパイロット収容孔15の第2収容孔17との間に環状空間である連通路40bが形成される。これに対し、図4に示すように、パイロット収容孔15の内径を軸方向に沿って一様に形成し、相対的に外径が小さい小径部41aと外径が大きい大径部41bとをスリーブ41の外周に形成してもよい。この場合には、パイロット収容孔15の内周とスリーブ41の小径部41aとの間に連通路40bを構成する環状空間が形成される。この変形例であっても、スリーブ41の外周の一部の外径を相対的に小さく形成するだけで連通を形成することができ、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0066】
また、詳細な図示は省略するが、パイロット収容孔15の内径とスリーブ41の外径とをそれぞれ一様に形成する一方、パイロット収容孔15の内周及びスリーブ41の外周の少なくともいずれかに、軸方向に延びる溝部を形成してもよい。この場合、溝部と、当該溝部に対向するパイロット収容孔15の内周又はスリーブ41の外周との間に連通路40bを形成することができる。なお、スリーブ41の外周に溝部を形成する場合、パイロットポート13が溝部に臨むように、スリーブ41をパイロット収容孔15に収容すればよい。この変形例によっても、パイロット収容孔15の内周又はスリーブ41の外周に溝部の加工をすれば連通路40bが形成できるため、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。また、上記実施形態と図4に示す変形例とを組み合わせて、パイロット収容孔15が、相対的に内径が小さい第1収容孔16と内径が大きい第2収容孔17とを有し、スリーブ41が相対的に外径が小さい小径部41aと外径が大きい大径部41bとを有する構成でもよい。
【0067】
次に、その他の変形例について説明する。
【0068】
上記実施形態では、封止部材は、接触面51によってパイロット収容孔15の開口を塞ぐカバー50である。上述のように、パイロットチェック弁100をより小型化するためには、封止部材はカバー50であることが望ましいが、この構成は必須ではない。封止部材は、ねじ部の螺合によってバルブボディ10に取り付けられるプラグでもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、バルブボディ10に形成される各ポート(第1導圧ポート11、第2導圧ポート12、及びパイロットポート13)は、バルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して略垂直に設けられる。上述のように、パイロットチェック弁100をより小型化するためには、各ポートがバルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して略垂直であることが望ましいが、この構成は必須ではない。各ポートは、バルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して、垂直ではなく傾いて形成されてもよい。なお、パイロットポート13がバルブ収容孔14及びパイロット収容孔15の中心軸に対して傾斜する場合であっても、連通路40bに対するパイロットポート13の開口が、パイロット圧室40aよりも、パイロット圧によるパイロットピストン45の移動方向前方に位置することが望ましい。
【0070】
また、上記実施形態では、連通路40bとパイロット圧室40aとを接続する接続溝52がカバー50に形成される。このように、上記実施形態では、接続通路としての接続溝52が、カバー50とスリーブ41との間に設けられる。これに対し、連通路40bとパイロット圧室40aとを接続する接続通路は、スリーブ41に形成されてもよい。例えば、接続通路として、カバー50に面するスリーブ41の端面に、スリーブ41の内外を連通する溝を形成してもよい。この場合にも、接続通路としての溝は、カバー50とスリーブ41との間に設けられる。また、接続通路は、カバー50とスリーブ41との間に限られず、例えば、スリーブ41の端面から軸方向に離間した位置にスリーブ41を径方向に貫通するように形成される孔であってもよい。
【0071】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0072】
パイロットチェック弁100は、第1導圧ポート11及び第2導圧ポート12が形成されるバルブボディ10と、第1導圧ポート11及び第2導圧ポート12の互いの連通を切り換えるボール部材30と、第1導圧ポート11及び第2導圧ポート12の連通を遮断するようにボール部材30を付勢するスプリング31と、バルブボディ10に形成されるパイロット収容孔15に収容されるスリーブ41と、バルブボディ10の端面10bに対するパイロット収容孔15の開口を塞ぐカバー50と、スリーブ41に摺動自在に挿入され、カバー50との間で形成されるパイロット圧室40aに導かれるパイロット圧を受けてボール部材30をスプリング31の付勢力に抗して移動させるパイロットピストン45と、バルブボディ10に形成されパイロット圧室40aにパイロット圧を導くパイロットポート13と、バルブボディ10のパイロット収容孔15の内周とスリーブ41の外周との間に形成されパイロットポート13から供給されるパイロット圧をパイロット圧室40aへ導く連通路40bと、を備える。
【0073】
この構成では、パイロット圧をパイロットポート13からパイロット圧室40aに導く連通路40bが、スリーブ41の外周と当該スリーブ41を収容するパイロット収容孔15の内周とによって形成される。連通路40bを通じてパイロットポート13からパイロット圧室40aにパイロット圧が導かれるため、バルブボディ10の端部から離れた位置にパイロットポート13を形成することができる。また、スリーブ41の外周とパイロット収容孔15の内周とを利用して連通路40bを形成することができるため、バルブボディ10に流路を別途加工する必要がなく、従来のパイロット収容孔15の加工条件を変更するだけで連通路40bを容易に形成することができる。したがって、パイロットチェック弁100を小型化することができる。
【0074】
また、パイロットチェック弁100では、カバー50とスリーブ41との間に設けられ連通路40bとパイロット圧室40aとを接続する接続溝52をさらに備える。
【0075】
この構成では、連通路40bを通じて導かれるパイロット圧を、接続溝52を通じてパイロット圧室40aに導くことができる。
【0076】
また、パイロットチェック弁100では、カバー50は、バルブボディ10の端面10bと面接触しパイロット収容孔15の開口を塞ぐ接触面51を有し、接続溝は、カバー50に形成される。
【0077】
この構成では、プレートは、接触面51によってパイロット収容孔15の開口を塞ぐため、パイロット収容孔15に螺合するプラグによって開口を塞ぐ場合と比較して、ねじ部をパイロット収容孔15に形成しなくてもよいため、パイロット収容孔15の全長を短くすることができる。よって、バルブボディ10、ひいてはパイロットチェック弁100を小型化することができる。
【0078】
また、パイロットチェック弁100では、パイロットポート13は、パイロット圧室40aよりも、パイロット圧によるパイロットピストン45の移動方向前方の位置において連通路40bに開口する。
【0079】
この構成では、パイロット圧は、連通路40bによってパイロットポート13からパイロットピストン45の移動方向後方に向けてパイロット圧室40aへ導かれる。これにより、パイロットポート13をバルブボディ10の端面10bから離れた位置に形成することができ、パイロットポート13とバルブボディ10の端面10bとの間の壁部の肉厚を確保できる。したがって、バルブボディ10を小型化しても、パイロットポート13を容易に形成することができ、パイロットチェック弁100を小型化することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0081】
10…バルブボディ、10b…端面、11…第1導圧ポート(導圧ポート)、12…第2導圧ポート(導圧ポート)、13…パイロットポート、15…パイロット収容孔(収容孔)、30…ボール部材(弁体)、31…スプリング(付勢部材)、40a…パイロット圧室、40b…連通路、41…スリーブ、45…パイロットピストン、50…カバー(封止部材)、51…接触面、52…接続溝(接続通路)、100…パイロットチェック弁
図1
図2
図3
図4