(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】茶葉感増強剤、及びそれを含有する茶含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230705BHJP
A23G 1/32 20060101ALN20230705BHJP
A23F 3/14 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
A23G1/32
A23F3/14
(21)【出願番号】P 2019119811
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018124263
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯之戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茜
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201671(JP,A)
【文献】特開2011-254783(JP,A)
【文献】特表平08-508638(JP,A)
【文献】特開2014-082960(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063921(WO,A1)
【文献】特開2017-205100(JP,A)
【文献】特開2011-115142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F,A23G,A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で含有する茶葉感増強剤。
【請求項2】
レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物、及びモグロシドVを含有する茶葉感増強剤であって、茶葉感増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1(質量比)であることを特徴とする茶葉感増強剤。
【請求項3】
前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である請求項2に記載する茶葉感増強剤。
【請求項4】
レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比が質量比で50:50~99:1となるように、茶含有組成物に配合することを特徴とする、茶含有組成物の茶葉感増強方法。
【請求項5】
レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物及びモグロシドVを、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1(質量比)となるように、茶含有組成物に配合することを特徴とする、茶含有組成物の茶葉感増強方法。
【請求項6】
前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である請求項
5に記載する茶葉感増強方法。
【請求項7】
レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比が質量比で50:50~99:1となるように、茶含有組成物に配合す
ることを特徴とする、茶葉感が増強した茶含有組成物の製造方法。
【請求項8】
レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が1ppm~500ppmとなる範囲で茶含有組成物に配合する、請求項
7に記載する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茶葉感増強剤に関する。また本発明は茶葉感増強剤を含有する茶含有組成物に関する。さらに本発明は茶葉感が増強されてなる茶含有組成物の製造方法、並びに茶含有組成物について茶葉感を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品や医薬品などに甘味を付与したり、それら自体の味を調節するために、甘味料が広く用いられている。なかでも近年の健康志向の高まりから、ノンカロリーや低カロリー、または低う蝕性の高甘味度甘味料が広く用いられるようになっている。高甘味度甘味料には、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、及びアドバンテームなどの合成甘味料、並びにステビア抽出物、ラカンカ(羅漢果)抽出物、及びソーマチンなどの天然甘味料がある。近年の天然物志向から、ステビア抽出物やラカンカ抽出物などの天然甘味料が好まれるようになってきている。
【0003】
しかしながら、これらの天然甘味料、特にステビア抽出物は甘味質が砂糖とは異なり、甘味に苦味を有すること、甘味が長く口の中に残る(甘味の後引きがある)こと、甘味にコクがなく、また口腔内での甘味発現が遅く、物足りなさがあるといった問題がある。ステビア抽出物に含有される主要な甘味成分であるレバウディオサイドAは、ステビオサイドなどのステビア抽出物中の他の甘味成分に比べて、甘味の後引きや苦味などの雑味は少ないものの、まだ呈味の点で問題を有している。また、ラカンカ抽出物の甘味主成分であるモグロシドVにも、苦味や独特の風味があるなどの問題がある。
【0004】
ステビア抽出物のこのような問題を解決する方法としては、例えば、特許文献1にはステビア抽出物の主たる甘味成分であるレバウディオサイドAと、ラカンカ抽出物の主たる甘味成分であるモグロシドVとを、重量比で95:5~60:40の割合になるように配合することにより、前記の問題を解消して甘味質に優れた組成物が得られることが示されている。また特許文献2には、レバウディオサイドAなどのレバウディオサイド成分とモグロサイドVとを、重量比で1:1以上6:1以下の範囲で含む組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、レバウディオサイドAとモグロサイドVとを含有する甘味料組成物に、茶を含有する組成物の茶葉感を増強する作用があることについては従来知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO2009/063921
【文献】特開2016-41073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、天然甘味料の成分を用いて、茶を含む組成物について茶葉感を増強するための技術を提供することを目的とする。より詳細には、第1に、本発明は茶葉感増強剤を提供することを目的とする。第2に茶葉感が増強されてなる茶含有組成物を提供することを目的とする。第3に、茶葉感が増強されてなる茶含有組成物を製造する方法、換言すれば、茶を含む組成物について茶葉感を増強させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、ステビア抽出物の甘味主成分であるレバウディオサイドAに対してラカンカ抽出物の甘味主成分であるモグロシドVを配合し、レバウディオサイドAとモグロシドVとの割合を50:50~99:1(質量比)に調整した組成物、並びにモグロシドVを含むラカンカ抽出物が、茶を含む組成物の茶葉感を増強する作用を発揮することを見出した。このことから、当該組成物を茶葉感増強剤として、茶を含む組成物、好ましくは経口的に摂取されるか、または口腔内で用いられる茶含有組成物に配合することで、茶葉感が増強された茶含有組成物が得られることを確認して本発明を完成した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0010】
(I)茶葉感増強剤
(I-1)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2の割合で含有する茶葉感増強剤。
(I-2)レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物、及びモグロシドVを含有する茶葉感増強剤であって、茶葉感増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2であることを特徴とする茶葉感増強剤。
(I-3)前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である(I-2)に記載する茶葉感増強剤。
(I-4)モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を含有する茶葉感増強剤。
(I-5)茶含有組成物に対して、レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が1ppm~500ppmとなる範囲で用いられる(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する茶葉感増強剤。
【0011】
(II)茶葉感が増強されてなる茶含有組成物、及びその製造方法
(II-1)(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する茶葉感増強剤を含有する茶含有組成物。
(II-2)レバウディオサイドA及びモグロシドVを、合計量として5ppm~200ppmの割合で含有する(II-1)に記載する茶含有組成物。
(II-3)経口用または口腔内用の組成物である(II-1)または(II-2)に記載する茶含有組成物。
(II-4)飲食品組成物である(II-1)~(II-3)に記載する茶含有組成物。
(II-5)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比(質量比)が50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2となるように、茶含有組成物に配合する工程を有する、茶葉感が増強した茶含有組成物の製造方法。
(II-6)モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を、茶含有組成物に配合する工程を有する、茶葉感が増強した茶含有組成物の製造方法。
(II-7)レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が1ppm~500ppmとなる範囲で茶含有組成物に配合する工程を有する、(II-5)または(II-6)に記載する製造方法。
【0012】
(III)茶含有組成物の茶葉感増強方法
(III-1)レバウディオサイドAとモグロシドVとを、その配合比(質量比)が50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2となるように、茶含有組成物に配合することを特徴とする、茶含有組成物の茶葉感増強方法。
(III-2)レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物及びモグロシドVを、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が、レバウディオサイドA:モグロシドV=50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、より好ましくは70:30~98:2となるように、茶含有組成物に配合することを特徴とする、茶含有組成物の茶葉感増強方法。
(III-3)前記ステビア抽出物に含まれるステビオサイド及びレバウディオサイドCの合計含有量が0.2質量%以下である(III-2)に記載する茶葉感増強方法。
(III-4)モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を、茶含有組成物に配合することを特徴とする、茶含有組成物の茶葉感増強方法。
(III-5)レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が1ppm~500ppmとなる範囲で茶含有組成物に配合する、(III-1)乃至(III-4)のいずれかに記載する茶葉感増強方法。
(III-6)茶含有組成物が口用または口腔内用の組成物、好ましくは飲食品組成物またはオーラルケア組成物である、(III-1)乃至(III-5)のいずれかに記載する茶葉感増強方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の茶葉感増感剤は、茶を含有する経口用または口腔用組成物に対して用いられることで、当該組成物の茶葉感を増強することができる。つまり、本発明の茶葉感増感剤によれば、茶を含有する経口用または口腔用組成物に対して茶葉感増強効果を発揮し、茶葉感が増強されてなる経口用または口腔用組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)茶葉感増強剤
本発明の茶葉感増強剤の一つの態様は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で含有することを特徴とする。本発明の茶葉感増強剤のもう一つの態様は、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を含有することを特徴とする。以下、前者の茶葉感増強剤を「本茶葉感増強剤1」、後者の茶葉感増強剤を「本茶葉感増強剤2」、両者を「本茶葉感増強剤」と総称する。
【0015】
(レバウディオサイドA)
レバウディオサイドAは、ステビア抽出物に含まれているステビオール配糖体であり、ステビア抽出物の主要甘味成分として、砂糖の300~450倍の甘味度を有していることが知られている。レバウディオサイドAは、キク科ステビア属に属する植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニ(Stevia
rebaudiana
Bertoni)(本発明では「ステビア」と略称する)の葉や茎等から水又は有機溶媒で抽出し、精製することによって調製することができる。なお、本発明で対象とするレバウディオサイドAには、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いてレバウディオサイドAにグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理レバウディオサイドAも含まれる。
【0016】
本茶葉感増強剤1においてレバウディオサイドAは精製された状態で用いられてもよいが、これに制限されず、本茶葉感増強剤におけるレバウディオサイドAの作用効果を妨げないことを限度として、他のステビオール配糖体(ステビオサイド、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、レブソサイド、ステビオールビオサイドなど)との混合物の状態で用いることもできる。かかる混合物としては好適にはステビア抽出物を挙げることができる。なお、ステビア抽出物には、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビアも含まれる。かかる混合物を用いる場合、混合物中のレバウディオサイドAの含有量は全体の90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上である。混合物中におけるレバウディオサイドA以外の成分の含有量が5質量%、特に10質量%を超えて増えると、当該成分による茶葉感増強剤の味質に対する影響が無視できなくなるからである。制限はされないが、好ましい混合物として、レバウディオサイドAの含有量が全体の90質量%以上であり、その他の成分として他のステビオール配糖体の含有量が合計で1質量%以下、より好ましくはステビオサイド及びレバウディオサイドCの含有量が合計で0.2質量%以下であるステビア抽出物を例示することができる。
【0017】
レバウディオサイドAは、前述するようにステビアの葉や茎等を原料として抽出精製して調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、制限されないものの、レバウディオAD、及びレバウディオJ-100(いずれも守田化学工業(株)製)などを挙げることができる。これらの製品はレバウディオサイドAを90質量%以上の割合で含有するレバウディオサイドA含有製品(ステビア抽出物)である。
【0018】
(モグロシドV)
モグロシドVは、ラカンカ(羅漢果)抽出物に含まれているトリテルペン系配糖体であり、ラカンカ抽出物の主要甘味成分として、砂糖の約300倍の甘味度を有していることが知られている。モグロシドVは、ウリ科ラカンカ属に属する植物である羅漢果(学名:Siraitia
grosvenorii)の生果実から水で抽出し、精製することによって調製することができる。
【0019】
本茶葉感増強剤においてモグロシドVは、レバウディオサイドAと同様に精製された状態で用いられてもよいが、これに制限されず、本茶葉感増強剤におけるモグロシドVの作用効果を妨げないことを限度として、他のトリテルペン系配糖体(モグロール、モグロシドIE1、モグロシドIA1、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIVa、モグロシドIVE、シメノシド、11-オキソモゴロシド、5α,6α-エポキシモグロシド)との混合物の状態で用いることもできる。かかる混合物としては好適にはラカンカ抽出物を挙げることができる。かかる混合物を用いる場合、混合物中のモグロシドVの配合量は全体の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上、とりわけ好ましくは50質量%以上である。混合物中におけるモグロシドV以外の成分の含有量が増えると、当該成分による本茶葉感増強剤の味質に対する影響が無視できなくなる。
【0020】
当該モグロシドVは、前述するように羅漢果の果実を原料として抽出精製して調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、制限されないものの、モグロシドVを高純度で含み、甘味度が砂糖の約300倍である「サンナチュレ(登録商標)M50」(商品名)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)や高純度ラカンカ抽出物(サラヤ株式会社製)などを例示することができる。
【0021】
(本茶葉感増強剤)
本茶葉感増強剤1は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを質量比で50:50~99:1の割合で含有することを特徴とする。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比は60:40~99:1であり、より好ましくは70:30~99:1であり、特に好ましくは70:30~98:2(以上、質量比)である。なお、本発明の効果には直接関係しないものの、モグロシドVは高価であるため、レバウディオサイドAとモグロシドVとの総量を100質量部とした場合においてモグロシドVの割合を5質量部よりも多くすると、本茶葉感増強剤1のコストがアップする傾向がある。
【0022】
本茶葉感増強剤1は、レバウディオサイドAとモグロシドVを上記割合で混合することにより製造することができる。また本茶葉感増強剤1は、レバウディオサイドAを90質量%以上含有する前述のステビア抽出物を用いて、これにモグロシドVを、レバウディオサイドAとの質量比が前述の通り、50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2となるように配合することで製造することもできる。ここでモグロシドVとして、本発明の効果を損なわないことを限度として、モグロシドVを甘味主成分として含有するラカンカ抽出物を用いることもできる。斯くして、ステビア抽出物特有の味質(苦味、後引き感、コク味のなさ、甘味発現が遅い)を抑えながらも、茶葉感増強作用を有する組成物を得ることができる。
【0023】
本茶葉感増強剤2は、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を有効成分とするものである。本発明の効果を奏することを限度として、モグロシドVの含有量は特に制限されないが、好ましくは10質量%以上の範囲から選択することができる。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上である。当該ラカンカ抽出物は、ウリ科ラカンカ属の多年生つる植物であるラカンカ(羅漢果、学名:Siraitia grosvenorii)の生果実から水性溶媒を用いて抽出して調製することができるが、簡便には商業的に入手することができる。本茶葉感増強剤2は当該ラカンカ抽出物からなるものであってもよいし、またその茶葉感増強作用を損なわないことを限度として、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物に加えて、それ以外の他の成分を含有するものであってもよい。
【0024】
本茶葉感増強剤は、例えば後述する対象の茶含有組成物の茶葉感を増強するために用いられる。その形態を問わないが、粉末状、顆粒状、タブレット状、およびカプセル剤状などの固体の形態、ならびにシロップ状、乳液状、液状、およびジェル状などの半固体または液体の形態を有することができる。また一剤の形態のほか(例えばレバウディオサイドAとモグロシドVとの混合調合品、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物)、二剤の形態(例えば、本茶葉感増強剤1の場合、レバウディオサイドAを含有する製剤とモグロシドVを含有する製剤との組み合わせ物)を有するものであってもよい。
【0025】
本茶葉感増強剤は、レバウディオサイドAとモグロシドVを上記割合で混合し製造する際に(またはステビア抽出物に、レバウディオサイドAとモグロシドVの割合が上記割合になるようにモグロシドVを配合して製造する際に)、またはモグロシドVを含有するラカンカ抽出物を製剤形態に調製する際に、その形態に応じて、薬学的に許容される担体、または飲食品に配合可能な担体を適宜配合することもできる。かかる担体としては、本茶葉感増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類;デキストリン、セルロース、アラビアガム、およびでん粉(コーンスターチ等)などの多糖類;および水などを挙げることができる。また本茶葉感増強剤の作用効果に影響を与えないことを限度として、乳糖、ブドウ糖、果糖、砂糖、果糖ブドウ糖液糖などの糖類;ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、還元パラチノースなどの糖アルコール類;アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン又はその塩(サッカリンナトリウム、サッカリンカルシウムなど)などの合成甘味料;甘草抽出物、アマチャ抽出物、ブラゼイン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナイゼリアベリー抽出物(モネリン)、およびテンリョウチャ抽出物などの天然甘味料の配合も排除するものではない。さらに本茶葉感増強剤の作用効果に影響を与えない範囲で、飲食品や医薬品に通常使用されるような香料、色素、または防腐剤などを配合することもできる。
【0026】
本茶葉感増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量(レバウディオサイドAを含まない場合を含む。以下、同じ。)は、本茶葉感増強剤の使用態様、及び他の成分の有無等に応じて、0.005~100質量%の範囲から適宜設定することができる。前述する割合からなるレバウディオサイドAとモグロシドVとの混合物(100質量%)の甘味度は、砂糖の150~450倍程度、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物の甘味度は砂糖の50~400倍程度であることから、例えば、本茶葉感増強剤を適用する茶含有組成物の甘味を考慮して適宜設定することができる。例えば、甘味を付与することなく、茶含有組成物の茶葉感を増強するために本茶葉感増強剤を茶含有組成物に配合する場合、最終の茶含有組成物中に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量が0.002質量%未満になるような範囲で適宜調整することができる。一方、茶含有組成物の茶葉感を増強するとともに、甘味付与を目的として、本茶葉感増強剤を茶含有組成物に配合する場合は、最終の茶含有組成物中に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量が0.002質量%以上になるような範囲で適宜調整することができる。つまり、本茶葉感増強剤を、茶葉感増強という用途とともに甘味料としての用途を兼ね備えた「調味料」として使用する場合、茶含有組成物に配合した後の当該のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量が上記のとおり0.002質量%以上になればよい。茶含有組成物への配合により10~50000倍に希釈されると考えれば、本茶葉感増強剤中のレバウディオサイドAとモグロシドVの合計量は、0.02~100質量%の範囲になるように適宜調整することができる。
【0027】
本発明において「茶葉感」とは茶が有している茶独特の風味(味と香り)であり、これらは、通常、茶を含有する飲食物を口元に近づけたとき、口に含んだとき、また飲み込んだときに、鼻腔内で感じる嗅覚による香り、口腔内で感じる味覚による味、及び喉の奥から鼻腔内で感じる嗅覚による香りとが複合して感知される特性を意味し、「茶風味」や「茶の味わい」等とも称することができる。なお、これらの「茶葉感」は、後述する茶の種類に応じて、各々独自の風味(味と香り)を有している。また本発明において「茶葉感増強(感)」とは、茶以外の成分(本発明の茶葉感増強剤)を添加することにより、茶含有組成物に含まれている実際の茶の量よりも多くの量の茶が配合されていると感じさせる感覚である。こうした効果(感覚)は、通常、訓練された専門パネルによる官能試験によって評価判定することができる。具体的には、対象とする茶含有組成物に対象とする茶葉感増強剤(候補物を含む)を添加した場合に、添加する前の茶含有組成物の茶葉感と比較して茶葉感が上記のように増強していると感じられる場合には、当該茶葉感増強剤は、本発明の茶葉感増強剤に該当すると判断することができる。
【0028】
(II)茶含有組成物
本発明の茶含有組成物の一態様は、レバウディオサイドAとモグロシドVとを質量比で50:50~99:1の割合で含有する、経口用または口腔用の組成物である。この限りにおいて、本発明組成物は、レバウディオサイドAを90質量%以上含有するステビア抽出物とモグロシドVを含有するものであってもよい。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比(質量比)は60:40~99:1であり、より好ましくは70:30~99:1であり、特に好ましくは70:30~98:2である。本発明の茶含有組成物のもう一つの態様は、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を含有する経口用または口腔用の組成物である。以下、前者の茶含有組成物を「本発明組成物1」、後者の茶含有組成物を「本発明組成物2」、両者を「本発明組成物」と総称する。本発明組成物は、前述する本茶葉感増強剤を、後述する対象の経口用または口腔用組成物(以下、これを「経口・口腔用組成物」と総称する)に添加配合することで簡便に調製することができる。
【0029】
本発明が対象とする経口・口腔用組成物は、茶を含有しており茶葉感を有するか若しくは茶葉感が必要とされる組成物であり、例えば飲食品、経口医薬品、口腔用医薬品、歯磨きや洗口液などのオーラルケア製品(医薬品または医薬部外品を含む)を挙げることができる。また甘味が必要とされる組成物であることもできる。具体的には、茶を含有する組成物であり、好ましくは茶を含有する飲食品である。
【0030】
本発明でいう茶とは、茶葉及びその加工物を意味する。また茶葉の加工物には、茶葉の乾燥物及びその粉砕物(茶葉粉砕物)、茶葉搾汁及びその乾燥粉末、茶葉エキス及びその乾燥粉末等が含まれる。なお、茶葉エキスとは茶葉から水性溶媒(好ましくは水または湯)で抽出された液またはその濃縮液(茶葉抽出液)をいう。また茶含有組成物中に含まれている茶の形状は特に制限されず、茶含有組成物の種類やその形態に合わせて、固形状(粉末状、細粒状、顆粒状等)、半固形状、及び液体状の中から適宜選択設定することができる。
【0031】
本発明が対象とする茶(茶葉)は、ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名:Camellia sinensis(L) O.Kuntze)から得られる茶葉から定法に従って製茶された茶葉を意味する、これらは製茶の方法によって、例えば、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、てん茶等の蒸し製の不発酵茶(緑茶);嬉野茶、青柳茶、中国緑茶等の釜炒り製の不発酵茶;包種茶、凍頂烏龍茶、東方美人等台湾烏龍茶や鉄観音、黄金桂、武夷岩茶、鳳凰水仙、色種等中国烏龍茶の半発酵茶;ダージリン、ウバ、ジャワティー、キーモン紅茶等の発酵茶(紅茶);阿波番茶、碁石茶(登録商標)、プーアール茶、六堡茶等の後発酵茶に分類することができる。これらのうち、好ましくは不発酵茶(緑茶)、半発酵茶、及び発酵茶(紅茶)であり、より好ましくは緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、及び紅茶である。
【0032】
また、これらの茶を含む組成物(茶含有組成物)には、必要に応じて、副原料として、例えば、焙煎大麦(麦茶)、焙煎麦芽、焙煎ハトムギ(ハトムギ茶)、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽米、焙煎ソバの実(ソバ茶)、焙煎トウモロコシ、炒りごま、焙煎キヌア、焙煎アマランサス、焙煎キビ、焙煎ヒエ、焙煎アワ、焙煎大豆などの穀類;セージ、タイム、マジョラム、オレガノ、バジル、ペパーミント、シソ、レモンバーム、ベルベナ、セイボリー、ローズマリー、レモングラス、ブルーベリーリーフ、ベイリーフ、マテ茶、ユーカリリーフ、サッサフラス、サンダルウッド、ニガヨモギ、センブリ、レッドペッパー、シンナモン、カッシャ、スターアニス、ワサビ、ホースラディッシュ、ミズガラシ、マスタード、トンカ豆、フェネグリーク、サンショウ、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、オールスパイス、ナツメグ、メース、クローブ、セリ、アンゲリカ、チャービル、アニス、フェンネル、タラゴン、コリアンダー、クミン、ディル、キャラウェー、ガランガ、カルダモン、ジンジャー、ガジュツ、ターメリック(ウコン)、バニラ、ジュニパーベリー、ウインターグリーン、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、菊花、ラベンダー、ハイビスカスフラワー、サフラン、マリーゴールド、オレンジフラワー、マローフラワー、ローズヒップ、サンザシ、リュウガン、クコシ、サンデュー(モウセンゴケ)、オレンジピール、レモンピール、マシュマロールート、チョウセンニンジン、デンシチニンジン、エゾウコギ、ギムネマ、ルイボスティー、シイタケ茶、ドクダミ、ケツメイシ、杜仲茶、ハブ茶、アマチャヅル茶、オオバコ茶、桜茶、甘茶、柿の葉茶、昆布茶、松葉茶、明日葉茶、グァバ茶、ビワの葉茶、アロエ茶、ウコン茶、スギナ茶、紅花茶、サフラン茶、コンフリー茶、クコ茶、ヨモギ茶、イチョウ葉茶、カリン茶、桑の葉茶、ゴボウ茶、タラノキ茶、タンポポ茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、メグスリノキ茶、羅漢果茶などの各種植物の葉、茎、根から水性溶媒にて抽出された液、またはその濃縮物(液体、固体)が含まれていてもよい。
【0033】
本発明組成物に含まれる茶の割合は、本発明組成物の目的(コンセプト)や種類に応じて、本発明の効果を教示できる範囲であればよい。特に制限はされないものの、最終の本発明組成物100質量%中に1~90質量%の範囲で配合されるように適宜設定調整することができる。また、本発明組成物のpHとしては、茶葉感に影響しないpH範囲とすることが好ましく、具体的にはpH2~8の範囲になるように適宜調整することができる。
【0034】
本発明が対象とする経口・口腔用組成物は、前記茶に加えて糖類を含有するものであってもよい。糖類としては、甘味を有し、飲食品や経口医薬品または経口医薬部外品などの経口・口腔用組成物に配合が許容される糖類であればよく、具体的には、グルコース,フルクトース,ガラクトース,マンノース、キシロース等の単糖類;麦芽糖、ショ糖及び乳糖等の二糖類;乳果オリゴ糖、クラフトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース(ビートオリゴ糖)等のオリゴ糖;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール;異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖);水飴、還元麦芽糖水飴、高糖化還元水飴、低糖化還元水飴等を例示することができる。これらは1種単独でも、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また糖類は、前記糖類を1種または2種以上含有する食品素材またはその加工物であってもよく、例えば前記食品素材としては果物や野菜等が、また加工物としては果汁等の果物や野菜の搾汁を例示することができる。糖類として、好ましくは砂糖、果糖、ブドウ糖、異性化糖、糖アルコール類、果糖ブドウ糖液糖、水飴等である。またこれらの糖類を含有する食品素材またはその加工物も好適な糖類として使用される。なお、これらの糖類の形状は特に制限されない。例えば、固形状(粉末状、細粒状、顆粒状)、半固形状、液体状のいずれの形状であってもよい。本発明組成物に糖類を配合する場合、その配合割合は、本発明の効果を妨げないことを限度として、本発明組成物の目的や種類に応じて、0.01~99.9質量%の範囲で適宜設定することができる。
【0035】
本発明組成物が飲食品である場合、飲食品としては、具体的に、前述する茶を含有する、例えば緑茶飲料,ほうじ茶飲料、ウーロン茶飲料及び紅茶飲料等の茶飲料;清涼飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、アルコール飲料などの飲料;おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、その他種々の和菓子;クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、カステラ、ドーナッツ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、ゼリー、ホットケーキ、パンその他種々の洋菓子;ヨーグルト、プリン、ババロア、ムース等の乳製品;キャラメル、ソフトキャンディー、ハードキャンディー、グミキャンディー、錠菓(ラムネ菓子、タブレット状製菓、清涼菓子等を含む)等の飴類;チューインガムや風船ガムなどのガム類;ポテトチップス、その他種々のスナック菓子;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ソフトクリーム等のアイスクリーム類; アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート、その他種々の氷菓;フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、その他種々のペースト類;ソース、マヨネーズ、固形ブイヨン、シチューの素、スープの素、その他種々の調味料類を挙げることができる。
【0036】
また本発明組成物が経口医薬品や医薬部外品である場合、前述する茶を含有する、トローチ、ドリンク剤、顆粒剤、散剤(粉末剤)、錠剤、およびカプセル剤等を挙げることができる。また、本発明組成物が口腔用医薬品や医薬部外品である場合、前述する茶を含有するスプレー剤、軟膏剤、パスタ剤等などを挙げることができる。さらにまた本発明組成物がオーラルケア組成物である場合、前述する茶を含有する、液体歯磨き、練り歯磨き、口中洗浄剤、および口臭除去剤などを挙げることができる。
【0037】
経口・口腔用組成物に対してレバウディオサイドA及びモグロシドVは、本発明組成物中のこれらの合計量が1~500ppmとなるように配合される(レバウディオサイドAを含まない場合も含まれる)。かかる合計量は、対象とする本発明組成物の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば下限値としては、前記の通り1ppm以上を挙げることができるが、好ましくは3ppm以上、より好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上である。また上限値としては、前記の通り500ppm以下を挙げることができるが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。具体的には、対象とする本経口組成物の種類に応じて、レバウディオサイドA及びモグロシドVの合計量が、1~500ppmの範囲で、例えば3~300ppm、好ましくは5~200ppm、より好ましくは10~100ppmの範囲になるように配合することもできる。なお、レバウディオサイドA及びモグロシドVは、本発明組成物の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0038】
斯くして調製される本発明組成物1は、茶含有組成物中にレバウディオサイドAとモグロシドVとを前述する割合で且つ上記の総量で含有することで、レバウディオサイドAとモグロシドVとを含有しない茶含有組成物と比較して茶葉感が増強されてなることを特徴とする。また本発明組成物2は、茶含有組成物中のモグロシドVの量が上記総量になるようにモグロシドVを含有するラカンカ抽出物を含有することで、当該ラカンカ抽出物を含有しない茶含有組成物と比較して茶葉感が増強されてなることを特徴とする。またレバウディオサイドAとモグロシドVの配合量にもよるが、本発明組成物1は、同時にステビア抽出物が有する特有の呈味(苦味、甘味の後引き感(後味の残存)、コク味のなさ、口腔内での甘味発現の遅さ)が改善されており、砂糖に近い味質(甘味)を有することもできる。
【0039】
本発明組成物について茶葉感が増強されているか否かは、レバウディオサイドA及びモグロシドV(本茶葉感増強剤1)が配合された茶含有組成物(被験組成物)の風味(茶葉感)を、レバウディオサイドA及びモグロシドVが配合されていない以外は上記被験組成物と同じ組成の茶含有組成物(比較組成物)の風味(茶葉感)と比較することで評価することができる。またモグロシドVを含有するラカンカ抽出物(本茶葉感増強剤2)が配合された茶含有組成物(被験組成物)の風味(茶葉感)を、当該ラカンカ抽出物が配合されていない以外は前記被験組成物と同じ組成の茶含有組成物(比較組成物)の風味(茶葉感)と比較することで評価することができる。この評価において、比較組成物と比較して被験組成物のほうが茶葉感が上昇している場合に、当該被験組成物について本発明の茶葉感増強剤の配合により茶葉感が増強されていると判断することができる。制限されないものの、具体的には、後述する実施例の記載に従って評価することができる。レバウディオサイドA及びモグロシドVまたはモグロシドVを含有するラカンカ抽出物の配合により茶含有組成物の茶葉感が増強されることで、実際よりも多くの茶を配合した茶含有組成物と同様の茶葉感を有する本発明組成物を調製することができる。
【0040】
このように、本発明を用いることにより、茶の配合量の増大や質の改善を要することなく、経口・口腔用組成物の茶葉感を増強することができる。すなわち、本発明の製造方法により、簡便かつ安価に茶葉感が増強された経口・口腔用組成物を製造することができる。また、茶の配合が少ないと薄い(頼りない)単調な味になり易いが、本発明を用いることにより、薄い単調な味が茶葉感が増強されることで補われ、各種茶に応じた固有の風味を増強することができる。例えば緑茶の風味としては緑茶特有の渋味、苦味、グリーン香または/及びうま味を;ほうじ茶の風味としてはほうじ茶特有の香ばしさまたは/及び深みを;ウーロン茶の風味としてはウーロン茶特有の苦味、渋味、香ばしさまたは/及び深みを;紅茶の風味としては紅茶特有の渋味、華やかな香味を挙げることができる。
【0041】
(III)経口用または口腔用組成物の茶葉感増強方法
本発明の経口用または口腔用組成物(経口・口腔用組成物)の茶葉感増強方法は、上記(II)で対象とする経口・口腔用組成物に、レバウディオサイドAとモグロシドVとを、質量比で50:50~99:1の割合で添加することによって実施することができる。この場合、レバウディオサイドAとして、レバウディオサイドAを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含むステビア抽出物を用いることもできる。制限されないものの、他の成分としてレバウディオサイドA以外のステビオール配糖体の含有量が合計で1質量%以下、好ましくはステビオサイド及びレバウディオサイドCの含有量が合計で0.2質量%以下であるステビア抽出物を例示することができる。レバウディオサイドAとモグロシドVとの好ましい配合比は60:40~99:1(質量比)であり、より好ましくは70:30~99:1(質量比)であり、特に好ましくは70:30~98:2(質量比)である。
【0042】
また本発明の経口用または口腔用組成物(経口・口腔用組成物)の茶葉感増強方法は、上記(II)で対象とする経口・口腔用組成物に、モグロシドVを含有するラカンカ抽出物を添加することによっても実施することができる。
【0043】
これらの経口・口腔用組成物に対して茶葉感増強効果を得るのに必要なレバウディオサイドA及びモグロシドVの量は、対象とする本経口・口腔用組成物の種類などに応じて、最終濃度が総量で1~500ppmの範囲になるように適宜設定することができる(レバウディオサイドAを含まない場合も含まれる。以下、同じ。)。レバウディオサイドAとモグロシドVの合計量として、例えば下限値としては、前記の通り1ppm以上を挙げることができるが、好ましくは3ppm以上、より好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上である。また上限値としては、前記の通り500ppm以下を挙げることができるが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。具体的には、対象とする本経口組成物の種類に応じて、レバウディオサイドA及びモグロシドVの総濃度が1~500ppmの範囲で、例えば3~300ppm、好ましくは5~200ppm、より好ましくは10~100ppmの範囲になるように配合することもできる。なお、レバウディオサイドA及びモグロシドVは、本発明組成物の製造過程の任意の段階で添加することができる。
【0044】
本発明の茶葉感増強方法において、レバウディオサイドAとモグロシドVは、各成分を個別に上記の配合比と添加量になるように、対象とする経口・口腔用組成物に添加してもよいし、モグロシドVを含むラカンカ抽出物を対象とする経口・口腔用組成物に添加してもよいし、また(I)で説明する本茶葉感増強剤を、上記添加量になるように、対象とする経口・口腔用組成物に添加してもよい。
【0045】
レバウディオサイドAとモグロシドVの配合量にもよるが、茶含有組成物にレバウディオサイドAとモグロシドVとを上記の割合で配合する場合、ステビア抽出物が有する特有の呈味(苦味、甘味の後引き感(後味の残存)、コク味のなさ、口腔内での甘味発現の遅さ)を改善し、ステビア抽出物の味質を砂糖の味質に近づけながらも、茶含有組成物の茶葉感を増強することができる。このように、本発明の方法によれば、茶の配合量の増大や質の改善を要することなく、茶含有組成物の茶葉感を増強することができる。すなわち、本発明の方法により、簡便かつ安価に、茶葉感が増強された本発明組成物を得ることができる。また、前述するように、本発明の方法を用いることにより、茶含有組成物の茶葉感を増強することで、茶の使用量を抑えることで生じる単調な味を補い、茶含有組成物の茶葉感やその風味を増強することができる。
【0046】
なお、本明細書において、「含む」や「含有する」という用語には、「から実質的になる」及び「からなる」の意味が包含される。
【実施例】
【0047】
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0048】
以下の実験例において、レバウディオサイドA含有原料として、レバウディオサイドAを95.2%、レバウディオサイドCを0.1%、及びステビオサイドを0.1%の割合で含むステビア抽出物(レバウディオJ-100:守田化学工業(株)製)(乾燥粉末)(特開2011-115142号公報参照)、及びレバウディオサイドAを90%の割合で含むステビア抽出物(レバウディオAD:守田化学工業(株)製)(乾燥粉末)を用いた。以下の実験例では、前者を「ステビア抽出物1」、後者を「ステビア抽出物2」と称する。
【0049】
また、以下の実験例において、モグロシドV含有原料として、ラカンカ抽出物(サンナチュレM50:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)(乾燥粉末)を使用した。サンナチュレM50は羅漢果の生果実(未乾燥果実)を水で抽出した後、濾過して回収した水抽出液を脱色及び濃縮した後、スプレードライにより乾燥粉末としてモグロシドVを50%の割合で含むように調製したものである。以下の実験例では、これを「ラカンカ抽出物」と称する。
【0050】
実施例1~5 茶葉感増強剤の調製
前述するステビア抽出物1及びラカンカ抽出物を用いて、レバウディオサイドAとモグロシドVの配合比(質量比)が表1に記載する割合になるように混合して、5種類の茶葉増強剤1~5(実施例1~5)を調製した。表1に記載するレバウディオサイドAとモグロシドVの配合比は、レバウディオサイドAとモグロシドVの総量を100部とした場合における各成分の配合比(質量比)を意味する。
【0051】
【0052】
実験例1 茶葉感増強剤の茶葉感増強作用の評価(その1)
(1)評価方法
飲食品の味質の官能評価に従事し訓練して社内試験に合格したパネル4名(以下の実験例においても同じ)を用いて、前記茶葉感増強剤1~5(実施例1~5)を配合した各種の茶含有飲食物I(紅茶含有飲食物[被験飲食物B]、ウーロン茶含有飲食物[被験飲食物O]、緑茶含有飲食物[被験飲食物G])(pH5~6)の茶葉感を評価した。ここで茶葉感は、茶含有飲食物を摂取した際に口腔及び鼻腔内で感じられる茶特有の風味を意味する。
【0053】
(茶含有飲食物Iシリーズ:被験飲食物B、O及びG)
茶エキスパウダー(下記参照) 0.2
茶葉感増強剤 0.002(表2~4参照)
水 残 部
合計 100.00%
【0054】
(茶エキスパウダー)
紅茶(Black tea):FD紅茶エキスパウダー NO.16600(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
ウーロン茶(Oolong tea):FDウーロン茶エキスパウダー NO.16297(同上)
緑茶(Green tea):FD緑茶エキスパウダーNO.17141(同上)
これらの茶エキスパウダーは、各種の乾燥茶葉から調製した茶抽出液をフリーズドライして調製した乾燥粉末である。
【0055】
具体的には、評価基準とする茶含有飲食物として、上記各茶含有飲食物について茶葉感増強剤を配合しない茶含有飲食物を「対照飲食物」;上記各茶含有飲食物について茶エキスパウダーの配合量を1.2倍量(茶エキスパウダー0.24質量%)とし、且つ茶葉感増強剤を配合しない茶含有飲食物を「陽性対照飲食物」とし、これらの茶葉感をそれぞれ「0点」、及び「2点」とした。
【0056】
パネル4名に下記の評価スコアに従って、茶葉感増強剤1~5(実施例1~5)を添加した茶含有飲食物I(被験飲食物B、O及びG:表2~4)の茶葉感を評価してもらい、パネル4名の評価スコアの平均値を求めた。なお、これらの茶含有飲食物の茶葉感の評価はいずれもそれらの品温を約25℃に調整したうえで実施した(以下の実験例においても同じ)。
【0057】
[茶葉感の評価スコア]
3点:陽性対照飲食物よりも強い茶葉感が感じられる(強い茶葉感増強効果あり)
2点:陽性対照飲食物とほぼ同じ茶葉感が感じられる(茶葉感増強効果あり)
1点:対照飲食物よりも強いが、陽性対照飲食物よりは弱い茶葉感が感じられる(茶葉感増強効果ややあり)
0点:対照飲食物と同程度の茶葉感(茶葉感増強効果なし)
【0058】
(2)評価結果
結果を表2~4に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
表2~4に示す結果から、各種の茶含有組成物に対して、レバウディオサイドAとモグロシドVとを併用した組成物(茶葉感増強剤1)を配合することで、茶含有組成物の茶葉感を有意に増強させることができることが確認された。具体的には、レバウディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2の割合(質量比)で併用することで、各種の茶を含有する組成物に対して茶葉感増強作用を発揮することが確認された。また、茶含有組成物を冷蔵して品温を10℃に調整したものについても同様に評価したところ、25℃で評価した前記評価スコアと有意な相違は認められなかった。
【0063】
また、前記ステビア抽出物1に代えてステビア抽出物2を用いて同様の試験を行った。その結果、前記と同様に、レバウディオサイドAとモグロシドVとを50:50~99:1、好ましくは60:40~99:1、より好ましくは70:30~99:1、特に好ましくは70:30~98:2の割合(質量比)で併用することで、各種の茶を含有する組成物に対して茶葉感増強作用を発揮することが確認された。
【0064】
実験例2 茶葉感増強剤の茶葉感増強作用の評価(その2)
(1)評価方法
パネル4名を用いて、前記茶葉感増強剤(実施例2)を各種濃度(0.0005~0.02質量%:表6~8参照)になるように配合した茶含有飲食物II(紅茶含有飲食物[被験飲食物B]、ウーロン茶含有飲食物[被験飲食物O]、緑茶含有飲食物[被験飲食物G])(pH5~6)の茶葉感を評価した。
【0065】
【0066】
具体的には、上記表5に示すように、評価基準とする茶含有飲食物として、上記各茶含有飲食物IIについて茶葉感増強剤を配合しない茶含有飲食物を「対照飲食物II」;上記各茶含有飲食物IIについて各茶の配合量を1.2倍量とし、且つ茶葉感増強剤を配合しない茶含有飲食物を「陽性対照飲食物II」とし、これらの茶葉感をそれぞれ「0点」、及び「2点」とした。パネル4名に実験例1と同じ評価スコアに従って、各種濃度の茶葉感増強剤を添加した評価試験用の茶含有飲食物(被験飲食物:表6~8)の茶葉感を評価してもらい、パネル4名の評価スコアの平均値を求めた。
【0067】
(2)評価結果
結果を表6~8に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表6~8に示す結果から、茶含有組成物に対して茶葉感増強剤(実施例1)を少なくとも5ppm以上配合することで各種の茶(紅茶、ウーロン茶、緑茶)の茶葉感が増強されることが確認された。5ppmの配合でも有意な茶葉増強効果が認められたことから、1ppm以上(特にウーロン茶、紅茶)、好ましくは3ppm以上(特に紅茶、緑葉)の配合で効果を発揮するものと考えられる。また本発明の茶葉感増強剤の配合を多くするにつれて、茶葉感増強効果の低下が認められるが、これは茶葉感増強剤の甘味によって茶葉感が感じられにくくなることが原因であると考えられる。
【0072】
なお、茶葉感増強剤(実施例2)の甘味閾値(極限法)は0.002%(20ppm)であることから、本発明の茶葉感増強剤が発揮する茶葉感増強効果はその甘味の有無とは無関係であると考えられる。つまり、本発明の茶葉感増強剤は甘味を呈さない量でも有意に茶葉感成分の茶葉感を増強することができる。
【0073】
実験例3 茶葉感増強剤の茶葉感増強作用の評価(その3)
(1)評価方法
パネル4名を用いて、茶葉感増強剤として前記実施例2の茶葉感増強剤、及びモグロシドVを50%の割合で含むラカンカ抽出物(実施例6)をそれぞれ用いて調製した茶含有飲食物III(紅茶含有飲食物[被験飲食物B]、ウーロン茶含有飲食物[被験飲食物O]、緑茶含有飲食物[被験飲食物G])(pH5~6)の茶葉感を評価した。また比較試験として、前記茶葉感増強剤に代えて、スクラロース(比較例1)またはステビア抽出物1(参考例1)(以上、「高甘味度甘味料」)を配合して調製した茶含有飲食物IIIについても、同様にして茶葉感を評価し、前記茶葉感増強剤を用いた場合に得られる茶葉感と比較した。
【0074】
(茶含有飲食物IIIシリーズ:被験飲食物B、O及びG)
茶エキスパウダー(実験例1参照) 0.2
茶葉感増強剤または高甘味度甘味料 表9参照
水 残 部
合計 100.00%
【0075】
具体的には、前記茶含有飲食物IIIの処方において、茶葉感増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない茶含有飲食物を「対照飲食物」;茶の配合量を1.2倍に増やし、且つ茶葉感増強剤及び高甘味度甘味料のいずれも配合しない茶含有飲食物を「陽性対照飲食物」として、実験例1と同じ評価スコア(基準)に従って、パネル4名に茶含有飲食物III(被験飲食物B、O及びG)の茶葉感を評価してもらった。
【0076】
(2)評価結果
被験飲食物B、O及びGについてパネル4名の評価スコアの平均値を表9に示す。表中「甘味倍率」は、ショ糖の甘さに換算した甘味度を意味する。添加量を調節することで、最終の飲食物の甘味度が等しく砂糖1.5%相当になるように調整している。なお、砂糖1.5%相当量とは甘味を呈する量である。
【0077】
【0078】
以上、表9に示す結果から、実験例1及び2と同様に、茶含有組成物に対してレバウディオサイドAとモグロシドVとを組み合わせて配合することで、茶含有組成物の茶葉感を有意に増強させることができることが確認された。また、茶含有組成物にモグロシドVを含むラカンカ抽出物を配合した場合でも、茶含有組成物の茶葉感を有意に増強させることができることが確認された。これに対して、比較例1及び参考例1の結果に示すように、高甘味度甘味料であるスクラロースには茶葉感増強効果はほとんど認められず、またレバウディオサイドAの効果も低かった。このことから、本発明の茶葉感増強作用は、モグロシドVを含むラカンカ抽出物またはレバウディオサイドAとモグロシドVとの併用による特有の効果であることが認められた。また、結果は示していないが、レバウディオサイドAとモグロシドVを甘味の閾値以上(甘味を呈する量以上)の割合で配合する場合、本茶含有組成物は、同時にステビア抽出物が有する特有の呈味(苦味、甘味の後引き感(後味の残存)、コク味のなさ、口腔内での甘味発現の遅さ)が改善されており、砂糖に近い味質(甘味)を有することもできることも確認された。
【0079】
(処方例)
以下に説明するように、本茶葉感増強剤として実施例2の茶葉感増強剤を用いて、各種の茶含有組成物を製造した。
【0080】
処方例1 ミルクティー
表10に記載する処方からなるミルクティー(比較処方例1、処方例1)を製造し、両者を飲み比べて、各飲料の茶葉感を評価した。
【0081】
【0082】
(製法)
(1)水に成分2と8の粉体混合物を加え、80℃に加熱して10分間撹拌しながら溶解し、次いで20℃以下まで冷却する。
(2)別途、水に成分5と6を加え、60℃に加熱して10分間撹拌しながら溶解し、次いで20℃以下まで冷却する。
(3)前記(1)及び(2)でそれぞれ調製したもの、並びに残りの原料を混合し、水にて全量を合わせる。
(4)75℃に加温した状態でホモゲナイザー(第一段15MPa、第二段5MPa)にかけて均質化する。
(5)容器に充填した後、121℃で20分間加熱殺菌する。
【0083】
調製したミルクティー(比較処方例1、処方例1)を飲み比べたところ、比較処方例1と比較して、処方例1は茶葉感が高まっており、特に紅茶のフルーティーな風味が向上していることが確認された。
【0084】
処方例2 ほうじ茶配合チョコレート
表11に記載する処方からなるほうじ茶配合チョコレート(比較処方例2、処方例2)を製造し、両者を食べ比べて、各チョコレートの茶葉感を評価した。
【0085】
【0086】
(製法)
(1)成分1を45℃~50℃で湯煎して溶解する。
(2)溶解後、40℃まで冷却し、成分2および3を加えて混合する。
(3)型に流し、冷却固化する。
【0087】
調製したほうじ茶配合チョコレート(比較処方例2、処方例2)を食べ比べたところ、比較処方例2と比較して、処方例2は茶葉感(茶葉の濃厚感)が高まっており、特にほうじ茶の香ばしい風味が強く感じられた。