IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図1
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図2
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図3
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図4
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図5
  • 特許-ダイカストマシン及び制御装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ダイカストマシン及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20230705BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20230705BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B22D17/32 F
B22D17/22 Z
B22D17/32 J
B22D17/32 Z
B22D46/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019122742
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021007967
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和樹
(72)【発明者】
【氏名】相田 悟
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-182842(JP,A)
【文献】特開2011-206788(JP,A)
【文献】特開平01-244819(JP,A)
【文献】特開平05-286005(JP,A)
【文献】特開平08-309814(JP,A)
【文献】特開2004-130391(JP,A)
【文献】特開平07-191960(JP,A)
【文献】特開平06-190887(JP,A)
【文献】特開平04-043017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B22D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締装置と、
射出装置と、
前記型締装置及び前記射出装置を用いた鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、
金型データを用いて前記射出条件を算出するシミュレーション部と、
前記射出条件を記憶する第1の記憶部と、
液状金属の凝固によって製造されるダイカスト品の鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、
前記射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する第3の記憶部と、
前記金型データの入力、前記射出条件の表示と変更、及び、前記対策案の表示が可能な表示部と、を有する制御装置と、を備え
前記規定値は前記加減量の刻み量であることを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記表示部において、前記鋳造欠陥の表示と選択が可能であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記表示部において、前記選択に応じた前記対策案を表示することが可能であることを特徴とする請求項2記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記対策案に優先順位付けがされることを特徴とする請求項1ないし請求項いずれか一項記載のダイカストマシン。
【請求項5】
ダイカストマシンの鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、
金型データを用いて前記射出条件を算出するシミュレーション部と、
前記射出条件を記憶する第1の記憶部と、
液状金属の凝固によって製造されるダイカスト品の鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、
前記射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する第3の記憶部と、
前記金型データの入力、前記射出条件の表示と変更、及び、前記対策案の表示が可能な表示部と、を備え
前記規定値は前記加減量の刻み量であることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
前記表示部において、前記鋳造欠陥の表示と選択が可能であることを特徴とする請求項記載の制御装置。
【請求項7】
前記表示部において、前記選択に応じた前記対策案を表示することが可能であることを特徴とする請求項記載の制御装置。
【請求項8】
前記対策案に優先順位付けがされることを特徴とする請求項ないし請求項いずれか一項記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンでは、所定の射出条件に従って制御装置が射出装置や型締装置を制御し、製品(ダイカスト品)を製造する。例えば、初めてダイカストマシンに適用される新規金型を用いて、製品を製造する場合、新規金型用の新しい射出条件を決定する必要がある。
【0003】
新しい射出条件を決定する場合、例えば、新規金型の金型データ等を鋳造理論に基づく計算式にあてはめ、射出条件を算出する。そして、算出された射出条件に従ってダイカストマシンを動作させ製品の鋳造を行う。
【0004】
鋳造された製品に鋳造欠陥が生じた場合、例えば、オペレータの経験や勘に基づき射出条件を変更し、再度製品を鋳造して鋳造欠陥が消滅したか否かを確認する。例えば、鋳造欠陥が消滅するまで、射出条件の変更を繰り返し、新規金型の射出条件を決定する。
【0005】
経験の浅いオペレータの場合、適切な鋳造欠陥の対策を講ずることができないおそれがある。このため、新規金型の射出条件の決定に時間がかかり、製品の生産性が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-206788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、新規金型の射出条件の決定を容易にするダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のダイカストマシンは、型締装置と、射出装置と、前記型締装置及び前記射出装置を用いた鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、金型データを用いて前記射出条件を算出するシミュレーション部と、前記射出条件を記憶する第1の記憶部と、液状金属の凝固によって製造されるダイカスト品の鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、前記射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する第3の記憶部と、前記金型データの入力、前記射出条件の表示と変更、及び、前記対策案の表示が可能な表示部と、を有する制御装置と、を備え、前記規定値は前記加減量の刻み量である
【0009】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記表示部において、前記鋳造欠陥の表示と選択が可能であることが好ましい。
【0010】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記表示部において、前記選択に応じた前記対策案を表示することが可能であることが好ましい。
【0012】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記対策案に優先順位付けがされることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様の制御装置は、ダイカストマシンの鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、金型データを用いて前記射出条件を算出するシミュレーション部と、前記射出条件を記憶する第1の記憶部と、液状金属の凝固によって製造されるダイカスト品の鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、前記射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する第3の記憶部と、前記金型データの入力、前記射出条件の表示と変更、及び、前記対策案の表示が可能な表示部と、を備え、前記規定値は前記加減量の刻み量である
【0014】
上記態様の制御装置において、前記表示部において、前記鋳造欠陥の表示と選択が可能であることが好ましい。
【0015】
上記態様の制御装置において、前記表示部において、前記選択に応じた前記対策案を表示することが可能であることが好ましい。
【0017】
上記態様の制御装置において、前記対策案に優先順位付けがされることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、新規金型の射出条件の決定を容易にするダイカストマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態のダイカストマシンを示す模式図。
図2】第1の実施形態の表示部の表示画面の一例を示す図。
図3】第1の実施形態の表示部の表示画面の別の一例を示す図。
図4】第1の実施形態の射出条件の決定手順を示すフローチャート。
図5】第1の実施形態の射出条件の決定手順を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態のダイカストマシンを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のダイカストマシンは、型締装置と、射出装置と、型締装置及び射出装置を用いた鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、金型データを用いて射出条件を算出するシミュレーション部と、射出条件を記憶する第1の記憶部と、鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、金型データの入力、射出条件の表示と変更、及び、対策案の表示が可能な表示部と、を有する制御装置と、を備える。
【0022】
また、第1の実施形態の制御装置は、ダイカストマシンの鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する制御装置であって、金型データを用いて射出条件を算出するシミュレーション部と、射出条件を記憶する第1の記憶部と、鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部と、金型データの入力、射出条件の表示と変更、及び、対策案の表示が可能な表示部と、を備える。
【0023】
図1は、第1の実施形態のダイカストマシンを示す模式図である。図1は、第1の実施形態のダイカストマシン100の平面図を示す。
【0024】
図1に示すように、ダイカストマシン100は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、金型16、制御装置18、スプレイ装置20、給湯装置22、操作装置24、排出部26を備える。制御装置18は、シミュレーション部18a、第1の記憶部18b、第2の記憶部18c、第3の記憶部18d、及び、表示部18eを有する。
【0025】
ダイカストマシン100は、金型16の内部に液状金属(溶湯)を射出し、その金属を金型16内で凝固させることにより、ダイカスト品を製造する機械である。金属は、例えば、アルミニウム合金、亜鉛合金、又は、マグネシウム合金である。
【0026】
金型16は、型締装置10と射出装置14との間に設けられる。金型16は、例えば、図示しない固定金型と移動金型を含む。
【0027】
型締装置10は、金型16の開閉及び型締めを行う機能を有する。射出装置14は、金型16の内部に液状金属を射出する機能を有する。押出装置12は、ダイカスト品を固定金型又は移動金型から押し出し、離脱させる機能を有する。型締装置10、射出装置14、及び、押出装置12には、例えば、油圧シリンダが用いられる。
【0028】
スプレイ装置20は、金型16を清掃するための空気を、金型16にスプレイする機能を有する。また、スプレイ装置20は、ダイカスト品の金型16からの押し出しを容易にするための離型剤を、金型16にスプレイする機能を有する。
【0029】
給湯装置22は、射出装置14の射出スリーブに液状金属を供給する機能を有する。ダイカスト品の製造の1サイクル毎に、射出スリーブに液状金属が供給される。
【0030】
操作装置24は、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14の機械的動作を操作するための操作スイッチを有する。操作装置24には、例えば、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14の電源スイッチ、動作開始スイッチ、停止スイッチなどが設けられる。また、操作装置24には、例えば、金型16の開閉スイッチが設けられる。
【0031】
排出部26は、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14により製造されたダイカスト品を、ダイカストマシン100から最終的に排出する部分である。排出部26は、例えば、金型16から押し出されたダイカスト品が載置されたベルトコンベアの末端である。
【0032】
制御装置18は、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14を用いた鋳造動作を、所定の射出条件に基づき制御する機能を有する。制御装置18は、あらかじめ設定された射出条件で鋳造動作が行われるように、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14に対して指令を出力する。制御装置18は、例えば、モニタされる型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14の動作状況をフィードバックして、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14の鋳造動作を制御する。
【0033】
制御装置18は、シミュレーション部18a、第1の記憶部18b、第2の記憶部18c、第3の記憶部18d、及び、表示部18eを有する。
【0034】
制御装置18は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0035】
シミュレーション部18aは、金型データ及び製品データを用いて新規金型の射出条件を算出する。新規金型は、例えば、新しく使用する金型16であり、新しい射出条件を決定することが要求されている金型16である。
【0036】
金型データ及び製品データは、例えば、金型の投影面積、金型厚さ、ゲート断面積、空打ちストローク、ビスケット厚さ、製品重量、製品肉厚、プランジャチップ径、鋳込み重量等である。シミュレーション部18aは、金型データ及び製品データを鋳造理論に基づく計算式にあてはめ、自動的に射出条件を算出する。
【0037】
第1の記憶部18bは、例えば、シミュレーション部18aで算出された射出条件を記憶する。射出条件は、例えば、プランジャの射出の低速速度及び高速速度、プランジャの射出の高速加速度、高速区間、昇圧時間、鋳造圧力等である。
【0038】
第2の記憶部18cは、例えば、鋳造欠陥及び鋳造欠陥に対する対策案を記憶する。第2の記憶部18cが記憶する鋳造欠陥は、例えば、「シワ」、「ワレ」、「カケ」、「フクレ」、「引け巣」、「巻き込み巣」、「バリ」である。第2の記憶部18cは、鋳造欠陥のそれぞれに対し、例えば、複数の対策案を記憶する。鋳造欠陥や対策案は、例えば、過去の鋳造動作で蓄積された知識である。複数の対策案には、例えば、優先順位が付けられる。
【0039】
第3の記憶部18dは、例えば、射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する。第3の記憶部18dは、例えば、鋳造欠陥に対する対策として、プランジャの射出の高速速度の変更を選択した場合、高速速度の加減量の規定値を記憶する。例えば、高速速度を、0.3m/sの刻み量で変更することを規定する。
【0040】
第1の記憶部18b、第2の記憶部18c、及び、第3の記憶部18dは、例えば、半導体メモリ又はハードディスクである。
【0041】
表示部18eは、例えば、制御装置18の前面側に取り付けられる。表示部18eは、制御装置18の入出力装置である。表示部18eは、シミュレーション部18a、第1の記憶部18b、第2の記憶部18c、及び、第3の記憶部18dにアクセスが可能である。
【0042】
表示部18eにおいて、例えば、金型データ及び製品データの入力、シミュレーション部18aで算出された射出条件の表示と変更、鋳造欠陥の表示と選択、鋳造欠陥の対策案の表示が可能である。表示部18eにおいて、例えば、鋳造欠陥の表示と選択が可能であり、鋳造欠陥の選択に応じた対策案を表示することが可能である。
【0043】
例えば、対策案には優先順位が付けられて表示される。優先順位は、例えば、過去の対策効果の程度に基づき決定される。
【0044】
また、表示部18eは、例えば、鋳造動作の射出波形、アラームメッセージ、製品の生産数、生産の進捗度、品質データ、及び、運転時間を表示可能である。
【0045】
表示部18eは、例えば、タッチパネルの液晶ディスプレイを含む。表示部18eは、例えば、タッチパネルの有機ELディスプレイを含む。
【0046】
図2は、第1の実施形態の表示部の表示画面の一例を示す図である。表示部18eの表示画面に鋳造欠陥の種類が表示されている。表示部18eを用いてオペレータとの対話形式で、発生した鋳造欠陥を選択することが可能である。図2では、発生した鋳造欠陥として「シワ」が選択された場合を示している。
【0047】
図3は、第1の実施形態の表示部の表示画面の別の一例を示す図である。表示部18eの表示画面に「シワ」が鋳造欠陥として発生した場合の対策案が4つ表示されている。例えば、対策案に優先順位を付けて表示部18eに表示する。
【0048】
次に、ダイカストマシン100による新規金型の射出条件の決定手順について説明する。
【0049】
図4及び図5は、第1の実施形態の射出条件の決定手順を示すフローチャートである。
【0050】
図4に示すように、まず、表示部18eを用いて、制御装置18に新規金型の金型データ及び製品データを入力する。
【0051】
次に、シミュレーション部18aにより、新規金型の射出条件を算出する。新規金型の射出条件は、表示部18eから入力された、金型データ及び製品データを用いてシミュレーションにより算出される。シミュレーション部18aは、金型データ及び製品データを鋳造理論に基づく計算式にあてはめ、自動的に射出条件を算出する。
【0052】
次に、シミュレーション部18aにより算出された新規金型の射出条件を、第1の記憶部18bにする。
【0053】
次に、新規金型の射出条件を第1の記憶部18bから読み出し、射出条件に基づき鋳造動作を行い、ダイカスト品を製造する。
【0054】
次に、製造されたダイカスト品を検査し、鋳造欠陥の有無及びその種類を判定する。鋳造欠陥が無かった場合、第1の記憶部18bに記憶された射出条件を、新規金型の射出条件として決定し登録する。
【0055】
一方、鋳造欠陥があった場合、鋳造欠陥対策を実行するか否かを判定する。例えば、鋳造欠陥が軽微なものであった場合には、鋳造欠陥対策を実行せず、第1の記憶部18bに記憶された射出条件を、新規金型の射出条件として決定する場合もあり得る。
【0056】
鋳造欠陥がダイカスト品の品質を低下させるおそれがある場合は、図5に示す鋳造欠陥対策を行う。
【0057】
図5に示すように、鋳造欠陥対策では、まず、ダイカスト品に発生した鋳造欠陥の種類を選択する。例えば、図2に示す表示部18eの表示画面で、鋳造欠陥の種類を選択する。例えば、鋳造欠陥として、図2に示すように「シワ」を選択する。
【0058】
次に、鋳造欠陥対策を選択する。表示部18eにおいて、鋳造欠陥の選択に応じた鋳造欠陥対策の対策案が表示画面に表示される。対策案は第2の記憶部18cから呼び出される。例えば、図3に示すような表示部18eの表示画面で、複数の対策案の中から実行する鋳造欠陥対策を選択する。
【0059】
例えば、図3に示すような表示部18eの表示画面で、対策案1~対策案4の中から対策案3を選択する。対策案3は、プランジャの射出の高速速度の上昇である。
【0060】
例えば、図3に示すような表示部18eの表示画面で、鋳造欠陥対策を選択した場合、その鋳造欠陥対策の詳細を、別の表示画面で表示部18eに表示させることも可能である。鋳造欠陥対策の詳細は、例えば、第3の記憶部18dに記憶される。鋳造欠陥対策の詳細は、例えば、射出条件を変更する際の加減量の規定値である。
【0061】
次に、鋳造欠陥対策を実行する。例えば、対策案3のプランジャの射出の高速速度の上昇を選択した場合、第1の記憶部18bに記憶された射出条件を表示部18eの表示画面に呼び出す。そして、プランジャの射出の高速速度が上昇するよう変更する。変更された射出条件は、第1の記憶部18bに記憶される。
【0062】
高速速度の上昇量は、例えば、第3の記憶部18dに記憶されている0.3m/sとする。
【0063】
次に、変更された新規金型の射出条件を第1の記憶部18bから読み出し、変更された射出条件に基づき鋳造動作を行い、ダイカスト品を製造する。
【0064】
次に、製造されたダイカスト品を検査し、鋳造欠陥の有無及びその種類を判定する。鋳造欠陥が無かった場合、第1の記憶部18bに記憶された変更された射出条件を、新規金型の射出条件として決定し登録する。
【0065】
一方、鋳造欠陥があった場合、別の鋳造欠陥対策を実行するか否かを判定する。例えば、鋳造欠陥が軽微なものであった場合には、鋳造欠陥対策を実行せず、第1の記憶部18bに記憶された変更した射出条件を、新規金型の射出条件として決定する場合もあり得る。
【0066】
再度発生した鋳造欠陥がダイカスト品の品質を低下させるおそれがある場合は、例えば、表示部18eの表示画面で、別の鋳造欠陥対策を選択する。例えば、図3に示すような表示部18eの表示画面で、対策案3以外の鋳造欠陥対策を選択し、実行する。
【0067】
以上の手順を、新規金型の射出条件が決定されるまで続ける。
【0068】
次に、第1の実施形態のダイカストマシン及び制御装置の作用及び効果について説明する。
【0069】
ダイカストマシンでは、所定の射出条件に従って制御装置が射出装置や型締装置を制御し、製品を製造する。例えば、初めてダイカストマシンに適用される新規金型を用いて、製品を製造する場合、新規金型用の新しい射出条件を決定する必要がある。
【0070】
新しい射出条件を決定する場合、例えば、新規金型の金型データ等を鋳造理論に基づく計算式にあてはめ、射出条件を算出する。そして、算出された射出条件に従ってダイカストマシンを動作させ製品の鋳造を行う。
【0071】
鋳造されたダイカスト品に鋳造欠陥が生じた場合、例えば、オペレータの経験や勘に基づき射出条件を変更し、再度ダイカスト品を鋳造して鋳造欠陥が消滅したか否かを確認する。鋳造欠陥が消滅するまで、射出条件の変更を繰り返し、新規金型の射出条件を決定する。
【0072】
経験の浅いオペレータの場合、適切な鋳造欠陥の対策を講ずることができないおそれがある。このため、新規金型の射出条件の決定に時間がかかり、ダイカスト品の生産性が低下するという問題が生じる。
【0073】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、鋳造欠陥及び鋳造欠陥に対する対策案を記憶する第2の記憶部18cを有する制御装置18を備える。オペレータは、発生した鋳造欠陥を第2の記憶部18cから呼び出され表示部18eに表示された鋳造欠陥の種類から選択する。そうすると、第2の記憶部18cから対策案が表示部18eに表示される。
【0074】
第2の記憶部18cの対策案は、過去の鋳造動作で蓄積された知識に基づいている。したがって、例え、経験の浅いオペレータであっても、適切な鋳造欠陥の対策を講ずることが可能となる。よって、新規金型の射出条件の決定にかかる時間が短縮され、ダイカスト品の生産性が向上する。
【0075】
第2の記憶部18cの対策案に優先順位付けがされることが好ましい。例えば、表示部18eに優先順位を明示して対策案が表示されることで、更に適切な鋳造欠陥対策を実行することが可能となる。
【0076】
射出条件を変更する際の加減量の規定値を記憶する第3の記憶部18dを、更に備えることが好ましい。例えば、加減量の規定値を表示部18eに表示することで、適切な射出条件の変更が可能となり、更に適切な鋳造欠陥の対策を講ずることが可能となる。
【0077】
以上、第1の実施形態によれば、新規金型の射出条件の決定を容易にするダイカストマシン及び制御装置を提供することが可能となる。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のダイカストマシンは、第2の記憶部及び第3の記憶部が、空間的にシミュレーション部、第1の記憶部、及び、表示部と離間して設けられる点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0079】
図6は、第2の実施形態のダイカストマシンを示す模式図である。図6は、第2の実施形態のダイカストマシン200の平面図を示す。
【0080】
図6に示すように、ダイカストマシン100は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、金型16、制御装置18、スプレイ装置20、給湯装置22、操作装置24、排出部26を備える。制御装置18は、シミュレーション部18a、第1の記憶部18b、第2の記憶部18c、第3の記憶部18d、及び、表示部18eを有する。
【0081】
第2の記憶部18c及び第3の記憶部18dが、空間的にシミュレーション部18a、第1の記憶部18b、及び、表示部18eと離間して設けられる。例えば、第2の記憶部18c及び第3の記憶部18dと、表示部18eは無線通信により接続される。
【0082】
第2の記憶部18c及び第3の記憶部18dは、ダイカストマシン200以外のダイカストマシンの制御装置と共有化することも可能である。
【0083】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態同様、新規金型の射出条件の決定を容易にするダイカストマシン及び制御装置を提供することが可能となる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、ダイカストマシン又は制御装置などで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる、ダイカストマシン又は制御装置などに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0085】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのダイカストマシン及び制御装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0086】
10 型締装置
12 押出装置
14 射出装置
16 金型
18 制御装置
18a シミュレーション部
18b 第1の記憶部
18c 第2の記憶部
18d 第3の記憶部
18e 表示部
20 スプレイ装置
22 給湯装置
24 操作装置
26 排出部
100 ダイカストマシン
図1
図2
図3
図4
図5
図6