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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】プリーツフィルター複合用支持ネット
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/14 20060101AFI20230705BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230705BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B01D39/14 C
B01D69/10
D03D1/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019135578
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021016846
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 健一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0343353(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102094279(CN,A)
【文献】特表2016-503726(JP,A)
【文献】特開2000-325764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-39/20
B01D61/00-71/82
C02F1/44
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、
織物からなる支持ネット本体を備えており、
前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項2】
プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、
織物からなる支持ネット本体を備えており、
前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の緯糸に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項3】
プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、
織物からなる支持ネット本体を備えており、
前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であり、かつ、隣接する複数の緯糸に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項4】
前記ピッチ寸法Pxと前記経糸の直径Dxとの比(Px/Dx)は、4~11の数値範囲であり、前記ピッチ寸法Pyと前記緯糸の直径Dyとの比(Py/Dy)は、4~11の数値範囲である請求項3に記載のプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項5】
前記織物からなる支持ネット本体において、複数の経糸、及び、複数の緯糸に関し、奇数番目の経糸は、奇数番目の緯糸の上側、偶数番目の緯糸の下側を通るように構成され、偶数番目の経糸は、奇数番目の緯糸の下側、偶数番目の緯糸の上側を通るように構成されている請求項1から4のいずれかに記載のプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項6】
前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位における経糸の平均目開き及び緯糸の平均目開きが、0.12mm以上0.9mm以下である請求項1から5のいずれかに記載のプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項7】
前記織物からなる支持ネット本体において、複数の経糸、及び、複数の緯糸に関し、前記経糸及び前記緯糸の繊維径は、20μm以上500μm以下である請求項1から6のいずれかに記載のプリーツフィルター複合用支持ネット。
【請求項8】
記支持ネット本体は、熱可塑性のフッ素系樹脂繊維の織物である請求項1から7のいずれかに記載のプリーツフィルター複合用支持ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリーツフィルター複合用支持ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気や水等の濾過流体から粒子状物質等を濾過するためにフィルターが用いられており、特許文献1に示されるようなプリーツフィルターが知られている。このプリーツフィルターは、シート状のフィルター部材を、例えば、図11に示すように、複数のひだを有する形態に折り畳んで(ひだ折り)筒状形態を形成し、筒状形状のケージ101に収容され使用される。なお、図11においては、筒状の中間コア部材102の外周面に沿って、ひだ折りされたプリーツフィルター100が配置されている。
【0003】
ここで、プリーツフィルターは、一般的に、多孔質性のフィルターエレメントにプリーツフィルター複合用支持体を複合化して構成されたフィルター部材をひだ折りして形成される。この支持体は、フィルターエレメントの孔より大きい開口部を有するシート状体であり、プリーツフィルター(フィルターエレメント)が型崩れすることを防止するため、更には、ひだ間の接触による通水性の低下を抑制するために設けられる。
【0004】
フィルターエレメントに積層される支持体としては、例えば、スパンボンド不織布等の長繊維不織布や、格子状の開口部を複数有する樹脂製シート等が用いられている。
【0005】
このようなプリーツフィルターはひだ折り構造を備えているため、コンパクトであるにもかかわらず、ケージ内に流入した濾過流体との接触面積が増大し、優れた濾過性能を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-47809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにプリーツフィルターは、優れた濾過性能を有するものではあるが、更なる濾過性能の向上が望まれている。その一つのアプローチとしては、フィルターエレメントの利用率を高めるために通水性向上を目的としたフィルターエレメント自体の改良であるが、通水性を高め過ぎると濾過性能が低下してしまうため、このフィルターエレメントの改良には限度があり、優れた通水性を発揮するプリーツフィルターを得ることは難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、フィルターエレメントに複合化される支持体に着目し、プリーツフィルターの通水性を向上させることができるプリーツフィルター複合用支持ネット(支持体)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、織物からなる支持ネット本体を備えており、前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネットにより達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、織物からなる支持ネット本体を備えており、前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の緯糸に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネットにより達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、プリーツフィルター用のフィルターに複合化されるプリーツフィルター複合用支持ネットであって、織物からなる支持ネット本体を備えており、前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であり、かつ、隣接する複数の緯糸に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%であることを特徴とするプリーツフィルター複合用支持ネットにより達成される。
【0012】
このプリーツフィルター複合用支持ネットにおいて、前記ピッチ寸法Pxと前記経糸の直径Dxとの比(Px/Dx)は、4~11の数値範囲であり、前記ピッチ寸法Pyと前記緯糸の直径Dyとの比(Py/Dy)は、4~11の数値範囲であることが好ましい。
【0013】
また、前記織物からなる支持ネット本体において、複数の経糸、及び、複数の緯糸に関し、奇数番目の経糸は、奇数番目の緯糸の上側、偶数番目の緯糸の下側を通るように構成され、偶数番目の経糸は、奇数番目の緯糸の下側、偶数番目の緯糸の上側を通るように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記織物からなる支持ネット本体の完全組織(1リピート)単位における経糸の平均目開き及び緯糸の平均目開きが、0.12mm以上0.9mm以下であることが好ましい。
【0015】
また、前記経糸及び前記緯糸の繊維径は、20μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記支持ネット本体は、熱可塑性のフッ素系樹脂繊維の織物として構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プリーツフィルターの通水性を向上させることができるプリーツフィルター複合用支持ネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネットを示す概略構成平面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】経・緯等ピッチ寸法の織物を示す概略構成平面図である。
図4】本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネットの一例を示す概略構成平面図である。
図5】本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネットの模式断面図である。
図6図5の矢視D方向から見たプリーツフィルター複合用支持ネットの要部拡大図である。
図7】プリーツフィルターにおけるひだ形成部分を説明するための説明図である。
図8】本発明の発明者が行った通水試験に供された試験装置を説明するための説明図である。
図9】本発明の発明者が行った通水試験に供された実施例に係る織物からなるプリーツフィルター複合用支持ネットの完全組織に関する概略構成平面図である。
図10】通水試験結果に係るグラフである。
図11】プリーツフィルターを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるプリーツフィルター複合用支持ネットについて、添付図面を参照して説明する。なお、図面においては、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、多孔質性のフィルターエレメントに複合化されて使用されるものであり、フィルターエレメントが型崩れすることを防止し、更には、折り畳まれて接触するひだ間の通水性の低下を抑制するために設けられるものである。
【0020】
ここで、プリーツフィルター複合用支持ネット1が複合化されるフィルターエレメントの種類としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、デプスフィルターやメンブレンフィルターを好適に使用することができる。デプスフィルターは、異物(粒子)を内部で補足するタイプのフィルターであり、メンブレンフィルターは、多孔質膜の表面で異物(粒子)を捉えるタイプの精密濾過フィルターである。
【0021】
本発明にかかるプリーツフィルター複合用支持ネット1は、図1の概略構成平面図に示すように、シート状の支持ネット本体2を備えている。このようなプリーツフィルター複合用支持ネット1は、シート状のフィルターエレメントに積層された後、部分的に熱接着等されることにより複合化してフィルター部材を形成し、その後、背景技術で説明した図11に示すように、複数のひだを有する形態に折り畳んで(ひだ折り)筒状形態を形成し、筒状形状のケージに収容され使用される。プリーツフィルター複合用支持ネット1は、フィルターエレメントの一方面側のみに積層するようにして構成してもよく、或いは、2枚のプリーツフィルター複合用支持ネット1でフィルターエレメントを挟み込むようにして(フィルターエレメントの両側にプリーツフィルター複合用支持ネット1を積層して)構成してもよい。
【0022】
シート状の支持ネット本体2は、図1に示すように、複数の経糸3と複数の緯糸4からなる織物として構成されており、隣接する経糸3同士の間には所定の間隔が設けられており、また、隣接する緯糸4同士の間にも所定の間隔が設けられている。このような構成により、支持ネット本体2は、経糸3及び緯糸4によって囲まれる矩形状の空隙部分(格子状の開口部5)を複数備えるように構成されている。
【0023】
特に、本発明においては、図1の要部拡大図である図2に示すように、織物からなる支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸3に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成されている。また、織物からなる支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の緯糸4に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成されている。
【0024】
なお、織物からなる支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物が形成される。本発明においては、図1において、一点鎖線にて囲っている領域Aが、完全組織(1リピート)単位であり、図2は、この完全組織(1リピート)単位を示している。
【0025】
このような支持ネット本体2は、例えば、図3に示すような経糸3のピッチ寸法及び緯糸4のピッチ寸法が同一の織物を形成する製織装置において、所定位置の経糸3及び緯糸4をセットせずに製織を行うことにより形成することができる。図1に示す支持ネット本体2は、図3に示す経・緯等ピッチ寸法の織物において経糸番号3、7、11、及び、緯糸番号3,7,11に対応する位置の経糸3及び緯糸4を製織装置においてセットせずに製織することにより形成することができる。なお、経・緯等ピッチ寸法の織物を一旦製織した後、所定位置の経糸3や緯糸4を抜き取ることにより形成してもよい。
【0026】
ここで、単に所定位置の経糸3や緯糸4を製織装置にセットせずに、織物としての支持ネット本体2を形成してしまうと、図4にて符号:B1、B2や、C1、C2にて示すように、隣り合う経糸3(或いは隣り合う緯糸4)が、一本の緯糸4の上側と下側にそれぞれ配置されず、両方の経糸3(或いは両方の緯糸4)が一本の緯糸4の上側(或いは下側)に配置されることになる場合がある。隣り合う経糸3(或いは隣り合う緯糸4)が、このような配置関係を有する支持ネット本体2は、強度が低下するおそれがあるため、好ましくは、図1に示すように、織物からなる支持ネット本体2において、複数の経糸3、及び、複数の緯糸4に関し、奇数番目の経糸3は、奇数番目の緯糸4の上側、偶数番目の緯糸4の下側を通るように構成されることが好ましく、また、偶数番目の経糸3は、奇数番目の緯糸4の下側、偶数番目の緯糸4の上側を通るように構成されていることが好ましい。
【0027】
また、図1図2に示す構成においては、経糸3のピッチ寸法m・Pxにおける“m”は、2であり、緯糸4のピッチ寸法:n・Pyにおける“n”も2である。また、ピッチ寸法がPxとなる割合は、2/3(66.7%)であり、ピッチ寸法がm・Pxとなる割合は、1/3(33.3%)となる。同様に、ピッチ寸法がPyとなる割合は、2/3(66.7%)であり、ピッチ寸法がn・Pyとなる割合は、1/3(33.3%)となる。
【0028】
経糸3のピッチ寸法m・Pxにおける“m”に関し、1.5よりも小さい数値であると、良好な通水性を発揮することが難しくなり、また、4を超える数値であると、フィルターエレメントの型崩れを防止する支持ネットとしての機能を発揮することが難しくなる。緯糸4のピッチ寸法n・Pyにおける“n”に関しても同様である。
【0029】
また、上述の経糸3のピッチ寸法:Pxとしては、0.15mm以上1.05mm以下の数値範囲となるように構成されることが好ましく、0.15mm以上0.65mm以下の範囲となるように構成することがより好ましい。更には、0.15mm以上0.45mm以下の数値範囲となるように構成することがより一層好ましい。緯糸4のピッチ寸法:Pyに関しても同様である。
【0030】
また、織物として構成される支持ネット本体2のメッシュ数は、20以上200以下の範囲となるように構成することが好ましく、25以上150以下の範囲となるように構成することがより好ましい。なお、メッシュ数とは、縦線および横線25.4mm(1インチ)間にある目数を意味する。
【0031】
また、経糸3及び緯糸4の直径(繊維径):Dx、Dyとしては、20μm以上500μm以下の範囲のものを使用することが好ましく、30μm以上300μm以下の範囲のものを使用することがより好ましい。更には、35μm以上250μm以下の範囲のものを使用することがより一層好ましい。
【0032】
また、上述の経糸3のピッチ寸法:Pxと、経糸3の直径(繊維径):Dxとの比であるPx/Dxの数値としては、4以上11以下の数値範囲となるように構成することが好ましく、4以上7.5の数値範囲となるように構成することがより好ましい。同様に、緯糸4のピッチ寸法:Pyと、緯糸4の直径(繊維径):Dyとの比であるPy/Dyの数値としては、4以上11以下の数値範囲となるように構成することが好ましく、4以上7.5の数値範囲となるように構成することがより好ましい。
【0033】
また、織物からなる支持ネット本体2における経糸3の平均目開きとしては、0.12以上0.9以下の数値範囲となるように構成することが好ましく、0.13以上0.87以下の数値範囲となるように構成することがより好ましい。更には、0.14以上0.85以下の数値範囲となるように構成することがより一層好ましい。緯糸4の平均目開きに関しても同様である。
【0034】
また、織物からなる支持ネット本体2を形成する経糸3や緯糸4の材料としては、種々のものを採用することができるが、例えば、熱可塑性のフッ素系樹脂繊維を採用することが好ましい。このような材料により支持ネット本体2を構成することにより、耐久性を向上させることができ、また、フィルターエレメントに熱接着させて両者を容易に一体化させることが可能となる。熱可塑性のフッ素系樹脂繊維としては、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、融点300~310℃)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点250~280℃)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、融点260~270℃)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、融点160~180℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、融点210℃)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE、融点290~300℃)等を用いることができる。
【0035】
本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1をフィルターエレメントのサポート部材として使用してプリーツフィルターを形成した場合、当該プリーツフィルターは、極めて良好な通水性能を発揮し、より一層高い濾過性能を発揮することができる。
【0036】
具体的に説明すると、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、上述のように、織物からなる支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸3に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成されており、また、織物からなる支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の緯糸4に関して、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成されている。このような構成を備えるプリーツフィルター複合用支持ネット1は、例えば、図3に示されるような経・緯等ピッチ寸法の織物として形成される支持ネット(全領域において経糸3ピッチ寸法:Px,緯糸4ピッチ寸法Pyとして形成される支持ネット)と比べて、通水性能を阻害する経糸3や緯糸4の数が少なく形成されており、図5の模式断面図を参照して、フィルター部材の面方向に垂直な方向に抜ける通水量を増加させることが可能となる。この結果、プリーツフィルターの高流量化を達成することができ、濾過性能が向上することになる。
【0037】
また、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、大小様々な格子状の開口部5を備えることになる為、図1図2の紙面垂直方向に流れてフィルターエレメントの内部を通過する濾過流体の流れ(図5においては、矢印の方向の濾過流体の流れ)が、経・緯等ピッチ寸法の織物として形成される支持ネット(図3に示す構成の支持ネット)に比べて、より複雑化し、フィルターエレメントの面方向での濾過流体の分配性能を向上させることが可能となり、この結果、プリーツフィルターの濾過性能を向上させることが可能となる。
【0038】
また、プリーツフィルター複合用支持ネット1は織物として形成されているため、図5に示すように、一本の経糸3に対して、上下交互に緯糸4が配置される部分が存在する(一本の緯糸4に対しても、上下交互に経糸3が配置される部分が存在する)。このような構造的特徴により、図5の矢視D方向から見た図6に示すように、一の格子状の開口部5内に導かれた濾過流体の一部は、開口部5の境界を形成する経糸3や緯糸4を乗り越えて隣の開口部5内に移動することができ、これにより、より一層、フィルターエレメントの面方向での濾過流体の分配性能を向上させることが可能となり、プリーツフィルターの濾過性能を向上させることが可能となる。
【0039】
特に、本発明においては、経糸3のピッチ寸法:Pxと、経糸3の繊維径:Dxとの比であるPx/Dxの数値が、4以上11以下の数値範囲となるように構成し、また、緯糸4のピッチ寸法:Pyと、緯糸4の繊維径:Dyとの比であるPy/Dyの数値が、4以上11以下の数値範囲となるように構成している。このような構成を備えることにより、一の格子状の開口部5内に導かれた濾過流体の一部が、経糸3や緯糸4を乗り越えて隣の開口部5内に移動しやすくなり、フィルターエレメントの面方向での濾過流体の分配性能を向上させることができる。
【0040】
また、本発明においては、経糸3及び緯糸4の繊維径として、20μm以上500μm以下の範囲のものを使用してプリーツフィルター複合用支持ネット1を構成しているため、経糸3と緯糸4との交差部分での空隙(図5において、符号Eにて示される領域に形成される段差部分に基づく空隙)を形成しやすくなる。この結果、一の格子状の開口部5内に導かれた濾過流体の一部が、経糸3や緯糸4を乗り越えて隣の開口部5内に移動しやすく、フィルターエレメントの面方向での濾過流体の分配性能を向上させることができる。
【0041】
また、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、メンブレンフィルターと複合化されてプリーツフィルターを形成する場合に、特に効果を発揮する。メンブレンフィルターは、上述のように多孔質膜の表面で異物(粒子)を捉えるタイプの精密濾過フィルターであり、非常に小さい孔径を有するため、デプスフィルターよりも通水性能は一般的に低く、この通水性能はサポート部材である支持ネットの影響を受けやすい。本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、上述のような構造的特徴を有するものであり、フィルターエレメントを透過する濾過流体の流量を高流量化する効果を有するため、通水性能が一般的に低いとされるメンブレンフィルターと複合化されたプリーツフィルターに対しては、この効果が大きく作用し、大幅に通水性能を向上させることが可能となる。
【0042】
次に、本発明の発明者は、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1の効果を確認するための確認試験を行ったので、以下、試験内容及び試験結果について説明する。
【0043】
プリーツフィルターにおいては、図7を参照して、ひだが形成されてプリーツフィルター複合用支持ネット1同士が重なり合う部分における通水性能が最も低くなる為、この部分のモデル試験を行った。具体的には、図8に示すように、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1を二枚重ね合わせてプリーツフィルター複合用支持ネット1の積層体を形成し、この積層体の上面側に、シリコンシート10及び鉄板11をこの順で積層し、同様に、積層体の下面側にもシリコンシート10及び鉄板11をこの順で積層した構造体を構成し、2枚のプリーツフィルター複合用支持ネット1積層体に対して、図の左側から右側に向けて水を通水させ、2枚のプリーツフィルター複合用支持ネット1積層体の右側から吐出される通水量を計測した。吐出される通水量が少ない場合には、プリーツフィルター複合用支持ネット1同士が重なり合う部分における通水抵抗が大きいと判断でき、また、吐出される通水量が多い場合には、プリーツフィルター複合用支持ネット1同士が重なり合う部分における通水抵抗が小さいと判断できる。なお、プリーツフィルター複合用支持ネット1積層体の左側(水流入部分)の水圧が、0.5kPaとなるように設定してこの通水試験を行った。また、積層される各プリーツフィルター複合用支持ネット1は、縦×横=21cm×10cmの矩形状として構成している。また、シリコンシート10及び鉄板11は、縦×横=30cm×21cmの矩形状として構成している。シリコンゴムシート10の厚みは、0.3cmであり、鉄板11の厚みは、2cmである。
【0044】
また、上記通水試験に供されるプリーツフィルター複合用支持ネット1として、下記表1及び表2に示す実施例1~8、比較例1~11を準備した。ここで、表中のメッシュ数とは、縦線および横線25.4mm(1インチ)間にある目数を意味する。また、実施例1~8についてのメッシュ数は、実際のメッシュ数を意味するのではなく、全ての経糸3及び緯糸4について、経糸3ピッチ:Px,緯糸4ピッチ:Pyで形成し、上述の経糸3ピッチ:m・Px、緯糸4ピッチ:n・Pyとなる割合が0と仮想した場合におけるメッシュ数を記載している。
【0045】
また、実施例1~8は、表1及び表2に記載の経糸3や緯糸4を用いて全ての経糸3及び緯糸4について経糸3ピッチ:Px,緯糸4ピッチ:Pyで形成する織物に対し、所定位置の経糸3及び緯糸4を製織装置においてセットせずに製織することにより形成されており、織物における織り組織の形状としては、全ての経糸3及び緯糸4について経糸3ピッチ:Px,緯糸4ピッチ:Pyで形成する織物に対し、隣接するa本の経糸3の内、b本の経糸3を設けず(糸抜きし)、更に、隣接するc本の緯糸4の内、d本の緯糸4を設けない(糸抜きした)形状が、繰り返しパターン(完全組織単位:1リピート単位)として形成されるものとして把握される。
【0046】
具体的には、実施例1~4、6は、図2に示されるように、隣接する経糸3:4本の内、1本の経糸3を設けず(糸抜きし)、更に、隣接する緯糸4:4本の内、1本の緯糸4を設けない(糸抜きした)完全組織を有する織物として形成されている。また、実施例5は、図9(a)に示されるように、隣接する経糸3:3本の内、1本の経糸3を設けず(糸抜きし)、更に、隣接する緯糸4:3本の内、1本の緯糸4を設けない(糸抜きした)完全組織を有する織物として形成されており、実施例7は、図9(b)に示されるように、隣接する経糸3:7本の内、2本の経糸3を設けず(糸抜きし)、更に、隣接する緯糸4:7本の内、2本の緯糸4を設けない(糸抜きした)完全組織を有する織物として形成されている。また、実施例8は、図9(c)に示されるように、隣接する経糸3:8本の内、3本の経糸3を設けず(糸抜きし)、更に、隣接する緯糸4:8本の内、3本の緯糸4を設けない(糸抜きした)完全組織を有する織物として形成されている。なお、図9(a)(b)(c)において、点線で示されている部分は、糸抜きされる経糸3、緯糸4の位置を示している。
【0047】
ここで、織物の完全組織単位において、経糸3のピッチ寸法がm・Pxとなる割合は、実施例1~4、6が、33.3%であり、実施例5が、50%、実施例7が、20%、実施例8が、20%となる。なお、経糸3のピッチ寸法:m・Pxにおける“m”の値は、実施例1~6が、“2”であり、実施例7が、“3”、実施例8が、“4”となる。同様に、織物の完全組織単位において、緯糸4のピッチ寸法がn・Pyとなる割合は、実施例1~4、6が、33.3%であり、実施例5が、50%、実施例7が、20%、実施例8が、20%となる。なお、緯糸4のピッチ寸法:n・Pyにおける“n”の値は、実施例1~6が、“2”であり、実施例7が、“3”、実施例8が、“4”となる。
【0048】
なお、比較例1~11については、全ての経糸3及び緯糸4について、表1中に記載の経糸3ピッチ:Px,緯糸4ピッチ:Pyで形成する織物として構成している。
【0049】
また、表1中の経糸3の平均目開きの値は、下記の式1にて算出している。
[式1]:{(経糸ピッチ:Px)×(上記a本)-(経糸繊維径:Dx)×(上記のa本-上記のb本)/1000}/(上記のa本)
また、表1中の緯糸4の平均目開きの値は、下記式2にて算出している。
[式2]:{(緯糸ピッチ:Py)×(上記c本)-(緯糸繊維径:Dy)×(上記のc本-上記のd本)/1000}/(上記のc本)
なお、比較例1~11については、隣接するa本の経糸3の内、b本の経糸3を設けない(隣接するc本の緯糸4の内、d本の緯糸4を設けない)という概念が無いため、上記式1中のaを2とし、bを0として経糸3の平均目開きの値を算出している。同様に、式2中のcを2とし、bを0として経糸3の平均目開きの値を算出している。
【0050】
また、表1中の平均開口率(%)については、下記式3にて算出している。
[式3]:[(経糸の平均目開き)/{経糸の平均目開き+(上記のa本-上記のb本)/(上記のa本)×(経糸繊維径:Dx)/1000}]×[(緯糸の平均目開き)/{緯糸の平均目開き+(上記のc本-上記のd本)/(上記のc本)×(緯糸繊維径:Dy)/1000}]×100
なお、比較例1~11については、隣接するa本の経糸3の内、b本の経糸3を設けない(隣接するc本の緯糸4の内、d本の緯糸4を設けない)という概念が無いため、上記式3中のaを2とし、bを0として、更には、cを2とし、bを0として平均開口率(%)の値を算出している。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1~8、及び、比較例1~11に関する通水試験結果(通水量)を下記表3に示す。表3においては、表1にて記載している平均目開きについても併せて記載している。また、実施例1~8、及び、比較例1~11に関し、経糸3の平均目開きと通水量との関係を示すグラフを図10に示す。図10のグラフは、経糸3の平均目開きの値を横軸とし、通水量の値を縦軸として記載している。また、図10においては、実施例1~8に係るデータを●で示し、比較例1~11に係るデータを▲にて示している。また、図10中において、実施例1~8に係るデータの近似式、及び、比較例1~11に係るデータの近似式を合わせて記載している。なお、実施例1~8のそれぞれにおいて、経糸3の平均目開きと緯糸4の平均目開きとは、同一の値を有するように構成されているため、織物の完全組織における全体的な平均目開きも、表1や表3に示す経糸3の平均目開きの値と同一の値を有する。
【0054】
【表3】
【0055】
表3及び図10より、実施例1~8に係る本発明のプリーツフィルター複合用支持ネット1は、経・緯等ピッチ寸法の織物として形成される比較例1~11と比べて、同一の平均目開きの値で見た場合、大幅に通水量が増加していることが分かる。具体的には、例えば、目開きの値が0.6の場合、比較例にかかるプリーツフィルター複合用支持ネット1の場合、通水量は、70ml/min程度で有るのに対し、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1の場合には、100ml/min程度の通水量を得ることができると考えられ、本発明に係るプリーツフィルター複合用支持ネット1は、通水抵抗が低く、極めて良好な通水特性を発揮するものであることが分かる。
【0056】
以上、本発明の係るプリーツフィルター複合用支持ネット1について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、支持ネット本体2の完全組織(1リピート)単位において隣接する複数の経糸3に関して、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成し、更に、隣接する複数の緯糸4に関しても、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成されているが、例えば、隣接する複数の経糸3に関してのみ、ピッチ寸法がPxとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がm・Px(mは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成し、緯糸ピッチに関しては、全領域においてピッチ寸法;Pyとなるように(等間隔のピッチ寸法となるように)構成してもよい(換言すると、n=0となるように構成してもよい)。また、同様に、隣接する複数の緯糸4に関してのみ、ピッチ寸法がPyとなる割合が50%~80%、ピッチ寸法がn・Py(nは、1.5以上4以下の数値)となる割合が20%~50%となるように構成し、経糸ピッチに関しては、全領域においてピッチ寸法;Pxとなるように(等間隔のピッチ寸法となるように)構成してもよい(換言すると、n=0となるように構成してもよい)。
【0057】
このような構成としてプリーツフィルター複合用支持ネット1(支持ネット本体2)を形成した場合であっても、上述した通水性向上という効果と同様な効果を得ることができる。
【0058】
また、上述の通水試験においては、実施例1~8のいずれにおいても、経糸3のピッチ寸法:m・Pxにおける“m”の値と、緯糸4のピッチ寸法:n・Pyにおける“n”の値とが同じ値を有するように構成されているが、“m”の値、及び、“n”の値を異なるようにして、織物として構成されるプリーツフィルター複合用支持ネット1(支持ネット本体2)を形成してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 プリーツフィルター複合用支持ネット
2 支持ネット本体
3 経糸
4 緯糸
5 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11