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  • 特許-めっき治具の不具合検出方法 図1
  • 特許-めっき治具の不具合検出方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】めっき治具の不具合検出方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/00 20060101AFI20230705BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20230705BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20230705BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20230705BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C25D21/00 E
C25D21/12 C
C25D7/00 J
G01N25/72 F
H05K3/18 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019155412
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031750
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂串 幹男
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-086194(JP,A)
【文献】特開2008-150639(JP,A)
【文献】特開2013-129911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00
C25D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の電解銅めっき装置における、ハンガー部の下部に電気的接続可能に接合されたクリップ部を備えためっき治具の不具合を検出する方法であって、電流印加後に、同一ロットのプリント配線板を取り付けた全てのめっき治具のハンガー部の表面温度を測定するステップと、前記めっき治具同士の表面温度を比較して、めっき治具の不具合の有無を判定するステップとを有することを特徴とするめっき治具の不具合検出方法。
【請求項2】
前記ハンガー部の表面温度が、クリップ部との接合部より上部のハンガー部領域の表面温度であることを特徴とする請求項1記載のめっき治具の不具合検出方法。
【請求項3】
前記めっき治具には、めっき治具固有の識別番号が表記されていることを特徴とする請求項1又は2記載のめっき治具の不具合検出方法。
【請求項4】
プリント配線板の電解銅めっき装置における、ハンガー部の下部に電気的接続可能に接合されたクリップ部を備えためっき治具の不具合を検出する装置であって、電解銅めっき装置に、めっき治具固有の識別番号を読み取る識別番号読取装置と、めっき治具のハンガー部の表面温度を測定し、前記めっき治具固有の識別番号とを対応付けて受信装置に送信する温度測定装置と、受信装置と、受信結果を表示する表示装置とが設けられていると共に、
前記受信装置が、前記めっき治具固有の識別番号と対応付けられためっき治具のハンガー部の表面温度の測定結果をめっき治具別にデータ化して蓄積させる手段と、蓄積されたデータを基に、前記表示装置にめっき治具毎のハンガー部の表面温度をグラフ表示させて、めっき治具同士の表面温度を比較した結果、他と比べて表面温度が高いめっき治具を不具合が有として検出させる手段とを有することを特徴とするめっき治具の不具合検出装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のめっき治具の不具合検出方法により、めっき治具の不具合を検出するステップと、
前記めっき治具の不具合を検出するステップで、不具合が有りと判定されためっき治具に酸化膜の形成が見受けられた場合に、前記酸化膜を除去するステップを有することを特徴とするめっき治具の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造に利用する電解銅めっき治具の不具合を検出する方法、当該治具の不具合検出装置、並びに当該治具の品質管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、民生機器の他、車載部品として利用されることが多くなってきている。車載部品として使用されるプリント配線板には、高い信頼性、とりわけ層間接続の信頼性が要求される。
【0003】
プリント配線板の層間接続の信頼性を確保するための管理項目の1つとして、銅めっきの厚みの管理がある。すなわち、貫通穴又は非貫通穴の銅めっきの厚みが所定の範囲内にあるか管理する必要がある。
【0004】
一般的に、電気銅めっきの形成には、電解銅めっき装置が利用される。例えば、プッシャー型電解銅めっき装置では、装置のレールにプリント配線板のワークボードを取り付けためっき治具を複数セットして、電解銅めっき工程へ投入する。これにより、各プリント配線板の貫通穴や非貫通穴に所定の厚みの銅めっき膜が形成される(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、めっき治具のハンガーとクリップの接合部分(電気的接続部分)のネジの緩みや接合部分の酸化により、当該接合部分に電気が流れ難い状態が発生し、プリント配線板への電解銅めっき付与の不具合、具体的には銅めっきの厚みが所定の厚みより薄くなるという不具合が生じる問題があった。
当該接合部分の酸化は、酸化膜により視認できる。酸化膜は、めっき治具のハンガーとクリップは共に金属から成り、ハンガーとクリップの接合部分の極僅かな隙間や凹凸にめっき工程での薬液等が侵入し金属の酸化を引き起こすことで生じると考えられる。ただし、治具毎に同様な頻度でハンガーとクリップの接合部分の酸化が進行するわけではなく、酸化膜の形成に規則的なルールは無かった。
【0006】
従来、プリント配線板への電解銅めっき付与の不具合を、各めっき治具のカソード電流を測定することにより検知する方法がある。しかし、カソード電流を測定して電流値の流れ難さを確認しても銅めっき厚が薄い不具合品とは限らず、突発的に生じる不具合品を見つけることは困難であった。
そのため、めっき治具の不具合を検出するには、めっき治具を分解して、そのハンガーとクリップの接合部分のネジが緩んでいないか、また接合部分が酸化していないか等を確認する煩雑な作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-129911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、煩雑な作業を行うことなく電解銅めっき治具の不具合を検出できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく先ず電解銅めっき装置のめっき治具のハンガーとクリップの接合部分のネジを極端に緩めて検証したところ、接合部分のネジが緩いめっき治具では、ネジが締め付けられているめっき治具と比較して表面温度が20℃以上上昇していることが判った。また、めっき治具のハンガーとクリップの接合部分が酸化していると、酸化していない他のめっき治具と比較して表面温度が上昇していることが判った。
そこで、継続的に同一ロット内においてめっき治具の表面温度を測定すると、他と比べて明らかに表面温度が高いものがあり、高い表面温度を示しためっき治具にてめっきされたプリント配線板の銅めっきの厚みはいずれも所定の厚みより薄い不具合品であった。これら表面温度が高いめっき治具を調べたところ、その多くのハンガーとクリップの接合部分に酸化膜が見受けられた。
本発明者は、これらの検証の結果から、電解銅めっき装置において同一ロットのプリント配線板を取り付けた全てのめっき治具の表面温度を測定し、当該めっき治具同士の表面温度を比較すれば、極めて良い結果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、プリント配線板の電解銅めっき装置における、ハンガー部の下部に電気的接続可能に接合されたクリップ部を備えためっき治具の不具合を検出する方法であって、電流印加後に、同一ロットのプリント配線板を取り付けた全てのめっき治具のハンガー部の表面温度を測定するステップと、前記めっき治具同士の表面温度を比較して、めっき治具の不具合の有無を判定するステップとを有することを特徴とするめっき治具の不具合検出方法により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解銅めっき工程において、めっき治具のハンガー部の表面温度を指標に、電解銅めっき装置のめっき治具の不具合を検出することができるため、貫通穴又は非貫通穴の銅めっきの厚みが所定の厚みより薄い不良基板の後工程への流出をなくすことができる。また、検出された表面温度が高いめっき治具に酸化膜が見受けられる場合は、当該酸化膜を除去することで治具の不具合をなくすことができるため、その後のめっきの析出不良の発生を抑制でき、プリント配線板の貫通穴や非貫通穴に所定の厚みの銅めっき膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電解銅めっき装置のめっき治具の概略図。
図2】電解銅めっき装置を含むめっき治具の不具合検出装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、先ず、図1及び図2を用いて、電解銅めっき装置のめっき治具とめっき治具の不具合検出装置について説明する。
【0014】
図1において、10は電解銅めっき装置のめっき治具で、ハンガー部11と、その下部のクリップ部12とから構成されている。当該ハンガー部11とクリップ部12は、ハンガー部11とクリップ部12がオーバーラップする形で、接合部13にてネジ14にて留められていて電気的接続可能となっている。
当該ハンガー部11には、めっき治具10固有の識別番号(ここでは、例として「NO10-101」)17が表記されている。
また、当該クリップ部12には、複数のクリップ15がネジ14にて留められていて、当該クリップ15にて被めっき基板となるプリント配線板16を固定する。
この図1では、ハンガー部11に識別番号17が表記されているが、後述する識別番号読取装置にて読み取り可能であれば、表記箇所は問わない。
【0015】
図2において、30はめっき治具の不具合検出装置であり、電解銅めっき装置20と、めっき治具10に表記された識別番号17を読み取る識別番号読取装置24と、めっき治具10のハンガー部11の表面温度を測定する温度測定装置25と、トリガー26と、受信装置27と、受信結果を表示する表示装置28とが設けられている。
当該電解銅めっき装置20は、一般的なプッシャー型電解銅めっき装置であり、同一ロットのプリント配線板16を取り付けた複数のめっき治具10と、当該複数のめっき治具10をセットするカソードレール22と、アノード電流21と、めっき用電源23とから構成されている。当該めっき治具10は、図1に示すように、ハンガー部11の下部に電気的接続可能に接合されたクリップ部12を備え、また、めっき治具10毎に、固有の識別番号17が表記されている。
【0016】
当該識別番号読取装置24は、有線あるいは無線で、めっき治具10に表記された識別番号17を読み取り、当該温度測定装置25は、めっき治具10のハンガー部11の表面温度を測定し、当該めっき治具10固有の識別番号17とを対応付けて受信装置27へ送信可能となっている。
一方、当該受信装置27は、受信した、識別番号17と対応付けられためっき治具10のハンガー部11の表面温度の測定結果を表示装置28に表示させることができる。また、受信装置27は、識別番号17と対応付けられためっき治具10のハンガー部11の表面温度の測定結果をめっき治具10別にデータ化して蓄積することができ、当該蓄積されたデータを基に表示装置28にグラフとして表示させることができる。
【0017】
次に、図2に示しためっき治具の不具合検出装置30を例にとって、本発明の実施の形態を説明する。
最初に、電解銅めっき装置20において、同一ロットのプリント配線板16を取り付けた複数のめっき治具10をカソードレール22にセットし、電源23を入れアノード電流21を印加して、電解銅めっき工程を進行させる。
次に、トリガー26のスイッチをオンにし、タイマーを作動させると、指定時間後に、めっき治具10がカソードレール22の所定の位置にきた際に、識別番号読取装置24がめっき治具10に表記された識別番号17を読み取る。同時に、温度測定装置25が当該識別番号17が表記されためっき治具10のハンガー部11の表面温度を測定し、当該表面温度の測定結果と、当該識別番号17とを対応付けて受信装置27へ送信する。当該温度測定装置25は、好ましくは、温度センサーで、めっき治具10のハンガー部11とクリップ部12の接合部13よりやや上部の領域18の表面温度を測定する。
当該受信装置27では、受信した、識別番号17と対応付けられためっき治具10のハンガー部11の表面温度の測定結果を表示装置27に表示する。
同様の操作が、めっき治具10毎に行われる。
【0018】
このように、同一ロットのプリント配線板16を取り付けた全てのめっき治具10のハンガー部11の表面温度を測定する。そして最後に、めっき治具10同士の表面温度を比較し、めっき治具の不具合の有無を判定する。めっき治具10同士の表面温度を比較した結果、他と比べて表面温度が高いめっき治具は、不具合が有と判定され、不具合として検出する。このとき、めっき治具10に、そのめっき治具10固有の識別番号17が表記されていれば特定が容易で、確実に不具合を検出できる。
不具合が有と判定されるめっき治具の表面温度と、それ以外、すなわち不具合が無と判定されるめっき治具の表面温度との差は、ロット毎やプリント配線板の大きさによって相違するものの、概ね20℃以上である。
【0019】
また、受信装置27が、めっき治具10のハンガー部11の表面温度の測定結果をめっき治具10別にデータ化して蓄積し、当該蓄積されたデータを基に表示装置28にグラフとして表示させれば、他と比べて表面温度が高いめっき治具10はスパイクとして表示されるため、不具合の特定と検出はより容易となる。
【0020】
検出された表面温度が高いめっき治具10において、ハンガー部11とクリップ部12の接合部13に酸化膜が見受けられる場合は、当該酸化膜を除去することが、治具の品質管理上好ましい。酸化膜を除去すれば、当該治具の不具合をなくすことができるので、当該治具を用いたその後の電解銅めっき工程において、めっきの析出不良の発生を抑制することが可能となり、プリント配線板の貫通穴や非貫通穴に所定の厚みの銅めっき膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
10:めっき治具
11:ハンガー部
12:クリップ部
13:接合部
14:ネジ
15:クリップ
16:プリント配線板
17:識別番号
18:表面温度測定領域
20:電解銅めっき装置
21:アノード電流
22:カソードレール
23:電源
24:識別番号読取装置
25:温度測定装置
26:トリガー
27:受信装置
28:表示装置
30:めっき治具の不具合検出装置
図1
図2