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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】混合器
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/40 20220101AFI20230705BHJP
   B01F 25/422 20220101ALI20230705BHJP
【FI】
B01F23/40
B01F25/422
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019157854
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035662
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】藤島 寧
(72)【発明者】
【氏名】松尾 純明
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-027626(JP,A)
【文献】実開昭56-073528(JP,U)
【文献】実開昭50-077876(JP,U)
【文献】特開昭60-014863(JP,A)
【文献】特開2011-105375(JP,A)
【文献】特開昭54-154195(JP,A)
【文献】実開平03-053250(JP,U)
【文献】特開2014-184065(JP,A)
【文献】特開平05-049869(JP,A)
【文献】特開昭60-241907(JP,A)
【文献】特開昭53-025268(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104761(WO,A1)
【文献】米国特許第6447158(US,B1)
【文献】米国特許第4514095(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 25/40
B01F 23/40
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の液体を混合する混合器であって、
配列された3つ以上の容器部と、
隣り合う2つの容器部の内部空間どうしを連通する通路部と、を備え、
前記容器部は、前記液体を前記混合器に流入させる入口配管が接続される始端容器部と、前記混合器から前記液体を流出させる出口配管が接続される終端容器部と、前記始端容器部と前記終端容器部との間に配置される中間容器部と、を含み、
中間容器部における前記始端容器部の側に位置する前記通路部と当該中間容器部における前記終端容器部の側に位置する前記通路部とは、前記容器部の配列方向から見てずれるように配置され
前記出口配管は、前記配列方向と交わる方向から前記終端容器部に接続されることを特徴とする混合器。
【請求項2】
前記容器部は、鉛直方向に積層され、
前記始端容器部または前記終端容器部は最上段に配置されて、前記入口配管または前記出口配管を混合器内のガスを抜くためのガス抜き管として機能させる請求項1に記載の混合器。
【請求項3】
前記入口配管は、前記配列方向と交わる方向から前記始端容器部に接続され、
前記始端容器部が有する前記入口配管との接続部は、前記配列方向から見た前記始端容器部の外形の幾何中心が前記入口配管の中心軸の延長線上に位置するように配置される請求項1または2に記載の混合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種類の異なる複数の液体を混合するための混合器が知られている。混合器の一使用例としては、血液浄化に用いられる透析液の調製が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。透析液は、逆浸透膜(RO膜)で処理された水(以下、RO水という)と、透析液原液であるA原液およびB原液とを混合器で混合することによって得られる。特許文献1に開示される混合器は、RO水とB原液とを混合する上流側混合部と、RO水およびB原液の混合液とA原液とを混合する下流側混合部と、両者をつなぐ連結管とを備え、上流側混合部に複数の流入管が挿入され、下流側混合部に複数の流出管が挿入される構造を有していた。
【0003】
また、混合器は、透析の分野に限らず化学品や医薬品、食品等の各種製品の製造において幅広く用いられている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示される混合器は、動力によって回転する軸に撹拌羽根を設けた構造を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-184065号
【文献】特開2013-112629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最終製品の調製や製造にかかるコストを低減するために、混合器自体や混合器が組み込まれる装置の構造の簡素化は常に求められる。本発明者らは、このような観点から鋭意検討を重ね、新規な構造を有する混合器に想到した。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、新規な構造を有する混合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、複数種の液体を混合する混合器であって、配列された3つ以上の容器部と、隣り合う2つの容器部の内部空間どうしを連通する通路部と、を備える。容器部は、液体を混合器に流入させる入口配管が接続される始端容器部と、混合器から液体を流出させる出口配管が接続される終端容器部と、始端容器部と終端容器部との間に配置される中間容器部と、を含む。容器部の配列方向において容器部の一方の側に位置する通路部と当該容器部の他方の側に位置する通路部とは、配列方向から見てずれるように配置される。
【0008】
上記態様において、容器部は、鉛直方向に積層され、始端容器部または終端容器部は最上段に配置されて、入口配管または出口配管を混合器内のガスを抜くためのガス抜き管として機能させてもよい。また、上記いずれかの態様において、始端容器部が有する入口配管との接続部は、配列方向から見た始端容器部の外形の幾何中心が入口配管の中心軸の延長線上に位置するように配置されてもよい。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な構造を有する混合器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】血液浄化装置の概略構成図である。
図2】混合器の斜視図である。
図3図3(A)は、混合器の底面図であり、図3(B)は、混合器の正面図であり、図3(C)は、混合器の右側面図である。
図4】第1液および第2液の流量の経時的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、この用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
まず、本実施の形態に係る混合器が組み込まれる装置の一例である血液浄化装置について説明する。図1は、血液浄化装置の概略構成図である。血液浄化装置1は、体外循環する患者の血液を浄化して透析治療するための装置である。血液浄化装置1は、血液回路6と、血液浄化器8と、透析液流路14と、排液流路16とを有する。
【0014】
血液回路6は、患者の血液を体外循環させる回路であり、例えば可撓性を有するチューブ等で構成される。血液回路6には、血液の流れにおける上流側から下流側に向かって、血液ポンプ10、血液浄化器8、気液分離器12がこの順に設けられる。血液ポンプ10によって、患者の体内から血液浄化器8に対して血液が送られる。血液浄化器8を通過した血液は、気液分離器12によって気泡を除去された後に患者に戻される。
【0015】
血液浄化器8は、例えば複数の中空糸膜が収容されたダイアライザである。中空糸膜は、血液を浄化するための血液浄化膜を構成する。血液浄化器8には、血液回路6と、透析液流路14と、排液流路16とが接続される。これにより、血液浄化器8内には、血液の流れと透析液の流れとが中空糸膜を挟んで形成される。中空糸膜は、外周面と内周面とを貫通する微小な孔を多数有し、中空糸膜を介して拡散や濾過の原理により、血液中の不純物等が透析液内に通過し、透析液中の所定成分が血液内に通過する。
【0016】
透析液流路14は、血液浄化器8に透析液を供給する流路である。透析液流路14には、RO装置(図示せず)からRO水が供給される。RO装置は、逆浸透膜(RO膜)を用いてRO水を製造する装置である。また、透析液流路14には、A原液流路18およびB原液流路20が接続される。
【0017】
A原液流路18は、一端が透析液流路14に接続され、他端がA原液タンク22に接続される。A原液タンク22には、透析液原液であるA原液(A剤)が貯留される。A原液は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の電解質成分、塩酸、酢酸等のpH調整剤、およびグルコース等の糖を含む。A原液流路18には、A原液注入ポンプ24が設けられる。A原液注入ポンプ24は、例えば公知の定量ポンプで構成される。A原液注入ポンプ24の駆動によって、A原液タンク22に貯留されているA原液がA原液流路18を介して透析液流路14に供給される。
【0018】
B原液流路20は、一端が透析液流路14に接続され、他端がB原液タンク26に接続される。B原液流路20は、A原液流路18よりも透析液流路14の上流側に接続される。B原液タンク26には、A原液とは種類の異なる透析液原液であるB原液(B剤)が貯留される。B原液は、炭酸水素ナトリウム等を含む。B原液流路20には、B原液注入ポンプ28が設けられる。B原液注入ポンプ28は、例えば公知の定量ポンプで構成される。B原液注入ポンプ28によって、B原液タンク26に貯留されているB原液がB原液流路20を介して透析液流路14に供給される。
【0019】
透析液流路14には、第1混合器100aおよび第2混合器100bが設けられる。第1混合器100aおよび第2混合器100bは、複数種の液体(流体)を混合する装置である。以下の説明において第1混合器100aと第2混合器100bとを区別する必要がない場合、両者をまとめて混合器100と称する。
【0020】
第1混合器100aは、透析液流路14におけるB原液流路20の接続部より下流側であって、且つA原液流路18の接続部よりも上流側に設けられる。B原液流路20から透析液流路14に供給されたB原液は、第1混合器100aによってRO水と均一に混合される。また、第2混合器100bは、透析液流路14におけるA原液流路18の接続部よりも下流側に設けられる。A原液流路18から透析液流路14に供給されたA原液は、第2混合器100bによってB原液およびRO水の混合液と均一に混合される。これにより、透析液が調製される。
【0021】
血液浄化装置1は、透析液流路14および排液流路16に跨がって設けられる複式ポンプ30(定量ポンプ)を有する。複式ポンプ30は、透析液流路14における第2混合器100bよりも下流側に接続される。複式ポンプ30の駆動により、第1混合器100aにRO水とB原液とが引き込まれ、第2混合器100bにB原液およびRO水の混合液とA原液とが引き込まれる。また、調製された透析液は、複式ポンプ30を介して血液浄化器8に送り出される。
【0022】
排液流路16は、血液浄化器8での血液の浄化により発生する排液を排出する流路である。血液浄化器8で発生する排液は、排液流路16を通って系外に排出される。複式ポンプ30は、血液浄化器8に導入される透析液の量と、血液浄化器8から排出される排液の量とが等しくなるように動作する。また、排液流路16には、複式ポンプ30をバイパスするように除水流路32が設けられる。除水流路32には、除水ポンプ34が設けられる。除水ポンプ34が駆動すると、血液浄化器8に導入される透析液の量よりも血液浄化器8から排出される排液の量が多くなる。これにより、血液からの除水が行われる。
【0023】
なお、図1に示す血液浄化装置1の構成はあくまでも一例であり、血液浄化装置1の構成は適宜変更することができる。また、本実施の形態に係る混合器100は、血液浄化装置1に限らず、化学品、工業製品、医薬品、食品、バイオ製品等の各種製品の製造装置に組み込まれてもよい。
【0024】
続いて、混合器100の構造について詳細に説明する。第1混合器100aおよび第2混合器100bは同一の構造を有するため、以下では第1混合器100aの構造を混合器100の構造として説明し、第2混合器100bについては説明を省略する。図2は、混合器100の斜視図である。図3(A)は、混合器100の底面図であり、図3(B)は、混合器100の正面図であり、図3(C)は、混合器100の右側面図である。図2では、理解を容易にするために、混合器100の内部を透視して示している。
【0025】
混合器100は、所定方向に配列された3つ以上の容器部102を備える。本実施の形態では、複数の容器部102は、鉛直方向Zに積層されている。以下では適宜、容器部102の「配列」および「配列方向」を「積層」および「積層方向」という。各容器部102は、中空構造であり、液体が流れる内部空間Rを有する。各内部空間Rの容積は、混合器100に流入する液体の流量に応じて、適宜調整される。
【0026】
また、混合器100は、隣り合う2つの容器部102の内部空間Rどうしを連通する通路部106を備える。本実施の形態の混合器100は、隣り合う2つの容器部102を連結する板状の連結部104を有する。連結部104には、連結部104を鉛直方向Zに貫通するとともに隣り合う2つの容器部102の内部空間Rに至る貫通孔が設けられる。通路部106は、この貫通孔で構成される。
【0027】
つまり、混合器100は、3つ以上の容器部102と2つ以上の連結部104とが交互に積層された構造を有する。本実施の形態の容器部102は円筒状であり、連結部104は円盤状である。したがって、混合器100は、全体が円筒状である。なお、連結部104は、2つの容器部102の上面と下面とが積層された構造と捉えることもできる。
【0028】
本実施の形態の混合器100は、第1容器部102a、第2容器部102b、第3容器部102cおよび第4容器部102dの4つの容器部102を有する。また、混合器100は、第1連結部104a、第2連結部104bおよび第3連結部104cの3つの連結部104を有する。第1容器部102a、第1連結部104a、第2容器部102b、第2連結部104b、第3容器部102c、第3連結部104cおよび第4容器部102dは、下からこの順に積層されている。したがって、第1連結部104aは第1容器部102aと第2容器部102bとの間に配置されて両者を連結し、第2連結部104bは第2容器部102bと第3容器部102cとの間に配置されて両者を連結し、第3連結部104cは第3容器部102cと第4容器部102dとの間に配置されて両者を連結する。
【0029】
複数の容器部102には、液体を混合器100に流入させる入口配管36が接続される始端容器部102Sと、混合器100から液体を流出させる出口配管38が接続される終端容器部102Eと、始端容器部102Sと終端容器部102Eとの間に配置される中間容器部102Mとが含まれる。なお、入口配管36および出口配管38は、混合器100の一部と解釈する場合もあり得る。本実施の形態では、第1容器部102aに入口配管36が接続され、第4容器部102dに出口配管38が接続されている。したがって、第1容器部102aが始端容器部102Sであり、第4容器部102dが終端容器部102Eであり、第2容器部102bおよび第3容器部102cが中間容器部102Mである。
【0030】
混合器100の内部には、各容器部102の内部空間Rが通路部106で連通されることで、第1容器部102aから第4容器部102dにかけて延びる液体流路が形成される。液体流路は、各容器部102の内部空間Rと、これらの内部空間Rを連通する通路部106とで構成される。
【0031】
入口配管36は、第1容器部102aの内部空間Rに連通される。入口配管36には第1液が流れる。また、入口配管36には、第2液流路37が接続される。したがって、第1容器部102a(始端容器部102S)の内部空間Rには、第1液と、第2液とが流れ込む。
【0032】
第1容器部102aの内部空間Rに流入した液体は、第1連結部104aを貫通する通路部106を介して第2容器部102b(中間容器部102M)の内部空間Rに流入する。第2容器部102bの内部空間Rに流入した液体は、第2連結部104bを貫通する通路部106を介して第3容器部102c(中間容器部102M)の内部空間Rに流入する。第3容器部102cの内部空間Rに流入した液体は、第3連結部104cを貫通する通路部106を介して第4容器部102d(終端容器部102E)の内部空間Rに流入する。出口配管38は、第4容器部102dの内部空間Rに連通される。したがって、第4容器部102dの内部空間Rに流入した液体は、出口配管38に流入して混合器100の下流側に送られる。
【0033】
容器部102の積層方向(本実施の形態では鉛直方向Z)において容器部102の一方の側に位置する通路部106と当該容器部102の他方の側に位置する通路部106とは、積層方向から見てずれるように配置される。つまり、1つの容器部102を積層方向に挟んで隣り合う2つの連結部104において、一方の連結部104を貫通する通路部106と他方の連結部104を貫通する通路部106とは、水平方向の位置がずれている。
【0034】
より具体的には、第2容器部102bを挟んで並ぶ、第1連結部104aに設けられる1つの通路部106と第2連結部104bに設けられる4つの通路部106とは、鉛直方向Zから見てずれている。また、第3容器部102cを挟んで並ぶ、第2連結部104bに設けられる4つの通路部106と、第3連結部104cに設けられる1つの通路部106とは、鉛直方向Zから見てずれている。前記「ずれる」とは、一方の連結部104を貫通する個々の通路部106の全体と、他方の連結部104を貫通する個々の通路部106の全体とが、積層方向から見て重ならないことを意味する。
【0035】
隣り合う連結部104において通路部106の水平方向の位置をずらすことで、各容器部102内の液体は、水平方向にずれながら下流側の容器部102に流入する。つまり、混合器100内の液体流路を第1容器部102aから第4容器部102dにかけて蛇行させることができる。液体流路を蛇行させることで、混合器100に流入した液体を混合器100を通過させる過程で攪拌することができる。これにより、混合器100によって複数種の液体を均一に混合することができる。
【0036】
第1連結部104aには、混合器100の中心軸C1と交わる位置に通路部106が設けられる。より具体的には、鉛直方向Zから見て通路部106は円形であり、通路部106はその中心が中心軸C1と一致するように配置される。第2連結部104bには、混合器100の周縁部に4つの通路部106が設けられる。4つの通路部106は、第2連結部104bの周方向に均等に配置されている。第3連結部104cには、第1連結部104aと同様に、混合器100の中心軸C1と交わる位置に通路部106が設けられる。
【0037】
したがって、第1容器部102aは、上面(天面)における水平方向の中央に1つの通路部106が接続される。第2容器部102bは、下面(底面)における水平方向の中央に1つの通路部106が接続され、上面における水平方向の周縁に4つの通路部106が接続される。第3容器部102cは、下面における水平方向の周縁に4つの通路部106が接続され、上面における水平方向の中央に1つの通路部106が接続される。第4容器部102dは、下面における水平方向の中央に1つの通路部106が接続される。
【0038】
混合器100内での液体の主な流れは、以下の通りである。すなわち、入口配管36から第1容器部102aに流入した液体は、第1容器部102a内に広がった後、上面中央に位置する通路部106から第2容器部102bに流入する。第2容器部102bに流入した液体は、下面中央に位置する通路部106から第2容器部102bの周縁部に広がり、上面周縁に位置する通路部106から第3容器部102cに流入する。第3容器部102cに流入した液体は、下面周縁に位置する通路部106から第3容器部102cの中央部に集まり、上面中央に位置する通路部106から第4容器部102dに流入する。第4容器部102dに流入した液体は、下面中央に位置する通路部106から第4容器部102d内に広がり、出口配管38から混合器100の外部に送出される。
【0039】
第2連結部104bに設けられる各通路部106の面積(鉛直方向Zから見た開口面積、あるいは流路断面積)は、第1連結部104aおよび第3連結部104cのそれぞれに設けられる通路部106の面積よりも小さく設定される。これにより、第1連結部104aおよび第3連結部104cのそれぞれにおける通路部106の総面積と、第2連結部104bにおける通路部106の総面積との差を小さくすることができる。この結果、第2連結部104bの通路部106における流体の合計圧力損失を第1連結部104aや第3連結部104cの通路部106における圧力損失と同程度に抑えながら、混合器100の混合性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、鉛直方向Zから見た各通路部106の面積は、鉛直方向Zから見た各容器部102の面積よりも小さい。通路部106の面積を小さくするほど、液体流路の蛇行をきつくすることができる。このため、混合器100の混合性能を高める観点からは、通路部106の面積は小さい方が好ましい。一方で、通路部106の面積が小さくなると、液体が混合器100を通過する際の圧力損失が増大する。圧力損失が増大すると、液体を循環させるためにより強力なポンプが必要となるためコスト増につながり得る。また、混合器100が組み込まれる装置のエネルギー効率が低下し得る。このため、装置全体のコストを低減する観点からは、通路部106の面積は大きい方が好ましい。したがって、通路部106の面積は、混合器100の混合性能と圧力損失とのバランスを考慮して設定される。
【0041】
また、第1連結部104aを貫通する通路部106の面積を所定程度まで小さくすることで、先行して第1容器部102aに流入した液体の一部を、後発の液体が第1容器部102aに流入するときまで第1容器部102aに残しておくことができる。これにより、先発の液体の一部と後発の液体とを第1容器部102a内で混合することができる。同様に、第2連結部104bを貫通する通路部106の面積を所定程度まで小さくすることで、先発の液体の一部と後発の液体とを第2容器部102b内で混合することができる。同様に、第3連結部104cを貫通する通路部106の面積を所定程度まで小さくすることで、先発の液体の一部と後発の液体とを第3容器部102c内で混合することができる。通路部106の面積は、先発の液体を各容器部に残留させる量、混合器100の混合性能および圧力損失等を考慮して、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0042】
混合器100が血液浄化装置1に組み込まれる場合、入口配管36および出口配管38は、透析液流路14の一部を構成する。また、混合器100が第1混合器100aである場合、入口配管36には第1液としてRO水が流れる。また、第2液流路37は、B原液流路20に該当し、第2液としてB原液が流れる。混合器100が第2混合器100bである場合、入口配管36には第1液として第1混合器100aで調製されたRO水およびB原液の混合液が流れる。また、第2液流路37は、A原液流路18に該当し、第2液としてA原液が流れる。また、これらの場合、第2液流路37にはB原液注入ポンプ28またはA原液注入ポンプ24が設けられ、出口配管38には複式ポンプ30が設けられる。
【0043】
A原液注入ポンプ24、B原液注入ポンプ28および複式ポンプ30はそれぞれ、周期的に液体の送出と停止とを繰り返す。このため、図4に示すように、混合器100に流入する第1液および第2液の流量は、それぞれ周期的に変化する。図4は、第1液および第2液の流量の経時的な変化を示す図である。例えば、第1液はRO水であり、第2液はB原液である。あるいは、第1液はRO水およびB原液の混合液であり、第2液はA原液である。
【0044】
各ポンプが異なる周期で液体の送出と停止とを繰り返す場合、第1液および第2液の混合器100への流入状態は、以下の4つの状態に分けられる。つまり、第1液および第2液の両方が混合器100に流入する状態(i)と、第1液のみが混合器100に流入する状態(ii)と、第1液および第2液の両方が混合器100に流入しない状態(iii)と、第2液のみが混合器100に流入する状態(iv)である。したがって、混合器100に流入する液体における第1液および第2液の比率は経時的に変化する。
【0045】
第1液と第2液とが常に一定量で流入することを前提としている従来のスタティックミキサーでは、状態(ii)~(iv)のときに第1液と第2液とを均等に混合することができなかった。これに対し、本実施の形態の混合器100によれば、先発の液体の一部と後発の液体とを第1容器部102a内で混合することができる。つまり、混合器100は、第1液と第2液との比率が異なる液体どうしを混合することができる。よって、より均質な透析液を調製することができる。
【0046】
また、本実施の形態の第4容器部102d(終端容器部102E)は、最上段に配置される。したがって、出口配管38は、最上段に位置する容器部102に接続される。これにより、出口配管38を混合器100内のガスを抜くためのガス抜き管として機能させることができる。例えば、混合器100を初めて使用する際に、入口配管36から混合器100にRO水等の液体を流入させることで、各容器部102の内部空間Rに溜まっている空気を出口配管38から追い出すことができる。
【0047】
出口配管38は、第4容器部102dの側面に接続される。これにより、第4容器部102dの上面に出口配管38を接続する場合に比べて、第3連結部104cの通路部106から出口配管38に直線的に向かう液体の量、つまり第4容器部102d内での混合が十分なされずに出口配管38に流入する短絡流の量を低減することができる。したがって、混合器100の混合性能を高めることができる。
【0048】
また、出口配管38の第4容器部102dへの接続位置、言い換えれば第4容器部102dが有する出口配管38との接続部107の位置は、第4容器部102dに接続される出口配管38の端部の上端が第4容器部102dの上面に可能な限り近い位置とされる。例えば、出口配管38は、当該上端が第4容器部102dの上面とほぼ面一となるように接続される。これにより、混合器100内のガスをより円滑に、且つより確実に出口配管38から排出させることができる。
【0049】
入口配管36は、最下段に位置する第1容器部102aの側面に接続される。また、入口配管36の第1容器部102aへの接続位置、言い換えれば第1容器部102aが有する入口配管36との接続部108の位置は、第1容器部102aに接続される入口配管36の端部の下端が第1容器部102aの下面に可能な限り近い位置とされる。例えば、入口配管36は、当該下端が第1容器部102aの下面とほぼ面一となるように接続される。これにより、第1容器部102aの内部空間Rのより広い範囲を第1液と第2液との混合に利用することができる。したがって、混合器100の混合性能を高めることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、第1容器部102a(始端容器部102S)が有する接続部108は、容器部102の積層方向から見た始端容器部102Sの外形の幾何中心が入口配管36の中心軸C2の延長線上に位置するように配置される。本実施の形態では、積層方向から見た第1容器部102aの幾何中心は、混合器100の中心軸C1と一致する。したがって、入口配管36の中心軸C2の延長線は、混合器100の中心軸C1と交わる。
【0051】
入口配管36の中心軸C2の延長線と始端容器部102Sの幾何中心とが重ならないように接続部108を配置すると、第1容器部102aの内部空間Rに旋回流が発生する。これにより、混合器100の混合性能は高まるが、一方で混合器100の圧力損失が極めて大きくなってしまう。これに対し、入口配管36の中心軸C2の延長線と始端容器部102Sの幾何中心とが重なるように接続部108を配置することで、旋回流の発生を抑制して、混合器100の圧力損失が過大になることを抑制することができる。
【0052】
また、出口配管38の終端容器部102Eへの接続位置は、入口配管36と同様である。つまり、終端容器部102E(第4容器部102d)における出口配管38との接続部107は、積層方向から見た終端容器部102Eの外形の幾何中心が出口配管38の中心軸の延長線上に位置するように配置される。
【0053】
本実施の形態の混合器100は、中空構造を有する円柱状の容器本体、言い換えれば両端が閉塞した円筒状の容器本体と、容器本体の内部空間を分割する複数の仕切り板とで構成されると捉えることもできる。鉛直方向Zに並ぶ仕切り板によって、容器本体の内部空間が複数のセクションに区画される。容器本体の両端に位置するセクションは、容器本体の側壁と、容器本体の底板または天板と、仕切り板とで区画される。容器本体の中間に位置するセクションは、容器本体の側壁と、2枚の仕切り板とで区画される。
【0054】
各セクションは、第1容器部102a~第4容器部102dの各内部空間Rを構成する。また、各仕切り板は、第1連結部104a~第3連結部104cを構成する。各仕切り板には、板の2つの主表面が並ぶ方向で板を貫通する貫通孔を有し、この貫通孔が通路部106を構成する。また、連結部104の一方の主表面は、当該主表面側の容器部102の天面または底面を構成し、連結部104の他方の主表面は、当該主表面側の容器部102の底面または天面を構成する。
【0055】
このような構造を有する混合器100は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、有底筒状の複数の容器ユニット、具体的には第1~第4容器ユニットが用意される。第1容器ユニットは、混合器100の下面と、第1容器部102aの側面とに対応する。第2容器ユニットは、第1連結部104aと、第2容器部102bの側面とに対応する。第3容器ユニットは、第2連結部104bと、第3容器部102cの側面とに対応する。第4容器ユニットは、第3連結部104cと、第4容器部102dの側面とに対応する。混合器100の上面に対応する蓋部材も用意される。
【0056】
第2~第4容器ユニットの底面には、通路部106に対応する貫通孔が設けられる。また、第1容器ユニットの側面には、入口配管36が接続される開口、つまり接続部108が設けられる。第4容器ユニットの側面には、出口配管38が接続される開口、つまり接続部107が設けられる。そして、第1容器ユニットの上に第2容器ユニットが積層され、接着等により固定される。同様に、第2容器ユニットの上に第3容器ユニットが、第3容器ユニットの上に第4容器ユニットがそれぞれ積層されて固定される。さらに、第4容器ユニットの上面の開口に蓋部材が嵌め合わされ、接着等により固定される。以上の工程により、混合器100を作製することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る混合器100は、積層された3つ以上の容器部102と、隣り合う2つの容器部102の内部空間Rどうしを連通する通路部106とを備える。容器部102は、液体を混合器100に流入させる入口配管36が接続される始端容器部102Sと、混合器100から液体を流出させる出口配管38が接続される終端容器部102Eと、始端容器部102Sと終端容器部102Eとの間に配置される中間容器部102Mとを含む。容器部102の積層方向において容器部102の一方の側に位置する通路部106と当該容器部102の他方の側に位置する通路部106とは、積層方向から見てずれるように配置される。
【0058】
上流側混合部と、下流側混合部と、両者をつなぐ連結管とを備え、上流側混合部に複数の流入管が挿入され、下流側混合部に複数の流出管が挿入された構造を有する従来の混合器では、混合器の上流ラインには複数の流入管に接続される分岐構造を、混合器の下流ラインには複数の流出管に接続される分岐構造を、それぞれ設ける必要があった。このため、混合器を組み込んだ装置の構造が複雑であった。
【0059】
一方、本実施の形態の混合器100では、入口配管36および出口配管38に分岐構造を設ける必要がない。このため、混合器100が組み込まれる血液浄化装置1の構造の簡素化を図ることができる。また、従来の混合器に比べて部品点数を減らすことができる。また、混合器100は、筒状の容器内に複数枚の仕切り板が設けられただけの簡単な構造である。よって、混合器100自体の構造の簡素化を図ることができる。また、混合器100ひいては血液浄化装置1の設計コストも低減することができる。これにより、最終製品の調製にかかるコストを低減することができる。
【0060】
また、本実施の形態の混合器100は、従来の混合器に比べて外形がシンプルであるため、混合器100自体の寸法を小さくすることが容易である。また、上述した従来の混合器では、2つの混合部をつなぐ連結管の径を流入管や流出管の径よりも大きくする必要があったため、混合器自体ひいては透析液供給装置の容積が大きくなってしまうという課題があった。一方、本実施の形態の混合器100によれば、第1混合器100aと第2混合器100bとをつなぐ配管(第1混合器100aに対する出口配管38、第2混合器100bに対する入口配管36に相当)の径を他の配管の径と同程度に設定することができる。これにより、血液浄化装置1の容積を小さくすることができる。血液浄化装置1の容積を小さくすることで、血液浄化装置1を洗浄する際に使用される洗浄液の量を減らすことができ、血液浄化装置1の維持コストを低減することができる。なお、混合器100が血液浄化装置1以外の装置に組み込まれる場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、動力によって回転する軸に撹拌羽根を設けた構造を有する従来の混合器は、混合器自体の構造が複雑であった。これに対し、本実施の形態の混合器100は、撹拌羽根やこれを旋回させる駆動機構を有しないため、混合器100自体の構造を大幅に簡素化することができる。
【0062】
また、本実施の形態の混合器100では、通路部106の大きさを調整することで、混合器100の混合性能の向上を優先して圧力損失の所定程度の増大を許容したり、圧力損失の低減を優先して混合性能の所定程度の低下を許容したりといった設計変更を容易に実現することができる。また、通路部106の大きさを調整することで、先行して容器部102に流入した液体の一部を、後発の液体が流入するまでこの容器部102に残しておくことができる。これにより、先発の液体の一部と後発の液体とを容器部102内で混合することができる。よって、本実施の形態の混合器100によれば、流量が経時的に変動する複数種の液体をより均一に混合することができる。
【0063】
また、本実施の形態の混合器100では、容器部102が鉛直方向Zに積層される。そして、出口配管38が接続される第4容器部102dを最上段に配置することで、出口配管38を混合器100内のガスを抜くためのガス抜き管として機能させている。これにより、ガス抜き管を別途設ける場合に比べて、混合器100の構造を簡素化することができる。
【0064】
また、本実施の形態の混合器100において、始端容器部102Sが有する入口配管36との接続部108は、容器部102の積層方向から見た始端容器部102Sの外形の幾何中心が入口配管36の中心軸C2の延長線上に位置するように配置される。これにより、混合器100の圧力損失が過大になることを抑制することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【0066】
(変形例1)
実施の形態では、板状の連結部104を貫通する貫通孔によって通路部106が構成されているが、通路部106の構造はその限りでない。例えば、通路部106は、管材で構成されてもよい。この場合、各容器部102は隣りの容器部102側を向く壁面に開口を有し、この開口に管材が連結されることで通路部106が設けられる。
【0067】
(変形例2)
中間容器部102Mの数は2つに限定されず、1つあるいは3つ以上であってもよい。中間容器部102Mの数は、要求される混合性能と圧力損失とのバランスを考慮して、適宜設定することができる。
【0068】
(変形例3)
各連結部104に設けられる通路部106の数は、適宜設定することができる。例えば、全ての連結部104に1つの通路部106が設けられ、各通路部106が互いに水平方向にずれるように、例えば千鳥状に、配置されてもよい。
【0069】
(変形例4)
実施の形態では、入口配管36が最下段の第1容器部102aに接続され、出口配管38が最上段の第4容器部102dに接続されているが、各配管の接続位置は逆であってもよい。つまり、入口配管36が最上段の第4容器部102dに接続され、出口配管38が最下段の第1容器部102aに接続されてもよい。この場合、入口配管36をガス抜き管として機能させることができる。
【符号の説明】
【0070】
36 入口配管、 38 出口配管、 100 混合器、 102 容器部、 102a 第1容器部、 102b 第2容器部、 102c 第3容器部、 102d 第4容器部、 102E 終端容器部、 102M 中間容器部、 102S 始端容器部、 104 連結部、 104a 第1連結部、 104b 第2連結部、 104c 第3連結部、 106 通路部、 108 接続部。
図1
図2
図3
図4