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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】スポーツシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/22 20060101AFI20230705BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20230705BHJP
   A43B 5/10 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A43B13/22 A
A43B13/14 A
A43B5/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019171955
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048910
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ヨネックス株式会社は、同本社にて、一鍬田亮及び関根知則が発明したテニスシューズを公開する新製品事前商談会を実施した。また、品川インターシティにて、一鍬田亮及び関根知則が発明したテニスシューズを公開する新製品発表受注会を実施した。
(73)【特許権者】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】一鍬田 亮
(72)【発明者】
【氏名】関根 知則
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-337370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/22
A43B 13/14
A43B 5/10
A43B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、
前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ複数並んで形成される基本パターンを備え、
前記基本パターンは、ピン状突部と、該ピン状突部を挟む位置にて該ピン状突部を囲いつつ該ピン状突部を中心とする周方向に延出する少なくとも一対の突条部と、を備え、
前記周方向にて、前記一対の突条部の間に、隣り合う前記基本パターンの前記突条部を形成することを特徴とするスポーツシューズ。
【請求項2】
接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、
前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ複数並んで形成される基本パターンを備え、
前記基本パターンは、ピン状突部と、該ピン状突部を挟む位置にて該ピン状突部を囲う方向に延出する少なくとも一対の突条部と、該一対の突条部の間に形成される受容領域と、を備え、り合う前記基本パターンの前記突条部が該受容領域に形成され、概略直交二方向に並んで形成され、該二方向にて相互に隣り合う前記基本パターンの向きが略90°回転する方向に異なっていることを特徴とするスポーツシューズ。
【請求項3】
前記突条部は、下方から見て前記ピン状突部側に中心が位置する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスポーツシューズ。
【請求項4】
前記突条部は、前記ピン状突部から離れる方向に所定間隔を隔てて複数形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスポーツシューズ。
【請求項5】
前記アウトソールにおいて足幅方向外足側となる領域に形成された前記基本パターンの少なくとも一部は、前記ピン状突部の下端面が前記突条部の下端面より上方に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスポーツシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソールから突出する複数の突部を備えたスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用のシューズ、特にテニスシューズにおいては、テニスのプレーの性質上、グリップ性能とスライド性能とが要求される。これらの性能は、主として、アウトソールに形成される複数の突部によって発揮される。このようにアウトソールに複数の突部を有するテニスシューズとしては、特許文献1に開示された構成が知られている。
【0003】
特許文献1では、カップ状の窪みと窪みの中心に形成された突出体とを基本パターンとして見た場合、かかる基本パターンを万遍なく並べて配置してアウトソールが形成される。窪みは、アウトソールを下方から見て円形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-252102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、基本パターンの外縁形状が窪みと同様に円形に形成されるので、隣り合う窪みとの間に該窪みの外周に沿って厚みが不均一の壁が形成される。言い換えると、かかる壁の厚みが不均一となる分、基本パターンでの性能が発揮され難くなったり、基本パターンの配置数が少なくなり、基本パターンの性能発揮について改善の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、アウトソールに複数並んで形成される基本パターンによる性能を良好に発揮することができるスポーツシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における一態様のスポーツシューズは、接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ複数並んで形成される基本パターンを備え、前記基本パターンは、ピン状突部と、該ピン状突部を挟む位置にて該ピン状突部を囲いつつ該ピン状突部を中心とする周方向に延出する少なくとも一対の突条部と、を備え、前記周方向にて、前記一対の突条部の間に、隣り合う前記基本パターンの前記突条部を形成することを特徴とする。
また、本発明における他の一態様のスポーツシューズは、接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ複数並んで形成される基本パターンを備え、前記基本パターンは、ピン状突部と、該ピン状突部を挟む位置にて該ピン状突部を囲う方向に延出する少なくとも一対の突条部と、該一対の突条部の間に形成される受容領域と、を備え、隣り合う前記基本パターンの前記突条部が該受容領域に形成され、概略直交二方向に並んで形成され、該二方向にて相互に隣り合う前記基本パターンの向きが略90°回転する方向に異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基本パターンに上述の受容領域が形成されるので、複数の基本パターンをアウトソールに並べて形成するにあたり、隣り合う基本パターンの間に、基本パターンが非形成となる無駄な領域が生じることを抑制できる。これにより、アウトソールの各部において、単位面積当たりに基本パターンが形成される割合を大きく確保でき、基本パターンによるグリップ性能やスライド性能等を良好に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るテニスシューズのアウトソールを示す下面図である。
図2図2Aは、図1を内足側から見た側面図であり、図2Bは、図1を外足側から見た側面図である。
図3図3Aは、図1中P1部の基本パターンの拡大図であり、図3Bは、図3Aのa1-a1線断面図である。
図4図4Aは、第2領域の基本パターンの図3Aと同様の拡大図であり、図4Bは、図4Aのa2-a2線断面図である。
図5図5Aは、第3領域の基本パターンの図3Aと同様の拡大図であり、図5Bは、図5Aのa3-a3線断面図であり、図5Cは、第3領域の基本パターンが変形した状態の図5Bと同様の断面図である。
図6図6Aは、第1変形例に係る基本パターンの拡大図であり、図6Bは、図6Aのb1-b1線断面図である。
図7図7Aは、第2変形例に係る基本パターンの拡大図であり、図7Bは、図7Aのb2-b2線断面図である。
図8図8Aは第3変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図であり、図8Bは第4変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図であり、図8Cは第5変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図であり、図8Dは第6変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下においては、本発明のスポーツシューズをクレーコート用或いは砂入り人工芝コート用のテニスシューズに適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、ハードコート用やカーペットコート用のテニスシューズの他、多種のいかなるスポーツ種目のシューズ、たとえばゴルフシューズ、バドミントンシューズの他、日常のタウンユースのシューズや、ウォーキングシューズ、ジョギングシューズにも適用することができ、その利用範囲は広いものである。
【0011】
図1は、実施の形態に係るテニスシューズのアウトソールを示す下面図である。なお、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略する場合がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、図1中矢印にて示すように、シューズの長手方向を前後方向とし、つま先側を前側、かかと側を後側とする。また、シューズのアウトソールを接地させた状態の鉛直方向を上下方向とし、紙面直交方向手前側を下側、奥行側を上側とする。更に、前後及び上下方向に直交する方向(図1中左右方向)を足幅方向とし、親指側を内足側、小指側を外足側とする。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態のテニスシューズ1は、その底面(下面)、言い換えると、接地面G(図3B参照)に接するときの接地側にアウトソール10を備えている。このアウトソール10には軟質な合成樹脂材料が使用され、合成樹脂材料としては、ゴム、ウレタンなどを例示できる。アウトソール10の上面には、発泡ポリウレタンやEVA等の衝撃吸収性に優れた軟質弾性体製のミッドソール(不図示)が張り合わされている。かかるミッドソール及びアウトソール10によって、テニスシューズ1の靴底3が形成される。
【0013】
図2Aは、図1を内足側から見た側面図であり、図2Bは、図1を外足側から見た側面図である。図2A及び図2Bに示すように、アウトソール10の周縁には、上方に立ち上がる立ち上がり部10aが形成され、この立ち上がり部10aにアッパー部材(不図示)の下縁部が一体的に貼り付けられてテニスシューズ1が形成される。
【0014】
続いて、アウトソール10の下面の形状について、図1に加えて図3図5を参照して以下に説明する。
【0015】
図1に示すように、アウトソール10は、下方から見て複数並んで形成される基本パターン20を備えている。図3Aは、図1中P1部の基本パターンの拡大図であり、図3Bは、図3Aのa1-a1線拡大図である。図3A及び図3Bに示すように、基本パターン20は、1体のピン状突部21と、ピン状突部21の外側に形成された4体の突条部22とを備えている。ピン状突部21及び各突条部22は、アウトソール10の下面にて下方に突出するように形成されている。
【0016】
ピン状突部21は、下方に向かうに従って細くなる円錐台形状に形成されている。ピン状突部21の下方への突出方向や形状は、アウトソール10の場所によって異なっており、かかる場所と突出方向等との関係については後述する。
【0017】
4体の突条部22は、一対の内側突条部22a及び一対の外側突条部22bによって形成されている。一対の内側突条部22aは、ピン状突部21と隙間S1を介して隣り合って配置される。一対の外側突条部22bは、内側突条部22aにおけるピン状突部21と反対側に隙間S2を介して配置される。よって、ピン状突部21から離れる方向に所定間隔を隔てて2体の突条部22となる内側突条部22a及び外側突条部22bが並んで形成される。
【0018】
一対の内側突条部22aは、ピン状突部21の径方向両側から挟む位置に形成されている。一対の外側突条部22bは、ピン状突部21に加え、一対の内側突条部22aもピン状突部21の径方向両側から挟む位置に形成される。各内側突条部22a及び各外側突条部22bは、下方から見てピン状突部21に中心が位置する概ね四分円弧状に形成されている。従って、各内側突条部22a及び各外側突条部22bは、ピン状突部21を囲う方向に延出する形状となっている。
【0019】
図3Aに示す基本パターン20において、各内側突条部22a及び各外側突条部22bは、ピン状突部21を中心とする周方向にて、前方内足側となる約90°の角度範囲と、後方外足側となる約90°の角度範囲とに形成される。言い換えると、ピン状突部21を中心とする周方向における前方外足側及び後方内足側それぞれの約90°の角度範囲の領域は、一対の内側突条部22a及び一対の外側突条部22bが形成されない非形成領域とされる。ここにおいて、かかる非形成領域を基本パターン20の受容領域24とし、基本パターン20が一対の受容領域24を有する形状に形成される。受容領域24は、ピン状突部21を中心とする周方向にて、一対の内側突条部22aの端部の間の領域となり、また、一対の外側突条部22bの端部の間の領域となる。
【0020】
図3Bに示すように、各突条部22a、22bの下端面は、同一となる上下位置に形成されて略水平な同一平面上に位置している。ピン状突部21の下端面の位置については後述する。また、各突条部22a、22において、ピン状突部21側の面は下方に向かって次第にピン状突部21から離れる方向に傾斜する一方、その反対側の面は上下方向と平行に延出している。
【0021】
続いて、複数の基本パターン20の並び方について以下に説明する。図1に示すように、基本パターン20は、図3Aに示した向き(以下、「第1の向き」とする)と、図3Aに示した向きから略90°回転する方向に異なる向き(以下、「第2の向き」とする)との2タイプの向きに設定される。そして、基本パターン20は、直交する前後及び足幅方向に対し、約45°傾いた概略直交二方向に複数列で並んで形成されている。かかる二方向の並び方向にて相互に隣り合う基本パターン20の向きは、略90°回転する方向に異なっており、該並び方向にて基本パターン20が第1の向きと第2の向きとで交互に位置するよう配設される。
【0022】
このように並んだ複数の基本パターン20において、受容領域24には、該受容領域24の形成方向に隣り合う基本パターン20の外側突条部22b(突条部22)が形成される。従って、内側突条部22a及び外側突条部22bの延出方向の端部と、受容領域24に形成される隣の基本パターン20の外側突条部22bとの間に隙間が形成される。かかる隙間の幅は、上述した各隙間S1、S2(図3A参照)の幅と概略同一又は若干大きく形成される。
【0023】
ここで、アウトソール10において、足の土踏まずに対応する領域となる土踏まず対応部12が前足部11と踵部13とに前後方向から挟まれて配置される。言い換えると、土踏まず対応部12の前方に前足部11、後方に踵部13が形成される。
【0024】
アウトソール10は、前後方向に延出して開口形成される窓部15を備えている。窓部15は、足幅方向中央部であって、前足部11の後部から土踏まず対応部12を通過して踵部13の中心部分まで形成されている。踵部13の後方外足側は、直線方向に延出する複数本の溝13aが形成されている。アウトソール10において、かかる溝13aと窓部15の形成領域以外に、基本パターン20が並んで形成される。
【0025】
各基本パターン20におけるピン状突部21の突出方向及び形状は、アウトソール10の場所によって異なって形成される。本実施の形態では、アウトソール10の3つの領域で異なって形成され、かかる3つの領域を第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3とする。第1領域A1は、足幅方向概ね中央となる境界位置(図1中符号「B1」で示す)より足幅方向内足側であって、前足部11の後部から後方領域とされる。第2領域A2は、境界位置B1より足幅方向内足側であって、前足部11の後部における一部を除く領域、つまり、第1領域A1より前方領域とされる。第3領域A3は、境界位置B1より足幅方向外足側の領域であって、前足部11から土踏まず対応部12を経て踵部13に亘る前後方向全領域とされる。
【0026】
第1領域A1において、円錐台形状となるピン状突部21は、図3A及び図3Bに示すように、中心軸の向きが上下方向と平行となる突出方向に設定されている。つまり、第1領域A1のピン状突部21は、直円錐を底面と平行な面で切断して頂点側を除いた円錐台形状に形成される。
【0027】
図4Aは、第2領域の基本パターンの図3Aと同様の拡大図であり、図4Bは、図4Aのa2-a2線断面図である。第2領域A2のピン状突部21は、突出方向が下方に向かうに従って後方外足側に傾斜する突出方向に設定されている。言い換えると、下方に向かうに従って後方外足側に傾きつつ次第に細くなる斜円錐を底面と平行な面で切断して頂点側を除いた形状に形成される。
【0028】
図5Aは、第3領域の基本パターンの図3Aと同様の拡大図であり、図5Bは、図5Aのa3-a3線断面図である。第3領域A3のピン状突部21は、突出方向が下方に向かうに従って後方内足側に傾斜する突出方向に設定されている。言い換えると、下方に向かうに従って後方内足側に傾きつつ次第に細くなる斜円錐を底面と平行な面で切断して頂点側を除いた形状に形成される。
【0029】
第3領域A3のピン状突部21の下端面の位置は、各突条部22a、22bの下端面より上方に位置している。一方、図3B及び図4Bに示すように、第1領域A1及び第2領域A2のピン状突部21の下端面の位置は、各突条部22a、22bの下端面より下方に位置している。
【0030】
第1領域A1及び第2領域A2のピン状突部21においては、その下端(先端)側が各突条部22a、22bの下端面より下方に突出するようになる。よって、先細形状となるピン状突部21の下端が接地面(コート)Gに突き刺さるようになって接地面Gに対する食い付きが良くなり、グリップ性能を向上させることができる。特に、第2領域A2は親指及び母指球部分に対応する領域となるので、かかる領域でのピン状突部21の食い付きが良くなることで、踏み込み時における高いグリップ性能を発揮できる。これにより、テニスのプレーにて、静止状態から蹴り出してダッシュするときに、強力なグリップ力を得てフットワークの向上を図ることができる。
【0031】
ここで、第2領域A2においては、前方へのダッシュ時に、接地面Gからピン状突部21に対して矢印F1方向の力が加わる。第2領域A2のピン状突部21は、下方に向かうに従って後方外足側に傾斜する方向に突出するので、矢印F1方向の力に対する変形を抑制することができる。これにより、第2領域A2において、前方へのダッシュ時におけるピン状突部21の食い付きをより良く発揮し、グリップ力向上に寄与することができる。
【0032】
一方、図5Bに戻り、第3領域A3のピン状突部21においては、その下端(先端)側が各突条部22a、22bの下端面より上方に引っ込んで位置している。よって、各突条部22a、22bが変形しない程度の踏み込み力では、接地面Gからピン状突部21が離れて非接触となり、接地面G上で第3領域A3の各基本パターン20をスライドさせ易くすることができる。言い換えると、各基本パターン20において、接地面Gからピン状突部21が非接触となるよう各突条部22a、22bで踏み込み力を支えてスライド性能を確保することができる。
【0033】
また、ある程度の踏み込み力で各突条部22a、22bが変形した場合には、接地面Gにピン状突部21の先端面が面接触する。この場合でも、ピン状突部21が下方に向かうに従って後方内足側に傾斜して突出するので、ピン状突部21が引っ掛かる状態になることを防ぐことができる。
【0034】
更に、スライド後に停止すべく強い踏み込み力で各突条部22a、22bが変形した場合、図5Cに示すように、ピン状突部21の下端が接地面Gに突き刺さって接地面Gに食い付き、グリップ力を発揮することができる。従って、意図的に踏ん張ったときには、スライドしてからグリップ力を発揮することができる。言い換えると、第3領域A3の各基本パターン20では、踏み込み力に応じた各突条部22a、22bの変形量が変わることで、ピン状突部21によるグリップの有無を変更可能となり、スライド量をコントロールすることができる。
【0035】
このように、各基本パターン20は、第1領域A1及び第2領域A2でグリップ性能を重視し、第3領域A3でスライド性能を重視している。これにより、相反する性能となるグリップ性能とスライド性能とをバランスよく調和させて発揮できるようになり、プレーヤのイメージに合った素早く軽快なフットワークを実現することができる。
【0036】
本実施の形態のアウトソール10の構成では、各基本パターン20に受容領域24が形成されるので、かかる受容領域24に隣り合う基本パターン20の突条部22を形成することができる。これにより、複数の基本パターン20を並べて形成するにあたり、隣り合う基本パターン20の間に、基本パターン20が形成されない領域が生じることを抑制できる。従って、単位面積当たりに基本パターン20が形成される割合が高くなり、基本パターン20の上述した各性能を良好に発揮可能となる。
【0037】
また、突条部22が上記のように円弧状に形成されるので、踏み込み力に対する支持力をピン状突部21の外側で概ね均等に発揮でき、ピン状突部21の上述した性能を安定して発揮させることができる。
【0038】
また、各基本パターン20では、ピン状突部21から離れる方向に2体の突条部22となる内側突条部22a及び外側突条部22bを並べて形成している。これにより、隙間S1、S2(図3A参照)内への砂等の残存を回避し、各突条部22a、22bの耐久性を確保しつつ、上記性能を発揮できるよう、隙間S1、S2の幅と各突条部22a、22bの厚みとを設定することができる。
【0039】
更に、基本パターン20は略90°回転する方向に異なる第1の向きと第2の向きとの2タイプの向きに設定される。これにより、接地面Gに略平行となる360°何れの方向から力が加わっても、該方向に応じ、それぞれの向きの基本パターン20が上記性能を適宜発揮し、アウトソール10全体として発揮する上記性能の安定化を図ることができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
基本パターン20の形状は、実施の形態の構成に限定されるものでなく、種々の変更が可能である。以下、基本パターン20の変形例として、図6図8を用いて本発明の第1~第6変形例を説明する。
【0042】
図6Aは、第1変形例に係る基本パターンの拡大図であり、図6Bは、図6Aのb1-b1線断面図である。図6A及び図6Bにおいて、第1変形例では、上記実施の形態に対し、内側突条部22a及び外側突条部22bの形状を変更している。第1変形例では、各突条部22a、22bにおけるピン状突部21の反対側の面が、下方に向かって次第にピン状突部21に近付く方向に傾斜している。また、内側突条部22aがピン状突部21の周りに連なって円形に沿って1体形成され、各突条部22a、22bの下端面がピン状突部21に向かって高くなるように傾斜している。
【0043】
図7Aは、第2変形例に係る基本パターンの拡大図であり、図7Bは、図7Aのb2-b2線断面図である。図7A及び図7Bにおいて、第2変形例では、第1変形例における内側突条部22a及び外側突条部22bのそれぞれに溝26を形成している。溝26は、内側突条部22a及び外側突条部22bを等分に分割するように形成される。
【0044】
図8Aは、第3変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図である。図8Aにおいて、第3変形例では、第1変形例における内側突条部22a及び外側突条部22bの下端部を断面視で概ね半円弧状に形成している。また、第3変形例では、隙間S1、S2の上部形成面も断面視で概ね半円弧状に形成している。
【0045】
図8Bは、第4変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図である。図8Bにおいて、第4変形例では、第3変形例にて概ね半円弧状に形成した各突条部22a、22bの下端部及び隙間S1、S2の上部形成面につき、第3変形例より円弧の曲率を大きく形成している。これにより、第4変形例では、第3変形例に比べてピン状突部21及び各突条部22a、22bの側面の傾斜が緩やかになっている。
【0046】
図8Cは、第5変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図である。図8Cにおいて、第5変形例では、ピン状突部21から離れる方向に3体の突条部22が隣接するように並べて形成し、また、ピン状突部21及び各突条部22の断面形状を概ね半円弧状に形成している。3体の突条部22は、ピン状突部21から離れるに従って下方への突出量が大きく形成されている。
【0047】
図8Dは、第6変形例に係る基本パターンの図6Bと同様の断面図である。図8Dにおいて、第6変形例では、ピン状突部21を円錐状に形成している。また、第6変形例では、ピン状突部21から離れる方向に多数の突条部22が隣接するように並べて形成され、各突条部22の下端が先細に尖った形状に形成される。
【0048】
また、上記実施の形態では、下方から見て突条部22を円弧状に形成したが、ピン状突部21を囲う方向に延出する形状であれば、延出形状を折れ線状にする等、種々の変更が可能である。
【0049】
また、上記実施の形態では、ピン状突部21から離れる方向に並ぶ突条部22を内側突条部22a及び外側突条部22bの2体としたが、これに限定されるものでなく、上記各変形例にも記載したが、1体または3体以上に変更してもよい。但し、突条部22を2体並んで形成することで、突条部22の剛性や耐久性を確保しつつ、隙間S1、S2を良好な幅に設定できる点で有利となる。
【0050】
また、ピン状突部21の形状は、上記各変形例にも記載したが、種々の変更が可能である。例えば、断面形状が一様となる柱状に形成してもよく、かかる断面形状は、多角形や楕円形にする等、ピン状を呈する限りにおいて種々の形状を採用してもよい。
【0051】
また、基本パターン20における受容領域24は、部分的に括れた形状を備えて内部に隣り合う基本パターン20の突条部22を形成できる限りにて、他の形状としてもよい。
【0052】
また、ピン状突部21の突出方向や突出量にあっては、上記実施の形態で示した向きは一例に過ぎないものであり、要求されるグリップ性能やスライド性能等に応じて適宜変更してもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、基本パターン20の並び方向を前後及び足幅方向に約45°傾く方向としたが、これに限定されるものでなく、前後及び足幅方向と同じ方向にする等、要求される性能に応じて適宜変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、アウトソールに複数並んで形成される基本パターンによる性能を良好に発揮できるスポーツシューズに関する。
【符号の説明】
【0055】
1 シューズ(スポーツシューズ)
10 アウトソール
20 基本パターン
21 ピン状突部
22 突条部
G 接地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8