IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特許7307651周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置
<>
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図1
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図2
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図3
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図4
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図5
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図6
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図7
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図8
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図9
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図10
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図11
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図12
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図13
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図14
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図15
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図16
  • 特許-周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230705BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20230705BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20230705BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20230705BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/04
B60W50/14
B60W40/06
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019185923
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060906
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】方 芳
(72)【発明者】
【氏名】南里 卓也
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147556(JP,A)
【文献】特開2018-147040(JP,A)
【文献】特開2011-164989(JP,A)
【文献】国際公開第2018/134994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に他車両が検出されると前記他車両の挙動を予測する挙動予測コントローラを備える周囲車両挙動予測方法において、
前記挙動予測コントローラは、
前記自車両の前方であって、同一の走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定し、
前記複数の他車両のうち、前記他車両の進行方向もしくは車線幅方向における走行安定性が所定の安定性以下である走行不安定な第二他車両があるか否かを判断し、
前記走行不安定な第二他車両があると判断されると、前記第二他車両の後方に第一他車両があるか否かを判断し、
前記第二他車両の後方に前記第一他車両があると判断されると、前記第一他車両と前記第二他車両の接近度が予め定められた所定値以上であるか否かを判断し、
前記接近度が予め定められた所定値以上と判断されると、前記第一他車両の車線変更を予測し、
前記車線変更すると予測された前記第一他車両に対して、前記第一他車両が車線変更するときの候補車線を抽出し、
前記抽出された前記第一他車両の前記候補車線のうち、前記第一他車両が変更先として選択する走行車線を推定し、
前記第一他車両が車線変更できる前記候補車線が複数ある場合、前記複数の候補車線のそれぞれの状況をあらわす情報に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項2】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記予測対象車両のうち、前記予測対象車両が予め決めた観測距離を走行する間又は観測時間の間の車線幅方向における位置の変動幅が所定値以上の車両があると、その車両は横方向ふらつきによる走行不安定な前記第二他車両と判定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項3】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記予測対象車両のうち、前記予測対象車両が予め決めた観測距離を走行する間又は観測時間の間の車両前後方向の速度変化幅が所定値以上の車両があると、その車両は縦方向ふらつきによる走行不安定な前記第二他車両と判定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両と前記第二他車両の接近度は、前記第一他車両と前記第二他車両との間の相対距離、相対速度、干渉余裕時間に基づいて算出する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両の前方の所定距離内に交差点がある場合、前記第一他車両の前記交差点における進行方向を推定し、
前記第一他車両の進行方向に基づいて前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項6】
請求項5に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両の前方の所定距離内に前記交差点がある場合、前記第一他車両の過去の車線変更履歴を考慮し、前記第一他車両の前記交差点における進行方向を推定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項7】
請求項5に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両の前方の所定距離内に前記交差点がある場合、当該交差点において記録された過去の統計データに基づいて、前記第一他車両の前記交差点における進行方向を推定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項8】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、前記第一他車両の後方における前記複数の候補車線のそれぞれの交通状況に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項9】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、前記第一他車両の前方における前記複数の候補車線のそれぞれの交通状況に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項10】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、前記第一他車両に対する前記複数の候補車線のそれぞれの属性情報に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項11】
請求項1に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、前記第一他車両の前方における前記複数の候補車線のそれぞれの路面状況に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記第一他車両の車線変更先を前記候補車線から予測するのに考慮する要素に対し、前記第一他車両が車線変更したときの車線変更先への影響度に応じて前記候補車線の状況の重みを設定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項13】
請求項5から7までの何れか一項を引用する請求項12に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記候補車線の状況の重みを設定する場合、前記第一他車両の前記交差点における進行方向を前記候補車線の属性より大きく設定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項14】
請求項5から7までの何れか一項を引用する請求項12に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記候補車線の状況の重みを設定する場合、前記交差点における進行方向を前記第一他車両の後方の交通状況より大きく設定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項15】
請求項5から7までの何れか一項を引用する請求項12に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記候補車線の状況の重みを設定する場合、前記交差点における進行方向を前記第一他車両の前方の交通状況より大きく設定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項16】
請求項12に記載された周囲車両挙動予測方法において、
前記候補車線の状況の重みを設定する場合、前記第一他車両の前方の交通状況を前記候補車線の路面状況より大きく設定する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測方法。
【請求項17】
請求項1から16までの何れか一項に記載された周囲車両挙動予測方法で予測された周囲車両の挙動に基づいて自車両を制御する車両制御方法であって、
前記第一他車両が前記自車両の前方へ車線変更する可能性が第一所定値以上の場合、前記自車両を減速させる
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載された車両制御方法において、
前記第一他車両が前記自車両の前方へ車線変更する可能性が前記第一所定値以下であるが第二所定値以上の場合、ドライバによるマニュアル操作要求であるハンドオーバーリクエストを出す
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項19】
請求項17に記載された車両制御方法において、
前記第一他車両が前記自車両の前方へ車線変更する可能性が前記第一所定値以下であるが第二所定値以上の場合、ドライバに警告をする
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項20】
自車両の周囲に他車両が検出されると前記他車両の挙動を予測する挙動予測コントローラを備える周囲車両挙動予測装置において、
前記挙動予測コントローラは、
自車両の前方であって、同一の走行車線を走行している第一他車両と第二他車両を予測対象車両として特定する予測対象車両特定部と、
前記第一他車両の前方を走行している前記第二他車両の進行方向もしくは車線幅方向における走行安定性を評価すると共に、前記第一他車両と前記第二他車両との間の接近度を算出する対象車両挙動情報取得部と、
前記第二他車両の走行安定性が所定の安定性以下であり、且つ、前記第一他車両と前記第二他車両との間の接近度が予め定められた所定値以上である場合、前記第一他車両の車線変更を予測する車線変更予測部と、
前記車線変更すると予測された前記第一他車両に対して、前記第一他車両が車線変更するときの候補車線を抽出する車線変更候補車線抽出部と、
前記抽出された前記第一他車両の前記候補車線のうち、前記第一他車両が変更先として選択する走行車線を推定する変更先車線推定部と、を有し、
前記変更先車線推定部は、前記第一他車両が車線変更できる前記候補車線が複数ある場合、前記複数の候補車線のそれぞれの状況をあらわす情報に基づいて、前記第一他車両の車線変更先を予測する
ことを特徴とする周囲車両挙動予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車線変更判定装置は、自車両が走行する走行車線と、隣接車線を走行する他車両との位置関係に基づいて、他車両が自車線へ車線変更するか否かを判定する。このとき、他車両の走行車線側のウィンカが点滅している場合は、点滅していない場合に比べて、車線変更すると判定しやすくするために、車線変更の判定閾値を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-201159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、先行技術のように他車両と車線区分線までの距離に基づいて他車両の車線変更を予測する場合には、他車両が車線変更動作を開始して、車線区分線までの距離が近くになってからでなければ他車両の車線変更を予測することができない。このため、他車両の車線変更を早期に予測する他車両の挙動予測が望まれている、という課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、第一他車両の走行車線上の前方を第二他車両が走行しているシーンにおいて、第二他車両の走行安定性が低い場合、第一他車両の車線変更を早期に予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の周囲車両挙動予測方法は、自車両の前方であって、同一の走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定する。複数の他車両のうち、他車両の進行方向もしくは車線幅方向における走行安定性が所定の安定性以下である走行不安定な第二他車両があるか否かを判断する。走行不安定な第二他車両があると判断されると、第二他車両の後方に第一他車両があるか否かを判断する。第二他車両の後方に第一他車両があると判断されると、第一他車両と第二他車両の接近度が予め定められた所定値以上であるか否かを判断する。接近度が予め定められた所定値以上と判断されると、第一他車両の車線変更を予測する。車線変更すると予測された第一他車両に対して、第一他車両が車線変更するときの候補車線を抽出する。抽出された第一他車両の候補車線のうち、第一他車両が変更先として選択する走行車線を推定する。第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、複数の候補車線のそれぞれの状況をあらわす情報に基づいて、第一他車両の車線変更先を予測する。
【発明の効果】
【0007】
上記課題解決手段を採用したため、第一他車両の走行車線上の前方を第二他車両が走行しているシーンにおいて、第二他車両の走行安定性が低い場合、第一他車両の車線変更を早期に予測することができる。加えて、第一他車両が車線変更できる候補車線が複数ある場合、候補車線の状況に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の周囲車両挙動予測装置を示すブロック構成図である。
図2】予測対象車両を特定する例1(a)と例2(b)を示す説明図である。
図3】車線候補を抽出する例を示す説明図である。
図4】実施例1の挙動予測コントローラ及び車両制御部にて実行される周囲車両挙動予測処理及び車両制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5】走行安定性を横方向のふらつきにより判断する例を示す説明図である。
図6】走行安定性を縦方向のふらつきにより判断する例を示す説明図である。
図7】交差点における第一他車両の進行方向を推定する例を示す説明図である。
図8】第一他車両の進行方向を推定するときの候補車線の後方側の交通状況の例を示す説明図である。
図9】第一他車両の進行方向を推定するときの候補車線の前方側の交通状況の例を示す説明図である。
図10図4のS260にて実行される車両Aの車線変更予測処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第一他車両の走行車線上の前方を走行安定性が低い第二他車両が走行しているシーンにおいて背景技術での課題を示す説明図である。
図12】第一他車両の走行車線上の前方を走行安定性が低い第二他車両が走行しているシーンにおいて本開示技術での車線変更予測効果を示す説明図である。
図13】車両Aの車線変更予測例1を示す説明図である。
図14】車両Aの車線変更予測例1において影響度に基づいて設定した重みによる候補車線1への車線変更尤度と候補車線2への車線変更尤度の計算方法例1を示す図である。
図15】車両Aの車線変更予測例1において優先度による候補車線1への車線変更尤度と候補車線2への車線変更尤度の計算方法例1を示す図である。
図16】車両Aの車線変更予測例2を示す説明図である。
図17】車両Aの車線変更予測例2において重みによる候補車線1への車線変更尤度と候補車線2への車線変更尤度の計算方法例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における周囲車両挙動予測方法、車両制御方法及び周囲車両挙動予測装置は、周囲車両挙動予測機能を備える運転支援車両又は自動運転車両に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「周囲車両挙動予測装置のブロック構成」、「周囲車両挙動予測処理及び車両制御処理構成」、「車線変更予測処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[周囲車両挙動予測装置のブロック構成(図1図3)]
周囲車両挙動予測装置は、図1に示すように、物体検出装置001、物体検出統合・追跡部002、自車位置推定装置003、地図記憶装置004、地図内自車位置推定部005、挙動予測コントローラ010を備えている。
【0012】
物体検出装置001は、自車両の周囲に存在する物体検出処理を行う。物体検出処理では、レーザレーダやミリ波レーダやカメラなどの物体を検出するセンサを用い、自車周囲の物体、例えば、他車両、バイク、歩行者、障害物などの位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。検出結果は、例えば、自車両を空中から眺める天頂図において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する。
【0013】
物体検出統合・追跡部002は、レーザレーダとカメラを融合させたフュージョンセンサやミリ波レーダとカメラを融合させたフュージョンセンサを用い物体検出統合・追跡処理を行う。物体検出統合・追跡処理では、物体検出装置001から取得された物体検出結果、即ち、複数のセンサから得られた複数の物体位置、姿勢、大きさ、速度結果を基に、各センサの誤差特性なども考慮した上で最も物体位置などの誤差が少なくなるような最も合理的な位置を算出し、各物体に対して一つの2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する。さらに、異なる時刻に出力された物体位置、姿勢、大きさ、速度などに対して、異なる時刻間における物体の同一性検証(対応付け)を行い、かつ、物体の対応付けを基に、物体の速度情報を推定する。
【0014】
自車位置推定装置003では、自車位置情報取得処理を行う。自車位置情報取得処理では、GPSやオドメトリなど絶対位置を計測するセンサにより自車両の絶対位置、即ち、ある基準点に対する位置、姿勢、速度などを計測する。
【0015】
地図記憶装置004では、地図情報取得処理を行う。地図情報取得処理では、走行車線情報を含む高精度地図情報を保持しており、高精度地図情報から走行車線の絶対位置や走行車線の接続関係、相対位置関係などを取得する。
【0016】
地図内自車位置推定部005では、自車位置推定装置003と地図記憶装置004からの情報入力に基づいて、地図内自車位置推定処理を行う。地図内自車位置推定処理では、自車位置情報取得処理から得られた自車両の絶対位置と、地図情報取得処理から得られた地図情報から、地図における自車両の位置を推定する。即ち、自車両がどの走行車線を走行しているかなどの情報を取得する。
【0017】
挙動予測コントローラ010は、物体検出統合・追跡部002から得られた物体位置情報と、地図内自車位置推定部005から得られた自車両の地図内での位置情報を基に、自車両周辺の物体の挙動を予測する。
【0018】
挙動予測コントローラ010は、図1に示すように、予測対象車両特定部011、対象車両挙動情報取得部012、車線変更予測部013、車線変更候補車線抽出部014、変更先車線推定部015を有する。さらに、候補車線の車線属性取得部016、候補車線上の交通状況取得部017、候補車線の路面状況取得部018、車線変更可能性計算部019を有して構成される。以下、各部での処理を説明する。
【0019】
予測対象車両特定部011は、自車両の周囲に存在する他車両が地図内のどの走行車線に属しているかの判定に基づき、自車両の周囲に存在する他車両のうち、車線変更予測対象車両の特定処理を行う。例えば、図2(a)に示すように、自車両Vが走行している走行車線の右側隣接車線に存在する4台の他車両のうち、自車両Vより前に走行している3台の他車両を予測対象車両とする。また、例えば、図2(b)に示すように、自車両Vが走行している走行車線の左側隣接車線に存在する4台の他車両のうち、自車両Vより前に走行している3台の他車両を予測対象車両とする。
【0020】
対象車両挙動情報取得部012は、特定された予測対象車両の走行安定性を評価すると共に、特定された予測対象車両に含まれる複数の他車両同士の接近度を算出する。例えば、図3に示すように、自車両Vの前方であって、自車線L3と隣接する同一の走行車線L2を走行している車両A(第一他車両に相当)と車両B(第二他車両に相当)を予測対象車両として特定したとする。このとき、車両Aの前方を走行している車両Bの走行安定性を評価すると共に、車両Aと車両Bとの間の接近度を算出する。
【0021】
車線変更予測部013は、特定された予測対象車両の中に走行不安定な第二他車両がある場合、第二他車両の後方に第一他車両があって、且つ、2台の他車両の接近度が予め定められた所定値以上である場合、第一他車両の車線変更を予測する。例えば、図3に示すように、自車両Vの前方に存在する車両Bの走行安定性が所定の安定性以下であり、且つ、車両Aと車両Bとの間の接近度が予め定められた所定値以上である場合、車両Aの車線変更を予測する。
【0022】
車線変更候補車線抽出部014は、車線変更すると予測された車両Aに対して、車両Aが車線変更するときの候補車線を抽出する処理を行う。例えば、図3に示すように、車両Aと車両Bが現在走行している走行車線をL2とした場合、走行車線L2の左右の隣接車線L1,L3が、車両Aが車線変更するときの候補車線として抽出される。
【0023】
変更先車線推定部015は、車線変更候補車線抽出部014で抽出された車両Aの候補車線のうち、車両Aが変更先として選択する走行車線を推定する処理を行う。例えば、車両Aの前方の一定距離内に交差点がある場合は、車両Aが車線変更するときの変更先車線を、車両Aの交差点における進行方向に基づいて推定する。
【0024】
候補車線の車線属性取得部016は、車線変更候補車線抽出部014で抽出された車線変更候補車線の属性を取得する。ここで、車線変更候補車線の属性とは、例えば、バス専用、バス優先などの属性をいう。
【0025】
候補車線上の交通状況取得部017は、車線変更候補車線抽出部014で抽出された車線変更候補車線において、走行にふらつきがあると判断された車両Bの後方を走行している車両Aの前方と後方の交通状況を取得する処理を行う。
【0026】
候補車線の路面状況取得部018は、車線変更候補車線抽出部014で抽出された車線変更候補車線において、走行にふらつきがあると判断された車両Bの後方を走行している車両Aの前方の路面状況を取得する処理である。ここで、路面状況とは、例えば、水たまり、凍結、工事中などをいう。また、路面状況の情報を取得する手法としては、センサで検出しても良いし、路車間通信や車々間通信で取得しても良い。
【0027】
車線変更可能性計算部019は、変更先車線推定部015、候補車線の車線属性取得部016、候補車線上の交通状況取得部017、候補車線の路面状況取得部018からの情報を入力する。そして、入力情報を総合的に判断することで、走行にふらつきがあると判断された車両Bの後方を走行している車両Aが車線変更する可能性の程度(車線変更尤度)を計算すると共に、車両Aの車線変更先の走行車線を予測する。車線変更可能性計算部019での予測結果は、車両制御部020へ出力される。
【0028】
車両制御部020は、車線変更可能性計算部019の予測結果に基づいて、自車両の挙動を制御する処理を行う。例えば、走行にふらつきがあると判断された車両Bの後方を走行している車両Aが、車線変更により自車両Vの前方に割り込んで入ると予測された場合には、予測されたタイミングで自車両を減速させる制御を行う。
【0029】
[周囲車両挙動予測処理及び車両制御処理構成(図4図9)]
以下、周囲車両挙動予測処理及び車両制御処理の流れを示す図4の各ステップについて説明する。
【0030】
ステップS110では、スタート、或いは、S280でのIGN ONの判断に続き、自車両に取り付けている物体検出センサにより自車両周囲の物体情報を取得し、ステップS120へ進む。
【0031】
ステップS120では、S110での物体情報の取得に続き、格納している地図情報を取得し、ステップS130へ進む。なお、地図情報には、少なくとも車線情報、交通ルール、表示標識が含まれている。
【0032】
ステップS130では、S120での地図情報の取得に続き、自車両の地図に対しての位置、向きを示す自己位置情報を取得し、さらに、S110で取得した物体が地図に対しての存在位置もマッピングし、ステップS140へ進む。
【0033】
ステップS140では、S130での自己位置情報取得に続き、S110で取得した物体情報の中から車線変更予測対象車両を特定し、予測対象車両の情報を取得し、ステップS150へ進む。
【0034】
ステップS150では、S140での予測対象車両取得に続き、予測対象車両の走行安定性の評価を行い、予測対象車両のうち、走行不安定な車両B(=第二他車両)があるか否かを判断する。YES(走行不安定な車両Bがある)と判断された場合はステップS155へ進み、NO(走行不安定な車両Bがない)と判断された場合は、ステップS270へ進む。
【0035】
ここで、走行安定性の評価方法は、予測対象車両のうち、予め決めた観測距離又は観測時間にて車線幅方向のフレ幅が所定値以上の車両があると、その車両は横方向ふらつきによる走行不安定な車両Bと判定する。具体的には、図5に示すように、車両Bが予め決めた観測距離(例えば、20mなど)を走行する間、又は、観測時間(例えば、3secなど)の間における車両Bの走行軌道を記憶する。そして、記憶した走行軌道の中央に対して、車線幅方向のフレ幅(車線幅方向における位置の変動幅)が所定値以上の場合、横方向ふらつきによる走行不安定な車両Bと判定する。
【0036】
また、走行安定性の判断方法は、予測対象車両のうち、車両Bが予め決めた観測距離を走行する間、又は、観測時間の間にて車両前後方向の速度変化幅が所定値以上の車両があると、その車両は縦方向ふらつきによる走行不安定な車両Bと判定する。具体的には、図6の上部に示すように、対象車ブレーキランプを検出し、予測対象車両がブレーキを踏んだ回数が一定値(例えば、5回など)以上、且つ、毎回の踏み続ける時間が一定時間(例えば、1secなど)以下の場合、縦方向ふらつきにより走行不安定な車両Bと判定する。又は、図6の下部に示すように、予測対象車両の前後方向(縦方向)の速度変化を検出し、縦方向の速度変化幅が所定値以上の場合、縦方向ふらつきにより走行不安定な車両Bと判定する。
【0037】
ステップS155では、S150での走行不安定な車両Bがあるとの判断に続き、走行不安定な車両Bの後方に車両A(=第一他車両)があるか否かを判断する。YES(車両Bの後方に車両Aがある)と判断された場合はステップS160へ進み、NO(車両Bの後方に車両Aがない)と判断された場合はステップS270へ進む。
【0038】
ステップS160では、S155での車両Bの後方に車両Aがあるとの判断に続き、車両Aと車両Bの相対距離を取得し、ステップS170へ進む。
【0039】
ステップS170では、S160での相対距離の取得に続き、車両Aと車両Bの相対速度を取得し、ステップS175へ進む。
【0040】
ステップS175では、ステップS170での相対速度の取得に続き、車両A,Bの接近度が所定値以上であるか否かを判断する。YES(接近度≧所定値)の場合はステップS180へ進み、NO(接近度<所定値)の場合はステップS270へ進む。
【0041】
ここで、「車両A,Bの接近度」は、車両Aと車両Bの接近度合であり、S160、S170で取得した車両A,Bの相対距離、相対速度に基づいて、車両Aと車両Bの接近度が高いほど大きな値に算出する。具体的には、車両A,Bが走行している車線が渋滞してない場合、接近度の算出に干渉余裕時間(TTC:「Time to Collision」の略)を用い、車両A,Bが走行している道路が渋滞している場合、接近度の算出に車両Aと車両Bの相対距離を用いる。又、車両Aと車両Bの相対速度が所定値を超えている場合、接近度の算出に干渉余裕時間TTCを用い、車両Aと車両Bの相対速度が所定値以下の場合、接近度の算出に車両Aと車両Bの相対距離を用いる。なお、干渉余裕時間TTCは、相対距離を相対速度で割ることで算出される。なお、車両Aと車両B路の「接近度」は、接近する度合であるため車両Aと車両Bとが接近するほど大きな値となり、例えば、車両Aと車両Bとの相対距離の逆数、あるいは干渉余裕時間の逆数を用いる事ができる。
【0042】
ステップS180では、S175での接近度≧所定値であるとの判断に続き、車両Bの後方を走行している車両Aが車線変更するとの予測に基づき、車両Aの車線変更候補車線を取得し、ステップS190へ進む。
【0043】
ステップS190では、S180での車両Aの車線変更候補車線の取得に続き、車線変更可能性のある車両Aの前方一定距離内(例えば、50m以内)に交差点があるか否かを判断する。YES(一定距離内に交差点がある)と判断された場合はステップS200へ進み、NO(一定距離内に交差点がない)と判断された場合はステップS220へ進む。なお、交差点情報の取得方法としては、例えば、地図情報を使っても良いし、路車間通信でも良い。
【0044】
ステップS200では、S190での一定距離内に交差点があるとの判断に続き、車両Aが交差点へ進入するための専用車線がある場合に専用車線情報を取得し、ステップS210へ進む。ここで、「専用車線」とは、例えば、直進専用、右左折専用車線などをいう。専用車線情報の取得方法は、地図情報を使っても良いし、路車間通信でも良い。
【0045】
ステップS210では、S200での専用車線情報の取得に続き、車両Aの前方一定距離内にある交差点における車両Aの進行方向を推定し、ステップS230へ進む。車両Aの交差点における進行方向の推定方法は、例えば、車両Aの車線変更履歴、及び、S200で取得した専用車線情報から推定する。例えば、図7に示すように、車両Aが数秒前に一番左側の走行車線L1から真ん中の走行車線L2へ車線変更したとする。このとき、一番左側の走行車線L3に障害物がなく、真ん中の走行車線L2が直進専用車線である場合、車両Aは交差点において、直進する可能性が高いと推定することができる。また、その交差点の統計データにより車両Aの進行方向を推定する。例えば、午後には右折する車両は80%あり、直進する車両が5%、左折する車両は15%がある交差点においては、車両Aが右折する可能性が高いと推定することができる。
【0046】
ステップS220では、S190での一定距離内に交差点がないとの判断に続き、S180で抽出された車両Aの車線変更候補車線の属性情報を取得し、ステップS230へ進む。ここで、「属性情報」とは、例えば、バス専用車線、バス優先車線などをいう。属性情報の取得方法は、地図情報を使っても良いし、路車間通信でも良い。
【0047】
ステップS230は、S210又はS220に続き、S180にて取得された車両Aの車線変更候補車線において、車両Aより後方の交通状況を取得し、車両Aが車線変更するときの難易度を推定し、ステップS240へ進む。
【0048】
ここで、車両Aが車線変更するときの難易度は、車両Aより後方に存在する他車両の台数、及び、他車両と車両Aとの相対距離、相対速度に基づいて推定する。例えば、図8に示すように、走行車線L2を走行している車両Aの左側の走行車線L1に複数台の他車両が走行している場合、車両Aとの相対距離、相対速度により干渉余裕時間TTCが小さいことが検出できる。よって、車両Aが車線変更するとき、左側の走行車線L1へ車線変更する難易度よりも、右側の走行車線L3へ車線変更する難易度が低く、走行車線L3へ車線変更しやすいことが推定できる。
【0049】
ステップS240では、S230での車両Aより後方の交通状況の取得に続き、S180にて取得された車両Aの車線変更候補車線において、車両Aより前方の交通状況を取得し、車両Aが車線変更するときの難易度を推定し、ステップS250へ進む。
【0050】
ここで、車両Aが車線変更するときの難易度は、車両Aの前方が渋滞しているか、減速して道路を出ようとしている車両がいるかなどの検出に基づいて推定する。例えば、図9に示すように、走行車線L2を走行している車両Aの左側の走行車線L1にウィンカを点滅しながら減速している他車両がある場合、その他車両が道路を出ようとしていることを推定できる。さらに、その他車両が旋回する方向に歩行者などの旋回に妨げるものがいる場合、旋回するのに時間かかることも推定できる。この場合、車両Aが右側の走行車線L3へ車線変更した方が、車両Aが左側の走行車線L1へ車線変更するよりも難易度が低くなり、走行車線L3へ車線変更しやすいことが推定できる。
【0051】
ステップS250は、S240での車両Aより前方の交通状況を取得に続き、車両Aの前方の路面状況を取得し、ステップS260へ進む。ここで、車両Aの前方の路面状況とは、例えば、車両Aの車線変更候補車線において、車両Aの前方に存在する水溜りや凍結場所や工事などによって通行止めになっている場所をいう。
【0052】
ステップS260では、S250での車両Aより前方の路面状況の取得に続き、車両Aが車線変更する可能性(尤度)を予測すると共に、車両Aの車線変更先を推定し、ステップS270へ進む。
【0053】
ここで、車両Aの車線変更する可能性予測と車両Aの車線変更先の推定は、取得した交差点においての進行方向、候補車線の属性、候補車線側後方の交通状況、候補車線側前方の交通状況、候補車線側前方の路面状況に基づいて行う。S260での詳しい処理は、図10のフローチャートに示す。
【0054】
ステップS270では、S150又はS155又はS175でNOの判断、或いは、S260での車線変更可能性予測及び視線変更先の推定に続き、予測処理の結果に基づいて自車制御し、ステップS280へ進む。
【0055】
ここで、S150又はS155又はS175でNOと判断された場合は、目標軌跡や目標車速プロファイルに基づいて、自車両の駆動・制動・操舵の制御が行われる。一方、車両Aが自車両の前方へ車線変更する可能性が第一所定値(例えば、自車線への車線変更尤度=0.8程度)以上の場合は、自車両を減速させる制御が行われる。又、車両Aが自車両の前方へ車線変更する可能性が第一所定値以下であるが第二所定値(例えば、自車線への車線変更尤度=0.6程度)以上の場合、ドライバによるマニュアル操作要求であるハンドオーバーリクエストを出すと共に、ドライバに警告する。
【0056】
ステップS280では、S270での自車制御に続き、イグニッションスイッチがOFFにされたか否かを判断する。YES(IGN OFF)の場合は処理を終了し、NO(IGN ON)の場合はステップS110へ戻る。
【0057】
[車線変更予測処理構成(図10)]
以下、図4のフローチャートのS260にて実行される具体的な車線変更予測処理の流れを示す図10の各ステップについて説明する。
【0058】
ステップS1010では、スタートに続き、車線変更すると予測された車両Aの前方の一定距離内に交差点があるか否かを判断する。YES(一定距離内に交差点がある)の場合はステップS1020へ進み、NO(一定距離内に交差点がない)の場合はステップS1050へ進む。
【0059】
ステップS1020では、S1010での一定距離内に交差点があるとの判断に続き、車両Aの交差点における進路情報を取得し、ステップS1030へ進む。
【0060】
ステップS1030では、S1020での車両Aの交差点における進路情報の取得に続き、交差点における専用車線情報を取得し、ステップS1040へ進む。
【0061】
ステップS1040では、S1030での専用車線情報の取得に続き、取得した交差点における進路情報、及び、専用車線情報に基づいて、車線変更可能性ありと予測された車両Aの車線変更尤度を推定し、ステップS1080へ進む。なお、車線変更尤度とは、車両Aが車線変更することが可能な車線毎に算出され、車両Aが車線変更先として選択する尤度であり、以下では、単に「車線変更尤度」と記載する。
【0062】
ステップS1050では、S1010での一定距離内に交差点がないとの判断に続き、車両Aが車線変更する候補車線の属性(例えば、専用車線、優先車線、など)を取得し、ステップS1060へ進む。
【0063】
ステップS1060では、ステップS1050での車線属性取得に続き、車両Aが車線変更する候補車線のうち、専用車線があるか否かを判断する。YES(専用車線がある)の場合はステップS1070へ進み、NO(専用車線がない)の場合ステップS1065へ進む。
【0064】
ステップS1065では、S1060で専用車線がないとの判断に続き、車両Aが車線変更する候補車線のうち、優先車線があるか否かを判断する。YES(優先車線がある)の場合はステップS1070へ進み、NO(優先車線がない)の場合はステップS1080へ進む。
【0065】
ステップS1070では、S1060での専用車線があるとの判断、或いは、S1065での優先車線があるとの判断に続き、取得した車線の属性に基づいて、車線変更可能性ありと予測された車両Aの車線変更尤度を推定し、ステップS1080へ進む。
【0066】
ステップS1080では、S1040又はS1070での車線変更尤度推定、或いは、S1065での優先車線がないとの判断に続き、取得した車両Aの後方における車線変更候補車線の交通状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度を推定し、ステップS1090へ進む。
【0067】
ステップS1090では、S1080での車両Aの車線変更尤度推定及び車線変更先推定に続き、取得した車両Aの前方における車線変更候補車線の交通状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度を推定し、ステップS1100へ進む。
【0068】
ステップS1100では、S1090での車両Aの車線変更尤度推定及び車線変更先推定に続き、取得した車両Aの前方における車線変更候補車線の路面状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度を推定し、ステップS1110へ進む。
【0069】
ステップS1110では、ステップS1040及びステップS1070~S1100にて算出した車両Aの車線変更尤度に基づいて最終的な車両Aの車線変更尤度を計算する。例えば、ステップS1040及びステップS1070~S1100にて算出した車線変更尤度を候補車線毎に合算して、候補車線毎に最終的な車線変更尤度を算出し、エンドへ進む。なお、ステップS1110にて算出した候補車線毎の最終的な車線変更尤度が、図4のステップS260における車線変更の可能性であり、また、車線変更尤度が最も高い候補車線が車線変更先の車線として推定される。
【0070】
次に、「背景技術の課題及び課題解決方策」を説明する。そして、実施例1の作用を、「周囲車両挙動予測及び車両制御作用」、「車線変更予測作用」に分けて説明する。
【0071】
[背景技術の課題及び課題解決方策(図11図12)]
例えば、特開2014-201159号公報に開示されている車線変更判定装置は、自車両が走行する走行車線と、隣接車線を走行する他車両との位置関係に基づいて、他車両が自車線へ車線変更するか否かを判定している(背景技術1)。よって、背景技術1のように他車両と車線区分線までの距離に基づいて他車両の車線変更を予測する場合には、他車両が車線変更動作を開始して、車線区分線までの距離が近くになってからでなければ他車両の車線変更を予測することができない。
【0072】
例えば、特開2001-199260号公報に開示されている装置は、路面の車線区分線に対して他車両の移動ベクトルが成す角度を算出し、この算出角度が所定の確度閾値を超えた場合に、他車両が車線変更すると判定している(背景技術2)。よって、背景技術2のように他車両の移動ベクトルに基づいて他車両の車線変更を予測する場合には、他車両が車線変更動作を開始して、移動ベクトルが発生した後でなければ他車両の車線変更を予測することができない。
【0073】
このため、背景技術1,2の何れの技術においても、他車両が車線変更することを予測した時点で既に他車両の車線変更動作は開始されていることになる。よって、他車両の車線変更を予測した時点で自車両を減速あるいは回避動作させた場合には、自車両と他車両との間に充分な距離が無く、自車両の急な挙動変化を伴う可能性があった。
【0074】
例えば、図11に示すように、車両Aの走行車線L2上の前方を走行安定性が低い車両Bが走行しているシーンにおいて、走行車線L1を2台の他車両が走行しているために車両Aが自車両Vの走行車線L3への車線変更を意図しているとする。このとき、車両Aが車線変更動作を開始した後、走行車線L3へ移動したことによって車両Aの車線変更予測する背景技術1,2の場合、車線変更予測タイミングでの自車両Vと車両Aの車間距離ID1が近くなる。よって、自車両Vと自車線L3へ割り込んできた車両Aとの車間距離を保つために急減速する必要がある。このため、車両Aの車線変更を早期に予測する車両Aの挙動予測が望まれていた。
【0075】
本発明者等は、上記課題と要望に対して、その解決手法を検証した結果、
(A) 車両Aの走行車線上の前方を走行安定性が低い車両Bが走行しているシーンにおいては、車両Aが車線変更する可能性が高い。
(B) 車両Aが車線変更を意図すると、車両Aを加速させ車両Bを車線変更によりすり抜ける必要があるため、車線変更を意図した直後、車両Aが車両Bに接近する。
ということを知見した。そして、車両Aの走行車線上の前方を走行安定性が低い車両Bが走行している場合、車両Bへの縦方向の接近により車両Aの車線変更を予測すると、車両Aが横方向に車線変更移動を開始する前の早期予測になる点に着目した。
【0076】
上記着目点に基づいて本開示の周囲車両挙動予測方法は、自車両Vの前方であって、同一の走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定する。複数の他車両のうち、他車両の進行方向もしくは車線幅方向における走行安定性が所定の安定性以下である走行不安定な車両Bがあるか否かを判断する。走行不安定な車両Bがあると判断されると、車両Bの後方に車両Aがあるか否かを判断する。車両Bの後方に車両Aがあると判断されると、車両Aと車両Bの接近度が予め定められた所定値以上であるか否かを判断する。接近度が予め定められた所定値以上と判断されると、車両Aの車線変更を予測する、という課題解決方策を採用した。
【0077】
上記周囲車両挙動予測方法を採用することで、下記の作用効果を奏することができる。即ち、図12に示すように、車両Aの走行車線L2上の前方を走行安定性が低い車両Bが走行しているシーンにおいて、走行車線L1を2台の他車両が走行しているために車両Aが自車両Vの走行車線L3への車線変更を意図しているとする。このとき、車両Aが車線変更を意図して車両Bに向かって縦方向に接近すると、本開示技術の場合、接近度が予め定められた所定値以上と判断され、車両Aが車線変更すると予測される。
【0078】
このため、車両Bへの縦方向の接近により車両Aの車線変更を予測する本開示の車線変更予測タイミングは、背景技術での車両Aが横方向に車線変更移動したこと確認することによる車線変更予測タイミングに比べて早期になる。そして、車線変更予測タイミングでの自車両Vと車両Aの車間距離ID2が、背景技術での車間距離ID1より長い距離になる。よって、車両Aの車線変更予測タイミングで自車両Vの減速を開始する場合、自車両Vと自車線L3へ割り込んできた車両Aとの車間距離を保つための減速走行を緩やかな減速度に抑えることができる。
【0079】
このように、車両Aの走行車線L2上の前方を走行安定性が低い車両Bが走行している場合、車両Bへの縦方向の接近により車両Aが車線変更すると予測している。この結果、車両Aの走行車線L2上の前方を車両Bが走行しているシーンにおいて、車両Bの走行安定性が低い場合、車両Aの車線変更を早期に予測することができることになる。
【0080】
[周囲車両挙動予測及び車両制御作用(図4)]
例えば、自車両Vの隣接車線を走行している複数台の予測対象車両のうち走行不安定な車両Bがない場合、図4のフローチャートにおいて、S110→S120→S130→S140→S150→S270→S280へと進む流れが繰り返される。そして、S270では、目標軌跡や目標車速プロファイルに基づいて、自車両Vの駆動・制動・操舵の制御が行われる。
【0081】
複数台の予測対象車両のうち走行不安定な車両Bがあるが、車両Bの後方に車両Aがない場合、図4のフローチャートにおいて、S110→S120→S130→S140→S150→S155→S270→S280へと進む流れが繰り返される。そして、S270では、目標軌跡や目標車速プロファイルに基づいて、自車両Vの駆動・制動・操舵の制御が行われる。
【0082】
一方、複数台の予測対象車両のうち走行不安定な車両Bがあり、かつ、車両Bの後方に車両Aがある場合、図4のフローチャートにおいて、S110→S120→S130→S140→S150→S155→S160→S170→S175へと進む。S160では、車両Aと車両Bの相対距離が取得され、S170では、車両Aと車両Bの相対速度が取得される。そして、S175において車両Aと車両Bの接近度が所定値未満と判断されている間は、S175からS270→S280へと進む流れが繰り返される。そして、S270では、目標軌跡や目標車速プロファイルに基づいて、自車両Vの駆動・制動・操舵の制御が行われる。
【0083】
その後、S175において車両Aと車両Bの接近度が所定値以上と判断されると、S175からS180→S190へと進む。S180では、車両Bの後方を走行している車両Aが車線変更するとの予測に基づき、車両Aの車線変更候補車線が取得される。次のS190では、車線変更可能性のある車両Aの前方一定距離内に交差点があるか否かが判断される。S190において一定距離内に交差点があると判断されると、S190からS200→S210へと進む。S200では、車両Aが交差点へ進入するための専用車線がある場合に専用車線情報が取得される。S210では、車両Aの前方一定距離内にある交差点における車両Aの進行方向が推定される。S190において一定距離内に交差点がないと判断されると、S190からS220へと進む。S220では、S180で抽出された車両Aの車線変更候補車線の属性情報が取得される。
【0084】
そして、S210又はS220からは、S230→S240→S250→S260→S270→S280へと進む流れが繰り返される。S230は、S180にて取得された車両Aの車線変更候補車線において、車両Aより後方の交通状況が取得され、車両Aが車線変更するときの難易度が推定される。S240では、S180にて取得された車両Aの車線変更候補車線において、車両Aより前方の交通状況が取得され、車両Aが車線変更するときの難易度が推定される。S250は、車両Aの前方の路面状況が取得される。S260では、車両Aが車線変更する可能性が予測されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。S270では、予測処理の結果に基づいて自車制御される。ここで、車両Aが自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以上の場合は、自車両Vを減速させる制御が行われる。又、車両Aが自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以下であるが第二所定値以上の場合、ドライバによるマニュアル操作要求であるハンドオーバーリクエストが出されると共に、ドライバに警告が出される。以上の処理は、S280においてイグニッションスイッチがOFFにされるまで繰り返し実行される。
【0085】
このように、自車両Vの前方であって、自車線に隣接する同一の走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定すると(S140)、複数の他車両のうち、走行安定性が所定の安定性以下である走行不安定な車両Bがあるか否かを判断する(S150)。走行不安定な車両Bがあると判断されると、車両Bの後方に車両Aがあるか否かを判断する(S155)。車両Bの後方に車両Aがあると判断されると、車両Aと車両Bの接近度が予め定められた所定値以上であるか否かを判断する(S175)。接近度が予め定められた所定値以上と判断されると、車両Aの車線変更を予測するものである(S180以降)。
【0086】
そして、車両Bの後方を走行している車両Aが車線変更するとの予測に基づき、車両Aの車線変更候補車線を取得し(S180)、車線変更可能性のある車両Aの前方一定距離内に交差点があるか否かを判断する(S190)。交差点の有無により処理流れを異ならせ、車両Aが車線変更する可能性を予測すると共に、車両Aの車線変更先を推定する(S260)。この車線変更可能性の予測と車線変更先の推定により、例えば、車両Aが自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以上という予測/推定結果が得られると、車両Aの車線変更の予測タイミングで自車両Vを減速させる制御を開始することになる(S270)。
【0087】
[車線変更予測作用(図10図13図17)]
車線変更すると予測された車両Aの前方一定距離内に交差点がある場合、図10のフローチャートにおいて、S1010→S1020→S1040→S1080→S1090→S1100→S1110→エンドへと進む。
【0088】
車線変更すると予測された車両Aの前方一定距離内に交差点がないが専用車線がある場合、図10のフローチャートにおいて、S1010→S1050→S1060→S1070→S1080→S1090→S1100→S1110→エンドへと進む。
【0089】
車線変更可能性のある車両Aの前方一定距離内に交差点がないが優先車線がある場合、図10のフローチャートにおいて、S1010→S1050→S1060→S1065→S1070→S1080→S1090→S1100→S1110→エンドへと進む。
【0090】
車線変更すると予測された車両Aの前方一定距離内に交差点がなく、専用車線も優先車線もない場合は、図10のフローチャートにおいて、S1010→S1050→S1060→S1065→S1080→S1090→S1100→S1110→エンドへと進む。
【0091】
車線変更すると予測された車両Aの前方一定距離内に交差点がある場合、S1020では、車両Aの交差点における進路情報が取得される。S1030では、交差点における専用車線情報が取得される。S1040では、取得した交差点における進路情報、及び、専用車線情報に基づいて、車線変更可能性ありと予測された車両Aの車線変更尤度が推定されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。S1080では、取得した車両Aの後方における車線変更候補車線の交通状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度が推定されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。S1090では、取得した車両Aの前方における車線変更候補車線の交通状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度が推定されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。S1100では、取得した車両Aの前方における車線変更候補車線の路面状況に基づいて、車両Aの車線変更尤度が推定されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。そして、S1120では、車線変更先への影響度に基づいて最終的な車両Aの車線変更尤度が計算される。
【0092】
一方、車線変更すると予測された車両Aの前方一定距離内に交差点がない場合、S1050では、車両Aが車線変更する候補車線の属性(例えば、専用車線、優先車線、など)が取得される。そして、S1070では、専用車線、或いは、優先車線があるとき、取得した車線の属性に基づいて、車線変更可能性ありと予測された車両Aの車線変更尤度が推定されると共に、車両Aの車線変更先が推定される。なお、S1080~S1120の処理は、上記同様である。
【0093】
ここで、例えば、図13に示すように、車両Aの前方一定距離内に交差点があり、交差点付近に候補車線L1(左折専用車線)と直進専用車線L2と候補車線L3(右折専用車線、自車線)があり、車両Aが直進専用車線L2を走行している。また、候補車線L1には車両Aの前方に2台の他車両が存在し、車両Aの後方に2台の他車両が存在している車線変更予測例1を想定する。
【0094】
車線変更予測例1の場合、交差点情報に基づいて車線変更尤度を推定すると、図14及び図15に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.8に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.2に推定される。車線属性に基づいて車線変更尤度を推定すると、図14及び図15に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0に推定される。車線変更候補車線の後方の交通状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図14及び図15に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.7に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.3に推定される。車線変更候補車線の前方の交通状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図14及び図15に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.7に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.3に推定される。車線変更候補車線の前方の路面状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図14及び図15に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.4に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.6に推定される。
【0095】
影響度に基づいて設定した重みは、図14に示すように、交差点情報に基づく車線変更尤度推定は「1」、車線属性に基づく車線変更尤度推定は「0.8」、車線変更候補車線の後方の交通状況に基づく車線変更尤度推定は「0.6」である。そして、車線変更候補車線の後方の交通状況に基づく車線変更尤度推定は「0.4」、車線変更候補車線の前方の交通状況に基づく車線変更尤度推定は「0.3」である。
【0096】
優先度は、図15に示すように、交差点情報に基づく車線変更尤度推定が優先度1、車線属性に基づく車線変更尤度推定が優先度2、車線変更候補車線の後方の交通状況に基づく車線変更尤度推定が優先度3である。そして、車線変更候補車線の後方の交通状況に基づく車線変更尤度推定が優先度4、車線変更候補車線の前方の交通状況に基づく車線変更尤度推定が優先度5である。
【0097】
そして、それぞれの状況に基づいて算出した車線変更尤度に対して、各状況の重みを掛け算し、その値を加算して合計し、最終結果として、図14に示すように、候補車線L3への車線変更尤度1.62、候補車線L1への車線変更尤度0.62を算出する。なお、最終結果は、合計値が大きい方がその候補車線へ車線変更する可能性が大きいことを示し、最終結果が同じ値、又は、近い値の場合は、優先度による車線変更尤度の値を用いて車線変更する可能性が大きい候補車線を決める。
【0098】
図13に示す車線変更予測例1の場合、車両Aが交差点を右折すると推定されると、車両Aが候補車線L3へ車線変更する可能性が、車両Aが候補車線L1へ車線変更する可能性より高いと予測できる。また、車両Aが交差点を直進すると推定されると、車両Aが車線変更しない可能性が高いと予測できる。また、車両Aの後方の候補車線L1に複数台の他車両があり、かつ、車両Aの後方の候補車線L3に一台の自車両Vがあると、車両Aと自車両Vとの距離が遠いので、車両Aが候補車線L3へ車線変更する可能性が高いと予測できる。また、車両Aの前方の候補車線L1に複数台の他車両があり、かつ、車両Aの前方の候補車線L3に他車両が無いと、候補車線L3へ車線変更したほうが早く交差点通過できるので、車両Aが候補車線1へ車線変更する可能性が高いと予測できる。車両Aの前方の候補車線L1に障害物や走行しにくくなる要因がなく、かつ、車両Aの前方の候補車線L3に大きな水たまりWがあると、車両Aが候補車線L1へ車線変更する可能性が高いと予測できる。
【0099】
次に、例えば、図16に示すように、車両Aの前方一定距離内に交差点がなく、候補車線L1(バス専用車線)と走行車線L2と候補車線L3(自車線)があり、車両Aが走行車線L2を走行している。また、候補車線L3には車両Aの前方に大きな水たまりWがある車線変更予測例2を想定する。
【0100】
車線変更予測例2の場合、交差点情報に基づいて車線変更尤度を推定すると、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0に推定される。車線属性に基づいて車線変更尤度を推定すると、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.8に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.2に推定される。車線変更候補車線の後方の交通状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.4に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.6に推定される。車線変更候補車線の前方の交通状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.5に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.5に推定される。車線変更候補車線の前方の路面状況に基づいて車線変更尤度を推定すると、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度が0.4に推定され、候補車線L1への車線変更尤度が0.6に推定される。ここで、影響度に基づいて設定した重みと優先度は、車線変更予測例1と同様である。
【0101】
そして、それぞれの状況に基づいて算出した車線変更尤度に対して、各状況の重みを掛け算し、その値を加算して合計し、最終結果として、図17に示すように、候補車線L3への車線変更尤度1.2、候補車線L1への車線変更尤度0.9を算出する。なお、最終結果は、合計値が大きい方がその候補車線へ車線変更する可能性が大きいことを示し、最終結果が同じ値、又は、近い値の場合は、優先度による車線変更尤度の値を用いて車線変更する可能性が大きい候補車線を決める。
【0102】
図16に示す車線変更予測例2の場合、候補車線L1がバス専用車線であるため、車両Aがバス専用車線ではない候補車線L3へ車線変更する可能性が高いと予測できる。また、車両Aの前方の候補車線L1に障害物や走行しにくくなる要因がなく、かつ、車両Aの前方の候補車線L3に大きな水たまりWがあると、車両Aが候補車線L1へ車線変更する可能性が高いと予測できる。
【0103】
以上説明したように、実施例1の周囲車両挙動予測方法及び周囲車両挙動予測装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0104】
(1) 自車両Vの周囲に他車両が検出されると他車両の挙動を予測する挙動予測コントローラ010を備える周囲車両挙動予測方法において、
挙動予測コントローラ010は、
自車両Vの前方であって、同一の走行車線L2を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定し、
複数の他車両のうち、他車両の進行方向もしくは車線幅方向における走行安定性が所定の安定性以下である走行不安定な第二他車両(車両B)があるか否かを判断し、
走行不安定な第二他車両(車両B)があると判断されると、第二他車両(車両B)の後方に第一他車両(車両A)があるか否かを判断し、
第二他車両(車両B)の後方に第一他車両(車両A)があると判断されると、第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)の接近度が予め定められた所定値以上であるか否かを判断し、
接近度が予め定められた所定値以上と判断されると、第一他車両(車両A)の車線変更を予測する(図12)。
このため、第一他車両(車両A)の走行車線L2上の前方を第二他車両(車両B)が走行しているシーンにおいて、第二他車両(車両B)の走行安定性が低い場合、第一他車両(車両A)の車線変更を早期に予測する周囲車両挙動予測方法を提供できる。
【0105】
(2) 予測対象車両のうち、予測対象車両が予め決めた観測距離を走行する間又は観測時間の間の車線幅方向における位置の変動幅が所定値以上の車両があると、その車両は横方向ふらつきによる走行不安定な第二他車両(車両B)と判定する(図5)。
このため、第二他車両(車両B)の走行安定性評価を、第二他車両(車両B)が走行の横方向ふらつきの有無に基づいて評価するので、第一他車両(車両A)が車線変更する可能性を精度よく予測することができる。
【0106】
(3) 予測対象車両のうち、予測対象車両が予め決めた観測距離を走行する間又は観測時間の間の車両前後方向の速度変化幅が所定値以上の車両があると、その車両は縦方向ふらつきによる走行不安定な第二他車両(車両B)と判定する(図6)。
このため、第二他車両(車両B)の走行安定性評価を、第二他車両(車両B)が走行の縦方向のふらつきの有無に基づいて評価するので、第一他車両(車両A)が車線変更する可能性を精度よく予測することができる。
【0107】
(4) 第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)の接近度は、第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)との間の相対距離、相対速度、干渉余裕時間TTCに基づいて算出する(図7)。
このため、第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)の走行状況に応じて接近度が算出されることで、第一他車両(車両A)の車線変更を予測するタイミングを精度よく決めることができる。
【0108】
(5) 第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向を推定し、
第一他車両(車両A)の進行方向に基づいて第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図13)。
このため、第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、交差点における進行方向の推定に基づいて第一他車両(車両A)の車線変更先を予測するので、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0109】
(6) 第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、第一他車両(車両A)の過去の車線変更履歴を考慮し、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向を推定する(図13)。
このため、第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、第一他車両(車両A)の過去の車線変更履歴を考慮することで、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向の推定精度を向上することができる。
【0110】
(7) 第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、当該交差点において記録された過去の統計データに基づいて、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向を推定する(図13)。
このため、第一他車両(車両A)の前方の所定距離内に交差点がある場合、当該交差点において記録された過去の統計データに基づく進行方向の推定とすることで、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向の推定精度を向上することができる。
【0111】
(8) 第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、複数の候補車線のそれぞれの状況をあらわす情報に基づいて、第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図8、9)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、候補車線の状況に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0112】
(9) 第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)の後方における複数の候補車線のそれぞれの交通状況に基づいて、第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図8)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)の後方における候補車線の交通状況に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0113】
(10) 第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)の前方における複数の候補車線のそれぞれの交通状況に基づいて、第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図9)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)の前方における候補車線の交通状況に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0114】
(11) 第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)に対する複数の候補車線のそれぞれの属性情報に基づいて、第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図16)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、複数の候補車線のそれぞれの属性情報に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0115】
(12) 第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、第一他車両(車両A)の前方における複数の候補車線のそれぞれの路面状況に基づいて、第一他車両(車両A)の車線変更先を予測する(図16)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線が複数ある場合、複数の候補車線のそれぞれの路面状況に基づいて車線変更先予測を行うことで、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0116】
(13) 第一他車両(車両A)の車線変更先を候補車線から予測するのに考慮する要素に対し、第一他車両(車両A)が車線変更したときの車線変更先への影響度に応じて重みを設定する(図14、17)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線の状況に対して、第一他車両(車両A)の車線変更先への影響度に応じて重みを設定するので、第一他車両(車両A)の車線変更先の予測精度を向上することができる。
【0117】
(14) 候補車線の状況の重みを設定する場合、第一他車両(車両A)の交差点における進行方向を候補車線の属性より大きく設定する(図14)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線に対して、交差点における進行方向を候補車線の属性より大きく設定するので、交差点における進行方向を属性に優先して第一他車両(車両A)の車線変更先を予測することができる。
【0118】
(15) 候補車線の状況の重みを設定する場合、交差点における進行方向を第一他車両(車両A)の後方の交通状況より大きく設定する(図14)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線に対して、交差点における進行方向を後方の交通状況より大きく設定するので、交差点における進行方向を後方の交通状況に優先して第一他車両(車両A)の車線変更先を予測することができる。
【0119】
(16) 候補車線の状況の重みを設定する場合、交差点における進行方向を第一他車両(車両A)の前方の交通状況より大きく設定する(図14)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線に対して、交差点における進行方向を前方の交通状況より大きく設定するので、交差点における進行方向を前方の交通状況に優先して第一他車両(車両A)の車線変更先を予測することができる。
【0120】
(17) 候補車線の状況の重みを設定する場合、第一他車両(車両A)の前方の交通状況を候補車線の路面状況より大きく設定する(図14)。
このため、第一他車両(車両A)が車線変更できる候補車線に対して、前方の交通状況を路面状況より大きく設定するので、前方の交通状況を前方の路面状況に優先して第一他車両(車両A)の車線変更先を予測することができる。
【0121】
(18) 周囲車両挙動予測方法で予測された周囲車両の挙動に基づいて自車両を制御する車両制御方法であって、
第一他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以上の場合、自車両Vを減速させる(図12)。
このため、第1他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性に基づき、第1他車両(車両A)の車線変更の横移動に先行して自車制御を行うことで、第一他車両(車両A)に対する自車両Vの減速度を小さく抑えることができる。
【0122】
(19) 車両制御方法において、第一他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以下であるが第二所定値以上の場合、ドライバによるマニュアル操作要求であるハンドオーバーリクエストを出す(図12)。
このため、第1他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性に基づいてハンドオーバーリクエストを出すことで、第1他車両(車両A)の車線変更に備えてドライバによるマニュアル操作を開始することができる。
【0123】
(20) 車両制御方法において、第一他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性が第一所定値以下であるが第二所定値以上の場合、ドライバに警告をする(図12)。
このため、第1他車両(車両A)が自車両Vの前方へ車線変更する可能性に基づいて警告を出すことで、第1他車両(車両A)の車線変更に備える必要があることをドライバに知らせることができる。
【0124】
(21) 自車両Vの周囲に他車両が検出されると他車両の挙動を予測する挙動予測コントローラ010を備える周囲車両挙動予測装置において、
挙動予測コントローラ010は、
自車両Vの前方であって、同一の走行車線L2を走行している第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)を予測対象車両として特定する予測対象車両特定部011と、
第一他車両(車両A)の前方を走行している第二他車両(車両B)の走行安定性を評価すると共に、第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)との間の接近度を算出する対象車両挙動情報取得部012と、
第二他車両(車両B)の走行安定性が所定の安定性以下であり、且つ、第一他車両(車両A)と第二他車両(車両B)との間の接近度が予め定められた所定値以上である場合、第一他車両(車両A)の車線変更を予測する車線変更予測部013と、を有する(図1)。
このため、第一他車両(車両A)の走行車線L2上の前方を第二他車両(車両B)が走行しているシーンにおいて、第二他車両(車両B)の走行安定性が低い場合、第一他車両(車両A)の車線変更を早期に予測する周囲車両挙動予測装置を提供できる。
【0125】
以上、本開示の周囲車両挙動予測方法及び周囲車両挙動予測装置を、実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0126】
実施例1では、予測対象車両特定部011として、自車両Vの前方であって、自車線L3に隣接する同一の走行車線L2を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定する例を示した。しかし、予測対象車両特定部としては、自車両の前方であって、自車線と同一の走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定する例としても良い。また、自車両の前方であって、自車線から二車線以上離れた走行車線を走行している複数の他車両を予測対象車両として特定する例としても良い。
【0127】
実施例1では、本開示の周囲車両挙動予測方法及び周囲車両挙動予測装置を、周囲車両挙動予測機能を備える運転支援車両又は自動運転車両の挙動予測コントローラに適用する例を示した。しかし、本開示の周囲車両挙動予測方法及び周囲車両挙動予測装置は、運転支援車両の運転支援コントローラや自動運転車両の自動運転コントローラの内部に有する周囲車両の挙動予測部に有する例であっても勿論良い。
【符号の説明】
【0128】
001 物体検出装置
002 物体検出統合・追跡部
003 自車位置推定装置
004 地図記憶装置
005 地図内自車位置推定部
010 挙動予測コントローラ
011 予測対象車両特定部
012 対象車両挙動情報取得部
013 車線変更予測部
014 車線変更候補車線抽出部
015 変更先車線推定部
016 候補車線の車線属性取得部
017 候補車線上の交通状況取得部
018 候補車線の路面状況取得部
019 車線変更可能性計算部
020 車両制御部
V 自車両
A 車両(第一他車両)
B 車両(第二他車両)
L1 走行車線(他車両の走行車線、候補車線)
L2 走行車線(予測対象車両の走行車線)
L3 走行車線(自車両の走行車線、候補車線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17