(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】キサンテン系色素、該色素を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
C09B 11/28 20060101AFI20230705BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C09B11/28 E CSP
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2019186882
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018220771
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】山縣 直哉
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0291265(US,A1)
【文献】特開昭50-155190(JP,A)
【文献】特表2004-518766(JP,A)
【文献】特開2003-267968(JP,A)
【文献】特開2016-047907(JP,A)
【文献】特開昭56-135555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 - 69/10
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるキサンテン系色素。
【化1】
[式中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
R
1またはR
2のいずれか一方およびR
3またはR
4のいずれか一方は置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表す。
R
5は、―OH、―OCH
3、―SO
3
-、―SO
3H、―SO
3M、―SO
3R
7、
―SO
2NHR
7、―SO
2NR
7R
8、―CO
2H、―CO
2M、―CO
2R
7、
―CONHR
7、または―CONR
7R
8を表す。
R
6は、ハロゲン原子、
―OH、―CN、―OCH
3、―NO
2、―SO
3
-、―SO
3H、―SO
3M、
―SO
3R
7、―SO
2NHR
7、―SO
2NR
7R
8、―CO
2H、―CO
2M、
―CO
2R
7、―CONHR
7、―CONR
7R
8、―CH=CHR
7、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を表す。
nは0~4の整数を表し、nが2以上のとき、複数存在するR
6は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して、または直接に、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
7およびR
8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
Xはハロゲン原子を表す。
Mは有機カチオンまたは無機カチオンを表し、複数存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
Anはアニオンを表し、aは1~3の整数を表し、bは0~3の整数を表す。
ただし、一般式(1)は全体として電荷的に中性であるものとする。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、Xが塩素原子または臭素原子である、請求項1に記載のキサンテン系色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R
5が―SO
3
-、―SO
3H、―SO
3M、
―SO
3R
7、―SO
2NHR
7、または―SO
2NR
7R
8である、
請求項1または請求項2に記載のキサンテン系色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、MがR
9R
10R
11R
12N
+で表される有機カチオンである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のキサンテン系色素。
[式中、R
9~R
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項5】
前記一般式(1)において、Mがアルカリ金属イオンである、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のキサンテン系色素。
【請求項6】
前記一般式(1)において、
Anが、Cl
-、Br
-、I
-、(CF
3SO
2)
2N
-、(CF
3SO
2)
3C
-、
(C
6H
4SO
3
-)O(C
6H
3(C
12H
25)(SO
3
-))、
C
6H
4(C
12H
25)(SO
3
-)、PF
6
-、BF
4
-、または
(PW
12O
40)
3-であり、かつ、bが1~3の整数である、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のキサンテン系色素。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のキサンテン系色素を含有する着色組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンテン系色素、該色素を含有する着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置およびCCDやCMOSの撮像素子に、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、ガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより、色素薄膜や色素-樹脂複合体膜などの着色層を積層することによって製造される。
キサンテン系色素はその鮮明性からカラーフィルターの着色剤として用いられている化合物である(特許文献1~4)。下記式(B-1)で表されるC.I.アシッドレッド289や下記式(B-2)で表されるC.I.アシッドレッド52などのキサンテン系色素をアゾピリドン系色素と併用することにより、優れた赤色色調が得られることが記載されている(特許文献1)。ここで、C.I.とはカラーインデックスを意味する。
【0003】
【0004】
【0005】
また、これらのキサンテン系色素またはその誘導体をフタロシアニン系色素と併用することにより、コントラスト比および色純度の高い青色のカラーフィルターを作製できることが知られている(特許文献3~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-265834号公報
【文献】特開2012-207224号公報
【文献】特開2010-254964号公報
【文献】特開2014-12814号公報
【文献】特許第5504627号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Organic Letters」、(アメリカ)、2011年、第13巻、p.6354-6357、Supporting Information
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カラーフィルターはその製造工程で加熱する必要があるため耐熱性が求められるが、これまでのキサンテン系色素の耐熱性は十分とは言えなかった。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、耐熱性に優れたキサンテン系色素、該色素を含有する着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤およびカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明のキサンテン系色素が、従来の色素と比べて耐熱性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
【0011】
1.下記一般式(1)で表されるキサンテン系色素。
【0012】
【0013】
[式中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
R1またはR2のいずれか一方およびR3またはR4のいずれか一方は置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表す。
R5は、―OH、―OCH3、―SO3
-、―SO3H、―SO3M、―SO3R7、
―SO2NHR7、―SO2NR7R8、―CO2H、―CO2M、―CO2R7、
―CONHR7、または―CONR7R8を表す。
R6は、ハロゲン原子、
―OH、―CN、―OCH3、―NO2、―SO3
-、―SO3H、―SO3M、
―SO3R7、―SO2NHR7、―SO2NR7R8、―CO2H、―CO2M、
―CO2R7、―CONHR7、―CONR7R8、―CH=CHR7、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を表す。
nは0~4の整数を表し、nが2以上のとき、複数存在するR6は同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して、または直接に、互いに結合して環を形成していてもよい。
R7およびR8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
Xはハロゲン原子を表す。
Mは有機カチオンまたは無機カチオンを表し、複数存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
Anはアニオンを表し、aは1~3の整数を表し、bは0~3の整数を表す。
ただし、一般式(1)は全体として電荷的に中性であるものとする。]
【0014】
2.前記一般式(1)において、Xが塩素原子または臭素原子であるキサンテン系色素。
【0015】
3.前記一般式(1)において、R5が―SO3
-、―SO3H、―SO3M、
―SO3R7、―SO2NHR7、または―SO2NR7R8であるキサンテン系色素。
【0016】
4.前記一般式(1)において、MがR9R10R11R12N+で表される有機カチオンであるキサンテン系色素。
【0017】
[式中、R9~R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0018】
5.前記一般式(1)において、Mがアルカリ金属イオンであるキサンテン系色素。
【0019】
6.前記一般式(1)において、
AnがCl-、Br-、I-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、
(C6H4SO3
-)O(C6H3(C12H25)(SO3
-))、
C6H4(C12H25)(SO3
-)、PF6
-、BF4
-、または
(PW12O40)3-であり、かつ、bが1~3の整数であるキサンテン系色素。
【0020】
7.前記キサンテン系色素を含有する着色組成物。
【0021】
8.前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0022】
9.前記カラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の効果】
【0023】
本発明のキサンテン系色素、該色素を含有する着色組成物は、耐熱性に優れ、カラーフィルター用着色剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。まず、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色素について説明する。
【0025】
一般式(1)において、R1~R4およびR6~R8で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0026】
一般式(1)において、R1~R4およびR6で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」とは、アリール基および縮合多環芳香族基を含む。「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基があげられる。
【0027】
一般式(1)において、R6で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基」としては、具体的に、無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(2-エチルヘキシル)基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数0~20の置換基を有するアミノ基があげられる。
【0028】
一般式(1)において、R1~R4およびR6~R8で表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」、「置換基を有する炭素原子数0~20のアミノ基」または「置換基を有するメチレン基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、―OH、―CN、―CF3、―NO2、―SO3
-;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;炭素原子数3~20のシクロアルキル基;炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基または1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;炭素原子数1~20のアシル基;炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;炭素原子数2~20の複素環基;炭素原子数6~20のアリールオキシ基;無置換アミノ基;炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0029】
なお、一般式(1)においてR1~R4およびR6~R8で表される「置換基」を有する上記の各種の「基」において、「置換基」としてあげられている、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」、
「炭素原子数1~20のアシル基」、
「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、
「炭素原子数2~20の複素環基」、
「炭素原子数6~20のアリールオキシ基」、または
「炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~20のアシル基;
フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの炭素原子数2~20の複素環基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などの炭素原子数6~20のアリールオキシ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(2-エチルヘキシル)基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。
【0030】
一般式(1)において、R5は、―SO3
-、―SO3H、―SO3M、―SO3R7、―SO2NHR7、または―SO2NR7R8であることが好ましい。
【0031】
一般式(1)において、R6は、ハロゲン原子、―OCH3、―NO2、―SO3
-、
―SO3H、―SO3M、―SO3R7、―SO2NHR7、―SO2NR7R8、
―CO2H、―CO2M、―CO2R7、―CONHR7、―CONR7R8、
―CH=CHR7または置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。また、一般式(1)において、nは、R6の数を表し、0~4の整数を表す。nが2以上のとき、複数存在するR6は同一でも異なっていてもよく、隣り合うR6同士で、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して、または直接に、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0032】
一般式(1)において、R6および「X」で表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などがあげられ、塩素原子または臭素原子が好ましい。
【0033】
一般式(1)中、R5およびR6におけるR7およびR8は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、R7とR8は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0034】
一般式(1)において、「M」で表される「有機カチオン」としては、特に限定されないが、R9R10R11R12N+で表されるアンモニウムイオンが好ましい。R9~R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。なお、式中、R9~R12における「置換基」、「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基」および「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」の詳細はR1~R4およびR6~R8と同様のものが適用される。
【0035】
一般式(1)において、「M」で表される「無機カチオン」としては、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンがあげられ、アルカリ金属イオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンがより好ましい。
【0036】
一般式(1)において、「a」は、一般式(1)中、下記式(1-C)で表される化合物(キサンテン系色素)の部分の数を表す。「An」はアニオンを表し、「b」はAnの数を表す。一般式(1)において、下記式(1-C)の分子が、分子全体で電荷の総和が1価以上のカチオンである場合、つまりbが1~3の整数の場合、対イオンとして、「An」で表される任意のアニオンと錯体を形成して使用することができる。Anとしては特に限定されないが、ハロゲン化物イオンなどの無機アニオン、または有機アニオンがあげられ、具体的に、Cl-、Br-、I-;(CF3SO2)2N-、
(CF3SO2)3C-、
(C6H4SO3
-)O(C6H3(C12H25)(SO3
-))、
C6H4(C12H25)(SO3
-)、PF6
-、BF4
-、または
(PW12O40)3-が好ましい。ただし、一般式(1)で表される化合物において、aおよびbは、全体として電荷的に中性となるように選択される。aは1~3の整数を表し、1または2が好ましい。bは0~3の整数を表し、0~2の整数が好ましい。
【0037】
【0038】
一般式(1)で表されるキサンテン系色素は、例えば以下のように合成することができる。2-スルホ安息香酸無水物などの、相当する置換基を有する2-スルホ安息香酸無水物誘導体と、4-クロロレゾルシノールなどの、相当する置換基を有するレゾルシノール誘導体とを、メタンスルホン酸などの酸溶液中、適切な加熱条件で縮合反応させて、下記一般式(X-1)で表される中間体が得られる。次に、下記一般式(X-1)をクロロ化することにより、下記一般式(X-2)で表される中間体が得られる。さらに下記一般式(X-2)と、2,6-ジメチルアニリンなどの、相当する置換基を有するアニリン誘導体とを、エチルセロソルブなどの有機溶媒中、適切な加熱条件で、縮合反応させ、反応混合物をろ過することにより、一般式(1)で表される化合物を含有する生成物が得られる。なお、下記一般式(X-1)および(X-2)において、R6およびXは、一般式(1)の定義と同じ定義を有する。
【0039】
【0040】
一般式(1)で表される本発明のキサンテン系色素として好ましい化合物の具体例を以下の式(A-1)~(A-41)に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
本発明の一般式(1)中に表されるキサンテン系色素は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよい。当該2種以上を使用する際は、キサンテン系色素全体に占める重量濃度比において、最も少ない方の1種のキサンテン系色素の重量濃度比は0.1~50重量%である。キサンテン系色素の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0084】
本発明の化合物の合成途中において、生成物を精製する方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法などの公知の方法があげられる。また必要に応じて、これらの化合物の同定、分析には、核磁気共鳴分析(NMR)、分光光度計による吸光度測定や紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)などを行うことができる。また、これらの方法は、得られた化合物の溶解性、色彩評価や耐熱性評価にも用いることができる。
【0085】
本発明の化合物を各種樹脂溶液と混合し、ガラス基板上に塗布することにより塗膜を作製できる。得られた塗膜について、分光測色計を用いて測色し、塗膜の色彩値を得ることで色彩評価を行うことができる。色彩値はCIE L*a*b*表色系などが一般的に用いられる。具体的には、膜試料の色彩値L*、a*、b*を測定し、適当な温度での加熱前後の色彩値の色差(ΔE*
ab)より、耐熱性を判断することができる。カラーフィルターに応用する場合、230℃前後の温度での色差を耐熱性の指標として用いることができる。色差ΔE*
abは、その値が小さいほど、熱分解による色の変色が少ないことを意味し、10以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0086】
一般式(1)で表されるキサンテン系色素は、溶液中における可視光領域(例えば350~700nmの範囲)の最大吸収波長が、500~600nmの範囲にあることが好ましい。
【0087】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるキサンテン系色素を少なくとも1種含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、少なくとも1種の一般式(1)で表されるキサンテン系色素、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0088】
本発明のキサンテン系色素、着色組成物およびカラーフィルター用着色剤は、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度や分散性が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などがあげられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。
【0089】
本発明のキサンテン系色素を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0090】
本発明のキサンテン系色素を含有する着色組成物またはカラーフィルター用着色剤は、1種または2種以上のキサンテン系色素を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254などの赤色顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色染料、などがあげられる。青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、本発明に属さないキサンテン系色素;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系の染料または顔料があげられる。
【0091】
本発明のキサンテン系色素を含有する着色組成物またはカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、キサンテン系色素(2種以上の場合にはそれらの合計)に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%とするのがより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%であるのがより好ましい。
【0092】
本発明の着色組成物またはカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、メタアクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50重量%であるのがより好ましい。
【0093】
本発明の着色組成物は、カラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、化合物の他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0094】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%であるのが好ましく、10~40重量%であるのがより好ましい。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。なお、下記合成実施例には、1H-NMR分析(ブルカー社製核磁気共鳴装置、300MHz)により行った化合物の同定の結果を示している。
【0096】
[合成実施例1] 化合物(A-1)の合成
以下の反応は、窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた300mL容4つ口フラスコに2-スルホ安息香酸無水物19.47g(105.7mmol)、4-クロロレゾルシノール30.56g(211.4mmol)、メタンスルホン酸150mLを加えた後、65℃で53時間撹拌した。反応混合物を室温(23~27℃)まで放冷した後、氷水450gに注加し、室温で30分間撹拌した。混合物を減圧ろ過し、濾別した固体を水300mLに加えて室温で30分間撹拌した。次いで、混合物を減圧ろ過して固体を濾別した。固体を同様の操作により更に2回洗浄した。減圧ろ過して得た固体を80℃で終夜減圧乾燥し、下記中間体(I-1)(40.08g,収率87%)を淡褐色固体として得た。
【0097】
【0098】
続いて、以下の反応は、窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに前記中間体(I-1)10.01g(22.89mmol)、オキシ塩化リン47mLを加えた後、90℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷した後、氷200gに注加し、水100mLで洗浄した。反応混合物に氷100gを加え、室温で30分間撹拌した。析出した固体を減圧ろ過して濾別し、水200mLに加え、室温で30分間撹拌した後、混合物を減圧ろ過した。次いで、濾別した固体を80℃で終夜減圧乾燥し、下記中間体(I-2)(10.11g、収率93%)を暗黄色固体として得た。
【0099】
【0100】
続いて、以下の反応は、窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(I-2)1.60g(3.37mmol)、アニリン5.06g(54.3mmol)、2-プロパノール45mL加えた後、加熱還流下で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷した後、減圧ろ過し、固体を2-プロパノール50mLで洗浄した。濾別した固体を2-プロパノール60mLに加え、加熱還流下30分間撹拌した後、混合物を室温まで放冷し、減圧ろ過した。次いで、濾別した固体を80℃で終夜減圧乾燥し、化合物(A-1)(1.94g,収率98%)を暗緑色固体として得た。
【0101】
得られた暗緑色固体のNMR測定を行い、以下の20個の水素のシグナルを検出し、下記式(A-1)で表される化合物の構造と同定した。
【0102】
1H-NMR(300MHz、ジメチルスルホキシド(DMSO)-d6):δ(ppm)=9.94(2H)、8.05(1H)、7.74(1H)、7.65(1H)、7.57-7.50(4H)、7.48-7.36(5H)、7.31(1H)、7.24(2H)、6.94(1H)。
【0103】
【0104】
[合成実施例2] 化合物(A-2)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)3.00g(6.33mmol)を用い、アニリンに代えてp-トルイジン6.78g(63.3mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて100℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-2)(3.78g,収率97%)を暗緑色固体として得た。
【0105】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=9.88(2H)、8.04(1H)、7.72(1H)、7.65(1H)、7.39-7.27(9H)、7.22(2H)、6.85(2H)、2.37(6H)。
【0106】
【0107】
[合成実施例3] 化合物(A-8)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)2.00g(4.22mmol)を用い、アニリンに代えて4-ニトロアニリン5.83g(42.2mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて110℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-8)(2.75g,収率96%)を暗緑色固体として得た。
【0108】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=8.30(4H)、8.05(1H)、7.79-7.10(11H)。
【0109】
【0110】
[合成実施例4] 化合物(A-9)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)1.00g(2.11mmol)を用い、アニリンに代えて2-t‐ブチルアニリン4.41g(29.6mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて120℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-9)(0.92g,収率62%)を暗赤紫色固体として得た。
【0111】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=9.73(2H)、8.04(1H)、7.76-7.58(4H)、7.48-7.30(6H)、7.24-7.18(3H)、6.26(2H)、1.30(18H)。
【0112】
【0113】
[合成実施例5] 化合物(A-11)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)1.00g(2.11mmol)を用い、アニリンに代えてp-トルイジン3.24g(25.4mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて110℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-11)(1.20g,収率87%)を暗赤色固体として得た。
【0114】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=10.01(2H)、8.05(1H)、7.78-7.47(10H)、7.35(1H)、7.28(2H)、6.44(2H)。
【0115】
【0116】
[合成実施例6] 化合物(A-12)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)3.00g(6.33mmol)を用い、アニリンに代えて2,6-ジメチルアニリン7.70g(63.5mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて100℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-12)(3.20g,収率79%)を赤色固体として得た。
【0117】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=9.70(2H)、8.05(1H)、7.73(1H)、7.63(1H)、7.36-7.21(9H)、6.13(2H)、2.16(6H)、2.10(6H)。
【0118】
【0119】
[合成実施例7] 化合物(A-14)の合成
以下の反応は、空気雰囲気下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに、氷冷下、水5mL、濃硫酸50mL、化合物(A-12)5.00g(7.77mmol)を加えた後、室温で24時間撹拌した。反応混合物を氷水165gに注加し、室温で1時間撹拌した後、析出した固体を減圧ろ過して濾別した。濾別した固体を水300mLに分散させ、水酸化ナトリウム水溶液でpH5に調整した後、塩化ナトリウム40gを加え、塩析した。室温で30分間撹拌した後、析出した固体を減圧ろ過して濾別した。濾別した固体をメタノールに溶解し、無機塩を減圧ろ過して濾別した後、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、化合物(A-14)(6.82g,収率105%)を桃色固体として得た。
【0120】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=9.68(2H)、8.04(1H)、7.86-7.57(3H)、7.46(2H)、7.40-7.12(4H)、6.32-6.08(2H)、2.43-2.26(3H)、2.22-2.03(9H)。
【0121】
【0122】
[合成実施例8] 化合物(A-15)の合成
合成実施例1において、中間体(I-2)1.00g(2.11mmol)を用い、アニリンに代えて2,6-ジクロロアニリン4.81g(29.7mmol)を用い、2-プロパノールに代えてエチルセロソルブを用い、反応温度を加熱還流下に代えて120℃とした以外は同様の条件で反応を行うことによって、化合物(A-15)(0.02g,収率1%)を桃色固体として得た。
【0123】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=10.08(2H)、8.04(1H)、7.84-7.50(10H)、7.44-7.25(2H)、6.53-6.22(1H)。
【0124】
【0125】
[合成実施例9] 化合物(A-42)の合成
以下の化学反応は、窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに、既知の方法(非特許文献1、Supporting Information)を参考に合成した下記式(I-3)で表される中間体2.00g(3.01mmol)、2,6-ジメチルアニリン0.87g(7.21mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)(Pd2(dba)3) 0.29g(0.32mmol)、Xantphos(4,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9’-ジメチルキサンテン)0.53g(0.91mmol)、炭酸セシウム3.01g(8.53mmol)、1,4-ジオキサン45mLを入れ、溶解した後、反応液を90℃で68時間撹拌した。反応液を30℃以下まで放冷し、水50mLで希釈した後、濃塩酸10mLで酸性にし、ジクロロメタン100mLで抽出した。有機層を水100mL、飽和食塩水100mLで洗浄した後、水層をジクロロメタン100mLで再抽出した。有機層を混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=10/1(体積比))で精製し、乾燥して得た固体をトルエン10mLで洗浄し、減圧ろ過した。残渣を80℃で減圧乾燥し、下記式(L-1)で表されるロイコ体を淡赤色固体として得た(0.28g,収率15%)。
続いて以下の化学反応を、窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた50mL容3つ口フラスコに、前記ロイコ体(L-1)0.25g(0.41mmol)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI,Li+(CF3SO2)2N-)0.15g(0.52mmol)、濃塩酸1mL、メタノール15mLを入れ、溶解した後、反応液を室温で1時間撹拌した。反応液を水50mLに注加し、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で減圧乾燥し、目的の化合物(A-42)を桃色固体として得た(0.26g,収率71%)。
【0126】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=8.03(1H)、7.90-7.73(2H)、7.68-7.50(2H)、7.44(1H)、7.20-7.13(6H)、6.62-6.57(2H)、5.71-5.64(2H)、2.10(12H)。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
[実施例1]
メタアクリル酸およびアクリル酸エステルの共重合体の2重量%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液5.0gと合成実施例1で得られた化合物(A-1)20mgをサンプル瓶に入れ、30分撹拌混合した。得られた着色樹脂溶液をフィルターでろ過し、ろ液をガラス基板上に塗布し、100℃で2分間加熱して製膜した。得られた膜について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-5)を用いて色彩値を測定した。その後、230℃で60分間加熱し、同様に色彩値を測定した。230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE*
ab)を耐熱性の指標とし、下記の3段階の記号で評価した結果を表1に合わせて示す。
「○」:ΔE*
ab≦3.0
「△」:3.0<ΔE*
ab≦10.0
「×」:ΔE*
ab>10.0
【0131】
[実施例2~実施例9]
化合物(A-1)の代わりに合成実施例2~合成実施例9で得られた化合物(A-2)、(A-8)、(A-9)、(A-11)、(A-12)、(A-14)、(A-15)または(A-42)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で製膜した膜について230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE*
ab)を測定し、評価した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0132】
[比較例1および比較例2]
化合物(A-1)の代わりに、本発明に属さない従来の色素化合物である、下記式(B-1)で表されるC.I.アシッドレッド289、または、下記式(B-2)で表されるC.I.アシッドレッド52を用いた以外は、実施例1と同様に、製膜した膜について230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE*
ab)を測定し、評価した。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
表1に示すように、本発明の実施例の化合物であるキサンテン系色素は製膜時における高い耐熱性を示しており、本発明の色素を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として実用上問題ない。また、実施例1の色素は製膜時において比較例1よりも高い耐熱性を有しており、本発明の色素を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明に係るキサンテン系色素を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いることにより、耐熱性に優れたカラーフィルターを作製することが可能である。