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特許7307668エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20230705BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20230705BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230705BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20230705BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/32
C08L63/00 C
C08K7/06
C08J5/24 CFC
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019222644
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021091778
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】板井 政幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 嵩
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240654(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112539(WO,A1)
【文献】特開2006-249171(JP,A)
【文献】特開2014-034629(JP,A)
【文献】特開2007-009033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であって、液体クロマトグラフィー測定において、下記式(2)で表される化合物をエポキシ樹脂総量中1~20面積%含有するエポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、複数存在するAは独立して存在する。Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、nは、1≦n≦20を表す。*は酸素原子に結合する。)
【化2】
(式(2)中、複数存在するAは独立して存在し、Aのうち少なくとも1つが(b)もしくは(c)である。Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。*は酸素原子に結合する。)
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシ樹脂と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
炭素繊維強化複合材料用である請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂シート。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のエポキシ樹脂組成物、又は請求項4に記載の樹脂シートを炭素繊維に含浸してなるプリプレグ。
【請求項6】
請求項5に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料。
【請求項7】
炭素数1~5のアルコール溶液中で、下記式(1)で表されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂とエピハロヒドリンとを反応して得られる請求項1に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【化3】
(nは、1≦n≦20を表す。)
【請求項8】
請求項7においてエピハロヒドリンとの反応終了後、トルエンもしくは炭素数4~7のケトン化合物の溶液とし、金属水酸化物水溶液で後処理する請求項7に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化複合材料に好適なエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびこれらを用いたプリプレグ、それを硬化させた炭素繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。エポキシ樹脂および硬化剤をマトリックス樹脂として強化繊維に含浸、硬化させた炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、軽量化・高強度化といった特性を付与できることから、近年、航空機構造用部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は増加しつつある。特に、その成型体の軽量且つ高強度という特性をいかし、航空機用途のマトリックスレジンに使用されている。
【0003】
CFRP等のマトリックスレジンに使用される樹脂として使用されるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂硬化物は一般的にもろく、航空宇宙用や車両などの構造材料に適応する場合は高い機械的強度が必要になる。この熱硬化性樹脂の低い曲げ強度、靭性、接着性等を補うために熱硬化性樹脂マトリックスに強靭性の高い熱可塑性樹脂を添加する方法が広く知られている(特許文献1~3)。具体的にはポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂の粒子を熱硬化性樹脂マトリックス樹脂に組み合わせることでプリプレグの曲げ強度や靭性を向上させている。
【0004】
近年、CFRPに対する要求特性は厳しくなっており、航空宇宙用途や車両などの構造材料に適用する場合は180℃以上の耐熱性が必要となっている(特許文献4)。耐熱性の高いエポキシ樹脂としてはグリシジルアミン系の材料が候補として挙げられるが、グリシジルアミン系材料は高い耐熱性を有するものの、吸水率が高く、吸水後の特性悪化の課題がある。
【0005】
吸水率の低いエポキシ樹脂としてはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂やフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。この中でジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は架橋点間距離が比較的長く機械強度が高く、その化学構造は疎水的であり吸水率が低いことから炭素繊維複合材料のマトリックス樹脂として有用なエポキシ樹脂のひとつである。
【0006】
一方で、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は疎水性が高いため、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド、ポリアミド等の極性の高い熱可塑性樹脂と極性の乖離が生じ、材料の混錬が難しく、樹脂マトリックスの混錬後に極性の違いから相分離する可能性が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-243113号公報
【文献】特許平09-100358号公報
【文献】特開2013-155330号公報
【文献】国際公開第2010/204173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド、ポリアミド等の極性の高い熱可塑性樹脂との相溶性が高く、機械強度、低吸水性に優れるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、熱可塑性樹脂との相溶性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記[1]~[8]に関する。
[1]
下記式(1)で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であって、液体クロマトグラフィー測定において、下記式(2)で表される化合物をエポキシ樹脂総量中1~20面積%含有するエポキシ樹脂。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、複数存在するAは独立して存在する。Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、nは、1≦n≦20を表す。*は酸素原子に結合する。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式(2)中、複数存在するAは独立して存在し、Aのうち少なくとも1つが(b)もしくは(c)である。Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。*は酸素原子に結合する。)
[2]
前項[1]に記載のエポキシ樹脂と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
[3]
炭素繊維強化複合材料用である前項[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]
前項[2]に記載のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂シート。
[5]
前項[2]又は[3]に記載のエポキシ樹脂組成物、又は前項[4]に記載の樹脂シートを炭素繊維に含浸してなるプリプレグ。
[6]
前項(5)に記載のプリプレグを硬化してなる炭素繊維強化複合材料。
[7]
炭素数1~5のアルコール溶液中で、下記式(1)で表されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂とエピハロヒドリンとを反応して得られる前項[1]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【0015】
【化3】
【0016】
(nは、1≦n≦20を表す。)
[8]
前項[7]においてエピハロヒドリンとの反応終了後、トルエンもしくは炭素数4~7のケトン化合物の溶液とし、金属水酸化物水溶液で後処理する前項[7]に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂は、吸水率、機械強度、熱可塑性樹脂との相溶性に優れる。そのため、高度な機械特性が求められる航空宇宙用途への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の液体クロマトグラフィーチャートを示す。
図2】実施例1のゲルパーミエーションクロマトグラフィーを示す。
図3】比較例1の液体クロマトグラフィーチャートを示す。
図4】比較例1のゲルパーミエーションクロマトグラフィーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のエポキシ樹脂の具体的な製造方法例を以下に示す。
本発明のエポキシ樹脂は前記式(3)で表されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させることによって得られる。
【0020】
前記式(3)で表されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂の軟化点は140℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下であり、特に好ましくは100℃以下である。フェノール樹脂の軟化点が低いと、エピハロヒドリンと反応させて合成したエポキシ樹脂の軟化点、溶融粘度が低くなり、マトリックス樹脂への相容性が良好となるためである。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンは市場から容易に入手できる。エピハロヒドリンの使用量は原料フェノール混合物の水酸基1モルに対し通常4.0~10モルであり、好ましくは4.5~8.0モルであり、より好ましくは4.5~7.0モルである。なお、このエピハロヒドリンに対し、0.5~15重量%のアルキルグルシジルエーテルを添加すると、得られるエポキシ樹脂の強靭性の向上が見られることから好ましい。アルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテルなど炭素数1~5のアルキルグリシジルエーテルが好ましい。
【0022】
上記反応において、エポキシ化工程を促進する触媒として、アルカリ金属水酸化物を使用することができる。使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。本発明においては溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物を使用することが好ましい。
アルカリ金属水酸化物の使用量は原料フェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.90~1.5モルであり、好ましくは0.95~1.25モルであり、より好ましくは0.99~1.15モルである。
【0023】
また、反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもかまわない。4級アンモニウム塩の使用量は原料フェノール混合物の水酸基1モルに対し通常0.1~15gであり、好ましくは0.2~10gである。
【0024】
上記反応においては上記エピハロヒドリンに加え、炭素数1~5のアルコールを併用することが好ましい。炭素数1~5のアルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。
本発明においてはアルカリ金属水酸化物の溶解性の問題から炭素数1~3のアルコールが好ましく、特にメタノールが好ましい。アルコールの使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2~50重量%であり、好ましくは4~40重量%であり、特に好ましくは7~30重量%である。アルコールの添加量が少ないとアルコキシ基の導入率が低くなり、熱可塑性樹脂との相溶性が悪化する。一方、添加量が多すぎると、エポキシ基を有さない化合物が増加して耐熱性が低下するため好ましくない。
【0025】
上記反応の反応温度は30~90℃であることが好ましく、より好ましくは35~80℃である。特に本発明においては、より高純度なエポキシ化のために60℃以上が好ましく、特に65℃以上、さらには還流条件に近い条件での反応が特に好ましい。反応時間は通常0.5~10時間であり、好ましくは1~8時間、特に好ましくは1~3時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることから好ましくない。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂を炭素数4~7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料フェノール混合物の水酸基1モルに対して通常0.01~0.3モル、好ましくは0.05~0.2モルである。反応温度は通常50~120℃、反応時間は通常0.5~2時間である。
【0026】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂は、液体クロマトグラフィー測定において、前記式(2)で表される化合物をエポキシ樹脂総量中1~20面積%含有することが好ましく、2~18面積%含有することがさらに好ましく、5~15面積%含有することが特に好ましく、8~12面積%含有することが最も好ましい。上記範囲であると、極性の高い熱可塑性樹脂との相溶性に優れる樹脂となる。また、前記式(2)で表される化合物を含有することで、自由体積が上昇して硬化物の脆さを低下させること(機械特性の向上)ができる。
【0028】
また、前記式(1)、(2)において、Rは通常1~5のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基であり、最も好ましくはメチル基である。
また、前記式(1)において、nは通常1≦n≦20であるが、1.1≦n≦20であることが好ましく、1.1≦n≦10であることがさらに好ましく、1.1≦n≦5であることが特に好ましい。nの値はオレフィン化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定により求められた重量平均分子量(Mw)の値から算出することができる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は250~300g/eq.であることが好ましく、さらに好ましくは255~280g/eq.であり、特に好ましくは260~275g/eq.である。
軟化点は40~100℃であることが好ましく、さらに好ましくは50~80℃であり、特に好ましくは55~65℃である。エポキシ当量と軟化点が上記範囲にあると、耐熱性が良好であり、その組成物とした際のハンドリング特性も良好である。
なお、エポキシ当量は前記式(1)のAがすべてエポキシ基である場合の理論エポキシ当量に対して1.06~1.25倍であることが好ましく、より好ましくは1.08~1.20になることが好ましく、特に好ましくは1.10~1.18倍である。本範囲に入るということはエポキシ樹脂中のエポキシ基が開環したような構造、すなわち前記式(2)で表される化合物が一定量含まれることを意味する。
【0030】
また、本エポキシ樹脂の溶融粘度(150℃)は2.5Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0Pa・s以下であり、特に好ましくは0.1Pa・s以下である。エポキシ樹脂の溶融粘度が低いことはエポキシ樹脂以外の材料との相溶性が良好となり、好ましい。
【0031】
また、ハロゲン量が1500ppm以下であることが好ましく、特に好ましくは1200ppm以下である。ハロゲン量が多いと、硬化後の架橋密度が低くなり耐熱性が低下することからハロゲン量は低い方が好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化剤を含有する。用い得る硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、及びフェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0033】
アミン系硬化剤としては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2-エチルヘキサン酸エステル等を使用することができる。また、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、アニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるアニリン樹脂等が挙げられる。
【0034】
酸無水物系硬化剤としては無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0035】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の二量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0036】
フェノール系硬化剤としては、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p-ヒドロキシアセトフェノン及びo-ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類が挙げられる。これらのうち、好ましくはフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られるフェノール樹脂、又はフェノール類と置換ビフェニル類との縮合により得られるフェノール樹脂であり、より好ましくは、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合により得られるフェノール樹脂、又はフェノール類と4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニルとの縮合により得られるフェノール樹脂である。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7~1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して0.7当量に満たない場合、或いは1.2当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じて硬化促進剤を配合しても良い。硬化促進剤を使用することによりゲル化時間を調整することもできる。使用できる硬化促進剤の例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、サリチル酸等のカルボン酸類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01~5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂以外に他のエポキシ樹脂を併用しても良い。具体例としては、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。
【0040】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂と併用する場合、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。前記式(1)で表されるエポキシ樹脂の割合が30重量%以上であることにより、耐熱性、弾性率、耐水性などの物性が向上する。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することができる。用い得る添加剤の具体例としては、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0042】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知のマレイミド系化合物を配合することができる。用い得るマレイミド化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。マレイミド系化合物を配合する際は、必要により硬化促進剤を配合するが、前記硬化促進剤や、有機化酸化物、アゾ化合物などのラジカル重合開始剤など使用できる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を添加しワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることができる。用いられる溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が通常10~80重量%、好ましくは20~70重量%となる範囲で使用する。
【0044】
つづいて、本発明の樹脂シート、プリプレグ、炭素繊維複合材料を説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を支持基材の片面または両面に塗布し、樹脂シートとして用いることができる。塗布方法としては、例えば、注型法、ポンプや押し出し機等により樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚さを調整する方法、ロールによりカレンダー加工して厚さを表製する方法、スプレー等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。なお、層を形成する工程においては、エポキシ樹脂組成物の熱分解を回避可能な温度範囲で加熱しながら行ってもよい。また、必要に応じて圧延処理、研削処理等を施してもよい。支持基材としては、例えば紙、布、不織布等からなる多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはシート、ネット、発泡体、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。支持基材に厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜に決定される。
【0045】
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物または樹脂シートを加熱溶融して低粘度化して繊維基材に含浸させることにより得ることができる。
また、本発明のプリプレグは、ワニス状のエポキシ樹脂組成物を、繊維基材に含浸させて加熱乾燥させることにより得ることもできる。
【0046】
本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記プリプレグを所望の形に裁断、積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながらエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させることにより得ることができる。また、プリプレグの積層時に銅箔や有機フィルムを積層することもできる。
【0047】
また、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記方法のほかに、公知の方法にて成形して得ることもできる。例えば、炭素繊維基材(通常、炭素繊維織物を使用)を裁断、積層、賦形してプリフォーム(樹脂を含浸する前の予備成形体)を作製、プリフォームを成形型内に配置して型を閉じ、樹脂を注入してプリフォームに含浸、硬化させた後、型を開いて成形品を取り出すレジントランスファー成形技術(RTM法)を用いることもできる。
また、RTM法の一種である、例えば、VaRTM法、SCRIMP(Seeman’s Composite Resin Infusion Molding Process)法、特表2005-527410記載の樹脂供給タンクを大気圧よりも低い圧力まで排気し、循環圧縮を用い、かつ正味の成形圧力を制御することにとよって、樹脂注入プロセス、特にVaRTM法をより適切に制御するCAPRI(Controlled Atmospheric Pressure Resin Infusion)法なども用いることができる。
【0048】
さらに、本発明の炭素繊維強化複合材料は、繊維基材を樹脂シート(フィルム)で挟み込むフィルムスタッキング法や、含浸向上のため強化繊維基材にパウダー状の樹脂を付着させる方法、繊維基材に樹脂を混ぜる過程において流動層あるいは流体スラリー法を用いる成形方法(Powder Impregnated Yarn)、繊維基材に樹脂繊維を混繊させる方法を用いることもできる。
【0049】
炭素繊維としては、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられ、なかでも引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良いため、解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
【0051】
実施例で用いた各種分析方法について以下の条件で行った。
・エポキシ当量
JIS K-7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K-7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
・溶融粘度
ICI溶融粘度(150℃)コーンプレート法で測定し、単位はPa・sである。
・高速液体クロマトグラフィー
株式会社島津製作所社製 送液ユニット LC-20AD
株式会社島津製作所社製 フォトダイオードアレイ検出器 SPD-M20A
株式会社島津製作所社製 カラムオーブン CTO-20A
カラム:Intersil ODS-2,5μm,4.6×250mm 40℃
MobilPhaseA:アセト二トリル(AN)
MobilPhaseB:水(W)
TimeProgram:
0-28min.AN/W=30%/70% → 100%/0%
28-40min.AN/W=100%/0%
FlowRate:1.0mL/min.
Detection:UV 274nm,PDA
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
メーカー:Waters
カラム:ガードカラム SHODEX GPC KF-601(2本)、KF-602、KF-602.5、KF-603
流速:1.23ml/min.
カラム温度:25℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0052】
[合成例1]
撹拌機、還流冷却管、ディーンシュターク管を備え付けた4つ口フラスコに窒素パージを施しながらフェノール832部とトルエン65部を仕込み、液温を160℃まで昇温させ160℃3時間でトルエンと水分を共沸させ、系中の水分を共沸により取り除いた。その後、液温を100℃とし、三フッ化ホウ素-フェノール錯体を2.5g(ジシクロペンタジエンに対して1%)添加した後、液温を100℃に保持しながらジシクロペンタジエン130gを90分かけて徐々に滴下した。滴下終了後、同条件で1時間、更に120℃2時間、140℃2時間反応させた。
反応終了後、液温を80℃まで冷却し、系内にトリポリりん酸ナトリウムを6.4g添加し30分間撹拌し触媒を失活させた。この溶液にトルエン680gを添加し30分撹拌し、70℃の温水を加え水洗することでトリポリりん酸ナトリウムを除去した。得られた濾液を減圧蒸留により溶剤回収し、フェノール樹脂350部(軟化点97℃)を得た。
【0053】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管を備えた四つ口フラスコに窒素パージを施しながら合成例1で得られたフェノール化合物340部、エピクロロヒドリン959部、メチルグリシジルエーテルを85部、メタノール89部を加え、水浴を75℃にまで昇温した。内温が70℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム84部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間後反応を行った。反応終了後水洗を行い、油層からロータリーエバポレータを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンと溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン836部を加え撹拌溶解し、75℃にまで昇温した。撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液32部、メタノール23部を加え、1時間反応を行った後、水洗を行い、pH試験紙で洗浄水が中性なったことを確認した。得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP1)を407部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は262g/eq.、軟化点が58.8℃、ICI溶融粘度0.07Pa・s(150℃)であった。また、液体クロマトグラフィー測定結果を図1に、GPC測定結果を図2に示す。前記式(2)で表される化合物は図1より8.3面積%(26.7~27.8分のピーク)であった。
【0054】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管を備えた四つ口フラスコに窒素パージを施しながら合成例1で合成したフェノール化合物(軟化点97℃)340部、エピクロロヒドリン925部、ジメチルスルホキシドを185部加え、水浴を45℃にまで昇温した。内温が40℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム84部を90分かけて分割添加した後、更に45℃で2時間後反応を行った後、70℃へ昇温して1時間後反応を行った。反応終了後ロータリーエバポレータを用いて125℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンと溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン827部を加え撹拌溶解し、水洗で生成した塩を取り除いた。その後、油層を70℃にまで昇温した。撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液24部加え、1時間反応を行った後、水洗を行い、pH試験紙で洗浄水が中性なったことを確認した。得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することでエポキシ樹脂(EP2)を410部得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は246g/eq.、軟化点が63.0℃、ICI溶融粘度0.06Pa・s(150℃)であった。また、液体クロマトグラフィー測定結果を図3に、GPC測定結果を図4に示す。前記式(2)で表される化合物は図3より0.0面積%(26.7~27.8分のピーク)であった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果より、実施例1は比較例1より前記式(2)で表される化合物の含有量が多く、エポキシ当量が高いことが確認された。すなわち、単位分子量当たりの極性基濃度が増加していることから、ポリアミドやポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂との相溶性が良好となる。
図1
図2
図3
図4