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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】産業用エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20230705BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20230705BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
F01M13/00 L
F01M13/04 E
F02F7/00 P
F01M13/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019240098
(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公開番号】P2021110240
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智
(72)【発明者】
【氏名】米虫 祐介
(72)【発明者】
【氏名】浅田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】畑田 祥太
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003629(JP,A)
【文献】特開2010-144676(JP,A)
【文献】米国特許第04602607(US,A)
【文献】特開2013-113148(JP,A)
【文献】特開2004-137999(JP,A)
【文献】特開2014-074343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F01M 13/04
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースからのブローバイガスをヘッドカバーの内部に設けられたカバー内ガス通路を通してから吸気通路に導くように構成され、
前記カバー内ガス通路の下方に配置される動弁機構に、上方に向けてエンジンオイルを飛散させるオイル噴出口が設けられ、
前記オイル噴出口から飛散されたエンジンオイルが、前記カバー内ガス通路を形成する仕切り部材に当接する状態に構成され、
前記ヘッドカバーは、主カバー部の排気側の一部を上方突出させてなる突出カバー部と、前記主カバー部とを備える段付き無底箱状の部品であり、
前記突出カバー部に対して吸気側に位置する前記主カバー部のカバー上壁にインジェクタ用孔が設けられ、
前記突出カバー部の底部位に前記仕切り部材を底板部材として取り付けて、前記突出カバー部の内部空間が前記カバー内ガス通路とされ、
前記仕切り部材は、前記主カバー部のカバー上壁と同等の高さレベルに配置されて、前記動弁機構が配置される動弁室とを仕切って前記カバー内ガス通路を個室化させるためのものである産業用エンジン。
【請求項2】
前記仕切り部材は、気筒直列方向に沿って長い長尺状のものに構成されている請求項1に記載の産業用エンジン。
【請求項3】
前記オイル噴出口は、ロッカーアームの上面に開口する状態で設けられている請求項1又は2に記載の産業用エンジン。
【請求項4】
前記オイル噴出口は、前記ロッカーアームにおけるロッカーアーム軸の上方に位置する箇所に設定されている請求項3に記載の産業用エンジン。
【請求項5】
前記仕切り部材は板材製である請求項1~4の何れか一項に記載の産業用エンジン。
【請求項6】
板材製の前記仕切り部材の材料が金属材である請求項5に記載の産業用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農機や建機に搭載されるエンジンであって、ブローバイガスの通り道がヘッドカバー内に設けられた構造を有する産業用エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランクケースからのブローバイガスは、ヘッドカバーのカバー内ガス通路を、又はカバー内ガス通路と外装オイルセパレータとを経てから、ヘッドカバーの外に取り出されて配管などによって吸気通路に戻されるようになる。例えば、特許文献1において開示されるエンジンでは、ヘッドカバーと外装オイルセパレータとを一対の給排パイプ(14,15)を用いて接続している。
【0003】
冬季や北国などの寒冷地においては、オイルセパレータやその給排パイプが冷やされて凍結するおそれがあるため、パイプに断熱材を巻付けたり、適所にヒータを設けるなどの対策が行われることが多い。それらの対策により、低温時における凍結や、その凍結によるブローバイ機能の低下、オイル漏れなどの不具合が極力生じないように工夫されている。
【0004】
近年では、次の(1)、(2)のような問題点や改善点などが挙げられている。
(1)ブローバイガス経路の短縮や配置工夫により、極力冷え難いように対策する手段はあるが、冷え防止効果が芳しいものではないため、極低温時では対応はできない。
(2)ヒータなどの熱源を設ける手段は、電力負担増やコスト増加を招く問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-3629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンジンの熱を積極的に利用する考えに基づいた構造工夫により、前述の(1)、(2)に関する問題を解消すべく、省コストでありながら明確なブローバイガス経路の凍結防止効果が得られるように改善された産業用エンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、産業用エンジンにおいて、
クランクケースからのブローバイガスをヘッドカバーの内部に設けられたカバー内ガス通路を通してから吸気通路に導くように構成され、
前記カバー内ガス通路の下方に配置される動弁機構に、上方に向けてエンジンオイルを飛散させるオイル噴出口が設けられ、
前記オイル噴出口から飛散されたエンジンオイルが、前記カバー内ガス通路を形成する仕切り部材に当接する状態に構成され、
前記ヘッドカバーは、主カバー部の排気側の一部を上方突出させてなる突出カバー部と、前記主カバー部とを備える段付き無底箱状の部品であり、
前記突出カバー部に対して吸気側に位置する前記主カバー部のカバー上壁にインジェクタ用孔が設けられ、
前記突出カバー部の底部位に前記仕切り部材を底板部材として取り付けて、前記突出カバー部の内部空間が前記カバー内ガス通路とされ、
前記仕切り部材は、前記主カバー部のカバー上壁と同等の高さレベルに配置されて、前記動弁機構が配置される動弁室とを仕切って前記カバー内ガス通路を個室化させるためのものであることを特徴とする。
【0008】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、請求項2~6を参照のこと。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンジンが回っていれば、動弁機構に設けられた噴出口からオイルが上方に向けて飛散(噴出)し続けているので、仕切り部材には飛散オイルが連続的に当たる状況がもたらされている。つまり、温かい(熱い)オイルの熱を利用して仕切り部材を、即ちカバー内ガス通路を温めることができるので、ブローバイガスの温度も上げることができる。
【0010】
従って、カバー内ガス通路をブローバイガスが通過する際に、噴出オイルで常に温められている仕切り部材によってブローバイガスも昇温され、ガス中に含まれる水分の温度が0度以上に保たれて凍結が防止されるようになる。ブローバイガス自体が昇温されるので、その後に外部露出されている外部配管や、吸気通路への合流部においても水分が凍結されないようになる。
【0011】
その結果、エンジンの熱を積極的に利用する考えに基づいた構造工夫により、前述の(1)、(2)に関する問題を解消すべく、省コストでありながら明確なブローバイガス経路の凍結防止効果が得られるように改善された産業用エンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】産業用ディーゼルエンジンの平面図
図2図1のエンジンの右側面図
図3】ヘッドカバーの平面図
図4図3のヘッドカバーの底面図
図5図3のヘッドカバーの右側面図
図6図3のヘッドカバーにおけるZ-Z線の断面図
図7】ヘッドカバー部位でのブローバイガス還流装置の原理構造を示し、(A)はセパレータ外装仕様の模式図、(B)はセパレータ内装仕様の模式図
図8】セパレータ内装仕様のエンジン用ヘッドカバーの底面図
図9図1のエンジンの内部構造を示す一部切欠きの左側面図
図10】ヘッドカバー内の凍結防止構造を示す要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による産業用エンジンの実施の形態を、農用トラクタなどに適用されるブローバイガス還流装置を有する直列多気筒ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。まず、セパレータ外装仕様の産業エンジン全般及びヘッドカバーの共通化に関する説明を行い、その後に本発明によるブローバイ経路の凍結防止に関する説明を行うものとする。
【0014】
図1及び図2に、ブローバイガス還流装置付の直列4気筒産業用ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と略称する)Eが示されている。このエンジンEは、シリンダブロック1の上にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上にヘッドカバー(エンジン用ヘッドカバー)3が組付けられている。シリンダブロック1の下部がクランクケース1Aであり、クランクケース1Aの下にはオイルパン4が組付けられている。
【0015】
エンジンEの前部には、冷却ファン5、オルタネータ(セルダイナモ)6、ベルト伝動機構7などが配置され、エンジンEの後部にはフライホイールハウジング8が設けられている。エンジンEの右サイドには前記オルタネータ6、吸気マニホルド30、オイルセパレータ(エンジン外装オイルセパレータ)9などが配置され、エンジンEの左サイドには、吸気マニホルド(符記省略)、過給機(ターボ)11、EGRクーラ(符記省略)などが配置されている。
【0016】
エンジンEは、ブローバイガス中のオイル成分を除去するオイルセパレータ9が、専用の部品としてヘッドカバー3の外部に配置される仕様(エンジン外装オイルセパレータ仕様、以下「セパレータ外装仕様」と呼ぶ)である。図示は省略するが、このエンジンEと基本は同じで詳細が異なる(例:排気量が少し大きい又は小さい、出力の違い、など)ことから、オイルセパレータがヘッドカバー内にある仕様(ヘッドカバー内装オイルセパレータ仕様、以下「セパレータ内装仕様」と呼ぶ)のエンジンも設定されている。
【0017】
〔セパレータ外装仕様のヘッドカバー3などについて〕
セパレータ外装仕様のエンジンE(図1,2に示すエンジン)では、ヘッドカバー3に、外装のオイルセパレータ9に対するブローバイガスの出口(ガス中間出口部)と入口(ガス中間入口部)とを設ける必要があるが、そのような出口と入口は、セパレータ内装仕様のエンジンにおけるヘッドカバーには必要がない。従って、セパレータ外装仕様のヘッドカバー3と、セパレータ内装仕様のヘッドカバー33(図8参照)とは別部品になるため、それぞれに成形用の金型が必要になる、というのが従来の技術常識であった。
【0018】
それに対して、本実施形態では、主にガス中間出口部及びガス中間入口部に関する構造工夫により、各仕様のヘッドカバー3,33を1つの金型で成形できるようにすることに成功している。次に、前述の構造工夫がなされたヘッドカバーについて、セパレータ外装仕様のヘッドカバー3を用いて説明する。
【0019】
図3図6に示されるように、セパレータ外装仕様のエンジンEに用いられるヘッドカバー3は、上部左部の一部を上方突出させてなる突出カバー部3Aと、主カバー部3Bとを備える段付き無底箱状の部品である。突出カバー部3Aはカバー天井壁3aと周壁3sとを有しており、その内部空間はブローバイガスを通すためのカバー内ガス通路Wである。主カバー部3Bは、カバー上壁3b、カバー前壁3f、カバー後壁3r、カバー左壁3c、カバー右壁3dを有し、その内部空間は、ロッカーアームなどの動弁機構(図示省略)を配置するための動弁室Sである。
【0020】
図3図6において、12はインジェクタ用孔、13はオイル給油口孔、14は調圧弁15(PCV弁などであって図1参照)を設ける場所として突出カバー部3Aの前端部に形成された起立壁である。突出カバー部3Aの内側の底部位には、下向きで前後に長い略ループ状の取付座16が形成されており(図4参照)、実機においては、取付座16には仕切り板17がボルト止めされる。仕切り板17は、ブローバイガスの通路であるカバー内ガス通路Wを個室化(孤立化)させるために動弁室Sとを仕切る底板部材である。
【0021】
つまり、セパレータ外装仕様におけるカバー内ガス通路Wは、突出カバー部3A(カバー天井壁3aと周壁3s)と仕切り板17とによりなる箱状構造体Bの内部空間としてヘッドカバー3内に形成されている。なお、突出カバー部3Aを持たない単純形状のヘッドカバーにおいては、箱状構造体Bは、カバー上壁3bなどのヘッドカバー壁から下方突出状態で形成されてもよく〔図7(A参照)、勿論、突出カバー部3Aを持つ構成でもよい。
【0022】
突出カバー部3Aのカバー天井壁3aの前後中央やや後寄りの位置には、動弁室Sに連通される出口側の通孔18aを有するガス中間出口部18と、カバー内ガス通路Wに連通される入口側の通孔19aを有するガス中間入口部19とが形成されている。取付座16におけるガス中間出口部18に対応する箇所の右側縦座部16aは、大きく円弧状に左側に凹入する形状に形成されており、その部分のカバー内ガス通路Wの左右幅が左側に圧縮されている。
【0023】
互いに傾斜構造部であるガス中間出口部18とガス中間入口部19とのそれぞれには、 右上と左下とを繋ぐ傾斜を有する横向き斜めの出口側及び入口側の通孔18a,19aが、ヘッドカバー3の素材の型成形後における機械加工、即ち後加工により形成されている。ガス中間出口部18は、その出口側の通孔18aを動弁室Sに開口させるため、その後側のガス中間入口部19よりも少し右側に寄せて配置されている。
【0024】
ガス中間出口部18には、ブローバイガスをオイルセパレータ9に送るための管状の供給通路24が接続され、ガス中間入口部19には、オイルセパレータ9からのブローバイガスをヘッドカバー3に送るための管状の排出通路25が接続されている。入口側の通孔19aは、カバー内ガス通路Wの始端部(後端部)に臨むように配置形成されている。つまり、ガス中間出口部18が箱状構造体Bの外側に臨むように設定され、かつ、ガス中間入口部が箱状構造体Bの内側に臨むように設定されている。
【0025】
起立壁14の前側におけるカバー天井壁3aには、調圧弁15を経たブローバイガスを過給機(吸気通路の一例)11に送るためのガス出口20が形成されている。右斜め前に向く姿勢のガス出口20には、過給機11のコンプレッサ側に繋がれる還流ダクト23が連通接続されている。調圧弁15及び起立壁14は、カバー内ガス通路Wの終端部(前端部)に配置されている。
【0026】
セパレータ外装仕様のエンジンでは、図7(A)に模式図で示されるように、シリンダヘッド2から上がってくるブローバイガスgは、動弁室Sを通ってガス中間出口部18から供給通路24を通ってオイルセパレータ9に入る。オイルセパレータ9でオイル成分が除去された後のブローバイガスgは、排出通路25及びガス中間入口部19を通ってカバー内ガス通路Wに入り、ここで流れるときにも若干のオイル除去作用を受けた後、調圧弁15、ガス出口20を通って還流ダクト23に送り出される。
【0027】
〔セパレータ内装仕様のヘッドカバーなどについて〕
図7(B)、及び図8に示されるように、セパレータ内装仕様のエンジン(図示省略)のヘッドカバー33は、カバー天井壁3aにおけるガス中間出口部18よりもブローバイガス流れ方向で上流側に、閉塞仕様のカバー内ガス通路形成部材34(又は35)を螺着するための雌ねじ部22が形成されたボス部21が設けられている。このボス部21(図8参照)は、セパレータ外装仕様のヘッドカバー3でも設けられている(図4参照)。
【0028】
ガス中間出口部18及びガス中間入口部19には通孔18a,19aが後加工されずに鋳肌のまま、即ち閉塞されており、かつ、ボス部21には後加工によって雌ねじ部22が形成されている。取付座16の適所には、3箇所の雌ねじ部22も後加工で設けられている。従って、計4箇所の雌ねじ部22を用いて、カバー内ガス通路Wを形成するための底板部材34、又は専用の部品であって、起立壁14の内側に臨むガス出口とガス入口とを有する小型オイルセパレータ(又はセパレータ内蔵のブローバイガス通路構造体)35をヘッドカバー3の内部に設けることができる。
【0029】
セパレータ内装仕様のエンジンでは、図7(B)に模式図で示されるように、シリンダヘッド2からのブローバイガスgは、底板部材34によるカバー内ガス通路W又は小型オイルセパレータ35のガス入口36から入り、オイルフィルタ(又はオイルセパレータ)37でオイル成分の除去が行われた後のブローバイガスgは、調圧弁15及びガス出口20を通って出る、という順路になる。ガス中間出口部18及びガス中間入口部19は閉じているので、別途にガス入口36が必要である。なお、小型オイルセパレータ35には、図示しないガス出口がある。
【0030】
以上説明したように、ヘッドカバー3,33は、型成形時には通孔18a,19aの無いガス中間出口部18とガス中間入口部19、及びと雌ねじ部22の無いボス部21が一体形成されているだけの状態であり、この状態ではセパレータ外装仕様のヘッドカバー3とセパレータ内装仕様のヘッドカバー33とは全く同じ部品であり、従って、成形型(金型)は1種類でよい。型成形状態の未加工(機械加工されていない状態)ヘッドカバーに、ガス中間出口部18の通孔18aとガス中間入口部19の通孔19aとを後加工で作って開通仕様とすれば、セパレータ外装仕様のヘッドカバー3にすることができる。そして、ボス部21に雌ねじ部22を後加工で作って通孔18a,19aを形成しない閉塞仕様とすれば、セパレータ内装仕様のヘッドカバー33にすることができる。
【0031】
つまり、セパレータ外装仕様として見れば、ヘッドカバー3は、クランクケース1Aからのブローバイガスを吸気通路11に導くためのカバー内ガス通路Wと、カバー内ガス通路Wの終端部のカバー天井壁(ヘッドカバー壁)3aに形成されるガス出口20と、動弁室(カバー内ガス通路W以外のカバー内空間部)Sに臨む状態でカバー天井壁(ヘッドカバー壁)3aに形成されるガス中間出口部18と、カバー内ガス通路Wに臨む状態でカバー天井壁(ヘッドカバー壁)3aに形成されるガス中間入口部19と、を備えている。
【0032】
そして、ガス中間出口部18及び/又はガス中間入口部19は、エンジン外装オイルセパレータ9へのブローバイガス給排通路24,25の連通接続を可能とすべくカバー天井壁(ヘッドカバー壁)3aを貫通する通孔18a,19aが形成された開通仕様と、カバー天井壁(ヘッドカバー壁)3aの内部側へのオイルセパレータ配置を可能とすべく通孔18a,19aを形成しない閉塞仕様と、の選択が可能とされている。
【0033】
従って、エンジンの排気量や輸出国の使用状況などの条件により、セパレータ外装仕様とセパレータ内装仕様とが設定されるエンジンであって、仕上げ構成が互いに異なる2種類のヘッドカバー3,33は、それらの金型としては1種類で済み、生産コストや部品コストの低減、及び部品管理コストの低減化が行える利点がある。
【0034】
図9図10に示されるように、ヘッドカバー3の内部には、シリンダヘッド2に設けられる動弁機構aが構成されている。動弁機構aは、プッシュロッド(図示省略)、ロッカーアーム27、吸排気バルブ(図示省略)、ロッカーアーム27を天秤揺動可能に枢支するロッカーアーム軸28などにより構成されている。シリンダヘッド2からは、ロッカーアーム軸28を軸支するための複数のブラケット部29が突設されている。
【0035】
カバー内ガス通路Wの下方に配置される動弁機構aに、上方に向けてエンジンオイルを飛散させるオイル噴出口26が設けられ、オイル噴出口26から飛散されたエンジンオイルが、カバー内ガス通路Wを形成する仕切り板(仕切り部材の一例)17に当接する状態に構成されている。
【0036】
オイル噴出口26は、ロッカーアーム27の上面27aに開口する縦向き孔として設けられており、その左右方向の位置は、ロッカーアーム27におけるロッカーアーム軸28の上方に位置されている。なお、オイルポンプ(図示省略)から吐出されたオイル(エンジンオイル)が、ブラケット部29及びロッカーアーム軸28を経てロッカーアーム27に供給されてオイル噴出口26から出るが、この構造自体は公地であるため、これ以上の説明は割愛する。
【0037】
さて、図10に示されるように、エンジンEが回っている起動時であれば、常にロッカーアーム27のオイル噴出口26からオイルが上方に向けて飛散(噴出)しているので、仕切り板17の底面には常に飛散オイルが連続的に当たる状況がもたらされている。つまり、温かい(熱い)オイルの熱を利用して仕切り板17を、即ちカバー内ガス通路Wを温めることができるので、ブローバイガスの温度も上げることができる。
【0038】
カバー内ガス通路Wをブローバイガスが通過する際に、噴出オイルで常に温められている仕切り板17によってブローバイガスも昇温され、ガス中に含まれる水分の温度が0度以上に保たれるようになり、凍結が防止される。ブローバイガス自体が昇温されるので、その後に外部露出されている外部配管や、吸気通路への合流部においても水分が凍結されないようになる。
【0039】
カバー内ガス通路W、即ち仕切り板17は、気筒直列方向(前後方向)に長い長尺状のものであるから、図10に示されるように、前後方向に並ぶ複数のオイル噴出口26,26,26からのオイル噴射を受けられるとともに、ブローバイガスの被昇温時間が長くなり、効率よくガス温度を昇温させることができる利点がある。
【0040】
また、仕切り板17は、圧延鋼板や機械構造鋼板、或いはアルミ合金など、熱伝達効率に優れる金属製であれば、動弁機構aを用いたオイル噴出によるブローバイガスの昇温作用を、より効率よく発揮させることが可能になる。
【0041】
〔別実施形態〕
独立部品のオイルセパレータをヘッドカバーに内装する構造〔図7(B)参照〕においても、本発明の適用は可能であり、噴出オイルをオイルセパレータ35の底壁34に当てて、オイルセパレータ35の内部であるカバー内ガス通路Wを流れるブローバイガスを昇温させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1A クランクケース
3 ヘッドカバー
3A 突出カバー部
3B 主カバー部
3b カバー上壁
11 吸気通路
12 インジェクタ用孔
17 仕切り部材
26 オイル噴出口
27 ロッカーアーム
28 ロッカーアーム軸
S 動弁室
W カバー内ガス通路
a 動弁機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10