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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】汎用性抗毒素
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20230705BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230705BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230705BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230705BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230705BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61K38/10
A61P39/02
A61K38/12
C07K7/06
C07K7/08
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12P21/02 C
G01N33/573 A
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019544824
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018000084
(87)【国際公開番号】W WO2018151867
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】62/460,213
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518293099
【氏名又は名称】カムリス インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フアン ユーン ワイ.
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】PLoS ONE (2016) vol.11, issue 3, e0151363, p.1-22
【文献】Laustsen, AH, Recombinant Antivenoms (2016) PhD Thesis, University of Copenhagen, p.1-143, <https://backend.orbit.dtu.dk/ws/portalfiles/portal/126933547/0._Recombinant_Antivenoms_masked_sequences_v4.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/08
A61K 38/10
C07K 7/06
C07K 7/08
A61P 39/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の動物毒素に共通する標的に結合するファージ発現ペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、複数種抗毒素組成物であって、前記ファージ発現ペプチドが、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが線状である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドが環状である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記標的がタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記標的がホスホリパーゼA2(PLA2)である、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドがSEQ ID NO:1を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドがSEQ ID NO:2を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドがSEQ ID NO:3を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドがSEQ ID NO:4を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記ペプチドがSEQ ID NO:9を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記ペプチドがSEQ ID NO:10を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
前記ペプチドがSEQ ID NO:11を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドがSEQ ID NO:12を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項15】
1種または複数種の動物毒素中の標的に結合する、ファージ発現ペプチドであって、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、ファージ発現ペプチド。
【請求項16】
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項15記載のファージ発現ペプチド。
【請求項17】
前記標的がホスホリパーゼA2である、請求項15または16記載のファージ発現ペプチド。
【請求項18】
SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドをさらに含む、請求項1517のいずれか一項記載のファージ発現ペプチド。
【請求項19】
M13ファージによって発現される、請求項1518のいずれか一項記載のファージ発現ペプチド。
【請求項20】
請求項1519記載のペプチドのうちのいずれか1つをコードする、単離された核酸分子。
【請求項21】
SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、およびそれらの任意の組み合わせより選択される配列を含む、請求項20記載の核酸分子。
【請求項22】
請求項1519記載のペプチドのうちのいずれか1つをコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項20または21記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項24】
請求項20もしくは21に記載の単離された核酸分子、または請求項22もしくは23に記載の単離されたベクターを含む、宿主細胞。
【請求項25】
原核生物細胞である、請求項24記載の宿主細胞。
【請求項26】
大腸菌(Escherichia coli)である、請求項25記載の宿主細胞。
【請求項27】
大腸菌K12 ER2738である、請求項26記載の宿主細胞。
【請求項28】
請求項1~14のいずれか一項記載の組成物または請求項1519のいずれか一項記載のペプチドを製造する方法であって、ペプチドが産生される条件下で請求項2427のいずれか一項記載の宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項29】
請求項1~14のいずれか一項記載の組成物または請求項1519のいずれか一項記載のペプチドを製造する方法であって、
a.ウェスタン・コットンマウス(Western Cottonmouth)毒素におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列を同定する工程;
b.他のヘビ種におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列を同定する工程;および
c.ファージディスプレイパニングによって1つまたは複数のファージを製造する工程
を含む、方法。
【請求項30】
動物毒素中毒の治療のための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項31】
前記動物毒素がウェスタン・コットンマウス毒素に由来する、請求項30記載の使用。
【請求項32】
前記組成物が前記動物毒素に結合し、それによって毒素の毒性が中和される、請求項30または31記載の使用。
【請求項33】
前記組成物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含む、請求項3032のいずれか一項記載の使用。
【請求項34】
請求項1~14のいずれか一項記載の組成物を含む、診断キット。
【請求項35】
前記組成物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む、請求項34記載のキット。
【請求項36】
前記組成物が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む、請求項34または35記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月17日に出願された米国仮出願第62/460,213号の恩典を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
電子的に提出された配列表(名称:4133.001PC01_ST25.txt;サイズ:32,474バイト;および作成日:2018年2月15日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
連邦政府支援研究に関する声明
本発明は、Navy In-House Laboratory Independent Research Programによって授与されたILIR-5160において米国政府から援助を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0004】
本開示の分野
本開示は、概して、短鎖ペプチドを提示するファージを使用する汎用性抗毒素の開発に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
短鎖ペプチドを発現するM13ファージは、様々な結合モチーフを標的に輸送するための送達ビヒクルとして利用されてきた。ファージのテールタンパク質に対する遺伝子改変によって、様々な配列、長さ、および組成のユニークなペプチドの発現が可能となる。発現したペプチドは、特異的エピトープに結合することができ、結合パートナーを同定するためのハイスループットシステムの基礎を形成する。
【0006】
動物毒物注入は世界中の主な公衆衛生懸念であり、世界保健機構によって顧みられない病気と分類されている。例えば、世界におよそ400,000人、米国およびカナダではおよそ9,000人が、ヘビ咬傷毒物注入に毎年冒されている。いくつかの抗体ベースの抗毒素が毒物注入治療に利用可能である。ガラガラヘビ科(Crotalidae)多価免疫Fab(ヒツジ)は、北米ガラガラヘビに咬まれた患者の治療について、現在、唯一の広く入手可能な製品である;しかし、その高いコストおよび副作用が共通の懸念である。
【0007】
抗体ベースの抗毒素は、免疫学的なコンディショニングのために宿主動物を純粋な毒素に曝露し、結果として生じる抗体を抽出することによって、開発される。抗体ベースの戦略は、一部のヘビ種については成功した治療法をもたらしたが、安全性、効能、および製造コストの点で制限が残っている。加えて、クモ形類動物およびクラゲなどの他の動物からの毒物注入との戦いにおける抗体ベースの戦略の有効性は限定的である。
【0008】
次いで、血清が動物から単離され、毒素に反応する抗体が精製される。この抗体ベースの戦略は、一部のヘビ種については成功した治療法をもたらしたが、安全性、効能、および製造の経済的な面で制限が残っている。抗体ベースの抗毒素の最も重篤な副作用のうちの1つは、血清病として公知の、ウマまたはヒツジ由来の異種免疫グロブリンに対する患者の免疫反応である。さらに、大抵の抗体ベースの溶液は、特別な貯蔵条件、または、凍結乾燥されている場合は投与前の再構成、のいずれかを必要とし;これらは両方とも、遠く離れた簡素な条件におけるそれらの有用性を低下させる。他の研究者も抗体ベースの抗毒素を生産したが、高価で多くの時間を要する生産プロセスの影響、ならびに適用の制限を考慮すると、彼らが継続的に抗毒素生産を追求することは疑わしい。
【0009】
以下の参考文献は、抗毒素技術における最先端技術についての背景情報を提供し、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる:Molenaar, T. J. et al. Uptake and processing of modified bacteriophage M13 in mice: implications for phage display. Virology 293, 182-191, doi:l0.1006/viro.2001.1254 (2002)(非特許文献1); Rabies and Envenomings A Neglected Public Health Issue (WHO 2007)(非特許文献2); WHO Guidelines for the Production Control and Regulation of Snake Antivenom Immunoglobulins (WHO 2010)(非特許文献3); Warrell, D. A. Guidelines for the management of snake-bites (WHO 2010)(非特許文献4); Smith, S. et al. Bedside management considerations in the treatment of pit viper envenomation. J Emerg Nurs 40, 537-545, doi:l0.1016/j.jen.2014.01.002 (2014)(非特許文献5); Mowry, J. B., Spyker, D. A., Cantilena, L. R., Jr., Bailey, J. E. & Ford, M. 2012 Annual Report of the American Association of Poison Control Centers' National Poison Data System (NPDS): 30th Annual Report. Clin Toxicol (Phila) 51,949-1229, doi:10.3109/15563650.2013.863906 (2013)(非特許文献6); Kanaan, N.C. et al. Wilderness Medical Society Practice Guidelines for the Treatment of Pitviper Envenomations in the United States and Canada. Wilderness Environ Med 26, 472-487, doi:l0.1016/j.wem.2015.05.007 (2015)(非特許文献7); Holland, D. R. et al. The crystal structure of a lysine 49 phospholipase A2 from the venom of the cottonmouth snake at 2.0-A resolution. J Biol Chem 265, 17649-17656 (1990)(非特許文献8); Fralick, J., Chadha-Mohanty, P. & Li, G. in Advances in Biological and Chemical Terrorism Countermeasures (eds R. Kendall, S. Presley, G. Austin, & P. Smith) 179-202 (CRC Press, 2008)(非特許文献9); Philipson, L., Albertsson, P.A., Frick, G. The purification and concentration of viruses by aqueous polymer phase systems. Virology, 11, 553-571 (1960)(非特許文献10); Yu, J. & Smith, G. P. [1] Affinity maturation of phage-displayed peptide ligands. 267, 3-27, doi: 10.10 16/s0076-6879(96)67003-7 (1996)(非特許文献11); Prakash S.S. Phage display technology for anti-venom production. Clinical Microbiology and Infection 13:4 (October 2015)(非特許文献12); Roncolato, E.C. et al. Phage display as a novel promising antivenom therapy: a review. 93:79-84 Toxicon. (Jan. 2015; Epub Nov. 2014)(非特許文献13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Molenaar, T. J. et al. Uptake and processing of modified bacteriophage M13 in mice: implications for phage display. Virology 293, 182-191, doi:l0.1006/viro.2001.1254 (2002)
【文献】Rabies and Envenomings A Neglected Public Health Issue (WHO 2007)
【文献】WHO Guidelines for the Production Control and Regulation of Snake Antivenom Immunoglobulins (WHO 2010)
【文献】Warrell, D. A. Guidelines for the management of snake-bites (WHO 2010)
【文献】Smith, S. et al. Bedside management considerations in the treatment of pit viper envenomation. J Emerg Nurs 40, 537-545, doi:l0.1016/j.jen.2014.01.002 (2014)
【文献】Mowry, J. B., Spyker, D. A., Cantilena, L. R., Jr., Bailey, J. E. & Ford, M. 2012 Annual Report of the American Association of Poison Control Centers' National Poison Data System (NPDS): 30th Annual Report. Clin Toxicol (Phila) 51,949-1229, doi:10.3109/15563650.2013.863906 (2013)
【文献】Kanaan, N.C. et al. Wilderness Medical Society Practice Guidelines for the Treatment of Pitviper Envenomations in the United States and Canada. Wilderness Environ Med 26, 472-487, doi:l0.1016/j.wem.2015.05.007 (2015)
【文献】Holland, D. R. et al. The crystal structure of a lysine 49 phospholipase A2 from the venom of the cottonmouth snake at 2.0-A resolution. J Biol Chem 265, 17649-17656 (1990)
【文献】Fralick, J., Chadha-Mohanty, P. & Li, G. in Advances in Biological and Chemical Terrorism Countermeasures (eds R. Kendall, S. Presley, G. Austin, & P. Smith) 179-202 (CRC Press, 2008)
【文献】Philipson, L., Albertsson, P.A., Frick, G. The purification and concentration of viruses by aqueous polymer phase systems. Virology, 11, 553-571 (1960)
【文献】Yu, J. & Smith, G. P. [1] Affinity maturation of phage-displayed peptide ligands. 267, 3-27, doi: 10.10 16/s0076-6879(96)67003-7 (1996)
【文献】Prakash S.S. Phage display technology for anti-venom production. Clinical Microbiology and Infection 13:4 (October 2015)
【文献】Roncolato, E.C. et al. Phage display as a novel promising antivenom therapy: a review. 93:79-84 Toxicon. (Jan. 2015; Epub Nov. 2014)
【発明の概要】
【0011】
概要
本開示は、複数種抗毒素組成物を提供する。当該組成物は、いくつかの異なる動物毒素に共通する標的に結合するファージ発現ペプチド(phage-expressed peptide)を含有する。当該ファージ発現ペプチドは、典型的には7~12量体ペプチドであり、金属、糖質、およびタンパク質を含む、多くの標的に結合し得る。
【0012】
本開示は、複数種の動物毒素を反映するコンセンサスタンパク質配列の編集に基づくペプチド標的設計の改善方法も提供する。コンセンサスタンパク質配列は、次いで、ファージディスプレイパニング(異なる毒素タンパク質配列の濃縮相同領域についての親和性分割)の標的を提供する。
【0013】
例示的な態様において、本開示は、ウェスタン・コットンマウス(Western Cottonmouth)毒素におけるコンセンサスホスホリパーゼA2(PLA2)タンパク質配列に基づくペプチド標的設計の改善方法を提供する。従って、このコンセンサス配列は、北米の毒ヘビに対して汎用性の抗毒素の作製におけるファージディスプレイパニングの標的を提供する。本方法は、北米における7種の最も一般的な毒ヘビの相同領域を含むように標的配列を再定義する工程を含む。具体的には、この方法は、保存された活性部位を標的とすることによってペプチドファミリーの相同領域を模倣するように標的ペプチドを再定義する工程を伴う。この方法は、下記表1に列挙されているファージ発現ペプチドを使用することができる。
【0014】
本開示は、薬学的に許容される担体中に懸濁されたファージ発現ペプチドを含む抗毒素製剤にも関し、ここで、当該ペプチドは、保存されたヘビ毒素成分に結合し、それによって毒素の毒性が中和されるように、構成されている。
【0015】
本開示は、有毒動物咬傷のタイプおよび重症度を同定するための診断キットも提供する。当該キットは、複数のペプチドおよび複数の標識分子を含有する。各ペプチドは、1つまたは複数の動物種の毒素にユニークな配列を標的とする。各標識分子は、対応するユニークなペプチドにコンジュゲートされている。咬傷犠牲者の血液を採血し、ペプチド/標識コンジュゲートと接触させる。当該キットはまた、標識分子を検出し、それによって血液中の各標的に結合されているペプチドが提示されるように構成されているアッセイも含む。従って、当該キットは、どのペプチドが標的に結合したか、および結合の程度を検出することができ、それによって、どの動物種の毒素が血液中に見出されるか、および咬傷の重症度を同定することができる。
【0016】
いくつかの態様において、複数種の動物の毒素に共通する標的に結合するファージ発現ペプチド、および薬学的に許容される担体を含む、複数種抗毒素組成物を本明細書において開示する。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドは約7~約12アミノ酸長であり;かつ、標的は、金属、糖質、タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドは線状である。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドは環状である。
【0017】
いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドの標的はタンパク質である。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドの標的はホスホリパーゼA2(PLA2)である。
【0018】
いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:2を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:2からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:3を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:3からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:4を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:4からなるペプチドを含む。
【0019】
いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:9を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:9からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:10を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:10からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:11を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:11からなるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:12を含むペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物は、SEQ ID NO:12からなるペプチドを含む。
【0020】
いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドがM13ファージによって発現される、ファージ発現ペプチドを含む組成物を本明細書において開示する。
【0021】
いくつかの態様において、複数種の動物毒素が1つまたは複数のヘビ種に由来する、複数種の動物毒素を中和する組成物を本明細書において開示する。
【0022】
いくつかの態様において、1種または複数種の動物毒素中の標的に結合する、1つまたは複数のファージ発現ペプチドを本明細書において開示する。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドはホスホリパーゼA2を標的とする。さらに、いくつかの態様において、1つまたは複数のファージ発現ペプチドは、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含む。いくつかの態様において、ファージ発現ペプチドはM13ファージによって発現される。
【0023】
本明細書において開示されているペプチドのうちのいずれか1つをコードする1つまたは複数の単離された核酸分子を、本明細書においてさらに開示する。いくつかの態様において、当該核酸分子は、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、およびそれらの任意の組み合わせより選択される配列を含む。
【0024】
いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドのうちのいずれか1つをコードする核酸を含む、1つまたは複数のベクターを、本明細書において提供する。いくつかの態様において、当該1つまたは複数のベクターは、本明細書において開示されている核酸を含む。
【0025】
いくつかの態様において、本明細書において開示されている単離された核酸分子、または本明細書において開示されている単離されたベクターを含む、宿主細胞を本明細書において提供する。いくつかの態様において、当該宿主細胞は原核生物細胞である。いくつかの態様において、当該宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)である。いくつかの態様において、当該宿主細胞は大腸菌K12 ER2738である。
【0026】
いくつかの態様において、ペプチドが産生される条件下で本明細書において開示されている宿主細胞を培養する工程を含む、本明細書において開示されている組成物または本明細書において開示されているペプチドを製造する方法を、本明細書においてさらに提供する。いくつかの態様において、(a)ウェスタン・コットンマウス毒素におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列を同定する工程;(b)他のヘビ種におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列を同定する工程;および(c)ファージディスプレイパニングによって1つまたは複数のファージを製造する工程を含む、本明細書において開示されている組成物または本明細書において開示されているペプチドを製造する方法を、本明細書において提供する。
【0027】
いくつかの態様において、本明細書において開示されている組成物を対象に投与する工程を含む、動物毒素と接触した対象の治療方法を、本明細書において開示する。いくつかの態様において、当該動物毒素はウェスタン・コットンマウス毒素に由来する。いくつかの態様において、当該組成物は、動物毒素に結合し、それによって毒素の毒性が中和される。いくつかの態様において、投与される当該組成物は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含む。いくつかの態様において、組成物を、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜外または皮下手段によって投与する。
【0028】
いくつかの態様において、本明細書において開示されている組成物を含む診断キットを本明細書において提供する。いくつかの態様において、当該キットは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む組成物を含む。いくつかの態様において、当該キットは、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む組成物を含む。
[本発明1001]
複数種の動物毒素に共通する標的に結合するファージ発現ペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、複数種抗毒素組成物。
[本発明1002]
前記ファージ発現ペプチドが約7~約12アミノ酸長であり;かつ、前記標的が、金属、糖質、タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせである、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記ペプチドが線状である、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
前記ペプチドが環状である、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1005]
前記標的がタンパク質である、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
前記標的がホスホリパーゼA 2 (PLA 2 )である、本発明1001~1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
前記ペプチドが、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
前記ペプチドがSEQ ID NO:1を含む、本発明1007の組成物。
[本発明1009]
前記ペプチドがSEQ ID NO:2を含む、本発明1007の組成物。
[本発明1010]
前記ペプチドがSEQ ID NO:3を含む、本発明1007の組成物。
[本発明1011]
前記ペプチドがSEQ ID NO:4を含む、本発明1007の組成物。
[本発明1012]
前記ペプチドが、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1001~1011のいずれかの組成物。
[本発明1013]
前記ペプチドがSEQ ID NO:9を含む、本発明1012の組成物。
[本発明1014]
前記ペプチドがSEQ ID NO:10を含む、本発明1012の組成物。
[本発明1015]
前記ペプチドがSEQ ID NO:11を含む、本発明1012の組成物。
[本発明1016]
前記ペプチドがSEQ ID NO:12を含む、本発明1012の組成物。
[本発明1017]
前記ファージ発現ペプチドがM13ファージによって発現される、本発明1001~1016のいずれかの組成物。
[本発明1018]
前記複数種の動物毒素が、1つまたは複数のヘビ種に由来する、本発明1001~1017のいずれかの組成物。
[本発明1019]
1種または複数種の動物毒素中の標的に結合する、ファージ発現ペプチド。
[本発明1020]
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1019のファージ発現ペプチド。
[本発明1021]
前記標的がホスホリパーゼA 2 である、本発明1019または1020のファージ発現ペプチド。
[本発明1022]
SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドをさらに含む、本発明1019~1021のいずれかのファージ発現ペプチド。
[本発明1023]
M13ファージによって発現される、本発明1019~1022のいずれかのファージ発現ペプチド。
[本発明1024]
本発明1019~1023のペプチドのうちのいずれか1つをコードする、単離された核酸分子。
[本発明1025]
SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、およびそれらの任意の組み合わせより選択される配列を含む、本発明1024の核酸分子。
[本発明1026]
本発明1019~1023のペプチドのうちのいずれか1つをコードする核酸を含む、ベクター。
[本発明1027]
本発明1024または1025の核酸分子を含む、ベクター。
[本発明1028]
本発明1024もしくは1025の単離された核酸分子、または本発明1026もしくは1027の単離されたベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1029]
原核生物細胞である、本発明1028の宿主細胞。
[本発明1030]
大腸菌(Escherichia coli)である、本発明1029の宿主細胞。
[本発明1031]
大腸菌K12 ER2738である、本発明1030の宿主細胞。
[本発明1032]
本発明1001~1018のいずれかの組成物または本発明1019~1023のいずれかのペプチドを製造する方法であって、ペプチドが産生される条件下で本発明1028~1031のいずれかの宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
[本発明1033]
本発明1001~1018のいずれかの組成物または本発明1019~1023のいずれかのペプチドを製造する方法であって、
a.ウェスタン・コットンマウス(Western Cottonmouth)毒素におけるコンセンサスPLA 2 タンパク質配列を同定する工程;
b.他のヘビ種におけるコンセンサスPLA 2 タンパク質配列を同定する工程;および
c.ファージディスプレイパニングによって1つまたは複数のファージを製造する工程
を含む、方法。
[本発明1034]
本発明1001~1018のいずれかの組成物を対象に投与する工程を含む、動物毒素と接触した対象の治療方法。
[本発明1035]
前記動物毒素がウェスタン・コットンマウス毒素に由来する、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記組成物が前記動物毒素に結合し、それによって毒素の毒性が中和される、本発明1034または1035の方法。
[本発明1037]
前記組成物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含む、本発明1034~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
前記組成物を、経口、直腸、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、骨髄内、硬膜外、または皮下手段によって投与する、本発明1034~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
本発明1001~1018のいずれかの組成物を含む、診断キット。
[本発明1040]
前記組成物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む、本発明1039のキット。
[本発明1041]
前記組成物が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、およびそれらの任意の組み合わせより選択されるペプチドを含む、本発明1039または1040のキット。
【図面の簡単な説明】
【0029】
下記は図の要素から明らかとなるであろう。これらは例示目的のために提供され、必ずしも正確な縮尺であるとは限らない。
【0030】
図1A】ウェスタン・コットンマウス(アグルドストロドン・ピスシヴォルス・ロイコストーマ(Agldstrodon piscivorus leucostoma))毒素から単離されたPLA2の、空間充填モデルにおける結晶構造を示す。残基は円を使用して特定されており、それぞれ、触媒ネットワーク、および金属結合アミノ酸を意味する。第2の画像は、活性残基を見るための結晶構造の90°反時計回り回転を示す。
図1B】パニングのための標的ペプチドとして使用されたウェスタン・コットンマウスヘビ毒素からのPLA2の保存配列である。活性触媒部位(黄色)および金属結合部位(赤色)を示す内部領域を、ファージパニングのためのテンプレートペプチドとして利用した。
図2】ウェスタン・コットンマウス毒素をパニングの第2ラウンドからのポリクローナルファージ混合物と共に30分間インキュベートした場合のPLA2阻害のグラフ表示である。阻害効果は、ポリクローナルファージ混合物の濃度に依存する。
図3】ファージディスプレイライブラリーから単離されたファージクローンを使用したPLA2活性の阻害を示す棒グラフである。
図4】米国における5種の主要なヘビ毒素に対するPh.D.-12-7ファージの異種間抗PLA2活性を示す棒グラフである。選択されたファージクローンのうちの1つであるPh.D.-12-7は、全ての主な北米ガラガラヘビ毒素にわたって抗PLA2活性を示した。
図5図5A~Dは、様々なファージディスプレイシステムから汎用性抗毒素を開発するための方法のステップを図示する。図5Aは毒素成分の配列解析を示す。図5Bは、ファージの親和性選択を示す。図5Cは、インビトロおよびインビボでの効能試験を示す。図5Dは、ヘビ咬傷犠牲者のファージによる治療を示す。
【0031】
本開示は様々な改変物および代替形態を許容するが、具体的な態様を図面において例として示し、本明細書において詳細に説明する。しかし、本開示は、開示される特定の形態に限定されるようには意図されないことが、理解されるべきである。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲内に入る全ての改変物、等価物、および代替物を網羅するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
ペプチドおよびペプチドを含む組成物を本明細書において提供する。いくつかの態様において、当該ペプチドはヘビ毒素に結合し、毒素の毒性を中和する。いくつかの態様において、当該ペプチドはPLA2に結合し、毒素の毒性を中和する。具体的な態様において、本明細書において開示されているタンパク質は単離されている。
【0033】
そのようなタンパク質をコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)、例えば相補DNA(cDNA)も提供する。そのようなタンパク質をコードする核酸(ポリヌクレオチド)を含むベクター(例えば、発現ベクター)および細胞(例えば、宿主細胞)もさらに提供する。そのようなタンパク質を製造する方法も提供する。他の局面において、ヘビ毒素を検出するための方法および使用を本明細書において提供する。他の局面において、ヘビ咬傷などの特定の病態の治療方法を本明細書において提供する。関連する組成物(例えば、薬学的組成物)、キット、および検出方法も提供する。
【0034】
本開示の原理の理解を容易にするために、図面において例示されている多数の例示的な態様がここで参照され、具体的な言葉がこれらを説明するために使用される。
【0035】
a.用語
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」要素は、その要素のうちの1つまたは複数を指すことが注意されるべきであり;例えば、「ヌクレオチド配列(a nucleotide sequence)」は、1つまたは複数のヌクレオチド配列を表すことが理解される。従って、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は、本明細書において交換可能に使用され得る。
【0036】
さらに、「および/または」は、本明細書において使用される場合、他方を伴うまたは伴わない2つの指定された特徴またはコンポーネントの各々の具体的な開示としてとられる。従って、用語「および/または」は、本明細書において「Aおよび/またはB」のような句において使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むように意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/またはC」のような句において使用される場合、以下の局面の各々を包含するように意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0037】
同様に、単語「または」は、文脈において特に示されない限り、「および」を含むように意図される。核酸またはポリペプチドについて与えられる、全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子重量または分子質量値は、近似であり、説明のために提供されることが、さらに理解されるべきである。
【0038】
局面が「含む」という言葉と共に本明細書に記載されている場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載される他の点では類似する局面も提供されることが理解される。
【0039】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示において使用される用語のうちの多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0040】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)採択形態で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数を含む。特に示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシへの方向で左から右に記載される。本明細書において提供される見出しは、全体として本明細書を参照することによって得られ得る、本開示の様々な局面の限定ではない。従って、直下に定義される用語は、本明細書の全体を参照することによってより完全に定義される。
【0041】
用語「約」は、およそ、ほぼ、大体、または近辺を意味するために本明細書において使用される。用語「約」が数値範囲と共に使用される場合、それは、示された数値の上下に境界を広げることによりその範囲を改変する。従って、「約10~20」は「約10~約20」を意味する。一般に、用語「約」は、例えば10%上または下(より高いまたはより低い)の変動だけ、記載の値の上下に数値を改変することができる。
【0042】
用語「天然に存在する」は、本明細書において使用され、物体に適用される場合、当該物体が自然において見出され得るという事実を指す。例えば、自然供給源から単離され得、かつ、実験室において人によって故意に改変されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0043】
「ファージ」または「バクテリオファージ」は、細菌に感染するウイルスを指す。用語「ファージ」は、両タイプのウイルスを指すために使用されるが、文脈によって示されるような特定の場合においては、具体的にバクテリオファージを指すための略語としても使用され得る。バクテリオファージは、宿主の生合成機構の一部または全部を使用することによって細菌内部で増殖する偏性細胞内寄生体(即ち、細菌に感染するウイルス)である。異なるバクテリオファージは異なる材料を含有し得るが、それらは全て核酸およびタンパク質を含有し、特定の状況下では脂質膜に封入され得る。ファージに依存して、核酸はDNAまたはRNAのいずれかであり得るが、両方ではなく、それは様々な形態で存在し得る。ファージは、細菌細胞に感染するための2つの手段を有する。一つは、ファージDNAが細菌の染色体に組込まれて何世代も休止状態になる、溶原化である。ファージDNAが細菌染色体から切り取られて、第2のタイプの感染である溶菌期を確立するためには、少なくとも1つの環境誘発因子が必要である。この時期に、細菌はファージ製造工場へと形質転換される。何百ものファージが産生され、細菌細胞が溶解されて当該ファージを放出する。次いで、放出されたファージは別の宿主細菌を見つけ、プロセスが繰り返される。
【0044】
「M13ファージ」、「M13バクテリオファージ」などは、M13ウイルスに感染するバクテリオファージである。本明細書において開示されているいくつかの態様において、M13ファージは、M13ウイルスに感染する大腸菌である。M13ファージは、コートタンパク質によって包まれた環状一本鎖DNA分子から構成される。本明細書において開示されているいくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO: 1~4を含む抗毒素ペプチドを産生する。
【0045】
「抗毒素」は、毒素の効果に対して作用する血清である。抗毒素は、特定の有毒な咬傷および刺傷を治療するために使用される。本明細書における一つの特定の態様において、抗毒素は、ヘビ咬傷を治療するために使用される。必要とされる具体的な抗毒素は、関与する種に依存する。「汎用性抗毒素」は、複数種の毒素または毒素のタンパク質と反応する。換言すれば、汎用性抗毒素は、様々な種の毒素と交差反応する抗毒素である。
【0046】
「ファージディスプレイパニング」は、バクテリオファージを使用してタンパク質-タンパク質、タンパク質-ペプチド、およびタンパク質-DNA相互作用を試験するための技術である。ファージディスプレイパニングは、関連するファージの濃縮を可能にする。
【0047】
「ホスホリピダーゼA2(Phospholipidase A2)」または「PLA2」は、グリセロリン脂質のsn-2エステルを加水分解して脂肪酸およびリゾリン脂質を生成する酵素のクラスに属する酵素である。PLA2は、3-sn-ホスホグリセリドにおける2-アシル基のカルシウム依存性加水分解を触媒し、それによって、シグナル分子の前駆体として役立つグリセロリン脂質およびアラキドン酸が放出される。ヘビ毒素のPLA2は、6つの主要タイプ内の16個の認識されるグループから構成される酵素の非常に大きなスーパーファミリーを含む。これらの主要タイプには、分泌型PLA2(sPLA2)、細胞質型PLA2(cPLA2)、カルシウム非依存型PLA2(iPLA2)、血小板活性化因子(PAF)アセチル加水分解酵素/酸化脂質リポタンパク質関連PLA2(LpPLA2)、脂肪PLA2(AdPLA2)、およびリソソームPLA2(LPLA2)が含まれる。PLA2によるグリセロリン脂質の加水分解は、脂肪酸の放出および関連するリゾリン脂質の生成をもたらす。
【0048】
「コンセンサス配列」は、異なるが関連するDNAもしくはRNAまたはタンパク質配列における相同性のある領域の間で共通するヌクレオチドまたはアミノ酸の配列である。
【0049】
「ポリペプチド」は、少なくとも2つの連続的に連結されたアミノ酸残基を含む鎖を指し、鎖の長さに上限はない。タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸残基は、これらに限定されないが、グリコシル化、リン酸化、またはジスルフィド結合形成のような、修飾を含有することができる。「タンパク質」は1つまたは複数のポリペプチドを含み得る。
【0050】
上述したように、ポリペプチドバリアントとしては、例えば、修飾ポリペプチドが挙げられる。修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Mei et al., Blood 116:270-79 (2010))、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAによって媒介されるアミノ酸のタンパク質への付加(例えばアルギニル化)、およびユビキチン化が挙げられる。
【0051】
本明細書において使用される場合、タンパク質配列における、「対応するアミノ酸」、「対応する部位」、または「等価なアミノ酸」は、第1のタンパク質配列(例えば、IL-2配列)と第2のタンパク質配列(例えば、第2のIL-2配列)との同一性または類似性を最大限にするためのアライメントによって同定される。第2のタンパク質配列における等価なアミノ酸を同定するために使用される数は、第1のタンパク質配列における対応するアミノ酸を同定するために使用される数に基づく。
【0052】
用語「発現」は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを生成するプロセスを指す。
【0053】
「保存的アミノ酸置換」は、類似する側鎖を有するアミノ酸残基でのアミノ酸残基の置換を指す。類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様において、IL-2-CD25融合タンパク質中の予想される非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられる。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); およびBurks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)を参照されたい)。
【0054】
ポリペプチドについて、用語「実質的な相同性」は、2つのポリペプチド、またはそれらの指定される配列が、最適に整列されて比較された場合に、適切なアミノ酸挿入または欠失を有するが、アミノ酸の少なくとも約80%、少なくとも約90%~95%、またはアミノ酸の少なくとも約98%~99.5%において、同一であることを示す。
【0055】
「結合親和性」は、一般に、分子の単一の結合部位(例えば、本明細書において開示されているペプチド)とその結合パートナー(例えば、抗原)との非共有結合性相互作用の合計の強度を指す。特に示されない限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、ペプチドおよび抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。そのパートナーYについての分子Xの親和性は、一般に、解離定数(KD)によって示され得る。親和性は、平衡解離定数(KD)、および平衡会合定数(KA)を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の多数の方法によって測定および/または表現することができる。KDはkoff/konの商から計算され、一方、KAはkon/koffの商から計算される。konは、例えば抗原へのペプチドの、会合速度定数を指し、koffは、例えば抗原へのペプチドの、解離を指す。konおよびkoffは、BIAcore(登録商標)またはKinExAのような、当業者に公知の技術によって決定することができる。
【0056】
本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。特定の態様において、本明細書において開示されているペプチド内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えることができる。
【0057】
本明細書において使用される場合、「エピトープ」は、当技術分野における用語であり、ペプチドが特異的に結合することができる抗原の局所的な領域を指す。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続アミノ酸であり得(線状または連続エピトープ)、または、エピトープは、例えば、2つ以上のポリペプチド非連続領域またはポリペプチドから一緒になり得る(コンフォーメーショナル、非線状、不連続、または非連続エピトープ)。特定の態様において、本明細書において開示されているペプチドが結合するエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISAアッセイ、水素/重水素交換-質量分析(例えば、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレー質量分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャニングアッセイ、および/または変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)によって決定することができる。X線結晶学について、当技術分野における公知方法のいずれかを使用して、結晶化が達成され得る(例えば、Giege R et al., (1994) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt 4): 339-350; McPherson A (1990) Eur J Biochem 189: 1-23; Chayen NE (1997) Structure 5: 1269-1274; McPherson A (1976) J Biol Chem 251: 6300-6303)。
【0058】
用語「核酸分子」は、本明細書において使用される場合、DNA分子およびRNA分子を含むように意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得、cDNAであり得る。
【0059】
用語「下流」は、参照ヌクレオチド配列に対して3'側に位置するヌクレオチド配列を指す。「下流」はまた、参照ペプチド配列に対してC末端側に位置するペプチド配列を指す場合もある。
【0060】
用語「上流」は、参照ヌクレオチド配列に対して5'側に位置するヌクレオチド配列を指す。「上流」はまた、参照ペプチド配列に対してN末端側に位置するペプチド配列を指す場合もある。
【0061】
核酸について、用語「実質的な相同性」は、2つの核酸、またはそれらの指定される配列が、最適に整列されて比較された場合に、適切なヌクレオチド挿入または欠失を有するが、ヌクレオチドの少なくとも約80%、少なくとも約90%~95%、またはヌクレオチドの少なくとも約98%~99.5%において、同一であることを示す。あるいは、実質的な相同性は、セグメントが鎖の相補体と選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合に存在する。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「調節領域」は、コード領域の上流(5'非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3'非コード配列)に位置し、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を与える、ヌクレオチド配列を指す。調節領域は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含み得る。コード領域が真核細胞中の発現に意図される場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列が、通常、コード配列の3'にある。
【0063】
遺伝子産物(例えばポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のコード領域と機能的に連結されたプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含み得る。プロモーターに加えて、他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルもまた、遺伝子産物発現を指示するためにコード領域と機能的に連結され得る。
【0064】
様々な転写制御領域が当業者に公知である。これらとしては、非限定的に、脊椎動物細胞中において機能する、転写制御領域、例えば、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(イントロン-Aと共の、前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントが挙げられる。他の転写制御領域としては、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来するもの、ならびに真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列が挙げられる。追加の好適な転写制御領域としては、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる)。
【0065】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにピコルナウイルス由来のエレメント(特に、CITE配列とも称される、内部リボソーム侵入部位、またはIRES)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
用語「配列同一性パーセント」、「同一性パーセント」、「配列同一性」、または「同一性」は、交換可能に使用され、2つの配列の最適なアライメントのために導入されなければならない付加または欠失(即ち、ギャップ)を考慮して、比較ウィンドウにわたって2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間で共有される同一のマッチした位置の数を指す。マッチした位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的配列および参照配列の両方において提示される任意の位置である。ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸ではないため、標的配列中に提示されるギャップはカウントされない。同様に、参照配列からのヌクレオチドまたはアミノ酸ではない、標的配列ヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされるため、参照配列中に提示されるギャップはカウントされない。
【0067】
2つの配列間での配列の比較および同一性パーセントの決定は、下記の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0068】
配列同一性のパーセンテージは、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が両方の配列内に発生する位置の数を決定し、マッチした位置の数を得ること、マッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割ること、およびその結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。2つの配列間の配列の比較および配列同一性パーセントの決定は、オンライン利用およびダウンロードの両方において容易に入手可能なソフトウェアを用いて達成され得る。好適なソフトウェアプログラムは、種々の供給源から、またタンパク質およびヌクレオチド配列の両方のアラインメントのために入手可能である。配列同一性パーセントを決定するための1つの好適なプログラムは、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを用いて2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは、核酸配列を比較するために用いられる一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために用いられる。他の好適なプログラムは、例えば、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSパッケージプログラムの一部であるNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、さらにEuropean Bioinformatics Institute (EBI)、www.ebi.ac.uk/Tools/psaから入手可能である。
【0069】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一ポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それら自体の配列同一性パーセントをそれぞれ有し得る。配列同一性パーセントの値は最も近い小数第1位に丸められることが留意される。例えば、80.11、80.12、80.13、および80.14は、80.1に丸められる一方、80.15、80.16、80.17、80.18、および80.19は、80.2まで丸められる。長さ値は常に整数であることも留意される。
【0070】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70、または80のギャップ重みおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ(worldwideweb.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. Meyers and W. Miller (CABIOS, 4: 11-17 (1989))のアルゴリズムを用い、PAM120残基重み表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いて決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを用い、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みを用いて決定することができる。
【0071】
本明細書に記載されている核酸およびタンパク質配列は、公のデータベースに対して検索を行い、例えば、関連する配列を同定するために、「クエリー配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書に記載されている核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によって行われ得る。BLASTタンパク質検索は、本明細書に記載されているタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によって行われ得る。比較目的のためにギャップ付きアラインメントを得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記述されるように、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。worldwideweb.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0072】
核酸は、細胞全体中に、細胞溶解物中に、または部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態で、存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野において周知の他のものを含む、標準技術によって、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞性核酸(例えば、染色体の他の部分)またはタンパク質から離れて精製されている場合、「単離されている」または「実質的に純粋にされている」。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照されたい。
【0073】
核酸(例えば、cDNA)は、遺伝子配列を提供するために、標準技術に従って、変異させることができる。コード配列について、これらの変異は、望まれるように、アミノ酸配列に影響を与えることができる。特に、天然V、D、J、定常、スイッチおよび本明細書に記載されている他のそのような配列に対して実質的に相同なまたはこれらから誘導されるDNA配列が意図される(ここで、「誘導される」は、配列が、同一であるかまたは別の配列から改変されることを示す)。
【0074】
用語「ベクター」は、本明細書において使用される場合、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すように意図される。あるタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム中へライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中において自己複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入されると宿主細胞のゲノムへ組込まれ得、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書中、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用することができる。しかし、等価な機能に役立つ、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの、発現ベクターの他の形態も含まれる。
【0075】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において使用される場合、細胞中に天然には存在しない核酸を含む細胞を指すように意図され、組換え発現ベクターが導入された細胞であり得る。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが理解されるべきである。変異または環境的影響のいずれかに起因して後世において特定の改変が生じ得るため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書において使用される場合、用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。例示的な宿主細胞としては、原核細胞(例えば、大腸菌)、あるいは、真核細胞、例えば、真菌細胞(例えば、酵母細胞、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、またはシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、および様々な動物細胞、例えば、昆虫細胞(例えば、Sf-9)または哺乳動物細胞(例えば、HEK293F、CHO、COS-7、NIH-3T3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
句「アミノ酸のすぐ下流」は、本明細書において使用される場合、当該アミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、句「アミノ酸のすぐ上流」は、当該アミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。従って、句「挿入部位の2つのアミノ酸の間」は、本明細書において使用される場合、異種部分(例えば、半減期延長部分)が、2つの隣接するアミノ酸の間に挿入される位置を指す。
【0077】
「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、本明細書において使用される場合、例えば、疾患または病態の重症度の低下;病態経過期間の短縮;疾患または病態に関連する1つまたは複数の症状の改善または除去;疾患または病態を有する対象への有利な効果の提供(必ずしも疾患または病態が治癒するわけではない)を指す。
【0078】
本明細書において使用される場合、「投与する」は、当業者に公知の様々な方法および送達システムのいずれかを使用する、対象への治療剤を含む組成物の物理的な導入を指す。本明細書に記載されているペプチドについての種々の投与経路としては、例えば、注射もしくは注入による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。句「非経口投与」は、本明細書において使用される場合、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、非限定的に、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。あるいは、本明細書に記載されているペプチドは、非経口ではない経路、例えば、局所、表皮または粘膜投与経路によって、例えば、鼻腔内に、経口的に、経膣的に、直腸に、舌下にまたは局所的に、投与することができる。投与はまた、例えば、1回、複数回、かつ/または1つもしくは複数の長期間にわたって、行うことができる。
【0079】
「ワクチン」によって、対象において特異的な免疫反応(または免疫原性反応)を刺激するために有用な組成物が意図される。いくつかの態様において、免疫原性反応は、予防的であり、または防御免疫を提供する。例えば、病原性生物の場合、ワクチンは、対象が、ワクチンが向けられる生物による感染またはこれらの生物からの疾患進行によりよく抵抗することを可能にする。あるいは、癌の場合、ワクチンは、既に発症した癌に対する対象の自然防御を強化する。これらのタイプのワクチンはまた、既存の癌のさらなる増殖を予防し、治療された癌の再発を予防し、かつ/または前の治療によって殺されなかった癌細胞を排除し得る。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「有効量」は、対象に治療法を実施する文脈において、所望の予防または治療効果を達成する治療法の量を指す。
【0081】
本明細書において使用される場合、用語「対象」および「患者」は、交換可能に使用される。対象は動物であり得る。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物、例えば、非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長動物(サルもしくはヒト)、最も好ましくはヒトである。特定の態様において、そのような用語は、非ヒト動物(例えば、非ヒト動物、例えば、ブタ、ウマ、ウシ、ネコまたはイヌ)を指す。。いくつかの態様において、そのような用語はペットまたは家畜を指す。具体的な態様において、そのような用語はヒトを指す。
【0082】
本明細書において使用される場合、用語「ug」および「uM」は、それぞれ、「μg」および「μΜ」と交換可能に使用される。
【0083】
本明細書に記載されている様々な局面を以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明する。
【0084】
b.ペプチド
本開示はまた、保存されたヘビ毒素成分に強力に結合し、毒素の毒性を中和する、ファージ発現ペプチドを同定する。いくつかの態様において、保存されたヘビ毒素成分に強力に結合するペプチドを本明細書において開示する。いくつかの態様において、毒素の毒性を中和するペプチドを本明細書において開示する。いくつかの態様において、保存されたヘビ毒素成分に強力に結合し、かつ毒素の毒性を中和する、ペプチドを本明細書において開示する。
【0085】
例えば、抗原ターゲティングに限定される抗体ベースの抗毒素療法とは異なり、本開示のファージディスプレイは、多くの異なる標的に高い特異性および親和性で結合するファージ発現ペプチドを選択するための強力なツールを提供する。これらのファージ発現ペプチドは、構造が線状または環状であり得る、短い、典型的には7~12量体の断片である。例としては環状7量体および線状12量体ペプチドが挙げられる。
【0086】
一態様において、線状7量体を本明細書において開示する。一態様において、線状8量体を本明細書において開示する。一態様において、線状9量体を本明細書において開示する。一態様において、線状10量体を本明細書において開示する。一態様において、線状11量体を本明細書において開示する。一態様において、線状12量体を本明細書において開示する。
【0087】
一態様において、環状7量体を本明細書において開示する。一態様において、環状8量体を本明細書において開示する。一態様において、環状9量体を本明細書において開示する。一態様において、環状10量体を本明細書において開示する。一態様において、環状11量体を本明細書において開示する。一態様において、環状12量体を本明細書において開示する。
【0088】
金属、糖質、およびタンパク質は、動物毒素の主成分である。本明細書において開示されているペプチドは、多くの高分子を標的とすることができる。いくつかの態様において、金属、糖質、およびタンパク質を標的とするペプチドを、本明細書において開示する。いくつかの態様において、金属および糖質を標的とするペプチドを、本明細書において開示する。いくつかの態様において、金属およびタンパク質を標的とするペプチドを、本明細書において開示する。いくつかの態様において、糖質およびタンパク質を標的とするペプチドを、本明細書において開示する。いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドは、糖質を標的とする。いくつかの態様において、タンパク質に結合するペプチドを、本明細書において開示する。一態様において、本明細書において開示されているペプチドは、金属を標的とする。
【0089】
SEQ ID NO: 1~4からなる群より選択される配列を含むペプチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:1(SPLHKTM; Ph.D.-C7C-6とも称される)を含むペプチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:2(SGMKKTK;Ph.D.-C7C-7とも称される)を含むペプチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:3(KTTKMGL;Ph.D.-C7C-9とも称される)を含むペプチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:4(KLIHGNGVMDEG;Ph.D.-12-2またはPh.D.-12-7とも称される)を含むペプチドを、本明細書において開示する。
【0090】
いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1~4の生物学的活性バリアントを、本明細書において開示する。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1~4の生物学的活性断片およびバリアントは、SEQ ID NO:1~4に記載の配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を含む。
【0091】
いくつかの態様において、生物学的活性バリアントは、SEQ ID NO: 1~4と比較して1つまたは複数の追加のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、生物学的活性バリアントは、SEQ ID NO: 1~4と比較して1つまたはより少ないアミノ酸を含む。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドの生物学的バリアントは1つまたは複数の変異を含む。いくつかの態様において、変異は置換変異である。いくつかの態様において、置換は、タンパク質のフォールディングおよびまたは活性化に影響を与えないアミノ酸の保存的置換である。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリンおよびメチオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ならびに小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、およびトレオニン)からなる群に属する。特異的活性を概ね変えないアミノ酸置換は、本発明の技術分野において公知である。最も一般的な生じる変更は、Ala/Ser、Vai/IIe、Asp/Giu、Thr/Ser、Ala/Giy、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Giy、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/IIe、Leu/Val、Ala/Giu、Asp/Giy、およびそれらの反対の変更である。
【0093】
いくつかの態様において、SEQ ID NO:1~4の逆コンセンサスペプチド配列を本明細書において開示する。一態様において、逆コンセンサスペプチド配列はSEQ ID NO:9を含む。一態様において、逆コンセンサスペプチド配列はSEQ ID NO:10を含む。一態様において、逆コンセンサスペプチド配列はSEQ ID NO:11を含む。一態様において、逆コンセンサスペプチド配列はSEQ ID NO:12を含む。
【0094】
本開示の別の態様において、コンセンサス配列SEQ ID NO:1~4の逆配列を有するペプチドが、咬傷または刺傷の診断キットを開発するために使用される。当該キットは下記においてより詳細に説明される。
【0095】
(表1)選択されたモノクローナルファージから提示されたペプチドのペプチド配列およびヌクレオチド配列(逆コンセンサス配列)
【0096】
大抵の抗体ベースの溶液は、特別な貯蔵条件、または、凍結乾燥されている場合は、投与前の再構成のいずれかを必要とし;これらは両方とも、動物毒物注入がしばしば生じる遠く離れた簡素な条件におけるそれらの有用性を減じる。特別な貯蔵条件を必要としないペプチド溶液を本明細書において開示する。
【0097】
いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドは室温で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-80℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-80℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-70℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-60℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-50℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-40℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-30℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-20℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは-10℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは0℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは10℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは20℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは30℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは40℃で安定である。一部の態様において、本明細書において開示されているペプチドは50℃で安定である。
【0098】
一態様において、本明細書において開示されているペプチドは、ウェスタン・コットンマウスヘビのPLA2コンセンサスペプチドを含む。具体的な態様において、a.p.ロイコストーマヘビからの毒素を合成し、Ph.D.(商標)-7、Ph.D.(商標)-12、およびPh.D(商標)-C7Cファージディスプレイペプチドライブラリー(New England BIOLABS(登録商標), Inc., Ipswich, MA)によってスクリーニングした。下記に説明されるように、PLA2活性の35~60%を阻害した4つのユニークなモノクローナル抗-PLA2ファージクローンを選択した。
【0099】
c.ペプチド製造
本開示の一態様のM13ファージは、共通の病原性関連配列を欠失している特殊な大腸菌K12 ER2738中において低費用でかつ安全に増殖することができる。結果として生じる産物は、抗血清よりも効率的に精製することができる。
【0100】
本開示の方法を使用する特定の抗毒素製剤の開発は、特定の要求へのカスタマゼーションを可能にするために十分に高速かつ単純である。選択の1サイクルは1週間を要し、候補ファージの選択全体は、およそ2~6ヶ月で完了させることができる。本開示に従うファージベースの解毒薬の合成は、大型のまたは危険な動物を必要とするのではなく、非病原性の大腸菌株を利用することができるため、そのような動物を実験室設定で維持する危険性および負担が回避される。
【0101】
ウェスタン・コットンマウス毒素におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列に基づくペプチド標的設計は、従って、ファージディスプレイライブラリーの親和性分割についての有用な標的を提供する。ELISA試験を使用するペプチド親和性アッセイおよび毒素成分(PLA2またはプロテアーゼ)活性アッセイは、ディスプレイファージベースの抗毒素の妥当性を評価するために使用することができる。エピトープターゲティングへのインシリカアプローチは、特定の属中のPLA2のターゲティングのような、タンパク質ファミリーまたはスーパーファミリーのユビキタスターゲティングを可能にする。PLA2活性領域は、A.ピスコヴォルス(A. piscovorus)種において約95%の相同性を有する。標的配列のランダムターゲティングは、異なる機構によって活性を阻害する可変モチーフを発現するいくつかのバインダーを生じさせ、より強力な抑制効果をもたらす。北米に一般的な毒ヘビへ拡大した場合、現在のPLA2構築物の相同性は、ニシダイヤガラガラヘビ(Western Diamondback Rattlesnake)(クロタルス・アトロクス(Crotalus atrox))において僅か56%に低下する。北米における5種の最も一般的な毒ヘビの相同領域を含むように標的配列を再定義することによって、コンセンサスを97%へ上昇させることができる。ペプチドファミリーのこれらの相同領域中の保存された活性部位および金属結合部位を模倣するように標的ペプチドをさらに定義することは、従って、汎用性抗毒素を開発する改善方法を提供する。それらの構造的および機能的関係は一般的に知られるようになった。しかし、この知識は、抗体ベースの抗毒素製造方法の制限に起因して、汎用性抗毒素の開発を促進しなかった。しかし、本開示のファージ-ディスプレイ法は、BlastXアルゴリズムを使用する類似性検索の結果を使用して実施することができる。毒素配列は、次いで、ファージベースの抗毒素の開発のための標的ペプチドとして分類および使用することができる。従って、任意の爬虫類動物、クモ形類動物、クラゲ、または他の有毒動物のコンセンサス配列を標的とする汎用性抗毒素を開発することができる。
【0102】
いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドを製造する方法を、本明細書において開示する。方法は、ウェスタン・コットンマウス毒素におけるコンセンサスPLA2タンパク質配列に基づくペプチド標的を同定し、ファージディスプレイパニングのための標的を提供する工程;北米における少なくとも5種の一般的な毒ヘビの相同領域を含むように標的配列を再定義する工程;および保存された活性部位を標的とすることによってペプチドファミリーの相同領域を模倣するように標的ペプチドを再定義する工程を含む。
【0103】
例示的な北米のヘビとしては、ヒガシダイヤガラガラヘビ(Eastern Diamondback Rattlesnake)(クロタルス・アダマンテウス(Crotalus adamanteus));ニシダイヤガラガラヘビ(クロタルス・アトロクス);ニシサンゴヘビ(Western coral snake)(ミクルロイデス・エウリキサンツス(Micruroides euryxanthus));ヒガシサンゴヘビ(Eastern coral snake)(ミクルルス・フルビウス(Micrurus fulvius))サンゴヘビ;カパーヘッド(copperhead)(アグキストロドン・コントルトリックス(Agkistrodon contortrix));ヌママムシ(cottonmouth);セグロウミヘビ(yellowbelly sea snake)(ペラミス・プラツラ(Pelamis platura));ヨコシマガラガラヘビ(timber rattlesnake)(クロタルス・ホリダス(Crotalus horridus));モハベガラガラヘビ(Mojave rattler)(クロタルス・スクツラツス(Crotalus scutulatus));および黒ガラガラヘビ(black rattlesnake)(シストルルス・カテナツス(Sistrurus catenatus))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
d.ポリヌクレオチド
特定の局面において、保存されたヘビ毒素成分に結合し、毒素の毒性を中和する、本明細書に記載されているペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを、本明細書において提供する。いくつかの態様において、ポリを本明細書において開示する(disclosed herein are poly)。
【0105】
SEQ ID NO: 5~8からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:5を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:6を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:7を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:8を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。
【0106】
SEQ ID NO: 13~16からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチドを、本明細書においてさらに開示する。一態様において、SEQ ID NO:13を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:14を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:15を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:16を含むポリヌクレオチドを、本明細書において開示する。
【0107】
本明細書において提供されるペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、ならびにそのようなポリヌクレオチド配列を含むベクター、例えば、宿主細胞におけるそれらの効率的な発現のための発現ベクター、例えば、M13バクテリオファージを、本明細書において提供する。
【0108】
本明細書において使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチドまたは核酸分子は、核酸分子の天然供給源(例えば、マウスまたはヒト)に存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、組換え技術によって製造された場合、他の細胞物質または培養培地を実質的に含まないことができ、または、化学合成された場合、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まないことができる。例えば、「実質的に含まない」という言葉は、約15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満(特に約10%未満)の他の材料、例えば、細胞物質、培養培地、他の核酸分子、化学前駆体および/または他の化学物質を有する、ポリヌクレオチドまたは核酸分子の調製物を含む。具体的な態様において、本明細書に記載されているペプチドをコードする核酸分子は単離または精製されている。
【0109】
例えば、コドン/RNA最適化、異種シグナル配列での置換、およびmRNA不安定性エレメントの除去によって、最適化されている、SEQ ID NO: 1~4およびSEQ ID NO: 13~16を含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本明細書においてさらに提供する。コドン変更を導入しかつ/またはmRNA中の阻害性領域を除去することによって、組換え発現についての本明細書において開示されているペプチドをコードする最適化された核酸を作製する方法は、例えば、米国特許第5,965,726号;同第6,174,666号;同第6,291,664号;同第6,414,132号;および同第6,794,498号に記載される最適化方法を相応に適合させることによって実施することができる。例えば、RNA内の潜在的スプライス部位および不安定性エレメント(例えば、A/TまたはA/Uリッチエレメント)を、核酸配列によってコードされるアミノ酸を改変することなく変異させて、組換え発現のためにRNAの安定性を増大させることができる。改変は、例えば、同一のアミノ酸に対する代替コドンを用いる遺伝暗号の縮重を利用する。いくつかの態様において、1つまたは複数のコドンを、保存的変異、例えば、もとのアミノ酸と類似した化学構造および特性ならびに/または機能を有する類似のアミノ酸をコードするように改変することが望ましいことがある。そのような方法は、最適化されていないポリヌクレオチドによってコードされる本明細書において開示されているペプチドの発現と比べて、本明細書において開示されているペプチドの発現を、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍、またはそれより大きく増大させることができる。
【0110】
特定の態様において、本明細書において開示されているペプチドをコードする最適化されたポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載されているペプチドをコードする最適化されていないポリヌクレオチド配列のアンチセンス(例えば、相補的)ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。
【0111】
当該ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって取得することができ、当該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、当該方法によって決定することができる。本明細書に記載されているペプチドをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができ、即ち、特定のアミノ酸をコードすることが知られているヌクレオチドコドンは、当該ペプチドをコードする核酸を作製するような方法でアセンブルされる。本明細書において開示されているペプチドをコードするそのようなポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルすることができ(例えば、Kutmeier G et al., (1994), BioTechniques 17: 242-6に記載されるように)、これは、簡潔に述べると、ペプチドをコードする配列の部分を含有する重複オリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーション、その後、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を含む。
【0112】
あるいは、本明細書に記載されているペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法(例えば、PCRおよび他の分子クローニング法)を用いて、好適な供給源(例えば、ハイブリドーマ)由来の核酸から作製することができる。例えば、既知の配列の3'および5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅は、関心対象のペプチドを産生するハイブリドーマ細胞から得られるゲノムDNAを用いて実施することができる。増幅された核酸を、宿主細胞での発現用のおよびさらなるクローニング用のベクターにクローニングすることができる。
【0113】
本明細書において開示されているペプチドをコードする核酸は、化学合成するか、あるいは、配列の3'および5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅によって、または、例えば、特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて本明細書において開示されているペプチドをコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを同定するクローニングによって、好適な供給源から得ることができる。その後、PCRによって作製される増幅された核酸は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0114】
本明細書に記載されているペプチドをコードするDNAを、従来の手順を用いて(例えば、オリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離し、配列決定することができる。
【0115】
高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、またはより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されているペプチドをコードするポリヌクレオチドへハイブリダイズするポリヌクレオチドを、さらに提供する。ハイブリダイゼーション条件は当技術分野で記載されており、かつ当業者に公知である。例えば、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃での、フィルターに結合したDNAへのハイブリダイゼーション、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS中、約50~65℃での1回以上の洗浄を含むことができ;高ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、6×SSC中、約45℃での、フィルターに結合した核酸へのハイブリダイゼーション、次いで、0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄を含むことができる。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションは当業者に公知であり、記載されており、例えば、Ausubel FM et al., eds., (1989) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York、6.3.1~6.3.6および2.10.3頁を参照されたい。
【0116】
e.細胞およびベクター
特定の局面において、PLA2に特異的に結合する本明細書に記載されているペプチド(またはその抗原結合性断片)を(例えば、組換えによって)発現する細胞(例えば、宿主細胞)、ならびに関連するポリヌクレオチドおよび発現ベクターを、本明細書において提供する。宿主細胞における組換え発現のための本明細書において開示されているペプチドまたは断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)を、本明細書において提供する。本明細書に記載されているペプチドを組換え発現させるためのそのようなベクターを含む宿主細胞を、本明細書においてさらに提供する。特定の局面において、宿主細胞からそのようなペプチドを発現させる工程を含む、本明細書に記載されているペプチドを製造するための方法を、本明細書において提供する。
【0117】
いくつかの態様において、M13ファージは、本明細書において開示されているペプチドを発現する。M13ファージは、様々な結合モチーフを標的へと輸送するための送達ビヒクルとして利用される。いくつかの態様において、ファージのテールタンパク質の遺伝子改変は、様々な配列、長さ、および組成のユニークなペプチドの発現を可能にする。発現されたペプチドは、特異的エピトープに結合することができ、結合パートナーを同定するためのハイスループットシステムの基礎を形成する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:1~4からなる群より選択されるペプチドを発現する。
【0118】
いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:1を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:2を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:3を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:4を含むペプチドを発現する。
【0119】
いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:13を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:14を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:15を含むペプチドを発現する。いくつかの態様において、M13ファージは、SEQ ID NO:16を含むペプチドを発現する。
【0120】
いくつかの態様において、M13ファージは、長い血漿内半減期(t 1/2 = 4.5時間)を有する。
【0121】
本明細書において開示されているM13ファージは、pH範囲3~11で安定である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは3である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは4である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは5である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは6である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは7である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは7.4である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは8である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは9である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは10である。いくつかの態様において、M13ファージのpHは11である。
【0122】
本明細書において開示されているM13ファージはまた、80℃未満の温度に対して耐性を示す。
【0123】
本明細書において開示されているM13ファージは、特別な貯蔵条件無しで、室温で培養培地中において6ヶ月を超える半減期を有する。
【0124】
本明細書に記載されているペプチドをコードするポリヌクレオチドが得られると、ペプチド分子の産生用のベクターを、当技術分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術によって作製することができる。
【0125】
従って、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法を、本明細書に記載する。当業者に周知である方法を、タンパク質コード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法は、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換えを含む。プロモーターに機能的に連結された、本明細書に記載されているタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを、さらに提供する。
【0126】
発現ベクターは、従来の技術によって細胞(例えば、宿主細胞)へ移され得、結果として生じる細胞は、次いで、本明細書に記載されているタンパク質を産生するために、従来の技術によって培養され得る。従って、宿主細胞内のそのような配列の発現のためにプロモーターに機能的に連結された、本明細書に記載されているタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞を本明細書において提供する。
【0127】
様々な宿主-発現ベクター系が、本明細書に記載されているペプチドを発現させるために利用され得る。そのような宿主-発現系は、関心対象のコード配列が産生され、続いて精製され得るビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされたときに、本明細書に記載されているペプチドをインサイチュで発現させることができる細胞も表す。これらとしては、ペプチドコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌およびB.サブチリス(B. subtilis))などの微生物;ペプチドコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス・ピキア(Saccharomyces Pichia));ペプチドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、もしくはペプチドコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された、植物細胞系(例えば、クラミドモナス・レインハルトチイ(Chlamydomonas reinhardtii)などの緑藻類);または、哺乳動物細胞のゲノム由来(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)のプロモーターを含有する、組換え発現構築物を有する、哺乳動物細胞系(例えば、COS(例えば、COS1もしくはCOS)、CHO、BHK、MDCK、HEK 293、NS0、PER.C6、VERO、CRL7O3O、HsS78Bst、HeLa、およびNIH 3T3、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20およびBMT10細胞)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0128】
いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌である。一つの特定の態様において、宿主細胞は大腸菌K12 ER2738である。
【0129】
いくつかの態様において、本明細書に記載されているペプチドを発現させるための細胞は、ヒト細胞、例えば、ヒト細胞株である。具体的な態様において、哺乳動物発現ベクターはpOptiVEC(商標)またはpcDNA3.3である。特定の態様において、細菌細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)。
【0130】
細菌系において、多数の発現ベクターが使用され得る。例えば、ペプチド分子の薬学的組成物の作製のために、大量のそのようなペプチドが産生される予定であるとき、容易に精製されるタンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが、望ましくあり得る。そのようなベクターとしては、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruether U & Mueller-Hill B (1983) EMBO J 2: 1791-1794)(ここで、融合タンパク質が産生されるように、ペプチドコード配列がlac Zコード領域を有するフレーム内のベクターに個々にライゲーションされ得る);pINベクター(Inouye S & Inouye M (1985) Nuc Acids Res 13: 3101-3109; Van Heeke G & Schuster SM (1989) J Biol Chem 24: 5503-5509)などが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、pGEXベクターもまた、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)を用いて、融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用され得る。
【0131】
昆虫系において、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用され得る。当該ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞内で増殖する。ペプチドコード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置され得る。
【0132】
哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、関心対象のペプチドコード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列にライゲーションされ得る。次いで、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域ElまたはE3)内の挿入は、生存能力があり、感染した宿主内でペプチド分子を発現させることが可能である、組換えウイルスをもたらす(例えば、Logan J & Shenk T (1984) PNAS 81(12): 3655-9を参照されたい)。特異的な開始シグナルもまた、挿入されたペプチドコード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、全挿入物の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと一致していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の両方の種々の起源を有し得る。発現の効率性は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むことによって強化され得る(例えば、Bitter G et al., (1987) Methods Enzymol. 153: 516-544を参照されたい)。
【0133】
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、または所望の特異的な様式で遺伝子産物を修飾および処理する、宿主細胞株が選択され得る。タンパク質生成物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、開裂)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後処理および修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。発現した外来タンパク質の正確な修飾および処理を確実にするために、適切な細胞株または宿主系が選択され得る。この目的で、遺伝子産物の一次転写産物の適切な処理、グリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を処理する、真核宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、Hela、MDCK、HEK 293、NIH 3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(いかなる免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、COS(例えば、COS1またはCOS)、PER.C6、VERO、HsS78Bst、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20、BMT10およびHsS78Bst細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
具体的な態様において、本明細書に記載されているペプチドは、フコース含量が低いか、またはフコースを含まない。そのようなペプチドは、当業者に公知の技術を使用して製造され得る。例えば、ペプチドは、フコシル化の能力が不十分であるかまたは当該能力を欠いている細胞内で発現され得る。具体例において、フコース含量が低いペプチドを製造するために、α1,6-フコシルトランスフェラーゼの両方の対立遺伝子がノックアウトされた細胞株が使用され得る。Potelligent(登録商標)システム(Lonza)は、フコース含量が低いペプチドを製造するために使用され得るシステムの一例である。
【0135】
組換えタンパク質の長期高収率産生のために、安定発現細胞が作製され得る。
【0136】
特定の局面において、ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりもむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択マーカーによって制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNA/ポリヌクレオチドの導入後、遺伝子操作された細胞は、強化培地中で1~2日間増殖させることができ、次いで、選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がそれらの染色体にプラスミドを安定的に組み込み、増殖して焦点を形成することを可能にし、それは次いで、クローニングされ、細胞株へと拡大され得る。この方法は、本明細書に記載されているペプチドを発現する細胞株を遺伝子操作するために有利に使用され得る。そのような遺伝子操作された細胞株は、ペプチド分子と直接または間接的に相互作用する組成物のスクリーニングおよび評価において特に有用であり得る。
【0137】
単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(Wigler M et al., (1977) Cell 11(1): 223-32)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska EH & Szybalski W (1962) PNAS 48(12): 2026-2034)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy I et al., (1980) Cell 22(3): 817-23)が挙げられるがこれらに限定されない、多くの選択系が使用され得、遺伝子はそれぞれ、tk-、hgprt-またはaprt-細胞内で用いられ得る。また、代謝拮抗薬耐性が、以下の遺伝子の選択の基準として使用され得る。dhfr(メトトレキサートに対する耐性を付与する)(Wigler M et al., (1980) PNAS 77(6): 3567-70; O’Hare K et al., (1981) PNAS 78: 1527-31);gpt(マイコフェノール酸に対する耐性を付与する)(Mulligan RC & Berg P (1981) PNAS 78(4): 2072-6);neo(アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与する)(Wu GY & Wu CH (1991) Biotherapy 3: 87-95; Tolstoshev P (1993) Ann Rev Pharmacol Toxicol 32: 573-596; Mulligan RC (1993) Science 260: 926-932; およびMorgan RA & Anderson WF (1993) Ann Rev Biochem 62: 191-217; Nabel GJ & Felgner PL (1993) Trends Biotechnol 11(5): 211-5);ならびにhygro(ヒグロマイシンに対する耐性を付与する)(Santerre RF et al., (1984) Gene 30(1-3): 147-56)。組換えDNA技術の分野において一般的に知られている方法が、所望の組換えクローンを選択するために日常的に適用され得、そのような方法は、例えば、Ausubel FM et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); Kriegler M, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990); およびChapters 12 and 13, Dracopoli NC et al., (eds.), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994); Colbere-Garapin F et al., (1981) J Mol Biol 150: 1-14に記載され、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0138】
ペプチドの発現レベルは、ベクター増幅によって増加し得る(再考察のために、Bebbington CR & Hentschel CCG, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol. 3 (Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。ペプチドを発現させるベクター系中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物中の存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域がペプチド遺伝子と関連付けられるため、ペプチドの産生もまた増加する(Crouse GF et al., (1983) Mol Cell Biol 3: 257-66)。
【0139】
本明細書に記載されているペプチドが組換え発現によって産生されると、それは、免疫グロブリン分子の精製のための当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインAの後の特異抗原に対する親和性、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差によって、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製され得る。さらに、本明細書に記載されているペプチドは、本明細書に記載されている異種ポリペプチド配列、または本明細書に記載されてはいないが精製を促進することが当技術分野において知られている異種ポリペプチド配列と、融合され得る。
【0140】
具体的な態様において、本明細書に記載されているペプチドは、単離または精製されている。一般に、単離されたペプチドは、単離されたペプチドとは異なる抗原特異性を有する他のペプチドを実質的に含まないペプチドである。例えば、特定の態様において、本明細書に記載されているペプチドの調製物は、細胞物質および/または化学前駆体を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、ペプチドが、それが単離されるか、または組換え産生される細胞の細胞成分から分離されている、ペプチドの調製物を含む。従って、細胞物質を実質的に含まないペプチドは、約30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、もしくは0.1%未満(乾燥重量で)の異種タンパク質(本明細書において「混在タンパク質」とも称される)を有する、ペプチドおよび/またはペプチドのバリアントの調製物を含む。ペプチドが組換え産生されるとき、それはまた、一般に、培養培地を実質的に含まず、即ち、培養培地は、タンパク質調製物の約20%、10%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満の体積を表す。ペプチドが化学合成によって製造されるとき、それは、一般に、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、即ち、それは、タンパク質の合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。従って、そのようなペプチドの調製物は、約30%、20%、10%、または5%未満(乾燥重量で)の、関心対象のペプチド以外の化学前駆体または化合物を有する。具体的な態様において、本明細書に記載されているペプチドは、単離または精製されている。
【0141】
f.組成物および薬学的組成物
SEQ ID NO: 1~4およびSEQ ID NO: 9~12からなる群より選択される配列を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:12、またはそれらの任意の組み合わせを含むペプチドを含む組成物を、本明細書においてさらに開示する。
【0142】
一態様において、SEQ ID NO:1を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:2を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:3を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:4を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:9を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:10を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:11を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。一態様において、SEQ ID NO:12を含むペプチドを含む組成物を、本明細書において開示する。
【0143】
いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドは、ナノ粒子のような様々な代替の送達システムを用いて製剤化される。いくつかの態様において、ナノ粒子および本明細書において開示されているペプチドを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、本開示は、リポソームナノ粒子の水性分散液および本明細書において開示されているペプチドを含む、水性リポソームナノ粒子組成物を提供する。いくつかの態様において、ナノ粒子は、本明細書において開示されているペプチドを封入する。いくつかの態様において、本明細書において開示されているペプチドは、予め形成されたリポソーム組成物に添加される。他の態様において、本明細書において開示されているペプチドは、リポソームの形成中にリポソーム内に組み込まれる。
【0144】
生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PA)中に所望の純度を有する本明細書に記載されているペプチドを含む組成物を、本明細書においてさらに提供する。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量および濃度において受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0145】
具体的な態様において、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に、本明細書に記載されているペプチド、および任意で1つまたは複数の追加の予防剤または治療剤を含む。具体的な態様において、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に、有効量の本明細書に記載されているペプチド、および任意で1つまたは複数の追加の予防剤または治療剤を含む。いくつかの態様において、ペプチドは、薬学的組成物中に含まれる唯一の活性成分である。本明細書に記載されている薬学的組成物は、保存されたヘビ毒素成分に強力に結合しかつ毒素の毒性を中和することにおいて有用であり得る。
【0146】
非経口調製物で使用される薬学的に許容される担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝液、酸化防止剤、局部麻酔剤、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学的に許容される物質が挙げられる。水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、および乳酸加リンガー注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物由来の凝固油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、およびピーナッツ油が挙げられる。静菌性または静真菌性濃度の抗菌薬は、多用量容器に充填される非経口調製物に添加され得、それは、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムを含む。等張剤としては、塩化ナトリウムおよびデキストロースが挙げられる。緩衝液としては、リン酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。酸化防止剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局部麻酔剤としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤またはキレート剤としては、EDTAが挙げられる。薬学的担体としてはまた、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール、ならびにpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸も挙げられる。
【0147】
薬学的組成物は、対象への任意の投与経路のために製剤化され得る。投与経路の具体例としては、鼻腔内、経口、経肺、経皮、皮内、および非経口が挙げられる。皮下、筋肉内、または静脈内注射のいずれかを特徴とする非経口投与もまた、本明細書において企図される。注射剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態として、または乳剤としてのいずれかの従来の形態で調製され得る。注射剤、溶液、および乳剤はまた、1つまたは複数の賦形剤を含有する。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールである。加えて、必要に応じて、投与される薬学的組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、ならびに例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミンオレエート、およびシクロデキストリンなどの他の薬剤などの少量の非毒性補助物質を含有することができる。
【0148】
本明細書において開示されているペプチドを含む組成物の非経口投与のための調製物としては、注射できる状態の滅菌溶液、滅菌乾燥可溶性生成物、例えば、皮下注射用錠剤を含む、使用直前に溶媒と混合される状態の凍結乾燥粉末、注射できる状態の滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと混合される状態の滅菌乾燥不溶性生成物、および滅菌乳剤が挙げられる。溶液は水性または非水性のいずれであってもよい。
【0149】
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどの増粘剤および可溶化剤を含有する溶液、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0150】
本明細書において開示されているペプチドを含む組成物を含む局所混合物は、局所および全身投与に関して記載されるように調製される。得られる混合物は、溶液、懸濁液、乳剤などであり得、クリーム、ゲル、軟膏、乳剤、溶液、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、発泡体、エアロゾル、洗浄液、スプレー、坐薬、包帯、皮膚パッチ、または局所投与に好適な任意の他の製剤として製剤化され得る。
【0151】
本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、ゲル、クリーム、およびローションの形態で、皮膚および眼などの粘膜への局所適用など、局部または局所適用のために、かつ眼への適用のために、または槽内もしくは髄腔内適用のために製剤化され得る。局所投与は、経皮送達のために、かつ眼もしくは粘膜への投与のために、または吸入療法のために企図される。単独での、または他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた、ペプチドの点鼻液もまた投与され得る。
【0152】
イオン導入および電気泳動装置を含む経皮パッチは、当業者に周知であり、本明細書において開示されているペプチドを投与するために使用することができる。例えば、そのようなパッチは、米国特許第6,267,983号、同第6,261,595号、同第6,256,533号、同第6,167,301号、同第6,024,975号、同第6,010715号、同第5,985,317号、同第5,983,134号、同第5,948,433号、および同第5,860,957号に開示されており、これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0153】
特定の態様において、本明細書に記載されているペプチドを含む薬学的組成物は、溶液、乳剤、および他の混合物としての投与のために再構成され得る、凍結乾燥粉末である。それはまた、固体またはゲルとしても再構成および製剤化され得る。凍結乾燥粉末は、好適な溶媒中に、本明細書に記載されているペプチド、またはその薬学的に許容される誘導体を溶解することによって調製される。いくつかの態様において、凍結乾燥粉末は無菌である。溶媒は、粉末または粉末から調製された再構成溶液の安定性または他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有してもよい。使用され得る賦形剤としては、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、または他の好適な薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。溶媒はまた、一態様においてほぼ中性のpHの、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または当業者に公知の他のそのような緩衝液などの緩衝液を含有してもよい。当業者に公知の標準的な条件下での溶液の後続の除菌濾過、続く凍結乾燥は、所望の製剤を提供する。一態様において、得られる溶液は、凍結乾燥のためのバイアル瓶に分配される。各バイアル瓶は、単回投与量または複数回投与量の化合物を含有する。凍結乾燥粉末は、約4℃~室温などの適切な条件下で保管され得る。
【0154】
注射用水を用いたこの凍結乾燥粉末の再構成は、非経口投与で使用するための製剤を提供する。再構成のために、凍結乾燥粉末は、滅菌水または他の好適な担体へ添加される。正確な量は、選択された化合物によって決まる。そのような量は経験的に決定することができる。
【0155】
本明細書に記載されているペプチドおよび本明細書において提供される他の組成物はまた、治療される対象の身体の特定の組織、受容体、または他の領域を標的とするように製剤化され得る。多くのそのようなターゲティング方法が当業者に周知である。全てのそのようなターゲティング方法は、本組成物で使用するために本明細書において企図される。ターゲティング方法の非限定的な例に関して、例えば、米国特許第6,316,652号、同第6,274,552号、同第6,271,359号、同第6,253,872号、同第6,139,865号、同第6,131,570号、同第6,120,751号、同第6,071,495号、同第6,060,082号、同第6,048,736号、同第6,039,975号、同第6,004,534号、同第5,985,307号、同第5,972,366号、同第5,900,252号、同第5,840,674号、同第5,759,542号および同第5,709,874号を参照されたい;これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0156】
インビボでの投与に使用される組成物は、無菌であり得る。これは、例えば、除菌濾過膜を通じた濾過によって容易に達成される。
【0157】
g.使用および方法
本開示は、汎用性抗毒素を作製するための改善された方法に関する。当該改善された方法によって、ファージディスプレイ技術は、多くの異なる毒素標的に高い特異性および親和性で結合することができるファージ発現ペプチドを選択するための代替ツールを提供する。
【0158】
本明細書において開示されている新規の方法は、先行技術において公知のいかなる抗毒素製造方法と比べても、より低い製造コスト、より短い合成時間で、有害反応がより少ない抗毒素を生じさせる。さらに、本方法によって製造された抗毒素は、周囲温度における液体形態での長期保管において安定であり、これは、抗毒素については不可能であると以前は考えられていた特徴である。
【0159】
h.検出および診断用途
前記のアミノ酸配列、阻害効果、および異種間反応性を評価した。
【0160】
この新規アプローチは、汎用性抗毒素に加えて、ヘルパーファージ、ベクター再クローニング、および追加の単鎖可変領域フラグメント(scFv)抗体精製ステップの必要性を取り除く。
【0161】
本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、またはウェスタンブロット法のような、イムノアッセイを含む、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を使用して、生物学的試料中の毒素レベルをアッセイするために使用することができる。好適な抗体アッセイ標識が当技術分野において公知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99Tc);発光標識、例えば、ルミノール;ならびに蛍光標識、例えば、フルオレセインおよびローダミン、ならびにビオチンが挙げられる。このような標識を、本明細書において開示されているペプチドまたはペプチドを含む組成物を標識するために使用することができる。
【0162】
検出可能な毒素レベルについてのアッセイは、直接的(例えば、絶対的な毒素レベルを測定または推定することによって)または相対的(例えば、第2の生物学的試料中の疾患関連毒素レベルと比較することによって)のいずれかで、第1の生物学的試料中の毒素のレベルを定性的または定量的に測定または推定することを含むように意図される。第1の生物学的試料中の毒素レベルは、測定または推定され、基準毒素レベルと比較され得、基準は、有毒な咬傷に曝露されなかった個体から得られた第2の生物学的試料から得られるか、または毒素に曝露されなかった個体の集団からのレベルを平均することによって決定される。当技術分野において認識されるように、「基準」毒素レベルが分かると、それを比較基準として繰り返し使用することができる。
【0163】
本明細書において使用される場合、用語「生物学的試料」は、本明細書において開示されているペプチドを潜在的に発現する対象、細胞株、組織、または他の供給源から得られた任意の生物学的試料を指す。動物(例えばヒト)から組織バイオプシーおよび体液を得るための方法は、当技術分野において周知である。生物学的試料は末梢血単核球を含む。
【0164】
本明細書において開示されているペプチド、または本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、本明細書に基づいて、当業者に周知かつ標準のインビトロおよびインビボでの用途を含む、予後、診断、モニタリング、およびスクリーニング用途に使用され得る。免疫系の状態および/または免疫反応のインビトロでの評定および評価のための予後、診断、モニタリング、およびスクリーニングのアッセイおよびキットは、有毒な咬傷を有することが既知であるかまたは有毒な咬傷に曝露された疑いがある患者試料を含む患者試料を予測、診断、およびモニタリングして評価するために、または、予想されるもしくは望まれる免疫系反応もしくは抗原反応に関して、利用され得る。
【0165】
一態様において、本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、生検試料の免疫組織化学に使用することができる。
【0166】
別の態様において、本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、PLA2のレベルを検出するために使用され得る。本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、検出可能なまたは機能的な標識を保持し得る。蛍光標識が使用される場合、当技術分野において公知の現在利用可能な顕微鏡検査および蛍光活性化細胞選別装置分析(FACS)または両方の方法手順の組み合わせが、特異的結合メンバーを同定および定量するために利用され得る。本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、蛍光標識を保持し得る。例示的な蛍光標識としては、例えば、反応性およびコンジュゲートされたプローブ、例えば、アミノクマリン、フルオレセインおよびTexas red、Alexa Fluor色素、Cy色素およびDyLight色素が挙げられる。本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、放射性標識、例えば、同位体、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、90Y、99Tc、111In、117Lu、121I、124I、125I、131I、198Au、211At、213Bi、225Acおよび186Reを保持し得る。放射性標識が使用される場合、当技術分野において公知の現在利用可能な計数手順が、PLA2への、本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物の特異的結合を同定および定量するために利用され得る。標識が酵素である場合、検出は、当技術分野において公知の現在利用されている比色定量、分光測光、蛍光分光測光(fluorospectrophotometric)、電流測定、またはガス定量技術のいずれかによって達成され得る。これは、本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物とPLA2との間での複合体の形成を可能にする条件下で、試料または対照試料を本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物と接触させることによって達成することができる。試料および対照において、本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物とPLA2との間で形成される任意の複合体が、検出および比較される。本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物はまた、免疫親和性精製によってPLA2を精製するために使用され得る。
【0167】
例えばPLA2の存在の程度の定量分析のために試験キットの形態で作製され得るアッセイシステムが、本明細書にさらに含まれる。システムまたは試験キットは、標識された成分、例えば、標識された抗体、および1つまたは複数の追加の免疫化学試薬を含み得る。例えば、キットの詳細については下記(h)を参照されたい。
【0168】
i.治療的使用および方法
いくつかの態様において、ペプチドはヘビ毒素に結合し、毒素の毒性を中和する。いくつかの態様において、ペプチドはPLA2に結合し、毒素の毒性を中和する。また、M13ファージは、抗体ベースの抗血清療法で生じ得る有害反応(例えば、血清病)無しで身体から取り除くことができる。本開示の方法は、有毒動物の任意の特定のサブセットに対して汎用性の抗毒素であって、抗体ベースの治療法が許容不可能な条件下で安定な抗毒素を、迅速かつ容易にカスタム設計するように実施することができる。
【0169】
本明細書において開示されているペプチド、または本明細書において開示されているペプチドを含む組成物は、様々な経路によって対象に送達することができる。いくつかの態様において、ペプチドまたは組成物は、非経口、鼻腔内、気管内、経口、皮内、局所、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、腫瘍内、結膜、および皮下経路によって送達される。例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびスプレーとしての使用のためのエアロゾル化剤を含む製剤によって、経肺投与もまた用いることができる。
【0170】
本明細書において開示されているペプチドまたは本明細書において開示されているペプチドを含む組成物の、病態の治療および/または予防に有効な量は、疾患の性質に依存し、標準の臨床技術によって決定することができる。
【0171】
組成物中に用いられるべき正確な用量は、投与経路、およびそれによって引き起こされる感染症または疾患の重症度にも依存し、医師の判断および各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量はまた、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態(年齢、体重、および健康状態を含む)、患者がヒトであるかもしくは動物であるか、投与される他の薬物、または処置が予防的であるかもしくは治療的であるかに依存して、変動し得る。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置することができる。処置投薬量は、安全性および効能を最適化するように最適に用量設定される。
【0172】
特定の態様において、最適な投薬量範囲を特定するのを助けるために、インビトロアッセイが用いられる。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定され得る。
【0173】
本明細書において開示されているペプチドでの受動免疫の場合、投薬量は、約0.0001~100 mg/kg患者体重、より通常は0.01~15 mg/kg患者体重の範囲内にある。例えば、投薬量は、1 mg/kg体重、10 mg/kg体重、もしくは1~10 mg/kgの範囲内、または換言すれば、70 kgの患者について、それぞれ、70 mgもしくは700 mgもしくは70~700 mgの範囲内であり得る。いくつかの態様において、患者に投与される投薬量は、約1 mg/kg~約20 mg/kg患者体重である。
【0174】
例示的な治療レジメは、単回投与または反復投与での投与を伴う。1回の投与間の間隔は、1時間に1回、1日に1回、週に1回、月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、または1年に1回であり得る。
【0175】
j.キット
いくつかの態様において、本明細書において開示されている1つまたは複数のペプチドを含むキットを本明細書において提供する。具体的な態様において、本明細書において提供される1つまたは複数のタンパク質などの、本明細書に記載されているタンパク質、核酸、または薬学的組成物の成分のうちの1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを、本明細書において提供する。いくつかの態様において、当該キットは、本明細書に記載されている薬学的組成物、および、本明細書に記載されているものなどの、任意の予防剤または治療剤を含有する。任意で、医薬または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形式の注意書きを、このような容器に付けることができ、この注意書きは、政府機関による、ヒト投与についての製造、使用、または販売の認可を反映する。
【0176】
いくつかの態様において、有毒動物咬傷のタイプおよび重症度を同定するための診断キットを本明細書において提供する。いくつかの態様において、キットは以下を含む:(a)複数のペプチド:各ペプチドは、複数種の動物毒素のうちの1つにユニークな配列を標的とする;(b)複数の標識分子:各標識分子は、複数のペプチドのうちの対応する1つにコンジュゲートされている;ならびに(c)標識分子を検出し、それによって、それぞれの標的に結合しているペプチドが提示されるように構成されている、アッセイ。
【0177】
いくつかの態様において、本開示はまた、有毒動物咬傷のタイプおよび重症度を同定するための診断キットも提供する。いくつかの態様において、当該キットは複数のペプチドを含む。いくつかの態様において、当該キットは複数の標識分子を含む。いくつかの態様において、当該キット中の各ペプチドは、ユニークな種の毒素の配列を標的とする。いくつかの態様において、当該キット中の1つまたは複数のペプチドは、同じ種の毒素にユニークな配列を標的とする。
【0178】
いくつかの態様において、キットにおいて試験される試料は血液である。具体的な態様において、キットにおいて試験される試料はヒト血液である。いくつかの態様において、試料を単離し、キット中の1つまたは複数のペプチドと接触させる。いくつかの態様において、キット中のペプチドは標識されている。
【0179】
いくつかの態様において、キットはまた、標識分子を検出し、それによって血液中のそれぞれの標的に結合されているペプチドが提示されるように構成されているアッセイも含む。いくつかの態様において、キットは、従って、どのペプチドが標的に結合したか、および結合の程度を検出することができ、それによって、何の動物種の毒素が血液中において見出されるか、および咬傷の重症度を同定することができる。
【0180】
上記の方法において使用され得るキットを、本明細書においてさらに提供する。一態様において、当該キットは、1つまたは複数の容器中に、本明細書に記載されているタンパク質、好ましくは精製されたタンパク質を含む。一態様において、当該キットは、1つまたは複数の容器中に、本明細書に記載されているタンパク質を含む組成物を含む。具体的な態様において、本明細書に記載されているキットは、実質的に単離されたタンパク質を対照として含有する。別の具体的な態様において、本明細書に記載されているキットは、汎用性の毒素抗原と反応しない対照抗体をさらに含む。別の具体的な態様において、本明細書に記載されているキットは、汎用性の毒素抗原への、タンパク質またはタンパク質を含む組成物の結合を検出するための1つまたは複数の要素を含有する(例えば、タンパク質は、検出可能な基質、例えば、蛍光性化合物、酵素基質、放射性化合物、もしくは発光化合物にコンジュゲートされ得、または、本明細書において開示されているタンパク質を認識する抗体が、検出可能な基質にコンジュゲートされ得る)。具体的な態様において、本明細書において提供されるキットは、本明細書において開示されている組換え産生されたまたは化学合成されたタンパク質を含み得る。キットにおいて提供される汎用性の毒素抗原は、固体支持体に結合されていてもよい。より具体的な態様において、上述のキットの検出手段は、汎用性の毒素抗原が結合されている固体支持体を含む。そのようなキットはまた、未結合レポーター標識抗ヒト抗体または抗マウス/ラット抗体を含むことができる。この態様において、毒素へのタンパク質の結合は、該レポーター標識抗体の結合によって検出され得る。
【0181】
以下の実施例は、例示のために提供され、限定のためではない。
【実施例
【0182】
実施例1
Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W., Lipman, D.J. (1990) Basic Local Alignment Search Tool. J. Mol. Bioi. 215:403-410)を使用して、ウェスタン・コットンマウス(A. p. ロイコストーマ)のPLA2タンパク質の配列情報を検索し、その活性部位および他のPLA2タンパク質との相同性について配列をスクリーニングした。保存された57アミノ酸からなるコンセンサスペプチドを設計し、BLASTを使用して比較し、95%以上の類似性を有する、北米における関連する5つの主な毒ヘビ種の間の配列相同性を決定した。
【0183】
標的とされるコンセンサス配列のアミノ酸の溶媒露出度を調べるために、PLA2の3D結晶構造解析を行った(IPPA- www.RCSB.org Protein Data Bank notation)。
【0184】
この57アミノ酸からなるコンセンサスペプチドは、9-フルオレニルメトキシカルボニル/tert-ブチル固相ペプチド合成法を使用して、標的ペプチドとして合成され、純度は約98%であった。次いで、それは、パニング目的のためにカスタムペプチド合成サービスによって酢酸塩の形態で沈殿させられた。
【0185】
増強パニング法を、Ph.D. Phage Display Libraryマニュアルに記載された標準的な96ウェルプレートパニングシステムの代わりに利用した。毛細管のガラス表面を標的ペプチドへ架橋し、模倣活性部位をファージディスプレイライブラリーに提示した。開裂可能な架橋剤であるSulfo-LC-SPDP[スルホスクシンイミジル 6-(3'-(2-ピリジロジチオ)プロピオンアミド)ヘキサノアート]を使用する架橋手順によって、標的ペプチドをアミノシリル化(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)ガラス毛細管に結合させた。10μ容積Microcaps毛細管(21-170°F)を高速液体クロマトグラフィー等級アセトンで洗浄し、アミノシラン試薬で処理した。シリル化ガラス毛細管を10 mM Sulfo-LC-SPDPで直接修飾した。ガラス架橋毛細管を室温(RT)で1時間インキュベートし、次いでカップリングバッファーで2回リンスした。SPDP修飾毛細管に水中10 mg/mlの標的PLA2ペプチドを充填して4℃で一晩インキュベートし、架橋反応を完了させた。10μl毛細管ファージディスプレイ選択システムを使用する利点が明らかになり、何故ならば、それは、パニング手順(次のセクション)当たり必要とされる、危険化学物質、濃縮ペプチド、およびファージライブラリーの必要量を最小限にするためである。
【0186】
次いで、Ph.D. Phage Display Librariesの説明マニュアルに由来する改変パニング法を使用して、ファージを標的タンパク質に対してパニングした。即ち、ペプチドを架橋させた10μl Microcaps毛細管を含有するチューブ回路を、Multichannel Heidolph蠕動ポンプおよびMarprene(0.5 mm口径 1.6 mm壁)チューブを使用して作製した。小さい10 J.tl容積のMicrocaps毛細管および付随するチューブ(約250μl)は、希釈ファージライブラリーの最小体積しか必要としない(パニングされる1011個のファージ分離株について247.5μlのブロッキング緩衝液中に希釈された2.5μlライブラリー)。回路をブロッキング緩衝液でコーティングし、次いで、ファージライブラリー希釈物をシステムに送り、毛細管表面上の架橋ペプチドに強力に結合するファージについて選択した。毛細管に結合されたファージを、使用したライブラリーに依存して、37℃または室温(RT)で30分間チューブ回路をインキュベートした後、Ph.D.(商標)-7およびPh.D.(商標)-12ライブラリーについては溶出バッファー[25 mMジチオトレイトール(DTT), pH 8.5]、またはPh.D.(商標)-C7Cファージライブラリー分離株については酸性溶出バッファー(0.2 Mグリシン-HCI (pH 2.2), 1 mg/ml BSA)のいずれかを使用して溶出した。溶出されたファージを捕捉し、1M Tris-HCl (pH 9.1)を使用して中和した。
【0187】
ファージを、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱法を使用して採取した。増幅されたファージストックを、1/6総体積20% PEG-8000/2.5 M NaCl溶液と混合し、次いで、50 mlオークリッジチューブ中において4℃で一晩かけて沈殿させた。冷却されたファージを、次いで、12,000 rpmにて4℃で20分間の遠心分離(Avanti JXN-30, Beckman Coulter, Brea, CA)によってペレット化した。再懸濁されたファージを、最終遠心分離実行後に収集し、PBS, pH 7.5中に再懸濁した。収集されたファージを、製造業者のマニュアルを使用して、イソプロピル-P-Dチオガラクトシド/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-P-D-ガラクトシド(50 mM IPTG I 40 mM XGAL)培地において滴定した。2回目のパニング後のポリクローナルファージ溶液を最初のPLA2阻害試験のために使用し、モノクローナルファージ分離株を軟寒天滴定プレートから個々に選んで増幅させた。
【0188】
PLA2活性の分析を、EnzChek(登録商標)PLA2 Assay Kit(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用して行った。個々のファージクローンを、1.0×1012 PFU/mlに対して標準化し、対数段階希釈した。希釈したファージを、4.88μg/ml ウェスタン・コットンマウス毒素と共に、RTで30分間インキュベートした。蛍光発光スペクトル(485 nmで励起、528 nmで発光)を、1.0分間隔で20分間測定し、反応をモニターした。ファージ阻害毒素を非阻害毒素対照と比較することによって、PLA2活性を決定した。
【0189】
図1は、ウェスタン・コットンマウス(A. p.ロイコストーマ)毒素から単離されたPLA2の、空間充填モデルで示された結晶構造を示す。残基は、黄色および赤色の円を使用して特定されており、それぞれ、触媒活性部位および金属結合アミノ酸を意味する。これらの溶媒露出残基は、ファージ結合の可能性のある部位である。この領域内に結合されたファージは、タンパク質の酵素活性を妨害し、毒素活性からの損傷を限定的なものにすることができる。
【0190】
PLA2コンセンサスペプチドに対する2回目のパニング後のファージに由来する最初のポリクローナルファージ混合物を、ウェスタン・コットンマウス毒素(4.88μg/ml)と共に30分間インキュベートした。インキュベーション後、PLA2の酵素活性を、ホスホリパーゼA2アッセイを使用して測定した。毒素のみ、ならびに1:4および1:1希釈物のトリプリケートにおける蛍光を測定した。これらの結果を図2に示す。存在したファージの量は、測定可能な蛍光の強度に影響を与えた。このポリクローナルファージ混合物に由来するモノクローナルファージ分離株を表1に列挙している。
【0191】
表1は、モノクローナルファージ分離株を、ヌクレオチド配列およびペプチド配列によって表にしている。感染細胞からファージDNAを単離して配列決定した。結果として生じたクロマトグラフを解釈し、ヌクレオチド配列を決定し、次いでこれをペプチド配列へと翻訳した。分離株Ph.D.-12-2およびPh.D.-12-5のヌクレオチド配列は同じであり、これは、このファージの複数の分離株が単離されたことを示している。繰り返されたファージのうちの1つを、繰り返しを避けるためにさらなる研究から除いた。
【0192】
(表2)選択されたモノクローナルファージ結合モチーフのヌクレオチド配列および対応するペプチド配列
選択されたモノクローナルファージから提示されたペプチドのペプチド配列およびヌクレオチド配列
【0193】
図3は、単離されたファージディスプレイライブラリーから単離されたファージクローンを使用した場合のPLA2活性の阻害を示す。単一ファージ分離株をウェスタン・コットンマウス毒素(4.88μg/ml)と共に30分間インキュベートし、その後、PLA2基質を添加した。反応をモニターし、10分に対応する時点を図3に示す。個々の分離株は、PLA2活性を35%~60%低減させた。
【0194】
図2において見られるように、存在するファージの量は、測定可能な蛍光の強度に影響を与える。ファージ対毒素の1:4希釈物は、アッセイの蛍光強度を実質的に低減させないが、ファージ対毒素の1:1希釈物の場合、蛍光シグナルの減少は濃度依存性であり;これは、より高濃度のファージはPLA2の酵素活性をさらに低減させるであろうことを示している。モノクローナルファージ分離株の阻害作用を、ポリクローナル混合物と同じ方法でアッセイした。モノクローナルファージ分離株は、同じ希釈率でのポリクローナル混合物と比べて、より大きな程度までPLA2を阻害した(図3)。個々の分離株は、阻害されていない活性の35~60%までPLA2活性を低減させた。個々のファージ分離株に多くの結合モチーフ候補が存在するため、活性領域のユニークな結合エピトープを標的とすることによって、PLA2阻害を増強することができる。従って、ファージカクテルの利用は相乗効果を有するだろう。
【0195】
図4は、選択されたタンパク質のうちの1つであるPh.D.-12-7の、5種の主な北米ヘビに対する異種間の抗PLA2活性を示す。パニング標的についてのオリジナルのコンセンサスペプチドを、全ての主な北米ガラガラヘビのPLA2の約95%の相同性を考慮して設計した。選択されたタンパク質のこの異種間反応性は、ファージディスプレイ技術を使用しての汎用性抗毒素の潜在的な開発についての最良の証拠である。
【0196】
実施例2
対象を、例えばヘビ咬傷によって、動物毒素と接触させる。それに応えて、治療有効量の、本明細書に記載されているM13ファージ発現ペプチドを含む複数種抗毒素組成物を投与する。組成物の治療投薬量を用量設定し、安全性および効能を最適化する。本明細書に記載されているファージ発現ペプチドを含む組成物の投与は、保存されたPLA2に結合することによって毒素の毒性を中和する。その後、M13ファージを有害反応無しで身体から取り除く。必要に応じて、治療有効量の、本明細書に記載されているM13ファージ発現ペプチドを含む複数種抗毒素組成物を、さらに投与する。
【0197】
実施例3
対象を、例えばヘビ咬傷によって、動物毒素と接触させる。それに応えて、治療有効量の、本明細書に記載されているM13ファージ発現ペプチドを含む複数種抗毒素組成物を投与する。組成物の治療投薬量を用量設定し、安全性および効能を最適化する。本明細書に記載されているファージ発現ペプチドを含む組成物の投与は、毒素の毒性を中和する。その後、M13ファージを有害反応無しで身体から取り除く。必要に応じて、治療有効量の、本明細書に記載されているM13ファージ発現ペプチドを含む複数種抗毒素組成物を、さらに投与する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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