(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】エチレンと1,3-ブタジエンとの官能性コポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/42 20060101AFI20230705BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20230705BHJP
C08F 236/06 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08F8/42
C08F210/02
C08F236/06
(21)【出願番号】P 2019567297
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 FR2018051305
(87)【国際公開番号】W WO2018224774
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】テュイリエ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラファキエール ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ペリヴァン レイラ
(72)【発明者】
【氏名】マクロン ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ボワソン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ダゴスト フランク
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-515015(JP,A)
【文献】特開2014-088405(JP,A)
【文献】特表2018-536759(JP,A)
【文献】特開2004-018697(JP,A)
【文献】特表2003-514078(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014455(WO,A1)
【文献】特開2009-120758(JP,A)
【文献】特開2011-093967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン単位と、ブタジエン単位と、式(I)の環式構造の単位とを含み、鎖末端の1つにアルコキシシリルまたはシラノール官能基である官能基F
1を有する、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマー。
【化1】
(I)
【請求項2】
エチレン単位は、コポリマーの全モノマー単位の少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも65mol%を占める、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
官能基F
1が、共有結合によってコポリマーの末端単位に直接付着している、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
官能基F
1が直接付着している末端単位は、エチレン単位にまたは式(I)の環式構造の単位に結合したメチレンからなり、Si原子がメチレンに結合している、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
官能基F
1が式(III-a)または式(III-b)のものである、
Si(OR
1)
3-f(R
2)
f (III-a)
Si(OH)(R
2)
2 (III-b)
請求項1から4のいずれか1項に記載のコポリマー。
(式中、記号R
1は同一でありまたは異なり、アルキルを表し、
記号R
2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または官能基F
2によって置換されている炭化水素鎖を表し、
官能基F
2は、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基またはチオール官能基であり、前記第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護され、または保護されておらず、保護基がトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基であり、
fは0~2の範囲の整数である)
【請求項6】
記号R
1が、最大6個の炭素原子を有するアルキルを表し、かつ記号R
2が、最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、かつ官能基F
2によって置換されているアルカンジイル鎖を表す、請求項5に記載のコポリマー。
【請求項7】
記号R
1およびR
2によって表されるアルキルが、メチルまたはエチル、より優先的にはメチルである、請求項5または6に記載のコポリマー。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコポリマーを調製するための方法であって、
a)オルガノマグネシウム化合物と式(II)の部分を含むメタロセンとを含む触媒系の存在下、エチレンおよび1,3-ブタジエンのモノマー混合物を共重合させるステップ、 P
1(Cp
1)(Cp
2)Met (II)
(式中、
Metは第4族金属原子または希土類金属原子であり、
P
1は2つの基、Cp
1とCp
2とを架橋し、かつケイ素または炭素原子を含む基であり、
Cp
1およびCp
2は同一でありまたは異なり、フルオレニル基、置換フルオレニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、および置換インデニル基からなる群から選択される)
b) 官能化剤
である式(III)の化合物を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させるステップ、
Si(Fc
1)
4-g(Rc
2)
g (III)
(記号Fc
1は同一でありまたは異なり、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、
記号Rc
2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または官能基Fc
2によって置換されている炭化水素鎖を表し、
官能基Fc
2は、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基またはチオール官能基であり、前記第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護され、または保護されておらず、保護基がトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基であり、
gは0~2の範囲の整数である)
c) 必要な場合、加水分解反応させるステップ
を含む、方法。
【請求項9】
メタロセンが式(II-1)のものである、請求項8に記載の方法。
{P
1(Cp
1)(Cp
2)Met-G}
b (II-1)
(式中、
Cp
1、Cp
2、およびP
1は請求項8に定義する通りであり、
Metは希土類金属原子を表し、
記号Gは、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子X、またはボロヒドリド部分BH
4を含む基を指し、
bは1または2に等しい)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2-シクロヘキサンジイル飽和6員環部分を含み、鎖末端にアルコキシシリルまたはシラノール官能基を有する、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマーに関する。
既に入手可能な材料の範囲を広げるため、新たなポリマーを入手可能にすること、および既に存在する材料の特性を改善することは、常に有利である。新たなポリマーへの取り組みの中でも、ポリマーの修飾を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの鎖の1つの末端にアルコキシシリルまたはシラノール官能基をもたらす修飾は、アニオン重合によって合成されるポリマーについて、広く記載されている。アニオン重合によって生成したポリマー鎖の末端の修飾は、ポリマー鎖のリビングな性質に基づき、リビングな性質は、重合反応中に移動反応および停止反応がないことを表す。リビング重合は、開始剤1モル当たり、または金属1つ当たりに1つのポリマー鎖が生成するという事実によっても特徴づけられる。不均一チーグラー-ナッタ触媒系を用いた触媒的重合によって合成されるポリマーについての、アルコキシシランまたはシラノール官能基によるポリマーの鎖末端の修飾は、なおのこと記載されない。例として、ネオジムカルボキシレートを含む触媒系を用いた配位触媒によって調製される、高含有率のcis-1,4-結合を有するポリブタジエンの官能化を記載している、国際公開第2001034658号の文献を挙げることができる。
【0003】
メタロセンを含む触媒配位系による重合によって、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマーを得ることが可能になる。しかし、この重合は、アニオン重合およびチーグラーナッタ触媒による重合とは異なる化学に基づいている。第1の違いは触媒系に関するものであり、例えば文献欧州特許第1092731号、国際公開第2004035639号、および欧州特許第1954706号の文献に記載されており、典型的にはメタロセン、および共触媒、オルガノマグネシウム化合物から構成される。第2の違いは関与する反応に関するものであり、これはメタロセンの金属と共触媒のマグネシウムとの間の数多くの移動反応を含み、また、メタロセン金属による多数のコポリマー鎖の生成を可能にする。第3の違いは生成するポリマー鎖に関するものであり、排他的ではなく、不飽和ブタジエン単位と、飽和エチレン単位との両方を含む。ポリマー鎖は、飽和6員環部分、特に、エチレンおよび1,3-ブタジエンの、ポリマー鎖への一連の非常に特定的な挿入により生じる1,2-シクロヘキサンジイル部分も含有する。別の違いは、修飾される鎖末端の化学構造に関するものであり、この構造は非常に特異的な重合機構から生じる。例えば、文献ACS Catalysis, 2016, Volume 6, Issue 2, pages 1028-1036が参照されうる。これらのコポリマーの合成に関与する種および反応の特異性のため、これらのコポリマーの鎖末端における修飾、次いでこれらのコポリマーを含有するシリカ補強ゴム組成物のヒステリシスの低減を可能にするプロセスは、今日に至るまで存在しない。
【0004】
この驚くべきミクロ構造のため、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマーは、アニオン重合によって、またはチーグラーナッタ重合によって合成されたポリジエンエラストマーまたは1,3-ジエン/スチレンコポリマーとは、異なる剛直性/ヒステリシスの折衷を有する。しかし、エチレン単位が豊富なこれらのジエンコポリマーのいくつかは剛直であり、特定の用途、例えばタイヤには高すぎる場合があることが判明している剛直性を、ゴム組成物に付与する。したがって、より低い剛直性もゴム組成物に付与する新たなコポリマーを生成することに、関心が持たれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、言及した問題を解決することができるポリマーを合成するための方法を提案することである。本発明の目的はまた、開示した問題を解決することができるポリマーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の第1の主題は、エチレン単位と、ブタジエン単位と、式(I)の環式構造のUD単位とを含み、鎖末端の1つにアルコキシシリルまたはシラノール官能基、官能性基F
1を有する、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマーである。
【化1】
(I)
本発明の別の主題は、本発明によるコポリマーを合成するための方法であって、
a) オルガノマグネシウム化合物と、式(II)の部分を含むメタロセンとを含む触媒系の存在下、エチレンおよび1,3-ブタジエンのモノマー混合物を共重合させるステップ、
P
1(Cp
1)(Cp
2)Met (II)
(Metは第4族金属原子または希土類金属原子であり、
P
1は2つの基、Cp
1とCp
2とを架橋し、かつケイ素または炭素原子を含む基であり、
Cp
1およびCp
2は、同一でありまたは異なり、フルオレニル基、置換フルオレニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、および置換インデニル基からなる群から選択される)
b) 官能化剤、式(III)の化合物を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させるステップ、
Si(Fc
1)
4-g(Rc
2)
g (III)
(記号Fc
1は同一でありまたは異なり、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、
記号Rc
2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基Fc
2によって置換された炭化水素鎖を表し、
gが0~2の範囲の整数である)
c) 必要な場合、加水分解反応させるステップ、
を含む、本発明によるコポリマーを合成するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
I.本発明の詳細な説明
「aからbの間」という表現によって表記される値同士の間隔はいずれも、「a」を超え、かつ「b」より小さい値の範囲を表し(すなわち、境界値aおよびbは除外される)、一方、「a~b」という表現によって表記される値同士の間隔はいずれも、「a」から「b」までにわたる値の範囲を意味する(すなわち、厳密な境界値aおよびbを含む)。
本明細書で言及される化合物は、化石またはバイオベースの起源であってもよい。後者の場合、これらは、部分的にまたは完全に、バイオマスから生じたものでもよく、またはバイオマスから生じる再生可能な出発材料から得られるものでもよい。モノマーが特に関係している。
【0008】
本発明によるコポリマーは、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマーであるという本質的な特色を有し、このことは、コポリマーのモノマー単位が、エチレンと1,3-ブタジエンとの重合から生じるものであることを意味する。
UA単位と称するエチレン単位は、エチレンモノマーをコポリマーに挿入することによって生じ、部分-(CH2-CH2)-を有する。ブタジエン単位は、1,3-ブタジエンモノマーを、1,4または2,1挿入でコポリマーに挿入することによって生じ、それぞれ部分-CH2-CH=CH-CH2-および-CH2-CH(CH=CH2)-を有し、それぞれUBおよびUC単位と称する。
コポリマーの鎖は、エチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの、コポリマーへの非常に特定的な挿入から生じる、式(1)の環式1,2-シクロヘキサンジイル構造のUD単位も含有する。
【0009】
【化2】
(I)
定義により、コポリマー中のエチレン単位、ブタジエン単位、および環式構造のUD単位のそれぞれのモル百分率は、厳密には0を超える。
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、エチレン単位は、好ましくはコポリマーの全モノマー単位の少なくとも50mol%、より優先的には少なくとも65mol%を占める。
特定の一実施形態によれば、コポリマーは、エチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの、コポリマーへの同様に非常に特定的な挿入から生じる、式(I-1)の環式1,4-シクロヘキサンジイル構造のUE単位も含む。
【0010】
【化3】
(I-1)
好ましくは、コポリマー中に存在する単位は、下に示すモル百分率で存在する。
UA) m%のモル百分率の
【0011】
【化4】
UB) n%のモル百分率の-CH
2-CH=CH-CH
2-
UC) o%のモル百分率の-CH
2-CH(CH=CH
2)-
UD) p%のモル百分率の
【0012】
【0013】
【化6】
m、n、o、p、およびqは0~100の範囲の数値であり、
m≧50
n+o>0
p>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率は、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計は100に等しい。
より優先的には、
0<o+p≦25
o+p+q≧5
n+o>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率は、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計は100に等しい。
【0014】
さらにより優先的には、コポリマーは、以下の基準の少なくとも1つ、優先的にはこれらのすべてを有する:
m≧65
n+o+p+q≧15、好ましくはn+o+p+q≧20
12≧p+q≧2
1≧n/(o+p+q)
qが0でないとき、20≧p/q≧1である。
有利には、qは0に等しい。
【0015】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、コポリマーが好ましくは、例えばタイヤ用ゴム組成物のためのエラストマーとしてのコポリマーの使用に特に有利な最小値である、少なくとも5000g/molの、より優先的には少なくとも60000g/molの数平均モル質量(Mn)を有する。一般に、その数平均モル質量は1500000g/molを超えず、この値を超えると、コポリマーの粘性のため、コポリマーの使用が困難になりうる。好ましくは、1.10から3.00の間のMw/Mn(Mwは質量平均モル質量)に等しい、分散度Dを有する。Mn、Mw、およびDの値は、実施例セクション1に記載する方法によって測定する。
本発明によるコポリマーは、鎖末端の1つに、アルコキシシラン官能基またはシラノール官能基を有するという、別の本質的な特色も有する。本出願において、末端の一方が有するアルコキシシランまたはシラノール官能基は、本出願において、官能性基F1の名称で呼ばれる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、官能性基F1は、共有結合によってコポリマーの末端単位に直接付着しており、これはすなわち、官能基のケイ素原子が共有結合的に、コポリマーの末端単位の炭素原子に、直接結合していることを意味する。官能性基F1が直接付着している末端単位は、好ましくは、エチレン単位にまたはUD単位に結合したメチレンからなり、Si原子がメチレンに結合している。末端単位は、共重合によってコポリマー鎖に挿入された最後の単位を意味し、この単位には末端から2番目の単位が先行し、末端から2番目の単位自身には3番目の単位が先行するものとして理解されたい。
【0017】
本発明の第1の変形形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、
Si(OR1)3-f(R2)f (III-a)
記号R1は同一でありまたは異なり、アルキルを表し、
記号R2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖を表し、
fは0~2の範囲の整数である。
式(III-a)において、記号R1が、優先的には最大6個の炭素原子を有するアルキル、より優先的にはメチルまたはエチル、さらにより優先的にはメチルである。3-fが1を超える場合、記号R1は有利には同一であり、特にメチルまたはエチルであり、より詳細にはメチルである。
【0018】
本発明の第2の変形形態によれば、官能性基F1が式(III-b)のものであり、
Si(OH)(R2)2 (III-b)
記号R2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖を表す。
式(III-a)および(III-b)において記号R2によって表される炭化水素鎖の中でも、アルキル、特に最大6個の炭素原子を有するもの、優先的にはメチルまたはエチル、より優先的にはメチルを挙げることができる。
式(III-a)および(III-b)において記号R2によって表される化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖の中でも、アルカンジイル鎖、特に最大6個の炭素原子を含むもの、非常に詳細には1,3-プロパンジイル基を挙げることができるが、アルカンジイル鎖は置換基、化学官能基F2を有し、言い換えれば、アルカンジイル鎖の一方の原子価は官能基F2のため、他方の原子価はシラノールまたはアルコキシシラン官能基のケイ素原子のためである。
【0019】
式(III-a)および(III-b)において、化学官能基F2は、飽和炭化水素とは異なる基であり、化学反応に関与しうる基を意味するものと理解されたい。好適でありうる化学官能基の中でも、エーテル官能基、チオエーテル官能基、第一級、第二級または第三級アミン官能基、チオール官能基、シリル官能基を挙げることができる。第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基は、保護されていてもよく、保護されていなくてもよい。アミンおよびチオール官能基の保護基は、例えばシリル基、特にトリメチルシリル、またはtert-ブチルジメチルシリル基である。好ましくは、化学官能基F2が、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基、またはチオール官能基であり、第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護されている、または保護されていない。
式(III-a)および(III-b)において、記号R2は同一でありまたは異なり、好ましくは最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、化学官能基F2によって置換されているアルカンジイル鎖を表す。
【0020】
官能性基F1としては、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチルシリル(diethoxymethysilyl)、ジエトキシエチルシリル(diethoxyethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、3-チオプロピルジエトキシシリル、メトキシジメチルシリル、メトキシジエチルシリル、エトキシジメチルシリル(ethoxydimethysilyl)、エトキシジエチルシリル(ethoxydiethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシエチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシエチルシリル、3-アミノプロピルメトキシメチルシリル、3-アミノプロピルメトキシエチルシリル、3-アミノプロピルエトキシメチルシリル、3-アミノプロピルエトキシエチルシリル、3-チオプロピルメトキシメチルシリル、3-チオプロピルエトキシメチルシリル、3-チオプロピルメトキシエチルシリル、および3-チオプロピルエトキシエチルシリル基を挙げることができる。
【0021】
官能性基F1としては、1つおよび1つだけのエトキシまたはメトキシ官能基を含有する、上に言及した官能性基のシラノール型も挙げることができ、シラノール型は、エトキシまたはメトキシ官能基の加水分解によって得ることができる。これに関して、ジメチルシラノール、ジエチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエチルシラノール、3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、および3-チオプロピルメチルシラノール基が好適である。
官能性基F1としては、アルコキシまたはシラノール型であっても、上に言及した、シリル基によって保護された形態におけるアミンまたはチオール官能基を含む官能性基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基も挙げることができる。
【0022】
本発明の非常に優先的な実施形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、fは1に等しい。この非常に優先的な実施形態によれば、例えばジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチルシリル(diethoxymethysilyl)、ジエトキシエチルシリル(diethoxyethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピル-ジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、および3-チオプロピルジエトキシシリル基などの、R1がメチルまたはエチルである基が、非常に特に好適である。シリル基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基によって保護された、先行するリストにおいて言及した最後の4つの官能性基のアミンまたはチオール官能基を保護された形態も好適である。
【0023】
本発明のさらにより優先的な一実施形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、fは1に等しく、R1はメチルである。このさらにより優先的な実施形態によれば、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、および3-チオプロピルジメトキシシリル基、ならびにまた、トリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリルによって保護された、3-アミノプロピルジメトキシシリル、または3-チオプロピルジメトキシシリルのアミンまたはチオール官能基を保護された形態が、非常に特に好適である。
本発明によるコポリマーは、下に記載する方法によって調製されうる。
【0024】
この方法は、以下のステップ(a)および(b)、ならびに必要であればステップ(c):
a) オルガノマグネシウム化合物と式(II)の部分を含むメタロセンとを含む触媒系の存在下、エチレンおよび1,3-ブタジエンのモノマー混合物を共重合させるステップ、
P1(Cp1)(Cp2)Met (II)
(Metは第4族金属原子または希土類金属原子であり、
P1は2つの基、Cp1とCp2とを架橋し、かつケイ素または炭素原子を含む基であり、
Cp1およびCp2は同一でありまたは異なり、フルオレニル基、置換フルオレニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、および置換インデニル基からなる群から選択される)
b) 官能化剤を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させるステップ、
c) 必要な場合、加水分解反応させるステップ
を含むという本質的な特色を有する。
【0025】
ステップa)は、エチレンおよび1,3-ブタジエンのモノマー混合物の共重合である。共重合は、それぞれ触媒および共触媒として用いられる、メタロセンとオルガノマグネシウム化合物とから構成される触媒系を用いて、出願、欧州特許出願公開第1092731号、国際公開第2004035639号、および同第2007054224号に従って実施することができる。
当業者は、これらの文献に記載される重合条件を、コポリマー鎖の所望のミクロ構造とマクロ構造とを達成するように適応させる。本発明の実施形態のいずれか1つによれば、オルガノマグネシウム化合物の、メタロセンを構成している金属Metに対するモル比は、好ましくは1~100にわたる範囲、より優先的には1以上10未満である。1~10未満にわたる値の範囲は、高モル質量のコポリマーを得るために特により好ましい。
当業者はまた、重合条件および反応物質(触媒系の構成成分、モノマー)のそれぞれの濃度を、重合および各種化学反応を実施するために用いる装置(器具、反応器)に応じて適合させる。当業者に公知のように、共重合、ならびにモノマーの、触媒系の、および重合溶媒の取り扱いは、無水条件下および不活性雰囲気下で行われる。重合溶媒は、典型的には、脂肪族または芳香族炭化水素溶媒である。
【0026】
オルガノマグネシウム化合物は、少なくとも1つのC-Mg結合を有する化合物である。オルガノマグネシウム化合物としては、ジオルガノマグネシウム化合物、特にジアルキルマグネシウム化合物、およびオルガノマグネシウムハライド、特にアルキルマグネシウムハライドを挙げることができる。ジオルガノマグネシウム化合物は2つのC-Mg結合、適切な場合にはC-Mg-Cを有し、オルガノマグネシウムハライドは1つのC-Mg結合を有する。
本発明の特に優先的な一実施形態によれば、オルガノマグネシウム化合物は、Mg金属原子に結合したアルキル基を含む。これに関して、アルキルマグネシウム化合物、非常に詳細には、ジアルキルマグネシウム化合物またはアルキルマグネシウムハライド、例えばブチルオクチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、およびブチルマグネシウムクロリドなどが、特に好適である。より優先的には、オルガノマグネシウム化合物が、ジオルガノマグネシウム化合物である。オルガノマグネシウム化合物が、有利にはブチルオクチルマグネシウムである。
【0027】
置換シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニル基としては、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって、または6~12個の炭素原子を有するアリール基によって、置換されているものを挙げることができる。後者は市販されており、または容易に合成することができるため、基の選択は、置換シクロペンタジエン、フルオレン、およびインデンである、対応する分子の入手性によっても誘導される。
下の図に表すように、本出願では、シクロペンタジエニル基の場合、2(または5)位は、PがP1であろうとP2であろうと、架橋Pが付着している炭素原子に隣接する炭素原子の位置を指す。
【0028】
【化7】
2位と5位とが置換されているシクロペンタジエニル基としては、より詳細には、テトラメチルシクロペンタジエニル基を挙げることができる。
下の図に表すように、インデニル基の場合、2位は、PがP
1であろうとP
2であろうと、架橋Pが付着している炭素原子に隣接する炭素原子の位置を指す。
【0029】
【化8】
2位が置換されているインデニル基としては、より詳細には、2-メチルインデニル、または2-フェニルインデニルを挙げることができる。
置換フルオレニル基としては、より詳細には、2,7-ジ(tert-ブチル)フルオレニル、および3,6-ジ(tert-ブチル)フルオレニル基を挙げることができる。2、3、6および7位はそれぞれ、下の図に表すような環の炭素原子の位置を指し、9位は架橋Pが付着している炭素原子に対応する。
【0030】
【0031】
方法の第1の優先的な変形形態によれば、Cp1はCp2とは異なり、Cp1が置換フルオレニル基およびフルオレニル基からなる群から選択され、Cp2が、少なくとも2位と5位とが置換されているシクロペンタジエニル基、少なくとも2位が置換されているインデニル基、置換フルオレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択される。
第2の優先的な変形形態によれば、Cp1およびCp2は同一であり、2位が置換されたインデニル基、置換フルオレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択される。
有利には、式(II)において、Cp1およびCp2がそれぞれ、置換フルオレニル基またはフルオレニル基、好ましくはフルオレニル基を表す。フルオレニル基は式C13H8のものである。
【0032】
記号Metは、好ましくは、希土類金属原子を表す。希土類元素は金属であり、元素スカンジウム、イットリウム、およびランタニドを指し、原子番号は57~71の範囲であることを思い出されたい。
式(II)において、Met原子は、架橋P1によって互いに連結された、2つのCp1およびCp2基からなるリガンド分子に連結される。好ましくは、架橋の用語で表記される記号P1が式MR3R4に対応し、Mはケイ素または炭素原子、好ましくはケイ素原子を表し、R3およびR4は同一でありまたは異なり、1~20個の炭素原子を含むアルキル基を表す。より優先的には、架橋P1は式SiR3R4のものであり、R3およびR4は以前に定義した通りである。さらにより優先的には、P1は式SiMe2に対応する。
本発明の優先的な一実施形態によれば、メタロセンは式(II-1)のものである。
{P1(Cp1)(Cp2)Met-G}b (II-1)
(式中、
Metは希土類金属原子を表し、
記号Gは、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子X、またはボロヒドリド部分BH4を含む基を指し、
Cp1、Cp2、およびP1は、優先的な変形形態によるものを含めて、以前に定義した通りであり、
bは1または2に等しい)
【0033】
有利には、式(II-1)において、Cp1およびCp2は同一であり、2位は置換されているインデニル基、置換フルオレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択される。さらに良好には、式(II-1)においてこれらがそれぞれ、置換フルオレニル基またはフルオレニル基、好ましくはフルオレニル基C13H8を表す。
メタロセンが式(II)または(II-1)のものであろうと、記号Metは好ましくは、原子番号が57~71の範囲であるランタニド(Ln)原子、より優先的にはネオジム(Nd)原子を表す。
【0034】
メタロセンは、結晶性もしくは非結晶性粉末の形態、または単結晶の形態でありうる。メタロセンはモノマーまたはダイマーの形態でありえ、これらの形態は、例えば国際公開第2007054223号および同第2007054224号に記載されるように、メタロセンの調製の方法に依存する。メタロセンは、従来、欧州特許第1092731号、国際公開第2007054223号、および同第2007054224号の文献に記載されているものと類似の方法によって、特に、不活性および無水条件下、例えばジエチルエーテルもしくはテトラヒドロフランなどのエーテル、または当業者に公知の他の任意の溶媒などの好適な溶媒中、リガンドのアルカリ金属の塩と、希土類金属ハライドもしくはボロヒドリド、または第4族金属の塩などの希土類金属塩との反応によって、調製されうる。反応後、濾過または第2の溶媒からの沈殿などの、当業者に公知の技法によって、メタロセンを反応副生成物から分離する。最後に、メタロセンを乾燥させ、固体の形態で単離する。
記載した実施形態のいずれか1つによれば、メタロセンが好ましくは、ランタニドボロヒドリドメタロセン、またはランタニドハライドメタロセン、特にランタニドクロリドメタロセンである。
【0035】
本発明の特に優先的な一実施形態によれば、記号Gは塩素、または式(IV)の基を指す。
(BH4)(1+c)-Lc-Nx (IV)
(式中、
Lは、リチウム、ナトリウム、およびカリウムからなる群から選択されるアルカリ金属原子を表し、
Nはエーテルの分子を表し、
xは、整数であってもなくてもよく、0以上であり、
cは整数であり、0以上である)
アルカリ金属と錯形成する能力を有する任意のエーテル、特にジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランが、エーテルとして好適である。
【0036】
本発明のために用いるメタロセンとして、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)]、[Me2Si(2-MeInd)2Nd(μ-BH4)]、[Me2Si(C5Me4)(Flu)Nd(μ-BH4)]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)}2]および[Me2SiFlu2Nd(Cl)]からなるメタロセンの群から選択されるメタロセンを挙げることができる。
本出願では、記号Fluはフルオレニル基C13H8を表し、記号Indはインデニル基を表し、記号2-MeIndは2位がメチルによって置換されているインデニル基を表す。
優先的には、メタロセンが式(IV-3a)、(IV-3b)、(IV-3c)、(IV-3d)、または(IV-3e)のものである。
[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2] (IV-3a)
[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)] (IV-3b)
[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)] (IV-3c)
[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)}2] (IV-3d)
[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)] (IV-3e)
【0037】
ステップb)は、コポリマーの鎖末端を官能化させるため、官能化剤を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させることにある。官能化剤は、式(III)の化合物であり、
Si(Fc1)4-g(Rc2)g (III)
記号Fc1は同一でありまたは異なり、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、
記号Rc2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基Fc2によって置換されている炭化水素鎖を表し、gが0~2の範囲の整数である。
記号Fc1がアルコキシ基を表す場合、アルコキシ基は、好ましくはメトキシまたはエトキシである。Fc1記号がハロゲン原子を表す場合、ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。
【0038】
本発明の優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも1つが、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤が式(III-1)のものであり、
MeOSi(Fc1)3-g(Rc2)g (III-1)
記号Fc1およびRc2ならびにgは、式(III)において定義される通りである。
本発明のより優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも2つが、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤が式(III-2)のものであり、
(MeO)2Si(Fc1)2-g(Rc2)g (III-2)
記号Fc1およびRc2ならびにgは、式(III)において定義される通りである。
本発明のさらにより優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも3つは、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤は式(III-3)のものであり、
(MeO)3Si(Fc1)1-g(Rc2)g (III-3)
記号Fc1およびRc2は、式(III)において定義される通りであり、gが0~1の範囲の整数である。
さらにより有利な一実施形態によれば、官能化剤は式(III-4)のものである。
(MeO)3SiRc2 (III-4)
Rc2は式(III)において定義される通りである。
【0039】
式(III)、(III-1)、(III-2)、(III-3)、および(III-4)において記号Rc2によって表される炭化水素鎖の中でも、アルキル、好ましくは最大6個の炭素原子を有するアルキル、より優先的にはメチルまたはエチル、さらに良好にはメチルを挙げることができる。
式(III)、(III-1)、(III-2)、(III-3)、および(III-4)において記号Rc2によって表される、化学官能基Fc2によって置換されている炭化水素鎖の中でも、アルカンジイル鎖、好ましくは最大6個の炭素原子を含むもの、より優先的には1,3-プロパンジイル基を挙げることができるが、アルカンジイル基は置換基、化学官能基Fc2を有し、言い換えれば、アルカンジイル鎖の一方の原子価は官能基Fc2のため、他方の原子価はメトキシシラン官能基のケイ素原子のためである。
【0040】
式(III)、(III-1)、(III-2)、(III-3)、および(III-4)において、化学官能基は、飽和炭化水素基とは異なる基であり、化学反応に関与しうる基を意味するものと理解されたい。当業者は、化学官能基Fc2が、重合媒体中に存在する化学種に対して化学的に不活性な基であることを理解する。化学官能基Fc2は、例えば第一級アミン、第二級アミン、またはチオール官能基の場合などには、保護された形態であってもよい。化学官能基Fc2としては、エーテル、チオエーテル、保護された第一級アミン、保護された第二級アミン、第三級アミン、保護されたチオール、およびシリル官能基を挙げることができる。好ましくは、化学官能基Fc2が、保護された第一級アミン官能基、保護された第二級アミン官能基、第三級アミン官能基、または保護されたチオール官能基である。第一級アミン、第二級アミン、およびチオール官能基の保護基としては、シリル基、例えばトリメチルシリルおよびtert-ブチルジメチルシリル基を挙げることができる。
【0041】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、gは好ましくは0以外であり、このことは官能化剤が、少なくとも1つのSi-Rc2結合を含むことを意味する。
官能化剤としては、化合物ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミンおよび3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、好ましくはジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカントリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミンおよび3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、より優先的には、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、および3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカンを挙げることができる。
【0042】
官能化剤は、典型的には、ステップa)から生じる重合媒体に添加される。官能化剤は、典型的には、コポリマーの所望のマクロ構造に応じて、当業者によって選択されるモノマーが変換される程度に、重合媒体に添加される。ステップa)は一般に、エチレン圧力下で実施されるため、重合反応器の脱気は、官能化剤を添加する前に実施されうる。官能化剤は不活性かつ無水条件下で、重合温度に維持している重合媒体に添加される。典型的には、1molの共触媒当たり0.25~10molの官能化剤、好ましくは、1molの共触媒当たり2~4molの官能化剤が使用される。
官能化剤は、官能化反応をさせるのに十分な時間、重合媒体と接触させる。この接触時間は、反応媒体の濃度の関数、および反応媒体の温度の関数として、当業者によって適切に選択される。典型的には、官能化反応は、撹拌下、17℃~80℃の範囲の温度において、0.01~24時間実施される。
【0043】
コポリマーは、官能化したら、特に反応媒体から単離することによって、回収することができる。コポリマーを反応媒体から分離するための技法は、当業者に周知であり、分離するコポリマーの量、マクロ構造、および当業者が利用可能な器具に応じて、当業者によって選択される。例えば、メタノールなどの溶媒中のコポリマーを凝固させる技法、例えば減圧下、反応媒体および残留モノマーの溶媒を蒸発させる技法を挙げることができる。
【0044】
官能化剤が式(III)、(III-1)、または(III-2)のものであり、gが2に等しい場合、鎖末端にシラノール官能基を有するコポリマーを形成するため、ステップb)の後に加水分解反応を行ってもよい。加水分解は、当業者に公知の方法において、ステップb)の終わりに、コポリマーを含有する溶液をストリッピングするステップによって実施されうる。
官能化剤が式(III)、(III-1)、(III-2)、(III-3)、または(III-4)のものである場合、gが0以外である場合、およびRc2が官能基Fc2によって置換され、保護された形態の炭化水素鎖を表す場合も、コポリマーの鎖の末端における官能基を脱保護するため、ステップb)の後に加水分解反応を行ってもよい。加水分解反応、官能基を脱保護するステップは、一般に、脱保護する官能基の化学的性質に応じて、酸性または塩基性媒体中で実施される。例えば、アミンまたはチオール官能基を保護するシリル基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基は、当業者に公知の方法において、酸性または塩基性媒体中で加水分解されうる。脱保護条件の選択は、脱保護する基質の化学的構造を考慮して、当業者によって適切になされる。
【0045】
ステップc)は、官能性基をシラノール官能基に変換することを所望するか否か、または保護された官能基を脱保護することを所望するか否かに応じた、任意選択のステップである。優先的には、ステップc)は、ステップb)の終わりにコポリマーを反応媒体から分離する前に、またはこの分離ステップと同時に、実施される。
前述の本発明および他の特徴のより良好な理解は、例示として限定することなく与えられる、以下の本発明の複数の例示的な実施形態の記載に接することによって得られるであろう。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕エチレン単位と、ブタジエン単位と、式(I)の環式構造のUD単位とを含み、鎖末端の1つにアルコキシシリルまたはシラノール官能基、官能性基F
1
を有する、エチレン/1,3-ブタジエンコポリマー。
【化1】
(I)
〔2〕エチレン単位は、コポリマーの全モノマー単位の少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも65mol%を占める、前記〔1〕に記載のコポリマー。
〔3〕コポリマーが、UA、UB、UC、UD単位、および適当な場合、式(I-1)のUE単位を含有する、前記〔1〕または〔2〕に記載のコポリマー:
UA) m%のモル百分率の
【化2】
UB) n%のモル百分率の-CH
2
-CH=CH-CH
2
-
UC) o%のモル百分率の-CH
2
-CH(CH=CH
2
)-
UD) p%のモル百分率の
【化3】
UE) q%のモル百分率の
【化4】
m、n、o、p、およびqが0~100の範囲の数値であり、
m≧50
n+o>0
p>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率が、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計が100に等しい。
〔4〕0<o+p≦25
o+p+q≧5
n+o>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率が、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計が100に等しい、
前記〔3〕に記載のコポリマー。
〔5〕qが0に等しい、前記〔3〕または〔4〕に記載のコポリマー。
〔6〕官能性基F
1
が、共有結合によってコポリマーの末端単位に直接付着している、前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔7〕官能性基F
1
が直接付着している末端単位は、エチレン単位にまたはUD単位に結合したメチレンからなり、Si原子がメチレンに結合している、前記〔6〕に記載のコポリマー。
〔8〕官能性基が式(III-a)または式(III-b)のものである、
Si(OR
1
)
3-f
(R
2
)
f
(III-a)
Si(OH)(R
2
)
2
(III-b)
前記〔1〕から〔7〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
(式中、記号R
1
は同一でありまたは異なり、アルキルを表し、
記号R
2
は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F
2
によって置換されている炭化水素鎖を表し、
fは0~2の範囲の整数である)
〔9〕記号R
1
が、最大6個の炭素原子を有するアルキルを表す、前記〔8〕に記載のコポリマー。
〔10〕記号R
2
が、最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、化学官能基F
2
によって置換されているアルカンジイル鎖を表す、前記〔8〕または〔9〕に記載のコポリマー。
〔11〕記号R
1
およびR
2
によって表されるアルキルが、メチルまたはエチル、より優先的にはメチルである、前記〔8〕から〔10〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔12〕化学官能基F
2
が、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基またはチオール官能基であり、前記第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護されている、または保護されていない、前記〔8〕から〔11〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔13〕保護基がシリル基、好ましくはトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基である、前記〔12〕に記載のコポリマー。
〔14〕官能性基F
1
が、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチシリル、ジエトキシエチシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、3-チオプロピルジエトキシシリル、メトキシジメチルシリル、メトキシジエチルシリル、エトキシジメチシリル、エトキシジエチシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシエチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシエチルシリル、3-アミノプロピルメトキシメチルシリル、3-アミノプロピルメトキシエチルシリル、3-アミノプロピルエトキシメチルシリル、3-アミノプロピルエトキシエチルシリル、3-チオプロピルメトキシメチルシリル、3-チオプロピルエトキシメチルシリル、3-チオプロピルメトキシエチルシリル、3-チオプロピルエトキシエチルシリル、または3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、3-チオプロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルメトキシメチルシリル、3-アミノプロピルメトキシエチルシリル、3-アミノプロピルエトキシメチルシリル、3-アミノプロピルエトキシエチルシリル、3-チオプロピルメトキシメチルシリル、3-チオプロピルエトキシメチルシリル、3-チオプロピルメトキシエチルシリル、3-チオプロピルエトキシエチルシリルのアミンもしくはチオール官能基を保護された形態である、前記〔1〕から〔13〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔15〕官能性基F
1
がジメチルシラノール、ジエチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエチルシラノール、3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルメチルシラノール、または3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルメチルシラノールのアミンもしくはチオール官能基を保護された形態である、前記〔1〕から〔13〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔16〕官能性基F
1
が式(III-a)のものであり、fが1に等しい、前記〔8〕および前記〔9〕から〔14〕までのいずれか1項に記載のコポリマー。
〔17〕前記〔1〕から〔16〕までのいずれか1項に記載のコポリマーを調製するための方法であって、
a)オルガノマグネシウム化合物と式(II)の部分を含むメタロセンとを含む触媒系の存在下、エチレンおよび1,3-ブタジエンのモノマー混合物を共重合させるステップ、 P
1
(Cp
1
)(Cp
2
)Met (II)
(式中、
Metは第4族金属原子または希土類金属原子であり、
P
1
は2つの基、Cp
1
とCp
2
とを架橋し、かつケイ素または炭素原子を含む基であり、
Cp
1
およびCp
2
は同一でありまたは異なり、フルオレニル基、置換フルオレニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、および置換インデニル基からなる群から選択される)
b) 官能化剤、式(III)の化合物を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させるステップ、
Si(Fc
1
)
4-g
(Rc
2
)
g
(III)
(記号Fc
1
は同一でありまたは異なり、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、
記号Rc
2
は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基Fc
2
によって置換されている炭化水素鎖を表し、
gは0~2の範囲の整数である)
c) 必要な場合、加水分解反応させるステップ
を含む、方法。
〔18〕メタロセンが式(II-1)のものである、前記〔17〕に記載の方法。
{P
1
(Cp
1
)(Cp
2
)Met-G}
b
(II-1)
(式中、
Cp
1
、Cp
2
、およびP
1
は前記〔17〕に定義する通りであり、
Metは希土類金属原子を表し、
記号Gは、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子X、またはボロヒドリド部分BH
4
を含む基を指し、
bは1または2に等しい)
〔19〕記号Gが塩素または式(IV)の基を指す、前記〔18〕に記載の方法。
(BH
4
)
(1+c)
-L
c
-N
x
(IV)
(式中、
Lは、リチウム、ナトリウム、およびカリウムからなる群から選択されるアルカリ金属原子を表し、
Nはエーテルの分子を表し、
xは、整数であってもなくてもよく、0以上であり、
cは整数であり、0以上である)
〔20〕記号Metがネオジム原子を表す、前記〔17〕から〔19〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔21〕P
1
がSiMe
2
基を表す、前記〔17〕から〔20〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔22〕Cp
1
およびCp
2
が同一であり、2位が置換されているインデニル基、置換フルオレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択される、前記〔17〕から〔21〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔23〕Cp
1
がCp
2
とは異なり、Cp
1
が置換フルオレニル基およびフルオレニル基からなる群から選択され、Cp
2
が、少なくとも2位と5位とが置換されているシクロペンタジエニル基、少なくとも2位が置換されているインデニル基、置換フルオレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択される、前記〔17〕から〔22〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔24〕Cp
1
およびCp
2
がそれぞれ、置換フルオレニル基またはフルオレニル基、好ましくはフルオレニル基を表す、前記〔17〕から〔23〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔25〕メタロセンが、[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)
2
Li(THF)}
2
]、[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)(THF)]、[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)]、[Me
2
Si(2-MeInd)
2
Nd(μ-BH
4
)]、[Me
2
Si(C
5
Me
4
)(Flu)Nd(μ-BH
4
)]、[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)
2
Li(THF)]、[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)(THF)}
2
]および[Me
2
SiFlu
2
Nd(Cl)]からなるメタロセンの群から選択され、
記号Fluはフルオレニル基C
13
H
8
を表し、記号Indはインデニル基を表し、記号2-MeIndは2位がメチルによって置換されているインデニル基を表す、前記〔17〕から〔24〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔26〕メタロセンが式(IV-3a)、(IV-3b)、(IV-3c)、(IV-3d)、または(IV-3e)のものであり、
[{Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)
2
Li(THF)}
2
] (IV-3a)
[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)
2
Li(THF)] (IV-3b)
[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)(THF)] (IV-3c)
[{Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)(THF)}
2
] (IV-3d)
[Me
2
SiFlu
2
Nd(μ-BH
4
)]、 (IV-3e)
記号Fluはフルオレニル基C
13
H
8
を表す、前記〔17〕から〔25〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔27〕オルガノマグネシウム化合物が、ジアルキルマグネシウム化合物、またはアルキルマグネシウムハライド、優先的にはブチルオクチルマグネシウム、またはブチルマグネシウムクロリド、より優先的にはブチルオクチルマグネシウムである、前記〔17〕から〔26〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔28〕記号Fc
1
の少なくとも1つがアルコキシ基を表す、前記〔17〕から〔27〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔29〕記号Fc
1
の少なくとも2つがアルコキシ基を表す、前記〔17〕から〔28〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔30〕記号Fc
1
の少なくとも3つがアルコキシ基を表す、前記〔17〕から〔29〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔31〕アルコキシ基がメトキシまたはエトキシ、好ましくはメトキシである、前記〔17〕から〔30〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔32〕記号Rc
2
が、最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、化学官能基Fc
2
によって置換されているアルカンジイル鎖を表す、前記〔17〕から〔31〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔33〕最大6個の炭素原子を有するアルキルが、メチルまたはエチルである、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕化学官能基Fc
2
が、保護基によって保護された第一級アミン官能基、保護基によって保護された第二級アミン官能基、第三級アミン官能基、または保護基によって保護されたチオール官能基である、前記〔17〕から〔33〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔35〕保護基がトリメチルシリル、またはtert-ブチルジメチルシリルである、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕官能化剤が、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、または3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、好ましくはジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカントリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、または3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、より優先的にはトリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、または3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカンである、前記〔17〕から〔35〕までのいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0046】
II.本発明の例示的な実施形態
II.1-特性評価法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
a)測定の原理
サイズ排除クロマトグラフィー、すなわちSECは、多孔質ゲルを充填したカラムを通じて、サイズに応じて溶液中の巨大分子を分離することができる。巨大分子は、水力学的体積に応じて分離され、最も嵩高いものが最初に溶出する。
3種の検出器(3D)、屈折計、粘度計、および90°光散乱検出器と合わせて、SECにより、ポリマーの絶対モル質量分布を知ることができる。各種数平均(Mn)および質量平均(Mw)絶対モル質量、ならびに分散度(D=Mw/Mn)も、算出することができる。
【0047】
b)ポリマーの調製
分析前のポリマーサンプルの特定の処理はない。該サンプルを、テトラヒドロフラン(+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミン)に、約1g/lの濃度において、単純に溶解させる。次いで溶液を、0.45μmの多孔性を有するフィルタを通して濾過してから、注入する。
【0048】
c)SEC3D分析
用いた装置は、WatersのAllianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフラン(+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミン)であり、流速は0.5ml/分であり、システム温度は35℃である。4つのPolymer Laboratoriesカラムのセットを直列に使用し、2つは「Mixed A LS」の商品名であり、2つは「Mixed B LS」の商品名である。
注入したポリマーサンプルの溶液の体積は、100μlである。使用した検出システムはViscotekのTDA 302であり、示差屈折計、示差粘度計、および90°光散乱検出器から構成される。これら3種の検出器について、波長は670nmである。平均モル質量の算出のため、ポリマー溶液の屈折率増分dn/dCの値を積分するが、この値は、35℃および670nmにおける、テトラヒドロフラン(+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミン)においてあらかじめ定義した。データを評価するためのソフトウェアは、ViscotekのOmnisecシステムである。
【0049】
核磁気共鳴(NMR)
エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーのすべての官能化生成物を、1H、13C、29Si NMR分光測定によって特性評価する。NMRスペクトルは、5mm BBI Z-grad「広帯域」クライオプローブを備えた、Bruker Avance III 500MHz分光光度計に記録する。定量的1H NMR実験は、単純30°パルスシーケンスを用い、各取得の間の繰返し時間は5秒である。64~256回の積算を実施する。定量的13C NMR実験は、プロトンデカップリングと共に30°シングルパルスシーケンスを用い、各取得の間のプロトン繰返し時間は10秒である。1024~10240回の積算を実施する。2次元1H/13Cおよび1H/29Si実験は、官能性ポリマーの構造を決定することを目的として用いる。コポリマーのミクロ構造の決定は、Llauro et al., Macromolecules 2001, 34, 6304-6311による記事により、文献中に定義される。
各官能性ポリマーの最終的な化学構造は、1H、13C、および29Si NMRによって同定される。
【0050】
II.2-本発明によるコポリマーの調製
原材料
式(IV-3a)のメタロセン[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2]を除いて、すべての反応物質は商業的に得ており、メタロセンは、国際公開第2007054224号の文献に記載される手順に従って調製されうる。
ブチルオクチルマグネシウムBOMAG(ヘプタン中20%、C=0.88molL-1)はChemturaからのものであり、不活性雰囲気下、シュレンクチューブに保管する。エチレンはN35グレードで、Air Liquideからのものであり、予備精製することなく用いる。1,3-ブタジエンはアルミナガード上で精製する。官能化剤は予備精製することなく用いる。
ジメトキシジメチルシラン(AB111082)、ジエトキシジメチルシラン(AB111080)、および(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン(AB252529)はABCRからのものであり、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランはNitrochemieからのものである。3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、および3,3-メトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカンは合成した。
BioSolveからのメチルシクロヘキサン溶媒を乾燥させ、不活性雰囲気下で用いるmBraunからの溶媒精製装置中、アルミナカラムで精製する。メタノール(99%、クラス3、グレードII)はLaurylasからのものであり、C6D6(99.6原子%D)はAldrichからのものであり、低温で保管する。すべての反応は不活性雰囲気下で実施する。
【0051】
装置
エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーのすべての重合および官能化反応は、ステンレス鋼撹拌ブレードを備えた使い捨て500mlガラスタンク(Schottフラスコ)を有する反応器中で実施する。温度は、ポリカーボネートジャケットに連結された、サーモスタット制御の油浴によって確実に制御する。この反応器は、取り扱い操作に必要なすべての入り口または出口を有する。
【0052】
重合手順
可変量のメタロセンを、グローブボックス中の第1のSteinieボトルに導入する(表1)。
第2のSteinieボトル中の、300mlのメチルシクロヘキサンにあらかじめ溶解させたブチルオクチルマグネシウムを、メタロセンを含有する第1のSteinieボトルに、表1に示す割合で導入する。周囲温度における10分間の接触後、触媒溶液を得る。次いで、触媒溶液を重合反応器に導入する。次いで、反応器の温度を80℃に上昇させる。
この温度に達したら、エチレンと1,3-ブタジエンとのガス状混合物(80/20mol%)を反応器に注入することによって、反応を開始させる。重合反応は、8barの圧力で行う例7の場合を除いて、4barの圧力において行う。
【0053】
官能化手順
所望のモノマー変換を達成したら、反応機の内容物を脱気し、次いで、不活性雰囲気下、過剰圧力によって、官能化剤を導入する。表1に示す時間および温度で、反応媒体を撹拌する。反応後、媒体を脱気し、次いでメタノール中で沈殿させる。ポリマーをトルエン中に再溶解させ、次いでグラフト化していない「シラン」分子を除去するため、メタノール中に沈殿させ、これによって、官能性基含有率の定量および各種シグナルの積分のための、スペクトルのシグナルの質を改善することができる。ポリマーを老化防止剤によって処理し、次いで、減圧下、60℃で乾燥させて恒量とする。次いでこれを、SEC(THF)、1H、13C、29Si NMRによって分析する。
【0054】
用いた官能化剤はそれぞれ、
(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン A1
(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン A2
ジメチルジメトキシシラン A3
ジメチルジエトキシシラン A4
3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン A5
3,3-メトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン A6
である。
官能化反応の実験条件を、表1に記載する。
【0055】
II.3-結果
結果を表2に示す。
用いた官能化剤とは独立に、コポリマーは鎖末端に、アルコキシシランまたはシラノール官能化を有する。官能化剤A1、A2、A3およびA6を用いた場合、鎖の3分の1が、または半分さえ官能化されうる。実際、官能性基の含有率は、少なくとも50%に達しうる。コポリマーの合成のために実施される重合を特徴づける連鎖反応にも関わらず、官能化が達成されるため、この官能化の結果は注目に値する。
メトキシシランによって、エトキシシランより良好な官能性基の含有率を得ることができ、トリメトキシシランは、最高の官能性基の含有率をもたらすことにも注目されたい。
phr(100部のエラストマー当たりの質量部)で表した配合を表3に示すゴム組成物、それぞれCおよび1、を、以下の手順に従って調製した。すなわち、コポリマー、シリカ、およびまた加硫系を除く各種他の成分を、連続的に密閉式ミキサーに導入し(最終的な粉砕の程度は約70体積%)、その容器の初期温度は約80℃である。次いで、熱機械的作業(非生産段階)を1ステップにおいて実施するが、これは165℃の最大「ドロッピング」温度に達するまで、合計約3~4分間継続する。このようにして得た混合物を回収して冷却し、次いで、硫黄および促進剤を30℃でミキサー(ホモフィニッシャー)に組み込み、約10分間、すべてを混合する(生産段階)。このようにして得た組成物を、続いて、物理的または機械的特性の測定のため、ゴムのスラブ(2~3mmの厚さ)または薄いシートのいずれかの形態にカレンダー加工する。動的特性は、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度分析装置(Metravib VA4000)によって測定する。規格ASTM D 1349-99に従って、標準温度条件下(23℃)、10Hzの周波数において、単純交互正弦剪断応力に供した、加硫組成物(4mmの厚さおよび400mm2の断面を有する円筒形試験片)のサンプルの応答を記録する。ひずみ振幅掃引を、0.1%から50%まで(アウトワードサイクル)、次いで50%から0.1%まで(リターンサイクル)実施する。使用する結果は、複素剪断弾性率G*、損失係数tan(δ)、ならびに0.1%および50%ひずみにおける値の間の弾性率の差ΔG*(Payne効果)である。リターンサイクルについて、観測されたtan(δ)の最大値を示し、tan(δ)maxと表記する。G*と表記する、50%ひずみにおける複素弾性率G*、0.1%および50%ひずみにおける値の間の弾性率の差ΔG*(Payne効果)、ならびにtan(δ)maxの値を、100を基準として示し、値100は対照組成物(C)に対応する。ΔG*の値が低いほど、ゴム組成物のヒステリシスは低い。tan(δ)maxの値が低いほど、ゴム組成物のヒステリシスは低い。G*の値が低いほど、組成物の剛性は低い。
【0056】
温度掃引中に単純交互正弦剪断応力に供した、すなわち0.7MPaの負荷荷重および10Hzの周波数、1.5℃毎分の速度で-60℃から100℃の範囲の温度において正弦応力に供した、組成物のサンプルの応答も記録する。混合物のTgは、tan(δ)の最大値の温度によって示され、「Tg(℃)tan(δ)max」と表記する。別の使用する結果は、例えば60℃における複素動的剪断弾性率(G*)であり、G*弾性率と表記する。可読性を高めるため、G*の結果をベース100において示し、値100は対照に対応する。100未満の結果は、対象の値の減少を示し、反対に、100超の結果は、対象の値の増加を示すことになる。
本発明によるコポリマーを含有するゴム組成物について、より低いヒステリシス、およびまたより低い剛性に注目されたい。
【0057】
要約すれば、本発明による方法によって、鎖末端がアルコキシシランまたはシラノールで官能化された、エチレン単位と、ブタジエン単位と、1,2-シクロヘキサンジイル単位とを有するコポリマーを得ることが可能となる。
【表1】
【表2】
【0058】