(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】アデノシンリン酸およびトラネキサム酸含有外用組成物の変色抑制方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20230705BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230705BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20230705BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230705BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230705BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230705BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230705BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230705BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230705BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230705BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230705BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/41
A61Q19/00
A61K31/7076
A61P17/00
A61K31/195
A61K8/44
A61P43/00 121
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/02
A61Q19/02
A61K8/24
A61K8/55
A61K8/86
A61K8/89
A61K8/37
A61K8/73
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2019569151
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003058
(87)【国際公開番号】W WO2019151276
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018015486
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(72)【発明者】
【氏名】荻原 美代子
(72)【発明者】
【氏名】須磨 桃子
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 詩織
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-081840(JP,A)
【文献】特開2003-206224(JP,A)
【文献】特開2014-062077(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/33-33/44
A61K31/00-31/327
A61P 1/00-43/00
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):
アデノシン一リン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を含有し、
さらに、
成分(C):
トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、およびそれらの混合物から選択されるリン酸化合物
であるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
を含有する、外用組成物。
【請求項2】
成分(D)が、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アルギニン、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項
1に記載の外用組成物。
【請求項3】
成分(A)と成分(B)の合計に対し成分(C)が、(成分(A)+成分(B)):成分(C)=1:0.0001~0.5の重量比で含有される、請求項1
または2に記載の外用組成物。
【請求項4】
成分(D)を含有し、かつ、pHが5.5~7.5である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項5】
成分(A)に対し成分(D)が、成分(A):成分(D)=1:0.00001~4の重量比で含有される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項6】
成分(A)を0.01~10重量%含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項7】
成分(B)を0.01~10重量%含有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項8】
成分(E):シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、高重合ポリエチレングリコール、高重合シリコーン、プルラン、ポリビニルピロリドン、有機微粒子、ビオサッカリドガム-1、またはその混合物;
をさらに含有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項9】
成分(C):
トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、およびそれらの混合物から選択されるリン酸化合物
であるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
の存在下に、
成分(A):
アデノシン一リン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を混合することを含む、外用組成物の製造方法。
【請求項10】
成分(C):
トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、およびそれらの混合物から選択されるリン酸化合物
であるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
を用いて、
成分(A):
アデノシン一リン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を含有する外用組成物の変色を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はアデノシンリン酸および/またはその塩、およびトラネキサム酸および/またはその塩を含有する外用組成物の変色抑制方法、および当該変色が抑制された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンリン酸は、保湿効果や美白効果を有することが知られており、アデノシンリン酸を含有する化粧料は既に上市されている。
【0003】
トラネキサム酸は抗プラスミン作用を有し、肌荒れ改善や美白等のための有効成分として化粧品に配合されており、こちらも既に多くの化粧料が上市されている。
【0004】
特許文献1にはアデノシン一リン酸とトラネキサム酸を含有する色素沈着の予防または改善用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
本明細書において引用する先行技術文献の開示は全て参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らはアデノシンリン酸とトラネキサム酸を含有する組成物の開発を試みたが、その際に当該組成物は経時的に変色(特に黄変)するという問題に直面した。本願発明の課題は、アデノシンリン酸および/またはその塩とトラネキサム酸および/またはその塩を含有する組成物における経時的な変色を抑制する方法、および当該変色が抑制された組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定のキレート剤および特定のpH調整剤がそれぞれ、アデノシンリン酸および/またはその塩とトラネキサム酸および/またはその塩を含有する組成物の経時的変色を抑制できることを見出し、本願発明に至った。加えて、アデノシンリン酸および/またはその塩に起因して該組成物はべたつき感を呈するという問題があり、本願発明者らはこのべたつきを改善するには特定の成分(べたつき改善成分)を配合することが好ましいことを見出し、さらにこれらべたつき改善成分の中でも特定の成分は経時的変色を悪化させないことを見出した。
【0009】
すなわち本願は、下記を提供する:
[1]
成分(A):アデノシンリン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を含有し、
さらに、
成分(C):エデト酸またはその塩、リン酸化合物、およびそれらの混合物から選択されるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
を含有する、外用組成物。
[2] 該アデノシンリン酸および/またはその塩がアデノシン一リン酸および/またはその塩である、[1]に記載の外用組成物。
【0010】
[3] 該リン酸化合物が、トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、フィチン酸またはその塩、およびそれらの混合物から選択される、[1]または[2]に記載の外用組成物。
【0011】
[4] 成分(C)が、トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、およびそれらの混合物から選択されるリン酸化合物である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0012】
[5] 成分(D)が、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アルギニン、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される、[1]~[4]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0013】
[6] 成分(A)と成分(B)の合計に対し成分(C)が、(成分(A)+成分(B)):成分(C)=1:0.0001~0.5の重量比で含有される、[1]~[5]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0014】
[7] 成分(D)を含有し、かつ、pHが5.5~7.5である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0015】
[8] 成分(A)に対し成分(D)が、成分(A):成分(D)=1:0.00001~4の重量比で含有される、[1]~[7]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0016】
[9] 成分(A)を0.01~10重量%含有する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0017】
[10] 成分(B)を0.01~10重量%含有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0018】
[11] 成分(E):シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、高重合ポリエチレングリコール、高重合シリコーン、プルラン、ポリビニルピロリドン、有機微粒子、ビオサッカリドガム-1、またはその混合物;
をさらに含有する、[1]~[10]のいずれか1項に記載の外用組成物。
【0019】
[12]
成分(C):エデト酸またはその塩、リン酸化合物、およびそれらの混合物から選択されるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
の存在下に、
成分(A):アデノシンリン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を混合することを含む、外用組成物の製造方法。
【0020】
[13]
成分(C):エデト酸またはその塩、リン酸化合物、およびそれらの混合物から選択されるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
を用いて、
成分(A):アデノシンリン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を含有する外用組成物の変色を抑制する方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、経時的変色が抑制されたアデノシンリン酸および/またはその塩、およびトラネキサム酸および/またはその塩を含有する外用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願は、
成分(A):アデノシンリン酸および/またはその塩;および
成分(B):トラネキサム酸および/またはその塩;
を含有する外用組成物に関し、該外用組成物はさらに、
成分(C):エデト酸またはその塩、リン酸化合物、およびそれらの混合物から選択されるキレート剤;および/または
成分(D):有機性アルカリであるpH調整剤;
を含有することを特徴とするものである。
【0023】
上記の成分(C)および/または成分(D)を配合することで、アデノシンリン酸および/またはその塩、およびトラネキサム酸および/またはその塩を含有する組成物の経時的変色は抑制されうる。
【0024】
本願において、アデノシンリン酸として、アデノシン一リン酸(アデノシン2’一リン酸、アデノシン3’一リン酸、アデノシン5’一リン酸など)、アデノシン二リン酸(アデノシン5’二リン酸など)、アデノシン三リン酸(アデノシン5’三リン酸など)、アデノシン3’,5’環状リン酸など)が挙げられ、これらを単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本願において、アデノシンリン酸の塩は化粧料や外用の医薬品又は医薬部外品中に配合できるものであれば、特に制限されない。アデノシン一リン酸の塩として、具体的には、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニンやリジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩やトリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩及びトリイソプロパノールアミンなどの各種のアルカノールアミン塩等を挙げることができる。アデノシンリン酸の塩は、単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本願の組成物に含有される成分(A)の量としては、外用組成物の用途や形態等によっても異なるが、例えば、外用組成物の総重量に対して、通常0.001~10重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%、さらにより好ましくは0.7重量%~3重量%、またさらに好ましくは1重量%~2重量%が例示される。
さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(A)の量の範囲の下限値の例として、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%が挙げられ、上限値の例として、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0027】
本願において、トラネキサム酸の塩は化粧料や外用の医薬品又は医薬部外品中に配合できるものであれば、特に制限されない。トラネキサム酸の塩の例としては、アデノシンリン酸と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。これらのトラネキサム酸の塩は、単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本願の組成物に含有される成分(B)の量としては、外用組成物の用途や形態等によっても異なるが、例えば、外用組成物の総重量に対して、通常0.001~10重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%、さらにより好ましくは0.7重量%~3重量%、またさらに好ましくは1重量%~2重量%が例示される。
さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(B)の量の範囲の下限値の例として、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%が挙げられ、上限値の例として、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0029】
成分(C)のキレート剤として、エデト酸またはその塩、およびリン酸化合物(例えば、トリポリリン酸またはその塩、メタリン酸またはその塩、エチドロン酸またはその塩、およびフィチン酸またはその塩)が挙げられ、これらのキレート剤は、単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。成分(C)のキレート剤の好ましい例として、トリポリリン酸またはその塩,メタリン酸またはその塩,およびエチドロン酸またはその塩が挙げられる。本願の組成物において、経時的変色が問題とならない範囲において、成分(C)以外のキレート剤が使用されてもよい。
【0030】
エデト酸の塩の例として、EDTA-2K、EDTA-2Na、EDTA-3K、EDTA-3Na、EDTA-4Na、EDTA(Ca/2Na)等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。エデト酸またはその塩の好ましい例として、EDTA、EDTA-2Na、EDTA-3Na、およびEDTA-4Naが挙げられる。
【0031】
トリポリリン酸の塩、メタリン酸の塩、エチドロン酸の塩、およびフィチン酸の塩の例として、アデノシンリン酸と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。これらの塩は、単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
トリポリリン酸塩の好ましい例として、トリポリリン酸Naおよびトリポリリン酸Kが挙げられる。
メタリン酸塩の好ましい例として、メタリン酸Naおよびメタリン酸Kが挙げられる。
エチドロン酸塩の好ましい例として、エチドロン酸3Na、エチドロン酸4K、およびエチドロン酸4Naが挙げられる。
フィチン酸塩の好ましい例として、フィチン酸カルシウムおよびフィチン酸ナトリウムが挙げられる。
【0033】
本願の外用組成物において、成分(C)の量は、組成物の経時的変色が抑制される限り特に限定されないが、成分(A)と成分(B)の合計に対し成分(C)は、(成分(A)+成分(B)):成分(C)=1:0.00001~0.5(より好ましくは1:0.0001~0.2、さらに好ましくは1:0.0002~0.1)の重量比で含有されることが好ましい。さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(A)と成分(B)の合計の重量を1としたときの成分(C)の重量比の範囲の下限値の例として、0.00001、0.00010.0002、0.0005、0.001、0.01、0.05が挙げられ、上限値の例として、0.05、0.1、0.2、0.5が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0034】
本願の組成物に含有されうる成分(C)の量としては、例えば、外用組成物の総重量に対して、通常0.0001~2重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.0002~1.5重量%、さらに好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.5重量%が例示される。
さらに、本願の外用組成物に含まれうる成分(C)の量の範囲の下限値の例として、0.0001重量%、0.0002重量%、0.0005重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%が挙げられ、上限値の例として、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0035】
成分(D)の有機性アルカリであるpH調整剤の例として、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アルギニン、およびトリエタノールアミンが挙げられる。これらのpH調整剤は、単独で使用してもよく、また任意に2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい有機性アルカリであるpH調整剤の例として、アミノヒドロキシメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパンジオール、およびアルギニンが挙げられる。
【0036】
経時的な変色を抑制するために、本願の外用組成物のpHの調整は、成分(D)のpH調整剤を用いることが好ましい。本願の外用組成物の好ましいpHは、当該組成物の用途等によっても異なるが、例えばpH5.5~7.5が挙げられる。本願の外用組成物のpHの調整には、経時的変色が問題とならない範囲において、成分(D)以外のpH調整剤を使用してもよい。
【0037】
本願の外用組成物において、成分(D)の量は該組成物の経時的変色が抑制される限り特に限定されず、成分(A)の量やその他の任意成分の種類や量、および該組成物の好ましいpHによっても異なるが、例えば、成分(A)に対し成分(D)は、成分(A):成分(D)=1:0.0001~4(より好ましくは1:0.001~2、さらに好ましくは1:0.005~1)の重量比で含有される。さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(A)の重量を1としたときの成分(C)の重量比の範囲の下限値の例として、0.0001、0.001、0.01、0.1が挙げられ、上限値の例として0.1、0.5、1、2、3、4が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0038】
本願はさらに、成分(E):シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、高重合ポリエチレングリコール(例えば凝固点が40℃以上のもの)、高重合シリコーン(例えば動粘度が6000mm2/s以上のもの)、プルラン、ポリビニルピロリドン、有機微粒子(例えば、シリカ、ポリメタクリル酸メチル、タルク、およびウレタン)、ビオサッカリドガム-1、またはその混合物を配合することで、べたつきを改善しつつ、経時的変色も抑制された組成物を提供することができる。
【0039】
本願の外用組成物において、より良好なべたつき改善を提供するために、成分(A)および成分(E)は、成分(A):成分(E)=1:0.01~30(より好ましくは1:0.02~25、さらに好ましくは1:0.1~20)の重量比で含有されることが好ましい。
さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(A)の重量を1としたときの成分(E)の重量比の範囲の下限値の例として、0.01、0.03、0.05、0.1、0.5、0.7、1が挙げられ、上限値の例として、1.5、2、3、5、10、20、25、30が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0040】
本願の組成物に含有される成分(E)の量としては、使用される成分(E)の種類や、外用組成物の用途や形態等によっても異なるが、例えば、外用組成物の総重量に対して、通常0.001~10重量%の範囲から適宜選択することができる。好ましくは0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%、さらにより好ましくは0.7重量%~2重量%が例示される。
さらに、本願の外用組成物に含まれる成分(E)の量の範囲の下限値の例として、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%が挙げられ、上限値の例として、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%が挙げられ、当該範囲の好ましい例は該下限値と該上限値の組合せにより示されうる。
【0041】
本願の組成物に配合されうる各成分は水和物の形態であっても良い。
【0042】
本願の外用組成物は、上記の各成分に加えて、薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体を組み合わせて各種の形態に調製され得る。薬学的又は香粧的に許容される基剤や担体については、従来公知のものを用いることができる。また、本発明の組成物には、必要に応じて化粧料や外用の医薬品・医薬部外品等の皮膚や粘膜に適用される外用組成物に配合される公知の各種成分を配合することができる。このような成分として、例えば、界面活性剤、色素(染料、顔料)、香料、防腐剤、殺菌剤(抗菌剤)、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、清涼化剤、防臭剤、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、植物エキス、皮膚収斂剤、抗炎症剤(消炎剤)、美白剤、細胞賦活剤、血管拡張剤、血行促進剤、および皮膚機能亢進剤等を挙げることができる。
【0043】
例えば、本願の外用組成物は、水、エタノール、グリセリン、BG、1,2-ペンタンジオール、メントール、POE硬化ヒマシ油、フェノキシエタノール、香料、およびその混合物を任意にさらに含みうる。
【0044】
本発明の外用組成物は、皮膚に塗布又は噴霧される外用組成物として使用され得る。具体的には、本発明の組成物は、化粧料、外用医薬品又は外用医薬部外品等の外用剤(外皮用剤)として使用され得る。
【0045】
本発明の外用組成物の形態については、皮膚に適用可能なものであれば特に制限されず、例えば、ペースト状、ムース状、ジェル状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、固形状、シート状、エアゾール状、スプレー状、リニメント剤を例示することができる。特に化粧料とする場合であれば、ローション;エモリエント乳液、ミルキーローション、ナリシング乳液、クレンジング乳液等の乳液;エモリエントクリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、メイクアップクリーム等のクリーム;リップクリーム等を例示することができる。
【実施例】
【0046】
以下、試験例および処方例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<試験例1>変色を抑制するキレート剤I
下表に示す各成分を混合し、水酸化カリウムでpH5.5~7.5に調整して、比較例および各処方例を調製し、ガラス製密閉容器に充填して60℃に2週間保存した。
当該保存後に変色の有無を目視により、
◎:全く変色なし;
○:ほとんど変色なし;
△:やや変色した;
×:著しく変色した;
として評価した。結果を下表に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0048】
<試験例2>変色を抑制するキレート剤II
下表に示す各成分を混合し、水酸化カリウムでpH5.5~7.5に調整して、比較例および各処方例を調製し、ガラス製密閉容器に充填して50℃に6箇月保存した。
当該保存後に目視により変色の有無を、
◎:全く変色なし;
○:ほとんど変色なし;
△:やや変色した;
×:著しく変色した;
として評価した。結果を下表に示す。
表中、比較例および各処方例は、その他成分として保湿剤(グリセリン、ブチレングリコール、および1,2-ペンタンジオール)、感触改良剤(シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール)、防腐剤(フェノキシエタノール)、可溶化剤(POE硬化ヒマシ油)、および香料をそれぞれ、同量含有した。
【表2】
【0049】
<試験例3>変色を抑制するpH調整剤
下表に示す各成分を混合し、比較例および各処方例を調製し(いずれもpH5.5~7.5)、ガラス製密閉容器に充填して60℃に2週間保存した。
当該保存後に変色の有無を目視により、
◎:全く変色なし;
○:ほとんど変色なし;
△:やや変色した;
×:著しく変色した;
として評価した。結果を下表に示す。
【表3】
【0050】
<試験例4>変色を促進しないべたつき改善剤
下表に示す各成分を混合し、水酸化カリウムでpH5.5~7.5に調整して、比較例および各処方例を調製した。その他成分として、防腐剤(フェノキシエタノール)、可溶化剤、香料を含有した。
【0051】
(べたつきの評価)
3名のパネリストにより、比較例および各処方例(0.5g)を顔に塗布し、べたつき感について、比較例と比べて
◎:改善した;
○:やや改善した
×:改善しなかった
として評価した。結果を表4に示す。
【0052】
(変色の評価)
比較例および各処方例を、ガラス製密閉容器に充填して50℃に1週間または40℃に6箇月保存した。
当該保存後に目視により変色の有無を、
◎:全く変色なし;
○:ほとんど変色なし;
△:やや変色した;
×:著しく変色した;
として評価した。結果を表4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0053】
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールについて、1重量%、1.5重量%、または2重量%についても試験をした。結果は表4の0.5重量%と同じ結果であった。
【0054】
コハク酸ジエトキシエチルについて、1.5重量%、2重量%についても試験をした。結果は表4の1重量%と同じ結果であった。
【0055】
シリカについて、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の2重量%と同じであった。
ポリメタクリル酸メチルについて、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の2重量%と同じであった。
【0056】
タルクについて、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の2重量%と同じであった。
【0057】
ウレタンについて、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の2重量%と同じであった。
【0058】
PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンについて、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%についても試験をした。結果は表4の1重量%と同じであった。
【0059】
ポリグリセリンについて、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の1重量%と同じであった。
【0060】
ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルについて、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%についても試験をした。結果は表4の1重量%と同じであった。
【0061】
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10について、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%%についても試験をした。結果は表4の1.5重量%と同じであった。
【0062】
処方例41:化粧水
<製造方法>
定法に従って,精製水に水溶性成分を溶解した(主相)。水不溶性成分は界面活性剤と混合後に主相に添加し,化粧水を得た。
【0063】
処方例42:白濁化粧水
<配合成分>重量%
アデノシンリン酸 0.5
トラネキサム酸 3
グリセリン 1
ジプロピレングリコール 4
ポリエチレングリコール20000 1
エタノール 7
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.4
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 0.2
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 0.2
トリポリリン酸ナトリウム 0.1
アミノヒドロキシメチルプロパンジオール 適量
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
<製造方法>
定法に従って精製水に水溶性成分を溶解し,水相を調製した。水不溶性成分は,界面活性剤と加熱混合後に水相に徐々に添加し,白濁化粧水を得た。
【0064】
処方例43:美容液
<配合成分>重量%
アデノシンリン酸 1
トラネキサム酸 2
アスコルビン酸グルコシド 2
グリセリン 8
ソルビトール 2
オリゴヒアルロン酸 0.1
キサンタンガム 0.2
クインスシードガム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
エチドロン酸 0.03
アミノメチルプロパノール 適量
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
精製水 残余
<製造方法>
定法に従って,精製水に水溶性成分を溶解した(主相)。水不溶性成分は界面活性剤と混合後に主相に添加し,美容液を得た。
【0065】
処方例44:ジェル状美容液
<製造方法>
精製水にカルボマーを分散した後,その他の水溶性成分を加温溶解した(主相)。水不溶性成分は界面活性剤と混合して主相に添加して十分に均一混合して脱気後,目的のジェル状美容液を得た。
【0066】
処方例45:ジェル状乳液
<配合成分>重量%
アデノシンリン酸 0.5
トラネキサム酸 2
カルボキシビニルポリマー 0.2
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.5
グリセリン 6
ジプロピレングリコール 4
シクロペンタシロキサン 5
ジメチコン 1
ジメチコノール 0.2
アミノプロピルジメチコン 0.1
流動イソパラフィン 2
メタリン酸ナトリウム 0.4
アルギニン 適量
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
精製水 残余
<製造方法>
精製水に水溶性高分子とその他の水溶性成分を加温溶解し,水相を調製し,油溶性成分を加温溶解した油相をディスパーで分散混合し,乳化し,十分均一に混合して脱気後,目的のジェル乳液を得た。
【0067】
処方例46:乳液
<製造方法>
精製水に水溶性高分子とその他の水溶性成分を加温溶解し,水相を調製し,油溶性成分を加温溶解した油相をディスパーで分散混合し,乳化し,十分均一に混合して脱気後,目的の乳液を得た。
【0068】
処方例47:クリーム
<配合成分>重量%
アデノシンリン酸 1.5
トラネキサム酸 2
グリセリン 5
トレハロース 1
モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングルセリル 2
ステアリン酸グリセリル 3
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.5
トリエチルヘキサノイン 8
流動パラフィン 7
ワセリン 1
ジメチコン 0.5
ベヘニルアルコール 3
ステアリン酸 2
ポリビニルアルコール 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
フィチン酸 0.4
アミノヒドロキシメチルプロパンジオール 適量
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
精製水 残余
<製造方法>
精製水に水溶性高分子とその他の水溶性成分を加温溶解し,水相を調製し,油溶性成分を加温溶解した油相をディスパーで分散混合し,乳化し,十分均一に混合して脱気後,目的のクリームを得た。