(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】第二級アミン置換クマリン化合物、および蛍光標識としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20230705BHJP
C07D 417/04 20060101ALI20230705BHJP
C07D 413/04 20060101ALI20230705BHJP
C07H 19/14 20060101ALI20230705BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230705BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230705BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230705BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20230705BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C07D405/04
C07D417/04 CSP
C07D413/04
C07H19/14
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/68
C12Q1/6816 Z
C12N15/10 Z
(21)【出願番号】P 2019570930
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 GB2018052971
(87)【国際公開番号】W WO2019077331
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-14
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ニコラエヴィッチ ロマノフ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マッコーリー
(72)【発明者】
【氏名】キャロル アナスタシ
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ナイル ハインズ
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特許第7002478(JP,B2)
【文献】特開2010-254993(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0059321(US,A1)
【文献】中国特許第103740136(CN,B)
【文献】特開2005-007851(JP,A)
【文献】特開2002-278066(JP,A)
【文献】特開平08-245540(JP,A)
【文献】特開平05-263072(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0097092(KR,A)
【文献】特開平07-043896(JP,A)
【文献】特開平06-271599(JP,A)
【文献】特表2019-531255(JP,A)
【文献】Paul, Kamaldeep; Bindal, Shweta; Luxami, Vijay,"Synthesis of new conjugated coumarin-benzimidazole hybrids and their anticancer activity",Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2013年,Vol.23(12),p.3667-3672
【文献】Srinivasan, R.; Von Gutfeld, R. J.; Angadiyavar, C. S.; Dreyfus, R. W.,"Anomalous fluorescence and laser emission from 7-alkylaminocoumarins in acid solutions",Chemical Physics Letters,1974年,Vol.25(4),p.537-540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07H
C12N
C12Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩:
【化1】
式中、Xが、O、S、Se、またはNR
nであり、ここで、R
nが、HまたはC
1-6アルキルであり;
Rが、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、または任意に置換されたヘテロアリールであり;
R
1が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;
R
2およびR
4が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;
R
3が、CO
2HまたはSO
3Hで置換されたC
2-6アルキルである;
各R
5が、独立して、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;および
mが、0、1、2、3、または4である。
【請求項2】
R
2およびR
4が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(a)XがOまたはSであるか、あるいは
(b)XがNR
nであり、ここで、R
nがHまたはC
1-6アルキルであるか、あるいは
(c)R
3が-(CH
2)
nCOOHであり、ここで、nが2、3、4、5または6であるか、あるいは
(d)R
3が-(CH
2)
nSO
3Hであり、ここで、nが2、3、4、5または6である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mが0、1、または2である;および
各R
5が、独立して、任意に置換されたC
1-6アルキル、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、または-SO
2NH
2である;
のうち少なくとも一方を満たす、請求項1~3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
各R
5が、ハロ、-CN、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、または任意に置換されたC
1-6アルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
5が、-CO
2H、-SO
3Hまたは-SO
2NH
2で置換された、C
2-6アルキルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
5が-(CH
2)
xCOOHであり、ここで、xが2、3、4、5または6である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R
5が、-SO
3Hまたは-SO
2NH
2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R
1が、H、ハロ、またはC
1-6アルキルである、請求項1~8の何れかに記載の化合物。
【請求項10】
R
1が、HまたはClである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Rが、H、ハロ、またはC
1-6アルキルである、請求項1~10の何れかに記載の化合物。
【請求項12】
R
1がHまたはClである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
RがHである、請求項1~12の何れかに記載の化合物。
【請求項14】
R
2が、H、任意に置換されたアルキル、-CO
2Hもしくは-SO
3Hで任意に置換されたC
1-4アルキル、または-SO
3Hである、請求項1~13の何れかに記載の化合物。
【請求項15】
R
2がHまたは-SO
3Hである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
R
4が、H、任意に置換されたアルキル、-CO
2Hもしくは-SO
3Hで任意に置換されたC
1-4アルキル、または-SO
3Hである、請求項1~15の何れかに記載の化合物。
【請求項17】
Xが、OまたはSであり;RがHであり;R
1がHであり;R
3が-(CH
2)
nCOOHであり、ここで、nが2、3、4、5、または6であり;R
5がH、-SO
3H、または-SO
2NH
2であり;R
2が、Hまたは-SO
3Hであり;R
4が、Hまたは-SO
3Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
a)R
3が-(CH
2)
2COOHであるか、またはb)R
3が-(CH
2)
5COOHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式(II)の化合物およびその塩:
【化2】
式中、
X’が、O、S、およびNR
pから選択され、ここで、R
pが、HまたはC
1-6アルキルであり;
R
6が、HまたはC
1-4アルキルであり;
R
7が、H、ハロ、-CN、-OH、任意に置換されたC
1-4アルキル、任意に置換されたC
1-4アルケニル、任意に置換されたC
2-4アルキニル、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、および任意に置換されたC
1-4アルコキシであり;
R
8およびR
10が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであるか;あるいは
R
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成し;
R
9がC
2-6アルキルであり、当該C
2-6アルキルは、-CO
2H、-CO
2C
1-4アルキル、-CONH
2、-CONH(C
1-4アルキル)、-CON(C
1-4アルキル)
2、-CN、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)または-SO
2N(C
1-4アルキル)
2で置換され;
各R
11が、独立して、ハロ、-CN、カルボキシ、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、ニトロ、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、および任意に置換されたC
1-6アルコキシであり;および
qが、0、1、または2である。
【請求項20】
以下の(i)~(x)のうち少なくとも1つを満たす、請求項19に記載の化合物:
(i)X’がOまたはX’がSであるか、あるいはX’がNR
pであり、ここで、R
pがHまたはC
1-6アルキルである;
(ii)R
6がHであるか、またはR
6がC
1-4アルキルである;
(iii)R
7がHであるか、またはR
7が任意に置換されたC
1-4アルキル、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、もしくは-SO
2N(C
1-4アルキル)
2である;
(iv)R
8がHであるか、またはR
8が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(v)R
10がHであるか、またはR
10が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(vi)(a)R
8がHであり、かつR
10が-SO
3Hであるか、あるいは(b)R
8が-SO
3Hであり、かつR
10がHである;
(vii)R
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成する;
(viii)R
9が-CO
2Hで置換されたC
2-6アルキルである;
(ix)各R
11が、独立して、ハロ、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、または任意に置換されたアルキルである;
(x)qが0、1、または2である。
【請求項21】
以下の(i)~(x)のうち少なくとも1つを満たす、請求項19に記載の化合物:
(i)X’がOまたはX’がSであるか、あるいはX’がNR
pであり、ここで、R
pがHまたはC
1-6アルキルである;
(ii)R
6がHであるか、またはR
6がC
1-4アルキルである;
(iii)R
7が、-CO
2Hで任意に置換されたC
1-4アルキルである;
(iv)R
8がHであるか、またはR
8が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(v)R
10がHであるか、またはR
10が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(vi)(a)R
8がHであり、かつR
10が-SO
3Hであるか、あるいは(b)R
8が-SO
3Hであり、かつR
10がHである;
(vii)R
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成する;
(viii)R
9が-CO
2Hで置換されたC
2-6アルキルである;
(ix)各R
11が、独立して、ハロ、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、または任意に置換されたアルキルである;
(x)qが0、1、または2である。
【請求項22】
以下の(i)~(x)のうち少なくとも1つを満たす、請求項19に記載の化合物:
(i)X’がOまたはX’がSであるか、あるいはX’がNR
pであり、ここで、R
pがHまたはC
1-6アルキルである;
(ii)R
6がHであるか、またはR
6がC
1-4アルキルである;
(iii)R
7がHであるか、またはR
7が任意に置換されたC
1-4アルキル、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、もしくは-SO
2N(C
1-4アルキル)
2である;
(iv)R
8がHであるか、またはR
8が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(v)R
10がHであるか、またはR
10が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(vi)(a)R
8がHであり、かつR
10が-SO
3Hであるか、あるいは(b)R
8が-SO
3Hであり、かつR
10がHである;
(vii)R
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成する;
(viii)R
9が-(CH
2)
y-CO
2Hであり、ここで、yが2、3、4、または5である;
(ix)各R
11が、独立して、ハロ、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、または任意に置換されたアルキルである;
(x)qが0、1、または2である。
【請求項23】
以下の(i)~(x)のうち少なくとも1つを満たす、請求項19に記載の化合物:
(i)X’がOまたはX’がSであるか、あるいはX’がNR
pであり、ここで、R
pがHまたはC
1-6アルキルである;
(ii)R
6がHであるか、またはR
6がC
1-4アルキルである;
(iii)R
7が、-CO
2Hで任意に置換されたC
1-4アルキルである;
(iv)R
8がHであるか、またはR
8が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(v)R
10がHであるか、またはR
10が-CO
2H、-SO
3H、もしくは-SO
2NH
2である;
(vi)(a)R
8がHであり、かつR
10が-SO
3Hであるか、あるいは(b)R
8が-SO
3Hであり、かつR
10がHである;
(vii)R
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成する;
(viii)R
9が-(CH
2)
y-CO
2Hであり、ここで、yが2、3、4、または5である;
(ix)各R
11が、独立して、ハロ、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、または任意に置換されたアルキルである;
(x)qが0、1、または2である。
【請求項24】
以下からなる群より選択される、化合物:
【化3】
および、それらの塩。
【請求項25】
請求項1~24の何れかに記載の化合物で標識された、標識ヌクレオチドまたは標識オリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第二級アミン置換クマリン化合物、および蛍光マーカーとしてのそれらの使用に関する。特に、前記化合物は、核酸シークエンシングアプリケーションにおけるヌクレオチド用の蛍光標識として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
この開示が関係する最新技術をより完全に説明するために、本出願ではいくつかの出版物および特許文書が参照される。これらの出版物および文書のそれぞれの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
蛍光標識を有する核酸の非放射性検出は、分子生物学における重要な技術である。組み換えDNA技術で用いられる多くの手順は、以前は、32Pなどで放射性標識されたヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用に依存していた。放射性化合物は、核酸および他の目的の分子の高感度の検出を可能にする。しかしながら、費用、限られた貯蔵寿命、不十分な感度、そしてより重要なことである安全性への配慮など、放射性同位元素の使用には重大な制限がある。放射性標識の必要性を排除することは、安全リスクと、試薬廃棄などに関連する環境への影響およびコストとの双方を低減させる。非放射性蛍光検出に適した方法には、非限定的な例として、自動化DNAシークエンシング、ハイブリダイゼーション方法、ポリメラーゼ連鎖反応生成物のリアルタイム検出、およびイムノアッセイが含まれる。
【0004】
多くのアプリケーションにとって、複数の空間的に重なり合う被検物の独立した検出を達成するために、複数のスペクトル的に区別可能な蛍光標識を使用することが望ましい。このような多重方法では、反応容器の数を減らして実験プロトコルを単純化し、特定用途向け試薬キットの製造を容易にし得る。マルチカラー自動化DNAシークエンシングシステムなどにおいて、多重蛍光検出は、単一の電気泳動レーンにおける複数のヌクレオチド塩基の分析を可能にし、それによってシングルカラーの方法よりもスループットを増加させ、レーン間の電気泳動移動度のばらつきに関連する不正確性を減少させる。
【0005】
しかしながら、多重蛍光検出は問題を含む可能性があり、蛍光標識の選択を制約する多くの重要な因子がある。第一に、所定のアプリケーションにおいて、適切に分離された吸収および発光スペクトルを有する色素化合物を見つけることは困難であり得る。さらに、いくつかの蛍光色素が一緒に使用される場合、色素の吸収帯は通常広く分離されており、2つの色素であっても同等の蛍光励起効率を達成することは困難であるので、同時励起によって区別可能なスペクトル領域に蛍光シグナルを発生させることは困難であり得る。多くの励起方法は、レーザーなどの高出力光源を使用し、そのため、色素はこのようなレーザー励起に耐えるのに充分な光安定性を有しなければならない。分子生物学的方法において特に重要な最後の検討事項は、蛍光色素が、例えばDNA合成溶媒および試薬、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、ならびにリガーゼ酵素などの試薬の化学的性質(reagent chemistries)と適合性でなければならないということである。
【0006】
シークエンシング技術が進歩するにつれて、上記の制約の全てを満たし、特に固相シークエンシングなどのハイスループット分子法に適した、更なる蛍光色素化合物、それらの核酸コンジュゲート、および複数の色素セットに対する必要性が生じてきている。
【0007】
適切な蛍光強度、形状、および蛍光の極大波長などの改良された蛍光特性を有する蛍光色素分子は、核酸シークエンシングの速度および精度を改良することができる。測定が水ベースの生物学的緩衝液中において高温で行われる場合、ほとんどの色素の蛍光強度はそのような条件では著しく低いので、強い蛍光シグナルは特に重要である。さらに、色素が結合している塩基の性質も、蛍光極大、蛍光強度、および他の分光学的な色素の特性に影響を与える。核酸塩基と蛍光色素の間の配列特異的相互作用は、蛍光色素の特定の設計によって調整することができる。蛍光色素の構造の最適化は、ヌクレオチドの取り込みの効率を改良し、シークエンシングエラーのレベルを低減し、核酸シークエンシングにおける試薬の使用量を削減し、それにより核酸シークエンシングのコストを低減することができる。
【0008】
いくつかの光学的開発および技術的開発は、大幅に向上した画質をもたらしたが、最終的には低い光学分解能によって制限された。一般に、光学顕微鏡の光学分解能は、使用する光の波長の約半分の間隔の物体に制限される。したがって、実際には、かなり離れて(少なくとも200~350nm)配置されている物体のみが、光学顕微鏡によって解像され得た。画像の解像度を向上させ、単位表面積あたりの解像可能な物体の数を増加させる1つの方法は、より短い波長の励起光を使用することである。例えば、光の波長が同一の光学系を用いてΔλ~100nmだけ短くされると、解像度が向上し(約Δ50nm/(約15%))、歪みの少ない画像が記録され、認識可能な領域の物体の密度が約35%増加するであろう。
【0009】
特定の核酸シークエンシング方法は、レーザー光を使用して、色素標識ヌクレオチドを励起および検出する。これらの装置は、660nmで励起可能な適切な色素とともに、赤色レーザーなどのより長い波長の光を使用する。有用な解像度を維持しながら、より密に詰まった核酸シークエンシングクラスターを検出するために、より短波長の青色光源(450~460nm)が使用され得る。この場合、光学分解能は、より長波長の赤色蛍光色素の発光波長ではなく、例えば532nmの「グリーンレーザー」など、その次に最も長い波長の光源で励起可能な色素の発光によって制限されるであろう。したがって、シークエンシングアプリケーションにおいて蛍光検出で使用するための青色色素標識に対するニーズが存在する。
【0010】
青色色素の化学と関連するレーザー技術は、例えば、DVDおよびBlu-rayディスク用の色素を生成するために改良されてきたが、これらの化合物はバイオラベルには適さず、バイオマーカーとして使用することができない。
【0011】
残念ながら、ヌクレオチド標識に適した強力な蛍光を有する市販の青色色素は、依然として非常にまれである。本明細書に記載されているのは、青色光励起下における強い蛍光を有し、ヌクレオチド標識に適した新規蛍光化合物である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、第二級アミン置換クマリン誘導体に関する。当該化合物は、特に核酸シークエンシングアプリケーションにおけるヌクレオチド標識のための蛍光標識として有用であり得る。いくつかの態様では、当該色素は450~460nmの波長で光を最適に吸収し、450~460nmの波長を有する青色波長励起源が使用される状況で特に有利である。青色波長の励起により、蛍光発光の波長が短くなるため、単位面積あたり、より高密度のフィーチャ(features)の検出および解像(resolution)が可能になる。このような色素がヌクレオチドとのコンジュゲートに使用されると、核酸シークエンシング方法の間に得られるシークエンシング読みとりデータ(sequencing reads)の長さ、強度、精度、およびクオリティーに改善が見られる。
【0013】
第一の態様は、式(I)の化合物またはその塩である:
【化1】
式中、Xが、O、S、Se、またはNR
nであり、ここで、R
nが、HまたはC
1-6アルキルであり;RおよびR
1が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;R
2およびR
4が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであるか;あるいはR
2およびR
4の一方が、R
3に結合して、任意に置換された複素環を形成し;R
3が、H、C
1-6アルキル、置換されたC
2-6アルキル、任意に置換されたC
2-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたカルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリールであるか、あるいはR
3が、R
2またはR
4に結合して、任意に置換された環を形成し;ここで、R
1が-CNの場合、R
3はC
1-6アルキルではなく;各R
5が、独立して、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO
2、-SO
3H、-SO
2NH
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;およびmが、0、1、2、3、または4である。
【0014】
いくつかの態様では、Rは-CNではなく、Rが、H、ハロ、-CO2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO2、-SO3H、-SO2NH2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである。
【0015】
別の態様は、式(II)の化合物およびその塩である:
【化2】
式中、X’が、O、S、およびNR
pから選択され、ここで、R
pが、HまたはC
1-6アルキルであり;R
6が、HまたはC
1-4アルキルであり;R
7が、H、ハロ、-CN、-OH、任意に置換されたC
1-4アルキル、任意に置換されたC
1-4アルケニル、任意に置換されたC
2-4アルキニル、-CO
2H、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、および任意に置換されたC
1-4アルコキシであり;R
8およびR
10が、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであるか;あるいはR
8およびR
10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO
2H、アミノ、-OH、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたC
1-6アルキル、任意に置換されたC
1-6アルケニル、任意に置換されたC
2-6アルキニル、または任意に置換されたC
1-6アルコキシであり、かつR
8およびR
10の他方が、R
9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成し;R
9が、-CO
2H、-CO
2C
1-4アルキル、-CONH
2、-CONH(C
1-4アルキル)、-CON(C
1-4アルキル)
2、-CN、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、または-SO
2N(C
1-4アルキル)
2で置換された、C
2-6アルキルまたはC
1-6アルキルであり;各R
11が、独立して、ハロ、-CN、カルボキシ、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、ニトロ、-SO
3H、-SO
2NH
2、-SO
2NH(C
1-4アルキル)、-SO
2N(C
1-4アルキル)
2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、および任意に置換されたC
1-6アルコキシであり;およびqが、0、1、または2である。
【0016】
別の態様では、本開示の化合物は、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、リガンド、粒子、細胞、半固体表面(例えば、ゲル)、または固体表面などの基質部分にコンジュゲートしている。コンジュゲーションは、カルボキシル基-CO2Hを介して行うことができ、当該カルボキシル基は、当技術分野で知られている方法を使用して、部分(ヌクレオチドなど)またはそれに結合したリンカー上のアミノ基またはヒドロキシル基と反応させて、アミドまたはエステルを形成することができる。
【0017】
したがって、本開示のさらなる態様によれば、例えば、基質部分への共有結合を可能にするリンカー基を含む色素化合物が提供される。リンキング(Linking)は、R基のいずれかを含む、色素の任意の位置で実行され得る。リンキング(Linking)は、式(I)中のR3もしくはR5を介して、または式(II)中のR9もしくはR11を介して実行され得る。
【0018】
更なる態様によれば、本開示は、以下の式によって定義されるヌクレオシド化合物またはヌクレオチド化合物を提供する:
N-L-Dye
式中、Nはヌクレオチドであり;Lは任意のリンカー部分であり;Dyeは、本開示による蛍光化合物である。したがって、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、(a)式(I)または(b)式(II)の化合物で標識された部分、特にヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに関する。
【0019】
更なる態様では、本開示は、本開示の色素化合物を使用したシークエンシング方法を提供する。
【0020】
更なる態様によれば、本開示は、様々な免疫学的アッセイ、オリゴヌクレオチドもしくは核酸の標識、または合成によるDNAシークエンシング(DNA sequencing by synthesis)に使用され得る(遊離またはコンジュゲート形態の)色素化合物を含むキットも提供する。更に別の態様では、本開示は、自動化装置プラットフォームでの合成によるシークエンシング(sequencing by synthesis)のサイクルに特に適した色素「セット」を含むキットを提供する。いくつかの態様では、当該キットは、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識ヌクレオチドである1つ以上のヌクレオチドを含む。
【0021】
本開示の更なる態様は、第二級アミン置換クマリン色素およびそのような色素で標識されたヌクレオチドなどの部分を含む、本開示の化合物の化学的調製である。
【0022】
更なる態様は、本明細書に記載の標識ヌクレオチドをシークエンシングアッセイのポリヌクレオチドに組み込むこと、および組み込まれた標識ヌクレオチドを検出することを含むシークエンシング方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】Illuminaの合成によるシークエンシング(sequencing-by-synthesis;SBS)ケミストリーを用いた、本明細書に記載される3つの青色色素についての仮想的なシークエンシング結果を示す散布図である(
図1A、
図1B、および
図1C)。4つのヌクレオチド上の色素は、実施例5に記載されているように、4つの異なるスペクトル分解領域として検出された。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、蛍光検出および合成によるシークエンシング(sequencing by synthesis)の方法に特に適した第二級アミン置換クマリン化合物を提供する。本明細書に記載される実施形態は、式(I)の構造の色素およびそれらの誘導体に関する。
【0025】
第一の態様によれば、本開示は式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0026】
様々な置換基についての特定の制限を以下に示す。特段の指定がない限り、各々の単一の基は、任意の他の個々の制限と組み合わせることができる。
【0027】
水ベースの溶液中における、バイオマーカーおよび特にそれらのバイオコンジュゲートの蛍光特性を改善するために、式(I)の化合物は以下の化合物である:
i)R2が-SO3Hであり;かつ/または
ii)R4が-SO3Hであり;かつ/または
iii)R5が-SO3Hもしくは-SO2NH2である。
【0028】
いくつかの態様では、XがOまたはSである。いくつかの態様では、XがOである。いくつかの態様では、XがSである。いくつかの態様では、XがNRnであり、ここで、RnがHまたはC1-6アルキルであり、いくつかの態様では、RnがHである。
【0029】
いくつかの態様では、R3がHである。いくつかの態様では、R3がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。他の態様では、R3がエチルである。他の態様では、R3が、置換されたC2-6アルキルである。他の態様では、R3が、-CO2Hで置換されたC2-6アルキルである。他の態様では、R3が、任意に置換されたC2-6アルケニルまたは任意に置換されたC2-6アルキニルである。いくつかの態様では、R3が、R2またはR4に結合して、任意に置換された環を形成する。
【0030】
リンカーまたはヌクレオチドへの結合(coupling)がR3を介する場合、R3は、それに結合した官能基への結合(coupling)を可能にするのに十分な長さでなければならない。いくつかの態様では、R3は-CH2COOHまたは-CH2COO-ではない。
【0031】
必要に応じて、R3が-(CH2)nCOOHであり、ここで、nが2~6である。いくつかの態様では、nが2、3、4、5または6である。他の態様では、nが2または5である。いくつかの態様では、nが2である。いくつかの態様では、nが5である。
【0032】
必要に応じて、R3が-(CH2)nSO3Hであり、ここで、nが2~6である。いくつかの態様では、nが2、3、4、5または6である。他の態様では、nが2または5である。いくつかの態様では、nが2である。いくつかの態様では、nが5である。
【0033】
インドール部分のベンゼン環は、R5として示される置換基によって、1つ、2つ、3つ、または4つの位置で任意に置換される。mが0の場合、ベンゼン環は非置換である。mが1より大きい場合、各R5は同じでも異なっていてもよい。いくつかの態様では、mは0である。他の態様では、mは1である。他の態様では、mは2である。いくつかの態様では、mは1、2、または3であり、各R5は、独立して、ハロ、-CN、-CO2H、アミノ、-OH、-SO3H、または-SO2NH2である。いくつかの態様では、R5が-(CH2)xCOOHであり、ここで、xが2~6である。いくつかの態様では、xが2、3、4、5または6である。他の態様では、xが2または5である。いくつかの態様では、xが2である。いくつかの態様では、xが5である。
【0034】
いくつかの態様では、R5が、ハロ、-CN、-CO2H、-SO3H、-SO2NH2、または任意に置換されたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、R5が、ハロ、-CO2H、-SO3H、または-SO2NH2である。いくつかの態様では、R5が、-CO2H、-SO3Hまたは-SO2NH2で置換された、C2-6アルキルである。いくつかの態様では、各R5が、独立して、任意に置換されたC1-6アルキル、ハロ、-CN、-CO2H、アミノ、-OH、-SO3H、または-SO2NH2である。
【0035】
いくつかの態様では、R1がHである。いくつかの態様では、R1がハロである。いくつかの態様では、R1がClである。いくつかの態様では、R1がC1-6アルキルである。いくつかの態様では、R1がメチルである。
【0036】
いくつかの態様では、RがHである。いくつかの態様では、Rがハロである。いくつかの態様では、RがClである。いくつかの態様では、RがC1-6アルキルである。いくつかの態様では、Rがメチルである。いくつかの態様では、Rは-CNではない。いくつかの態様では、Rが、H、ハロ、-CO2H、アミノ、-OH、C-アミド、N-アミド、-NO2、-SO3H、-SO2NH2、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアルコキシ、任意に置換されたアミノアルキル、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールである。
【0037】
いくつかの態様では、R2がHである。いくつかの態様では、R2が任意に置換されたアルキルである。いくつかの態様では、R2が、-CO2Hまたは-SO3Hで任意に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの態様では、R2が、-SO3Hである。いくつかの態様では、R2がR3に結合して、任意に置換された複素環、例えば1つ以上のアルキル基で任意に置換されたピロリジンまたはピペリジンを形成する。いくつかの態様では、R2が、H、任意に置換されたアルキル、-CO2Hもしくは-SO3Hで任意に置換されたC1-4アルキル、または-SO3Hである。いくつかの態様では、R2が、Hまたは-SO3Hである。
【0038】
いくつかの態様では、R4がHである。いくつかの態様では、R4が任意に置換されたアルキルである。いくつかの態様では、R4が、-CO2Hまたは-SO3Hで任意に置換されたC1-4アルキルである。いくつかの態様では、R4が、-SO3Hである。いくつかの態様では、R4がR3に結合して、任意に置換された複素環、例えば1つ以上のアルキル基で任意に置換されたピロリジンまたはピペリジンを形成する。
【0039】
式(I)の化合物の特定の例は、Xが、OまたはSであり;RがHであり;R1がHであり;R3が-(CH2)nCOOHであり、ここで、nが2~6であり;R5がH、-SO3H、または-SO2NH2であり;R2が、Hまたは-SO3Hであり;R4が、Hまたは-SO3Hである場合を含む。
【0040】
式(I)の化合物の特定の例は、Xが、OまたはSであり;RがHであり;R1がHであり;R3が-(CH2)2COOHであり;R5がH、-SO3H、または-SO2NH2であり;R2が、Hまたは-SO3Hであり;R4が、Hまたは-SO3Hである場合を含む。
【0041】
式(I)の化合物の特定の例は、Xが、OまたはSであり;RがHであり;R1がHであり;R3が-(CH2)5COOHであり;R5がH、-SO3H、または-SO2NH2であり;R2が、Hまたは-SO3Hであり;R4が、Hまたは-SO3Hである場合を含む。
【0042】
式(II)のいくつかの態様では、X’がOである。いくつかの態様では、X’がSである。いくつかの態様では、X’がNRpであり、ここで、Rpが、HまたはC1-6アルキルである。いくつかの態様では、X’がNRpであり、ここで、RpがHである。
【0043】
いくつかの態様では、R6がHである。いくつかの態様では、R6がC1-4アルキルである。
【0044】
いくつかの態様では、R7がHである。いくつかの態様では、R7が任意に置換されたC1-4アルキル、-CO2H、-SO3H、-SO2NH2、-SO2NH(C1-4アルキル)、または-SO2N(C1-4アルキル)2である。いくつかの態様では、R7が、-CO2Hで任意に置換されたC1-4アルキルである。
【0045】
いくつかの態様では、R8がHである。いくつかの態様では、R8が-CO2H、-SO3H、または-SO2NH2である。いくつかの態様では、R8が-SO3Hである。
【0046】
いくつかの態様では、R10がHである。いくつかの態様では、R10が-CO2H、-SO3Hまたは-SO2NH2である。いくつかの態様では、R10が-SO3Hである。いくつかの態様では、R8がHであり、かつR10が-SO3Hである。いくつかの態様では、R8が-SO3Hであり、かつR10がHである。
【0047】
いくつかの態様では、R8およびR10の一方が、H、ハロ、-CN、-CO2H、アミノ、-OH、-SO3H、-SO2NH2、-SO2NH(C1-4アルキル)、-SO2N(C1-4アルキル)2、任意に置換されたC1-6アルキル、任意に置換されたC1-6アルケニル、任意に置換されたC2-6アルキニル、または任意に置換されたC1-6アルコキシであり、かつR8およびR10の他方が、R9と一緒になって、任意に置換された4~7員の複素環を形成する。
【0048】
いくつかの態様では、R9がC2-6アルキルである。いくつかの態様では、R9が-CO2H、-CO2C1-4アルキル、-CONH2、-CONH(C1-4アルキル)、-CON(C1-4アルキル)2、-CN、-SO3H、-SO2NH2、-SO2NH(C1-4アルキル)もしくは-SO2N(C1-4アルキル)2で置換されたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、R9が-CO2Hで置換されたC1-6アルキルである。いくつかの態様では、R9が-(CH2)y-CO2Hであり、ここで、yが2、3、4、または5である。
【0049】
いくつかの態様では、各R11が、独立して、ハロ、-CO2H、-SO3H、-SO2NH2、-SO2NH(C1-4アルキル)、-SO2N(C1-4アルキル)2、または任意に置換されたアルキルである。他の態様では、各R11が、独立して、ハロ、-CO2H、-SO3H、または-SO2NH2である。
【0050】
いくつかの態様では、qが0である。他の態様では、qが1である。更に他の態様では、qが2である。
【0051】
第二級アミン置換クマリン色素の具体例は以下を含む:
【化3】
および、それらの塩。
【0052】
特に有用な化合物は、本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。前記標識ヌクレオチドまたは標識ヌクレオチドオリゴヌクレオチドは、アルキル-カルボキシ基を介してクマリン分子の窒素原子に結合して、アルキル-アミドを形成する標識を有し得る。前記標識ヌクレオチドまたは標識オリゴヌクレオチドは、リンカー部分を介して、ピリミジン塩基のC5位または7-デアザプリン塩基のC7位に結合した標識を有し得る。
【0053】
前記標識ヌクレオチドまたは標識ヌクレオチドオリゴヌクレオチドはまた、前記ヌクレオチドのリボース糖またはデオキシリボース糖に共有結合したブロッキング基を有し得る。前記ブロッキング基は、前記リボース糖またはデオキシリボースの糖の任意の位置に結合させることができる。特定の実施形態では、前記ブロッキング基は、前記ヌクレオチドの前記リボース糖またはデオキシリボース糖の3’OH位にある。
【0054】
本明細書では、2つ以上のヌクレオチドを含むキットであって、少なくとも1つのヌクレオチドが本開示の化合物で標識されたヌクレオチドである、キットが提供される。前記キットは、2つ以上の標識ヌクレオチドを含み得る。前記ヌクレオチドは、2つ以上の蛍光標識で標識され得る。前記標識の2つ以上は、単一の励起源を使用して励起され得、当該単一の励起源はレーザーであり得る。例えば、スペクトルの重複領域での励起により両方の標識が蛍光を発するように、前記2つ以上の標識の励起帯は、少なくとも部分的に重複し得る。特定の実施形態では、前記2つ以上の標識からの発光は、スペクトルの異なる領域で発生し、前記発光を光学的に区別することによって、前記標識の少なくとも1つの存在を決定することができる。
【0055】
前記キットは、4つの標識ヌクレオチドを含み得、4つのヌクレオチドの第1が本明細書に開示される化合物で標識される。そのようなキットでは、前記4つのヌクレオチドの各々は、他の3つのヌクレオチドの標識と同じまたは異なる化合物で標識され得る。したがって、前記化合物の1つ以上は、当該化合物が他の化合物と区別可能であるように、異なる吸収極大および/または発光極大を有し得る。例えば、各化合物は、前記化合物のそれそれが他の3つの化合物と区別可能であるように、異なる吸収極大および/または発光極大を有し得る。極大以外の吸収スペクトルおよび/または発光スペクトルの部分が異なる可能性があり、これらの違いを利用して前記化合物を区別できることが理解されよう。前記キットは、前記化合物の2つ以上が異なる吸収極大を有するものであってもよい。本発明の化合物は、典型的には500nm未満の領域において光を吸収する。
【0056】
本明細書に記載されている化合物、ヌクレオチド、またはキットは、生物学的システム(例えば、そのプロセスまたは構成要素を含む)を検出、測定、または特定するために使用され得る。前記化合物、ヌクレオチドまたはキットを使用することができる例示的な技術は、シークエンシング、発現解析、ハイブリダイゼーション解析、遺伝子解析、RNA解析、細胞アッセイ(例えば、細胞結合解析または細胞機能解析)、またはタンパク質アッセイ(例えば、タンパク質結合アッセイまたはタンパク質活性アッセイ)を含む。前記使用は、特定の技術を実施するための自動化装置、例えば、自動化シークエンシング装置における使用であり得る。前記自動化シークエンシング装置が異なる波長で動作する2つの光源を含み得る。
【0057】
本明細書では、本開示の化合物の合成方法が開示される。本開示による色素は、様々な異なる適切な出発材料から合成され得る。クマリン色素を調製する方法は、当技術分野で周知である。
【0058】
(定義)
本明細書で使用されている節の見出しは、単に編成目的のためにすぎず、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0059】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本教示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の様々な実施形態に対して様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書で説明される様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で他の修正および変形を包含することが意図されている。
【0060】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。用語「含む(including)」、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んでいた(included)」などの他の語形の使用は限定的なものではない。用語「有する(having)」、ならびに「有する(have)」、「有する(has)」、および「有していた(had)」などの他の語形の使用は限定的なものではない。本明細書で使用される場合、請求項の移行句であろうと本体部であろうと、用語「含む(comprise(s))」および「含む(comprising)」は、非限定的意味を有するものと解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、「少なくとも有する」または「少なくとも含む」という句と同義的に解釈されるべきである。例えば、方法との関連で使用されている場合、用語「含む(comprising)」は、方法が少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、または装置との関連で使用されている場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、または装置が少なくとも列挙された特徴または構成要素を含むが、追加の特徴または構成要素も含み得ることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「共有結合(covalently attached)」または「共有結合(covalently bonded)」は、原子間の電子対の共有を特徴とする化学結合の形成を指す。例えば、共有結合ポリマーコーティングは、他の手段、例えば、接着または静電相互作用による表面への付着と比較して、基質の官能化表面と化学結合を形成するポリマーコーティングを指す。表面に共有結合しているポリマーは、共有結合以外の手段によっても結合し得ることが理解されよう。
【0062】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、元素周期表の第7列の放射線安定原子のうちのいずれか一つ、例えばフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)直鎖状または分岐状の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る(「1~20」などの数値範囲は、本明細書中に記載されているときはいつでも、所定の範囲の各整数を指す;「1~20個の炭素原子」は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない場合の用語「アルキル」の記載も包含する)。アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する中サイズのアルキルでもあり得る。アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキル基は、「C1-4アルキル」または同様の表記として示され得る。ただの例示として、「C1-6アルキル」は、アルキル鎖中に1~6個の炭素原子があることを示し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群から選択される。典型的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに決して限定されるものではない。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、式-ORを指し、ここで、Rは上記に定義されているアルキルであり、例えば、「C1-9アルコキシ」として、限定はされないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシなどが挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、1以上の二重結合を含む直鎖状または分岐状の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」の記載も包含する。アルケニル基は、2~9個の炭素原子を有する中サイズのアルケニルでもあり得る。アルケニル基は、2~6個の炭素原子を有する低級アルケニルでもあり得る。アルケニル基は、「C2-6アルケニル」または同様の表記として示され得る。ただの例示として、「C2-6アルケニル」は、アルケニル鎖中に2~6個の炭素原子があることを示し、すなわち、アルケニル鎖は、エテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2,-ジエニル、およびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群から選択される。典型的なアルケニル基として、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルなどが挙げられるが、これらに決して限定されるものではない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、1以上の三重結合を含む直鎖状または分岐状の炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アルキニル」の記載も包含する。アルキル基は、2~9個の炭素原子を有する中サイズのアルキニルでもあり得る。アルキニル基は、2~6個の炭素原子を有する低級アルキニルでもあり得る。アルキニル基は、「C2-6アルキニル」または同様の表記として示され得る。ただの例示として、「C2-6アルキニル」は、アルキニル鎖中に2~6個の炭素原子があることを示し、すなわち、アルキニル鎖は、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イル、および2-ブチニルからなる群から選択される。典型的なアルキニル基として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルなどが挙げられるが、これらに決して限定されるものではない。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」は、主鎖中に1以上のヘテロ原子、すなわち、炭素以外の元素、例えば、限定はされないが、窒素、酸素、および硫黄を含有する直鎖状または分岐状の炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアルキル」の記載も包含する。ヘテロアルキル基は、1~9個の炭素原子を有する中サイズのヘテロアルキルでもあり得る。ヘテロアルキル基は、1~6個の炭素原子を有する低級ヘテロアルキルでもあり得る。ヘテロアルキル基は、「C1-6ヘテロアルキル」または同様の表記として示され得る。ヘテロアルキル基は、1以上のヘテロ原子を含有し得る。ただの例示として、「C4-6ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル鎖中に4~6個の炭素原子があり、さらに骨格鎖中に1個以上のヘテロ原子があることを示す。
【0068】
用語「芳香族」は、共役パイ電子系を有する環または環系を指し、炭素環式芳香族基(例えば、フェニル)および複素環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を含む。当該用語は、環系全体が芳香族であるという条件の下に、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する原子の対を共有する環)基を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、当該系中の全ての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「アリール」の記載も包含する。いくつかの実施形態において、アリール基は、6~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6-10アルキル」、「C6またはC10アリール」、または同様の表記として示され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合しているアリール基であり、例えば「C7-14アラルキル」などとしては、限定はされないが、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられる。いくつかの場合において、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1-6アルキレン基)である。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環骨格中に1以上のヘテロ原子、すなわち、炭素以外の元素、例えば、限定はされないが、窒素、酸素、および硫黄を含有する芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、当該系中の全ての環は芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18の環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアリール」の記載も包含する。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、5~10の環員数または5~7の環員数を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員のヘテロアリール」、「5~10員のヘテロアリール」、または同様の表記として示され得る。ヘテロアリール環の例として、限定はされないが、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinlinyl)、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、およびベンゾチエニルが挙げられる。
【0072】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合しているヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1-6アルキレン基)である。
【0073】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」は、環系骨格中に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環または環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2以上の環が、縮合、架橋、またはスピロ結合様式で共に結合していてもよい。カルボシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件の下に、任意の飽和度を有し得る。したがって、カルボシクリルには、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが含まれる。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「カルボシクリル」の記載も包含する。カルボシクリル基は、3~10個の炭素原子を有する中サイズのカルボシクリルでもあり得る。カルボシクリル基は、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルでもあり得る。カルボシクリル基は、「C3-6カルボシクリル」または同様の表記として示され得る。カルボシクリル環の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全飽和カルボシクリル環または環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格中に1以上のヘテロ原子を含有する非芳香族環式環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合、架橋、またはスピロ結合様式で共に結合していてもよい。ヘテロシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件の下に、任意の飽和度を有し得る。ヘテロ原子は、環系中の非芳香族環または芳香族環のいずれに存在していてもよい。ヘテロシクリル基は、3~20の環員数(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロシクリル」の記載も包含する。ヘテロシクリル基は、3~10の環員数を有する中サイズのヘテロシクリルでもあり得る。ヘテロシクリル基は、3~6の環員数を有するヘテロシクリルでもあり得る。ヘテロシクリル基は、「3~6員のヘテロシクリル」または同様の表記として示され得る。好ましい6員の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、1~3のO、N、またはSから選択され、好ましい5員の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択される1~2のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例として、限定はされないが、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル(pyrrolidionyl)、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられる。
【0076】
「O-カルボキシ」基は、「-OC(=O)R」基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0077】
「C-カルボキシ」基は、「-C(=O)OR」基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例として、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が挙げられる。
【0078】
「スルホニル」基は、「-SO2R」基を指し、ここで、Rは、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0079】
「スルフィノ」基は、「-S(=O)OH」基を指す。
【0080】
「S-スルホンアミド」基は、「-SO2NRARB」基を指し、ここで、RAおよびRBは、それぞれ独立して、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0081】
「N-スルホンアミド」基は、「-N(RA)SO2RB」基を指し、ここで、RAおよびRBは、それぞれ独立して、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0082】
「C-アミド」基は、「-C(=O)NRARB」基を指し、ここで、RAおよびRBは、それぞれ独立して、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0083】
「N-アミド」基は、「-N(RA)C(=O)RB」基を指し、ここで、RAおよびRBは、それぞれ独立して、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0084】
「アミノ」基は、「-NRARB」基を指し、ここで、RAおよびRBは、それぞれ独立して、本明細書で定義されている、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例として、遊離アミノ(すなわち-NH2)が挙げられる。
【0085】
「アミノアルキル」基は、アルキレン基を介して結合しているアミノ基を指す。
【0086】
「アルコキシアルキル」基は、アルキレン基を介して結合しているアルコキシ基を指し、例えば、「C2-8アルコキシアルキル」などである。
【0087】
本明細書で使用される場合、置換基は、1個以上の水素原子が他の原子または基で交換されている非置換型親基に由来する。特段の定めがない限り、基を「置換型」と見なす場合、当該基が、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C1~C6アルキニル、C1~C6ヘテロアルキル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)C3~C7カルボシクリル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)C3~C7-カルボシクリル-C1~C6-アルキル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)3~10員ヘテロシクリル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)3~10員ヘテロシクリル-C1~C6-アルキル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)アリール、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)アリール(C1~C6)アルキル、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)5~10員ヘテロアリール、(ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシで任意に置換された)5~10員ヘテロアリール(C1~C6)アルキル、ハロ、-CN、ヒドロキシ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシ(C1~C6)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C1~C6)アルキル(例えば、-CF3)、ハロ(C1~C6)アルコキシ(例えば、-OCF3)、C1~C6アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、-SO3H、スルフィノ、-OSO2C1-4アルキル、およびオキソ(=O)から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。基が「任意に置換された」と記載されている場合は常に、当該基は上記の置換基で置換されていることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、置換アルキル基、置換アルケニル基、または置換アルキニル基は、ハロ、-CN、SO3
-、SRa、ORa、NRbRc、オキソ、CONRbRc、COOH、およびCOORbからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立して、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールから選択される。
【0089】
本明細書に記載の化合物は、いくつかのメソメリー型として表すことができる。単一の構造が描かれる場合、関連するメソメリー型のいずれかが意図される。本明細書に記載のクマリン化合物は、単一の構造によって表されているが、関連するメソメリー型のいずれかとして等しく示すことができる。式(I)について、例示的なメソメリー構造を以下に示す:
【化4】
本明細書に記載の化合物の単一のメソメリー型が示される各場合において、代替のメソメリー型も同様に企図される。
【0090】
当業者には理解されるように、本明細書に記載の化合物は、イオン化された形態、例えば、-CO2
-または-SO3
-で存在し得る。化合物が正または負に帯電した置換基、例えばSO3-を含む場合、当該化合物が全体として中性であるように、当該化合物は、負または正に帯電した対イオンも含み得る。他の態様では、化合物は塩の形態で存在する場合があり、対イオンは共役酸または共役塩基によって提供される。
【0091】
特定のラジカル命名法は、文脈に応じて、モノラジカルまたはジラジカルのいずれかを含み得ることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残部への2つの結合点を必要とする場合、当該置換基はジラジカルであると理解される。例えば、2つの結合点を必要とするアルキルとして識別される置換基には、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-などのジラジカルが含まれる。他のラジカル命名法は、ラジカルが「アルキレン」または「アルケニレン」などのジラジカルであることを明確に示している。
【0092】
2つの「隣接する」R基が「それらが結合している原子と共に」環を形成すると記載されている場合、原子、介在結合、および2つのR基の集合単位が、記載の環であることを意味する。例えば、以下の構造:
【化5】
が存在し、R
1およびR
2が、水素およびアルキルからなる群から選択されるものとして定義されるか、またはR
1およびR
2が、それらが結合している原子と共にアリールまたはカルボシクリルを形成する場合、R
1およびR
2が水素またはアルキルから選択され得ること、またはその代わりに、部分構造が構造:
【化6】
を有し、Aが、描かれている二重結合を含むアリール環またはカルボシクリルであることを意味する。
【0093】
(標識ヌクレオチド)
本開示の一態様によれば、基質部分への結合に適した色素化合物、特に基質部分への結合を可能にするリンカー基を含む色素化合物が提供される。基質部分は、本開示の蛍光色素をコンジュゲートすることができる実質的にあらゆる分子または物質であり得、非限定的な例としては、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、リガンド、粒子、固体表面、有機および無機ポリマー、染色体、核、生細胞、ならびにそれらの組み合わせまたは集合体が含まれ得る。疎水性引力、イオン性引力、および共有結合を含む様々な手段によって、当該色素を任意のリンカーによりコンジュゲートすることができる。いくつかの態様では、当該色素は共有結合によって基質にコンジュゲートしている。より具体的には、当該共有結合は、リンカー基による。いくつかの場合において、このような標識ヌクレオチドは、「修飾ヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0094】
本開示は、本明細書に記載の色素の1つ以上で標識された、ヌクレオシドおよびヌクレオチド(修飾ヌクレオチド)のコンジュゲートを更に提供する。標識ヌクレオシドおよび標識ヌクレオチドは、非限定的な例として、PCR増幅、等温増幅、固相増幅、ポリヌクレオチドシークエンシング(例、固相シークエンシング)、ニックトランスレーション反応などにおける酵素合成により形成されたポリヌクレオチドの標識に有用である。
【0095】
生体分子への結合は、式(I)の化合物のR、R1、R2、R3、R4、R5、またはX位を介し得る。いくつかの態様では、結合は式(I)のR3基またはR5基を介する。式(II)の場合、結合はR6-11またはX’のどの位置でも可能である。いくつかの実施形態では、置換基は、-CO2Hまたはカルボキシル基の活性化型で置換されたアルキルなどの置換アルキル(例えば、アミドまたはエステル)であり、それらは、生体分子のアミノ基またはヒドロキシル基への結合に使用され得る。一実施形態では、式(I)のR基、R1基、R2基、R3基、R4基、R5基もしくはX基、または式(II)のR6-11基もしくはX’基は、更なるアミド/ペプチド結合の形成に最適な活性化エステル残基またはアミド残基を含み得る。本明細書で使用される用語「活性化エステル」は、穏やかな条件下で、例えばアミノ基を含む化合物と反応することができるカルボキシ基誘導体を指す。活性化エステルの非限定的な例としては、p-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびスクシンイミドエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態において、色素化合物は、核酸塩基を介してオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドに共有結合していてもよい。例えば、標識ヌクレオチドまたは標識オリゴヌクレオチドは、リンカー部分を介してピリミジン塩基のC5位、または7-デアザプリン塩基のC7位に結合した標識を有し得る。標識ヌクレオチドまたは標識オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのリボース糖またはデオキシリボース糖に共有結合している3’-OHブロッキング基も有し得る。
【0097】
本明細書に記載される新規蛍光色素の特に有用なアプリケーションは、生体分子、例えばヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの標識化である。本出願のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の新規蛍光化合物で標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに関する。
【0098】
(リンカー)
本明細書に開示されている色素化合物は、置換基位置の一つに、当該化合物の基質または別の分子への共有結合のための反応性リンカー基を含み得る。反応性リンカー基は、結合(例えば、共有結合または非共有結合)、特には共有結合を形成することができる部分である。特定の実施形態において、リンカーは、切断可能なリンカーであり得る。用語「切断可能なリンカー」の使用は、リンカー全体を除去する必要があることを暗示することを意図したものではない。切断後にリンカーの一部が色素および/または基質部分に結合したままであることを確実にするリンカー上の位置に切断部位を配置することができる。切断可能なリンカーは、非限定的な例として、求電子的に切断可能なリンカー、求核的に切断可能なリンカー、光により切断可能なリンカー、還元条件下で切断可能(例えば、ジスルフィドまたはアジド含有リンカー)、酸化的条件下で切断可能、セーフティー-キャッチリンカーの使用により切断可能、および除去機構により切断可能であり得る。色素化合物を基質部分に結合させるための切断可能なリンカーの使用は、標識を必要に応じて検出後に除去し、ダウンストリーム工程でのいかなる干渉シグナルをも回避することを確実にできるようにする。
【0099】
有用なリンカー基は、(参照により本明細書に援用される)PCT国際公開WO2004/018493に見出すことができ、その例には、水溶性ホスフィンまたは水溶性遷移金属触媒を使用して切断され得るリンカーが含まれ、当該水溶性遷移金属触媒は遷移金属および少なくとも部分的に水溶性の配位子から形成される。水溶液中では、後者は、少なくとも部分的に水溶性の遷移金属錯体を形成する。そのような切断可能なリンカーを使用して、ヌクレオチドの塩基を、本明細書に記載の色素などの標識に接続することができる。
【0100】
特定のリンカーには、以下の式の部分を含むものなど、(参照により本明細書に援用される)PCT国際公開WO2004/018493に開示されているものが含まれる:
【化7】
(式中、XはO、S、NHおよびNQを含む群から選択され、QはC1~10の置換または非置換のアルキル基であり、YはO、S、NHおよびN(アリル)を含む群から選択され、Tは水素またはC1~C10の置換もしくは非置換のアルキル基であり、*は、当該部分がヌクレオチドまたはヌクレオシドの残部に接続されている場所を示す)。いくつかの態様では、リンカーは、ヌクレオチドの塩基を、例えば本明細書に記載の色素化合物などの標識に接続する。
【0101】
特定の実施形態では、蛍光色素(フルオロホア)とグアニン塩基との間のリンカーの長さは、例えば、ポリエチレングリコールスペーサー基を導入することにより変えることができ、それにより、当分野で公知の他の結合を介してグアニン塩基に結合している同じフルオロホアと比較して、蛍光強度を増加させることができる。例示的なリンカーおよびそれらの特性は、(参照により本明細書に援用される)PCT国際公開WO2007020457に記載されている。リンカーの設計、特にリンカーの長さの増大は、DNAなどのポリヌクレオチドに取り込まれたときに、グアノシンヌクレオチドのグアニン塩基に結合したフルオロホアの明るさの改良を可能にする。したがって、WO2007/020457に記載されるように、色素がグアニン含有ヌクレオチドに結合した蛍光色素標識の検出を必要とする任意の分析方法において使用するためのものである場合、リンカーが式-((CH2)2O)n-のスペーサー基を含むと有利であり、ここで、nは、2~50の整数である。
【0102】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖または核酸塩基上の部位で標識されていてもよい。当技術分野で知られているように、「ヌクレオチド」は、窒素塩基、糖、および1つ以上のリン酸基からなる。RNAでは、糖はリボースであり、DNAでは、糖はデオキシリボース、すなわちリボースに存在する1つのヒドロキシル基を欠く糖である。窒素塩基は、プリンまたはピリミジンの誘導体である。プリンはアデニン(A)およびグアニン(G)であり、ピリミジンはシトシン(C)および、チミン(T)またはRNAではウラシル(U)である。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。ヌクレオチドはヌクレオシドのリン酸エステルでもあり、エステル化は糖のC-3またはC-5に結合したヒドロキシル基で起こる。ヌクレオチドは、通常、モノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートである。
【0103】
「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドと構造的に類似しているが、リン酸部分を欠いている。ヌクレオシド類似体の一例は、標識が塩基に結合しており、糖分子に結合したリン酸基がないものである。
【0104】
塩基は通常プリンまたはピリミジンと呼ばれるが、当業者は、ワトソン-クリック塩基対合を経るというヌクレオチドまたはヌクレオシドの性質を変えない誘導体および類似体が利用可能であることを理解するであろう。「誘導体」または「類似体」は、そのコア構造が親化合物のコア構造と同じであるか、または近似しているが、例えば異なる、または追加の側鎖基などの化学的または物理的修飾を有する化合物または分子を意味し、そのため、誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオシドを他の分子に連結させることが可能である。例えば、塩基はデアザプリンであり得る。特定の実施形態では、誘導体は当然ワトソン-クリック対合を経ることができる。「誘導体」および「類似体」は、例えば、修飾塩基部分および/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオチドまたはヌクレオシド誘導体も含む。このような誘導体および類似体は、例えば、Scheit, Nucleotide analogs (John Wiley & Son, 1980)およびUhlman et al., Chemical Reviews 90:543-584, 1990で論じられている。ヌクレオチド類似体は、修飾ホスホジエステル結合、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキル-ホスホネート、ホスホラニリデート、ホスホルアミデート結合なども含むことができる。
【0105】
色素は、例えばリンカーを介して、核酸塩基上の任意の位置に結合させ得る。特定の実施形態では、得られた類似体について、ワトソン-クリック塩基対合が依然として実行され得る。特定の核酸塩基標識部位は、ピリミジン塩基のC5位または7-デアザプリン塩基のC7位を含む。上記のように、リンカー基を用いて、色素をヌクレオシドまたはヌクレオチドに共有結合させ得る。
【0106】
特定の実施形態において、標識ヌクレオシドまたは標識ヌクレオチドは、酵素的に取り込み可能かつ酵素的に伸長可能であり得る。したがって、リンカー部分は、核酸複製酵素によるヌクレオチドの全体的な結合および認識を化合物が著しく妨害しないように、ヌクレオチドを化合物に結合させるのに充分な長さであり得る。したがって、リンカーは、スペーサー単位も含むことができる。スペーサーは、例えば、切断部位または標識からヌクレオチド塩基を離れさせる。
【0107】
本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、式:
【化8】
を有し得、式中、Dyeは、色素化合物であり、Bは、核酸塩基、例えばウラシル、チミン、シトシン、アデニン、グアニンなどであり、Lは、存在してもしなくてもよい任意のリンカー基である。R’は、H、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、チオホスフェート、リン酸エステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、またはブロッキング基により保護された-O-であることができる。R”は、H、OH、ホスホルアミダイト、または3’-OHブロッキング基であることができ、R”’は、HまたはOHであり、R”がホスホルアミダイトである場合、R’は、自動合成条件下でのその後のモノマーカップリングを可能にする酸切断可能なヒドロキシル保護基である。
【0108】
特定の実施形態では、ブロッキング基は、色素化合物とは別個であり、独立している、すなわち、色素化合物に結合していない。あるいは、色素は、3’-OHブロッキング基の全部または一部を含み得る。したがって、R”は、色素化合物を含んでも含まなくてもよい3’-OHブロッキング基であることができる。
【0109】
更に別の代替的な実施形態では、ペントース糖の3’炭素上にブロッキング基は存在せず、塩基に結合した色素(または色素およびリンカーの構築物)は、例えば、更なるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに充分なサイズまたは構造であることができる。したがって、色素が糖の3’位に結合しているかどうかにかかわらず、ブロックは、立体障害によるものあることができるか、またはサイズ、電荷、および構造の組み合わせによるものであることができる。
【0110】
更に別の代替的な実施形態では、ブロッキング基は、ペントース糖の2’炭素または4’炭素上に存在し、更なるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに充分なサイズまたは構造であることができる。
【0111】
ブロッキング基の使用は、修飾ヌクレオチドが取り込まれたときに伸長を停止することなどによって、重合を制御することを可能にする。ブロッキング効果が、例えば非限定的な例として化学的条件の変更により、または化学的ブロックの除去により、可逆的である場合、伸長を特定の時点で停止させ、その後続けさせることができる。
【0112】
別の特定の実施形態では、3’-OHブロッキング基は、参照により本明細書に援用されるWO2004/018497およびWO2014/139596に開示される部分を含む。例えば、ブロッキング基は、アジドメチル(-CH2N3)もしくは置換型アジドメチル(例えば、-CH(CHF2)N3もしくはCH(CH2F)N3)、またはアリルであり得る。
【0113】
特定の実施形態において、(色素とヌクレオチドの間の)リンカーおよびブロッキング基は、両方とも存在し、別個の部分である。特定の実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は、実質的に同様の条件下で両方とも切断可能である。したがって、色素化合物とブロッキング基の両方を除去するために単一の処理のみが必要とされるので、脱保護工程およびデブロッキング工程は、より効率的であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は、同様の条件下で切断可能である必要はなく、その代わり個別の条件下で個別に切断可能である。
【0114】
本開示は、色素化合物を取り込んでいるポリヌクレオチドも包含する。このようなポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合で結合したデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからそれぞれなるDNAまたはRNAであり得る。本明細書に記載の少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識された)と組み合わせて、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の標識ヌクレオチド以外の天然ヌクレオチド、非天然(または修飾)ヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。本開示によるポリヌクレオチドは、非天然骨格結合および/または非ヌクレオチド化学修飾も含み得る。1以上の標識ヌクレオチドを含むリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造体も企図されている。
【0115】
本明細書に記載の標識ヌクレオチドの非限定的な例は、以下を含む:
【化9】
ここで、Lはリンカーを表し、Rは上述した糖残基を表す。
【0116】
いくつかの実施形態において、非限定的な例示的な蛍光色素コンジュゲートを以下に示す:
【化10-1】
【化10-2】
【0117】
(キット)
本開示はまた、色素で標識された、修飾ヌクレオシドおよび/または修飾ヌクレオチドを含むキットを提供する。そのようなキットは、一般に、少なくとも1つの更なる構成要素とともに、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオシドを含む。更なる構成要素は、本明細書に記載の方法または以下の実施例セクションで特定される1つ以上の構成要素であり得る。本開示のキットに組み合わせることができる構成要素のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。
【0118】
特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の色素で標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオシドを、修飾または非修飾のヌクレオチドまたはヌクレオシドとともに含むことができる。例えば、本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチドは、非標識ヌクレオチドもしくは天然ヌクレオチド、および/または蛍光標識ヌクレオチドもしくはそれらの任意の組み合わせと組み合わせて供給され得る。したがって、キットは、本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチド、および先行技術の色素化合物などの他の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの組み合わせは、別々の個別の構成要素(例えば、容器またはチューブごとに1つのヌクレオチドタイプ)、またはヌクレオチド混合物(例えば、同じ容器またはチューブ内で混合された2つ以上のヌクレオチド)として提供され得る。
【0119】
キットが色素化合物で標識された複数の、特に2つの、または3つの、またはより特には4つの修飾ヌクレオチドを含む場合、異なるヌクレオチドは、異なる色素化合物で標識されていてもよく、または1つはダーク(dark)であり、色素化合物を有しなくてもよい。異なるヌクレオチドが異なる色素化合物で標識されている場合、前記色素化合物がスペクトル的に区別可能な蛍光色素であることがキットの特徴である。本明細書で使用される場合、用語「スペクトル的に区別可能な蛍光色素」は、1つのサンプル中に2以上の蛍光色素が存在する場合、蛍光検出装置(例えば、市販のキャピラリーベースのDNAシークエンシングプラットフォーム)が区別できる波長で蛍光エネルギーを発する蛍光色素を指す。蛍光色素化合物で標識された2つの修飾ヌクレオチドがキットの形態で供給される場合、スペクトル的に区別可能な蛍光色素を、同じ波長で、例えば同じレーザーなどによって、励起することができることがいくつかの実施形態の特徴である。蛍光色素化合物で標識された4つの修飾ヌクレオチドがキットの形態で供給される場合、スペクトル的に区別可能な蛍光色素のうちの2つを、両方とも、1つの波長で励起することができ、他の2つのスペクトル的に区別可能な色素を、両方とも、別の波長で励起することができることがいくつかの実施形態の特徴である。具体的な励起波長は、488nmおよび532nmである。
【0120】
一実施形態において、キットは、本開示の化合物で標識された修飾ヌクレオチドおよび第2の色素で標識された第2の修飾ヌクレオチドを含み、色素は10nm以上、具体的には20nm~50nmの吸収極大の差を有する。より具体的には、2つの色素化合物は15~40nmの間のストークスシフトを有し、「ストークスシフト」は、ピーク吸収波長とピーク発光波長の間の距離である。
【0121】
さらなる実施形態では、キットは、蛍光色素で標識された2つの他の修飾ヌクレオチドをさらに含むことができ、当該色素は532nmの同じレーザーによって励起される。色素は、少なくとも10nm、特に20nm~50nmの吸収極大の差を有する。より具体的には、2つの色素化合物は、20~40nmのストークスシフトを有し得る。本開示の色素とスペクトル的に区別可能であり、上記の基準を満たす特定の色素は、米国特許第5,268,486号(例えば、Cy3)もしくはWO0226891(Alexa532;Molecular Probes A20106)に記載されているポリメチン類似体、または米国特許第6,924,372号に開示されている非対称ポリメチンであり、これらの各々は参照により本明細書に援用される。代替的な色素は、ローダミン類似体、例えば、テトラメチルローダミンおよびその類似体を含む。
【0122】
代替的実施形態において、本開示のキットは、同じ塩基が2つの異なる化合物で標識されているヌクレオチドを含み得る。第1のヌクレオチドは、本開示のの化合物で標識されていることがあり得る。第2のヌクレオチドは、スペクトル的に異なる化合物、例えば600nm未満の波長で吸収する「緑色」色素で標識されていることがあり得る。第3のヌクレオチドは、本開示の化合物とスペクトル的に異なる化合物との混合物として標識されていることがあり得、第4のヌクレオチドは「ダーク」であり、標識を含まないことがあり得る。したがって、簡単に言えば、ヌクレオチド1~4は、「青色」、「緑色」、「青色/緑色」、およびダークで標識されていることがあり得る。機器類をさらに単純化するために、単一のレーザーで励起される2つの色素で4つのヌクレオチドを標識することができ、したがって、ヌクレオチド1~4の標識は、「青色1」、「青色2」、「青色1/青色2」、およびダークであり得る。
【0123】
ヌクレオチドは、本開示の2つの色素を含み得る。キットは、本開示の色素で標識された2つ以上のヌクレオチドを含み得る。キットは、520nm~560nmの領域で吸収する色素で標識されたヌクレオチドを更に含む。キットは、非標識ヌクレオチドを更に含み得る。
【0124】
本明細書では、異なる色素化合物で標識された異なるヌクレオチドを有する構成に関してキットを例示しているが、キットは同じ色素化合物を有する2、3、4または5以上の異なるヌクレオチドを含むことができることが理解されよう。
【0125】
特定の実施形態では、キットは、ポリヌクレオチドへの修飾ヌクレオチドの取り込みを触媒することができるポリメラーゼ酵素を含み得る。そのようなキットに含まれる他の成分には、緩衝液などが含まれ得る。本開示の色素で標識された修飾ヌクレオチド、および異なるヌクレオチドの混合物を含む他のヌクレオチド成分は、使用前に希釈される濃縮形態でキット中に提供され得る。このような実施形態では、適切な希釈緩衝液も含まれ得る。ここでも、本明細書に記載の方法で特定された1つ以上の構成要素を、本開示のキットに含めることができる。
【0126】
(シークエンシング方法)
本開示の色素化合物を含む修飾ヌクレオチド(またはヌクレオシド)は、単独でも、またはより大きな分子構造もしくはコンジュゲートに組み込まれているか、もしくはこれらと会合していても、ヌクレオチドまたはヌクレオシドに結合した蛍光標識の検出を含む方法などの任意の分析方法に使用され得る。この文脈において、「ポリヌクレオチドに組み込まれる」という用語は、5’リン酸が、それ自体がより長いポリヌクレオチド鎖の一部を形成し得る第2の(修飾または未修飾)ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に、ホスホジエステル結合で結合することを意味することができる。本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの3’末端は、さらなる(修飾または非修飾)ヌクレオチドの5’リン酸にホスホジエステル結合で結合してもしなくてもよい。したがって、非限定的な一実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチドに取り込まれた修飾ヌクレオチドを検出する方法を提供し、当該方法は、(a)本開示の1以上の修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに取り込むことと、(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した色素化合物からの蛍光シグナルを検出することにより、ポリヌクレオチドに取り込まれた修飾ヌクレオチドを検出すること、を含む。
【0127】
この方法は、以下を含むことができる:本開示による1つ以上の修飾ヌクレオチドがポリヌクレオチドに組み込まれる、合成工程(a)、および、ポリヌクレオチドに組み込まれた1つ以上の修飾ヌクレオチドが、それらの蛍光を検出または定量的に測定することにより検出される、検出工程(b)。
【0128】
本出願のいくつかの実施形態は、(a)本明細書に記載の1以上の標識ヌクレオチドをポリヌクレオチドに取り込むことと、(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した新規の蛍光色素からの蛍光シグナルを検出することにより、ポリヌクレオチドに取り込まれた標識ヌクレオチドを検出することとを含むシークエンシング方法に関する。
【0129】
一実施形態において、1以上の修飾ヌクレオチドは、合成工程においてポリメラーゼ酵素の作用によってポリヌクレオチドに取り込まれる。しかしながら、修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに加える(joining)他の方法、例えば化学的オリゴヌクレオチド合成、または標識オリゴヌクレオチドと非標識オリゴヌクレオチドとのライゲーションなどを使用することができる。したがって、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関して使用される場合、「取り込む」という用語は、化学的方法および酵素的方法によるポリヌクレオチド合成を包含することができる。
【0130】
特定の実施形態では、合成工程が実施され、場合により、合成工程は、本開示の蛍光標識修飾ヌクレオチドを含む反応混合物とともに鋳型ポリヌクレオチド鎖をインキュベートすることを含み得る。ポリメラーゼはまた、鋳型ポリヌクレオチド鎖にアニールされたポリヌクレオチド鎖上の遊離3’ヒドロキシル基と、修飾ヌクレオチド上の5’リン酸基との間のホスホジエステル結合の形成を可能にする条件下で提供され得る。したがって、合成工程は、鋳型鎖へのヌクレオチドの相補的な塩基対合によって指示されるポリヌクレオチド鎖の形成を含むことができる。
【0131】
当該方法の全ての実施形態において、標識ヌクレオチドが取り込まれているポリヌクレオチド鎖を鋳型鎖にアニールさせる間に、または2つの鎖を分離する変性工程の後に、検出工程を実施し得る。さらなる工程、例えば化学的もしくは酵素的反応工程または精製工程が、合成工程と検出工程との間に含まれ得る。特に、標識ヌクレオチドを取り込んでいる標的鎖を、単離または精製し、次いでさらに処理するか、またはその後の分析に使用し得る。例として、合成工程において本明細書に記載の修飾ヌクレオチドで標識された標的ポリヌクレオチドを、その後、標識プローブまたはプライマーとして使用し得る。他の実施形態において、本明細書に記載される合成工程の生成物を、さらなる反応工程に付してもよく、所望により、これらの後続工程の生成物を精製または単離する。
【0132】
合成工程の好適な条件は、標準的な分子生物学的技術に精通している者に周知であろう。一実施形態において、合成工程は、好適なポリメラーゼ酵素の存在下で鋳型鎖に相補的な伸長標的鎖を形成する、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドを含むヌクレオチド前駆体を使用する標準的プライマー伸長反応に類似し得る。他の実施形態において、合成工程は、それ自体、標的および鋳型ポリヌクレオチド鎖のコピー由来のアニーリングした相補鎖からなる標識二本鎖増幅産物を産生する増幅反応の一部を形成し得る。他の例示的な合成工程としては、ニックトランスレーション、鎖置換型重合、ランダムプライムドDNAラベリングなどが挙げられる。合成工程に特に有用なポリメラーゼ酵素は、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの取り込みを触媒することができるものである。様々な天然ポリメラーゼまたは修飾ポリメラーゼを使用することができる。例として、熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクル条件を使用して実行される合成反応に使用することができるが、熱安定性ポリメラーゼは、等温プライマー伸長反応には望ましくない場合がある。本開示に係る修飾ヌクレオチドを取り込むことができる適切な熱安定性ポリメラーゼには、WO2005/024010またはWO06120433に記載されているものが含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される。37℃などの低温で行われる合成反応では、ポリメラーゼ酵素は、必ずしも熱安定性ポリメラーゼである必要はなく、したがって、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH、鎖置換活性などの多数の要因に依存するであろう。
【0133】
特定の非限定的な実施形態において、本開示は、核酸シークエンシング、再シークエンシング、全ゲノムシークエンシング、一塩基多型スコアリング、本明細書に記載の色素セットで標識された修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオシドの、ポリヌクレオチドに取り込まれた際の検出を伴う他のアプリケーションを包含する。蛍光色素を含む修飾ヌクレオチドで標識されたポリヌクレオチドの使用の恩恵を受ける様々な他のアプリケーションのいずれも、本明細書に記載の色素を有する修飾ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオシドを使用することができる。
【0134】
特定の実施形態において、本開示は、ポリヌクレオチド合成によるシークエンシング反応(polynucleotide sequencing-by-synthesis reaction)における、本開示による色素化合物を含む修飾ヌクレオチドの使用を提供する。合成によるシークエンシング(sequencing-by-synthesis)は、通常、配列決定される鋳型核酸に相補的な伸長ポリヌクレオチド鎖を形成するために、ポリメラーゼまたはリガーゼを使用して、5’から3’の方向に1つ以上のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを伸長しているポリヌクレオチド鎖に順次付加することを伴う。1つ以上の付加されたヌクレオチド中に存在する塩基の同一性は、検出工程または「画像化」工程において決定され得る。付加された塩基の同一性は、各ヌクレオチド取り込み工程の後に決定され得る。次いで、鋳型の配列は、従来のワトソン-クリック塩基対合規則を使用して推測され得る。一塩基の同一性の決定のための本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドの使用は、例えば一塩基多型のスコアリングにおいて有用であり得、このような一塩基伸長反応は、本出願の範囲内である。
【0135】
本開示の一実施形態において、鋳型ポリヌクレオチドの配列は、取り込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出により、配列決定される鋳型ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖への1以上のヌクレオチドの取り込みを検出することによって決定される。鋳型ポリヌクレオチドのシークエンシングは、好適な(または、ヘアピンの一部としてプライマーを含むヘアピン構築物として作製された)プライマーでプライミングされ得、新生鎖は、ポリメラーゼ触媒反応において、プライマーの3’末端へのヌクレオチドの付加により段階的様式で伸長される。
【0136】
特定の実施形態では、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、G、およびC)の各々は、特有のフルオロホアで標識されていてもよく、制御されない重合を防ぐために3’位にブロッキング基も含む。あるいは、4つのヌクレオチドのうちの1つは、非標識(ダーク)であり得る。ポリメラーゼ酵素は、鋳型ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖にヌクレオチドを取り込ませ、ブロッキング基は、ヌクレオチドのさらなる取り込みを防ぐ。取り込まれていないヌクレオチドを洗い流し、取り込まれた各ヌクレオチドからの蛍光シグナルを、レーザー励起を用いる電荷結合素子および好適な発光フィルターなどの好適な手段によって、光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’ブロッキング基および蛍光色素化合物を(同時にまたは逐次的に)除去(脱保護)して、さらなるヌクレオチドの取り込みのために新生鎖を露出させることができる。典型的には、取り込まれたヌクレオチドの同一性は、各取り込み工程の後に決定されるであろうが、これは、絶対に必須というわけではない。同様に、(参照により本明細書に援用される)米国特許第5,302,509号は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドをシークエンシングする方法を開示している。
【0137】
当該方法は、上に例示したように、DNAポリメラーゼの存在下での、固定化ポリヌクレオチドに相補的な伸長鎖への蛍光標識された3’-ブロック化ヌクレオチドA、G、C、およびTの取り込みを利用している。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩基を取り込むが、3’-ブロッキング基により、さらなる付加は防止される。次いで、取り込まれたヌクレオチドの標識を決定し、化学的切断によってブロッキング基を除去して、さらなる重合を起こさせることができる。合成によるシークエンシング反応で配列決定される核酸鋳型は、配列決定することが望まれる任意のポリヌクレオチドであり得る。シークエンシング反応用の核酸鋳型は、典型的には、シークエンシング反応においてさらなるヌクレオチドを付加するためのプライマーまたは開始点として機能する遊離3’ヒドロキシル基を有する二本鎖領域を含むであろう。配列決定される鋳型の領域は、相補鎖上のこの遊離3’ヒドロキシル基をオーバーハングするであろう。配列決定される鋳型のオーバーハング領域は、一本鎖であり得るが、シークエンシング反応の開始のために遊離3’OH基を与えるように、配列決定される鋳型鎖に相補的な鎖上に「ニックが存在する」という条件の下に、二本鎖であることができる。このような実施形態では、シークエンシングは、鎖置換により進行し得る。特定の実施形態において、遊離3’ヒドロキシル基を有するプライマーを、配列決定される鋳型の一本鎖領域にハイブリダイズする別個の成分(例えば、短いオリゴヌクレオチド)として添加し得る。あるいは、配列決定されるプライマーおよび鋳型鎖はそれぞれ、例えばヘアピンループ構造などの分子内二重鎖を形成することができる部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成し得る。ヘアピンポリヌクレオチドおよびそれらを固体支持体に結合させ得る方法は、PCT国際公開WO0157248およびWO2005/047301に開示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される。ヌクレオチドが伸長中のプライマーに連続的に付加され得、結果として、5’から3’方向のポリヌクレオチド鎖の合成が起こる。付加された塩基の性質を、必須ではないが特に各ヌクレオチド付加の後に、決定し、それにより、核酸鋳型についての配列情報を与え得る。したがって、ヌクレオチドの5’リン酸基とのホスホジエステル結合の形成を介して、ヌクレオチドを核酸鎖の遊離3’ヒドロキシル基に結合させることによって、ヌクレオチドは核酸鎖(またはポリヌクレオチド)に取り込まれる。
【0138】
配列決定される核酸鋳型は、DNAもしくはRNA、またはさらにはデオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子であり得る。核酸鋳型は、シークエンシング反応における鋳型のコピーを妨げないという条件の下に、天然および/または非天然のヌクレオチドならびに天然または非天然の骨格結合を含み得る。
【0139】
特定の実施形態において、配列決定される核酸鋳型を、当分野において公知の好適な連結方法によって、例えば共有結合によって、固体支持体に結合し得る。特定の実施形態において、鋳型ポリヌクレオチドを、固体支持体(例えば、シリカ系支持体)に直接結合し得る。しかしながら、本開示の他の実施形態において、固体支持体の表面を、鋳型ポリヌクレオチドの直接的な共有結合を可能にするように、またはそれ自体が非共有結合的に固体支持体に結合し得るヒドロゲルもしくは高分子電解質多層により鋳型ポリヌクレオチドを固定化するように、修飾し得る。
【0140】
ポリヌクレオチドがシリカ系支持体に直接結合しているアレイには、例えば、(参照により本明細書に援用される)WO00006770に開示されているものがあり、このアレイでは、ポリヌクレオチドは、ガラス上のペンダントエポキシド基とポリヌクレオチド上の内部アミノ基との反応によって、ガラス支持体上に固定化されている。さらに、ポリヌクレオチドは、例えば(参照により本明細書に援用される)W02005/047301に記載のように、硫黄系求核剤と固体支持体との反応により固体支持体に結合させることができる。固体支持鋳型ポリヌクレオチドのさらに他の例には、例えば、W000/31148、W001/01143、W002/12566、W003/014392、米国特許第6,465,178号、およびW000/53812に記載されるように、鋳型ポリヌクレオチドが、シリカ系または他の固体支持体上に支持されたヒドロゲルに結合している場合があり、これらのそれぞれは参照により本明細書に援用される。
【0141】
鋳型ポリヌクレオチドが固定化され得る具体的な表面は、ポリアクリルアミドヒドロゲルである。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記で引用した参考文献および参照により本明細書に援用されるWO2005/065814に記載されている。使用され得る具体的なヒドロゲルには、WO2005/065814および米国公開第2014/0079923号に記載されているものが含まれる。一実施形態において、ヒドロゲルは、PAZAM(ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド))である。
【0142】
DNA鋳型分子は、例えば、(参照により本明細書に援用される)米国特許第6,172,218号に記載されているように、ビーズまたは微粒子に付着させることができる。ビーズまたは微粒子への付着は、シークエンシングアプリケーションに有用であり得る。各ビーズが異なるDNA配列を含有するビーズライブラリを調製することができる。例示的なライブラリおよびその作製方法は、Nature,437,376-380頁(2005年);Science,309,5741,1728-1732頁(2005年)に記載されており、それぞれ参照により本明細書に援用される。本明細書に記載のヌクレオチドを使用した、このようなビーズのアレイのシークエンシングは、本開示の範囲内である。
【0143】
配列決定される鋳型は、固体支持体上の「アレイ」の一部を形成し得、この場合、アレイは任意の利便性のある形態をとり得る。したがって、本開示の方法は、単一分子アレイ、クラスターアレイ、およびビーズアレイを含む、あらゆる種類の高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、固体支持体上における核酸分子の固定化によって形成されたものを含むがこれらに限定されない、実質的にあらゆる種類のアレイ上の鋳型のシークエンシングに使用され得る。
【0144】
しかしながら、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、クラスターアレイのシークエンシングの文脈において特に有利である。クラスターアレイにおいて、アレイ上の別個の領域(しばしばサイトまたはフィーチャーと呼ばれる)は、複数のポリヌクレオチド鋳型分子を含む。一般に、複数のポリヌクレオチド分子は、光学的手段によって個別に分離可能(resolvable)ではなく、その代わりにアンサンブルとして検出される。アレイの形成方法に応じて、アレイ上の各サイトは、1つの個別のポリヌクレオチド分子の複数コピー(例えば、このサイトは、特定の一本鎖または二本鎖の核酸種に対して均一である)、または少数の異なるポリヌクレオチド分子の複数コピー(例えば、2つの異なる核酸種の複数コピー)さえも含み得る。核酸分子のクラスターアレイは、当分野において公知の技術を使用して作製され得る。例として、それぞれ参照により本明細書に援用されるWO98/44151およびWO00/18957は、固定化された核酸分子のクラスターまたは「コロニー」からなるアレイを形成するために、鋳型および増幅産物の両方が固体支持体上に固定化されたままとなる、核酸の増幅方法を記載している。これらの方法に従って作製されたクラスターアレイ上に存在する核酸分子は、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを使用したシークエンシングの好適な鋳型である。
【0145】
本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、単一分子アレイ上の鋳型のシークエンシングにおいても有用である。本明細書で使用される用語「単一分子アレイ」または「SMA」は、固体支持体上に配置(または配列)されたポリヌクレオチド分子の集団を指し、任意の1つのポリヌクレオチドと集団の他の全てとの間隔は、個々のポリヌクレオチド分子を個別に解像する(resolve)ことが可能であるようになっている。したがって、いくつかの実施形態では、固体支持体の表面上に固定化された標的核酸分子は、光学的手段によって解像可能であり得る。これは、それぞれが1つのポリヌクレオチドを表す1つ以上の別個のシグナルが、使用される特定のイメージングデバイスの解像可能(resolvable)な領域内で発生することを意味する。
【0146】
単一分子検出は、アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が、100nm以上、より具体的には250nm以上、さらにより具体的には300nm以上、なおいっそう具体的には350nm以上である場合に達成され得る。したがって、各分子は個々に解像可能であり、単一分子の蛍光点として検出可能であり、前記単一分子の蛍光点からの蛍光も単一段階のフォトブリーチングを示す。
【0147】
用語「個々に解像」および「個々の解像」は、視覚化したときに、アレイ上の1つの分子をその隣接分子と区別することが可能であることを明示するために本明細書において使用される。アレイ上の個々の分子間の間隔は、ある程度、個々の分子を解像するために使用される具体的な技術によって決められるであろう。単一分子アレイの一般的特徴は、それぞれ参照により本明細書に援用されるPCT国際公開WO00/06770およびWO01/57248を参照することによって理解されよう。本開示の修飾ヌクレオチドの一つの使用は、合成によるシークエンシング反応(sequencing-by-synthesis reactions)におけるものであるが、当該標識ヌクレオチドの有用性は、そのような方法に限定されない。実際、当該ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに取り込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を必要とするあらゆるシークエンシング方法において、有利に使用され得る。
【0148】
特に、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、自動化蛍光シークエンシングプロトコル、特にサンガーと共同研究者の鎖停止配列決定法に基づく蛍光色素-ターミネーターサイクルシークエンシングに使用され得る。そのような方法は、通常、プライマー伸長シークエンシング反応において蛍光標識ジデオキシヌクレオチドを取り込むために、酵素およびサイクルシークエンシングを使用する。いわゆるサンガーシークエンシング方法、および関連プロトコル(サンガー型)は、標識ジデオキシヌクレオチドを用いるランダム化鎖停止を利用する。
【0149】
したがって、本開示は、3’位および2’位の両方にヒドロキシル基を欠くジデオキシヌクレオチドである色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドも包含し、そのような修飾ジデオキシヌクレオチドは、サンガー型シークエンシング方法などにおける使用に好適である。
【0150】
修飾ジデオキシヌクレオチドを使用することにより達成される同じ効果は、3’-OHブロッキング基を有する修飾ヌクレオチドを使用することによっても達成され得る(両方とも後続のヌクレオチドの取り込みを防ぐ)ので、3’ブロッキング基を組み込んだ本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、サンガー法および関連するプロトコルでも有用であり得ることが認識されよう。3’ブロッキング基を有する本開示によるヌクレオチドがサンガー型シークエンシング方法で使用される場合、本開示の標識ヌクレオチドが組み込まれる各場合において、ヌクレオチドを続いて組み込む必要はなく、したがってヌクレオチドから標識を除去する必要はないので、当該ヌクレオチドに結合した色素化合物または検出可能な標識は、切断可能なリンカーを介して接続される必要がないことが理解されよう。
【実施例】
【0151】
追加の実施形態を、特許請求の範囲を限定することを決して意図するものではない以下の実施例において、さらに詳細に開示する。
【0152】
追加の実施形態を、特許請求の範囲を限定することを決して意図するものではない以下の実施例において、さらに詳細に開示する。表2は、実施例で開示されている新規のクマリン蛍光色素のスペクトル特性をまとめたものである。表3は、本明細書に開示される新規の色素で標識された様々なヌクレオチドの構造およびスペクトル特性をまとめたものである。
【0153】
(実施例1-1-1)
7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン
【化11】
【0154】
3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン誘導体(FC-1、0.4g、1.345mmol、1当量)および6-アミノヘキサン酸(AC-C5、0.25g、1.906mmol、1.417当量)を、無水ジメチルスルホキシド(DMSO、3mL)に添加した。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌し、次いで、N、N-ジイソプロピル-N-エチルアミン(DIPEA、0.25g、2mmol、2当量)をこの混合物に添加した。反応混合物を120℃で3時間撹拌した。室温で1時間静置した後、黄色の半固体反応混合物を水(5mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.36g(65.5%)。MS(DUIS):MW計算値408.47。検出されたm/z:(+)409(M+1)+;(-),407(M-1)-。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:12.03(m,2H)、9.00(s,1H)、8.12(d,J=7.9Hz,1H)、7.99(d,J=8.1Hz,1H)、6.73(dd,J=8.8,2.1Hz,1H)、6.54(d,J=2.0Hz,1H)、3.18(q,J=6.5Hz,2H)、2.23(t,J=7.3Hz,2H)、1.57(dp,J=14.7,7.2Hz,4H)、1.39(dq,J=9.2,4.5,3.5Hz,2H)。
【0155】
(実施例1-1-2)
7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-(ベンズイミダゾール-2-イル)クマリン
【化12】
【0156】
3-(ベンズイミダゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(FC-2、0.28g、1mmol、1当量)および6-アミノヘキサン酸(AC-C5、0.13g、1mmol、1当量)を、無水ジメチルスルホキシド(DMSO、2mL)に添加した。得られた混合物を室温で数分間撹拌した後、DIPEA(0.25g、2mmol、2当量)を添加した。反応混合物を温度130℃で4時間撹拌した。6-アミノヘキサン酸(AC-1、0.13g、1mmol、1当量)およびDIPEA(0.26g、2mmol、2当量)の追加部分を反応混合物に加え、130℃で5時間加熱を続けた。室温で1時間静置した後、淡黄色の反応混合物を水(5mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.26g(68.5%)。生成物の純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値391.15。検出されたm/z:(+)392(M+1)+;(-)390(M-1)-,781(2M-1)-。
【0157】
(実施例1-1-3)
7-(2-カルボキシエチル)アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン
【0158】
<工程A>
7-[2-(t-ブチルオキシカルボニル)エチル]アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン
【化13】
【0159】
3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(FC-1、0.3g、1.01mmol、1当量)およびt-ブチル3-アミノプロピオン酸塩酸塩(AC-C2、0.2g、1.1mmol、1.09当量)を無水ジメチルスルホキシド(DMSO、2mL)に添加して、得られた混合物を室温で数分間撹拌した後、DIPEA(0.26g、2mmol、2当量)を添加した。得られた反応混合物を温度100℃で2時間撹拌した。室温で1時間静置した後、黄色の反応混合物を水(7mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.38g(69%)。MS(DUIS):MW計算値422.13。検出されたm/z:(+)423(M+1)+;(-),421(M-1)-。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:9.28(s,1H)、9.01(s,1H)、8.27-8.16(m,1H)、8.10(tt,J=8.3,0.9Hz,2H)、8.05-7.92(m,1H)、7.72(d,J=8.8Hz,1H)、7.66-7.55(m,1H)、7.51(dddd,J=11.4,8.2,7.1,1.3Hz,2H)、7.46-7.32(m,2H)、6.74(dd,J=8.7,2.1Hz,1H)、6.58(d,J=2.1Hz,1H)、3.41(q,J=6.3Hz,2H)、2.55(t,J=6.4Hz,2H)、1.41(s,9H)。
【0160】
【0161】
7-[2-(t-ブチルオキシカルボニル)エチル]アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(I-1-3tBu、0.2g、0.473mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)溶液をトリフルオロ酢酸(0.5mL)で処理し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣を水(10mL)で粉砕した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.15g(86%)。純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値366.39。検出されたm/z:(+)367(M+1)+;(-),365(M-1)-。
【0162】
(実施例1-1-4)
7-(3-カルボキシプロピル)アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン
【0163】
<工程A>
7-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン
【化15】
【0164】
3-(ベンゾチアゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(FC-1、0.6g、2.02mmol、1当量)およびt-ブチル4-アミノブタノ酸塩酸塩(AC-C3、0.5g、2.56mmol、1.27当量)を、無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に添加した。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌してから、DIPEA(0.65g、5mmol、4当量)を添加した。反応混合物を100℃の温度で3時間撹拌した。室温で1時間静置した後、黄色の半固体反応混合物を水(10mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.7g(79%)。純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値436.53。検出されたm/z:(+)437(M+1)+;(-),435(M-1)-。
【0165】
【0166】
7-[3-(t-ブチルオキシカルボニル)プロピル]アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン(I-1-4tBu、0.7g、1.604mmol)の無水ジクロロメタン(25mL)溶液をトリフルオロ酢酸(1mL)で処理し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣を水(10mL)で粉砕した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.59g(97%)。純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値366.39。検出されたm/z:381(M+1)+;(-),379(M-1)-。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:12.17(s,1H)、9.01(s,1H)、8.12(d,J=8.0Hz,1H)、7.99(d,J=8.1Hz,1H)、7.71(d,J=8.8Hz,1H)、7.48-7.30(m,2H)、6.73(dd,J=8.8,2.1Hz,1H)、6.57(d,J=2.1Hz,1H)、3.21(q,J=6.6Hz,2H)、2.36(d,J=7.3Hz,2H)、1.80(p,J=7.3Hz,2H)。
【0167】
(実施例1-1-5)
7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)クマリン
【化17】
【0168】
3-(5-クロロ-ベンゾオキサゾール-2-イル)-7-フルオロ-クマリン(FC-3、0.32g、1mmol、1当量)および6-アミノヘキサン酸(AC-C5、0.26g、2mmol、2当量)を、丸底フラスコ内の無水ジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に添加した。添加が完了した後、混合物を室温で数分間撹拌し、次いでDIPEA(0.52g、4mmol、2当量)を添加した。反応混合物を温度135℃で7時間撹拌した。6-アミノヘキサン酸(AC-1、0.13g、1mmol、1当量)およびDIPEA(0.26g、2mmol、2当量)の追加部分を添加し、135℃で5時間加熱を続けた。室温で1時間静置した後、淡黄色の反応混合物を水(15mL)で希釈し、一晩撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量0.09g(21%)。生成物の純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値426.10。検出されたm/z:(+)427(M+1)+;(-)425(M-1)-,851(2M-1)-。
【0169】
(実施例2)
7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン-6-スルホン酸(2A)および7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-(ベンゾチアゾール-2-イル)クマリン-8-スルホン酸(2B)
【化18】
【0170】
化合物I-1-1(0.1g、0.245mmol)を、ドライアイス/アセトン浴で冷却した20%発煙硫酸(1mL)に撹拌しながら少量ずつ加えた。添加が完了した後、混合物を0℃で1時間撹拌し、室温に温め、次いで室温で2時間撹拌した。溶液を無水エーテル(25mL)に注いだ。室温で1時間静置した後、得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量78mg(65%)。1H NMR(d6-DMSO)は、少量(約4%)の化合物2Bとともに、化合物2Aを示した。
【0171】
【0172】
上記の沈殿物を水(2mL)に再懸濁し、5M NaOH溶液を添加して懸濁液のpHを約5に調整した。得られた混合物を10mLのメタノールに注ぎ、懸濁液をろ過した。ろ液を蒸発乾固させて、色素をナトリウム塩(I-2A-Na)として得た。純度、構造、および組成は、HPLC、NMR、およびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値488.07。検出されたm/z:(+)489(M+1)+;(-)243(M-1)2-,487(M-1)-。
【0173】
<2Aおよび2Bのトリエチルアンモニウム塩の調製>
【0174】
化合物I-1-1(0.41g、1mmol)を、ドライアイス/アセトン浴で冷却した20%発煙硫酸(5mL)に撹拌しながら少量ずつ添加した。添加が完了した後、混合物を0℃で1時間撹拌し、室温に温め、次いで室温で2時間撹拌した。この溶液を無水エーテル(50mL)に注いだ。室温で1時間静置した後、有機溶媒層をデカントし、半固体の底層をアセトニトリル-水(1:1、10mL)に溶解した。2M TEAB水溶液を添加して、溶液のpHを約7.0に調整した。得られた溶液を20μmナイロンフィルターでろ過し、異性体を分取HPLCで分離した。異性体の溶液を真空で濃縮し、次いで水(20μL)に再溶解し、溶媒を真空で除去して乾燥させ、色素をトリエチルアンモニウム塩として得た。純度および組成は、HPLCおよびLCMSによって確認した。
【0175】
(実施例3)
7-(5-カルボキシペンチル)アミノ-3-[5-スルホナート(ベンゾチアゾール-2-イル)-クマリン-6-スルホン酸トリエチルアンモニウム塩
【化20】
【0176】
化合物I-1-1(0.08g、0.2mmol)を、ドライアイス/アセトン浴で冷却した20%発煙硫酸(2mL)に撹拌しながら少量ずつ添加した。添加が完了した後、混合物を0℃で1時間撹拌し、室温に温め、その後70℃で2時間撹拌した。次に、混合物を室温で一晩撹拌した。この溶液を無水エーテル(30mL)に注いだ。室温で1時間撹拌した後、得られた沈殿物を吸引ろ過により収集した。収量43mg(38%)。
【0177】
沈殿物を水(2mL)に再懸濁し、2M TEAB水溶液を添加して懸濁液のpHを約7.5に調整した。得られた混合物を20μmナイロンフィルターでろ過し、分取HPLCで精製した。色素画分を真空で濃縮し、次いで水(20μL)に再溶解し、溶媒を真空で除去して乾燥させ、色素をビス-トリエチルアンモニウム塩として得た。純度および組成は、HPLCおよびLCMSによって確認した。MS(DUIS):MW計算値568.03。検出されたm/z:(+)569(M+1)+。
【0178】
例示的な色素溶液の蛍光強度を、同じスペクトル領域の市販の色素と比較した。結果が表2に示され、蛍光ベースの分析アプリケーションについての例示的な色素の顕著なアドバンテージを実証している。
【0179】
【0180】
(実施例4)
新規蛍光色素を有する、充分に機能的なヌクレオチドコンジュゲートの合成の一般的な手順
以下のアデニンの例示的なスキームに従って、適切な試薬で色素(Dye)のカルボキシル基を活性化した後:
【化21】
本明細書に開示されるクマリン蛍光色素を、適切なアミノ置換アデニン(A)およびシトシン(C)ヌクレオチド誘導体A-LN3-NH
2またはC-LN3-NH
2に結合(coupled)させた:
【化22】
アデニン結合(adenine coupling)の一般的な生成物が以下に示される:
【化23】
ffA-LN3-Dyeは、LN3リンカーを有し、本明細書に開示されているクマリン色素で標識された充分に機能化されたAヌクレオチドを指す。各構造中のR基は、コンジュゲーション後のクマリン色素部分を指す。
【0181】
色素(10μmol)を5mL丸底フラスコに入れて乾燥させ、無水ジメチルホルムアミド(DMF、1mL)に溶解させた後、溶媒を真空で留去する。この手順を2回繰り返す。乾燥した色素を室温で無水N、N-ジメチルアセトアミド(DMA、0.2mL)に溶解させる。N、N、N’、N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、1.5当量、15μmol、4.5mg)を色素溶液に添加し、DIPEA(3当量、30μmol、3.8mg、5.2μL)をマイクロピペットでこの溶液に加える。反応フラスコを窒素ガス下で密閉する。反応の進行は、TLC(溶出液、アセトニトリル-水1:9)およびHPLCによって監視される。その間、適切なアミノ置換ヌクレオチド誘導体(A-LN3-NH2、20mM、1.5当量、15μmol、0.75mL)の溶液を真空中で濃縮し、水(20μL)に再溶解する。DMA中の活性化色素の溶液を、N-LN3-NH2の溶液が入っているフラスコに移す。トリエチルアミン(1μL)とともに、DIPEA(3当量、30μmol、3.8mg、5.2μL)をさらに加える。結合(coupling)の進行は、TLC、HPLC、およびLCMSによって1時間ごとに監視される。反応が完了したら、重炭酸トリエチルアミン緩衝液(TEAB、0.05M、約3mL)をピペットで反応混合物に加える。完全に機能化されたヌクレオチドの初期精製は、クエンチした反応混合物をDEAE-Sephadex(登録商標)カラムに通して、残っている未反応色素の大部分を除去することにより行われる。例えば、Sephadexは、空の25g Biotageカートリッジ、溶媒システムTEAB/MeCNに注がれる。Sephadexカラムからの溶液は真空中で濃縮される。残留物は、20μmナイロンフィルターでろ過する前に、最小量の水およびアセトニトリルに再溶解される。ろ過した溶液は分取HPLCで精製される。調製した化合物の組成は、LCMSで確認した。
【0182】
【0183】
本明細書に開示される色素で標識されたヌクレオチドの溶液中における蛍光強度と、同じスペクトル領域の市販の色素(AttoTec社製Atto465)で標識されたヌクレオチドの適切なデータとの比較は、蛍光ベースの分析アプリケーションで使用する生体分子の標識についての、本明細書に記載の色素のアドバンテージを実証する。
【0184】
(実施例5)
シークエンシング解析
本明細書に開示される色素に基づくffAは、合成によるシークエンシングケミストリー(sequencing-by-synthesis chemistry)を用いたIlluminaシークエンサーでのシークエンシングにおいて使用され、
図1A、
図1B、および
図1Cのイメージはそれらの有用性を実証している。スキャン温度22℃、暴露時間:青500ms、緑500ms;SFAフローセル。以下の図の括弧内の数字は、新規の青色ffAと緑色A(greenA)との比率を示している。A、C、G、およびTヌクレオチドは、以下のように標識された:A:Ex 2A(
図1A)、Ex I-1-3(
図1B)、およびEx I-1-1(
図1C);C:NR440;G:ダーク(Dark);およびT:AF550POPOS0。
【化24】