(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ライセンスプレートホルダー
(51)【国際特許分類】
B60R 13/10 20060101AFI20230705BHJP
B60R 19/18 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B60R13/10
B60R19/18
(21)【出願番号】P 2020045477
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 翔子
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-040046(JP,A)
【文献】特開2015-024706(JP,A)
【文献】特開2004-025947(JP,A)
【文献】実開平05-070924(JP,U)
【文献】登録実用新案第3136928(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0088065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車本体の前面に取り付けられるライセンスプレートホルダーであって、
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記下辺において、前記下部フランジの非存在箇所があ
り、
下記要素(1)~(4)の少なくとも一つを満足することを特徴とするライセンスプレートホルダー。
(1)前記ライセンスプレートホルダー本体部は、前記下辺の中央部が前記下辺の両端部よりも前記上辺側に位置する窪み型の形状をなす、
(2)複数の前記下部フランジと複数の前記下部フランジの非存在箇所とが前記下辺に沿って配列し、各々の前記下部フランジの非存在箇所の幅は各々の前記下部フランジの幅よりも大きい、
(3)前記ライセンスプレートホルダー本体部は、その上半分の領域にあり前記自動車本体側に突出し締結部材が貫通して前記自動車本体に取り付けられる取り付け部を有し、
前記取り付け部は脆弱部を有し前記下辺側に座屈しやすい、
(4)前記ライセンスプレートホルダー本体部は前記自動車本体側に突出する補助フランジを有し、前記補助フランジは脆弱部を有し前記下辺側に座屈しやすい。
【請求項2】
前記下部フランジの末端の自動車本体接触部が前記ライセンスプレートホルダー本体部の周縁よりも外側方向に延びている請求項
1に記載のライセンスプレートホルダー。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のライセンスプレートホルダーを備える自動車前面構造体。
【請求項4】
請求項
3に記載の自動車前面構造体を有する自動車。
【請求項5】
前方から、請求項1
又は2に記載のライセンスプレートホルダー、グリル又はバンパー、衝撃吸収部材、バンパーレインフォースメントの順に備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車本体の前面に取り付けられるライセンスプレートホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車における安全技術は日々進化しており、衝突事故が起きた際に歩行者を保護するための技術も開発されている。バンパーは衝突事故の際の衝撃を和らげる緩衝機能を有するものであるが、バンパーは通常、硬度の高いバンパーレインフォースメントに結合されている。そのため、歩行者との衝突の衝撃でバンパーが変形すると、歩行者に高硬度のバンパーレインフォースメントの衝撃エネルギーが与えられる場合がある。その場合、歩行者は骨折や膝靱帯損傷などの重傷を負いやすくなる。
【0003】
そこで、歩行者の保護に注力した装備として、バンパーとバンパーレインフォースメントの間に衝撃吸収部材を配置する技術が開発されている。衝撃吸収部材は、バンパーとバンパーレインフォースメントの間だけではなく、グリルとバンパーレインフォースメントの間に配置されることもある。
【0004】
衝撃吸収部材の配置は歩行者の保護に役立つ技術であるが、歩行者と衝撃吸収部材の間に変形困難な何らかの車両部材が存在すると、かかる車両部材の存在に因り、歩行者に重傷を負わせる可能性がある。
【0005】
一般的に、自動車本体の前面に自動車登録番号表などのライセンスプレート(ナンバープレート)を取り付けることが義務づけられており、ライセンスプレートを保持するライセンスプレートホルダーを備える自動車も知られている。そして、衝突時の衝撃を緩衝するために、ライセンスプレートホルダーを変形容易とする技術も知られている。
【0006】
特許文献1には、自動車本体の後面に取り付けるリアライセンスプレートホルダーに関する技術ではあるものの、衝突時に、リアライセンスプレートホルダー全体が押しつぶされる態様の技術が記載されている(
図2を参照。)。具体的には、自動車本体とリアライセンスプレートホルダー本体とを連結するリアライセンスプレートホルダー本体の左右の脚に、圧縮荷重に対して脆弱なクラッシュビート又はクラッシュホールを設けて、ライセンスプレートホルダー全体を座屈し易くする技術が記載されている。
【0007】
特許文献2には、バンパーレインフォースメントの前方に衝撃吸収部材を設け、衝撃吸収部材の前方にライセンスプレートホルダーを設けることを前提とする技術であって、ライセンスプレートホルダーの車幅方向中央に切り欠き部を設ける技術が記載されている。同文献に記載されたライセンスプレートホルダーは、衝突時に、その中央部が縦に折れ曲がる態様となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平6-22111号公報
【文献】特許第6136704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、ライセンスプレートホルダーに歩行者保護に関する技術を取り入れることは重要であるが、他方、意匠性(デザイン性)、洗車時などにおける使用者の押圧に対する剛性、走行時の変動や風切り音の防止などの要素を考慮することも重要である。
【0010】
特許文献1に記載の技術はライセンスプレートホルダー全体が押しつぶされる態様の衝撃緩衝モードであり、特許文献2に記載の技術はライセンスプレートホルダーの中央部が縦に折れ曲がる態様の衝撃緩衝モードであるものの、いずれも、ライセンスプレートホルダーの上辺及び下辺が自動車本体と接していない。そのため、ライセンスプレートホルダーの上部から取り付け金具が視認されてしまう旨のデザイン性の欠如、洗車時などにおける使用者の押圧に対するライセンスプレートホルダー全体の剛性の欠如、及び、走行時の変動や風切り音の発生などの欠点が存在する。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、ライセンスプレートホルダーの上辺から突出する上部フランジ及び下辺から突出する下部フランジが自動車本体と接しており、かつ、新たな衝撃緩衝モードを示すライセンスプレートホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のライセンスプレートホルダーは、自動車本体の前面に取り付けられるライセンスプレートホルダーであって、
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記下辺において、前記下部フランジの非存在箇所があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のライセンスプレートホルダーは、衝突時に、下部フランジが優先的に変形するモードで衝撃を緩衝する。また、本発明のライセンスプレートホルダーは、上部フランジ及び下部フランジが自動車本体と接しているため、デザイン性に優れ、ライセンスプレートホルダー全体の剛性に優れ、かつ、走行時の変動や風切り音の発生を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のライセンスプレートホルダーの斜視図である。
【
図2】実施例1のライセンスプレートホルダーを下辺側から観察した底面図である。
【
図3】実施例1のライセンスプレートホルダーを裏面側から観察した背面図である。
【
図4】実施例1のライセンスプレートホルダーを右辺側から観察した右側面図である。
【
図5】実施例1のライセンスプレートホルダーが自動車本体の前面に取り付けられた自動車である。
【
図6】実施例1のライセンスプレートホルダーが取り付けられたグリルの拡大図である。
【
図7】実施例1のライセンスプレートホルダーが取り付けられたグリルのA-A断面図である。
【
図8】実施例1のライセンスプレートホルダーが取り付けられたグリルのB-B断面図である。
【
図9】実施例1のライセンスプレートホルダーが取り付けられたグリルのA-A断面図の変化図である。
【
図10】実施例1のライセンスプレートホルダーが取り付けられたグリルのB-B断面図の変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0016】
本発明のライセンスプレートホルダーは、自動車本体の前面に取り付けられるライセンスプレートホルダーであって、
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記下辺において、前記下部フランジの非存在箇所があることを特徴とする。
【0017】
本発明のライセンスプレートホルダーの材質としては、ポリプロピレンなどの樹脂が好ましい。結晶性の樹脂とエラストマーを組み合わせた樹脂を用いるのが好ましい。
本発明のライセンスプレートホルダーは一体成型法で製造されるのが好ましい。
【0018】
板状のライセンスプレートホルダー本体部は、その外部面がライセンスプレートの裏面に対面する状態でライセンスプレートと結合されることで、ライセンスプレートを保持する。ライセンスプレートホルダー本体部とライセンスプレートは、互いの上辺の位置を一致させた状態で結合されるか、又は、ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から下方向に15mmまでの範囲内の位置に、ライセンスプレートの上辺を配置した状態で結合されるのが好ましい。
なお、ライセンスプレートホルダー本体部におけるライセンスプレートとの結合部は、金属製であるのが好ましい。
【0019】
ライセンスプレートホルダー本体部の外部面の面積は、ライセンスプレートの裏面の面積に対して、概ね1/5~2/3又は1/4~1/2程度である。ここで説明する「ライセンスプレートホルダー本体部の外部面の面積」とは、ライセンスプレートホルダー本体部の上辺、下辺、左辺及び右辺で囲まれた面積を意味し、ライセンスプレートホルダー本体部に設けられた開口面の面積も含む。
参考までに、日本の一般的な自動車におけるライセンスプレートの大きさは、縦16.5cm、横33cmであり、大型の自動車におけるライセンスプレートの大きさは、縦22cm、横44cmである。
【0020】
ライセンスプレートホルダー本体部の厚みとしては、1.5~3mm、1.7~2.7mmの範囲内を例示できる。
【0021】
ライセンスプレートホルダー本体部の上辺は直線状であるのが好ましい。ライセンスプレートホルダー本体部の上辺が直線状であれば、ライセンスプレートの形状との統一感が得られる。
【0022】
ライセンスプレートホルダー本体部の下辺の形状は特に制限が無い。下辺の形状は直線状でもよいが、下辺の中央部が下辺の両端部よりも上辺側に位置する窪み型の形状が好ましい。下辺を窪み型の形状とすることで、ライセンスプレートホルダー本体部の中央の下部がたわみやすくなるため、下部フランジがより優先的に変形可能となる。窪み型の形状としては、円弧状、等脚台形の上底及び一組の脚の形状、二等辺三角形の一組の等辺の形状を例示できる。
【0023】
上部フランジはライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出している。上部フランジにおける突出方向の末端の自動車本体接触部は、本発明のライセンスプレートホルダーが自動車本体に取り付けられた際に、自動車本体と接する。
【0024】
デザイン面及び下部フランジとの変形強度の関係から、上部フランジは、上辺すべてに連続して形成されているのが好ましい。ただし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上辺に上部フランジの非存在箇所が存在してもよい。上辺の長さに対する上部フランジの非存在箇所の割合(Rupper)としては、0~30%、0~25%、0~20%、0~15%、0~10%を例示できる。
【0025】
上部フランジの厚みとしては、1.5~3mm、1.7~2.7mmの範囲内を例示できる。
【0026】
下部フランジはライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出している。下部フランジにおける突出方向の末端の自動車本体接触部は、本発明のライセンスプレートホルダーが自動車本体に取り付けられた際に、自動車本体と接する。
そして、下部フランジはライセンスプレートホルダー本体部の下辺すべてに連続してはおらず、下辺において下部フランジの非存在箇所が存在する。
【0027】
下辺において下部フランジの非存在箇所が存在するため、上部フランジ全体と下部フランジ全体を比較すると、下部フランジ側の剛性が低い。そのため、ライセンスプレートホルダー本体部の外部面側から力が作用する時(ライセンスプレートホルダーが座屈する程度の力が作用する時)には、下部フランジが優先的に変形する。
【0028】
下部フランジが優先的に変形する時には、下部フランジの末端の自動車本体接触部が自動車本体の表面をスライドする。結果的に、下部フランジとライセンスプレートホルダー本体部との角度は、取り付け時よりも大きくなる。この時、本発明のライセンスプレートホルダーは座屈する状態となる。
【0029】
ライセンスプレートホルダーが座屈する際の具体的な一態様として、下部フランジとライセンスプレートホルダー本体部との変形角度が、上部フランジとライセンスプレートホルダー本体部との変形角度よりも大きい状態を例示できる。
また、ライセンスプレートホルダーが座屈する際の具体的な一態様として、下部フランジの末端の自動車本体接触部が自動車本体の表面を移動する距離が、上部フランジの末端の自動車本体接触部が自動車本体の表面を移動する距離よりも長い状態を例示できる。
【0030】
ライセンスプレートホルダー本体部の下辺全体の長さに対する下部フランジの非存在箇所の割合(Rbottom)としては、10~90%、20~85%、30~80%、40~75%、50~70%を例示できる。
RupperとRbottomは、Rupper<Rbottomの関係を満足する。
【0031】
下辺における下部フランジの非存在箇所の数は限定されないが、1、2、3、4、5、6を例示できる。下辺における下部フランジの数は限定されないが、1、2、3、4、5、6を例示できる。
ライセンスプレートホルダーの剛性の点から、下部フランジは下辺の中央部に存在するのが好ましい。また、下部フランジや下部フランジの非存在箇所は、左右対称に存在するのが好ましい。
【0032】
下部フランジの面形状としては、長方形でもよいし、台形でもよい。製造時の成型性を考慮すると、末端の自動車接触部に向かって先細るテーパー状であるのが好ましい。
【0033】
下部フランジの厚みとしては、1.5~3mm、1.7~2.7mmの範囲内を例示できる。下部フランジの厚みは上部フランジの厚みよりも薄いのが好ましい。
【0034】
下部フランジの末端の自動車本体接触部は、ライセンスプレートホルダー本体部の周縁よりも外側方向に延びている形状が好ましい。かかる形状は、ライセンスプレートホルダー本体部と下部フランジの面がなす角度Dは鈍角であると換言できる。かかる形状を選択することで、下部フランジは、ライセンスプレートホルダー本体部の周縁よりも外側の方向にスライドしやすくなる。角度Dの範囲として、90°<D≦120°、90°<D≦110°、93°≦D≦105°、95°≦D≦100°を例示できる。
【0035】
ライセンスプレートホルダー本体部は、グリル又はバンパーなどの自動車本体への取り付け時に、地面に対して80~100°の角度となるように取り付けられる。
上部フランジにおけるライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側への突出長さ(Lupper)、及び、下部フランジにおけるライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側への突出長さ(Lbottom)は、取り付け予定のグリル又はバンパーの地面に対する角度に左右されるものの、ライセンスプレートホルダー本体部の地面に対する角度が80~100°となるように設計される。
したがって、LupperとLbottomは、Lupper>Lbottom、Lupper=Lbottom、Lupper<Lbottomのいずれの関係にもなり得る。
【0036】
フランジの突出長さが長いフランジは、フランジの突出長さが短いフランジよりも、衝突時の角度変動が同一の場合に、フランジ末端の自動車本体接触部の移動距離が長くなる。そのため、下部フランジの変形の程度を増加させる意味で、LupperとLbottomは、Lupper<Lbottomの関係を満足するのが好ましい。
【0037】
なお、ライセンスプレートホルダー本体部の下辺には、ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出するものの、自動車本体とは接しない凸部が設けられていてもよい。凸部の存在により、ライセンスプレートホルダー本体部の剛性が向上するので、ライセンスプレートホルダーの製造時や取り付け作業時における取り扱い性が向上する。
【0038】
ライセンスプレートホルダー本体部の左辺及び右辺は、グリル又はバンパーの形状に沿って、グリル又はバンパーに接触する左側フランジ及び右側フランジを備えるのが好ましい。左側フランジ及び右側フランジは、その先端がライセンスプレートホルダー本体部の周縁よりも外側方向に延びるように設計されてもよい。
左側フランジ及び右側フランジは、上部フランジや下部フランジと連続していてもよい。左側フランジ及び右側フランジと下部フランジとの境界部は、厚みが薄くなるように設計されるのが好ましく、また、当該境界部にフランジの突出方向に延びる溝を設けてもよい。
【0039】
本発明のライセンスプレートホルダーは、自動車本体の前面のグリル又はバンパーに、締結部材により、取り付けられる。
ライセンスプレートホルダー本体部は、締結部材が貫通し、自動車本体の前面に接して取り付けられる取り付け部を有する。取り付け部の数としては2~4を例示でき、2が好ましい。取り付け部は、ライセンスプレートホルダー本体部の上半分の領域に、左右対称に設けられるのが好ましい。取り付け部がライセンスプレートホルダー本体部の上半分の領域に設けられることで、下部フランジがより優先的に変形可能となる。
【0040】
取り付け部の形状には制限が無いが、ライセンスプレートホルダー本体部の下辺側への変形が容易なように四角推台が好ましい。また、取り付け部には、下辺側に座屈しやすいように、開口面などの脆弱部を設けてあるのが好ましい。
【0041】
ライセンスプレートホルダー本体部は、取り付け時の位置合わせを容易にするための位置合わせ部や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ライセンスプレートホルダー本体部の剛性を高めるための補助フランジを有していてもよい。位置合わせ部や補助フランジも、下辺側に座屈しやすい形状とするのが好ましい。
【0042】
本発明のライセンスプレートホルダーは、衝突時に、下部フランジが優先的に変形するモードで衝撃を緩衝するので、歩行者脚部保護性能が確保されている。したがって、本発明のライセンスプレートホルダーは、衝突された歩行者の膝付近のせん断骨折の抑制や、大腿骨と脛骨を結ぶ内側側副靱帯、大腿骨と腓骨を結ぶ外側側副靱帯、並びに、膝関節の内部にある前十字靱帯及び後十字靱帯の保護に有用といえる。
【0043】
また、本明細書の記載内容から、以下の発明を把握することもできる。
【0044】
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記上辺における前記上部フランジの非存在距離よりも、前記下辺における前記下部フランジの非存在距離の方が長いことを特徴とするライセンスプレートホルダー。
【0045】
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記上辺の長さに対する前記上部フランジの非存在箇所の割合(Rupper)と前記下辺の長さに対する前記下部フランジの非存在箇所の割合(Rbottom)がRupper<Rbottomの関係を満足することを特徴とするライセンスプレートホルダー。
【0046】
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
前記下部フランジが前記自動車本体と接する面積が、前記上部フランジが前記自動車本体と接する面積よりも小さいことを特徴とするライセンスプレートホルダー。
【0047】
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
座屈する際に、前記下部フランジと前記ライセンスプレートホルダー本体部との変形角度が、前記上部フランジと前記ライセンスプレートホルダー本体部との変形角度よりも大きいことを特徴とするライセンスプレートホルダー。
【0048】
板状のライセンスプレートホルダー本体部と、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の上辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する上部フランジと、
前記ライセンスプレートホルダー本体部の下辺から自動車本体側に突出し、前記自動車本体と接する下部フランジと、を備え、
座屈する際に、前記下部フランジの末端の自動車本体接触部が自動車本体の表面を移動する距離が前記上部フランジの末端の自動車本体接触部が自動車本体の表面を移動する距離よりも長いことを特徴とするライセンスプレートホルダー。
【0049】
本発明のライセンスプレートホルダーは自動車本体の前面に取り付けられるので、本発明のライセンスプレートホルダーを備える自動車前面構造体(以下、本発明の自動車前面構造体という。)、及び、当該自動車前面構造体を備える自動車(以下、本発明の自動車という。)を、それぞれ発明として認識できる。
【0050】
本発明の自動車前面構造体又は本発明の自動車は、前方から、本発明のライセンスプレートホルダー、グリル又はバンパー、衝撃吸収部材、バンパーレインフォースメントの順に備えるのが好ましい。
【0051】
衝撃吸収部材としては、発泡性ポリウレタンや発泡性ポリスチレンなどの発泡性樹脂を例示できる。衝撃吸収部材とは、衝撃吸収部材以外の名称として、エネルギー吸収材、EA(Energy Absorption)材、EAパッドなどと呼称されるものである。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
図1~
図10に基づいて実施例1のライセンスプレートホルダー1を詳細に説明する。
図1に、実施例1のライセンスプレートホルダー1の斜視図を示す。
ポリプロピレンを主成分とする実施例1のライセンスプレートホルダー1は、板状のライセンスプレートホルダー本体部2と、ライセンスプレートホルダー本体部2の上辺3から自動車本体側に突出し、自動車本体と接する上部フランジ30と、ライセンスプレートホルダー本体部2の下辺4から自動車本体側に突出し、自動車本体と接する下部フランジ403を含む5つの下部フランジを備え、下辺4において下部フランジの非存在箇所41を4箇所備える。
【0055】
非存在箇所41は、ライセンスプレートホルダー本体部2の下辺4から自動車本体側に突出するものの自動車本体とは接しない凸部43を兼ねる。
【0056】
ライセンスプレートホルダー本体部2の下辺4の中央部42は、下辺4の両端部よりも上辺3側に位置している。
【0057】
ライセンスプレートホルダー本体部2の右辺5及び左辺6は、自動車本体の形状に沿って、自動車本体に接触する右側フランジ50及び左側フランジ60(
図3を参照。)を備える。右側フランジ50は、上部フランジ30及び下部フランジ400と連続している(
図3を参照。)。左側フランジ60は、上部フランジ30及び下部フランジ404と連続している(
図3を参照。)。
【0058】
ライセンスプレートホルダー本体部2は、締結部材が貫通し、自動車本体の前面に接して取り付けられる2つの取り付け部7を有する。取り付け部7の形状は全体として四角推台である。そして、取り付け部7には、開口面70が設けられている。
2つの取り付け部7の下方に、2つの補助フランジ8が設けられている。ただし、2つの補助フランジ8は、ライセンスプレートホルダー本体部2自体の剛性を向上させるためのものであり、取り付け時に自動車本体の前面に接しない。補助フランジ8の側面には、開口面80が設けられている。
【0059】
なお、右側の補助フランジ8の先端側には、自動車本体に取り付ける際に位置合わせを容易にするための位置合わせ部9(
図2を参照。)が設けられている。
【0060】
ライセンスプレートホルダー本体部2には、ライセンスプレートとの結合部10が2か所設けられている。結合部10は金属製である。中央側の孔が米国用のライセンスプレートを結合するための締結部材を貫通させる孔であり、外側の孔が日本国用のライセンスプレートを結合するための締結部材を貫通させる孔である。なお、結合部10に隣接する長方形状の開口11は、ライセンスプレートを結合する際の作業を簡便に行うためのものである。
【0061】
図2に、実施例1のライセンスプレートホルダー1を下辺側から観察した底面図を示す。
下辺4には、左から順に、下部フランジ400、非存在箇所41(凸部43)、下部フランジ401、非存在箇所41(凸部43)、下部フランジ402、非存在箇所41(凸部43)、下部フランジ403、非存在箇所41(凸部43)、下部フランジ404が形成されている。
下部フランジ400、下部フランジ401、下部フランジ402、下部フランジ403及び下部フランジ404の形状は、上底よりも下底が長い台形である。
図2の底面図においては、2つの補助フランジ8が観察される。左側の補助フランジ8の先端面には、上方向に延びる棒状の位置合わせ部9が設けられている。
【0062】
図3に、実施例1のライセンスプレートホルダー1を裏面側から観察した背面図を示す。
上部フランジ30はライセンスプレートホルダー本体部2の上辺全体に連続して形成されている。
図3で左側に位置する右側フランジ50は、上部フランジ30と連続しており、かつ、下部フランジ400と連続している。
図3で右側に位置する左側フランジ60は、上部フランジ30と連続しており、かつ、下部フランジ404と連続している。
ライセンスプレートホルダー本体部2の下辺全体の長さに対する4箇所の非存在箇所41の合計の割合(R
bottom)は、概ね60%である。
下部フランジ400、401、402、403及び404は、いずれも、末端の自動車本体接触部400A、401A、402A、403A及び404Aがライセンスプレートホルダー本体部2の周縁よりも外側方向に延びている。
【0063】
自動車本体の前面に接して取り付けられる取り付け部7は、ライセンスプレートホルダー本体部2の上半分の領域に設けられている。取り付け部7の先端面には、締結部材が貫通するための貫通孔が設けられている。取り付け部7の上辺側の斜面及び下辺側の斜面には開口面70がそれぞれ設けられている。開口面70の存在により、上辺側の斜面及び下辺側の斜面の強度が脆弱となっており、かつ、取り付け部7は、ライセンスプレートホルダー本体部2の上半分の領域に設けられているため、衝突時に、ライセンスプレートホルダー1は全体として、下辺方向にたわみやすいといえる。
【0064】
2つの取り付け部7の下方に、2つの補助フランジ8が設けられている。補助フランジ8の形状は全体として四角推台である。そして、補助フランジ8の右辺側の斜面及び左辺側の斜面にはそれぞれ開口面80が設けられている。
2つの補助フランジ8は、取り付け時に自動車本体の前面に接しないが、座屈時には自動車本体の前面に接する可能性がある。そのような場合にも、開口面80の存在に因り、補助フランジ8の上下方向の強度は脆弱となっているため、容易に座屈することができる。
【0065】
図4に、実施例1のライセンスプレートホルダー1を右辺側から観察した右側面図を示す。右側フランジ50は右辺5に連続して、取り付けられるグリルの形状に合わせて形成されている。
なお、左辺側についても同様に、左側フランジは左辺に連続して、取り付けられるグリルの形状に合わせて形成されている。
【0066】
図5に、実施例1のライセンスプレートホルダー1が自動車本体の前面に取り付けられた自動車300を示す。
自動車300の自動車前面構造体であるグリル200における中央下方領域に実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられている。自動車300においては、前方から、ライセンスプレートホルダー1、グリル200、衝撃吸収部材、バンパーレインフォースメントの順に配置されている。
【0067】
図6に、実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられたグリル200の拡大図を示す。
図7に実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられたグリル200のA-A断面図を示し、
図8に実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられたグリル200のB-B断面図を示す。
【0068】
図7に示すように、グリル200は、グリル基板203から、グリル凸部201及びグリル凸部202が突出している構造である。
上部フランジ30は、ライセンスプレートホルダー本体部2からグリル200側に突出して、グリル凸部201の平坦面と接している。
下部フランジ403は、ライセンスプレートホルダー本体部2からグリル200側に突出して、グリル基板203と接している。
上部フランジ30におけるライセンスプレートホルダー本体部2からグリル凸部201までの突出長さ(L
upper)と、下部フランジ403におけるライセンスプレートホルダー本体部2からグリル基板203までの突出長さ(L
bottom)の関係は、L
upper<L
bottomの関係を満足している。また、上部フランジ30の厚みは約2.2mmであるのに対して、下部フランジ403の厚みは約2.0mmであり、下部フランジ403は厚みが薄い。
下部フランジ403はライセンスプレートホルダー本体部2の周縁よりも外側方向に延びているため、下部フランジ403とライセンスプレートホルダー本体部2との角度は90°を超えている。
【0069】
図8に示すように、上部フランジ30は、ライセンスプレートホルダー本体部2からグリル200側に突出して、グリル凸部201の平坦面と接している。
下部フランジ402は、ライセンスプレートホルダー本体部2からグリル200側に突出して、グリル凸部202の平坦面と接している。
上部フランジ30におけるライセンスプレートホルダー本体部2からグリル凸部201までの突出長さ(L
upper)と、下部フランジ402におけるライセンスプレートホルダー本体部2からグリル凸部202までの突出長さ(L
bottom)の関係は、L
upper<L
bottomの関係を満足している。また、上部フランジ30の厚みは約2.2mmであるのに対して、下部フランジ402の厚みは約2.0mmであり、下部フランジ402は厚みが薄い。
下部フランジ402はライセンスプレートホルダー本体部2の周縁よりも外側方向に延びているため、下部フランジ402とライセンスプレートホルダー本体部2との角度は90°を超えている。
【0070】
図9及び
図10には、実施例1のライセンスプレートホルダー1が自動車本体の前面に取り付けられた自動車300が、脚部インパクター500と衝突した場合の変化図を示す。
図9は、実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられたグリル200のA-A断面図の変化図であり、
図10は、実施例1のライセンスプレートホルダー1が取り付けられたグリル200のB-B断面図の変化図である。
【0071】
図9に示すように、衝突時に、下部フランジ403の末端の自動車本体接触部403A(グリル接触部)がグリル基板203上を下方に大きくスライドすることで、ライセンスプレートホルダー1が座屈し、脚部インパクター500に対する衝撃を緩衝する。
同様に、
図10に示すように、衝突時に、下部フランジ402の末端の自動車本体接触部402A(グリル接触部)がグリル凸部202の平坦面上を下方に大きくスライドすることで、ライセンスプレートホルダー1が座屈し、脚部インパクター500に対する衝撃を緩衝する。
ライセンスプレートホルダー1の座屈時には、下部フランジ403及び下部フランジ402のライセンスプレートホルダー本体部2との角度は、さらに大きくなる。
他の下部フランジ400、401、404も同様に作用する。
【0072】
以上のとおり、本発明のライセンスプレートホルダーは、下部フランジの非存在箇所があるため、下部フランジが優先的に変形するモードで座屈し、歩行者に対する衝撃を緩衝する。
【符号の説明】
【0073】
1 ライセンスプレートホルダー
2 ライセンスプレートホルダー本体部
3 上辺、 30 上部フランジ
4 下辺、 400、401、402、403、404 下部フランジ
400A、401A、402A、403A、404A 自動車本体接触部
41 非存在箇所、 42 中央部、 43 凸部
5 右辺、 50 右側フランジ
6 左辺、 60 左側フランジ
7 取り付け部、 70 開口面
8 補助フランジ、 80 開口面
9 位置合わせ部
10 結合部、 11 開口
200 グリル、 201、202 グリル凸部、 203 グリル基板
300 自動車
500 脚部インパクター