(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】プラズマ源の状態を検出する方法およびプラズマ源
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230705BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20230705BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230705BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/46 R
H05H1/00 A
H01L21/302 103
C23C16/505
(21)【出願番号】P 2020055748
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519355(JP,A)
【文献】特表2007-503096(JP,A)
【文献】特開2002-343600(JP,A)
【文献】特開2001-143896(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104981086(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0305988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01L 21/3065
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導結合型のプラズマ源の状態を検出する方法であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記方法は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させるステップと、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電圧に対応する第1電圧と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第1電流とを取得するステップと、
前記第1電圧の増加に対して前記第1電流が減少した場合に、第1信号を出力するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
誘導結合型のプラズマ源の状態を検出する方法であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記方法は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させるステップと、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電力に対応する第2電力と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第2電流または第2電圧とを取得するステップと、
前記第2電流または前記第2電圧を前記第2電力で微分した値が、減少から増加に転じた場合に、第1信号を出力するステップと、
を備える、方法。
【請求項3】
前記第1信号は、プラズマが前記容量結合プラズマから誘導結合プラズマに変化したことを表す信号である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記直流電源回路の出力端と前記インバータ回路の入力端とが接続され、
前記インバータ回路の出力端と前記共振回路の入力端とが接続され、
前記共振回路の出力端と前記放電部の入力端とが接続される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
誘導結合型のプラズマ源であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記プラズマ源は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させ、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電圧に対応する第1電圧と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第1電流とを取得し、
前記第1電圧の増加に対して前記第1電流が減少した場合に、第1信号を出力する、
プラズマ源。
【請求項6】
誘導結合型のプラズマ源であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記プラズマ源は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させ、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電力に対応する第2電力と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第2電流または第2電圧とを取得し、
前記第2電流または前記第2電圧を前記第2電力で微分した値が、減少から増加に転じた場合に、第1信号を出力する、
プラズマ源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ源の状態を検出する方法およびプラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下「ICP」)は、半導体装置の製造を含む様々な用途に用いられ、たとえば半導体装置の製造では、シリコンウェハに対するエッチング工程や、CVD法による膜の生成等に用いられる。特許文献1および2には、ICPを用いた半導体装置の製造技術が開示されている。
【0003】
ICPを発生させるプラズマ源(誘導結合型のプラズマ源)では、ICPを発生させるために、まず容量結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、以下「CCP」)を発生させ、これをICPに変化させるものが知られている。この場合において、プラズマがCCPからICPに変化したことを検出することが重要となる。
【0004】
従来技術では、CCPからICPへの変化を検出する際に、プラズマからの発光を計測し、発光強度に基づいて確認していた。特許文献1および2でも、発光強度に基づく判定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-343600号公報
【文献】特開2008-198695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、プラズマがCCPからICPに変化したことを正確に検出するのが困難であるという課題があった。
【0007】
たとえば、特許文献1および2のように発光強度に基づいて判断する場合には、そもそもプラズマはCCPとして着火した場合に発光するので、CCPの発生と、CCPからICPへの変化とを区別して判断することが難しい。一般的にICPのほうが明るく、発光強度も大きいことがわかっているが、正確に判定できる閾値を設定することは困難である。
【0008】
また、CCPおよびICPの発光強度は、プラズマを構成するガスの種類によって変化するので、各種のガスに共通して使用できる閾値を設定するのは困難であり、単一の閾値が有効に機能する条件は限定的である。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、プラズマがCCPからICPに変化したことをより正確に検出することができる方法およびプラズマ源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る方法の一例は、
誘導結合型のプラズマ源の状態を検出する方法であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記方法は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させるステップと、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電圧に対応する第1電圧と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第1電流とを取得するステップと、
前記第1電圧の増加に対して前記第1電流が減少した場合に、第1信号を出力するステップと、
を備える。
【0011】
本発明に係る方法の一例は、
誘導結合型のプラズマ源の状態を検出する方法であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記方法は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させるステップと、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電力に対応する第2電力と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第2電流または第2電圧とを取得するステップと、
前記第2電流または前記第2電圧を前記第2電力で微分した値が、減少から増加に転じた場合に、第1信号を出力するステップと、
を備える。
【0012】
一例では、前記第1信号は、プラズマが前記容量結合プラズマから誘導結合プラズマに変化したことを表す信号である。
【0013】
一例では、前記直流電源回路の出力端と前記インバータ回路の入力端とが接続され、
前記インバータ回路の出力端と前記共振回路の入力端とが接続され、
前記共振回路の出力端と前記放電部の入力端とが接続される。
【0014】
本発明に係るプラズマ源の一例は、
誘導結合型のプラズマ源であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記プラズマ源は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させ、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電圧に対応する第1電圧と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第1電流とを取得し、
前記第1電圧の増加に対して前記第1電流が減少した場合に、第1信号を出力する。
【0015】
本発明に係るプラズマ源の一例は、
誘導結合型のプラズマ源であって、
前記プラズマ源は、直流電源回路と、インバータ回路と、共振回路と、放電部とを備え、
前記プラズマ源は、
前記放電部において容量結合プラズマを発生させ、
前記容量結合プラズマが発生した後に、前記直流電源回路の出力端における電力に対応する第2電力と、前記共振回路または前記放電部の少なくとも一方の少なくとも一部における第2電流または第2電圧とを取得し、
前記第2電流または前記第2電圧を前記第2電力で微分した値が、減少から増加に転じた場合に、第1信号を出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る、プラズマ源の状態を検出する方法およびプラズマ源によれば、プラズマがCCPからICPに変化したことをより正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係るプラズマ源の構成の例を示す図。
【
図2】実施の形態1において測定される電圧および電流の関係を示すグラフ。
【
図3】実施形態1に係るプラズマ源の状態を検出する方法のフローチャート。
【
図4】実施形態2において測定される電力と、電流および電圧との関係を示すグラフ。
【
図6】実施形態2に係るプラズマ源の状態を検出する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施形態1.
図1に、実施形態1に係るプラズマ源10の構成の例を示す。プラズマ源10は誘導結合型のプラズマ源である。実施形態1では、プラズマ源10における電圧の増加に対する電流の挙動に応じて検出を行う。
【0019】
プラズマ源10は、直流電源回路20と、インバータ回路30と、共振回路40と、放電部50と、制御手段60とを備える。
【0020】
直流電源回路20、インバータ回路30、共振回路40および放電部50は、この順に接続される。すなわち、直流電源回路20の出力端とインバータ回路30の入力端とが接続され、インバータ回路30の出力端と共振回路40の入力端とが接続され、共振回路40の出力端と放電部50の入力端とが接続される。
【0021】
直流電源回路20は直流電圧を供給する。インバータ回路30は直流電圧を交流電圧に変換する。交流電圧の周波数はたとえばRF周波数であり、より具体的な例としては2MHzまたは約2MHzである。
【0022】
共振回路40は交流電圧を利用して共振現象を起こし、共振した電圧を放電部50に供給する。本実施形態では、共振回路40はLC回路部41およびコンデンサ42を備え、コンデンサ42はLC回路部41に対して放電部50と並列に接続される。なお、共振回路40の構成は図示のものに限らない。
【0023】
放電部50は、放電管(とくに図示しない)とアンテナ51とを備える。
放電管は、たとえば誘電体(絶縁体)で形成された円筒面状の放電容器であり、その内部でプラズマが生成される。アンテナ51は、放電管を取り囲むようにコイル状に形成される導電体であり、共振回路40に接続される。
図1では放電部50においてアンテナ51に直列接続した抵抗52を図示しているが、この抵抗52は、無負荷時のコイルの抵抗値である。
なお、アンテナ51の形状はコイル状に限定されない。また、アンテナ51は、放電管を冷却するために、パイプ形状で内部に水等の冷媒を流すようにしてもよい。また、アンテナ51は必ずしも放電管を取り囲むように形成される必要は無く、放電管を形成する誘電体(絶縁体)の内部に形成するようにしてもよい。
【0024】
放電部50は、供給される電圧を用いてプラズマを発生させる。たとえば、放電容器内にガスを流通させた状態でアンテナ51に交流電圧が印加されると、アンテナ51のコイルの端子間電圧によってガスが電離され、プラズマが生成される。これは、コイルの端子間の電界によって結合しているプラズマであり、すなわちCCPである。
【0025】
CCPが発生している状態で、アンテナ51に印加する電圧をさらに増大させると、コイルの周囲に磁場が形成されて誘導電界が発生し、それによりICPが発生する。ICPは、半導体装置の製造等に用いられるプラズマであり、用途に応じて維持および管理される。
【0026】
制御手段60は、プラズマ源10の動作を制御する。たとえば、制御手段60は、ドライバーアンプ70を介して直流電源回路20に接続され、ドライバーアンプ80を介してインバータ回路30に接続される。
【0027】
制御手段60は、直流電源回路20の状態を表す測定信号(たとえば電圧信号C1および電流信号C2)を取得し、これに応じてプラズマ源10を制御する。プラズマ源10の制御は、たとえば直流電源回路20に制御信号C3を送信し、インバータ回路30に制御信号C4を送信することによって行われる。
【0028】
また、制御手段60は、プラズマ源10の回路における電圧および電流を取得することができる。このためにプラズマ源10は測定手段を備える。実施形態1では測定手段はVIセンサ90であり、インバータ回路30と共振回路40との間に配置される。制御手段60は、VIセンサ90から測定信号C5を受信することによって電圧および電流を取得する。なお、
図1におけるVIセンサ90の位置は一例であり、電圧および電流を測定すべき回路部分に応じて適切な位置に変更することができる。
【0029】
直流電源回路20、制御手段60、ドライバーアンプ70およびドライバーアンプ80には、図示しない電源が接続され、これらに電力を供給する。
【0030】
図2は、プラズマ源10を用いてICPを発生させた場合に、各部で測定される電圧および電流の関係を示すグラフである。横軸は、図略の電圧測定手段で測定した直流電源回路20の出力端における電圧[V]を表す。縦軸は、VIセンサ90等によって測定されるプラズマ源10の各部における電流[A]を表す。
なお、各部の電流値は、各部に設けた電流測定手段によって測定されるが、
図1では、VIセンサ90のみ図示し、その他の電流測定手段は図示を省略している。
【0031】
実施形態1では、放電容器内のガスとして、酸素と窒素を混合したものを供給した。ガスの気圧は合計100Paとし、ガスの流量を異ならせて複数回の測定を行った。
【0032】
図2のグラフにおいて、測定結果は大きく3つのグループに分かれている。電流が最も小さいグループは、インバータ回路30と共振回路40との間に流れる電流を表す。この電流は、たとえばVIセンサ90によって測定することができる。
【0033】
電流が最も大きいグループは、放電部50における電流を表す。この電流は、たとえば放電部50の入力端(共振回路の出力端)に配置された別のVIセンサ(図示せず)によって測定することができる。さらに、電流が中間的な大きさのグループは、コンデンサ42における電流を表す。この電流は、たとえば、放電部50の入力端(共振回路の出力端)に配置された別のVIセンサ(図示せず)によって測定することができる。
【0034】
各グループは、ガスの流量を異ならせた条件でそれぞれ測定した2つのグラフを含む。●記号は、酸素の流量を1000sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)とし、窒素の流量を100sccmとした場合のグラフを示す。▲記号は、酸素の流量を1500sccmとし、窒素の流量を100sccmとした場合のグラフを示す。
【0035】
電圧が低い範囲(大まかに35V程度以下)はプラズマが発生していない無負荷の状態に対応し、電圧の増加に対して電流も単調に増加する。電圧が増加し、大まかに35V程度を超えるとCCPが発生するが、その後も電圧の増加に対して電流が単調に増加する。
【0036】
さらに電圧が増加すると、プラズマがCCPからICPに変化する。この電圧は、酸素1000sccm、窒素100sccmの場合(●グラフに対応する)の場合には約120V(破線で示す)であり、酸素1500sccm、窒素100sccmの場合(▲グラフに対応する)の場合には約130V(一点鎖線で示す)であった。
【0037】
図2の●グラフ(酸素1000sccm、窒素100sccm)の例では、電圧が約120V(破線)を超えると、電圧の増加に対して電流が減少する。また、
図2の▲グラフ(酸素1500sccm、窒素100sccm)の例では、電圧が約130V(一点鎖線)を超えると、電圧の増加に対して電流が減少する。このように、プラズマがCCPからICPに変化する点の電圧と、電流が減少に転じる点の電圧とはよく一致している。
【0038】
なお、
図2には示さないが、その後さらに電圧を増加させると電流は再び増加に転じる。
【0039】
図3は、実施形態1に係るプラズマ源の状態を検出する方法のフローチャートである。プラズマ源10は、この方法を実行することによりプラズマ源10の状態を検出する。プラズマ源10の状態は、たとえばプラズマ源10によって発生するプラズマの状態を含む。プラズマの状態は、たとえばプラズマがCCPであるかICPであるかを表す。プラズマ源10の放電容器にガスを流通させた状態で、
図3の方法が開始される。
【0040】
まず、プラズマ源10の放電部50に電圧を印加し、これによって、放電部50においてCCPを発生させる(ステップS1)。CCPが発生した後、制御手段60は、プラズマ源10に係る電圧(第1電圧)および電流(第1電流)を測定して取得する(ステップS2)。
【0041】
図1の例では、この測定はVIセンサ90を介して行われる。すなわち、制御手段60は、インバータ回路30および共振回路40の接続点における電圧(より厳密な表現の例としては、たとえば当該接続点とグランドとの間の電圧)と、当該接続点に流れる電流とを測定する。
【0042】
ここで、VIセンサ90が測定する電圧は、直流電源回路20の出力電圧に応じて変動するので、直流電源回路20の出力端における電圧に対応する値であるということができる。また、VIセンサ90が測定する電流は、共振回路40の入力端における電流の値であるということができる。
【0043】
本実施形態では、電圧および電流は正の値をとるものとする。また、交流の場合には、実効値であってもよく、最大値であってもよく、平均値であってもよく、他の適切に算出される値であってもよい。
【0044】
なお、ステップS2で取得される第1電圧および第1電流の測定方法は、
図1に示すVIセンサ90を用いる方法に限らない。たとえば第1電圧は、直流電源回路20の出力端における電圧に対応する電圧であればどの部分の電圧であってもよく、たとえば直流電源回路20の出力端における電圧そのものを直接的に測定した値であってもよいし、インバータ回路30の入力端における電圧を測定した値であってもよいし、インバータ回路30の出力端における電圧を測定した値であってもよいし、共振回路40の入力端における電圧を測定した値であってもよいし、共振回路40の出力端における電圧を測定した値であってもよいし、放電部50の入力端における電圧を測定した値であってもよい。
【0045】
また、第1電流は、共振回路40または放電部50の少なくとも一方の少なくとも一部における電流であればよい。たとえば共振回路40の入力端および出力端の間における電流を測定した値であってもよいし、コンデンサ42における電流を測定した値であってもよいし、放電部50における電流を測定した値であってもよい。どの部分の電流を用いても、本実施形態の判定方法は適切に機能する。
【0046】
ステップS2の後、制御手段60は、ステップS2で取得される電圧の増加に対して、ステップS2で取得される電流が減少するか否かを判定する(ステップS3)。たとえば、制御手段60は、当該電圧が増加するように直流電源回路20を制御しつつ、当該電流の挙動を監視してもよい。
【0047】
電圧の増加に対して電流が減少していない場合には、ステップS2およびS3が繰り返される。ここで、たとえば、制御手段60は、ステップS2およびS3を実行する都度、電圧を増加させる。
【0048】
一方、電圧の増加に対して電流が減少した場合には、制御手段60は電流が減少したことを表す信号(第1信号)を出力する(ステップS4)。これは、プラズマがCCPからICPに変化したと判定することに対応する。すなわち、第1信号は、プラズマがCCPからICPに変化したことを表す信号であるといえる。
【0049】
実施形態1では、この判定に発光強度を用いないので、従来技術より正確に判定を行うことができる。とくに、この方法は発光強度に依存しないので、発光強度が異なる様々な種類のガスに適用することが可能であり、また、ガスの圧力が異なる場合にも適用することが可能である。なお、変形例として、判定に発光強度を併用することも可能である。
【0050】
第1信号の内容、形式、出力態様および利用方法は、当業者が適宜設計可能である。たとえば、制御手段60には表示装置が接続されていてもよく、その表示装置に第1信号が出力されたことを示す情報が表示されてもよい。情報の具体例としては、プラズマの状態がCCPからICPに変化したことを示すメッセージまたは画像とすることができる。
【0051】
また、たとえば、制御手段60は、第1信号の出力に応じて特定の処理の実行を開始してもよい。より具体的な例としては、タイマーを起動してもよい。このタイマーの値は、ICPが発生してからの経過時間を示す値として利用することができる。
【0052】
以上説明するように、実施形態1に係るプラズマ源10および
図3に示す方法によれば、プラズマがCCPからICPに変化したことをより正確に検出できる。
【0053】
実施形態2.
実施形態2では、プラズマ源10における電力の増加に対する電圧または電流の挙動に応じて検出を行う。以下、実施形態1との相違を説明する。
【0054】
図4は、実施形態1とは異なる条件において、直流電源回路20の出力端における電力と、VIセンサ90等を用いて測定される電流および電圧との関係を示すグラフである。実施形態2では、放電容器内のガスとして、水素と窒素を混合したものを供給した。水素および窒素の流量はいずれも1000sccmとし、ガスの気圧は合計87Paとした。
【0055】
横軸は、図略の電力測定手段で測定した直流電源回路20の出力端における電力を表す。左側の縦軸は、VIセンサ90によって測定される電流[A]を表す。右側の縦軸は、VIセンサ90によって測定される電圧[V]を表す。
【0056】
図4において、×記号は電流を示し、▲記号は電圧を示す。電力が低い範囲(大まかに1500W程度以下)では、電力の増加に対して電流および電圧はいずれも増加する。電力が1500W程度に達すると、電力の増加に対して電流および電圧がいずれも増加から減少に転じる。
【0057】
図5は、
図4の結果を微分して表したグラフである。横軸は
図4と同じである。縦軸は、VIセンサ90等によって測定される電流[A]を電力で微分した値と、VIセンサ90等によって測定される電圧[V]を電力で微分した値とを表す。これらの値は、以下では単に「微分値」と呼ぶ場合がある。微分係数または導関数とも呼ばれる。なお図示の都合上、電圧の変化は100倍の値にして示してある。
【0058】
微分値の具体的な取得方法は、当業者が公知技術に基づき適宜設計可能であるが、たとえば、電力がある値Pから別の値P+ΔPに増加したときに、電流がある値Cから別の値C+ΔCに変化した場合には、ΔC/ΔPを電流の微分値として算出することができる。電圧についても同様である。別の例として、公知の微分器または微分回路を用いてもよい。
【0059】
図5の×記号は電流の微分値を示し、▲記号は電圧の微分値を示す。電流の微分値が正である間は、電力の増加に伴って電流が増加することを示し、電流の微分値が負である間は、電力の増加に伴って電流が減少することを示す。電圧の微分値についても同様である。
【0060】
電力が低い範囲(大まかに1800W程度以下)は、プラズマが発生していない無負荷の状態およびCCPが発生している状態に対応する。この範囲では、電流および電圧の微分値はいずれも減少する。
【0061】
電力が約1800W(破線で示す)に達すると、プラズマがCCPからICPに変化する。
図5のグラフでは、電力が約1800W(破線)を超えると、電流および電圧の微分値が減少から増加に転じている。このように、プラズマがCCPからICPに変化する点の電力と、電流および電圧の微分値が減少から増加に転じる点(電流および電圧の変曲点)の電力とはよく一致している。
【0062】
図6は、実施形態2に係るプラズマ源の状態を検出する方法のフローチャートである。プラズマ源10は、この方法を実行することによりプラズマ源の状態を検出する。プラズマ源10の放電容器にガスを流通させた状態で、
図6の方法が開始される。
【0063】
まず、プラズマ源10の放電部50に電圧を印加し、これによって、放電部50においてCCPを発生させる(ステップS11)。CCPが発生した後、制御手段60は、プラズマ源10に係る電力(第2電力)と、電圧(第2電圧)または電流(第2電流)とを測定して取得する(ステップS12)。この測定はたとえばVIセンサ90を介して行われる。なお、
図1の例では、VIセンサ90によって測定される電圧および電流を用いて電力を算出して取得することが可能である。
【0064】
ここで取得される電力は、直流電源回路20の出力電力に応じて変動するので、直流電源回路20の出力端における電力に対応する値であるということができる。また、VIセンサ90が測定する電流または電圧は、共振回路40の入力端における電流または電圧の値であるということができる。
【0065】
本実施形態では、電力、電圧および電流は正の値をとるものとする。また、交流の場合には、実効値であってもよく、最大値であってもよく、平均値であってもよく、他の適切に算出される値であってもよい。
【0066】
なお、ステップS12で取得される第2電力、第2電圧および第2電流の測定方法は、
図1に示すVIセンサ90を用いる方法に限らない。たとえば第2電力は、直流電源回路20の出力端における電力に対応する電力であればどの部分の電力であってもよく、たとえば直流電源回路20の出力端における電力そのものを直接的に測定した値であってもよいし、インバータ回路30の入力端における電力を測定した値であってもよいし、インバータ回路30の出力端における電力を測定した値であってもよいし、共振回路40の入力端における電力を測定した値であってもよいし、共振回路40の出力端における電力を測定した値であってもよいし、放電部50の入力端における電力を測定した値であってもよい。
【0067】
また、第2電流および第2電圧は、共振回路40または放電部50の少なくとも一方の少なくとも一部における電流または電圧であればよい。たとえば共振回路40の入力端および出力端の間における電流を測定した値であってもよいし、共振回路40の入力端における電圧を測定した値であってもよいし、共振回路40の出力端における電圧を測定した値であってもよいし、コンデンサ42における電流または電圧を測定した値であってもよいし、放電部50における電流または電圧を測定した値であってもよい。
【0068】
ステップS12の後、制御手段60は、ステップS12で取得される電流または電圧の微分値が、減少から増加に転じたか否かを判定する(ステップS13)。たとえば、制御手段60は、当該電力が増加するように直流電源回路20を制御しつつ、当該電流または電圧の挙動を監視してもよい。
【0069】
電流または電圧の微分値が、減少から増加に転じていない場合(たとえば、微分値が減少することなく増加している場合、微分値が減少し続けている場合、等)には、ステップS12およびS13が繰り返される。たとえば、制御手段60は、ステップS12およびS13を実行する都度、電力を増加させる。
【0070】
一方、電流または電圧の微分値が、減少から増加に転じた場合には、制御手段60は電流または電圧の微分値が減少したことを表す信号(第1信号)を出力する(ステップS14)。これは、プラズマがCCPからICPに変化したと判定することに対応する。すなわち、第1信号は、プラズマがCCPからICPに変化したことを表す信号であるといえる。
【0071】
なお、
図5には電流および電圧双方の微分値を示しているが、上記から明らかなように、実施形態2に係る方法は、これらの微分値のうちいずれか一方のみを用いて実施可能である。たとえば、ステップS12で電力および電流を測定し、ステップS14で電流の微分値を用いて判定してもよいし、ステップS12で電力および電圧を測定し、ステップS14で電圧の微分値を用いて判定してもよい。電流および電圧の双方を用いる場合には、ステップS14において、電流および電圧双方の微分値が減少から増加に転じた場合(AND条件)にのみ第1信号を出力してもよいし、ステップS14において、電流および電流いずれか一方の微分値が減少から増加に転じた場合(OR条件)に第1信号を出力してもよい。
【0072】
実施形態2でも、判定に発光強度を用いないので、従来技術より正確に判定を行うことができる。とくに、この方法は発光強度に依存しないので、発光強度が異なる様々な種類のガスに適用することが可能であり、また、ガスの圧力が異なる場合にも適用することが可能である。なお、変形例として、判定に発光強度を併用することも可能である。
【0073】
以上説明するように、実施形態2に係るプラズマ源10および
図6に示す方法によれば、プラズマがCCPからICPに変化したことをより正確に検出できる。
【符号の説明】
【0074】
10…プラズマ源
20…直流電源回路
30…インバータ回路
40…共振回路
41…LC回路部
42…コンデンサ
50…放電部
51…アンテナ
52…抵抗
60…制御手段
70,80…ドライバーアンプ
90…VIセンサ