(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】オートファジーの促進剤としての相乗作用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/53 20060101AFI20230705BHJP
A61K 31/132 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20230705BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230705BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230705BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230705BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230705BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230705BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230705BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230705BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230705BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230705BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230705BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230705BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
A61K36/53
A61K31/132
A61K31/4188
A61P17/14
A61P43/00 105
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
A61K8/9789
A61K8/41
A61K8/49
A61Q7/00
A61Q5/00
A61Q1/00
A61K127:00
A61K135:00
A61K133:00
(21)【出願番号】P 2020504725
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2018071005
(87)【国際公開番号】W WO2019025548
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】102017000089680
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】504244025
【氏名又は名称】ギウリアニ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ギウリアーニ ジャンマリア
(72)【発明者】
【氏名】パウス ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ ベネデット
(72)【発明者】
【氏名】マルツァーニ バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】バローニ セルジオ
【審査官】鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/063678(WO,A1)
【文献】特表2010-529960(JP,A)
【文献】特開2003-002839(JP,A)
【文献】特表2004-506656(JP,A)
【文献】特表2005-519069(JP,A)
【文献】特表2008-534464(JP,A)
【文献】特表2014-510783(JP,A)
【文献】特表2015-522647(JP,A)
【文献】Journal of Investigative Dermatology,2016年,Vol. 136, No. 9, Supp. 2,p. S196, article number 209
【文献】PLoS ONE,2011年,Vol. 6, No. 7, e22564,pp.1-12
【文献】nature cell biology,2009年,Vol. 11, No. 11,pp. 1305-1314
【文献】Skin Appendage Disorders,2017年04月,Vol. 3,pp. 166-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/53
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00-17/18
A61K 9/00- 9/72
A61Q 7/00- 7/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガレオプシス・セゲツム種の植物の地上部、ガレオプシス・テトラヒト種の植物の地上部又はこれらの混合物の水、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール及びエタノールと水の混合物から選択される極性プロトン性溶媒による抽出成分と、R-N
1-スペルミジン又はその塩、ビオチン及びこれらの混合物から選択されるオートファジーを促進する化合物とを含む発毛を促進するため及び毛髪脱落の予防のためのヒト頭皮の毛包細胞におけるオートファジー誘導のための相乗作用組成物であって、Rは水素又はメチルである相乗作用組成物。
【請求項2】
前記ガレオプシス・セゲツム種の植物又はガレオプシス・テトラヒト種の植物の抽出成分が、
- 前記ガレオプシス・セゲツム種の植物又はガレオプシス・テトラヒト種の植物の少なくとも地上部を粉砕する工程、
- 生理的に許容できる極性プロトン性溶媒で抽出する工程、
- 前記抽出成分を濾過する工程、
- 濾過された前記抽出成分を、好ましくは、水、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール及びエタノールと水の混合物から選択される溶媒を用いてカラムの中を溶出させることにより精製する工程、
- 精製された前記抽出成分を乾燥する工程、
- 乾燥された精製後の前記抽出成分を粉砕する工程、及び
- 任意選択的に、賦形剤を添加する工程
を含む方法によって得られた乾燥抽出成分である請求項1に記載の相乗作用組成物。
【請求項3】
前記賦形剤が、マルトデキストリン及び/又は無水のコロイド状シリカゲルを含む請求項2に記載の相乗作用組成物。
【請求項4】
スペルミジンが、三塩酸塩の形態で前記組成物の中に存在する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の相乗作用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の相乗作用組成物と、局所投与に好適な少なくとも1種の賦形剤とを含む
発毛を促進するため及び毛髪脱落の予防のためのヒト頭皮の毛包細胞におけるオートファジー誘導のための局所処方物。
【請求項6】
前記ガレオプシス・セゲツム種の植物又はガレオプシス・テトラヒト種の植物の抽出成分の量が、前記組成物の総重量に対して0.0003重量%~0.01重量%の範囲にある請求項5に記載の局所処方物。
【請求項7】
ビオチンの量が、前記組成物の総重量に対して0.0006重量%~0.075重量%の範囲にある請求項5又は請求項6に記載の局所処方物。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して0.0005~0.1重量%の範囲のR-N
1-スペルミジン又はその塩を含み、Rはメチル又は水素である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の局所処方物。
【請求項9】
シャンプー、ゲル、コンディショナー、ローション剤、バーム、乳剤、フォーム、メイクアップ及びクリームからなる群から選択される形態にある請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の局所処方物。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の相乗作用組成物と、経口投与に好適な少なくとも1種の賦形剤とを含む
発毛を促進するため及び毛髪脱落の予防のためのヒト頭皮の毛包細胞におけるオートファジー誘導のための経口処方物。
【請求項11】
前記経口処方物の中の前記ガレオプシス・セゲツム種の植物又はガレオプシス・テトラヒト種の植物の乾燥抽出成分の量が単回用量で0.1mg~20mgの範囲にある請求項10に記載の経口処方物。
【請求項12】
前記経口処方物の中のビオチンの量が、単回用量で0.03mg~0.08mgの範囲にある請求項10又は請求項11に記載の経口処方物。
【請求項13】
前記組成物が、単回用量で0.3mg~0.8mgの範囲のR-N
1-スペルミジン又はその塩を含み、Rはメチル又は水素である請求項10又は請求項11に記載の経口処方物。
【請求項14】
錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤及び丸剤からなる群から選択される固体処方物である請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の経口処方物。
【請求項15】
男性型脱毛症又は脱落の処置のための請求項5から請求項9のいずれか一項に記載の局所処方物又は請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の経口処方物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養、医薬又は美容の分野でのオートファジーの促進剤としての相乗作用組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジー(又はオートファゴサイトーシス(自己貪食))は、不必要な構成要素又は機能障害性構成要素を解体する細胞の自然の、制御されたメカニズムである。オートファジーは、細胞成分の整然とした分解及び再生利用を可能にする。マクロオートファジーでは、標的とされる細胞質構成成分は、オートファゴソーム(自己貪食空胞)として知られる二重膜小胞内では細胞の残りから隔離されている。オートファゴソームは、最終的にリソソームと融合し、内容物は分解され再利用される。オートファジーの3つの形態が一般に記載される:マクロオートファジー、ミクロオートファジー、及びシャペロン介在性オートファジー(CMA)、並びにマイトファジー。疾患において、オートファジーは、ストレスに対する適応応答として見られてきており、この適応応答は生存を促進するが、一方で、他の場合には、オートファジーは、細胞死及び罹患率を促進するようにも見える。飢餓の極端な場合には、細胞成分の崩壊は、細胞のエネルギーレベルを維持することにより細胞生存を促進する。
【0003】
それゆえ、オートファジーは、健康、疾患及び老化において非常に重要な役割を果たし、適応性ストレス応答、分化、組織発生及び恒常性維持等の中心的な細胞プロセスを調節する。
【0004】
Angeleen Flemingらの「Chemical modulators of autophagy as biological probes and potential therapeutics」、Nature Chemical Biology 7、9-17(2011)において、著者らは、オートファジーが、飢餓の下での栄養供給、細胞内部の浄化、感染及び抗原提示に対する防御を含めた、細胞の生存に有利に働く予想外の多面的な機能を有することを明らかにした。従って、不完全なオートファジーは、神経変性、癌及びクローン病を含めた多様な範囲の病状に関連する。
【0005】
Teng Yuらの「Targeting autophagy in skin diseases、J Mol Med(2015)93:31-38」では、皮膚疾患の病変形成に関するオートファジーのメカニズムが、研究され報告されている。具体的には、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)及び白斑等の自己免疫性皮膚障害、- 感染性皮膚障害、- 扁平上皮癌及び黒色腫等の皮膚癌障害におけるオートファジーの役割が報告されている。
【0006】
オートファジーの抑制因子及び誘導因子を検討するためにオートファジーを治療的に調節するために、ヒトの器官モデルが研究された。
【0007】
Tobias Eiserbergら、「Induction of autophagy by spermidine promotes longevity」、Nature cell biology、第11巻、第11号、2009年11月では、天然のポリアミンであるスペルミジンの効果が酵母、ハエ及び虫で研究された。著者らは、スペルミジンの投与がそれらの寿命を延ばすことを報告した。さらには、スペルミジン投与は、老齢のマウスにおいて酸化的ストレスを阻害できる可能性を示した。オートファジーが、損傷し潜在的に有害な細胞物質を再生利用するための主要なリソソーム分解経路を構成することが明らかにされた。
【0008】
本発明者らは、完全な、周期的に組織修復される(小型)器官として、ヒトの頭皮毛包(HF)の器官培養がそのようなモデルを提供しうると実感した。というのも、そのような小胞は、旺盛な増殖活性(成長期)の後で、自然にアポトーシスに誘導される器官退縮(退行期)に入るからである。知られているとおり、濾胞の毛球のライフサイクルは、実質的に3つの後続の期、成長期(成長)、退行期(退縮)及び休止期(休息期)、によって表される。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、毛包のライフサイクルがオートファジー機構によって調節できることを見出し、ヒトの頭皮毛包のモデルに基づいて、促進剤が検討された。
【0010】
上記研究を考慮して、本発明者らは、後期成長期の頭皮HFの毛髪マトリクス上皮は最も悪性の腫瘍よりも高速で増殖し、いくつかのストレス要因に曝露されるが、その後期成長期の頭皮HFは、組織恒常性を維持するようにますます大きい圧力を受ける可能性が高く、それらの成長を維持するために、それらのフラックス(変動)に対する相当なオートファジーフラックスを必要とする可能性があるという仮説を立てた。
【0011】
知られているとおり、異なるストレス要因が毛包のライフサイクルに悪影響を及ぼし、こうして毛髪の数の減少及び毛髪菲薄化を決定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Angeleen Flemingら、「Chemical modulators of autophagy as biological probes and potential therapeutics」、Nature Chemical Biology 7、9-17(2011)
【文献】Teng Yuら、「Targeting autophagy in skin diseases」、J Mol Med(2015) 93:31-38
【文献】Tobias Eiserbergら、「Induction of autophagy by spermidine promotes longevity」、Nature cell biology、第11巻、第11号、2009年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、本発明の目的は、ヒトの頭皮毛包の細胞におけるオートファジーの促進剤として好適な組成物を提供することである。
【0014】
従って、別の目的は、発毛を促進するため、及び/又はヒトの頭皮における毛髪脱落を阻害若しくは遅延するための組成物を提供することである。
【0015】
別の目的は、オートファジーによって介在される状態の処置のための組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ヒトの頭皮毛包(HF)の器官培養を研究することから始めて、本発明者らは、研究したモデルにおいてオートファジーを誘導し、とりわけヒトの頭皮、毛包の細胞におけるオートファジーを促進することに相乗効果を示す化合物の組み合わせを見出した。
【0017】
検討後、相乗効果を有する組成物は、予想外にも、R-N1-スペルミジン又はその塩、ビオチン及びこれらの混合物から選択される、とりわけヒトの頭皮の細胞におけるオートファジーを促進するさらなる化合物と組み合わせたガレオプシス(Galeopsis)属の植物の抽出成分であった。
【0018】
それゆえ、上記の目的は、ガレオプシス属の植物の抽出成分と、R-N1-スペルミジン又はその塩とを含む相乗作用組成物であって、Rは水素又はメチルである相乗作用組成物によって成し遂げられた。
【0019】
あるいは、上記の目的は、ガレオプシス属の植物の抽出成分と、ビオチンとを含む相乗作用組成物によって成し遂げられた。
【0020】
さらなる別の実施形態では、上記の目的は、ガレオプシス属の植物の抽出成分と、ビオチンと、R-N1-スペルミジン又はその塩とを含む相乗作用組成物であって、Rは水素である相乗作用組成物によって成し遂げられた。
【0021】
好ましくは及び驚くべきことに、本発明者らは、局所投与経路又は経口投与経路のいずれかによる上記組成物の投与が、毛髪菲薄化に罹患している対象において、とりわけ毛包の細胞におけるオートファジーを相乗的に促進し、こうして頭皮の罹患範囲の進行性濃化を決定することを認めた。
【0022】
さらなる態様によれば、本発明は、従って、毛髪の生理的成長を刺激するための上記組成物の使用を提供する。
【0023】
なおさらなる態様によれば、本発明は、従って、毛髪脱落又は頭皮疾患の処置又は予防において使用するための上記組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、赤色蛍光タンパク質(RFP)と融合されたオートファジータンパク質LC3を発現する構築物で形質導入され、示された物質で6時間処置されたU2OS細胞の代表的な画像を示す。以前に特徴付けられたオートファジー誘導因子、スペルミジン、が陽性対照として使用された。
【
図2】
図2は、赤色蛍光タンパク質(RFP)と融合されたタンパク質SQSTM1/p62を発現する構築物で形質導入され、示された物質で6時間処置されたU2OS細胞の代表的な画像を示す。SQSTM1/p62の代謝回転は、主にオートファジー介在性の分解プロセスに依存する。
【
図3】
図3は、実施例14で報告される等モル用量のN1-メチルスペルミジン及びスペルミジンで処置されたヒトU2OS細胞における脂質化LC3及びSQSTM1のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これより、本発明は、請求項1に規定される相乗作用組成物に関する。好ましくかつ有利な実施形態では、本発明は、ガレオプシス属の植物の抽出成分と、R-N1-スペルミジン又はその塩と、ビオチンとの相乗作用組成物であって、Rは水素又はメチルである相乗作用組成物に関する。
【0026】
上記組成の組成物の上記抽出成分は、ガレオプシス属に属する植物に由来する。
【0027】
一実施形態では、ガレオプシスの抽出成分は、特に、Downy Hemp-nettleとして一般に知られるガレオプシス・セゲツム(Galeopsis segetum)種、すなわちセージのファミリー、シソ科の顕花植物の一種の乾燥抽出成分である。
【0028】
別の実施形態では、ガレオプシスの抽出成分は、特にガレオプシス・テトラヒト(Galeopsis tetrahit、タヌキジソ)種の抽出成分である。
【0029】
ある実施形態では、上記植物抽出成分は、ガレオプシス・セゲツム及びガレオプシス・テトラヒト由来の抽出成分の混合物である。
【0030】
本発明の抽出成分は、根、葉、果実及び花等の植物の一部分、好ましくは上記植物の地上部から抽出によって得られる。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、本発明の植物抽出成分は、生理的に許容できる溶媒を抽出媒体として使用して、植物の一部分から、又はその組織から抽出によって得られる。
【0032】
「生理的に許容できる溶媒」という用語によって、人体に導入されたとき、又はヒトに施用されたときに重大な有害反応を起こさない溶媒が意図される。通常、溶媒という用語によって、ガレオプシスの植物の一部分から生物活性成分を抽出するために使用される溶媒が意図される。
【0033】
上記植物抽出成分を得るための好適な溶媒は、選択された植物の生物活性成分の少なくともいくつかが可溶であり、生物活性成分から活性を奪う変化を起こさない生理的に許容できる液体である。
【0034】
抽出を行うために使用される植物の好ましい形態学的部分は、茎、葉、花(ブロッサム及びフラワー)を含むシュート系である。
【0035】
抽出を行うために使用される溶媒は、生理的に許容できる溶媒であってよい。好適な溶媒は、ジエチルエーテル、クロロホルム等の非極性溶媒、酢酸エチル、ジクロロエタン等の極性の非プロトン性溶媒、並びにC1~C6アルコール及びこれらを含有する水溶液等の極性のプロトン性溶媒であってもよい。極性のプロトン性溶媒の使用が好ましい。典型的な極性のプロトン性溶媒としては、水、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい溶媒は水 エチルアルコール及びこれらの混合物である。
【0036】
ある実施形態では、極性のプロトン性溶媒、好ましくはエタノールを用いた抽出のあと、この抽出成分は、好ましくは濾過され、濃縮され、清澄にされる。得られた抽出成分は、次に、好ましくは精製される。この精製は、より好ましくは、溶媒を用いたカラム中での溶出により実施される。この溶媒は、例えば、水又はエタノールであることができる。精製された抽出成分は、次に、好ましくは濃縮され乾燥される。そのように得られた乾燥抽出成分は、本発明の組成物で使用されることになる最終の乾燥抽出成分を得るために、任意選択的に粉砕され、任意に賦形剤を添加されてもよい。乾燥抽出成分に含まれる上記任意の賦形剤は、好ましくは、マルトデキストリン及び無水のコロイド状シリカゲルからなる群から選択される。
【0037】
ガレオプシス・テトラヒトの植物抽出成分を得るために、上記植物の植物組織から1以上の生物活性成分を分離/抽出するのに固液抽出技法が使用されてもよい。
【0038】
ある実施形態では、1以上の生物活性成分の抽出は、上記の好適な溶媒の中でガレオプシス・テトラヒトの植物部分又はマトリクスを液浸軟化すること(macerating)により行われる。
【0039】
例えば、好適な抽出成分は、水-エタノールの混合物の中でガレオプシスの地上部の一部分を、植物部分に含有される1以上の生物活性成分の溶媒を富化するに好適な時間、浸漬又は液浸軟化することにより得ることができる。これらの条件下で、選択された植物の植物組織からの生物活性成分の抽出は、実質的に拡散及び/又は浸透によって起こる。上記溶媒中での植物部分の液浸軟化時間は変えることができ、例えば1~48時間である。
【0040】
特定の実施形態によれば、ガレオプシスの乾燥抽出成分は以下の工程により得られる。
- 植物ガレオプシスの少なくとも一部分を粉砕する工程、
- 溶媒、好ましくは生理的に許容できる溶媒で抽出する工程、
- 上記抽出成分を濾過する工程、
- 濾過された上記抽出成分を、好ましくは溶媒を用いてカラムの中を溶出させることにより精製する工程、
- 精製された上記抽出成分を乾燥する工程、
- 乾燥された精製後の上記抽出成分を粉砕する工程。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記抽出工程は、2回又は3回繰り返すことができる。
【0042】
溶媒が、例えばエバポレーションにより除去されるとき、上記抽出成分を乾燥粉末の形態で得るために、非限定的な例としてデンプン又はマルトデキストリン等の固体支持体又は賦形剤が任意選択的に添加されてもよい。
【0043】
通常、ガレオプシス・テトラヒト又はガレオプシス・セゲツムから得られる抽出成分は、流体であってもよく、軟質でもよく、乾燥していてもよく、好ましくは乾燥している。
【0044】
例えば、
流体の抽出成分では、1mlの抽出成分が、1gの植物薬に可溶な生物活性成分を含有し、
軟質の抽出成分では、溶媒は、特に抽出成分が濾紙を湿らさない程度まで、部分的に蒸発除去され、
乾燥抽出成分では、溶媒は、ほぼ完全に蒸発除去され、粉末が得られる。
【0045】
異なる極性のガレオプシスの抽出成分を調製することが可能である。
【0046】
例えば、水性アルコール溶液等の極性溶媒を使用して高極性抽出成分を、酢酸エチル等のより低極性の溶媒を使用して中間極性抽出成分を、又は超臨界CO2を使用して非極性抽出成分を得ることが可能であり、超臨界CO2を用いると、活性植物複合体(phyto-complex)の画分を抽出することが可能である。
【0047】
ある実施形態では、抽出は、1:10~10:1の範囲の溶媒:植物マトリクスの重量比を使用して実施される。
【0048】
代替の抽出技法を使用することにより、例えば、消化、温浸、絞り出し、煎出、浸出、向流抽出、ソックスレー、超臨界ガス又は超音波を用いる抽出等により、ガレオプシス植物から、生物活性のある植物成分を抽出することが可能である。
【0049】
上記植物抽出成分に加えて、当該相乗作用組成物は、R-N1-スペルミジン又はその塩(式中、Rは水素又はメチルである)を含んでもよい。スペルミジンは、IUPAC名ではN’-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミンであるポリアミンである。スペルミジンは、当該組成物の中で塩、好ましくは薬学的に許容できる塩の形態で、より好ましくは三塩酸塩の形態で存在することができる。
【0050】
上記植物抽出成分に加えて、当該相乗作用組成物は、ビタミンB7とも呼ばれ以前はビタミンH又はコエンザイムRとして知られていた水溶性のビタミンBであるビオチンを含んでもよい。
【0051】
ビオチンは、テトラヒドロチオフェン環と縮合したウレイド環から構成され、IUPAC名では5-[(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル]ペンタン酸(CAS番号58-85-5)である。
【0052】
本発明者らは、ヒト細胞、具体的にはヒトの頭皮毛包の細胞におけるオートファジーの促進剤であるというビオチンの特性を初めて明らかにした。
【0053】
それゆえ、本発明は、オートファジーによって調節される疾患の処置におけるオートファジーの促進剤としての美容的又は栄養補助的又は医学的使用のためのビオチン又は上記の実施形態のいずれか1つに係るビオチン含有組成物にも関する。
【0054】
オートファジーによって調節される疾患は、例えば神経変性、癌、クローン病及び皮膚疾患からなる群から選択される。具体的には、皮膚疾患のうちで、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)及び白斑等の自己免疫性皮膚障害、- 感染性皮膚障害、- 扁平上皮癌及び黒色腫等の皮膚癌障害を挙げることができれる。
【0055】
初めて、ガレオプシス属、好ましくはガレオプシス・セゲツム種及びガレオプシス・テトラヒト種、の抽出成分が、皮膚疾患の処置においてオートファジーの促進剤として使用される。
【0056】
好ましくは及び驚くべきことに、本発明者らは、典型的には局所投与経路又は経口投与経路のいずれかによる上記組成物の投与が、毛髪菲薄化に罹患している対象において、ヒトの頭皮毛包の細胞におけるオートファジーを相乗的に促進し、こうして頭皮の罹患範囲の進行性濃化を決定することを認めた。
【0057】
通常、本発明の組成物は、生理的に及び/又は薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0058】
上記生理的に又は薬学的に好適な担体、希釈剤又は賦形剤は、得られた医薬組成物が意図される投与経路に基づいて選択されてよい。投与のための所望の調剤形態に好適な任意の担体及び/又は賦形剤が、本願明細書に記載される植物抽出成分又は活性成分の使用において想定される。
【0059】
本発明の範囲内で、用語「担体」は、本発明の組成物に存在してもよい賦形剤、ビヒクル(媒質)、希釈剤又はアジュバント(佐剤)を指す。
【0060】
本発明の組成物は、局所施用用の形態又は経口投与用の形態で処方されることが可能である。
【0061】
いくつかの実施形態では、当該組成物は局所施用用である。この応用では、本発明の組成物は、有効量で、ヒトの頭皮又は皮膚に直接施用することができる。
【0062】
例えば、毛髪脱落又は毛髪菲薄化の形態の処置において、美容的に/生理的に活性な量の組成物を、直接頭皮に、1日1回又は複数回、簡便には、処置しない期間と交互に2~3か月続く数サイクルの間、施用することができる。
【0063】
これらの態様によれば、本発明は、頭皮、又はその一部分への有効量の、本願に記載され及び/又は特許請求される実施形態のうちの1以上に係る組成物の施用(塗布)を含む美容的処置方法にも関する。
【0064】
本発明の組成物の局所処方物の中の好ましくはガレオプシス・セゲツム種又はガレオプシス・テトラヒト種の形態のガレオプシスの乾燥抽出成分の量は、処方物の総重量に対して0.0003重量%~0.01重量%の範囲にある。
【0065】
本発明の組成物の局所処方物の中のビオチンの量は、処方物の総重量に対して0.0006重量%~0.075重量%の範囲にある。
【0066】
局所形態では、当該組成物は、好ましくはN1-メチルスペルミジンを含む。局所形態では、N1-メチルスペルミジン又はスペルミジンは、好ましくは処方物の総重量に対して0.0005~0.1重量%の範囲で含まれる。
【0067】
美容用途用又は医薬用途用の局所処方物における一般の賦形剤のうちで、防腐剤、細菌剤、乳化剤、緩衝液、滑沢剤、湿潤剤、コンデイショニング剤及び着色剤を挙げることができる。
【0068】
局所施用用の組成物は、固体、半固体又は流体の形態であってもよい。好適な固体形態の処方物としては、クリーム、ゲル、軟膏剤、ペースト、軟膏が挙げられる。
【0069】
他の実施形態では、局所投与用の処方物は、流体形態、例えばローション剤、ゲル、シャンプー(洗髪剤)、懸濁剤(懸濁液)、乳剤(エマルション)の形態である。
【0070】
液体又は半液体の処方物形態の場合、植物抽出成分は、生理的に許容できる液体形態の担体、例えば水、アルコール、水性アルコール又はグリセリン溶液で希釈されてもよく、又は局所施用に好適な他の液体と混合されてもよい。
【0071】
例として、液体形態の本発明の組成物は、上記成分を水及び/又はアルコールに溶解することにより調製することができる。この液状組成物は、頭皮のpHと適合するために5~7から簡便に選択されるpH範囲に到達するように緩衝化し、次いで濾過し、瓶又はバイアル等の好適な容器の中に包装されることが可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、局所使用用の美容調剤又は医薬調剤の処方物において一般に使用される賦形剤、例えば防腐剤、殺菌剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、湿潤剤、色素、及び調剤技法で一般に使用される他の賦形剤を含んでもよい。
【0073】
1つの実施形態では、局所施用用の処方物は、好適な賦形剤の中に保有された抽出成分を含有する乳剤の形態にある。いくつかの実施形態では、局所施用用の当該組成物は、ヒドロキシメチルセルロース型の賦形剤及び/又は当該処方物及び上記物質に好適なHLBを有するゲル化剤を含む。
【0074】
他の実施形態によれば、本発明の組成物は、経口投与用の形態にある。これらの場合、当該組成物は、これまでに規定されたとおりの成分、及び経口投与に好適な1以上のビヒクル又は賦形剤を含有する。
【0075】
本発明の組成物の経口処方物の中の好ましくはガレオプシス・セゲツム種又はガレオプシス・テトラヒト種の形態のガレオプシスの抽出成分の量は、単回用量あたり0.1mg~20mgの範囲にある。
【0076】
本発明の組成物の経口処方物の中のビオチンの量は、単回用量あたり0.03mg~0.08mgの範囲にある。
【0077】
上記経口剤形では、当該組成物は、好ましくはスペルミジン又はその塩を含み、より好ましくは、スペルミジンは塩の形態にある。
【0078】
上記経口剤形では、N1-メチルスペルミジン(又はその塩)、又はスペルミジン(又はその塩)は、好ましくは単回用量あたり0.3mg~0.8mgの範囲で含まれる。
【0079】
例として,経口投与用の好適な賦形剤としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、及びこれらの混合物等のセルロース誘導体が挙げられる。
【0080】
好適な賦形剤のさらなる例としては、ピロリドン及びその誘導体等のラクタムファミリーに属するポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン及びそれらの混合物、リン酸カルシウム又はリン酸二カルシウム等の無機塩、ステアリン酸マグネシウム、トリアシルグリセロール及びこれらの混合物等の滑沢剤が挙げられる。
【0081】
経口投与用の当該組成物は、固体形態又は液体形態にあってもよい。典型的な固体形態組成物としては、錠剤、カプセル剤、散剤(粉末)、顆粒剤(顆粒)、丸剤が挙げられる。液体形態の組成物の例としては、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤が挙げられる。当該組成物は、その組成物の中に含有される有効成分の制御放出形態にあってもよい。
【0082】
錠剤は、一般に、好適な担体又は賦形剤を含み、この錠剤では、上記植物抽出成分は、通常、乾燥形態で分散している。
【0083】
経口投与用の通常の賦形剤又は担体のうちで、崩壊剤、充填剤、防腐剤が、当該組成物の処方物の中に含まれることができる。
【0084】
ある実施形態では、本発明の組成物は、栄養製品、食養生製品又は機能性食品製品である。
【0085】
用語「栄養補助食品」は、栄養状態を改善し、そして生理的な限界内で1以上の器官の機能活性又は人体の機能性を支え又は改善するために使用されてもよい製品を意味する。オートファジー促進剤である本発明の組成物は、従って、発毛促進性の機能性食品及び薬用化粧品である。
【0086】
さらなる態様によれば、本発明は、従って、毛髪の生理的成長を刺激するため、及び/又は毛髪脱落の処置のための相乗的な上記の組成物の使用を提供する。
【0087】
さらなる具体的な態様によれば、本発明は、従って、毛髪の生理的成長を刺激するための上記の組成物を含む局所処方物又は経口処方物の使用を提供する。
【0088】
なおさらなる態様によれば、本発明は、従って、毛髪脱落の処置及び予防における、及び発毛を刺激するためのヒトの頭皮毛包の細胞におけるオートファジーの促進剤としての使用のための上記の相乗作用組成物を提供する。
【0089】
さらなる具体的な態様によれば、本発明は、従って、発毛を刺激するため、又は毛髪脱落の処置又は予防のための、上記組成物を含む局所処方物又は経口処方物の使用を提供する。
【0090】
オートファジーの促進と本発明の組成物の上述の活性との関連は、以下の実施例13に記載される試験によって証明される。特に、PLOS Biology、第16(3)巻、2018、28.Mar:10.1371/journal.pbio.2002864で出版されたChiara Parodiらの科学論文、「Autophagy is essential for maintaining the growth of a human (mini)organ:Evidence from scalp hair follicle organ culture」は、ヒトの骨肉腫上皮細胞に対して実施された試験が、発毛の刺激に対する当該組成物の有効性を証明するための確立されたモデルであることを示す。
【0091】
実験は、検証されたインビトロモデルで、オートファジーの刺激における相乗作用を示す。データ及び刊行物は、オートファジーは毛包の成長にとって必須であることを示す。本発明の組成物は、オートファジーを刺激し、その結果として、発毛を刺激することにおいて有効である。
【0092】
特定の態様では、本発明は、男性型脱毛症又は脱落の場合等の発毛における障害の処置に使用するための上記組成物を提供する。
【0093】
さらなる態様では、本発明は、皮膚障害の処置におけるオートファジーの促進剤としての上記組成物の使用を提供する。
【0094】
本発明者らは、N-メチルスペルミジン及びビオチンを含む組成物が皮膚疾患の処置におけるオートファジーの促進剤としての好適であることも見出した。
【0095】
当該組成物の投与される量及び投与頻度は、処置されるべき疾患の種類及び重症度に依存することになる。
【0096】
本発明は、これより、本発明の組成物によって成し遂げられる相乗的な結果を示す具体的な実施形態を参照して詳細に説明されるが、本発明は限定されると考えられるべきではない。示される成分の量は、百分率(%)重量対重量(w/w)として、又は投与の単回用量あたりのmg単位で表される。
【実施例】
【0097】
実施例1
ガレオプシス・セゲツムの抽出成分の調製
ガレオプシス・セゲツム乾燥抽出成分の調製を、エタノール40%を用いる抽出及びその後のカラム精製により、実施した。これらの工程を以下の段落に記載する。
【0098】
抽出
ガレオプシス・セゲツムの粉砕し乾燥した地上部を、50℃で2時間、40%エタノールで2回抽出した。固形分及び液体を傾斜分離器により分離した。
【0099】
この浸出液を濾過し、真空下で濃縮し、次いで遠心分離によって清澄にした。
【0100】
精製
予め95%エタノールに浸漬し接触したまま10時間維持したイオン交換XAD7HP吸着剤樹脂をカラムに充填した。次いでこの充填カラムを水で洗浄し、これを、溶出物の電気伝導率がロードした水と同じ値に到達するまで続けた。
【0101】
抽出成分の精製をXAD7HP充填カラムで、最初は水で、次いで70%エタノールで溶出して行った。
【0102】
集めた溶出物を、真空下で濃縮した。
【0103】
エタノールを、この濃縮した溶液に加え、次いで生物汚染度レベルを下げるために、この溶液を70~75℃で30分間加熱した。
【0104】
この溶液を再び真空下で濃縮し、50℃で24時間乾燥し、次いで粉砕し、賦形剤(マルトデキストリン及び無水コロイド状シリカゲル90/10)と混合し、最終生成物を得た。
【0105】
実施例2
ガレオプシス・テトラヒトの抽出成分の調製
ガレオプシス・セゲツムの抽出について上記の段落に記載したのと全く同じ手順に従って、ガレオプシス・テトラヒト乾燥抽出成分の調製を実施した。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
実施例13
材料及び方法
イムノブロット分析
U2OS細胞を4mM L-グルタミン、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコ改変イーグル培地高グルコース(4.5g/lD-グルコース)中で80%コンフルエンスまで成長させ、スペルミジン(ロット2010112716)、ガレオプシス・セゲツム(IDN 6781)、ビオチン(ロット2014124160)又はこれらの組み合わせで処置した。タンパク質試料を、以前に報告された(De Mei C、Ercolani L、Parodi C、Veronesi M、Vecchio CL、Bottegoni Gら、Dual inhibition of REV-ERBβ and autophagy as a novel pharmacological approach to induce cytotoxicity in cancer cells. Oncogene.2015;34(20):2597-608)RIPA緩衝液中で抽出した。p62/SQSTM1及びGAPDHのレベルを抗p62/SQSTM1特異性抗体及び抗GADPH特異性抗体を用いて分析した。イムノブロット実験を、5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するTBS-T緩衝液中で実施した。抗LC3B抗体及び抗GAPDH抗体を、それぞれ、1:1000及び1:50000に希釈した。補完のHPR結合二次抗体を1:10000に希釈した。ECLウエスタンブロット法検出試薬との反応の際、LAS-4000発光イメージアナライザーを用いて化学発光シグナルを取得し、Photoshop画像解析ソフトウェアを用いて特定のバンドシグナルの光学密度を算出した。GAPDHをローディング対照として採用し、GAPDHシグナルを、異なる試料間のp62タンパク質レベルを規格化するために使用した。
【0118】
値を平均±SEMとして表すために、イムノブロットを少なくとも4回繰り返した。
【0119】
オートファジー阻害の蛍光分析
U2OS細胞を、予めゼラチン溶液でコーティングされた48穴プレート、No.1.5 Uncoated Coverslip、6mmガラス直径、に3000細胞/ウェルで播種し、キメラタンパク質p62-赤色蛍光タンパク質(p62-RFP)を含有する、10000細胞あたりバキュロウイルス0.2μlで形質導入した。形質導入後48時間に、この細胞をスペルミジン、ビオチン、ガレオプシス、又はビヒクルで処置し、NIKON Live Cell Imaging顕微鏡法を使用して24時間モニターした。
【0120】
ヒト細胞においてオートファジーを誘導するためのスペルミジン、ガレオプシス・セゲツム及びビオチンの相乗的活性
ビオチン及び/又はガレオプシス・セゲツム抽出成分がオートファジーに影響を及ぼしうるかを評価するために、本発明者らは、培養下のU2OS細胞におけるオートファゴソームの蓄積をライブの蛍光顕微鏡法(Klionsky DJ、Abdelmohsen K、Abe A、Abedin MJ、Abeliovich H、Acevedo Arozena Aら、Guidelines for the use and interpretation of assays for monitoring autophagy. Autophagy.2016;12(1):1-222)によってモニターした。このようにして、細胞を赤色蛍光タンパク質(RFP)と融合されたオートファジータンパク質、LC3を含有する構築物で形質導入した。次いで、ビオチン(200ng/ml)又はガレオプシス乾燥抽出成分(100ng/ml)の添加後の蛍光性LC3ドットの蓄積を、30分ごとに6時間に画像を取得することによりモニターした。スペルミジン(10μM)をオートファジー誘導因子化合物の陽性対照として採用した(Pietrocola F、Lachkar S、Enot D、Niso-Santano M、Bravo-San Pedro J、Sica Vら、Spermidine induces autophagy by inhibiting the acetyltransferase EP300. Cell Death & Differentiation.2015;22(3):509-16)。
【0121】
この分析は、ビオチン処置及びガレオプシス処置した細胞の両方において蛍光性LC3ドットの顕著な蓄積を明らかにした(
図1の代表的な画像を参照)。
図1において明らかなように、スペルミジン処置は、LC3蛍光性ドットの顕著な蓄積(すなわちオートファゴソームの蓄積)を生じた。ビオチン及びガレオプシス・セゲツム乾燥抽出成分の両方がLC3-赤色ドットの同様の蓄積をもたらした。
【0122】
LC3-RFPドットはオートファジーフラックスの遮断後にも蓄積する可能性があるため、SQSTM1/p62タンパク質のオートファジー依存性分解(Klionsky DJ、Abdelmohsen K、Abe A、Abedin MJ、Abeliovich H、Acevedo Arozena Aら、Guidelines for the use and interpretation of assays for monitoring autophagy. Autophagy.2016;12(1):1-222)をこうしてモニターした。p62は、LC3とユビキチン化した物質との間のリンクとしての役割を果たした(Pankiv S、Clausen TH、Lamark T、Brech A、Bruun J-A、Outzen Hら、p62/SQSTM1 binds directly to Atg8/LC3 to facilitate degradation of ubiquitinated protein aggregates by autophagy. Journal of Biological Chemistry.2007;282(33):24131-45)。p62及びp62に結合したポリユビキチン化タンパク質は、完全なオートファゴソームに組み込まれ、オートリソソームで分解され、こうしてオートファジー分解の指標として役割を果たす(Klionsky DJ、Abdelmohsen K、Abe A、Abedin MJ、Abeliovich H、Acevedo Arozena Aら、Guidelines for the use and interpretation of assays for monitoring autophagy. Autophagy.2016;12(1):1-222)。
【0123】
従って、オートファジー介在性のp62分解に対するビオチン及びガレオプシスの効果を、ライブの蛍光顕微鏡法によりp62-RFPオートファゴソームの数を分析して評価した。細胞を、こうして、RFPと融合したp62タンパク質を発現する構築物で形質導入した。次に、p62蛍光性ドットを、ビオチン、ガレオプシス、スペルミジン又はビヒクルの添加後にモニターした。
【0124】
ビオチン及びガレオプシスの両方がオートファジー誘導因子として作用することを十分にサポートするように、ビヒクルと比べて、処置した細胞においてp62-RFPドットの急激な減少を観察した(
図2の代表的な写真を参照)。
【0125】
図2に見られるように、これまでに特徴づけたオートファジー誘導因子、スペルミジン、を用いた処置は、p62蛍光性ドット及び蛍光シグナルを著しく減少させ、従ってビオチン及びガレオプシス・セゲツム抽出成分の両方がオートファジー誘導因子として作用することを示し、これらの処置は、p62蛍光シグナルの大きな減少をもたらした。
【0126】
ビオチン及びガレオプシスのオートファジー誘導活性を検証し、オートファジープロセスの好適なマーカーとしてのp62の使用が検証されると、特異的な抗p62抗体を用いるイムノブロット分析による、p62タンパク質レベルに対する化合物の組み合わせの効果を評価した(De Mei C、Ercolani L、Parodi C、Veronesi M、Vecchio CL、Bottegoni Gら、Dual inhibition of REV-ERBβ and autophagy as a novel pharmacological approach to induce cytotoxicity in cancer cells. Oncogene.2015;34(20):2597-608)。
【0127】
この分析は、p62のオートファジー介在性分解を誘導することにおけるスペルミジン、ビオチン及びガレオプシスの間の顕著な相乗効果を示した(表1)。
【0128】
【0129】
実際、スペルミジン(0.5μM)及びビオチン(19.91ng/ml)の組み合わせは、相加効果によって予想される減少よりもほぼ2倍大きいp62減少を生じた(45%対26%)。スペルミジン及びガレオプシス(7.9ng/ml)の組み合わせ(51%対29%)並びにビオチン/ガレオプシス混合物(67%対45%)について同様の結果が得られた。最後に、すべての3つの化合物の組み合わせ(0.5μMスペルミジン+7.9ng/mlガレオプシス+19.91ng/mlビオチン)は、p62タンパク質レベルの顕著な78%減少をもたらした。
【0130】
実施例14
等モル用量のN1-メチルスペルミジン及びスペルミジンで処置したヒトU2OS細胞の脂質化LC3及びSQSTM1のレベルを評価した。結果として、ビヒクルと比べて、両方の化合物は、脂質化LC3-II形態のレベルを増加させ、SQSTM1のオートファジー介在性分解を刺激した。具体的には、培養下のヒトU2OS細胞をビヒクル又は等モル用量のスペルミジン及びN
1-メチルスペルミジン(100μM)で6時間処置した。次に、脂質化LC3(LC3-II)及びSQSTM1のレベルを、特異的抗体を用いて実施例8のように免疫ブロット法分析によって評価した。アクチンシグナルをローディング対照として採用した。タンパク質シグナルの濃度測定分析を、アクチンによって規格化した相対的タンパク質レベルとして報告する。ビヒクル試料の値を1に設定した。平均±SEM、n=3として示す。
*P<0.05及び
**P<0.01、化合物対ビヒクル。結果を
図3(
A及び
B)に報告する。これらの結果は、N
1-メチルスペルミジンがその脱メチル化類似体のようにオートファジーを誘導するための活性を保持することを立証する。