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特許7307719筆記板用油性インキ組成物及びそれを内蔵したマーキングペン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】筆記板用油性インキ組成物及びそれを内蔵したマーキングペン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20230705BHJP
【FI】
C09D11/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020515504
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017328
(87)【国際公開番号】W WO2019208603
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018086201
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅田 勝久
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218503(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137147(WO,A1)
【文献】特表2017-531717(JP,A)
【文献】特開2017-115088(JP,A)
【文献】国際公開第2015/036621(WO,A1)
【文献】特表2006-520403(JP,A)
【文献】特開2012-111929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/16
B43K 8/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、有機溶剤と、樹脂と、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物から選ばれる一種以上の化合物とを含有してなる筆記板用油性インキ組成物であって、前記化合物の含有量が、インキ組成物全量中1~15質量%の範囲である、筆記板用油性インキ組成物
【化1】
〔式中のR1~R4は、それぞれ炭素数6~18のアルキル基、炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基のいずれかである。〕
【請求項2】
前記有機溶剤が、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる一種又は二種以上である請求項に記載の筆記板用油性インキ組成物。
【請求項3】
前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂を含有する請求項1又は2に記載の筆記板用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度が55~85mol%の範囲にある請求項記載の筆記板用油性インキ組成物。
【請求項5】
前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基化度が30~40mol%の範囲にある請求項3又は4に記載の筆記板用油性インキ組成物。
【請求項6】
前記請求項1乃至のいずれか1項に記載の筆記板用油性インキ組成物を内蔵してなるマーキングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記板用油性インキ組成物に関する。詳細には、安全性が高く、ペン先の耐ドライアップ性に優れた筆記板用油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホーローや金属或いはプラスチック等の材質からなる筆記板(所謂、ホワイトボード)に筆記される筆記板用油性インキにおいては、筆記板に形成した筆跡の定着性を付与するための樹脂とともに、該筆跡をボードイレーザー(フェルト等の不織布やパイルからなる消去部)で擦過消去可能とするための剥離剤が添加されている(例えば、特許文献1,2参照)。
前記剥離剤として、従来はフタル酸エステルが広く用いられていたが、近年、安全性に懸念が生じているため、代替材料としてイソオクタン酸セチル等の高級脂肪酸エステルが広く用いられている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-194904号公報
【文献】特開平5-194903号公報
【文献】特開2010-90247号公報
【文献】特開2005-75893号公報
【0004】
前記イソオクタン酸セチル等の高級脂肪酸エステルは安全性への懸念がなく、剥離剤として消去性能を付与できるものであるが、筆記板の材質や、筆記後に筆跡を長期間保存した後には、筆跡消去性が得られ難くなり、擦過消去時に消し残りを生じる傾向があった。
また、前記高級脂肪酸エステルは、筆記板への適度な定着性と顔料分散性が得られることから好適に用いられているポリビニルブチラール樹脂と併用した場合に、相溶性が低い傾向があり、筆跡が乾燥した際に筆跡濃度が低下し易いものであるため、改良が望まれるものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性への懸念がなく高い筆跡消去性を付与できるとともに、耐ドライアップ性に優れた、実用性に富んだ筆記板用油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンを提供するものである。
特に、ポリビニルブチラール樹脂と併用した場合であっても、相溶性が低下することなく、更に筆跡乾燥時に筆跡濃度の低下が発生することがない、筆跡性能に優れた筆記板用油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、顔料と、有機溶剤と、樹脂と、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物から選ばれる一種以上の化合物とを含有してなる筆記板用油性インキ組成物を提供する。
【化1】
〔式中のR1~R4は、それぞれ炭素数6~18のアルキル基、炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基のいずれかである。〕
前記化合物の含有量は、好ましくはインキ組成物全量中1~15質量%の範囲である。また、前記有機溶剤は、好ましくはエチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる一種又は二種以上である。また、前記樹脂は、好ましくはポリビニルブチラール樹脂を含有する。前記ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は、好ましくは58~70mol%の範囲にあり、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基化度は、好ましくは30~40mol%の範囲にある。
更に、本発明は、前記筆記板用油性インキ組成物を内蔵してなるマーキングペンを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、安全性への懸念がなく、筆跡が長期間放置された後であっても高い筆跡消去性が維持できるとともに、従来よりも耐ドライアップ性に優れたインキを構成できるため、高い筆記性能と消去性能が両立できる実用性に優れた筆記板用油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンとなる。
更に、ポリビニルブチラール樹脂を併用した場合であっても、溶解性が低下することがないため、筆跡乾燥時に筆跡濃度の低下が発生することがない、筆跡性能に優れた筆記板用油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、剥離剤として上記一般式(1)又は(2)で示される化合物から選ばれる一種以上をインキ中に添加することにより、安全性への懸念がなく高い筆跡消去性を付与でき、更に、耐ドライアップ性においても優れた効果を発現するものである。
また、ブチラール樹脂を用いた際には、筆跡乾燥時に筆跡濃度の低下を生じることなく、鮮明な筆跡が得られるものである。
【0009】
前記一般式(1)で示される化合物は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれかにカルボン酸基を有するシクロヘキサンジカルボン酸が、炭素数6~18のアルキルアルコール、炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコールとエステル結合したシクロヘキサンジカルボン酸エステルであり、筆跡中に均一状態で存在することができるため、高い剥離効果が発現できる。
また、イソオクタン酸セチル等の高級脂肪酸に比べ、ポリビニルブチラール樹脂との相溶性が高いので、溶剤が蒸発してもそれぞれが析出することがない。そのため、インキ露出面が大きいマーカー用ペン先部での溶剤蒸発による濃度アップ時においても、ポリビニルブチラール樹脂による顔料分散を阻害し難いため、耐ドライアップ性を付与し易く、ペン先を露出した状態が長時間続いた際にも、筆記時にかすれを生じることなく筆跡を形成することができるものとなる。
炭素数6~18のアルキル基としては、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、イソノニル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数6~16のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8~14のアルキル基である。また、炭素数6~18のアルキル基は、好ましくは室温で液状のものであり、分岐アルキル基であっても、直鎖アルキル基であってもよい。
炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基は、R-(O-(CH2n1n2-O-[式中、Rはアルキル基を表し、n1は1~4であり、n2は1~9である。]で表される基である。炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基としては、メトキシプロパノール基、メトキシジプロパノール基、エトキシジグリコール基などが挙げられる。好ましくは、炭素数2~16及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基であり、より好ましくは炭素数2~12及び酸素数2~6のアルコキシポリグリコール基である。また、炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基は、好ましくは室温で液状のものであり、そのアルコキシ基は、分岐アルコキシ基であっても、直鎖アルコキシ基であってもよい。
【0010】
前記一般式(2)で示される化合物は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれかにカルボン酸基を有するシクロヘキセンジカルボン酸が、炭素数6~18のアルキルアルコール、炭素数2~18、酸素数2~10のアルコキシポリグリコールとエステル結合したシクロヘキサンジカルボン酸エステルであり、筆跡中に均一状態で存在することができるため、高い剥離効果が発現できる。
また、イソオクタン酸セチル等の高級脂肪酸に比べ、ポリビニルブチラール樹脂との相溶性が高いので、溶剤が蒸発してもそれぞれが析出することがない。そのため、インキ露出面が大きいマーカー用ペン先部での溶剤蒸発による濃度アップ時においても、ポリビニルブチラール樹脂による顔料分散を阻害し難いため、耐ドライアップ性を付与し易く、ペン先を露出した状態が長時間続いた際にも、筆記時にかすれを生じることなく筆跡を形成することができるものとなる。
炭素数6~18のアルキル基、炭素数2~18及び酸素数2~10のアルコキシポリグリコール基については、前記一般式(1)で示される化合物に関して上述したものと同様である。
【0011】
従来の筆記板用インキでは、筆跡形成時、樹脂が筆記面に皮膜を形成することで筆跡が定着するものであるが、高湿度雰囲気下で主溶剤が水分を吸収してポリビニルブチラール樹脂の溶解性が低下した場合に、剥離剤とポリビニルブチラール樹脂とが大きく分離し皮膜を形成するために、筆跡が濃度低下し易いものであったが、前記一般式(1)又は(2)で示される化合物は化学構造上、ポリビニルブチラール樹脂との相溶性が高いため、皮膜を形成する時にそれぞれが分離し難く、ポリビニルブチラール樹脂皮膜に剥離剤が均一に微分散されることにより、高湿度雰囲気下での筆跡の濃度低下が防止される。
【0012】
前記一般式(1)又は(2)で示される化合物の含有量は、インキ組成物全量中好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは1.5~10質量%の範囲である。
前記数値範囲とすることにより、本発明のインキ組成物を用いて形成した筆跡が、優れた消去性をより高い状態で維持でき、キャップオフ性能も効果的に付与できる。
【0013】
更に必要に応じて、汎用の剥離剤である、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を併用することもでき、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの塩、二塩基酸エステル、一塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステル等の化合物を用いることができる。
【0014】
前記顔料としては、従来から油性インキに適用される汎用の顔料が適宜用いられる。
具体的には、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01~0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5~30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
前記顔料は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成物中3~40質量%の範囲で用いられる。
また、前記顔料と共に汎用の染料、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料等を併用することができる。
【0015】
前記有機溶剤は、揮発性(低沸点)の有機溶剤が好適に用いられ、ホワイトボードに筆記しても筆跡の乾燥性に優れるため、筆記直後の筆跡を手触した際、未乾燥のインキが手に付着したり、筆記面上の筆跡を形成していない空白部分を汚染する等の不具合を生じることなく、良好な筆跡を形成できる。
前記有機溶剤としては低級脂肪族アルコール系溶剤又はグリコールエーテル系溶剤が挙げられ、主溶剤(全溶剤中の50重量%以上を占める)として用いることが好ましい。
前記低級脂肪族アルコール系溶剤としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの炭素数2~4の脂肪族アルコール系溶剤が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの炭素数4~6のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。より好ましくは、低級脂肪族アルコール系溶剤は炭素数2~4の脂肪族アルコール系溶剤であり、グリコールエーテル系溶剤は炭素数3~5のグリコールエーテル系溶剤である。
前記有機溶剤の中でも特に、筆跡乾燥性が高く、本発明のインキ構成との相性が良い点から、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好適である。
【0016】
また、前記有機溶剤と共に他の溶剤を併用することもできる。併用することができる他の溶剤として、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素系有機溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン等のケトン系有機溶剤、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系有機溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール等のグリコール系溶剤、ベンジルアルコール、γ-ブチロラクトン等を例示できる。
【0017】
前記樹脂としては、先の有機溶剤に対して可溶なものであれば特に限定されることなく適用でき、顔料分散性向上、筆跡の滲み抑制、定着性向上、堅牢性等を付与する目的でインキ中に添加できる。
具体的には、ケトン樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン-ホルムアルデヒド樹脂、α-及びβ-ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中0.1~5質量%、好ましくは0.1~1質量%の範囲で用いられる。
尚、前記樹脂は加工顔料の形態で添加されるものであってもよい。
【0018】
前記樹脂のうち、筆跡定着性とともに顔料分散効果も発現することから、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)が好適である。特に、ブチラール化度が55~85mol%のものが好ましく、ブチラール化度が58~70mol%のものがより好ましい。ブチラール化度をこのような範囲とすることで、剥離剤の相溶性をより高くすることができ、高湿度下での白ボケの防止により効果的となる。また、水酸基化度が30~40mol%のものが好ましく、水酸基化度が33~40mol%のものがより好ましい。水酸基化度をこのような範囲とすることで、白ボケの防止により効果的となる。具体的には、エスレックBL-1、BL-1H、BL-2、BL-2H、BL-S、BX-L、BM-1、BM-2、BM-5、BM-S、BH-3、BX-1、BX-5(以上、積水化学工業社製)、モビタールB16H、B20H、B30T、B30H、B30HH、B45M、B45H(以上、クラレ社製)等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を混合して使用することができる。
【0019】
更に、本発明のインキ組成物には、必要に応じて上記成分以外に、筆跡濃度低下抑制剤、耐乾燥性付与剤、防錆剤、粘度調整剤、顔料分散剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0020】
前記インキ組成物は、ペン先を筆記先端部に装着したマーキングペンに充填して実用に供される。
マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
尚、前記マーキングペンは、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式のマーキングペンの他、ノック式、回転式、スライド式等の出没機構を有し、軸筒内にペン先を収容可能な出没式のマーキングペンであってもよい。
【実施例
【0021】
以下の表に実施例及び比較例の筆記板用油性インキ組成物の組成を示す。尚、表中の数値は質量部を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表中の注番号に沿って原料の内容を以下に示す。
(1)C.I.ピグメントブラック7 50%、ポリビニルブチラール 50%からなる加工顔料
(2)C.I.ピグメントブルー60 55%、ポリビニルブチラール 45%からなる加工顔料
(3)C.I.ピグメントレッド58 45%、ポリビニルブチラール 55%からなる加工顔料
(4)積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBM-1(ブチラール化度65±3mol%、水酸基化度34mol%)
(5)積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBL-S(ブチラール化度74±3mol%、水酸基化度22mol%)
(6)積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBL-1(ブチラール化度63±3mol%、水酸基化度36mol%)
(7)積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBL-1H(ブチラール化度69±3mol%、水酸基化度30mol%)
(8)クラレ(株)製、商品名:PIOLOFORM BL-16
(9)一般式(1)において、R1、R2がオルト位にあり、それぞれ炭素数9のイソノニル基である化合物
(10)一般式(1)において、R1、R2がパラ位にあり、それぞれ炭素数6及び酸素数2のエトキシジグリコール基である化合物
(11)一般式(2)において、R3、R4がオルト位にあり、それぞれ炭素数8のアルキル基である化合物
【0024】
インキの調製
攪拌用容器中に溶剤とともに剥離剤以外の成分を入れ、2mmのガラスビーズ70gとともに高速羽根型ミキサーにて20℃で2時間攪拌した後、剥離剤を投入し、更に5分間攪拌したものをメッシュにて濾過することでガラスビーズを除くことによりインキ組成物を得た。
【0025】
マーキングペンの作製
前記実施例及び比較例のインキ組成物を、市販のマーキングペン(パイロットコーポレーション製;WMBM-12L)に各5g充填することで油性マーキングペンを得た。
得られた各マーキングペンを用いて以下の試験を行なった。
【0026】
消去性試験
各マーキングペンを用いて、各種筆記板(ホワイトボード)に5個連続して螺旋状の丸を書き、筆記直後の筆跡及び20℃、14日放置後の筆跡に対して、100gの分銅を載せたティッシュペーパーで筆跡上を移動させた際の消去性を目視により観察した。
尚、前記筆記板としては、表面光沢値70°グロスのホーロー板、基板表面にアクリル樹脂を塗装したものを使用した。
筆記試験
各マーキングペンを用いて、20℃で湿度80%及び30℃で湿度95%の環境下で透明なPETフィルム上に5個連続して丸を書いた際の乾燥後の筆跡状態を目視により確認した。
キャップオフ試験
筆記可能であることを確認した各マーキングペンを用いて、ペン先が空気中に晒された状態とし、横置き状態で20℃の環境下で1日間放置した後、室温にてホーロー製筆記板に手書きで12個の螺旋状の丸を連続筆記した。その際の筆跡状態を目視により確認した。
試験結果を以下の表に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
尚、表中の記号の評価は以下の通りである。
消去性試験
○:3回の移動で筆跡が消去できる。
△:3回の移動で筆跡の一部が残る。
×:3回の移動で筆跡の半分以上が消去できず残る。
筆記試験
◎:光沢のある鮮明な筆跡が得られる。
○:鮮明な筆跡が得られる。
●:マット調だが、十分な濃度の筆跡が得られる。
×:筆跡が白くぼけて濃度低下がみられ、マット調の筆跡となる。
キャップオフ試験
○:カスレを生じない、又は3丸以内の筆記で回復した。
×:3丸以内の筆記で回復せず、又は筆記不能。