(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】モノリシックニューラルインターフェースシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230705BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230705BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20230705BHJP
A61N 1/06 20060101ALI20230705BHJP
A61N 1/378 20060101ALI20230705BHJP
A61N 1/36 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
G06F3/01 515
A61B5/00 B
A61B5/00 C
A61B5/00 102A
A61N1/05
A61N1/06
A61N1/378
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2020545070
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018061985
(87)【国際公開番号】W WO2019100055
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】キム ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マルベリー ジェフリー
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-188123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0094674(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0094786(US,A1)
【文献】MAHABRIZ M. Michel, 他4名,Reliable Next-Generation Cortical Interfaces for Chronic Brain-Machine Interfaces and Neuroscience,Proceeding of the IEEE,米国,IEEE,2016年12月15日,Vol.105 Issue.1 ,p.73-82
【文献】ROSENSTEIN K Jakob, 他4名,Integrated nanopore sensing platform with sub-microsecond temporal resolution,NIH Public Access,米国,National Institute of Health,2012年03月18日,p1-17,[online], [2022年8月9日検索], インターネット,<URL:https://www.ncbi.nlm.gov/pmc/articles/PMC3648419/pdf/nihms378098.pdf>
【文献】KIM, Namghi Brian 他4名,Parallel Recording of Neurotransmitters Release from Chromaffin Cells Using a 10 x 10 CMOS IC Potentiostat Array with On-Chip Working Electrodes,NIH Public Access,米国,National Institute of Health,2012年10月05日,p.1-19,[online], [2022年8月9日検索], インターネット<URL://www.ncbi.nlm.gov/pmc/articles/PMC3525730/pdf/nihms412700.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
A61B 5/00
A61N 1/05
A61N 1/06
A61N 1/378
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
チップ
を備えており、
前記チップは、
フロントプレーン層に埋め込まれている集積回路(IC)であって、モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器と、前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器と、を備え
、前記フロントプレーン層は外面を含む、集積回路と、
バックプレーン層に埋め込まれている無線周波(RF)平面コイルであって
、前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号をリモート無線デバイスに無線送信するように構成されているとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波平面コイルと、
前記ICの上層に集積され、前記外面から延設された複数のオンチップ電極であって、前記
モニター対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成され
、ピラー電極アレイ又は平面電極アレイからなり、少なくとも1000個の電極からなる複数のオンチップ電極と、
を備え
、
前記チップは、前記フロントプレーン層、前記バックプレーン層、及び前記複数のオンチップ電極を含み、埋め込むように構成された、ワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスを形成する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記ICを
前記RF平面コイルに電気的に接続するための導電性電極を更に備え
る、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置であって、前記導電性電極は各々がシリコン貫通電極からなる、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記複数のオンチップ電極は各々がタングステンコアと当該タングステンコアを包囲する金メッキとを備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、前記複数のオンチップ電極は、ピラー電極アレイ又は平面電極アレイのいずれか一方からなる、
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記複数のオンチップ電極は、1000個の電極又は1024個の電極のいずれか一方からなる、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記RF平面コイルは、第一データ通信コイルと第二受電コイルとを備え、
前記
第二受電コイルは、電力を生成して前記ICに供給するため、コンデンサ及び電圧レギュレーターとともに動作し、
前記コンデンサは、導電性電極を用いて前記ICに接続される、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
システムであって、
チッ
プを備え、
前記チップは、
フロントプレーン層に埋め込まれている集積回路(IC)であって、モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器と、前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器と、を備える集積回路と、
バックプレーン層に埋め込まれている無線周波(RF)平面コイルであって
、前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号を無線送信するように構成されているとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波平面コイルと、
前記フロントプレーン層に集積され、前記
モニター対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成された複数のオンチップ電極と、を備え、
前記システムは、計算装置及び外部電源を接続され、前記
モニター対象に装着されるように構成された人工装具を更に備え、
前記計算装置は、前記多重デジタル信号を受信し、前記外部電源は、前記無線電力信号を前記
人工装具に供給
し、
前記人工装具は、前記複数のオンチップ電極からの前記感知された神経信号に基づいて制御される1つ以上のアクチュエータを含み、
前記チップは、前記フロントプレーン層、前記バックプレーン層、及び前記複数のオンチップ電極を含み、埋め込まれるように構成されたワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスを形成する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記チップは、
前記IC
をRF平面コイルに電気的に接続するための導電性電極を更に備え
る、
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9記載のシステムであって、前記導電性電極は各々がシリコン貫通電極からなる、
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のシステムであって、前記複数のオンチップ電極は各々がタングステンコアと当該タングステンコアを包囲する金メッキとを備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムであって、前記複数のオンチップ電極は、ピラー電極アレイ又は平面電極アレイのいずれか一方からなる、
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記複数のオンチップ電極は、1000個の電極及び1024個の電極のいずれか一方からなる、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項8に記載のシステムであって、
前記RF平面コイルは、第一データ通信コイルと第二受電コイルとを備え、
前記
第二受電コイルは、電力を生成して前記ICに供給するため、コンデンサ及び電圧レギュレーターとともに動作し、
前記コンデンサは、導電性電極を用いて前記ICに接続される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
方法であって、
ワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイス用のチップを製造することを含み、
前記チップの製造は、
モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器を備えた集積回路(IC)を、
フロントプレーン層に埋め込むことと、
前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器を埋め込むことと、
前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号をリモート無線デバイスに無線送信するように構成されているとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波(RF)平面コイルを、
バックプレーン層に埋め込むことと、
前記
モニター対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成された複数のオンチップ電極のオンチップ集積をチップに対し行うことと、を含
み、
前記オンチップ集積は、ピラー電極アレイ又は平面電極アレイのいずれか一方を形成することを含み、前記複数のオンチップ電極は、少なくとも1000個の電極からなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記ICを
前記RF平面コイルに電気的に接続するための導電性電極を形成することを更に含
む、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、前記導電性電極は各々がシリコン貫通電極からなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、前記複数のオンチップ電極のオンチップ集積は、前記複数のオンチップ電極の各々にタングステンコアを形成することと、当該タングステンコアを包囲するように金メッキを施すことと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、前記複数のオンチップ電極のオンチップ集積は、ピラー電極アレイ又は平面電極アレイのいずれか一方を形成することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記複数のオンチップ電極は、1000個の電極又は1024個の電極のいずれかからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項2に記載の装置であって、前記ICは、上層及び下層を含み、前記導電性電極は、概して、前記下層の反対側に位置する前記上層に繋がる、
ことを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項9に記載の装置であって、前記ICは、上層及び下層を含み、前記導電性電極は、概して、前記下層の反対側に位置する前記上層に繋がる、
ことを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項16に記載の装置であって、前記ICは、上層及び下層を含み、前記導電性電極は、概して、前記下層の反対側に位置する前記上層に繋がる、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年11月20日に出願された米国仮特許出願第62/588,605号「モノリシックニューラルインターフェースシステム」の優先権を主張し、その開示内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ニューラルインターフェースシステムに関し、特に、モノリシックシステムとして構成されたニューラルインターフェースシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
脳に繋がるデバイス又はシステムは、ブレインマシーンインターフェース(BMI)又はブレインコンピューターインターフェース(BCI)と呼ばれている。そういったデバイスは、脳神経細胞への直接的な通信経路を提供する。また、脳の神経信号を感知して脳を調べたり、脳信号を生成し、適切な脳神経細胞に送り、人間の認知機能や感覚及び運動機能を高めたり修復したりする。
【0004】
侵略式BCIは、脳神経外科手術において、脳の灰白質に直接埋め込まれる。侵略式BCIデバイスについては、損傷した視力を修復し、動きを回復したりすることが可能である。また、例えばコンピューター又はロボットアームへのインターフェースを通じて患者を支援するデバイスを使用し、麻痺患者に新しい機能を提供したりすることが出来る。侵略式デバイスは、灰白質に位置することから、全BCIデバイスの中で最も質の高い信号を生成するが、瘢痕組織が蓄積しやすいので、身体が脳内の異物に反応することで、シグナル減衰が起きてしまう。
【0005】
非侵略式BCIには、脳内の電気的活動を検出するEEG(脳波)デバイスの使用が含まれる。EEGベースのインターフェースデバイスは、装着が容易で手術を要しないが、空間分解能が比較的低く、高周波信号を効果的に使用出来ない。これは、頭蓋骨がそういった信号を減衰させ、ニューロンにより生み出される電磁波を分散したり希薄なものにしたりするためである。
【0006】
侵略式BCIについては、頭蓋骨の内側であって脳の外側に位置する箇所において、硬膜上又は硬膜下に埋め込まれるものがある。予想される通り、これらのデバイスは非侵略式BCIよりも信号品質が高く、上記侵略式BCIよりも瘢痕組織を形成するリスクが低い。この中間BCIモダリティは、高い空間分解能、優れたS/N比、そして広い周波数範囲の有用な信号を有することから、有望である。
【0007】
脳内のニューロンにより生成される電気信号をモニタリングしたり、記録したりするには、上記の様々なBCIモダリティに加え、外部機器(増幅器、レコーダー等)も必要となる。通常、BCI検出電極は、有線接続により外部機器に接続される。しかし、有線接続は扱いにくく、患者の移動を制限したり、経皮的ワイヤを使用しなければならないことから、感染リスクをもたらす。
【0008】
ここに記載したBCI技術は、それぞれが、神経信号を感知/受信するための一連のセンサーを必要とする。こういった一連のセンサー(侵略式BCIデバイスでは、通常、感覚皮質又は一次運動皮質内に配置される)が受信する並列神経信号は、認知機能又は運動機能の回復に関する研究のガイドに使用できる情報をコード化する。また、これらの一連のセンサーは、認知機能や運動機能を回復させる作業において、脳領域に神経信号を供給することを可能とする。これらの一連のセンサーから得られる情報の質は、感知される神経信号の密度と解像度に依存している。これは、アレイ電極の間隔や感度など、一連のセンサー特性に直接関係する。
【0009】
しかしながら、既存のブレインマシーンインターフェースデバイスの電極密度は、いまだ多くの患者にとって臨床的に不十分である。重度の障害のある患者を完全に動けるように回復するためには、又は他の機能障害を回復させるためには、大幅な改良が必要となる。例えば、四肢運動の回復には、BMIで5,000から10,000個のニューロンを同時にモニタリングする必要があるであろうし、全身運動には、100,000個のニューロンの計測が必要となろう。
【0010】
完全埋込が可能なニューラルインターフェースシステムは、電極アレイ、増幅器、プロセッサ、無線送信機、及び電源などの多くのコンポーネントを複雑に集積した設計となっている。従来のシステムでは、ワイヤフィードスルーを使用し、コンポーネント間の電気接続を確立している。この接続は、漏電を防ぐ材料で絶縁されている。
【0011】
図1A及び
図1Bは、現在における最先端のBCIデバイス10A及び10Bを示している。これらの従来技術には多くの制限があり、例えばスペースの制限により、拡張性(すなわち、センサーの追加)が著しく制限されている。デバイス10Aは、電極と増幅器とのペアリングに対する外部ワイヤの使用について、拡張性が低い。デバイス10Bについては、BCIデバイスの分解図という形で表されている。このデバイス10Bは、バッテリー15を含んでおり、デバイス動作時間はバッテリー容量によって制限されている。また、例えばワイヤレス送信機25からのワイヤレス信号は、金属筐体によって減衰され又ひずむものだが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ケーシング20などの非金属筐体については、長期耐久性が明確でない。更に、体液に対する非気密シーリングには問題がある。加えて、埋め込みデバイスは、そのサイズの点で、外科手術を複雑にし、患者に不快感やリスクを与える。当該デバイス10Bは、ケアポート台40が取り付け可能なポリマーアタッチメント35内に、増幅及び多重(MUX)デジタル回路30を含み得る。
【0012】
1000個又はそれを超える検出/導出電極(各電極が1つのデータチャネルを作成するため、チャネルズとも呼ばれる)を達成するには、大きな課題がある。現在のBCIデバイスに関連するこれらの問題や他の問題は、今の最先技術を進歩させるため、そして障害のある患者に回復への道を提供するために、解決する必要がある。
【発明の概要】
【0013】
本実施形態は、ニューラルインターフェースシステムに関し、特に、モノリシックシステムとして構成されたニューラルインターフェースシステム、及び製造方法に関する。また、本実施形態は、ワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスに関する。
【0014】
本実施形態の一態様は、装置であって、埋め込まれるように構成されたワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスを含むチップを形成するモノリシック基板を備えており、前記チップは、第一モノリシック基板に埋め込まれている集積回路(IC)であって、モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器と、前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器と、を備える集積回路と、第二モノリシック基板に埋め込まれている無線周波(RF)平面コイルであって、前記第一モノリシック基板を介して前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号をリモート無線デバイスに無線送信するように構成されてるいとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波平面コイルと、前記対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成された複数のオンチップ電極と、を備える、ことを特徴とする装置である。
【0015】
また、本実施形態の一態様は、システムであって、チップを備えたワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスを備え、前記チップは、第一モノリシック基板に埋め込まれている集積回路(IC)であって、モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器と、前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器と、を備える集積回路と、第二モノリシック基板に埋め込まれている無線周波(RF)平面コイルであって、前記第一モノリシック基板を介して前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号を無線送信するように構成されているとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波平面コイルと、前記対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成された複数のオンチップ電極と、を備え、前記システムは、計算装置及び外部電源を接続されており、前記対象に装着されるように構成された人工装具を更に備え、前記計算装置は、前記多重デジタル信号を受信し、前記外部電源は、前記無線電力信号を前記MINIデバイスに供給する、ことを特徴とするシステムである。
【0016】
また、本実施形態の一態様は、方法であって、ワイヤレス及びバッテリーレスのモノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイス用のチップを製造することを含み、前記チップの製造は、モニター対象から受信した神経信号を増幅するように構成された複数の増幅器を備えた集積回路(IC)を、第一モノリシック基板に埋め込むことと、前記増幅された神経信号を処理し、多重デジタル信号を生成するように構成された無線データ信号生成器を埋め込むことと、前記第一モノリシック基板を介して前記ICに電気的に接続され、前記多重デジタル信号をリモート無線デバイスに無線送信するように構成されているとともに、前記ICに電力を供給するため無線電力信号を受信するように構成されている無線周波(RF)平面コイルを、第二モノリシック基板に埋め込むこと、前記対象の神経信号を直接感知し、当該神経信号を前記複数の増幅器に提供するように構成された複数のオンチップ電極のオンチップ集積をチップに対し行うこと、を含む、ことを特徴とする方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上記で簡潔に述べたものの具体的な説明は、添付図面に示されている特定の実施形態を参照することにより行われる。尚、これらの図面は典型的な実施形態のみを示しており、発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。それを踏まえた上で、添付図面を用いて、実施形態を更に具体的かつ詳細に記載及び説明する。
【
図1A】
図1Aは、現時点での最先端のBCIデバイスを示す図である。
【
図1B】
図1Bは、他の最先端のBCIデバイスを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、モノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスの断面図である。
【
図2D】
図2Dは、一実施形態によるMINIデバイスのブロック図である。
【
図3】
図3(a)から(d)は、MINIデバイスにおけるオンチップピラー電極アレイ用のオンチップ金電極の無誘導電着に関するステップを示す図である。
【
図4】
図4(a)から(f)は、タングステンコアを有するピラー電極を製造するための誘導電着の段階的な図である。
【
図5】
図5(a)から(f)は、シリコン貫通電極(TSV)を用いたMINIデバイスのRF平面コイルのバックプレーン集積のステップを示した図である。
【
図6A】
図6Aは、固有SINCフィルターを備えた神経記録回路を示した図である。
【
図6B】
図6Bは、エイリアシングノイズの一因となる高周波を減衰させる固有フィルターのグラフ表示を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、1000チャネル増幅器アレイ及び神経記録回路の一部を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、最先端の電気生理学増幅器Axopatch200Bとの比較における
図7A記載の設計された相補型金属酸化膜半導体(CMOS)増幅器アレイのノイズスペクトル密度のグラフ表示を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、人工装具と共に使用する第二MINIシステムを示す図である。
【
図9】
図9(a)から(c)は、金電着を用いたオンチップ電極アレイの製造ステップを示す図であり、
図9(d)はオンチップ電気めっき電極を用いたドーパミン測定のグラフ表示を示す図である。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、集束イオンビーム(FIB)によって断面化された電気めっき電極の上面及び断面の画像を示す図である。
【
図11】
図11(a)から(c)は、平面電極及びSU-8ウェルのオンチップ集積のためのポストCMOS処理ステップの上面図である。
【
図12】
図12(a)から(c)は、電極及びSU-8ウェルのオンチップ集積のためのポストCMOS処理ステップに関する断面図である。
【
図13A】
図13Aは、様々なトレース幅に対する一定の結合係数のグラフ表示を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、様々な螺旋状ターンに対する一定の結合係数のグラフ表示を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、rxID/rxODまでの間隔(z)の関数としての角形螺旋コイルの最適な幾何学的値を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、txOD/rxODまでの間隔(z)の関数としての角形螺旋コイルの最適な幾何学的値を示す図である。
【
図14C】
図14Cは、txID/txODまでの間隔(z)の関数としての角形螺旋コイルの最適な幾何学的値を示す図である。
【
図15A】
図15Aは、標準の0.35μmのCMOSプロセスで設計された1024チャネルのブレインマシーンインターフェースチップを含むMINIデバイスを示す図である。
【
図16A】
図16Aは、圧縮神経記録のためのデルタ変調器の概略図であり、プリセット閾値を超える又は下回る電圧の変化が検出された場合にリセットパルスを引き起こす2つのコンパレーターが含まれている。
【
図16B】
図16Bは、V
outにおいて、幅厚デジタルパルスを引き起こすことになるV
ref+ΔV
th以上の電圧上昇、及び幅薄デジタルパルスを引き起こすことになるV
ref-ΔV
th以下の電圧降下のグラフ表示を示す図である。
【
図17A】
図17Aは、デルタ変調器及び従来の神経記録システムを用いた神経信号サンプリングを示す図であり、ここでスパイクは1-mVの神経スパイクの例であり、三角(▲)は、デルタ変調器がサンプリングする箇所を示し、バツ(×)は、従来のシステムがサンプリングする箇所を示している。
【
図17B】
図17Bは、デルタ変調器のサンプルに基づく神経信号のサンプリングに基づいたパルス列を示す図である。
【
図17C】
図17Cは、デルタ変調器のサンプルに基づく神経信号の再構成を示す図である。
【
図18】
図18は、シンプルな演算増幅器(OPA)デザイン及び2つの疑似コンパレーターを用いるデルタ変調器のコア回路図である。
【
図20】
図20は、人工装具で用いるプログラム命令を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して実施形態の説明を行う。なお、図面全体を通して、同様又は同等の構成には、同様の参照番号を用いる。これらの図は一定の縮尺で描かれておらず、ここに開示されている態様を例示するためにのみ提供されている。また、ここに開示された態様のいくつかは、例示を目的とした非限定的な例示アプリケーションを参照して説明される。また、多くの具体的な詳細構成、関係、及び方法が示されているが、これは開示される実施形態の完全な理解を得るためであると理解されたい。当業者であれば、上記詳細構成が一つ又はそれ以上なくとも、また他の方法を用いても、開示された実施形態が実施され得ることを容易に認識するであろう。また、いくつかの例において、開示される態様を不明瞭にせぬよう、周知の構造又は動作については詳細には示さない。また、当該実施形態は、図示された動作及びイベントの順序に限定されるものではなく、一部の動作は、異なる順序で行われることもあるし、他の動作又はイベントと同時に発生する可能性もある。また、例示されたすべての動作又はイベントが、実施形態に従った方法を実施するために必要となるわけではない。
【0019】
広範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値で記載されているが、特定の非限定的な例で示される数値は、可能な限り正確に報告されている。ただし、どの数値にも、テスト測定で見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれている。さらに、ここに開示されるすべての範囲は、そこに含まれる全ての下位範囲を包含すると理解されるべきである。たとえば、「10以下」という範囲には、最小値0と最大値10と、その間の下位範囲が全て含まれる。つまり、例えば1から4までなど、0以上の最小値と10以下の最大値を持つ全ての下位範囲が含まれる。
【0020】
上に述べたように、基本的な脳研究、大規模な脳マッピング、及びブレインマシーンインターフェース装置の患者使用に適した製品への臨床解釈を進めるため、大容量の記録機能を備えた新しいブレインマシーンインターフェースの開発が必要である。
【0021】
ここに開示するのは、ワイヤレス及びバッテリーレスなニューラルシステムを薄い基板、例えば一実施形態ではシリコン基板上に一体形成したワイヤレスニューラルインターフェース(BCI又はBMI)装置である。本装置には、一体型の形態を有していることから、外部デバイスへの配線や複雑なパッケージ技術は必要ない。また、このワイヤレス及びバッテリーレスなニューラルインターフェース装置の各実施形態は、従来の半導体製造方法を用いることで、製造コストを大幅に下げることができる。これらの実施形態は、拡張可能なニューラルインターフェースであるシリコンダイへのニューラルインターフェースシステムのモノリシック集積に関する。
【0022】
本システムは、集積型平面電極アレイ、独立したシリコンダイ上の無線周波(RF)平面コイル、及びオフチップテレメトリリンク機能を用いる相補型金属酸化膜半導体(CMOS)1000チャネル増幅器アレイが含まれる。実施形態によっては、RF平面コイル及びコンデンサが、同じシリコンダイ上にモノリシック集積される。非限定例として、各実施形態は、0.04cm3の単一のシリコンダイ上に完全集積されたBMIシステムを含み得る。
【0023】
感覚皮質からの豊富な情報は、一連の高密度記録でのみ抽出できる。すべてのコンポーネントの単一シリコンダイへのモノリシック集積は、外部配線を排除し、CMOS相互接続を介し全電子相互接続をリンクすることで、高密度記録を可能とする。
【0024】
内部で電子接続を確立するすべてのコンポーネントをモノリシック集積することで、ワイヤフィードスルー及びパッケージングが不要となる。
【0025】
取得又は要求され得る情報の質は、電極アレイのサイズ又はピッチに依存する。現在の最先端技術では、電気的記録が数百に制限されている。本システムは、増幅器の上部に直接電極を構築することにより、神経記録用に1000以上のチャネル(1000-ch)を集積する。この方法は、より高いスループットを得る基礎を築く。
【0026】
本システムは完全なバッテリーレスでもよい。集積されたRF平面コイルは、電力(2.64MHzで10mWまで)供給を受け、RFカップリングを通じてデータを送信する。この低周波送電は、組織損傷を防ぐ。
【0027】
本明細書で開示される実施形態は、主に神経信号を感知するという観点から無線モノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスを説明するが、本開示の教示により説明されるMINIデバイスのニューラルモノリシックインターフェースが神経信号を生成し、それらの信号を(直接又は頭蓋骨若しくは硬膜を介して)脳組織に供給し認知及び運動感覚機能を刺激する、ということにも有利に使用可能であることは、当業者であれば分かるであろう。ちなみに、利点として、このMINIデバイスを神経系の人工装具に組み込んだ場合、ニューラルモノリシックインターフェースは、神経系人工装具の低価格化及び性能改善をもたらし得る。本システムは、例えば、支援装具を必要とする麻痺患者が使用するためのニューラルインターフェースインプラントを提供し得る。
【0028】
一実施形態が開示するのは、同時記録を行えるようシリコン基板上に設けられた単一集積回路(IC)にモノリシック集積された1000チャネルのニューラルインターフェースシステムである。ほとんどのコンポーネントを1つのICに集積することで、神経信号の高密度検出と記録が可能となる。電子部品もIC上に設けられ、サブミクロンの電気的相互接続によってリンクされる。このアプローチには、設計の簡素化、外部配線の排除、パッケージの複雑さの軽減など、従来のアプローチと比較して利点がある。
【0029】
ここで定義されるように、神経信号というものは、互いに通信するニューロンに対応する神経インパルスを含む。この神経信号は、活動電位及び局所電位の形でニューロンを通じて伝播する電気信号からなる。この電気信号は、一般に神経信号と呼ばれ、ここに記載されているMINIデバイスの電極によって検知又は検出される。ニューロンは、運動ニューロン、感覚ニューロン及び介在ニューロンを1つ以上含み得る。
【0030】
MINIデバイスによって記録された信号は、A/Dコンバーターでデジタル信号に変換され(特定の実施形態ではデジタルデータストリームが圧縮される)、処理ステーションに無線送信され、分析及び記録が行われる。
【0031】
ここに記載される実施形態は、いくつかの望ましい特徴を提供する。すなわち、(1)ピラー電極アレイのオンチップ集積、(2)RF(無線周波)平面コイルとコンデンサのバックプレーン集積、(3)神経信号のハイスループット及び当該信号の記録のための低電力及び省スペース型の増幅器アレイと周辺回路、という特徴を提供する。
図2B及び
図2Cは、MINIデバイスのフロントプレーン及びバックプレーンを示しており、
図2Aは、MINIデバイスの断面図であり、様々なデバイス層及び相互接続を示している。
【0032】
図2Aは、モノリシック集積型ニューラルインターフェース(MINI)デバイスの断面図である。本MINIデバイス200Aは、フロントプレーン層207及びバックプレーン層211を含み、これらはまとめてチップ203と呼ばれることもある。フロントプレーン層207及びバックプレーン層211は、一般にモノリシック集積され、それによりチップ203を単一のMINIデバイス200Aに形成する。RF平面コイル230は、斜線ハッチングで図示されている。フロントプレーン層207は、外面209を含み、バックプレーン層211は、外面213を含む。ここで面209及び面213は、一般に上層及び下層である。なお、ここでの「上」及び「下」という用語は、限定を意味するものではなく、参照基準として用いられているだけである。これら「上」及び「下」は「第一」及び「第二」でもよい。
【0033】
図2Cは、
図2Aに示されるMINIデバイスのバックプレーン層211の斜視図である。本MINIデバイス200Aのバックプレーン層211は、点線ハッチングで図示されているような保護層290を含んでいてもよい。この保護層290は、例えば、腐食から保護するための保護材料又はシェルである。バックプレーン層211は、
図2Cにおいてよく分かるが、例えばコイル状のアルミニウムパターンを適用して形成されるRF平面コイル230を含んでおり、これは斜線ハッチングで図示されている。このアルミニウムパターンは、
図2Dに関連してより詳細に論じられるが、概して、外部に露出され、無線周波(RF)信号が送受信可能となるように、バックプレーン層211に組み込まれる。
【0034】
RF平面コイル230の互いに反対に位置する端部は、黒一色で図示されたシリコン貫通電極(TSV)240とインターフェースをとる。このTSV240は、
図5(a)から
図5(f)に関連して説明するように、フロントプレーン層207に組み込まれる。TSV240は金属を含み、その下端部、すなわち、最も幅が広い端部は、RF平面コイル230の一部に直接取付又は接着される。非限定例として、このTSV240の金属は銅(Cu)を含んでいてもよい。概して、TSV240の下端はRF平面コイル230の内面に取り付けられ、RF平面コイル230の外面は送信のため露出する。具体的には、RF平面コイル230は、一般的なU字形であってもよい。このU字型には2つの脚が含まれる。各脚の幅は、少なくともTSV240の底面の長さと同等である。各脚にはTSV240が取り付けられており、各々がクロスハッチングで図示されているIC213まで延びている。
【0035】
図2Bは、
図2Aに示されるMINIデバイスのフロントプレーン層207の斜視図である。
図2Dに関連してより詳細に説明されるが、フロントプレーン層207は、集積回路層213を含む。TSV240は、集積回路(IC)213により先端が断ち切られた形となっている。フロントプレーン層207は、その上面、すなわち外面209の一部に、クロスハッチングで図示されているIC層213が形成されている。IC層213は、第一層部253及び第二層部255を有している。第一層部253には、TSV240が直接繋がっており、これはRF平面コイル230をRF(無線)トランシーバ(TX/RX)220(
図2D)に接続する。第二層部253の下の第二層部255は、概して、第一層部253よりも狭く、肩部又は第一層部253への段部を形成する。
【0036】
バックプレーン層211は、縦ハッチングで図示されたコンデンサ層201を更に含む。コンデンサ層201は、第一層部253よりも短く、第二層部255よりも長い。また、コンデンサ層201の各遠位端には、一組の第二TSV242が直接繋がっている。TSV242は、概して、TSV240と同じものである。この一組のTSV242は、概して、第二(下)層部255の反対側に位置する第一(上)層部253に繋がっていてもよい。
【0037】
IC層213の上部には、ピラー電極アレイ210が集積されている。このアレイ210の電極は、それぞれ異なるチャネルに対応している。本MINIデバイス200Aは、1000以上の電極を有し得る。
【0038】
このMINIデバイス200Aは、以下のステップに従って製造される。まず、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プロセスに従った集積回路の製造を行う。次に、チップ上にピラー電極アレイを形成するためのポストCMOS処理を行う。次に、基板をエッチングして(又は基板研削/研磨技術を用いて)、基板の厚さを約50μm(一実施形態の例)に減らし、その柔軟性を上げる。次に、基板のバックプレーンにコンデンサと無線周波(RF)平面コイルをパターニングする。次に、CMOS技術及び材料加工に対応した絶縁材料(SiO2/Si3N4/SiCなど)でダイを囲むことにより、漏れの少ない障壁を作る。なお、SiCは炭化ケイ素であり、SiO2は二酸化ケイ素であり、Si3N4は窒化ケイ素である。
【0039】
すべてのデバイスコンポーネントのモノリシック集積により、すべてのコンポーネント接続が集積回路内で行われ、外部補助機器への接続が無線周波リンクを介して行われるため、外部配線の使用が必要なくなる。露出したワイヤや接続部など、体液による腐食の影響を受けやすいものを排除し、アレイと処理コンポーネントを集積することで、埋め込み型ニューロセンサーアレイのパッケージングについての従来の要件が不要となる。チップ上でアレイとデバイスコンポーネント間の相互接続を形成することにより、本デバイスに1000個以上の電極を容易に設けることができる。
【0040】
図5(a)から
図5(f)は、
図2Aの破線ブロック241で図示されるシリコン貫通電極(TSV)を用いたMINIデバイスのRF平面コイルのバックプレーンの集積化のステップを示している。
図5(a)から
図5(f)のステップは、
図2Aの破線ブロック241内の当該部分を形成するステップ500A、ステップ500B、ステップ500C、ステップ500D、ステップ500E、及びステップ500Fに係る断面図で表されている。RF平面コイルのバックプレーンの集積化には、シリコン貫通電極240(
図2A)を用いる。RF平面コイルにおける同種層には、各ステップで同じハッチングが使われている。よって、各層ごとの参照番号は、
図5(a)から
図5(e)において、ほとんど一度しか使われない。また
図2Aのブロック241における層のハッチングは、
図5(a)から
図5(e)のハッチングと一致している。
【0041】
図5(a)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Aは、フロントプレーン層507に相当し、モノリシック集積に適した第一材料層560を形成することを含み得る。非限定例として、第一材料層560はシリコン(Si)を含んでいてもよい。この第一材料層560は、ハッチングを使わず図示されており、フロントプレーン層507及び底面562Bを含む。フロントプレーン層507の一部上には、MINIデバイス200Aのコンポーネントの集積回路540が形成されており、これはクロスハッチングで図示されている。
【0042】
図5(b)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Bは、バイア空洞566Bを形成するための第一材料層560におけるKOHエッチングを含み得る。バイア空洞566Bは、断面図に従うと、概して、切頂三角形の形状を有しており、第一材料層560によって境界がつけられている。フォトレジスト(PR)層564Aは、スクエアハッチングで図示されており、バイア空洞566Bの第一側に形成されている。PR層564Bは、バイア空洞566Bの反対側に、同じように形成されている。
【0043】
図5(c)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Cは、第一材料層560の底面562Bの残りの部分を酸化し、それにより、例えば、点線ハッチングで図示する酸化物層570を形成することを含み得る。酸化物層570は、二酸化ケイ素(SiO
2)を含んでいてもよい。この酸化物層570は、バイア空洞566Bに対向する底面562Bの残存部分とバイア空洞566Bの壁部分とに沿って形成され、バイア空洞566Cを形成する。シリコンの酸化は、バイア空洞566Cの略切頂三角形状を維持しながら薄い酸化物層570を形成するための熱酸化を含み得る。
【0044】
図5(d)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Dは、バイア空洞566C(
図5(c))内の銅(Cu)電着を含み得る。バイア空洞566Cは、銅がバイア空洞566Cにおける酸化物層570までの及びその間のスペースを埋め、黒一色の塗りつぶしで図示されているTSV575(すなわち、電極240)を形成する程度の量の銅(Cu)で充填される。バイア空洞566Cは、TSV575の底面576が実質的に酸化物層570と面一になるように充填されてもよい。
【0045】
図5(e)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Eは、TSV575の底面576の全長及び酸化物層570の一側面に沿って延びるように、斜線ハッチングで図示されるアルミニウムパターン585を形成することを含み得る。非限定例として、アルミニウムパターン585は、RFコイル(すなわち、RFコイル230、
図2C)を形成するためのRFコイルパターン585を含み得る。
【0046】
図5(f)におけるバックプレーンの集積化のステップ500Fは、第一材料層560に形成された残存する酸化物層570に保護層590を適用することを含み得る。RFコイルパターン585は、データ送信及び電力受信を可能とするために露出されたままでもよい。この保護層590も点線ハッチングで図示されている。保護層590の厚みにより、外バックプレーン面511を有するバックプレーン層509が形成し得る。
【0047】
RFコイルはシミュレーション又はモデル化されており、約16.5mWの電力伝送を実現する。
【0048】
また、基板のバックプレーン(又はフロントプレーン)に(以下に説明するようにデータ転送と発電に使用される)コンデンサとRF平面コイルを集積することにより、電力(約10mW)及びデータの同時無線伝送によるバッテリーレスな動作が可能となる。電力は、無線誘導帯電技術を用いて転送され、これにより電磁場が外部電源からRF平面コイルの1つにエネルギーを転送する。コンデンサとコイルは、従来のCMOSプロセスを用いて製造され、シリコン貫通導電電極を使用して集積回路内の他の回路素子に接続される。
【0049】
2つのRFコイルを備えた実施形態では、第一コイルがRFリンクでデータ伝送を提供し、第二コイルがRFリンクで第二コイルに接続された外部電源に応答して電力を生成する。
【0050】
データは、OOK(オンオフキーイング)変調スキームに従って約900MHzの周波数で第一RFコイルから送信されるのだが、これは、データ送信プロトコル用の他のデジタル変調スキームと比較して非常に電力効率が良い。
【0051】
一実施形態では、約10mWの電力が、外部電源によって生成された電磁場のRFカップリングによって、2.64MHz(又は、いずれの場合でも3MHz未満)の共振周波数で供給される。この電力レベルは、連邦通信委員会(FCC)に公表されているところのRF安全ガイドラインを下回っている。この安全ガイドラインでは、患者又は被験者に与える際の電力レベルを100mW/cm2に制限している。また、放射線誘発の組織損傷を最小限に抑えるために、低周波電力送信信号が使用される。これは、体液がそのような低周波信号をあまり吸収しないことが知られているからである。
【0052】
以下の表1は、ニューラルインターフェースデバイス内の各コンポーネントのおおよその電力消費範囲を示している。
【表1】
【0053】
外部電源880(
図8Aから8B)からのRF電力信号は、第二コイルにおいてAC信号を生成する。第二コイルとシリコン基板の緊密なカップリングは、電力伝送を減衰させる寄生容量を引き起こす可能性があり、そのため第二コイルはデバイスのバックプレーンに配置される。
【0054】
電力伝送効率は、第二コイル及び外部電源間の分離距離が約1.5cmの場合において最適化される。直流(DC)に変換した後、生じた信号がフィルター処理され、出力電圧が電圧レギュレーターによって設定される。
【0055】
変換されたDC信号をフィルタリングするためには、かなり大きいコンデンサが必要となる。適切なフィルタリング及び後続する電圧レギュレーションのための1μFもの大きな静電容量を達成するため、約25mm2の面積を占める金属-絶縁体-金属(MiM)コンデンサが基板のバックプレーンに配置される。
【0056】
送電コイル及びコンデンサは、
図2Aでよく図示されているが、干渉効果を回避するため、保護層によって分離された基板の異なる層に配置される。
【0057】
他の実施形態では、バッテリーをモノリシックデバイスに組み込むことができ、それにより、デバイスのコンポーネントにリアルタイム電力を供給するためのRF電力カップリングが不要となる。RF電力カップリングは、バッテリーを充電するために使用されることが好ましい。
【0058】
また、他の実施形態では、電力伝送を増大させるのに特に有利なことであるが、シリコン基板の代わりにシリコンオンインシュレータ(SOI)基板が使用される。この実施形態は、シリコンバルクと平面コイルとの間の距離を長くすることで、寄生容量を低下させるものである。
【0059】
また、他の実施形態では、コイルの直列抵抗を低減しながら、コイルのインダクタンス及び品質係数が増加するように、基板サイズを大きくし、25mm2以上にする。大きい基板は、大きいコイルの製造を可能にする。いずれの場合でも、MINIデバイスは、現在の最先端BCIシステムのサイズより小さいままとしてもよく、そのサイズは、アレイ内に約100の電極を備えた状態で約68.64cm3である。
【0060】
薄い基板は、約0.0125cm3のMINIデバイス体積を提供し、これは現在の最先端デバイス、すなわち、68.64cm3より大幅に小さい。50μmという厚さは、頭蓋骨の下に移植するための基板の柔軟性を提供する。また、すべてのコンポーネントをチップに統合することで、外科的インプラント処置が簡素化される。
【0061】
図3(a)から
図3(d)は、MINIデバイスにおけるオンチップピラー電極アレイのためのオンチップ金電極の無誘導電着に関連するステップを示す。
図3(a)におけるオンチップ金電極を形成するための無誘導電着のステップは、CMOSダイ305Aに重ねたアルミニウム(Al)層に開口部315Aを形成するステップ300Aを含む。ピラー310Aは、CMOSダイ305A上に示されおり、電極のオンチップ集積に使用される。
図3(b)におけるステップ300Bは、セクション315Bのアルミニウムを、CMOSダイ305B上のパッド310Bを介してエッチングすることを含む。
図3(c)におけるステップ300Cでは、電着によりパッドセクション310Cをニッケル315Cでメッキする。ニッケルは、CMOSダイ305Cには及ばせない。
図3(d)におけるステップ300Dでは、セクション310Dにおいて金315Dをニッケル層に電気めっきする。金メッキは、CMOSダイ305Dには及ばせない。
【0062】
オンチップ電極アレイ210(
図2A)は、電着技術を用いて形成される。電着は等方性堆積プロセスであるため、パターン化フォトレジスト(PR)層で電着プロセスをガイドすることにより、高アスペクト比のピラー電極が製造される。
【0063】
図4(a)から
図4(f)は、
図4(f)に最も分かりやすく記載されているタングステンコアを有するピラー電極455を製造するための誘導電着の段階
図400A、400B、400C、400D、400E及び400Fである。なお、同様のコンポーネントには同じ参照番号が付してある。ただし、コンポーネントに変化が生じた場合、その参照番号にはダッシュ記号又はダブルダッシュ記号が付くこととなる。
図4(a)から
図4(f)は同様の参照番号を有しているが、1つの図で言及された参照番号は、必要でない限り、後の図の説明において再び言及されることはない。ピラー電極アレイの望ましい特性の1つは、外科手術中及び移植後における脳表面により引き起こされるせん断応力に対する高い構造抵抗である。したがって、実施形態によっては、各ピラーは高いヤング率を示さなければならない。一実施形態では、各電極は、タングステンコア及び金の外面を有し、これにより比較的堅いピラー及び電極となる。アレイ210の実施形態は、移植部位に応じて異なる形状及び長さとなる。各ピラーは、ヒトの硬膜又は軟膜を貫通するために少なくとも50μmの長さであることが好ましい。
【0064】
図4(a)におけるステップ400Aは、
図2Aから
図2Dに関連して説明されたような集積回路(IC)413が埋め込まれた又は集積されたCMOSダイ403の形成に関連して説明される。IC413は、例示を目的として、破線ボックスの層で図示されている。CMOSダイ403は、例えば、シリコンで作られてもよい。導電性リード411は、CMOSダイ403に埋め込まれ、IC413に接続される。なお、他のリードが設けられてもよい。
【0065】
CMOSダイ403は、その上面に、導電性リード411に電気的に接続されるアルミニウム(AL)パッド415又はストリップ(点線ハッチングで図示)が埋め込まれている。導電性リード411は、Alパッド415より下に位置する。Alパッド415又はストリップは、第一の高さと幅を有している。ALパッド415は、CMOSダイ403における二点鎖線で図示される上面405の上にあり、ピラー435の真下に埋め込まれる。ピラー435は、例えば二酸化シリコン(SiO2)で作られた酸化物層407がCMOSダイ403の上面405及びAlパッド415の上面に適用されることで、形成される。ALパッド415がCMOSダイ403の上面の上にあるので、このピラー345として示される隆起部分が形成される。
【0066】
図4(b)におけるステップ400Bは、ピラー435’にAlパッド415の上面まで延びるオープンチャネル440又は経路を形成するように酸化物層407をエッチングすることを含む。
図4(c)におけるステップ400Cは、AIパッド415’の物質をピラー435’のチャネル440’を通して除去することで、AIパッド415’がある量だけ低減し、電極支持ベース(ESB)キャビティ425が形成されるようにエッチングすることを含む。ESBキャビティ425は、その幅が、Alパッド415の幅と同じであってもよいが、開放チャネル440’の幅よりは大きくあるべきである。
【0067】
図4(d)におけるステップ400Dは、酸化物層407及び対応するピラー435’の上に、水平ハッチングで図示されたパターン化フォトレジスト(PR)層442を形成することを含む。フォトレジスト層442の高さは、電極に必要な高さの関数である。PR層442は、オープンチャネル440’’を有する。したがって、オープンチャネルは、ESBキャビティ425までの明確な経路が形成されるように、ピラー435’内に形成されエッチング後のALパッド415’に至るオープンチャネル440’と、PR層442内のオープンチャネル440’’との両方を含む。実施形態によっては、オープンチャネル440’及びオープンチャネル440”は、ESB空洞425内を除いて同じ直径を含み得る。
【0068】
図4(e)におけるステップ400Eは、ESBキャビティ425内に斜めハッチングで図示されている電極導電性コアベース445を形成すること、及び開放チャネル440’の残り及び開放チャネル400’’に沿って、斜めハッチングで図示されている導電性電極コア447を形成することを含む。ステップ400Eは、ESBキャビティ425とオープンチャネル440’及び440”を導電性金属で電気めっきし、キャビティ425とチャネル400’及び400’’の両方を充填して、一体型電極ベース445によって支持された電極コア447を含み得る固体単一電極コア構造を形成することを含んでいてもよい。実施形態によっては、電気めっきは、PR層442の上面443より上に電極コア447を延ばすことを含んでいてもよい。また、実施形態によっては、導電性金属は、タングステン又は他の構造的に強い材料を含む。
【0069】
図4(f)におけるステップ400Fは、PR層442を除去し、ピラー435’の上方に延びる導電性電極コア447を、スクエアハッチングで図示される金(Au)層450で封入及び完全に包含することを含む。金層450は、ピラー435’まで伸びる。この金層450は導電性電極コア447の先端も封入する。導電性電極455は、金層450、導電性電極コア447、及びCMOSダイ403内の導電性リード411と電気通信する電極ベース445を含むこととなる。
【0070】
非限定例において、金層450は、電極コア447の露出された外周面及び周囲に電気めっきされる。
【0071】
他の実施形態では、ピラー構造アレイは、平面電極アレイに置き換えられる。後者のアレイを使用するデバイスは、ピラー構造の場合のように硬膜上ではなく、硬膜下に埋め込む必要がある。これは、平面アレイ電極が硬膜の厚い膜を貫通できないからである。
【0072】
図2Dは、MINIデバイス200Dの主要なコンポーネントを示すシステムブロック図である。実施形態によっては、電極アレイ210の各電極からの信号は、1対1対応で、増幅器アレイ212における対応する増幅器によって増幅される。これら複数の電極信号は、例えば、マルチプレクサ(MUX)214を使用して(10MS/sで時分割多元接続(TDMA)アプローチを使用するなどして)多重化され、120Mビット/秒でアナログ-デジタル変換器(ADC)216においてデジタル形式に変換される。これらのデジタル信号は、プロセッサ218でデータ圧縮などの処理を施される。プロセッサ218は、デジタル信号プロセッサでもよい。プロセッサ218からの信号は、無線周波(RF)トランシーバ(TX/RX)220に送られてもよく、そこでRF信号が生成される。RF信号は、コイル230を介して離れた場所にある外部信号分析装置に無線送信され、記録及び分析が行われる。
【0073】
TDMA多重化は、すべての積分期間をずらし、その結果、1つの増幅器からのデータが読み取られている間に、他の増幅器が感知された情報を積分し続ける。この多重化スキームは、信号対雑音比(SNR)を最大化し、回路複雑度を最小化する。
【0074】
これも
図2Dに示されていることだが、電力はRFリンクを介してMINIデバイス200Dに供給され、AC-DCコンバーター222によって直流(DC)に変換され、電圧レギュレーター224によって適切な電圧に調整され、そしてデバイスコンポーネントに供給される。なお、ACとは交流を意味する。
【0075】
本発明のモノリシックニューラルセンサには、様々な増幅器構成を用いること可能である。一実施形態によれば、MINIデバイス200Dは、アレイ210の各電極に1つの低雑音増幅器(LNA)アレイ212を備える。一般に、これはより電力効率の良い設計であるが、増幅器を収容するためにより大きな面積を必要とする。一実施形態では、1000-増幅器アレイ210は、10kS/s(キロサンプル/秒)のサンプリングレート及び約5μVRMSのノイズレベルで約10mm2の面積を占める。この設計は拡張性があるため、1000のチャネル、1000の増幅器、1000の電極を超えることも出来る。
【0076】
図6Aは、固有のSINCフィルターを備えた神経記録回路600を示す。デバイス内の増幅器は、積分期間に基づいたSINCフィルターを使用してエイリアシングノイズの内的除去を行う。このフィルタリングにより、全体的な信号対雑音比(SNR)が向上する。この増幅器は、コンデンサC
int617を有するポテンショスタットを用いる。電極610で神経活動(V
neural)によって生成された電位により、コンデンサC
E619で電位降下が発生し、結果として生じた電流は、コンデンサC
int617で積分され、トランジスタ603のソースで電圧(V
readout)として一定期間ごとに表示される。電流源613は、トランジスタ601のソースに結合する電流(I
baseline)を提供する。トランジスタ601及び602のドレインは結合し、トランジスタ603のゲートに接続される。スイッチSW1は、コンデンサC
int617への経路、及びトランジスタ601及び602のドレインとトランジスタ603のゲートとの間の経路に接続される。また、スイッチSW1は、コンデンサC
int617への経路を開閉する。
【0077】
トランジスタ601は、そのゲートが、入力Vref及びIbaselineを受けつける演算増幅器(OPA)611に接続される。また、電極610は、コンデンサCE619を介して、増幅器(OPA)611の入力に接続される。
【0078】
表示電圧は、以下の式から分かるように、V
neuralを表す。
【数1】
【0079】
正弦波周波数でV
neuralを効果的に「再サンプリング」するために、高周波正弦波がV
refに適用される。その周波数では、入力コンデンサ(sC
E)のインピーダンスは一定であるため、電圧ゲインの周波数依存が排除される。
【数2】
【0080】
一実施形態では、電圧利得は、利得パラメータをScarrier=2×π×5kHz、CE=2pF、Cint=63fF、そしてtint=100μsに設定することによって、100に調整される。ノイズレベルは、100×100μm2のサイズ及び10kS/sのサンプリングレートで約5μVRMS以下である。したがって、一実施形態では、増幅器アレイは、タイミング回路やマルチプレクサ回路などの周辺回路を除き、3.2×3.2mm2である。
【0081】
他の実施形態によれば、増幅器は、電圧利得における周波数成分を無効化するコンデンサフィードバック増幅器を備える。こういった増幅器は、当技術分野では既知である。
【0082】
図6Bは、エイリアシングノイズの一因となる高周波を減衰させる固有フィルターのグラフ表示を示している。集積システムの固有フィルターは、エイリアシングノイズの原因となる高周波を減衰させる。カットオフ周波数は、SINCフィルターで予測されるように、10kS/sで4.4kHz以下である。
【0083】
図7Aは、1000チャネル増幅器アレイ712及び神経記録回路700の一部を示す。
図7Aにおける1000チャネル増幅器アレイ712の各増幅器は、電極を介した神経記録で使用するピコアンペア増幅器でもよい。この増幅器アレイ712の一部712Aは拡張されている。
【0084】
図7Bは、最先端の電気生理学増幅器Axopatch200Bと比較した場合における、
図7Aの設計されたCMOS増幅器のノイズスペクトル密度のグラフ表示750を示す。
【0085】
図8Aは、第一MINIシステム800Aを示す。本MINIシステム800Aは、図示されているバックプレーン211を有するMINIデバイス200Cと、リモートシステム850Aとを含む。MINIデバイス200Cは、対象者Sの脳870に埋め込まれた状態で示されている。このMINIデバイス200Cは、
図19に関連して説明するコンピューターシステムなどのリモートアナライザ875Aと通信するように構成されている。外部電源880は、MINIデバイス200Cに電力信号を提供するように構成されている。リモートシステム850Aは、これらリモートアナライザ875A及び外部電源880を含み得る。リモートシステム850Aは、1つのデバイスで構成されていてもよいし、2つの別個のデバイスで構成されていてもよい。リモートシステム850AとMINIデバイス200Cとの間の距離は、データ信号及び電力信号のワイヤレス通信の範囲によって制限され得る。いくつかの実施形態における通信では、遠隔測定法を使う。システム800Aは、例えば、MINIデバイス200Cが埋め込まれた被験者Sからモデルデータをとるために使用されてもよい。
【0086】
図8Bは、人工装具860と共に使用する第二MINIシステム800Bを示す。第二MINIシステム800Bは、外部電源880と人工装具860に取り付けられた又は埋め込まれた計算装置875Bとを含み得る遠隔システム850Bを含む。計算装置875Bは、プロセッサ、メモリ、メモリに記録された命令、及び/又は
図19のコンピューターシステムに関連して説明される1つ又は複数の他のコンポーネントを含み得る。人工装具860は、MINIデバイス200Cからのセンサー神経データに基づいて制御され得る1つ以上のアクチュエータ865を含んでもよく、リモートシステム850B及びMINIデバイス200Cは、それらの間の専用通信のためにペアリングされ得る。実施形態によっては、MINIデバイス200Cは、リモートシステム850A及び850Bと通信することが可能であってもよい。
【0087】
図9(a)から
図9(c)は、金電着を用いたオンチップ電極アレイの製造のステップを示す。
図9(a)におけるステップ900Aは、CMOSチップ上での直接電気めっきプロトコルを使用することを含み得る。
図9(a)に最もよく示されているように、最初に、上部金属層907が、アルミニウムエッチングによって除去される。この上部金属層907は、アルミニウム及び銅を含み得る。非限定例として、ステップ900Aにウェットエッチング方式を用いてもよい。
【0088】
図9(b)のステップ900Bは、ニッケル(Ni)層917を形成するためのニッケル(Ni)めっきを含み得る。例えば、Ni層は、電着を使用して付してもよい。
図9(c)におけるステップ900Cは、Ni層を金(Au)でめっきして金層927を形成することを含み得る。電気めっきのため、電流ミラー回路に基づく内部電流源回路がCMOS集積回路内に設計されており、めっきプロセスを通じて一定の電流が引き出される。結果的に、
図9(c)に示すように、自己整合電極アレイ210が作られた。
【0089】
図9(d)は、
図9(a)から
図9(c)のステップを使用して作成された電極に従ったオンチップ電気めっき電極を用いたドーパミン測定のグラフ表示950を示す。ここで、
図9(a)から
図9(c)で作成されたオンチップ記録のための電気めっき電極の品質のテストが行われた。
図9(a)から
図9(c)の電極をテストするため、500μMのドーパミン溶液がCMOSチップの表面に塗布された。これにより、
図9(d)に示すように首尾よく記録が得られた。ドーパミン測定は、これらの電極が意図されている活動電位測定を直接反映するものではなく、製造プロセスの安定性と有効性をテストするものである。
【0090】
図10(a)~
図10(b)は、電気めっき電極1045を、上面及びオンチップ電極を切断する集束イオンビーム(FIB)により得られた断面から見た場合の画像1000A及び1000Bを示している。FIBにより、ある角度からの走査型電子顕微鏡(SEM)画像をキャプチャして、オンチップ電極1045の断面を示すことができるのだが、電気めっきアプローチのマイナス面が観察された。本明細書に記載のMINIデバイスを製造するためのモノリシック集積方法をテストする際、電極の信頼性とロバスト性が追跡された。
図9(d)に示した測定成功をよそに、
図9(a)から
図9(c)におけるアプローチのテストには、安定性と信頼性が欠けていた。
図10(b)に関して、ピラー1035にピラー電極1045を作成するための電気めっきプロセスの画像1000Bには、不安定性を引き起こすことが示された。
図10(b)に示されるように、電極1045の電気メッキ金属とMINIデバイスのCMOSチップ又はダイ1003の間に小さなボイド1066(サブミクロン)がはっきりと見える。これは、電解液がボイドに漏れてMINIデバイスのCMOSチップ又はダイ1003に損傷を引き起こす可能性があるため、望ましくない。
【0091】
図12(a)から
図12(c)に関連して説明されるように、ここに記載されるポストCMOS手順は、標準的なフォトリソグラフィープロセスを使用して電極アレイ210(
図2D)のオンチップ電極1045を製造するために使用されてもよい。さらに、ポストCMOS手順を使用して、CMOSチップ1003上に1024個のオンチップ金電極を作製することができ、これは、
図13Aから
図13Bに関連して説明するように、活動電位測定に使用することができる。
図12(a)~
図12(c)は、平面電極及びSU-8ウェル1219Cのオンチップ集積のためのポストCMOS処理ステップに係る断面図を示す。CMOSチップの最上金属層は、ほとんどの従来のCMOSプロセスにおいてアルミニウム-銅合金だが、電解液に対するアルミニウムの反応性が高いため、バイオセンシングには適切ではない。これにより、電気生理学的記録でオフセットが大きくなり、ショットノイズが高くなるだけでなく、漏水によりチップが損傷する可能性も出てくる。金やプラチナなどの分極性電極材料は、反応性が低いため、電気生理学的記録により適している。
図11(a)から
図11(c)は、
図12(a)~
図12(c)で説明されるような平面電極及びSU-8ウェルのオンチップ集積のためのポストCMOS処理のステップに係る上面図を示す。そのため、
図11(a)から
図11(c)を
図12(a)から
図12(c)と併せて説明する。ここで、
図11(a)から
図11(c)のいくつかの参照番号は、これらの図に示されており、対応する参照番号は、同じ要素を参照しているが、これらの図の参照番号のいくつかは、
図11(a)から
図11(c)には示されていない。
【0092】
図11(a)及び
図12(a)は、CMOSダイ1203であって、その材料上に酸化物で作られた第一層1207を重ねた又は形成したものを作成することを含むステップ1100A/1200Aを示す。ピラー1235は、各電極に形成される。パッド1235の中心は、アルミニウム又はアルミニウムと銅の合金を含み得る第二(金属)層1215に向けて開放されている。第二層1215は、パッド1235及び第一(酸化物)層1207の形成前に、CMOSダイ1203上に堆積させてもよい。
図11(b)及び
図12(b)は、
図12(a)のCMOSダイが、ピラー1235及び第一(酸化物)層1207の一部の上に重ねられた第3層1217Bを有することを含むステップ1100B/1200Bを示す。第一層1207(
図12(a))の一部1212は、この重ねられた第二層1217Bを含まない。第二層1217Bは、金(Au)を含む。
【0093】
図11(c)及び
図12(c)は、
図12(b)のCMOSダイ1203が、リフトオフプロセスを用いてパターン化された第3層(金層)を有することを含むステップ1100C/1200Cを示しており、リフトオフプロセスの後には、第3層の一部及び第一層1207の一部1212の上に重ねられる第4層1219Cの製造が続く。第4層1219Cは、SU-8層であり得る。パッド内のチャネルも第4層1219Cで満たされる。ウェル1221Cは、SU-8層の一部に形成され、これも第3層1217C上に重なる。このウェル1221Cは、例えば、SU-8層1219Cを貫通し、金で作られた第3層1217Cに達する開口部である。
【0094】
図13Aは、様々なトレース幅にわたる一定結合係数のグラフ表示1300Aを示しており、
図13Bは、様々なスパイラル巻数にわたる一定結合係数のグラフ表示1300Bを示している。RF平面コイルは、無線電力伝達を提供し得る。また、このRF平面コイルは、角型スパイラルコイルを含み得る。ここでは、ANSYS高周波構造シミュレータ(HFSS)を用いて調査が行われた。誘導性リンクの電力伝達効率は、結合係数、インダクタンス、及び直列抵抗に依存する。そして、結合係数(k)は、距離、外径、内径、トレース幅(
図13A)、間隔、巻数(
図13B)の関数であることが知られている。パラメータの複雑な依存関係のため、2つのコイルの最適な組み合わせを決定することは困難な作業である。この分析において、発明者は、角型スパイラルコイルの結合係数に影響を与える多くのパラメータのうち、送信(TX)コイルと受信(RX)コイルの外径(OD)と内径(ID)が考慮すべき重要な要素であることを確認した。ODとIDが一定に保たれている限り、間隔、トレース幅、及び巻数は、結合係数にほとんど影響しない(
図13A及び
図13B)。この観察は、丸形スパイラルコイルの観察と一致している。
図14Aは、rxID/rxODまでの間隔(z)の関数としての角型スパイラルコイルの最適な幾何学的値のグラフ表示1400Aを示している。この観測を使い、広範囲のIDとODに基づく最適な結合係数をHFSSシミュレーションに基づいて示す。このデータを使用して、最適な角型スパイラルコイルのためのコイル設計方法とMatlabマクロが開発された。Matlabマクロは、製造能力による設計制約に関する入力パラメータを必要とし、これらのパラメータを使用して、受信コイルと送信コイルのデザインのすべての可能な組み合わせを数秒でスキャンし、最高の電力伝達効率をもたらす設計パラメータの組み合わせをアウトプットする。コイルは、標準のフォトリソグラフィを使用して製造してもよく、それで電力伝達効率を測定する。
【0095】
図14Bは、間隔(z)からtxOD/rxODまでの関数としての角形スパイラルコイルの最適な幾何学的値のグラフ表示1400Bを示す。
図14Cは、txID/txODまでの間隔(z)の関数としての角形スパイラルコイルの最適な幾何学的値のグラフ表示1400Cを示す。大きく黒い点は、特定のzで達成可能な最高のk(kmax)を表しており、各黒点がラインと交差する。各ラインには、0.9kmaxを超える幾何学的値を示す第一小点グループ及び0.9kmax未満の第二小点グループが存在する。0.9kmax未満の小点は、各ラインの上下のポイントに存在する。
図14Aにおいて、第一ラインの0.6以上の点は、第二小点グループである。第一ラインの残りの点は、第一小点グループである。第二ラインにおいて、同ラインの上3点と最後の7点は、第二小点グループの一部である。残りの小点は、第一小点グループの一部である。最大及び最小ポイントにおける各グラフは、第二小点グループの一つ以上の点を含む。
【0096】
図15Aは、標準的な0.35μmのCMOSプロセスで設計された1024チャネルのブレインマシーンインターフェースチップを含むMINIデバイス1500Aを示している。増幅器及び電極ペアアレイ1566は、32×32として示されている。ただし、その拡張性により、より多くの電極/増幅器のペアを追加できる。CMOSプロセスとMINIデバイス1500Aは、標準的な0.35μmのCMOSプロセスを用いて製造できる。MINIデバイス1500Aは、1000-チャネルモノリシックブレインマシーンインターフェースデバイスとして構成し得る。チップは、1566という参照番号が付された1024個のオンチップ増幅器及び1024個のオンチップ電極のペア、オンチップ無線電力コイル1530、オンチップ無線データコイル1531、送信機、電圧調整器、及び整流器を含み得る。
【0097】
図15Bは、
図15AのMINIデバイス1500Aのための増幅器及び電極ペアアレイ1566を示している。
図15Bに示される各増幅器及び電極ペアアレイ1566は、約70μm×70μmの面積を占めてもよく、チップ全体が約3.8mm×3.8mmを占める。ここではグランドGNDとクロックCLKが示されている。
【0098】
図16Aは、圧縮神経記録のためのデルタ変調器1600Aの概略図を示し、この概略図は、プリセット閾値を超える又は下回る電圧の変化が検出されたときに導線1633にリセットパルスをもたらす2つのコンパレーター1623及び1625を含む。典型的な神経記録システムは、電圧増幅器とアナログデジタルコンバーター(ADC)で構成されている。神経電位が電圧増幅器を用いて増幅され、ADCがデータ処理及び送信のためにアナログ値をデジタル値に変換する。ただし、この方法では、ADCにより消費電力が大きくなり、加えてADCのサイズにより面積が大きく使われるのだが、どちらも低電力のインプラントデバイスには好ましくない。典型的な神経記録システムとは異なり、上記MINIデバイスは、実施形態によっては、ADCを必要とせずに高いデータ圧縮能力を有するデルタ変調器を含み得る。
【0099】
電極1610で検出された神経信号V
neuronは、入力コンデンサ(C2)1641を介して入力電流I
neuronに生成される。この電流はフィードバックコンデンサ(C1)1639を介して積分され、出力電圧V
outを変化させる。この出力電圧V
outは、下記式で表すことが出来る。
【数3】
V
outノード1644は、2つのコンパレーター1623及び1625に接続される。これらは、検出サイクル中に、V
outにおけるΔV
thを超える増加又はΔV
thを下回る減少を検出する。コンパレーター1623は+ΔV
thを受け、コンパレーター1625は-ΔV
thを受ける。コンパレーター1623及び1625のそれぞれの出力は、ANDゲート1627に入力される。出力1629は、導線1633で、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり得るトランジスタ1631のゲートGに送られる。トランジスタ1631のソースSは、コンデンサ1641及び1639の間のノードに接続され、そこで電圧V
negが生じる。V
negノードは、第一端子でV
refを受けると共に第二端子でV
negを受けるコンパレーター1617に給電し、コンパレーター1617は、ノード1644で電圧V
outを生成する。
【0100】
図16Bは、幅厚デジタルパルス(すなわち、パルス1664、1668、及び1670)を引き起こすV
ref(範囲1652内)+ ΔV
th(範囲1658内)を超える電圧V
outの電圧上昇、及び幅薄デジタルパルス(すなわち、パルス1662、1666、及び1672)を引き起こすV
ref-ΔV
thを下回る電圧降下のグラフ表示1600Bを示す。範囲1652と1658は破線1656で区切られている。
図16Bには、パルス列1660で表される6サイクルの例が示されている。-V
neuronによるV
ref+ΔV
thを超えるV
outの電圧上昇は、幅圧パルス(1ビット×2)をもたらす。同様に、+ΔV
neuronによるV
ref-ΔV
thを下回る電圧降下は、幅薄パルス(1ビット×1)をもたらす。パルス幅は、記録されたΔV
neuronの極性を識別するために後で使用できる。閾値条件(V
ref±ΔV
th)のいずれかが満たされると、AND(1627)ロジックによりコンデンサ(C1)1639をリセットするようパルスが高くなり、V
out=V
neg=V
refを確立して新しい検出サイクルを再開する。
【0101】
図17Aは、デルタ変調器及び従来の神経記録システムに基づく神経信号サンプリング1700Aを示している。ここで、スパイクは、1mVの神経スパイクの例であり、三角(▲)は、デルタ変調器がサンプリングする場所を示し、バツ(×)は、従来のシステムがサンプリングする場所を示している。デルタ変調器のシミュレーション研究を
図17Aから
図17Cに示す。この研究では、1mVのピークを持つ活動電位例が、デルタ変調器と従来の神経記録システムに入力される。通常、皮質脳波記録法(ECoG)の測定では、30μV-5mVの神経スパイクが生じる。従来の神経記録システムは、
図17Aのバツ印(×)で示されるように、固定レートで神経信号をサンプリングする。デルタ変調器は電圧変化にのみ敏感であるため、ノイズによる微量なマイクロボルトの変動を測定しない。
図17Aでは、デルタ変調器のサンプリングが三角(▲)として示されている。
図17Bに示すように、各デルタ変調器のサンプルは、パルス列で1つ又は2つの1ビットパルスを即座に生成する。
【0102】
図17Bは、デルタ変調器のサンプルに基づく神経信号のサンプリングに基づいたパルス列1700Bを示す。この例では、デルタ変調器は57ビットのデータ又はパルス列を生成する。これは元の信号を高いマッチング精度で再構成するのに使用できる。
図17Cは、デルタ変調器のサンプルに基づく神経信号1700Cの再構成を示す。
図17Dは、定速サンプリングに基づく神経信号1700Dの再構成を示す。図からわかるように、信号1700Cと1700Dはほぼ一致している。ただし、通常の定速サンプリングでは、12ビットADCを使用すると仮定すると、588ビットのデータに対応する49サンプルが生成される。これはデータ圧縮の10倍以上である。各方法からの信号再構成の比較では、デルタ変調器からのスパイクにおいて元のグレー信号と同等又はより類似していることが分かる。したがって、デルタ変調器を使用すると、ひずみのない神経信号圧縮検知が実現できる。
【0103】
図18は、シンプルな演算増幅器(OPA)1809及び2つの疑似コンパレーター1839A及び1839Bを用いるデルタ変調器1800のコア回路概略図を示す。このデルタ変調器1800の回路デザインは、2つの条件を満たし得る。第一の条件は、デルタ変調器1800のサイズに関係し、小さい領域に収まるようにすることである。第二の条件が含むのは、内蔵バッテリーがなくMINIデバイスをワイヤレスで動作させる場合の最小電力消費である。このようなことから、MINIデバイスは、シンプルな演算増幅器(OPA)1809及び2つの疑似コンパレーター1839A及び1839Bを用いてもよい。
【0104】
複雑な演算増幅器(OPA)のデザインでは、高いゲイン及び帯域幅を有することができるが、電力消費が高く、大きい実装面積を必要とする。OPA1809の反転側と非反転側の間のミスマッチを最小限に抑えるには、入力トランジスタと負荷トランジスタに比較的大きな領域を与えることが望ましい場合がある。200V/Vまでのゲインと50kHzまでの帯域幅は、シンプルなOPAデザインで簡単に実現できるため、MINIデバイスは、5トランジスタベースのOPAを用いて、M1からM4として図示される大きな領域をトランジスタ専用にしてもよい。実施形態によっては、増幅器1819及び1829のような2段増幅器を用いて、全体的なゲインを5,000から16,000V/Vの間に設定することができる。シリコン領域を効率的に使用するため、半共用OPA1809を使用してもよい。ノード1822は、Vneuronとして図示される神経又は神経系の信号を受信する。トランジスタM1からM17は、MOSFETタイプのトランジスタでもよい。
【0105】
増幅器1819及び増幅器1829は、増幅器(OPA)1809の非反転側を共有し、この増幅器(OPA)1809は、M1、M2、及びM9として図示される複数のトランジスタを含み得る。増幅器1819は第一段増幅器であり、コンデンサC10及びC11を備えたトランジスタM3、M4及びM7を含み得る。コンデンサC10は、ノードVout1及びトランジスタM4のゲートに接続される。トランジスタM3及びM4のドレインは、共にノードVout1に接続される。トランジスタM7のドレインは、ノードVout1に接続される。トランジスタM7及びM8のソースには、電圧Vrefがかかる。トランジスタM7及びM8のゲートは、パルス信号を受信する。トランジスタM2及びM9のゲートには、それぞれ電圧Vref及びVbnがかかる。バイアス電圧Vbnは約0.5Vでよく、チップ内部で設定してもよい。トランジスタM2のソース及びトランジスタM9のドレインは互いに接続され、そしてトランジスタM4及びM6のソースに接続される。
【0106】
増幅器1829は、トランジスタM5、M6並びにM8及びコンデンサC12並びにC13を有する第二段増幅器である。トランジスタM5及びM3は、そのゲートがトランジスタM1のゲートに繋がる。増幅器1819及び1829は、通常、互いにミラー化される。しかしながら、ノード1822は、コンデンサC11を介してトランジスタM4のゲートに接続される。またトランジスタM3、M4及びM7のドレインにおける電圧Vout1のノードもノード1832に接続されてもよい。
【0107】
Vout2のノードは、トランジスタM5、M6及びM8のドレインに繋がる。コンデンサC12は、Vout2ノードとトランジスタM6のゲートに接続される。電圧Vout2は、疑似コンパレーター1839A及び1839BのトランジスタM10及びM15のゲートにそれぞれ接続される。
【0108】
コンパレーターは通常、完全差動増幅器を用いて作られるが、これは電力と面積を大きく使う可能性がある。そのため、代わりにトランジスタM10からM17を含む第一及び第二の疑似コンパレーター1839A及び1839Bを使用してもよい。これには、低電力用に弱から中程度の反転で動作する2つのカスケードコモンソース増幅器が含まれる。第一の疑似コンパレーター1839Aの利点は、トランジスタのサイズ変動に対する許容度が低い完全差動増幅器とは対照的に、トランジスタサイズのプロセス変動の性能への影響が最小限であることだろう。
【0109】
トランジスタM14及びM15のドレインは、トランジスタM17のゲートに接続される。トランジスタM14及びM16のゲートには、電圧+Vbpがかかる。トランジスタM16及びM17のドレインは、NANDコンポーネント(図示せず)を介すなどして、トリガ2を生成し得る。バイアス電圧Vbpもチップ内部で設定される。
【0110】
トランジスタM10及びM11のドレインは、トランジスタM12のゲートに接続される。トランジスタM11及びM13のゲートには、電圧-Vbnがかかる。トランジスタM12及びM13のドレインは、NANDコンポーネントを介すなどして、トリガ1を生成し得る。
【0111】
トランジスタM10からM13を含む第一の疑似コンパレーター1839Aは、高閾値(Vref+ΔVth)用であり、トランジスタM14~M17を含む第二の疑似コンパレーター1839Bは、低閾値(Vref-ΔVth)用である。例えば、NANDゲート(図示せず)を使用して、トリガ1及びトリガ2として図示される信号両方を合成することで、パルスが生成される。いずれかの閾値条件が満たされた場合、早期リセットを回避するために、パルスは一定期間高くある必要がある。これを達成するため、ラッチとDフリップフロップを使用してもよい。電圧Vthは閾値電圧である。
【0112】
デルタ変調器の推定電力消費は、3.3V電力以下で、200nAのバイアスを増幅器(OPA)1809にかけ、50nAのバイアスを各共通ソース増幅器にかけた状態で、多くとも700nW(ナノワット)である。デジタル回路の電力消費は、アナログ回路と比較して、無視してもよい程度であると予想できる。
【0113】
上記神経感知回路及び無線電力伝送は、ニューラルインターフェースだけでなく他のセンサーアプリケーションにも波及できる。ここでの実施形態は、半共有構造を用いた低電力感知回路を使用してもよい。この回路トポロジーは、高スループットのアプリケーションにも適用でき、効果的に消費電力を半分にする。この効率的で低電力の増幅器のデザインは、電力を維持するために半共有構造を採用している。
【0114】
感覚皮質及び一次運動皮質における大規模のニューロン集団の長期記録は、詳細情報を神経信号にコード化し、明らかなものとする。また、高スループットのBMIデバイスで皮質を刺激することにより認知及び運動行動を回復するということについて、研究の指針となる。こういったデバイスにおいて、情報の質というものは測定/刺激される神経信号の密度と解像度に依存する。したがって、MINIデバイスは、大規模な記録機能と高スループット用に構成されたブレインマシーンインターフェースを提供する。
【0115】
図19は、本実施形態のシステムに用いることが可能なコンピューターシステム1900のハードウェアを示すブロック図である。このコンピューターシステム1900は、当該コンピューターシステム1900の他の内部コンポーネントと外部コンポーネントとの間で情報の受け渡しを行うバス1910などの通信機構を含む。ここで使用されるコンピューターデバイスについては、そのコンポーネントが、本コンピューターシステム1900のコンポーネントより少なくてもよい。情報は、測定可能な現象の物理的信号として示され、典型的には電圧であるが、他の実施形態においては、磁気的、電磁気的、圧力的、化学的、分子原子的、及び量子化学的な相互作用などの現象を含む。例えば、北向き及び南向きの磁場の強さ、又はゼロ及びゼロ以外の電圧は、2進数(ビット)の2つの状態(0、1)を示す。他の現象は、より高次の桁を示し得る。測定前の複数の同時量子状態の重ね合わせは、量子ビット(量子ビット)を示す。1つ以上の数のシーケンスは、文字のための数又はコードを表すために使用されるデジタルデータを構成する。実施形態によっては、アナログデータと呼ばれる情報は、特定の範囲内の測定可能な値の実質的な連続体によって表される。コンピューターシステム1900又はその一部は、ここに記載の一又は複数の方法の一又は複数のステップを行う手段を構成する。例えば、ここに記載の製造ステップは、基板(シリコンベースの基板)、TSV、電極、コイル、IC層、電着、めっき、エッチングなどの形成を行うマシンが、ここに記載のMINIデバイスを製造するかたちで、コンピューターで実施されてもよい。他のコンピューターによる実施方法は、MINIデバイスによって神経信号を感知し、その信号を試験、較正、トラブルシューティングなどのために分析デバイスに通信することを含み得る。他のコンピューターによる実施方法は、被験者の神経信号を感知し、これらの神経信号を計算モジュールと制御アクチュエータを含む人工装具に通信することを含み得る。人工装具は、神経信号を分析し、当該人工装具の一又は複数の制御アクチュエータを制御して、この人工装具の操作及び/又は動作を自動的に制御し得る。
【0116】
2進数のシーケンスは、文字のための数又はコードを表すために使用されるデジタルデータを構成する。バス1910は、情報がバス1910に接続されるデバイス間で迅速に転送されるように、情報の多くの平行導体を含む。情報を処理するための一又は複数のプロセッサ1901は、バス1910に接続される。プロセッサ1901は、情報に対して一連の動作を行う。これらの一連の動作は、バス1910内から情報を取り出すこと、及びバス1910上に情報を配することを含む。また、これらの一連の動作は、典型的には、二以上の単位の情報を比較すること、数単位の情報の位置を変えること、及び二以上の単位の情報を加算及び乗算などによって組み合わせることも含む。プロセッサ1901によって実行される操作のシーケンスは、コンピューター命令を構成する。
【0117】
本コンピューターシステム1900は、バス1910に接続されたメモリ1904も含む。このランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的記憶装置などのメモリ1904は、コンピューター命令を含む情報を記憶する。ダイナミックメモリは、そこに記憶された情報がコンピューターシステム1900により変更可能なものである。RAMは、メモリアドレスと呼ばれる個所に記憶された一情報が、隣接するアドレスの情報とは独立して記憶され、そして取得されることを可能にする。また、メモリ1904は、コンピューター命令の実行中に、一時的な値を記憶するためにプロセッサ1901により使用される。また、本コンピューターシステム1900は、当該コンピューターシステム1900によって変更されない命令を含む静的情報を記憶するためのバス1910に接続される読み出し専用メモリ(ROM)1906、不揮発性永続的記憶装置、又は静的記憶装置も含む。このROM1906は、セキュアバイトアドレス可能メモリ(ストレージ)デバイス又はファイル直接アクセス(DAX)メモリデバイスでもよい。バス1910には、命令などの情報を記憶し、コンピューターシステム1900の電源が切られたとき又は停電時でも動作が続く磁気ディスク又は光ディスクなどの不揮発性(永続的)記憶装置1908も接続される。
【0118】
命令などの情報は、人間のユーザーによって操作される英数字キーを含むキーボード又はセンサーなどの外部入力装置1912から、プロセッサ用バス1910に提供される。センサーは、近傍の状態を検出し、検出したものを、コンピューターシステム1900において情報を表すために用いられる信号と互換性のある信号へと変換する。他の外部装置であって、バス1910に接続され、主に人間とやりとりするために使用されるものには、画像を表示するための陰極線管(CRT)又は液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ装置1914や、ディスプレイ1914に表示される小さなカーソル画像の位置を制御したり、ディスプレイ1914に表示されるグラフィック要素に関連するコマンドを出力するためのマウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのポインティングデバイス1916などがある。
【0119】
図示の実施形態では、特定用途向け集積回路(IC)1920のような特殊な用途のハードウェアが、バス1910に接続されている。この特殊用途のハードウェアは、特殊用途に十分な速さで、プロセッサ1901では行われない作業を行うように構成されている。特定用途向けICの例としては、ディスプレイ1914用の画像を生成するためのグラフィックスアクセラレータカード、ネットワークを介して送信されるメッセージを暗号化及び復号化するための暗号ボード、ハードウェアにおいてより効率的に実施されるいくつかの複雑な操作のシーケンスを繰り返し行うロボットアーム及び医療スキャン設備のような特別な外部装置に対するインターフェースなどがある。
【0120】
本コンピューターシステム1900は、バス1910に接続される一以上の通信インターフェース1970のインスタンスも含む。通信インターフェース1970は、自身のプロセッサで動作するプリンター、スキャナー、及び外部ディスクなどの種々の外部装置に接続して、双方向通信を提供し得る。通常、この接続には、プロセッサを有する種々の外部装置が接続されるローカルネットワーク1980に繋がるネットワークリンク1978が用いられる。例えば、通信インターフェース1970は、パソコンのパラレルポート、シリアルポート、又はユニバーサルシリアルバス(USB)ポートであってもよい。実施形態によっては、通信インターフェース1970は、統合サービスデジタル通信網(ISDN)カード、デジタル加入者回線(DSL)カード、又は対応するタイプの電話線に情報通信接続を提供する電話モデムであり得る。いくつかの実施形態では、通信インターフェース1970は、バス1910上の信号を、同軸ケーブルを介する通信接続のための信号又は光ファイバーケーブルを介する通信接続のための光信号へと変換するケーブルモデムであり得る。他の例では、通信インターフェース1970は、ローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよく、イーサネット(登録商標)などの互換性のあるLANにデータ通信接続を提供する。無線接続が行われてもよい。電波、光波、及び赤外線波を含む音波及び電磁波などの搬送波は、ワイヤ又はケーブルを用いずに、空間を進む。信号は、搬送波の振幅、周波数、位相、偏光、又は他の物理特性の人為的な変動を含む。無線接続では、通信インターフェース1970は、デジタルデータなどの情報ストリームを送るための赤外線信号及び光信号を含む電気的、音響的又は電磁気的な信号を送受信する。実施形態によっては、通信インターフェース1970は、MINIデバイスから通信を受信するためのテレメトリリンク通信と互換性がある。
【0121】
本明細書において、「コンピューター可読媒体」という用語は、プロセッサ1901に対する実行命令などの情報の提供に関与する媒体を指すのに用いられる。そういった媒体は、限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体などの多くの形態を取ってもよい。不揮発性媒体は、例えば、記憶装置1908などの光又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、例えば、ダイナミックメモリ1904を含む。伝送媒体は、例えば、同軸ケーブル、銅線、光ファイバーケーブル、及び電波、光波、及び赤外線波を含む音波及び電磁波などの、ワイヤ又はケーブルを用いることなく空間を進む波を含む。また、「コンピューター可読記憶媒体」という用語は、伝送媒体を除いた、プロセッサ1901への情報提供に関与する媒体を指すのに用いられる。
【0122】
コンピューター可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、コンパクトディスクROM(CD-ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)、他の光媒体、パンチカード、紙テープ、他の孔パターンを有する物理媒体、RAM、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、フラッシュEPROM、他のメモリチップ又はカートリッジ、搬送波、又はコンピューターが読み込むことができる他の媒体を含む。ここで、「非一時的コンピューター可読記憶媒体」という用語は、搬送波及び他の信号を除く、プロセッサ1901への情報提供に関与する媒体を指すのに用いられる。
【0123】
一以上の有形媒体内にエンコードされたロジックは、ASIC1920のようなコンピューター可読記憶媒体及び特殊な用途のハードウェアへのプロセッサ命令の1つ又は両方を含む。
【0124】
ネットワークリンク1978は、典型的には、1つ以上のネットワークを介して、情報を使用又は処理する他の装置へ情報通信を提供する。例えば、ネットワークリンク1978は、ローカルネットワーク1980を介して、ホストコンピューター1982又はインターネットサービスプロバイダ(ISP)にオペレートされる機器1984へ接続を提供してもよい。同様に、ISP機器1984は、現在一般的にインターネット1990と呼ばれるネットワークの公共のワールドワイドパケット交換通信ネットワークを介して、データ通信サービスを提供する。インターネットに接続されたサーバ1992と呼ばれるコンピューターは、インターネットを通じて受信した情報に応じてサービスを提供する。例えば、サーバ1992は、ディスプレイ1914に表示される映像データを表す情報を提供する。
【0125】
本発明は、ここに記載された技術のいくつかを実施するためのコンピューターシステム1900の使用に関する。本システム1900は、MINIデバイス200Aにより記録又は感知された神経信号を分析するために使用され得る。本発明の一実施形態によれば、これらの技術は、メモリ1904に含まれる一以上の命令の一以上のシーケンスを実行するプロセッサ1901に応じて、コンピューターシステム1900により実行される。ソフトウェア及びプログラムコードとも呼ばれるこのような命令は、記憶装置1908のような別のコンピューター可読媒体からメモリ1904へと読み込まれてもよい。メモリ1904に含まれる命令のシーケンスの実行は、ここに記載の方法の工程の一つ以上を、プロセッサ1901に行わせる。例えば、製造方法は、指定マシン又はCMOS製造装置に、材料のパターニング、電気めっき、エッチング、積層などを行わせるようコンピューターで実施することができる。代替的な実施形態において、特定用途向け集積回路1920のようなハードウェアは、本発明を実施するためのソフトウェアの代わりに、又はそれと組み合わせて使用されてもよい。したがって、本発明の実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアの特定の組み合わせに限定されない。
【0126】
通信インターフェース1970を介してネットワークリンク1978及び他のネットワークを通じて送信される信号は、情報をコンピューターシステム1900へ、又はコンピューターシステム1900から送る。コンピューターシステム1900は、ネットワークリンク1978及び通信インターフェース1970を介し、そして、とりわけネットワーク1980及び1990を通じて、プログラムコードを含む情報を送受信し得る。インターネット1990を使用する例において、サーバ1992は、インターネット1990、ISP機器1984、ローカルネットワーク1980、及び通信インターフェース1970を介して、コンピューター1900からのメッセージにより要求される特定用途のためのプログラムコードを送信する。受信されたコードは、そのままプロセッサ1901によって実行されるか、後で実行するために記憶装置1908もしくは他の不揮発性記憶装置に記憶されるか、あるいはその両方であってもよい。このようにして、コンピューターシステム1900は、搬送波上で信号の形態にあるアプリケーションプログラムコードを得てもよい。
【0127】
コンピューター可読媒体の種々の形態が、一以上の命令のシーケンス、データ、又はその両方をプロセッサ1901に送って実行することに関与し得る。例えば、命令及びデータは、最初、ホスト1982などのリモートコンピューターの磁気ディスクで送られてもよい。リモートコンピューターは、命令及びデータをそのダイナミックメモリへとロードし、モデムを使用して、電話線を通じて送信する。コンピューターシステム1900固有のモデムは、電話線を通じて命令及びデータを受信し、赤外線送信機を用いて、ネットワークリンク1978として機能する赤外線搬送波の信号に変換する。通信インターフェース1970として機能する赤外線検出器は、赤外線信号で送られた命令及びデータを受信し、命令及びデータの情報をバス1910に配する。バス1910は、メモリ1904へ情報を送り、そこからプロセッサ1901が命令を取得し、命令と共に送信されたデータの一部を用いて命令を実行する。メモリ1904に受信された命令及びデータは、プロセッサ1901によって実行される前又は後に、記憶装置1908に随意に記憶されてもよい。
【0128】
図20は、人工装具860に用いるプログラム命令(アプリケーション)2000を示す。このアプリケーション2000は、人工装具860又はリモートコンピューターシステム875Aに神経信号受信制御2005のための命令を提供し得る。神経信号受信制御2005の命令は、受信機による受信制御及び変調データ信号の復調又は再構成を含み得る。アプリケーションは、神経信号逆多重化制御2010の命令を含んでもよく、それによりTDMAなどの多重プロトコルに基づいて多重化されたデータ信号の逆多重化が行われる。また、アプリケーション2000は、逆多重化された神経信号の分析2015を行うための命令を含み得る。電極の数に応じ、アレイの各電極から得られた信号は個々に多重化され、それにより、これらの感覚皮質及び/又は一次運動皮質に関連する神経信号を分析しつつ人工装具を用いるなどして運動機能を回復する(
図8B)。実施形態によっては、神経信号制御命令は、認知制御の強化又は提供を支援し得る。
【0129】
上記命令は、運動神経信号応答のモデルのトレーニング2020を行うための命令を含み得る。モデルは、最初に、類似の運動不全を有する対象集団に基づいて得てもよく、そして/又は、対象者により得られた神経信号からオペレーション中にトレーニングされ得る。トレーニングは、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、又はその他のコンピューター学習システムによって実行し得る。また、命令は、神経信号応答(単数又は複数)の予測2025を行うための命令を含み得る。電極アレイ210から受信された神経信号の収集は、現在の一連の神経信号に対する神経信号応答を予測するために使用され得る。理解されるであろうが、神経信号は継続的に更新され、さらなる予測を必要とする。また、命令は、装具制御2030を行うための命令を含み得る。また、命令は、アクチュエータ1の制御20351の命令からアクチュエータXの制御2035Xの命令を含み得る。ここで、Xは、1より大きい整数であり、人工装具に組み込まれるアクチュエータの数に対応する。
【0130】
図8Bに関連して説明したとおり。人工装具は、ヒンジ式関節などのように、アクチュエータコントローラーを介し自動関節運動が可能であってもよい。装具の制御2030を行うための命令は、どの時点においても一又は複数のアクチュエータを制御し得る。この例では、下肢人工装具が示されている。いずれかの時点で、命令は、神経信号の収集に基づいて一又は全てのアクチュエータを制御し得る。
【0131】
逆多重化された神経信号の分析2015を行うための命令は、人工装具によっては、腕及び/又は脚などのための歩行プロファイルを含み得る。当該腕は、指関節アクチュエータを備えた指、手首アクチュエータを備えた手首、肘アクチュエータを備えた肘、及び肩アクチュエータを備えた肩のうちの1つ又は複数を含み得る。当該脚は、足指アクチュエータを備えた足、足首アクチュエータを備えた足首、膝アクチュエータを備えた膝、及び腰アクチュエータを備えた腰のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0132】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。ここで用いられているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明らかに他が示されない限り、複数形も含むことを意図する。さらに、「including」、「includes」、「having」、「has」、「with」、又はその変形については、「詳細な説明」又は「請求項」のいずれかで使用されている限り、「comprising」という用語と同様に包括的なものである。さらに、特に明記しない限り、第一、第二などの用語の使用は、順序又は重要性を示すものではなく、第一、第二などの用語は、ある要素を別の要素から区別するために使用されるものである。
【0133】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の実施形態が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術についての文脈における意味と一致する意味を持つものとして解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義されていない限り、理想化された、又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0134】
開示された様々な実施形態について上に説明されたが、限定ではなく例としてのみ提示されたと理解されるべきである。ここに開示された内容への多くの変更、省略及び/又は追加は、実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される実施形態に従って行うことができる。また、実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態の要素と均等物を置き換えることができる。さらに、特定の特徴は、いくつかある実装形態のうちの1つのみに関して開示されているかもしれないが、そういった特徴は、所定又は特定の用途に望まれる又は有利であるかたちで、他の実装形態の一又は複数の特徴と組み合わせてもよい。さらに、特定の状態又は材料を実施形態の教示に適合させるためとして、多くの修正を、実施形態の範囲から逸脱することなく、行ってもよい。
【0135】
さらに、ここに記載の要約は、米国特許商標庁及び公衆、一般的に及び特に、特許又は法的な用語又は表現に精通していない当該技術分野の科学者、エンジニア及び実務者が、この技術的開示の性質と本質を一見してすぐに理解判断することができるようにする事を目的としている。この要約は、決して本開示の範囲に関して限定することを意図するものではない。
【0136】
したがって、ここに提供されている内容の幅及び範囲は、上記で明示的に説明された実施形態のいずれによっても制限されるべきではない。むしろ、実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従って定義されるべきである。
【0137】
参考文献
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