(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】スペクトル解析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20230705BHJP
G01N 23/2209 20180101ALI20230705BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N23/2209
(21)【出願番号】P 2021048914
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越谷 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】村野 孝訓
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-083109(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121918(WO,A1)
【文献】特開2002-329473(JP,A)
【文献】特開2014-041065(JP,A)
【文献】特開2014-173864(JP,A)
【文献】特開平10-197457(JP,A)
【文献】特開2021-047154(JP,A)
【文献】NILSSON, P.O. et al.,An ultrathin buried Si layer in GaAs studied by soft X-ray emission spectroscopy and surface X-ray diffraction: theory and experiment,Journal of Alloys and Compounds,1999年,Vol. 286, Issues1-2,p.31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光情報
及びそれらに対応付けられた
複数のピークエネルギー列が登録されるデータベースと、
サンプルから取得された
軟X線スペクトルである実スペクトルに対して、前記
複数のピークエネルギー列に基づく
複数の計算スペクトルをフィッティング
し、前記複数の計算スペクトルの中で前記実スペクトルに類似する特定の計算スペクトルを特定するフィッティング部と、
前記特定の計算スペクトルに対応する
特定の発光情報に基づいて前記サンプルを分析する分析部と、
を含み、
前記データベースにおいて、前記各ピークエネルギー列に対して、前記発光情報として、発光を生じさせた元素を特定する情報、発光の種類を特定する情報、発光を生じさせた元素を含む化合物を特定する情報、及び、化合物の結晶構造を特定する情報が対応付けられており、
前記分析部は、前記サンプルにおいて発光を生じさせた元素、前記サンプルにおいて生じた発光の種類、前記サンプルにおいて発光を生じさせた元素を含む化合物、及び、その化合物の結晶構造を特定する、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項2】
請求項1記載のスペクトル解析装置において、
前記フィッティング部は、
前記ピークエネルギー列ごとに、
前記ピークエネルギー列を構成する1又は複数のピークエネルギーに基づいて、前記計算スペクトルを構成する1又は複数の関数のエネルギー位置を定め、
前記計算スペクトルが前記実スペクトルに近付くように、前記計算スペクトルを構成する1又は複数の関数の形態を調整する、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項3】
請求項
2記載のスペクトル解析装置において、
前記各関数は山状の形態を有し、
前記フィッティング部は、前記ピークエネルギー列を構成する各ピークエネルギーに対し、前記計算スペクトルを構成する各関数の頂点のエネルギー位置を対応させる、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項4】
請求項1記載のスペクトル解析装置において、
前記発光情報ごとに、前記発光情報に基づいて前記ピークエネルギー列を生成し、前記発光情報及び前記ピークエネルギー列を前記データベースに登録するデータベース作成部を含む、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項5】
請求項
4記載のスペクトル解析装置において、
前記データベース作成部は、
前記発光情報に基づいて電子の状態密度分布を生成し、
前記電子の状態密度分布から前記ピークエネルギー列を生成する、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項6】
請求項
5記載のスペクトル解析装置において、
前記データベース作成部は、
前記電子の状態密度分布に対して広がり関数を適用することにより広がり波形を生成し、
前記広がり波形に含まれる1又は複数のピークを検出し、
前記1又は複数のピークに基づいて前記ピークエネルギー列を特定する、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項7】
請求項
5記載のスペクトル解析装置において、
前記電子の状態密度分布には、価電子帯内の外殻電子軌道における電子の状態密度分布が含まれ、
前記外殻電子軌道は、特性X線を生じさせる電子遷移における遷移元の軌道である、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項8】
請求項
7記載のスペクトル解析装置において、
前記電子の状態密度分布には、更に、内殻電子軌道における電子の状態密度分布が含まれ、
前記内殻電子軌道は前記電子遷移における遷移先の軌道である、
ことを特徴とするスペクトル解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル解析装置に関し、特に、サンプルから取得された実スペクトルに対して計算スペクトルをフィッティングすることによりサンプルを分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルから放出された信号(X線、光電子、紫外光等)を分光することによりスペクトルを生成し得る。そのスペクトルの解析によりサンプルが分析される。スペクトルの一例として、特性X線スペクトルが挙げられる。近年では、軟X線領域に属する特性X線のスペクトルを測定できる分光計が実用化されている。軟X線領域は、例えば、数百eV以下又は百eV以下のエネルギー帯である。そのエネルギー帯のスペクトルには、価電子帯(外殻電子軌道)から内殻電子軌道への電子遷移により生成された特性X線を示すピークが含まれる。そのピークの解析により、サンプルにおける化学的結合状態(分子構造、結晶構造)等を解明し得る。軟X線スペクトルを測定しそれを解析する手法は、軟X線発光分光法(Soft X-ray Emission Spectroscopy)とも言われている。
【0003】
様々な化合物から取得された様々なスペクトルがデータベースに登録されている場合、そのデータベースに登録されたスペクトル群とサンプルから取得されたスペクトルとを突き合わせることにより、サンプルを同定し得る(フィンガープリント法)。しかし、多くのスペクトルの取得が困難である場合、あるいは、データベース上に多くのスペクトルが未だ登録されていない場合、上記手法を用いることは困難である。例えば、軟X線領域に属する特性X線に関しては、現状において、十分な個数のスペクトルを未だ取得できていない状況にある。なお、多数のスペクトルが既に蓄積されている場合であっても、新しいスペクトル解析技術を実現することは、科学技術の進歩にとって有意義である。
【0004】
特許文献1,2にはスペクトル解析方法が記載されているが、それらの文献には、理論的に演算されたピーク情報を利用するスペクトル解析技術については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-53639号公報
【文献】特開平1-141345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新しいスペクトル解析技術を実現することにある。あるいは、本発明の目的は、多数のスペクトルを取得できていない状況においても、サンプルから取得されたスペクトルの解析を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスペクトル解析装置は、発光情報に対応付けられたピークエネルギー列が登録されるデータベースと、サンプルから取得された実スペクトルに対して、前記ピークエネルギー列に基づく計算スペクトルをフィッティングするフィッティング部と、前記計算スペクトルがフィッティング条件を満たす場合に、前記計算スペクトルに対応する前記発光情報に基づいて前記サンプルを分析する分析部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
実施形態に係るデータベース作成方法は、発光情報に基づいて電子の状態密度分布を演算する工程と、前記電子の状態密度分布又はそれから生成された波形に含まれる1又は複数のピークを検出する工程と、前記検出された1又は複数のピークに基づいてピークエネルギー列を特定する工程と、サンプルから得られた実スペクトルに対して比較される計算スペクトルを生成するためのデータベースに対し、前記ピークエネルギー列を登録する工程と、を含み、前記ピークエネルギー列は、前記計算スペクトルを構成する1又は複数の関数のエネルギー位置を定めるものである、ことを特徴とする。
【0009】
実施形態に係るプログラムは、情報処理装置において実行されるプログラムであって、発光情報に対応付けられたピークエネルギー列を取得する機能と、サンプルから取得された実スペクトルに対して、前記ピークエネルギー列に基づく計算スペクトルをフィッティングする機能と、前記計算スペクトルがフィッティング条件を満たした場合に、前記計算スペクトルに対応する前記発光情報に基づいて前記サンプルを分析する機能と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新しいスペクトル解析技術を提供できる。あるいは、本発明によれば、多数のスペクトルを取得できていない状況においてもサンプルから取得されたスペクトルの解析を行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るスペクトル測定システムを示すブロック図である。
【
図3】演算制御部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】複数のDOS分布から生成された複数の広がり波形を示す図である。
【
図9】2つのDOS分布、装置関数及び広がり波形の相互関係を示す図である。
【
図10】データベース作成方法を示すフローチャートである。
【
図11】スペクトル解析方法を示すフローチャートである。
【
図12】変形例に係る演算制御部を示すブロック図である。
【
図13】変形例に係るデータベースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係るスペクトル解析装置は、データベース、フィッティング部、及び、分析部を有する。データべ―スには、発光情報に対応付けられたピークエネルギー列が登録される。フィッティング部は、サンプルから取得された実スペクトルに対して、ピークエネルギー列に基づく計算スペクトルをフィッティングする。分析部は、計算スペクトルがフィッティング条件を満たす場合に、計算スペクトルに対応する発光情報に基づいてサンプルを分析する。
【0014】
上記構成によれば、データベースに登録されたピークエネルギー列に基づいてフィッティング用の計算スペクトルを生成し得る。フィッティング用のスペクトルが取得できていない状況下においても、スペクトルフィッティングを行える。ピークエネルギー列には発光情報が対応付けられており、その発光情報に基づいてサンプルの分析を行える。
【0015】
実スペクトルからピークエネルギー列が特定されてもよいが、実施形態においては、発光情報に基づいてピークエネルギー列が理論的に演算される。この方法によれば、多様な発光に対応した多様なピークエネルギー列を容易に生成し得る。
【0016】
実施形態において、データベースには、複数の発光情報に対応する複数のピークエネルギー列が登録される。複数のピークエネルギー列に基づいて複数の計算スペクトルが生成される。スペクトル解析に際しては、サンプルから得た実スペクトルに対して個々の計算スペクトルがフィッティングされる。その際、例えば、実スペクトルと各計算スペクトルの間で類似度が演算される。その場合、フィッティング条件を満たす計算スペクトルは、例えば、最高の類似度を生じさせた計算スペクトルであり、あるいは、所定値以上の類似度を生じさせた計算スペクトルである。フィッティング条件を満たした計算スペクトルから特定される発光情報に基づいて、サンプルが分析される。例えば、元素、発光種別、化合物、結晶構造、等が分析されてもよい。サンプルから取得される実スペクトルの概念には、特性X線スペクトル、蛍光X線スペクトル、光電子スペクトル、紫外光スペクトル、等が含まれ得る。
【0017】
実施形態において、発光情報は複数の項目により構成される。複数の項目には、発光を生じさせた元素、及び、発光の種類が含まれる。発光の種類は、例えば、特性X線の種類である。複数の項目には、更に、発光を生じさせた元素を含む化合物、及び、化合物の結晶構造が含まれる。
【0018】
実施形態において、フィッティング部は、ピークエネルギー列を構成する1又は複数のピークエネルギーに基づいて、計算スペクトルを構成する1又は複数の関数のエネルギー位置を定める。フィッティング部は、計算スペクトルが実スペクトルに近付くように、計算スペクトルを構成する1又は複数の関数の形態を調整する。ピークエネルギーは、ピークを代表する点(頂点、重心点、中心点等)の位置つまりエネルギーである。
【0019】
実施形態において、各関数は山状の形態を有する。フィッティング部は、ピークエネルギー列を構成する各ピークエネルギーに対し、計算スペクトルを構成する各関数の頂点のエネルギー位置を対応させる。例えば、各ピークエネルギーに各関数の頂点のエネルギー位置を一致させる。個々の関数の強度、半値幅等のパラメータ群を調整することにより、実スペクトルに対して計算スペクトルがフィッティングされる。
【0020】
実施形態に係るスペクトル解析装置は、データベース作成部を有する。データベース作成部は、発光情報に基づいてピークエネルギー列を生成し、発光情報及びピークエネルギー列をデータベースに登録する。
【0021】
実施形態において、データベース作成部は、発光情報に基づいて電子の状態密度分布を生成する。データベース作成部は、電子の状態密度分布からピークエネルギー列を生成する。
【0022】
実施形態において、データベース作成部は、電子の状態密度分布に対して広がり関数を適用することにより広がり波形を生成する。データベース作成部は、広がり波形に含まれる1又は複数のピークを検出する。データベース作成部は、1又は複数のピークに基づいてピークエネルギー列を特定する。
【0023】
広がり関数を実験により求めてもよい。スペクトルフィッティング実績に基づいて広がり関数が修正されてもよい。データベースに対して、解析対象となった実スペクトルや解析で使用した関数パラメータセットが登録されてもよい。
【0024】
実施形態において、電子の状態密度分布には、価電子帯内の外殻電子軌道における電子の状態密度分布が含まれる。外殻電子軌道は、特性X線を生じさせる電子遷移における遷移元の軌道である。実施形態において、電子の状態密度分布には、更に、内殻電子軌道における電子の状態密度分布が含まれる。内殻電子軌道は電子遷移における遷移先の軌道である。
【0025】
外殻電子軌道から内殻電子軌道への電子遷移により軟X線が生じる。その軟X線のスペクトルは、外殻電子軌道上の電子状態及び内殻電子軌道上の電子状態を反映したものであると考えられる。外殻電子軌道上の電子状態は、周囲元素の電子構造又は電子状態の影響を受けて変化する。一方、内殻電子軌道上の電子状態にはそのような変化はあまり認められない。よって、実施形態においては、ピークエネルギー列の特定に際し、少なくとも、外殻電子軌道上の電子状態が考慮される。
【0026】
実スペクトルの形態は、電子遷移確率、X線検出効率、試料状態、検出器のエネルギー特性、検出器の応答性、等の様々な要因によって変化する。このため、実スペクトルに一致する計算スペクトルを理論的に演算することは容易ではない。その一方、実スペクトルにおける複数のピークエネルギー(複数の実ピークエネルギー)に相当する複数のピークエネルギー(複数の計算ピークエネルギー)を理論的に演算することは可能であり、そのことは、本発明者らの実験により確かめられている。
【0027】
実施形態に係るデータベース作成方法は、演算工程、検出工程、特定工程、及び、登録工程を有する。演算工程では、発光情報に基づいて電子の状態密度分布が演算される。検出工程では、電子の状態密度分布又はそれから生成された波形に含まれる1又は複数のピークが検出される。特定工程では、検出された1又は複数のピークに基づいてピークエネルギー列が特定される。登録工程では、サンプルから得られた実スペクトルに対して比較される計算スペクトルを生成するためのデータベースに対し、ピークエネルギー列が登録される。ピークエネルギー列は、計算スペクトルを構成する1又は複数の関数のエネルギー位置を定めるものである。
【0028】
実施形態に係るプログラムは、情報処理装置において実行されるプログラムである。当該プログラムは、発光情報に対応付けられたピークエネルギー列を取得する機能と、サンプルから取得された実スペクトルに対して、ピークエネルギー列に基づく計算スペクトルをフィッティングする機能と、計算スペクトルがフィッティング条件を満たした場合に、計算スペクトルに対応する発光情報に基づいてサンプルを分析する機能と、を有する。
【0029】
プログラムは、非一時的な記憶を行う記憶媒体に格納され得る。記憶媒体が可搬型記憶媒体であってもよい。なお、本願明細書では、測定されたスペクトルを「実スペクトル」と称し、理論的に計算された数列に基づいて生成されたスペクトルを「計算スペクトル」と称している。
【0030】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係るスペクトル測定システムが示されている。スペクトル測定システムは、大別して、情報処理装置10及び測定装置12により構成される。スペクトル測定システムは、例えば、電子顕微鏡システム、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)等である。実施形態に係るスペクトル測定システムは、軟X線領域に属する特性X線の分光により特性X線スペクトルを生成し、その特性X線スペクトルを解析する機能を備えている。測定装置12については、後に
図2を用いて説明する。
【0031】
情報処理装置10は、例えばコンピュータにより構成される。情報処理装置10は、演算制御部14、記憶部16、入力器18、及び、表示器20を有する。演算制御部14は、測定装置12の動作を制御し、また、各種の演算を実行する。演算制御部14は、実際には、プログラムを実行するプロセッサにより構成される。プロセッサは、例えばCPUである。
図1においては、演算制御部14が発揮する複数の機能が複数のボックスで表現されている。
【0032】
演算制御部14は、スペクトル生成部24、データベース(DB)作成部26、スペクトル解析部28、表示処理部30、等を有する。スペクトル生成部24は、測定装置12内の分光計から出力された信号に基づいてスペクトル(特性X線スペクトル)を生成する。実施形態においては、上記のように、測定装置12において、軟X線領域に属する特性X線が検出されている。具体的には、価電子帯(特定の外殻電子軌道)から特定の内殻電子軌道への電子遷移により生じる特性X線が検出されている。
【0033】
DB作成部26は、DB34を作成するモジュールである。DB34は、記憶部16上に構築される。DB34には、複数のレコードが登録される。個々のレコードには、発光情報及びピークエネルギー列が含まれる。
【0034】
ピークエネルギー列を特定するために、実施形態においては、発光情報に基づいて、遷移元の電子軌道における、電子の状態密度(DOS:Density Of States)分布が論理的に演算される。DOS分布を演算するプログラムは公知である。実施形態においては、演算されたDOS分布から、ピークエネルギー列を特定するための広がり波形が生成される。その際には、記憶部16内の装置関数32が利用される。
【0035】
スペクトル解析部28は、フィッティング部及び分析部として機能する。具体的には、スペクトル解析部28は、サンプルから取得された実スペクトル(特性X線スペクトル)に対して、複数の計算スペクトルをフィッティングし、その中から所定のフィッティング条件を満たす計算スペクトルを特定する。例えば、最も高い類似度を生じさせた計算スペクトルを特定する。続いて、スペクトル解析部28は、特定された計算スペクトルに対応するレコードに含まれる発光情報を参照し、その発光情報に基づいて、サンプルを分析する。例えば、発光元素(発光を生じさせた元素)、発光X線(発光した特性X線の種類)、等を特定する。所定のフィッティング条件を満たした複数の計算スペクトルが特定され、それらに対応する複数の発光情報が参照されてもよい。
【0036】
表示処理部30は、スペクトル解析結果を表す画像を生成する。その画像は表示器20に表示される。表示器20に、電子顕微鏡画像、元素マップ、等が表示されてもよい。表示器20は、LCD等の表示デバイスにより構成される。入力器18を用いて、ユーザーにより発光情報等が入力される。入力器18を用いて、解析対象となるエネルギー範囲が指定される。そのエネルギー範囲が自動的に決定されてもよい。入力器18は例えばキーボードにより構成される。記憶部16は、半導体メモリ、ハードディスク等により構成される。演算制御部14が複数のプロセッサにより構成されてもよい。
【0037】
図2には、測定装置12の構成例が示されている。測定装置12は、例えば、走査電子顕微鏡である。測定装置12は、鏡筒40及び基部42を有する。鏡筒40は、電子銃、偏向走査レンズ、対物レンズ等を備え、電子線52を生成する。基部42は、試料室46を取り囲むハウジングを有する。試料室46内にはステージ48が配置されており、ステージ48上に試料50が配置されている。試料50における特定位置に電子線52が照射される。これにより、試料50において発光が生じ、つまりX線(特性X線)62が生じる。実施形態において、観測対象となるX線62は、例えば、1keV以下の軟X線である。観測帯域の上限が1keVよりも高いエネルギーであってもよいし、観測帯域の上限が1keVよりも低いエネルギーであってもよい。観測帯域が切り替えられてもよい。
【0038】
軟X線分光計54は、具体的には、波長分散型X線検出器である。軟X線分光計54は、波長分散素子(回折格子)56、及び、検出器58を有する。波長分散素子56は、軟X線62を構成する多波長成分を分解する機能を有する。波長分散素子56は、ピッチが連続的に変化する所定の溝列を有する。波長分散素子56で分解された多波長成分は空間的に広がった分散X線64を構成し、それが検出器58で同時に検出される。
【0039】
検出器58は、二次元的に配列された複数の検出素子により構成され、例えば、それはCCDにより構成される。検出器58にはコントローラ60が接続されており、コントローラ60から検出信号が出力される。検出信号は、X線スペクトルを構成する各成分を表す信号である。なお、複数の波長分散素子を設け、それらを選択的に使用してもよい。他のタイプの分光計が用いられてもよい。
【0040】
図3には、
図1に示した情報処理装置の構成、特に演算制御部の構成が示されている。スペクトル生成部24は、軟X線分光計54から出力された検出信号に基づいて実スペクトル74を生成する。実スペクトル74は、軟X線スペクトルであり、それには、既に説明したように、価電子帯(1又は複数の外殻電子軌道)から内殻電子軌道への電子遷移により生じた特性X線のスペクトルを示す固有波形が含まれる。
【0041】
ある元素の価電子帯には、周囲元素の電子状態の影響が及んでおり、上記の固有波形は、当該元素の価電子帯における電子状態を反映したものとなる。価電子帯における電子状態を推定するために、本実施形態では、以下に説明するように、外殻電子軌道における電子のDOS分布が計算されている。
【0042】
DB作成部26は、図示の構成例において、DOS分布生成部66、装置関数適用部68、ピーク検出部70、及び、エネルギー計算部72を有する。
【0043】
DOS分布生成部66は、発光情報に基づいて、DOS分布を生成する。発光情報は、ピークエネルギー列の生成に当たって必要となる複数の項目からなり、それには、例えば、化合物、化合物の結晶構造、化合物中の発光元素、発光X線、等が含まれる。発光X線から、遷移元の外殻電子軌道が特定される。更に、発光X線から、遷移先の内殻電子軌道が特定されてもよい。DOS分布生成部66に対して、外殻電子軌道を指定する情報を直接的に与えてもよい。後に、
図5を用いてDOS分布の例を説明する。
【0044】
装置関数適用部68は、生成されたDOS分布に対して、広がり関数(ボケ関数)としての装置関数32を適用し、具体的にはDOS分布と装置関数32との畳み込み演算を実行し、これにより広がり波形を生成する。実験によれば、適切な装置関数の使用を前提として、生成された広がり波形と実スペクトルの波形との間に、一定の相関関係又はピーク位置類似性が認められている。
【0045】
実験により装置関数32を求め得る。装置関数32として、Gaussian関数、Voigt関数等の関数を用いてもよい。そのような既知関数を適宜修正して装置関数32を求めてもよい。後に、
図6を用いて、装置関数32の適用により生成された広がり波形の例を説明する。
【0046】
ピーク検出部70は、広がり波形に含まれる1又は複数のピークを検出する。その際には、二階微分等の公知のピーク検出技術を利用し得る。検出された1又は複数のピークによりピークセットが構成される。その具体例については後に
図6を用いて説明する。
【0047】
エネルギー計算部72は、想定した電子遷移に係る外殻電子軌道及び内殻電子軌道の間のエネルギー差に従って、ピークセットを構成する各ピークのエネルギーを、スペクトルが有するエネルギー軸上の位置つまりエネルギーに変換する。これにより、ピークエネルギー列が生成される。このエネルギー計算がDB34からのピークセットの読み出し時に実行されてもよい。
【0048】
ピークエネルギー列は、1又は複数のピークエネルギー(計算ピークエネルギー)で構成される。個々のピークエネルギーは、実スペクトルにおける個々のピークエネルギー(実ピークエネルギー)に対応する。なお、ピークの概念に変曲点が含まれてもよい。
【0049】
DB作成部26は、発光情報ごとに生成されたピークエネルギー列をDB34へ登録する。その際、DB作成部26は、登録対象となったピークエネルギー列に対応する発光情報の全部又は一部もDB34に登録する。以上の処理を繰り返すことにより、論理的に演算された複数のピークエネルギー列がDB34上に蓄積される。後に
図4を用いてDB34の構成例を説明する。
【0050】
スペクトル解析部28は、図示の構成例において、フィッティング部78及び分析部80により構成される。フィッティング部78は、DB34に登録されている複数のピークエネルギー列を順次読み出し、ピークエネルギー列ごとに、1又は複数の関数からなる計算スペクトルを生成する。通常、計算スペクトルは複数の関数により構成され、具体的には、計算スペクトルは複数の関数を合成することにより生成される合成波形である。
【0051】
フィッティング部78は、実スペクトルに対して計算スペクトルが最も近付くように、計算スペクトルを構成する各関数を定義するパラメータセットを変更する。スペクトルフィッティングに用いる関数として、例えば、Gaussian関数、Voigt関数等が挙げられる。それらは、いずれも、左右対称の山状の形態を有する関数である。そのような関数を規定するパラメータとして、強度及び半値幅が挙げられる。
【0052】
例えば、最小二乗法を用いて、実スペクトルに対する計算スペクトルのフィッティングを行える。その際には、実スペクトルと計算スペクトルの間の差分が最小になるように(あるいは類似度が最高になるように)、複数のパラメータセットの最適な組み合わせが探索される。差分が最小になった時点で、実スペクトルと計算スペクトルの間での類似度が特定される。後に
図7を用いて実スペクトルの一例を説明する。後に
図8を用いて計算スペクトルの一例を説明する。
【0053】
以上の過程を繰り返すことにより、フィッティング後の複数の計算スペクトルに対応する複数の類似度が求められる。例えば、最良の類似度を生じさせた計算スペクトルが特定され、それに対応する発光情報が特定される。他の計算スペクトル選定条件(他のフィッティング条件)が採用されてもよい。
【0054】
分析部80は、特定された発光情報に基づいて、サンプルの分析を行う。例えば、発光元素の特定、発光X線の特定、化合物の特定、結晶構造の特定、等を行う。一定の閾値以上の類似度を有する複数の計算スペクトルが特定され、それらに対応する複数の発光情報が分析部80に渡されてもよい。その場合、個々の発光情報ごとにサンプル分析が行われてもよいし、複数の発光情報を総合的に考慮しつつサンプル分析が行われてもよい。
【0055】
表示処理部30は、分析結果76を生成し、それを表示器に表示する。分析結果76には、発光情報から導かれた発光元素情報、発光X線情報、化合物情報、結晶構造情報、等が含まれる。分析結果76として、類似度順で並ぶ複数の発光情報からなるリストが作成されてもよい。
【0056】
図4には、DB34の構成例が示されている。DB34は、複数のレコード82により構成される。各レコード82には、発光情報及びピークエネルギー列84が含まれる。ピークエネルギー列84は、1又は複数のピークエネルギーにより構成される。個々のピークエネルギーは、スペクトルにおけるエネルギー軸上の位置(エネルギー位置)を意味しており、具体的には、フィッティング用関数における頂点のエネルギー位置を規定するものである。
【0057】
各レコード82には、発光情報として、化合物を特定する情報86、結晶構造を特定する情報88、発光元素を特定する情報90、発光X線を特定する情報92、等が含まれる。情報86は例えば化学式であり、情報88は例えば結晶構造の種類を特定する識別子であり、情報90は例えば元素記号であり、情報92は例えば特性X線の識別子である。各レコード82に、外殻電子軌道を特定する情報、内殻電子軌道を特定する情報、エネルギー差を特定する情報、等を含めてもよい。
【0058】
以下、
図5~
図8を用いて、具体例を説明する。この具体例は、SiO
2におけるSiで生じる電子遷移(L線発光)、具体的には、荷電子帯内の外殻電子軌道である3s軌道及び3d軌道から、内殻電子軌道である2s軌道への電子遷移、を前提とするものである。外殻電子軌道の電子状態は特性X線スペクトルに一定の影響を与えるが、内殻電子軌道の電子状態は、特性X線スペクトルにあまり影響を与えないため、外殻電子軌道についてだけDOS分布が演算される。
【0059】
図5において、横軸は結合エネルギーを示している。0eVが価電子帯の上端に相当する。縦軸は単位エネルギー当たりの状態数(DOS)を示している。符号100Aは3s軌道における電子のDOS分布を示しており(太い実線を参照)、符号104Aは3d軌道における電子のDOS分布を示している(太い破線を参照)。
図5においては、参考として、3p軌道における電子のDOS分布102Aも示されている(細い破線を参照)。各DOS分布100A,102A,104Aは、発光情報に基づいて理論的に計算される。具体的には、具体的には、化合物、結晶構造、元素、外殻電子軌道、等がDOS分布100A,102A,104Aの計算で参照される。
【0060】
図5に示したDOS分布100A,104Aに対して、それぞれ、装置関数を適用することにより、
図6に示す広がり波形100B,104Bが生成される。なお、
図6には、DOS分布102Aに対して装置関数を適用することにより生成された広がり波形102Bも示されている。
【0061】
図6において、横軸は結合エネルギーを示しており、縦軸は単位エネルギー当たりの状態数(DOS)を示している。各広がり波形100B,102B,104Bにおいて、個々のピークが横軸方向に広がっており、各波形全体として滑らかになっている。
【0062】
図6には、広がり波形100Bに対するピーク検出で特定されたピークa1,a2,a3,a4(第1ピークセット)が示されており、また、広がり波形104Bに対するピーク検出で特定されたピークc1,c2(第2ピークセット)が示されている。
図6には、参考として、広がり波形102Bが有するピークb1,b2,b3も示されている。
【0063】
第1ピークセットを構成する各ピークa1,a2,a3,a4のエネルギーから、3s軌道から2p軌道へのエネルギー差を減算することにより、第1ピークエネルギー列を生成し得る。同様に、第2ピークセットを構成する各ピークc1,c2のエネルギーから、3s軌道から2p軌道へのエネルギー差を減算することにより、第2ピークエネルギー列を生成し得る。第1ピークエネルギー列及び第2ピークエネルギー列がDBへ登録される。その際、それらを別々に登録してもよいし、それらを統合して登録してもよい。その際、個々のピークエネルギーが有する符号が除去される。
【0064】
図7には、上記L線発光の実スペクトル112が示されている。横軸はX線エネルギーを示し、縦軸は強度を示している。
【0065】
図8には、上記の第1ピークエネルギー列及び第2ピークエネルギー列から生成された計算スペクトル114が示されている。横軸はX線エネルギーを示し、縦軸は強度を示している。計算スペクトル114は、第1ピークエネルギー列を構成する複数のピークエネルギーaE1,aE2,aE3,aE4に対応した複数の関数A1,A2,A3,A4、及び、第2ピークエネルギー列を構成する複数のピークエネルギーcE1,cE2に対応した複数の関数C1,C2により構成され、すなわち、それらの関数を合成することにより生成されている。
【0066】
フィッティングに用いる基礎関数は、例えば、Gaussian関数、Voigt関数である。なお、
図8においては、各関数の形態が示されているが、それらは実施形態を説明するためのものに過ぎない。
【0067】
図8に示されている計算スペクトル114は、フィッティングが完了した状態にある。その状態において、
図7に示した実スペクトル112と
図8に示した計算スペクトル114との間で類似度が演算及び記録される。
【0068】
図7の内容及び
図8の内容は実際の実験結果を示すものである。装置関数を適切に設定することにより、DOS分布に基づく広がり波形から、実スペクトルが有する複数の実ピークエネルギーに近い複数の計算ピークエネルギーを特定することが可能である。
【0069】
未知の実スペクトルを解析するために、DB上に多様な発光情報に対応する多様なピークエネルギー列を登録しておくことが望まれる。例えば、化合物が特定できており、結晶構造を解析したい場合には、DBの中から、当該化合物に対応する1又は複数のピークエネルギー列が選抜されてもよい。
【0070】
図9には、広がり波形を生成する方法の変形例が示されている。符号120は、外殻電子軌道における電子のDOS分布を示している。符号122は、内殻電子軌道における電子のDOS分布を示している。符号124は、装置関数を示している。それら3つの乗算により、広がり波形126が生成される。この変形例では、内殻電子軌道における電子のDOS分布まで考慮されるので、外殻電子軌道における電子のDOS分布のみを考慮する場合に比べて、ピークエネルギー列をより正確に特定できるものと考えられる。
【0071】
図9において、広がり波形126に代えて実スペクトルを用いることにより、装置関数124を逆算することが可能である。例えば、スペクトル解析対象となった実スペクトルを用いて、装置関数を修正し得る。そのような機能を備えた構成を後に
図12及び
図13を用いて説明する。
【0072】
図10には、実施形態に係るデータベース作成方法が示されている。S10では、発光情報が受け付けられる。S12では、発光情報に基づいてDOS分布が生成される。S14では、生成されたDOS分布に対して装置関数が適用され、これにより広がり波形が生成される。S16では、広がり波形に含まれる1又は複数のピークが検出される。すなわち、ピークセットが特定される。S18では、ピークセット中の各ピークが有するエネルギーが上記エネルギー差に基づいて変更される。これにより、ピークエネルギー列が生成される。S20では、ピークエネルギー列がDB上に登録される。その際には発光情報も登録される。S22では、次に受け付ける発光情報があるか否かが判断される。そのような発光情報があればS12以降の工程が再び実行される。
【0073】
図11には、実施形態に係るスペクトル解析方法が示されている。kの初期値は1である。S30では、BD内のk番目のレコードが選択され、それが取得される。取得されたレコードに含まれるピークエネルギー列に基づいて計算スペクトルが生成され、具体的には、実スペクトルに対して計算スペクトルが最も適合するように、計算スペクトルを構成する個々の関数を規定するパラメータセットが優良化される。フィッティング状態が最良になった段階で、S34において、実スペクトルと計算スペクトルとの間で類似度が演算され、それが記録される。類似度に代えて、差分又は規格化された差分が記録されてもよい。S36では、DB上に次のレコードがあるか否かが判断される。次のレコードがあればS38においてkが1つインクリメントされる。その上で、S30以降の工程が再び実行される。
【0074】
S36において、次のレコードがないと判断された場合、S38において、フィッティング条件を満たす計算スペクトルに対応するレコードが特定される。具体的には、そのレコード中の発光情報が特定される。S40では、特定された発光情報に基づいてサンプルが分析される。具体的には、発光元素、発光元素を含む化合物、化合物の結晶構造、発光X線、等を含む情報が出力される。
【0075】
図12及び
図13を用いて変形例に係る構成を説明する。なお、
図12及び
図13において、
図3及び
図4に示した要素と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図12において、追加登録部116は、実スペクトル74をDB34Aに追加的に登録するものである。その際には、実スペクトル74がそれに対応するレコードに登録され、又は、そのレコードに紐付けられる。必要に応じて、追加登録された実スペクトル74が参照され、あるいは、それが所定の演算で利用される。また、追加登録部116は、フィッティング条件を満たした計算スペクトルを構成する関数セットをDB34Aに追加的に登録する機能も有する。関数セットは、実スペクトル74に対応するレコードに登録され、又は、そのレコードに紐付けられる。関数セットに代えてパラメータ群が登録されてもよい。関数セットは、他の実スペクトルを解析する際に、補助的に参照され、又は、直接的に利用される。
【0077】
修正部118は、実スペクトル74に基づいて装置関数32を修正するものである。例えば、実スペクトル74とそれに対してフィッティングされた計算スペクトルとの間の差分が最小になるように、装置関数32が適応的に修正されてもよい。また、他のスペクトル測定システムで取得されたスペクトル又は他の装置関数を考慮して、装置関数32を修正してもよい。例えば、様々なスペクトル測定システムで取得された様々な実スペクトルをスペクトル解析部28に与え、それらの実スペクトル全体として見て最も上記差分が小さくなるように装置関数32を修正してもよい。これによりデバイス依存の少ない装置関数32を構成し得る。
【0078】
図13には、変形例に係るデータベース34Aが示されている。各レコード82には、実スペクトルを特定する情報120が含まれ、また、各レコード82には、計算スペクトルを構成する複数の関数からなる関数セットを特定する情報122が含まれる。情報120,122がポインタ又はURLであってもよい。関数セットに代えてパラメータ群が登録されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 情報処理装置、12 測定装置、24 スペクトル生成部、26 DB作成部、28 スペクトル解析部、32 装置関数、34 DB、66 DOS分布生成部、68 装置関数適用部、70 ピーク検出部、72 エネルギー計算部、78 フィッティング部、80 分析部。