(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ブレーキパッド用減衰ないし中間層のための減衰材
(51)【国際特許分類】
F16D 69/02 20060101AFI20230705BHJP
F16D 69/00 20060101ALI20230705BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230705BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20230705BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230705BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
F16D69/02 G
F16D69/00 R
C08K3/013
C08K7/02
C08L21/00
C08J3/20 B CEQ
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081736
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】10 2020 113 510.6
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511198863
【氏名又は名称】テーエムデー フリクション サービシス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ ラコタ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ベント
(72)【発明者】
【氏名】カーチャ リープ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154154(JP,A)
【文献】特開2008-208314(JP,A)
【文献】特開2001-107025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 71/04
C08J 3/00-3/28
C08J 7/00-7/02
C08J 7/12-7/18
C08J 99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム分及び樹脂分を有する、ブレーキパッドの減衰ないし中間層のための減衰材の製造方法であって、
減衰材(10,20,30)内には不均一に画成された複数の微小領域が形成されており、該微小領域はゴム領域(1)と樹脂領域(2)を含み、ゴム領域(1)は当該ゴム領域(1)の質量に関し夫々3質量%~50質量%の増大されたゴム分と20~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有し、樹脂領域(2)は当該樹脂領域(2)の質量に関し夫々5~50質量%の増大された樹脂分と10~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有すること、
前記ゴム領域(1)は樹脂分フリーであるか又は1質量%未満の樹脂分を有し、及び、前記樹脂領域(2)はゴム分フリーであるか又は1質量%未満のゴム分を有するか、又は、前記ゴム領域(1)は5質量%までの樹脂を有し、
該減衰材は、ゴム予混合物と樹脂混合物から、以下の方法ステップ:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維又は更には樹脂若しくは樹脂混合物を含む、ゴム領域(1)のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物、繊維及び/又は充填材を含む、樹脂領域(2)の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材(10,20,30)へとプレス加工すること
を含む方法によって得られること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法において、
前記ゴム領域(1)は、該ゴム領域(1)の質量に関し夫々5~25質量%のゴム分、30~60質量%の繊維分、15~40質量%の充填材分及び0~5質量%の樹脂分を有すること
を特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載の方法において、
前記樹脂領域(2)は、該樹脂領域(2)の質量に関し夫々10~35質量%の樹脂分、10~70質量%の繊維分及び15~40質量%の充填材分を有すること
を特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項
1~
3の何れかに記載の方法において、
前記ゴム領域(1)は該減衰材(10,20,30)内において網状組織を形成していること
を特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項
1~
4の何れかに記載の方法において、
前記樹脂領域(2)は該減衰材(10,20,30)内において網状組織を形成していること
を特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項
1~
5の何れかに記載の方法において、
前記ゴム領域(1)は、NBRゴム又はエチレン・ビニルアセテート・アクリレート系ゴムを唯一のゴムとして又は更なるゴムとの混合物で含有すること
を特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項
1~
6の何れかに記載の方法において、
該減衰材(10,20,30)内においては、前記樹脂領域(2)に前記ゴム領域(1)が埋め込まれていること
を特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項
1~
7の何れかに記載の方法において、
前記樹脂領域(2)及び前記ゴム領域(1)の夫々の成分は夫々の領域において均一に分布されていること
を特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項
1~
8の何れかに記載の方法において、
該減衰材(10,20,30)は50~90体積%までゴム領域(1)から構成されていること
を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年5月19日に出願されたドイツ特許出願第10 2020 113 510.6号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
本発明はブレーキパッド(ないしライニング)ないしブレーキの快適性の向上のためのブレーキライニング用減衰ないし中間層(下層(underlayer)とも称される)のための減衰材に関する。更に、本発明は減衰材からなる減衰ないし中間層を有するブレーキパッド(ないしライニング)及び減衰材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されているブレーキにおいては、ブレーキの快適性は極めて重要である。このために、ブレーキ作動中におけるブレーキの騒音(鳴き)発生及び機械的振動が考慮される。これらの現象は何れも、ブレーキシステムの種類に応じて異なる振動数(複数)で発生し得る振動の発生と結びついている。振動を抑制するためにないしは振動を減衰するために、従って両方の現象を最小化するために、ブレーキパッドの摩擦層と支持プレートの間には、中間層を挿入する(組み込む)ことができる。この場合、中間層は、快適性に加えて、大きな機械的強度を有する必要がある。
【0003】
パッド(ないしライニング)支持体と摩擦パッド(ないしライニング)からなる、及び摩擦(ブレーキ)鳴きを回避するための減衰要素としての摩擦パッド(ないしライニング)とパッド(ないしライニング)支持体の間に配された中間層を含んでなる、ブレーキシュー又はブレーキパッド(ないしライニング)は従来技術において既知である。そのような中間層によって、制動時に発生する共鳴振動を減衰することができる。そのような減衰層は例えばEP0621414A1、US5,407,034、DE102013108159A1、DE4231549A1又はEP0849488B1から既知であり、複数の異なる材料又は材料混合物からなり得る。更に、従来技術においては、上記の目的のために、ディスクブレーキパッドにおける減衰プレートの使用も記載されている。EP1035345A2参照。
【0004】
更に、従来技術においては、例えばUS9,765,836B2に記載されているような、それ自体既に騒音最小化又は減衰特性を有する摩擦パッド又は摩擦材料も提案されている。
【0005】
更に、本来的摩擦パッドとパッド支持体の間の中間層として減衰層を使用する場合、高い機械的要求に加えて、摩擦パッドと中間層の間の層分離(剥離)が生じないことやエッジ剥離(Kantenloesung)も生じないことにも留意する必要がある。なお、エッジ剥離とは、パッド支持プレートからの中間層の部分的剥離のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP0621414A1
【文献】US5,407,034
【文献】DE102013108159A1
【文献】DE4231549A1
【文献】EP0849488B1
【文献】EP1035345A2
【文献】US9,765,836B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに達成された成果は、とりわけ自動車(KFZ)/乗用車(PKW)における摩擦パッド(ないしライニング)及びブレーキパッド(ないしライニング)の使用という観点から、上記の性質(特性)に関し更に改善される必要がある。
【0008】
従って、本発明の課題は、パフォーマンス特性を維持又は改善しつつ、とりわけ作動時の騒音発生及び発生する機械的振動の低減の観点から、快適性の最適化を確定(達成)可能な、とりわけディスクブレーキ用の、ブレーキパッド(ないしライニング)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点により、ブレーキパッドの減衰ないし中間層のための減衰材が提供される。該減衰材は、少なくともゴム分及び樹脂分を有し、減衰材内には不均一に画成された複数の微小領域が形成されており、該微小領域はゴム領域と樹脂領域を含み、ゴム領域は当該ゴム領域の質量に関し夫々3質量%~50質量%の増大されたゴム分と20~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有し、樹脂領域は当該樹脂領域の質量に関し夫々5~50質量%の増大された樹脂分と10~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有し、前記ゴム領域は樹脂分フリーであるか又は1質量%未満の樹脂分を有し、及び、前記樹脂領域はゴム分フリーであるか又は1質量%未満のゴム分を有するか、又は、前記ゴム領域は5質量%までの樹脂を有する。該減衰材は、ゴム予混合物と樹脂混合物から、以下の方法ステップ:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維(ファイバ)又は更には樹脂若しくは樹脂混合物を含む、ゴム領域のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布(分散)させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物、繊維及び/又は充填材を含む、樹脂領域の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材へとプレス加工すること
を含む方法によって得られること
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、少なくともゴム分及び樹脂分を有する、ブレーキパッドの減衰ないし中間層のための減衰材の製造方法が提供される。該方法において、
減衰材内には不均一に画成された複数の微小領域が形成されており、該微小領域はゴム領域と樹脂領域を含み、ゴム領域は当該ゴム領域の質量に関し夫々3質量%~50質量%の増大されたゴム分と20~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有し、樹脂領域は当該樹脂領域の質量に関し夫々5~50質量%の増大された樹脂分と10~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有すること、
前記ゴム領域は樹脂分フリーであるか又は1質量%未満の樹脂分を有し、及び、前記樹脂領域はゴム分フリーであるか又は1質量%未満のゴム分を有するか、又は、前記ゴム領域は5質量%までの樹脂を有し、
該減衰材は、ゴム予混合物と樹脂混合物から、以下の方法ステップ:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維又は更には樹脂若しくは樹脂混合物を含む、ゴム領域(1)のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物、繊維及び/又は充填材を含む、樹脂領域の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材へとプレス加工すること
を含む方法によって得られること
を特徴とする(形態10)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに、本発明の好ましい実施の形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1の減衰材において、前記ゴム領域は、該ゴム領域の質量に関し夫々5~25質量%のゴム分、30~60質量%の繊維分、15~40質量%の充填材分及び0~5質量%の樹脂分を有することが好ましい。
(形態3)形態1又は2の減衰材において、
前記樹脂領域は、該樹脂領域の質量に関し夫々10~35質量%の樹脂分、10~70質量%の繊維分及び15~40質量%の充填材分を有することが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかの減衰材において、前記ゴム領域は該減衰材内において網状組織を形成していることが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかの減衰材において、前記樹脂領域は該減衰材内において網状組織を形成していることが好ましい。
(形態6)形態1~5の何れかに記載の減衰材において、前記ゴム領域は、NBRゴム又はエチレン・ビニルアセテート・アクリレート系ゴムを唯一のゴムとして又は更なるゴムとの混合物で含有することが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかの減衰材において、該減衰材内においては、前記樹脂領域に前記ゴム領域が埋め込まれていることが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかの減衰材において、前記樹脂領域及び前記ゴム領域の夫々の成分は夫々の領域において均一に分布(分散)されていることが好ましい。
(形態9)形態1~8の何れかの減衰材において、該減衰材は50~90体積%までゴム領域から構成されていることが好ましい。
(形態10)上記本発明の第2の視点参照。
(形態11)形態10の方法において、
前記ゴム領域は、該ゴム領域の質量に関し夫々5~25質量%のゴム分、30~60質量%の繊維分、15~40質量%の充填材分及び0~5質量%の樹脂分を有することが好ましい。
(形態12)形態10又は11の方法において、
前記樹脂領域は、該樹脂領域の質量に関し夫々10~35質量%の樹脂分、10~70質量%の繊維分及び15~40質量%の充填材分を有することが好ましい。
(形態13)形態10~12の何れかの方法において、
前記ゴム領域は該減衰材において網状組織を形成していることが好ましい。
(形態14)形態10~13の何れかの方法において、
前記樹脂領域は該減衰材内において網状組織を形成していることが好ましい。
(形態15)形態10~14の何れかの方法において、
前記ゴム領域は、NBRゴム又はエチレン・ビニルアセテート・アクリレート系ゴムを唯一のゴムとして又は更なるゴムとの混合物で含有することが好ましい。
(形態16)形態10~15の何れかに記載の方法において、
該減衰材内においては、前記樹脂領域に前記ゴム領域が埋め込まれていることが好ましい。
(形態17)形態10~16の何れかの方法において、
前記樹脂領域及び前記ゴム領域の夫々の成分は夫々の領域において均一に分布されていることが好ましい。
(形態18)形態10~17の何れかの方法において、
該減衰材は50~90体積%までゴム領域から構成されていることが好ましい。
【0011】
上記の課題は、ブレーキパッドないしライニング(以下「パッド」で代表する)用の減衰ないし中間層のための本発明の減衰材によって、及び、とりわけ本来の摩擦パッドと(パッド支持体プレートの)パッド支持体の間に配される本発明の減衰材からなる減衰層ないし中間層を有するブレーキパッドによって解決される。
【0012】
作動時のブレーキパッドにおける振動の所望の最小化ないし抑制は、従来技術において既知かつ使用されている減衰測定によって決定することができる。摩擦ないしブレーキパッド開発(試験)においては、いわゆる固有振動測定が使用されることが好ましい。開発(試験)を効率的に構成するために、パッド支持体と摩擦パッドの間に減衰層を有する参照(基準)ブレーキパッドが使用される。
【0013】
そのような本発明のブレーキパッドにおける本発明に応じた好ましい最低条件は、最も重要なパラメータに関し、以下のようにまとめられる:
(1)剪断強度400N/cm2超
(2)熱(温度)負荷後の剪断強度250N/cm2超
(3)固有振動測定時における望ましい減衰の値は15‰(パーミル)超
(4)圧縮(率)の望ましい値150μm~200μm
(5)熱(温度)負荷後の層分離無し(クラック形成の評価値9以上)
(6)機械的負荷(荷重印加)後の支持プレートからの剥離なし(クラック形成の評価値9以上)
【0014】
剪断強度(1)はISO6312に準拠して求められる。
(熱)負荷後の剪断強度(2):ここでは、試験は、(1)の下でのように高い熱的負荷後に実行される。この場合、動的試験のために、以下の条件が適用される。以下の表参照:
n:ブレーキ回数
v
a:ブレーキ開始時の速度
v
e:ブレーキ終了時の速度
p:ブレーキ圧
a:減速g、但し100%が1g、g=9.81m/s
2
T
a:ブレーキ開始時のブレーキディスクの温度
【0015】
(3):固有振動測定は規格DIN ISO 6267に準拠して行った。減衰は第1振幅の減少を介して求められる。
【0016】
(4):圧縮(率)はISO規格6310に応じて決定される。この場合、圧縮(率)はμmの単位で与えられる。一般的に、この値の場合、±15%の許容差(誤差)は受け入れられる。値は、新システムについては、旧システムについても妥当していた許容差値の範囲内にある必要がある。
【0017】
(5):層分離の評価及び(6)支持プレートの剥離(の評価):ブレーキパッドの評価はテスト(2)のための負荷試験後に行われる。この場合、以下のスケールが損傷の評価に適用される。
1=完全な剥離/分離/破壊 6=軽度~中度
2=極強度 7=軽度
3=強度 8=極軽度
4=中度~強度 9=痕跡程度
5=中度 0=視認不能(10)
【0018】
カテゴリ9又は10に等級付けされる場合にのみ、合格と見なされる。この場合、カテゴリ9への等級付けのために、50μmの厚みを有する金属シートが使用される。金属シートが形成されたクラック内へ押し込まれることが不能な場合にのみ、クラックは等級9へ等級付けされるための基準を尚満たす。
【0019】
そのような特性プロフィールは特別な弾性材料からなる減衰層によってのみもたらすことができることが、本発明によって明らかになった。更に、これらの弾性材料は、要求される高い機械的特性(例えば高い剪断強度)と高い減衰特性を一緒に(両方とも)達成するために、樹脂と繊維の使用によって更に強化されることになることが、(本発明によって)明らかになった。
【0020】
更に、上記の特性を有する材料を可及的にコスト的に好都合に利用可能にすることは本発明の付加的課題であるが、このことは、コスト的に好都合な所謂標準材料の使用を可能にすること及び高価な特殊成分を殆ど不要にすることを同時に意味する。弾性(エラストマ)標準材料とは、本発明によれば、標準エラストマであり、これらのうち既知の標準ゴムが好ましい:
NBR: アクリルニトリル・ブタジエン・ゴム
BR: ブタジエン・ゴム
IIR: イソブテン・イソプレン・ゴム
BIIR: ブロモブチルゴム
CIIR: クロロブチルゴム
EPM: エチレン・プロピレン・コポリマ/エチレン・プロピレン・ゴム
EPDM: エチレン・プロピレン・ジエン・ゴム
NR: 天然ゴム
SBR: スチロール・ブタジエン・ゴム
CM: 塩素化ポリエチレン
IR: イソプレン・ゴム
AEM: アクリル・エチレン・ポリメチレン・ゴム
EAM: エチレン・ビニルアセテート・ゴム
ACM: アクリル酸ゴム
【0021】
これらの標準エラストマは単独で又はそれらの混合物で本発明の減衰材のエラストマ主成分を構成する。このエラストマ主成分には、更に、他のエラストマ物質/成分及び/又は種々の充填材及び/又は繊維を添加することができる。他のエラストマ成分は、標準ゴムのカテゴリに属するゴムであることが好ましい。尤も、この場合、例えばDE102013108159A1に記載されているようなフッ素ゴムも使用可能である。本発明の目的のために格別に好ましく、かつ、単独でも本書に列記される他のエラストマないしゴムとの組み合わせでも使用可能であるのは、例えばデンカ株式会社、東京(日本)から(登録)商標デンカERの下で販売されているようなアクリル酸ゴムである。これは、エチレン・ビニルアセテート・アクリル酸エステル・コポリマであるが、一般的にはプラスチックのカテゴリEVACに属する。これらのコポリマは、デンカ社から種々のタイプのものが提供されているが、これらは、とりわけ、ポリマ硬化(所謂硬化部位)に役立つ、例えばエポキシ及びカルボキシルのような、異なる残基によって互いに相違する。上記のエラストマは、とりわけ、高い耐熱性及び高い耐油性を特徴としている。
【0022】
種々の充填材とは、これは本発明に応じ複数の異なる充填材の混合物としても存在し得るが、カーボンブラック及び/又はケイ酸塩であることが好ましい。
【0023】
本発明に応じて好適な繊維は、これは複数の異なる繊維の混合物としても存在し得るが、鉱物繊維、及び/又はアラミド繊維、及び/又は金属繊維であることが好ましい。なお、金属繊維なる概念は、本発明の目的のために、金属ウール(Metallwolle)及び金属削り屑(ないし金属粉:Metallspaene)も含む。
【0024】
従って、本発明に応じて使用可能な充填材と繊維は、従来技術において摩擦パッドの製造のために既知のものである。
【0025】
充填材及びとりわけ繊維の使用により、言わば強化ゴム相が得られる。従って、そのような充填材は、ここでは、活性充填材とも称される。これらは、100nm未満の粒径を有しかつゴム相と相互作用するか、又は、(繊維又は小プレート片としての)大きなアスペクト比、即ちその最小幅に対する(1つの)構造の高さないし深さの(大きな)比を有することによって特徴付けられる。繊維又は剥離された層、例えば層状シリケートから分離した層の場合、これらが少なくとも1つの次元において500μm未満のサイズを有することは重要である。
【0026】
これらに加えて、組成物(Rezeptur)には、特性の特別な改善を生じさせない更なる充填材も使用される。これらは極めて多様な性質を有し得る。これらは、通常、その粒子状構造によって特徴付けられる。これらは、混合物中の他の成分と強い相互作用を行わないか、又は、100nm超の粒径を有し、その結果、それらの特有の表面(ないし固有表面積)は小さいため、混合物成分との相互作用の回数も少ない。
【0027】
好適な充填材は、例えばカーボンブラック粒子及び/又はシリケートとシランの複合材料、とりわけシランでコーティングされたシリケート繊維又は層状シリケートである。例えばBaSO4、CaCO3、Zn及び/又はグラファイトも好適な充填材である。
【0028】
まとめると、相1(ゴム含有)は例えば以下の組成を有する。以下の表参照:
【0029】
驚くべきことに、減衰材がいわゆる2相系(相1/相2)の形で製造されている場合、ブレーキ鳴き及び機械的振動の減衰の観点から減衰特性について極最良の結果が達成されることが(本発明によって)明らかになった。この場合、第1相(相1)は、本発明に応じたゴム粒子を含み、好ましくは4mm未満の粒径を有する粒子状構造を有する。
【0030】
相1の粒子は一緒になって減衰材内に網状組織(Netzwerk)、とりわけパーコレーション(浸透性:perkolierend)網状組織を形成することができる。このために、減衰材における粒子分は50体積%超であると格別に有利である。前述の網状組織の場合、相1の複数の粒子―減衰材内の材料―は積み重なるないしは互いに隣接することが可能であり、減衰材内において相1からの紐(複数)ないし不規則につながった構造体(複数)を構成することが可能である。網状組織は、有利には、同じ量のばらばらの粒子(複数)と比べて向上された減衰特性を有する。
【0031】
粒径は相1粒子の製造方法から定まる。これらは粉砕法によって製造される。この場合、4mmの直径を有する有孔スクリーン(Lochblende)が使用されることが好ましい。このことは、粉砕チャンバから収集容器へ移送される粒子はすべて4mmの最大直径のみ有することができることを意味する。
【0032】
相1内のゴム分は、相1の質量に対し、好ましくは3~50質量%、とりわけ5~25質量%、格別に好ましくは15質量%である。
【0033】
相1(強化ゴム相)に含まれる充填材/充填材混合物及び/又は繊維/繊維混合物は、充填材について好ましくは4~200nmの粒径、繊維について0.75~1.2mm(繊維長)を有する。
【0034】
相2(マトリックス相)は、樹脂ないし樹脂混合物を、場合によっては更に更なる充填材ないし充填材混合物を、場合によっては更に更なる繊維ないし繊維混合物を、含有する。まとめると、相2は例えば以下の組成を有する。以下の表参照:
【0035】
相2に使用される樹脂はこの相において好ましくは5~50質量%の割合を占める。原理的には、摩擦パッド(摩擦材)に対する使用について既知のすべての樹脂、樹脂混合物ないし結合剤(バインダ)、例えばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂又はポリアクリロニトリルは本発明に応じ好適である。このことは、相2にも相1にも当て嵌まる。
【0036】
繊維(ファイバ)は、ここで、好ましくは10~90質量%の割合を占める。好ましい繊維は、ここでは、金属繊維である。これらは、とりわけ32質量%の割合を占める。アラミド繊維は、好ましくは1~6質量%の割で含まれる。ここで、質量%で与えられたデータはすべて相2の全質量に対するものである。
【0037】
減衰材の製造のための相1対相2の体積比は好ましくは50/50から70/30を超えて90/10にまで及びこれらの間の可能なすべての比に及ぶ(データは体積%)。相1の割合は、従って、減衰材ないしブレーキパッド内の相1からのみ構成される上記の網状組織ないし関連構造体を形成するために大きい値に選択されることが有利である。これには、とりわけ、相1からなるパーコレーション(浸透性)網状組織が属する。理論的には、この網状組織は、ほぼ同じ大きさの粒子の場合、74体積%超の体積割合で初めて形成される。異なる大きさの粒子の場合、この値は、粒径の分布が大きければ大きい程それだけ一層大きくなる。同時に、相2は、減衰材の高い強度を保証するために、有利には安定なマトリックスを更に形成することが望ましい。これは、この体積比の場合、格別に良好なケースである。
【0038】
更に、相2は好ましくは充填材を含有し、充填材はこの場合も0~50質量%の割合で相2に含まれることが好ましい。相2の成分についての質量%のデータは夫々相2の全質量に対するものである。
【0039】
好ましい充填材及び/又は繊維は相1及び相2について同じであるが、相1のみにゴム及び該ゴムを強化する粒子状かつ活性な典型的充填材が添加され、相2のみに樹脂系が添加されることが好ましい。更なる好ましい一実施形態では、相1も5質量%までの樹脂又は樹脂混合物を含有することが可能である。樹脂分は、相1においては相2(樹脂相)におけるよりも常により少ない。好ましい一実施形態では、相1(ゴム相)は、樹脂分フリー(不含有)であるか又は(以下に定義されるように)ほぼ樹脂分フリーである。
【0040】
相2は相1を、即ち相1の粒子を、好ましくはこれらの粒子が相2からなるマトリックス内に包埋されているように、囲む(包囲する)。尤も、この場合、相1の粒子(複数)が依然として互いに接触状態にあるよう、包囲度は100%より圧倒的に(ueberwiegend)より小さいことが好ましい。本発明に応じた2相系の減衰材の構造は、光学顕微鏡によって認識可能であるが、肉眼でも認識可能である。
【0041】
相2は減衰材内に網状組織ないしマトリックスを形成することができる。この網状組織は、相1の上記の網状組織と相補的に構成されていると有利である。
【0042】
優れた減衰特性は何よりもまず相1に起因するのに対し、必要な高い機械的安定性は相2によって与えられる。
【0043】
本発明の減衰材ないし減衰層の優れた特性を確保するために、本発明に応じた製造プロセスの順守が必要である。得られる減衰材は製造プロセスによって特徴付けられる:即ち、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスの特徴を有する。
【0044】
相1(ゴム相、とりわけ強化されたもの)を製造するために、例えば混練機内で、充填材及び/又は繊維がゴムに、場合によっては更に樹脂にも、混入処理される(eingearbeitet)ないし練り込まれる。この場合、混練機ないし混練は充填材及び/又は繊維の分散(四散:Dispersion)も、当該成分の一様な分布(Verteilung)も生じさせる。
【0045】
活性充填材と不活性充填材の間には相違があり得る。活性充填材ないしゴム相を強化する充填材には、例えばカーボンブラック粒子やとりわけシリケート/シラン系が含まれる。他の活性充填材は、例えばシランでコーティングされたシリケート繊維又は層状シリケートである。
【0046】
不活性充填材は例えばBaSO4、CaCO3、Zn又はグラファイトである。
【0047】
混練プロセス(Knetprozess)は原理的に混合プロセス(Mischprozess)と区別可能である。混練プロセスでは、成分は、分散(Dispersion)も(一様)分布(Distribution)も達成可能であるよう、ゴムのガラス転移温度以上で処理される。これは、混合プロセスでは達成することはできない。「粉砕工程(Mahlschritt)」は少なくとも一回の混練工程ないし混練後に実行される。
【0048】
混練後に行われる粉砕プロセスによって、相1の粒子が形成される。この場合、相1のすべての成分についての好ましい粒径は4mm未満である。粉砕は、例えば16mmの有孔篩(Lochsieb)を用いた650回転/分での、ナイフミル(Messermuehle)による予粉砕を含むことができる。予粉砕に続けて、例えば4mmの角目篩を用いた4000回転/分での、ハンマーミル(Schlagkreuzmuehle)を用いた微粉砕を行うことも可能である。相1は粉砕によって粒子の形で存在する。
【0049】
次に、相1及び相2に対し混合プロセスが行われるが、その際、相1粒子は、相2、とりわけ樹脂からなるマトリックス内で分布される。この場合、粉砕プロセスによって製造された粒子は実質的にそのサイズを維持する。相2の原料は混合プロセスの開始時にはまだ一様な相を形成していない。原料はすべてまだパウダ又は繊維束として存在している。混合プロセスによって、相2の複数の異なる原料と相1の粒子から混ぜた物(混合物:Gemenge)が得られる。混合フェーズ中に、とりわけ、繊維束は解離される(ばらばらにされる)。
【0050】
混合物は、アイリッヒ(Eirich)社のミキサ(アイリッヒインテンシブミキサ)によって、例えば室温から50℃までの混合温度、5~40m/sのロータ工具速度(Wirblergeschwindigkeit)、段階1又は2の混合パン速度(Troggeschwindigkeit)及び1分~30分の混合時間で、製造することができる。
【0051】
ここでは、混練プロセスと混合プロセスとの間の根本的相違が重要である。混練プロセスでは、上昇された圧力及び上昇された温度で処理が行われる(T>100℃)。これにより、分散されるべき充填材が早くもゴム内に混入処理され、このゴムによって包含(包囲)される(包まれる)相が得られる。純粋な混合プロセスでは、圧力は不足している。一般的には、室温でも混合は行われる。成分は分散されはするが、ゴム相への充填材の包埋はまだ起こらない。従って、混合プロセス後の混合物は(単なる)混ぜた物(Gemenge)として存在する。混練プロセス後の結果(物)は分散(体)として理解可能である。
【0052】
相1と相2は、(材料層ないしシートの形での)減衰材を製造するための後続のプレスプロセスの際に相互作用する。プレスプロセス中に、相2から樹脂が液化して、相2からの残りの粒子と相1の4mmまでのサイズの粒子を包み込む。この場合、包囲度は、相1の粒子(複数)が依然として互いに接触状態をとることができるよう、100%より圧倒的に(ueberwiegend)より小さいことが好ましい。
【0053】
本発明のブレーキパッドの製造プロセスは連続可動式プレス機において実行可能である。ここでは、摩擦パッド混合物と上記の減衰材からなる減衰層が例えば2つのステーションにおいてプレス型内に装填される。例えば、この場合、プレス温度は100℃~200℃、プレス時間は60秒~420秒、プレス圧は3bar~200barとすることができる。この場合、摩擦材料対中間層材料の比は30:1(単位は質量%)~2:1(単位は質量%)までであることが好ましい。
【0054】
次に、パッド支持プレートがキャビティに載置される。この場合、割り当てられた(関連する)ミラープレート(Spiegelplatte)、ダイ(Stempel)及びプロフィールプレート(型板:Profilplatte)は、130℃~190℃の温度を有することが好ましい。プレス時間は1分~6分であることが好ましい。特別な圧力は例えば6N/mm2及び145N/mm2である。
【0055】
次に、パッドは硬化される。このプロセスはオーブン内で静的に行うことができる。硬化温度は例えば室温~300℃、硬化時間は30分間~24時間とすることができる。
【0056】
パッドは、連続法によっても硬化可能であり、例えば室温~700℃の硬化温度、5分~30分の硬化時間で実行可能である。
【0057】
まとめると、本発明の減衰材処方物の好ましい特徴は以下のように示すことができる。
1)ゴム相(相1)には、樹脂は含まれないか、又は、ゴム相中の樹脂分は5質量%以下であることが好ましい。
2)ゴム相には、ゴムの共有結合的架橋を引き起こす他の架橋形成性有機化学物質は含まれない。
3)混合物全体には、ゴム以外に、130℃未満の分解温度を有する成分は含まれない。
4)ゴム相には、強化(補強)用充填材が一緒に混入される。これらの充填材は混練プロセスの際に分散(四散)されかつ(一様に)分布される。
【0058】
マトリックス(相2)には、マトリックスを形成する樹脂に加えて、本質的に同様に、活性及び不活性充填材及び/又は繊維が存在する。
【0059】
更に、相1の割合は重要である。この場合、完成した減衰材の質量に関し、50質量%超の、とりわけ60~70質量%の割合が使用されることが好ましい。
【0060】
本発明の減衰層についての格別に有利な結果は、NBRゴム及び上記のアクリル酸ゴムによって達成できることが(本発明によって)明らかになった。本発明に応じて好適なゴムはしばしば標準ゴムであり得るため、本発明の減衰材は、例えば特殊なポリマを使用する解決策と比べてコスト的に顕著な利点も有する。
【0061】
本発明の中間ないし減衰層は、単層的に又は多層的に構成可能である。該層は単層であることが好ましい。その厚みはパッド支持体及び摩擦パッドの構成に応じて変化する。しかしながら、一般的には、その厚みは凡そ2~4mmである。
【0062】
減衰層は、粘着(接着)層を介して及び/又はボルトによってパッド支持プレートに結合されることが好ましい。
【0063】
減衰層は、減衰層と摩擦層の間の良好な粘着(接着)を介して摩擦層に結合される。減衰層からの樹脂と摩擦パッド層からの樹脂は最終のプレス工程の前にはまだ反応していない。両層はかくして拡散層を構成することができる。そして、この拡散層において、樹脂の反応によって、全体として強い結合に寄与する共有結合が形成される。同様に、該層(複数)はプレス型にフラットな状態では装填されないことが好ましい。でこぼこの(rau)非平滑的な表面構造によって、これらの相同士の接触面は大きくなる。これにより、これらの相の相互結合も大きくなる。即ち、好ましいことに、減衰材及び摩擦材のための混合物が積層され、そして、既述のごとく、(1つの)処理工程において一緒にプレス加工される。
【0064】
次に、本発明の最も重要かつ好ましい対象、特徴及び側面をまとめる。
【0065】
本発明は、好ましくは、とりわけ、少なくともゴム分と樹脂分を有する、ブレーキパッドの減衰ないし中間層のための減衰材を含み、減衰材内には不均一に画成された複数の微小領域(相1)が形成されており、該微小領域は、少なくとも3質量%~最大で50質量%の増大されたゴム分を有するゴム領域(相1)と、少なくとも5質量%の増大された樹脂分を有する樹脂領域(相2)を含み、ゴム領域は好ましくは樹脂フリーであるか又は5質量%以下の樹脂分が含まれ、かつ樹脂領域はゴムフリーである。
【0066】
不均一に画成された領域とは、とりわけ、不規則な(一様でない)輪郭ないし不規則な(一様でない)外側境界を有するような領域として理解されることができる。この場合、個々の領域(複数)の輪郭ないし外側境界は互いに対し大幅に異なっていることが好ましい。
【0067】
本発明の意義において、ゴム領域(相1)は樹脂フリー(不含有)でありかつ樹脂領域(相2)はゴムフリーであるとは、ゴム又は樹脂がそれぞれ他方の領域に存在しないか又は検出不能である場合、又は、ゴム又は樹脂がそれぞれ他方の領域において肉眼で又は光学顕微鏡では検出不能である場合のことであり、このため、例えば、
図1~
図3に記載されているように、はっきりとした(シャープな)領域境界ないし相境界によって示される。
【0068】
概念「フリー(不含有)」の本発明に応じたこの意味についての他の可能な表現は、対応する領域/相はそれぞれ他方の成分が「フリー又はほぼ(殆ど)フリー」であるであろう。これは、例えば、一方の成分がごく微量だけ他方の領域に、例えば拡散によって、到達している場合のことである。微量とは、例えば、樹脂ないしゴムが他方の領域に占める割合が1質量%未満の場合である。
【0069】
減衰材の一断面図において、ゴム領域(複数)の少なくとも1つは少なくとも4mmの長さで延伸することが可能である。
【0070】
減衰材の一断面図において、樹脂領域(複数)の少なくとも1つは少なくとも1mmの長さで延伸することが可能である。
【0071】
減衰材のゴム領域(相1)は、5~25質量%のゴム分を有することが好ましい。
【0072】
減衰材のゴム領域は、NBRゴム又は上記のEVACゴムを、唯一のゴム又は更なるゴムとの混合物として含有することが好ましい。
【0073】
減衰材のゴム領域は、30~60質量%の繊維分及び/又は15~40質量%の充填材分を有することが好ましい。
【0074】
減衰材の樹脂領域(相2)は、10~35質量%の樹脂分及び/又は10~70質量%の繊維分を有することが好ましい。
【0075】
樹脂領域(複数)は、減衰材内においてゴム領域(複数)を包埋する(包み込む)ことが好ましい。
【0076】
樹脂領域及びゴム領域の成分は夫々の領域において一様に分布していることが好ましい。
【0077】
減衰材は、50~70質量%のゴム領域で構成可能である。
【0078】
減衰材は、50~90体積%のゴム領域で構成されることが好ましい。
【0079】
減衰材は、65~80体積%のゴム領域で構成されると格別に好ましい。。
【0080】
更に、本発明は、パッド支持体と摩擦層を有するブレーキパッドであって、パッド支持体と摩擦層の間に、上記の説明に応じた減衰材から構成されている減衰ないし中間層が配されているブレーキパッドを含む。
【0081】
最後に、本発明は、上述したような減衰材の製造方法にも関する。該製造方法は以下の方法ステップを含む:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維又は更には樹脂若しくは樹脂混合物を含む、ゴム領域のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物を含む、樹脂領域の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材へとプレス加工すること。
【0082】
パッド製造の枠内において、ステップ(v)において得られる物質は、摩擦層上で減衰層を製造するために直接的に使用することができる。この場合、摩擦層のための物質及び混合物は、既述のように、上下に積層されて一緒にプレス加工される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】本発明の減衰材の一例の(表面の)巨視的構造の一例の模式的拡大図。
【
図2】剪断試験後の、第1実施例に応じた本発明の減衰材の一例の構造。
【
図3】剪断試験後の、第2実施例に応じた本発明の減衰材の一例の構造。
【実施例】
【0084】
図1は、肉眼又は光学顕微鏡で認識可能であるような、本発明の減衰材10の一例の(表面の)巨視的構造を模式的拡大図で示す。ここで、相1即ち強化されたゴム相は黒の着色で示されており(1)、他方、相1が包埋されている(樹脂と更なる繊維と充填材からなる)マトリックス相2は着色なしで示されている(2)。
【0085】
図2は、剪断試験後の、第1実施例に応じた本発明の減衰材20の一例の構造を示す。ここで、材料の70体積%は黒色で表された強化されたゴム相1から構成されており、その30体積%はゴム相1が包埋されている(無着色で示された)マトリックス相2から構成されている。ゴム相1はマトリックス相2に対するはっきりとした領域境界を示している。
【0086】
図3は
図2の図示及び説明に相当するが、第2実施例に応じた減衰材30はこの場合50体積%のゴム相1と50体積%のマトリックスないし樹脂相2から構成されている。領域ないし相境界はこの場合も明確に示されている。
【0087】
図1~
図3は本発明の好ましい実施例を示すが、これらにおいて、ゴム相1は、本発明の意義において樹脂成分フリーであるか又はほぼ樹脂成分フリーである。
【0088】
本発明は以下の付記のように与えることができる。
[付記1]ブレーキパッド(ないしライニング)の減衰ないし中間層のための減衰材。該減衰材は少なくともゴム分及び樹脂分を有する。減衰材内には不均一に画成された複数の微小領域が形成されている。該微小領域はゴム領域と樹脂領域を含み、ゴム領域は当該ゴム領域の質量に関し夫々3質量%~50質量%の増大されたゴム分と20~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有し、樹脂領域は当該樹脂領域の質量に関し夫々5~50質量%の増大された樹脂分と10~90質量%の繊維分と0~50質量%の充填材分を有する。前記ゴム領域は樹脂フリーでありかつ前記樹脂領域はゴムフリーであるか、又は、前記ゴム領域は5質量%までの樹脂を有する。
該減衰材は、ゴム予混合物と樹脂混合物から、以下の方法ステップ:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維又は更には樹脂若しくは樹脂混合物を含む、ゴム領域のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物、繊維及び/又は充填材を含む、樹脂領域の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材へとプレス加工すること
を含む方法によって得られる。
[付記2]上記の減衰材において、前記ゴム領域は、該ゴム領域の質量に関し夫々5~25質量%のゴム分、30~60質量%の繊維分、15~40質量%の充填材分及び0~5質量%の樹脂分を有する。
[付記3]上記の減衰材において、前記樹脂領域は、該樹脂領域の質量に関し夫々10~35質量%の樹脂分、10~70質量%の繊維分及び15~40質量%の充填材分を有する。
[付記4]上記の減衰材において、前記ゴム領域は該減衰材内において網状組織(Netzwerk)を形成している。
[付記5]上記の減衰材において、前記樹脂領域は該減衰材内において網状組織を形成している。
[付記6]上記の減衰材において、前記ゴム領域は、NBRゴム又はエチレン・ビニルアセテート・アクリレート系ゴムを唯一のゴムとして又は更なるゴムとの混合物で含有する。
[付記7]上記の減衰材において、該減衰材内においては、前記樹脂領域に前記ゴム領域が埋め込まれている。
[付記8]上記の減衰材において、前記樹脂領域及び前記ゴム領域の夫々の成分は夫々の領域において均一に分布されている。
[付記9]上記の減衰材において、該減衰材は50~90体積%までゴム領域から構成されている。
[付記10]上記の減衰材において、前記ゴム領域は樹脂分フリーであるか又はほぼ樹脂分フリーである。
[付記11]ブレーキパッド支持体と摩擦層との間に配されるブレーキパッドのための減衰ないし中間層としての、本発明の減衰材の使用。
[付記12]ブレーキパッド(ないしライニング)の減衰ないし中間層のための減衰材。該減衰材は少なくともゴム分及び樹脂分を有する。減衰材内には不均一に画成された複数の微小領域が形成されている。該微小領域は、少なくとも3質量%から最大50質量%までの増大されたゴム分を有するゴム領域と、少なくとも5質量%の増大された樹脂分を有する樹脂領域を含む。前記ゴム領域は樹脂フリーであるか又はほぼ樹脂フリーであり、かつ、前記樹脂領域はゴムフリーであるか又はほぼゴムフリーである。
[付記13]パッド支持体と摩擦層を有するブレーキパッド(ライニング)。パッド支持体と摩擦層の間には、本発明の減衰材から構成されている減衰ないし中間層が配されている。
[付記14]本発明の減衰材の製造方法。該製造方法は以下の方法ステップを含む:
a)ゴムを予混合すること
(i)ゴム、充填材及び/又は繊維を含む、ゴム領域のための出発材料を提供すること、
(ii)ステップ(i)からの出発材料を少なくとも一回混錬すること、
(iii)ステップ(ii)で得られた物質を4mm未満の粒径へ粉砕すること、
b)樹脂を混合し、樹脂混合物中においてステップ(iii)からの粒子を分布させること
(iv)樹脂又は樹脂混合物、繊維及び/又は充填材を含む、樹脂領域の原料を提供すること、
(v)ステップ(iii)からの粒子とステップ(iv)からの原料を混合すること、
(vi)ステップ(v)で得られた物質を所望の減衰材へとプレス加工すること。
【0089】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0090】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0091】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【符号の説明】
【0092】
1 (ゴム)相
2 マトリックス相
10 減衰材
20 減衰材
30 減衰材