(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】水素ガス溶解装置
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20230705BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20230705BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230705BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230705BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20230705BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20230705BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20230705BHJP
【FI】
B01F21/00
B01F23/23
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 302
C25B9/60
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
(21)【出願番号】P 2021154091
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2018108796の分割
【原出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-09-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 孝士
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297392(JP,A)
【文献】特開平08-193287(JP,A)
【文献】特開2016-022418(JP,A)
【文献】特開平10-064867(JP,A)
【文献】特開2016-222955(JP,A)
【文献】特開平08-144079(JP,A)
【文献】特開平11-244677(JP,A)
【文献】特開2017-136573(JP,A)
【文献】特開平01-310726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00
B01F 23/23
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 15/08
C25B 9/60
C02F 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により水素ガスを発生するための電解槽と、
前記電解槽から供給された前記水素ガスを、水に接触させて溶解させるための水素溶解モジュールと、
前記電解槽から前記水素ガスを取り出して前記水素溶解モジュールに供給するための水素取出管とを備え、
前記電解槽は、前記水素溶解モジュールよりも下方に配され、
前記水素取出管には、端部が開放された開放配管が接続され、
前記開放配管は、分岐部で前記水素取出管から分岐され、
前記電解槽に電気分解のための水を供給するための給水管をさらに備え、
前記給水管には、前記給水管を流れる水量を制限する第1絞り弁が設けられ、
前記給水管及び前記開放配管には、電気分解時に閉じられる開閉弁が設けられ
、
前記開放配管には、前記開放配管を流れる水量を制限する第2絞り弁が設けられている、
水素ガス溶解装置。
【請求項2】
前記電解槽から酸素ガスを取り出すための酸素取出管をさらに備え、
前記酸素取出管には、前記酸素取出管を流れる水量を制限する第3絞り弁が設けられている、請求項1に記載の水素ガス溶解装置。
【請求項3】
前記酸素取出管には、前記分岐部よりも下方に第1水位センサー及び第2水位センサーが設けられ、
前記第1水位センサー及び前記第2水位センサーは、上下に間隔を隔てて併設されている、請求項2に記載の水素ガス溶解装置。
【請求項4】
前記水素取出管には、第3水位センサー及び第4水位センサーが設けられ、
前記第3水位センサーは、前記第1水位センサーと同じ高さに配され、
前記第4水位センサーは、前記第2水位センサーと同じ高さに配されている、請求項3に記載の水素ガス溶解装置。
【請求項5】
前記第1水位センサーと前記第2水位センサーとの間には、第5水位センサーが設けられている、請求項3または4に記載の水素ガス溶解装置。
【請求項6】
前記酸素取出管には、開閉弁が設けられている、請求項2または3に記載の水素ガス溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解により発生させた水素ガスを水に溶解させるための水素ガス溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気分解により発生させた水素ガスを水道水に溶解させて、水素水を生成する水素ガス溶解装置が提案されている。例えば、特許文献1には、水素ガス及び水道水をガス分離中空糸膜を介して供給し、水素水を生成する装置が開示されている。上記特許文献1では、水温に応じて水素ガスの圧力を調整すると共に、水素ガスの圧力と水道水の圧力とを同圧にすることにより、所定濃度以上の水素水を供給可能であることが記載されている。
【0003】
水を電気分解して水素ガスを発生させる水素ガス発生装置として電気分解装置が知られている。例えば、上記特許文献1の装置では、水素ガス発生装置で電気分解に用いられる水が蒸発することにより生じた水蒸気が水素ガス溶解手段に移動すると、結露によって水滴となって水素ガス溶解手段の内部構造に付着し、水素ガスの溶解を抑制するおそれがあり、溶存水素濃度が高い水素水を安定的に供給するという観点からは、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、溶存水素濃度の高い水素水を安定的に供給することが可能な水素ガス溶解装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電気分解により水素ガスを発生するための電解槽と、前記電解槽から供給された前記水素ガスを、水に接触させて溶解させるための水素溶解モジュールとを備え、前記電解槽は、前記水素溶解モジュールよりも下方に配されている、水素ガス溶解装置である。
【0007】
前記水素ガス溶解装置において、前記電解槽から前記水素ガスを取り出して前記水素溶解モジュールに供給するための水素取出管をさらに備え、前記水素取出管の出口は、前記水素溶解モジュールの下部に接続されている、ことが望ましい。
【0008】
前記水素ガス溶解装置において、前記水素取出管の入口は、前記電解槽の上部に配されている、ことが望ましい。
【0009】
前記水素ガス溶解装置において、前記水素取出管内の水位は、前記出口よりも低く保たれている、ことが望ましい。
【0010】
前記水素ガス溶解装置において、前記水素溶解モジュールに前記水を供給するための給水手段をさらに備え、前記水素溶解モジュールは、前記給水手段から供給された前記水を通すための管体を有し、前記管体は、前記水素ガスを透過する多孔質膜によって構成されている、ことが望ましい。
【0011】
前記水素ガス溶解装置において、前記多孔質膜は、中空糸膜である、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電解槽は、水素溶解モジュールよりも下方に配されている。換言すると、水素溶解モジュールは、電解槽よりも上方に配されている。このような水素溶解モジュールと電解槽との位置関係において、電解槽で生じた水素ガスは、水蒸気よりも比重が小さいため、水素溶解モジュールの近傍には、水素ガスが充満し、水蒸気の上方への移動を妨げる。これにより、水素溶解モジュールの内部での水滴の付着が抑制され、溶存水素濃度の高い水素水を安定的に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の水素ガス溶解装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】同水素ガス溶解装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】同水素ガス溶解装置の電解槽及びその周辺の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の水素ガス溶解装置1の概略構成を示している。なお、同図において、ハッチングが施されている領域は、水が満たされている領域である(以下、
図3においても同様とする)。水素ガス溶解装置1は、電解槽4と水素溶解モジュール6とを備えている。
【0015】
電解槽4は、電気分解により水素ガスを発生する。水素溶解モジュール6は、電解槽4から供給された水素ガスを、水に接触させて溶解させる。これにより、簡素な構成で、血液透析や飲み水として用いられる溶存水素水を生成することが可能となる。
【0016】
電解槽4の内部には、電解室40が形成されている。電解室40には、陽極給電体41と、陰極給電体42と、隔膜43とが、配されている。電解室40は、隔膜43によって、陽極給電体41側の陽極室40aと、陰極給電体42側の陰極室40bとに区切られる。
【0017】
隔膜43には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子材料等が適宜用いられている。電解槽4内で効率よく電気分解を行うために、隔膜43によって電解室40が陽極室40aと陰極室40bとに区切られるのが望ましいが、隔膜43は廃されていてもよい。
【0018】
陽極室40a及び陰極室40bには、電気分解のための水が供給される。陽極給電体41及び陰極給電体42に電気分解のための直流電圧が印加されると、陽極室40a及び陰極室40bで水が電気分解され、陽極室40aにて酸素ガスが発生し、陰極室40bにて水素ガスが発生する。
【0019】
本実施形態では、陽極室40a及び陰極室40bに電気分解のための水を供給するための給水管3をさらに備えている。電気分解のための水は、後述する酸素取出管7及び水素取出管8から供給される構成であってもよい。給水管3は、分岐部3aにおいて、給水管31及び給水管32に分岐している。給水管31は、陽極室40aに接続され、給水管32は、陰極室40bに接続されている。分岐部3aよりも上流側の給水管3には、開閉弁91(第1開閉弁)が設けられている。
【0020】
水素ガス溶解装置1は、水素溶解モジュール6に水を供給する給水手段をさらに備えている。給水手段は、給水管5を含んでいる。本実施形態では、給水管3は、給水管5から分岐している。従って、給水管3及び給水管5には、同系統の水源から水が供給される。これにより、水素ガス溶解装置1の構成が簡素化される。給水管3の水源と給水管5の水源とは、別々の系統であってもよい。
【0021】
陰極室40bと水素溶解モジュール6とは、後述する水素取出管8によって接続されている。陰極室40bで生成された水素ガスは、水素取出管8を介して水素溶解モジュール6に供給される。
【0022】
水素溶解モジュール6は、給水管5から供給された水を通すための管体61を有している。本実施形態では、複数の管体61が水素溶解モジュール6の内部に設けられている。管体61は、水平方向に延出されている。
【0023】
管体61は、水素ガスを透過する多孔質膜によって構成されている。これにより、陰極室40bから供給された水素ガスが管体61を透過して管体61の内部の水と接触し、溶解する。
【0024】
本実施形態では、管体61を構成する多孔質膜には、中空糸膜が適用されている。中空糸膜は、水素ガスを透過する微小孔を無数に有する。本実施形態では、陰極室40bにて発生する水素ガスによって、管体61の外圧が高められることにより、管体61の外側の水素ガスが内側に移動し、管内の水に溶解する。容易に溶存水素水が得られる。
【0025】
図2は、水素ガス溶解装置1の電気的構成を示している。水素ガス溶解装置1は、陽極給電体41、陰極給電体42等の各部の制御を司る制御手段10を備えている。
【0026】
制御手段10は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等を有している。陽極給電体41と制御手段10との間の電流供給ラインには、電流検出手段44が設けられている。電流検出手段44は、陰極給電体42と制御手段10との間の電流供給ラインに設けられていてもよい。電流検出手段44は、陽極給電体41、陰極給電体42に供給する電解電流を検出し、その値に相当する電気信号を制御手段10に出力する。
【0027】
制御手段10は、例えば、電流検出手段44から出力された電気信号に基づいて、陽極給電体41及び陰極給電体42に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御手段10は、ユーザー等によって設定された溶存水素濃度に応じて、電流検出手段44によって検出される電解電流が所望の値となるように、陽極給電体41及び陰極給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御手段10は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御手段10は、上記電圧を増加させる。これにより、陽極給電体41及び陰極給電体42に供給する電解電流が適切に制御される。
【0028】
図1に示されるように、本水素ガス溶解装置1において、電解槽4は、水素溶解モジュール6よりも下方に配されている。換言すると、水素溶解モジュール6は、電解槽4よりも上方に配されている。本実施形態では、水素溶解モジュール6は、陰極室40bよりも上方に配されている。このような水素溶解モジュール6と電解槽4との位置関係において、電解槽4で生じた水素ガスは、水蒸気よりも比重が小さいため、水素溶解モジュール6の近傍には、水素ガスが充満し、水蒸気の上方への移動を妨げる。これにより、水素溶解モジュール6の内部構造(すなわち中空糸膜の微小孔)での水滴の付着が抑制され、より多くの水素ガスが管体61の内側に移動し、容易に溶存水素濃度の高い水素水を安定的に供給することが可能となる。
【0029】
本実施形態の水素ガス溶解装置1は、電解槽4の陽極室40aから酸素ガスを取り出すための酸素取出管7を備えている。酸素取出管7は、電解槽4の陽極室40a側の入口7aと、水素ガス溶解装置1内で開放された出口7bとを有している。
【0030】
入口7aは、電解槽4の陽極室40aの上部に配されているのが望ましい。これにより、陽極室40aで発生した酸素ガスが、陽極室40a内の水圧により、入口7aから酸素取出管7に流出し易くなる。
【0031】
出口7bは、酸素取出管7の先端部に設けられている。出口7bが水素ガス溶解装置1の外部で開放されるように、酸素取出管7が適宜延出されていてもよい。
【0032】
水素ガス溶解装置1は、電解槽4から水素ガスを取り出すための水素取出管8を備えている。水素取出管8は、電解槽4の陰極室40bに接続された入口8aと、水素溶解モジュール6に接続された出口8bとを有している。水素取出管8によって、陰極室40bで発生した水素ガスが水素溶解モジュール6に供給される。
【0033】
入口8aは、出口8bより下方に配されているのが望ましい。これにより、水蒸気よりも比重が小さい水素ガスが、出口8bの近傍に充満し、水蒸気の上方(すなわち出口8bの近傍)への移動を妨げる。従って、水素溶解モジュール6の内部での水滴の付着が抑制され、容易に溶存水素濃度の高い水素水を供給することが可能となる。
【0034】
入口8aは、電解槽4の陰極室40bの上部に配されているのが望ましい。これにより、陰極室40bで発生した水素ガスが、陰極室40b内の水圧により、入口8aから水素取出管8に流れ込み易くなる。
【0035】
出口8bは、水素溶解モジュール6の下部に接続され、開放されているのが望ましい。これにより、陰極室40bから水素取出管8に流入した比重の小さい水素ガスが、上昇して水素溶解モジュール6に流れ込み易くなる。また、仮に水素溶解モジュール6内に水蒸気が入ったとしても、水素溶解モジュール6の下部が出口8bによって開放されているため、水蒸気が水滴となって落下することにより出口8bから抜けやすくなる。また、出口8bは、管体61を横断する方向に向って開口しているのが望ましい。これにより、水素溶解モジュール6内で比重の小さい水素ガスが、上昇する際に管体61の表面に接触しやすくなるため、水素ガスが水素溶解モジュール6に流れ込み易くなる。
【0036】
水素取出管8には、分岐部81aで水素取出管8から分岐され、端部81bが開放された開放配管81が接続されている。端部81bが水素ガス溶解装置1の外部で開放されるように、開放配管81が適宜延出されていてもよい。
【0037】
陽極室40aに接続された酸素取出管7の出口7bの近傍には開閉弁92(第2開閉弁)が、陰極室40bに接続された水素取出管8から分岐する開放配管81の端部81bの近傍には開閉弁93(第2開閉弁)が、それぞれ設けられている。開閉弁92は、酸素取出管7内の気体を排出するために設けられている。開閉弁93は、水素取出管8内の気体を排出するために設けられている。
【0038】
水素ガスを発生させるための電気分解が進行すると、電解室40の水が消費される。このとき、開閉弁91、92、93を開放すると、給水管3と酸素取出管7及び水素取出管8の内部圧力の差により、給水管3から電解室40に水が補給される。
【0039】
図3は、電解槽4及びその周辺部の構成を示している。電解槽4で効率よく電気分解がなされるためには、陽極室40a及び陰極室40bは常に満水状態に維持されるのが望ましい。このため、本実施形態では、電気分解に先だって、給水管3から陽極室40a及び陰極室40bに水が補給される。本実施形態では、給水管31と給水管32とが分岐部3aで連通しているので、酸素取出管7内の水位と水素取出管8内の水位とが等しくなる。
【0040】
開閉弁91、92及び93は、例えば、電磁弁によって構成され、制御手段10によって互いに連携するように制御される。例えば、制御手段10は、開閉弁91及び93を開放することにより、給水管31から供給される水の水圧によって、水素取出管8から気体が排出され、水素取出管8の水位が上昇する。これにより、電気分解によって低下する陰極室40bから水素取出管8に至る経路の水位を、予め高めておくことが可能となる。
【0041】
さらに、制御手段10は、開閉弁91、92、93を閉じた後、陽極給電体41及び陰極給電体42に電気分解のための直流電圧を印加して電気分解を開始する。すなわち、開閉弁91、92、93が閉じられた状態で、電解室40で電気分解が進行し、陰極室40bで水素ガスが発生する。
【0042】
酸素取出管7内の水位及び水素取出管8内の水位を適切に維持するための構成として、本実施形態の水素ガス溶解装置1は、水位センサー(水位検出手段)S1,S2,S3,S4及びS5と上記開閉弁91,92及び93とを備えている。
【0043】
水位センサーS1及びS2は、酸素取出管7の上下に適宜の間隔を隔てて並設されている。水位センサーS5は、水位センサーS1と水位センサーS2との間に設けられている。水位センサーS1,S2及びS5は、光学的手法又は浮力により管内の水を検出し、対応する電気信号を制御手段10に出力する。制御手段10は、水位センサーS1,S2及びS5から入力された電気信号に基づいて、酸素取出管7内の水位を知得する。
【0044】
同様に、水位センサーS3及びS4は、水素取出管8の上下に適宜の間隔を隔てて並設されている。水位センサーS3及びS4は、光学的手法又は浮力により管内の水を検出し、対応する電気信号を制御手段10に出力する。制御手段10は、水位センサーS3及びS4から入力された電気信号に基づいて、水素取出管8内の水位を知得する。
【0045】
水位センサーS1とS3は、同じ高さに配されている。水位センサーS2とS4は、同じ高さに配されている。水位センサーS5は、水素取出管8に設けられていてもよい。この場合、水位センサーS5は、水位センサーS3と水位センサーS4との間に設けられる。
【0046】
水位センサーS4は、分岐部81aよりも下方に配される。これにより、陰極室40bに電気分解のための水を供給する際に、分岐部81aよりも水素溶解モジュール6側の水素取出管8に水が浸入することが抑制される。
【0047】
開閉弁91、92、93の開放により、酸素取出管7内の水位及び水素取出管8内の水位は、同じ高さを維持しつつ上昇する。水位センサーS5から出力された電気信号によって、酸素取出管7内の水位が適正に(水位センサーS5の高さまで)上昇したことが検出されると、制御手段10は、開閉弁91、92、93を閉栓する。これにより、電解槽4への水の補給が完了する。
【0048】
電気分解の進行に伴い、酸素取出管7内の水位と水素取出管8内の水位とは、異なる高さで推移する。そして、水位センサーS1乃至S4から出力された電気信号によって水位の低下又は上昇が検出されると、制御手段10は、陽極給電体41及び陰極給電体42への電解電圧の印加を停止する。すなわち、水位センサーS1から出力された電気信号によって酸素取出管7内の水位の低下、又は、水位センサーS2から出力された電気信号によって酸素取出管7内の水位の上昇が検出されると、制御手段10は、電気分解を停止させる。また、水位センサーS3から出力された電気信号によって水素取出管8内の水位の低下、又は、水位センサーS4から出力された電気信号によって水素取出管8内の水位の上昇が検出されると、制御手段10は、電気分解を停止させる。
【0049】
さらに制御手段10は、開閉弁92及び93を開放する。これにより、陽極室40a及び陰極室40bの圧力は、大気圧と同等となり、酸素取出管7内の水位と水素取出管8内の水位とが等しくなる。そして、水位センサーS5から出力された電気信号によって酸素取出管7内の水位の低下が検出されると、開閉弁91を開放して水を補給する。これにより、水素取出管8内の水位が、水位センサーS3とS4との間に維持される。
【0050】
制御手段10は、開閉弁91、92及び93を閉じた後、陽極給電体41及び陰極給電体42に電気分解のための直流電圧を印加して電気分解を開始する。すなわち、開閉弁91、92及び93が閉じられた状態で、電解室40で電気分解が進行し、陰極室40bで水素ガスが発生する。これに伴い、水素取出管8内の圧力が上昇し、水素溶解モジュール6を加圧する。これにより、水素取出管8にポンプ等の複雑な構成を設けることなく、水素取出管8から水素溶解モジュール6に至る水素ガスの供給経路の圧力が高められる。従って、水素溶解モジュール6の内部で水に接触する水素ガスが増加し、溶存水素濃度の高い水素水を簡素な構成で低コストに供給することが可能となる。
【0051】
制御手段10による開閉弁91,92及び93の制御によって、水素取出管8内の水位は、出口8bよりも低く保たれているのが望ましい。これにより、給水管32から供給された水が水素溶解モジュール6に流入することが防止される。
【0052】
水素取出管8には、開閉弁(図示せず)が設けられていてもよい。この開閉弁は、陰極室40bに電気分解のための水を補給する際に閉じられる。これにより、給水管32から供給された水が水素溶解モジュール6に流入することがより一層防止される。
【0053】
ところで、開閉弁91、92及び93が開放されたとき、給水管3から電解室40に勢いよく水が流入し、出口7b及び端部81bから流出するおそれがある。
【0054】
そこで、本水素ガス溶解装置1では、給水管3において、開閉弁91と分岐部3aとの間には、給水管3を流れる水量を制限する絞り弁94が設けられるのが望ましい。絞り弁94は、電解室40に供給された水が出口7b及び端部81bから流出することを抑制する。
【0055】
また、本水素ガス溶解装置1では、酸素取出管7において、開閉弁92と出口7bとの間には、酸素取出管7を流れる水量を制限する絞り弁95が設けられるのが望ましい。同様に、開放配管81において、開閉弁93と端部81bとの間には、開放配管81を流れる水量を制限する絞り弁96が設けられるのが望ましい。絞り弁95、96は、電解室40に供給された水が出口7b及び端部81bから流出することを抑制する。なお、絞り弁94のみによって、出口7b及び端部81bからの水の流出が十分に抑制できる場合は、絞り弁95、96は、省略されていてもよい。
【0056】
水素ガス溶解装置1によって生成された溶存水素水を血液透析に使用する場合、給水管5には、原水として逆浸透膜処理装置(図示せず)によって処理された逆浸透水が供給される。そして、水素溶解モジュール6において逆浸透水に水素ガスが溶解されることにより、透析液調製用水が生成され、透析液供給装置に供給される。
【0057】
以上、本発明の水素ガス溶解装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、水素ガス溶解装置1は、少なくとも、電気分解により水素ガスを発生するための電解槽4と、電解槽4から供給された水素ガスを、水に接触させて溶解させるための水素溶解モジュール6とを備え、電解槽4は、水素溶解モジュール6よりも下方に配されていればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :水素ガス溶解装置
3 :給水管
4 :電解槽
5 :給水管(給水手段)
6 :水素溶解モジュール
7 :酸素取出管
7a :入口
7b :出口
8 :水素取出管
8a :入口
8b :出口
40a :陽極室
40b :陰極室
61 :管体