(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】炭素、硫黄及びPTFEの均質化混合物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B02C 13/22 20060101AFI20230705BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230705BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230705BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230705BHJP
B02C 13/286 20060101ALI20230705BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230705BHJP
B01F 27/704 20220101ALI20230705BHJP
【FI】
B02C13/22
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 B
B02C13/286
C08J3/12 A CEW
B01F27/704
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021174831
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2020 131 233.4
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509107781
【氏名又は名称】ネッチュ トロッケンマールテヒニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】フランク ウインター
(72)【発明者】
【氏名】レギーナ ダンバッハ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508220(JP,A)
【文献】特開2010-232085(JP,A)
【文献】特開昭62-140636(JP,A)
【文献】特開2013-214503(JP,A)
【文献】特開2013-212975(JP,A)
【文献】特開2010-095390(JP,A)
【文献】特開2017-145169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/22
H01M 4/38
H01M 4/62
H01M 4/36
B01F 27/60
B02C 13/286
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、硫黄及びPTFEの均質化混合物を製造するための方法であって、
前記硫黄が、液化され、次いで液体硫黄が、炭素と一緒に一回目の粉砕をされ、これにより前記液体硫黄が前記炭素の細孔に吸収されて炭素粒子と好適には粉末状の複合材料を形成し、次いでPTFEが添加され、前記複合材料の前記混合物及び前記PTFEが二回目の粉砕をされ、これにより均質化され
、
前記液体硫黄が、該液体硫黄をミル内に注入するインジェクタ(7)に供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、煤の形態の炭素粒子が使用されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の方法であって、前記液体硫黄が、前記炭素粒子と一緒に粉砕されるまで、119℃~220℃、好適には200℃のみ、理想的には190℃のみの温度範囲で制御されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の方法であって、インジェクタ(7)が、特に窒素の形態で過圧状態にあるインジェクタガスで作動することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか一項に記載の方法であって、インジェクタガスが、窒素での搬送時に前記硫黄が液体に維持され、結晶化せず、理想的には請求項
3に記載の温度範囲で前記炭素粒子と粉砕される粉砕領域に到達するよう加熱されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項
4に記載の方法、又は請求項4に従属する場合の請求項5に記載の方法であって、前記インジェクタガスが、前記炭素粒子及び前記硫黄の粉砕後に、前記炭素・硫黄複合材料から分離されて放出されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の方法であって、前記炭素・硫黄結合材料の温度が、共通の粉砕後に低下することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の方法であって、前記一回目の粉砕が、インパクトミル内、特にピンミル内で行われる方法。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか一項に記載の方法であって、前記二回目の粉砕が、インパクトミル内、特にピンミル内で行われる方法。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか一項に記載の方法であって、3個の個別の投与装置(2,6,16)が、それぞれ、硫黄用、炭素粒子用、並びにPTFE用に使用され、前記3個の投与装置(2,6,16)が、好適には、前記均質化混合物が硫黄を50 m%~70 m%、炭素粒子、特に煤を25 m%~40 m%、並びにPTFEを1 m%~10 m%含むよう設定されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか一項に記載の方法であって、前記均質化混合物が、幾つかの連続したミル充填によるバッチ方式で生成されるのではなく、前記ミル(10,19)を通過する間に連続的に生成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか一項に記載の方法であって、
前記一回目の粉砕において、液体硫黄を110℃~220℃の温度範囲で制御しつつガス粉砕
することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~
12の何れか一項に記載の方法であって、第2粉砕が、最終製品を冷却するよう役立つことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の方法であって、前記一回目の粉砕において、ピンミルを用いて、液体硫黄を110℃~220℃の温度範囲で制御しつつ、液体硫黄及び煤をガス粉砕する
、方法。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の方法であって、前記二回目の粉砕は、ピンミルを用いて、煤・硫黄結合材料及びPTFEを冷却及び均質化する
ことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る方法と、製品請求項に係るそのような方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム硫黄電池は現在、大幅に強力な電池への需要増加に対応可能な有望な選択肢と考えられている。この点に関しては、例えば、2020年8月18日に、DLRとして知られている「ドイツ航空宇宙センター」のサーバーからwww.dlr.de.(完全なアドレスはhttps://www.dlr.de.wf.Portaldata/23/Resources/dokumente/werkstoff-kolloquium/wsk-2018/Wagner_-_Lithium-Schwefel_Batterien-Neue_Entwicklungen_und_Erkenntnisse.pdf)でアクセス済みの非特許文献1(DLR公開物「Lithium-Schwefel Batterien: Neue Entwicklungen und Erkenntnisse, N. Wagner, M. Schwan, B. Sievert, B. Milow, F. Warth, 04.12.2018, Werkstoff-Kolloquium 2018」)を参照されたい。
【0003】
このようなリチウム・硫黄電池のカソードには、リチウム・硫黄カソードが必要である。
【0004】
カソードの従来の製造は、スラリーを調製するために、活物質、導電材料及びバインダーを溶媒と混合することによって行われている。このペーストは、キャリアフォイル上に塗布される。このコーティング後に、キャリアフォイルを乾燥させる必要がある。これは、エネルギーが大量に消費されるステップであり、製造における「ボトルネック」と見なされている。更に、カソードを調製するための溶媒は、環境にとって有害である。
【0005】
この理由により、いわゆる「パウダー・トゥ・ロール」(powder to roll)プロセスによる製造法が開発された。このプロセスは、先ず硫黄(S)及び炭素の粉末状混合物を、適切なバインダーと均一に混合し、次いでカレンダーにかけることを特徴としている。これにより、粉末が繊維状フィルムに圧延される。このフィルムはその後、圧延により、金属フォイル、主にアルミニウムフォイル上に積層することができる。このようにして、所要形状のLi‐Sカソードを、ロールアップ又は折り畳みによって製造することができる。既存の方法においては、出発物質、即ち活物質としての硫黄及び導電性添加物としての炭素が互いに乾式混合されると共に、ミル内で粉砕される。その後に混合物を炉に入れることにより、硫黄が溶けて炭素の細孔に吸収される。この場合、再度粉砕しなければならない炭素・硫黄凝集体が生成される。次のステップにおいては、粉末が、バインダーとしてのPTFEと乾式混合されると共に、再度粉砕される。
【0006】
この方法によって特に高品質のカソードを製造するには、出発材料が粒子集合体中で可及的に均一に分布していることが極めて重要である。
【0007】
現在の乾式混合は連続的に実施することはできず、個々のバッチでしか実施することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Lithium-Schwefel Batterien: Neue Entwicklungen und Erkenntnisse, N. Wagner, M. Schwan, B. Sievert, B. Milow, F. Warth, 04.12.2018, Werkstoff-Kolloquium 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した事情に鑑み、本発明の課題は、現在使用されている技術に比べて、より均質な混合物を、連続的に、かつより少ないプロセスステップで製造可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を備える方法によって解決される。
【0011】
本発明は、炭素、硫黄、並びにPTFEの均質化混合物を製造するための方法に関する。
【0012】
本発明は、硫黄が、液化され、次いでその液体硫黄が、炭素又は炭素粒子と一緒に一回目の粉砕をされることを特徴としている。これにより、硫黄及び炭素が極めて均一に分散される。この場合、液体硫黄は、炭素粒子における表面の細孔から吸収される。この吸収は、粉砕プロセスによって強化される。なぜなら、炭素粒子が液体硫黄を吸収可能な新たな領域が繰り返し露出するからである。硫黄は、炭素と複合材料又は複合粒子を形成する。即ち、主に粉末状の炭素粒子と、各炭素粒子の細孔に入り込んだ硫黄との結合材料を形成する。細孔への浸透と同時に行われる粉砕プロセスにより、個々の複合粒子は分離状態を維持し、この段階で塊を生じることはない。
【0013】
次いで、粒子状、好適には、粉末状のPTFEが固体として添加される。
【0014】
ここで複合粒子とPTFE粒子の混合物は、二回目の粉砕をされる。
【0015】
この二回目の粉砕は、混合物全体の粒子が集中的に混合又は均質化されると共に、溶融の過程で生じた可能性のある全ての凝集体が粉砕されるよう機能する。同時に、混合物の粒子が極めて激しく旋回することにより、粒子が急速に冷却され、新たな凝集体の形成が大幅に減少するか又は完全に生じなくなるという効果がある。
【0016】
発明の任意的な実施形態
固体の炭素粒子は、理想的には煤粒子の形態で使用される。煤粒子は、極めて大きな自由表面を有する炭素で構成されているため、硫黄との複合材料を形成するのに特に適している。
【0017】
液体硫黄は、特に好適には、インジェクタを介して第1ミルに導入される。
【0018】
液体硫黄は、炭素粒子と一緒に一回目に粉砕されるまで、理想的には110℃~220℃の温度範囲で制御される。液体硫黄の粘度には大きな温度依存性があるため、硫黄は、温度制御しつつ、常に同じ粘度でミル内又は第1ミル内に到達するようにし、これにより再現性を実現するのが好適である。
【0019】
本発明は、任意的には1個のミルでのみ実施することもできる。この場合、炭素及びPTFEは、所定の投与量が供給され、硫黄は、インジェクタシステムを介して供給される。これは、単に完全性を期すために記載されていることに留意されたい。
【0020】
インジェクタは、窒素によって過圧で作動させるのが特に好適である。この過圧により、指向性を有すると共に十分に速い流れが形成され、従って液体硫黄は、その液体硫黄を第1ミル内に供給する配管の内壁に過度に堆積して炭素との微細かつ均一な混合に使用不可能になることなく、ミルに確実に導入される。この場合、窒素は、好適なインジェクタガスである。なぜなら、炭素及び硫黄に比べて、窒素は不活性であると共に、基本的に毒性がないからである。
【0021】
理想的には、インジェクタガス(インジェクションガス)の温度制御は、硫黄の温度制御をサポートするのに使用される。インジェクタガスは、窒素での搬送時に硫黄が液体に維持され、結晶化せず、理想的には上述した温度範囲で炭素粒子と粉砕される粉砕領域に到達するよう加熱される。
【0022】
本発明によれば、インジェクタガスは、炭素粒子及び硫黄の粉砕後に、炭素・硫黄複合材料から分離されて放出されると特に好適であることが判明している。この場合、最初の粉砕の直後に大幅に低温の雰囲気が生成され、その雰囲気中で、粒子を更に凝集させることなく冷却するという目的をより迅速に達成することができる。基本的に、炭素・硫黄複合材料の温度は、最初の共通の粉砕後に下がるのが好適である。
【0023】
一回目の粉砕は、インパクトミル、特にピンミルで行うのが特に好適である。インパクトミル、特にピンミルにおいて、粉砕材料は、長時間圧縮されたり、粉砕体によって「横断」及び圧縮されたりすることはない。その代わりに、粉砕効果は、粉砕すべき粒子が互いに又は粉砕機のピンと衝突するときに、粉砕チャンバ内にて高運動エネルギーで遠心分離されて粉砕されることに基づいている。これにより、粉砕による更なる凝集を回避することができる。
【0024】
二回目の粉砕も、インパクトミル、特にピンミルで行うのが特に好適である。二回目の粉砕が更なる粉砕というよりも良好な混合を目的としている場合であっても、インパクトミル、特にピンミルの使用は、特に有利である。なぜならこの場合も、粉砕チャンバ内における激しい旋回は、極めて良好な混合及び迅速な冷却を可能にするからである。
【0025】
混合と同時に粉砕が行われることは、最初はまだ高温である複合材料の粒子が互いに凝集する作用を打ち消すため、極めて有利である。凝集に起因してより大きな粒子が生成されると直ぐに、粉砕プロセスによって極めて短時間で再び粉砕される。
【0026】
特に好適には、硫黄、炭素粒子、並びにPTFEの3つの異なる投与が提供される。これら3つの投与は、好適には、均質化混合物が硫黄を50 m%~70 m%、炭素粒子(特に煤)を25 m%~40 m%、並びにPTFEを1 m%~10 m%含むよう設定される。
【0027】
基本的に、均質化混合物は、幾つかの連続したミル充填によるバッチ方式で生成されるのではなく、ミルを通過する間に連続的に生成される。これにより、バッチ方式に依存しない一貫した品質を、特に1つ以上の重要な方法パラメータが監視されると共に更新される場合に、より容易に得ることができる。
【0028】
最初の粉砕が高温ガス粉砕であれば、特に好適である。これにより、第1粉砕において、複合材料の形成、即ち上述した炭素・硫黄結合材料の形成が促進される。
【0029】
理想的なケースにおいて、第2粉砕は、本発明に係る方法の終了後に利用可能な最終製品を冷却するのに顕著に又はかなり役立つ。この場合のプロセスが粉砕プロセスであることにより、重大な塊がもはや生じない温度範囲への冷却の過程で、製品が不所望の凝集を生じることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る方法の好適かつ例示的な実施形態が必要とするプラント関連の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明において好適には粉砕に使用されるピンミルのピンプレートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る方法を実施するためのプラントを示す。本発明に係る方法においては、二段階の粉砕プロセスが行われる。二段階の粉砕プロセスには、冷却される硫黄・煤複合材料における小さな塊の形成が回避されるという大きな利点がある。同時に、二段階の粉砕プロセスにおいて、最終製品は、第2ミルで冷却されるか、又は単一のミルのみ使用される場合には、その単一のミルを二回目に通過するときに冷却される。このように、二段階の粉砕プロセスを採用することにより、PTFE粉末において微細な均質化を保証することができる。図示のプラントは、本発明に係るプロセスを連続的なプロセスとして作動させることを特徴としている。従来とは異なり、バッチ方式、例えばミル充填量で指定されるバッチで作動することは想定されていない。これは、品質の向上をもたらす。バッチ毎に生じる典型的な品質の変動は、もはや問題にならない。
【0032】
本発明に係る方法によって製造される均質化混合物は、炭素、硫黄、並びにPTFE(ポリテトラフルオロエチレンとしても知られている)の混合物である。炭素は、大部分が煤として使用される。
【0033】
図1には、カーボンバンカー又は煤バンカー1が明示されている。そのバンカーから、投与装置又は投与スクリュー2を介して煤が重量によって投与される。その投与量は、完成した均質化混合物における煤の割合が約25 m%~40 m%、即ち質量%となるよう設定されるのが好適である。煤は、セルホイール仕切り3を介して、好適には重力の影響を受けつつ、以下においてより詳細に説明するミル供給ライン4に到達する。
【0034】
図1には、硫黄バンカー5も明示されている。粉末状硫黄は、硫黄バンカーから、やはり好適には重力の影響を受けつつ、投与装置又は投与スクリュー6に到達する。その投与量は、完成した均質化混合物における硫黄の割合が約50 m%~70 m%となるよう設定されるのが好適である。投与装置又は投与スクリュー6は、加熱されている。この目的のために、投与スクリューは通常、好適には温度制御又は温度調節された1個又は複数の加熱要素を投与管に有する。加熱要素は、特定の温度に設定されるため、硫黄は温度の影響によって投与中に粉末から液体に状態が変化する。従って、硫黄は、完全に液体状態で投与装置から離れる。
【0035】
正確な投与は、後のバッテリーセルの安定した製品品質にとって重要である。従って、特に投与管の温度制御又は温度調節は正確でなければならない。なぜなら、硫黄は、特殊な溶融粘度挙動を示すからである。硫黄は、約119℃の融点を有する。硫黄を溶かすと、最初は低粘度の液体が生じる。更に加熱するに伴い粘度が増加し、187℃で最大になる。更に加熱すると、粘度が再び低下する。このように、正確な投与を実現するには、硫黄の温度を注意深く制御する必要がある。
【0036】
硫黄は、好適には、重力の影響を受けつつ、インジェクタ7内に到達する。
【0037】
インジェクタ7には、ガス供給装置8から加熱・加圧されたインジェクタガスが供給される。殆どの場合、インジェクタガスは、100℃~200℃の温度で予熱された状態で供給される。
【0038】
インジェクタガスとしては、窒素を使用するのが好適である。窒素には、加熱したとしても硫黄と顕著に反応することがないという利点がある。ただし、他の不活性ガスを使用することも可能である。しかし、窒素は、プロセス効率の理由により明らかに好適である。
【0039】
図1に示すように、インジェクタ7の上流側には、インジェクタガスの温度を適切に制御する加熱要素9が設けられている。インジェクタガスは、ミル供給ライン4を介してインジェクタ7から離れ、第1ミル方向に流れる。この場合、インジェクタガスの温度は、硫黄が搬送中にインジェクタガス内で液体のままであると共に、結晶化することがないよう制御される。インジェクタの圧力は、硫黄がインジェクタから第1ミル10内に搬送されるよう選択される。硫黄を含むインジェクタガスが第1ミルに到達する前に、管交差部4aにて、煤がミル供給ライン4に供給される。インジェクタガスに支持されつつ、液体硫黄及び煤が第1ミル10又は第1ミル10の粉砕チャンバに到達する。第1ミル10は、典型的にはインパクトミルである。理想的には、いわゆるピンミルが使用される。
【0040】
ピンミルにおいては、粉砕工具として粉砕ディスクが使用され、その粉砕ディスクには、
図2の好適な実施形態に示すように、互いに距離を置いて配置されたピンが設けられている。原則的には、少なくとも1個の固定されたピンディスク23と、少なくとも1個の回転するピンディスク24が使用されるが、互いに反対方向に回転するピンディスクも想定可能である。粉砕される材料は、ピンディスク23,24又は好適には固定ピンディスクにおいて、ピンが取り付けられていない中央部Zに主に供給される。そこから遠心力によって外方に向けて飛ばされた後、殆どが外部に放出される。この場合、粉砕プロセスは、ピン25との衝突及び粒子相互の衝突によって行われる。
【0041】
原則的には、回転するピンディスクは、速度制御又は速度調節されている。原則的には、ピンディスクの回転が高速であるほど、粉砕はより微細である。
【0042】
硫黄及び煤は、粉砕により、微細に分散されると共に、良好に混合される。粉砕が第1ミル10内において高温ガス作動で行われるため、液体硫黄は煤の細孔に吸収される。これにより、上述した意味での複合材料が形成される。
【0043】
一回目の粉砕が終了した後、煤及び硫黄の複合材料がミルの下方におけるバンカー11内に落下する。
【0044】
図1に明示されているように、インジェクタガス又は原則的に窒素は、循環するように移動する。一回目の粉砕後における過剰なインジェクタガスは、フィルタ12によって浄化され、インジェクタ13を介して粉砕プラントの外部に導出される。過剰なインジェクタガスはその後、好適には、インジェクタガス供給装置8又は窒素供給装置に再び加えられる(図示せず)。なお、インジェクタガスの放出は、ファン(図示せず)によって実現してもよい。
【0045】
硫黄・煤複合材料は、バンカー11から、原則的に速度調節又は速度制御されたセルホイール仕切り14内に落下する。複合材料は、そのセルホイール仕切り14から貯蔵容器15内に放出される。この貯蔵容器15内には、投与装置又は投与スクリュー16を介して自由に流動可能なPTFEがPTFEバンカー17から添加される。PTFE粉末は、重力の影響を受けつつ、投与装置又は投与スクリュー16内に落下する。粉末は、その投与装置から貯蔵容器15内に搬送される。
【0046】
煤・硫黄・PTFE混合物は、貯蔵容器15から、更なる速度調節又は速度制御されたセルホイール仕切り18を介して、第2インパクトミル19に連続的に導入される。この場合も、インパクトミル19は、好適には、ピンミルとして構成されている。上述したことは、この場合も同様に当てはまる。
【0047】
ただし、この第2インパクトミルにおいては、高温ガスを使用した粉砕は行われない。その代わりに、PTFE及び煤・硫黄混合物は、均質化されるのみならず、粉砕プロセスによって更なる処理のために冷却される。この二回目の粉砕プロセス中に冷却が行われ、冷却中に形成される可能性のある硫黄の塊が二回目の粉砕プロセスによって即座に粉砕されるから、冷却プロセス中に粗くて硬い硫黄の塊が生じることはない。更に、PTFE粉末が均一かつ微細に分散された状態で存在している。
【0048】
炭素、硫黄、並びにPTFEの均質化混合物の形態の最終製品は、更なるセルホイール仕切り20を介して放出される。過剰なプロセスガスは、フィルタ21によって濾過され、更なるインジェクタ22によって粉砕プラントから放出される。代替的に、真空ファンを使用して放出をしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 煤用バンカー
2 煤用の投与スクリュー
3 煤用のセルホイール仕切り
4 ミル供給ライン
4a ミル供給ライン内に煤を供給するための管交差部
5 硫黄用バンカー
6 硫黄用の加熱された投与スクリュー
7 インジェクタ
8 インジェクタガス供給装置
9 インジェクタガス用の加熱要素
10 第1ミル
11 第1ミル下方における硫黄・煤複合材料用のバンカー
12 フィルタ
13 インジェクタ
14 硫黄・煤混合物用のセルホイール仕切り
15 貯蔵容器
16 粉末状PTFE用の投与スクリュー
17 PTFE用バンカー
18 硫黄・煤及びPTFEの混合物用のセルホイール仕切り
19 第2インパクトミル
20 更なるセルホイール仕切り
21 更なるフィルタ
22 更なるインジェクタ
23 (通常は固定された)ピンディスク
24 (回転する)ピンディスク
25 ピンディスクにおけるピン又はインパクトピン
Z ピンディスクの中央部