(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】撥水剤組成物及びその製造方法、並びに撥水性繊維製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20230705BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230705BHJP
D06M 15/277 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C09K3/18 104
D06M15/643
D06M15/277
(21)【出願番号】P 2021215090
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】前田 高輔
(72)【発明者】
【氏名】米元 篤史
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045586(JP,A)
【文献】特開2021-143292(JP,A)
【文献】特開2017-155095(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163570(WO,A1)
【文献】特表2019-534908(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
D06M 15/643
D06M 15/277
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノ変性シリコーン(α)と、撥水性重合体(β)と、有機溶剤(γ)とを含む撥水剤組成物であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)が、下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、
R
20、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、
R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、そして、
aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表され、
前記撥水性重合体(β)が、下記一般式(A-1):
【化2】
[式(A-1)中、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、そして、
R
2は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基を表す。]
で表される単量体(A-1)に由来する構成単位、及び/又は下記一般式(A-f):
【化3】
[式(A-f)中、
X
1は水素原子、1価の有機基又はハロゲン原子を表し、
Y
1は-O-又は-NH-を表し、
Z
1は直接結合又は2価の有機基を表し、そして、
Rは炭素数1~20のフルオロアルキル基を表す。]
で表される単量体(A-f)に由来する構成単位を有し、
前記有機溶剤(γ)は、
JIS K8001:2017に準拠した溶解の程度として規定される、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が10mL超である有機溶剤である、
撥水剤組成物。
【請求項2】
前記オルガノ変性シリコーン(α)と前記撥水性重合体(β)との合計100質量部に対する前記オルガノ変性シリコーン(α)の量が10~90質量部である、請求項1に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
前記撥水性重合体(β)が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選択される1種以上である単量体(VC)に由来する構成単位を更に含む、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
前記撥水性重合体(β)が、下記一般式(A-2):
【化4】
[式(A-2)中、
R
11は水素原子又はメチル基を表し、
R
12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、
Zはエステル基又はアミド基を表し、
Wは-CO-R
13(式中、R
13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。)で表される基、-NH-CO-NH
2基、又は下記式(A-3):
【化5】
で表される基を表す。]
で表される単量体(A-2)に由来する構成単位を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項5】
前記撥水性重合体(β)が、
(B1)HLBが7~18であり、下記一般式(I-1):
【化6】
[式(I-1)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、Y
1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、
(B2)HLBが7~18であり、下記一般式(II-1):
【化7】
[式(II-1)中、R
4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Y
2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、及び
(B3)HLBが7~18であり、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種である反応性活性剤(B)に由来する構成単位を更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項6】
オルガノ変性シリコーン(α)と、有機溶剤(γ)とを含む、アクリル系撥水剤用の撥水助剤であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)が、下記一般式(1):
【化8】
[式(1)中、
R
20、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、
R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、そして、
aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表され、
前記有機溶剤(γ)は、
JIS K8001:2017に準拠した溶解の程度として規定される、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が10mL超である有機溶剤である、
撥水助剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)及び前記有機溶剤(γ)を含む乳化分散体と、前記撥水性重合体(β)を含む乳化分散体とを混合する混合工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)及び前記有機溶剤(γ)を含む乳化分散体と、前記撥水性重合体(β)の原料である単量体成分とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後及び/又は前記混合工程中に前記単量体成分を重合させて前記撥水性重合体(β)を生成する重合工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)と、前記撥水性重合体(β)の原料である単量体成分と、前記有機溶剤(γ)とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後及び/又は前記混合工程中に前記単量体成分を重合させて前記撥水性重合体(β)を生成する重合工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
繊維製品と、前記繊維製品に付着した、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物とを有する、撥水性繊維製品。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物を含む処理液で繊維製品を処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物及びその製造方法、並びに撥水性繊維製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製品等に撥水性を付与するために、変性シリコーンと撥水性重合体とを有する撥水剤組成物が使用されている。
特許文献1は、特定のオルガノ変性シリコーンを含む撥水助剤を記載し、特許文献2は、含フッ素単量体及び非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する撥水撥油性重合体、特定構造のシリコーン重合体、及び液状媒体を含む表面処理剤を記載する。また、特許文献3は、シリコーン重合体、シリコーン重合体の存在下で重合されており、含フッ素重合体及び非フッ素重合体からなる群から選択された少なくとも1種の撥水性重合体、水又は水と有機溶媒の混合物である液状媒体、及び乳化剤を含んでなり、シリコーン重合体の量が、シリコーン重合体と撥水性重合体の合計に対して、20重量%以上である柔軟剤組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-155095号公報
【文献】国際公開第2019/163570号
【文献】国際公開第2020/158191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載される技術では、シリコーンの乳化分散物と、撥水性重合体の乳化分散物とを混合する。しかしこの方法では、複数の乳化分散系の混合という手法に起因して、撥水剤組成物の安定性が悪いという問題があった。一方、特許文献3に記載される技術によれば、複数の乳化分散物の混合による安定性不足の問題は回避され得る。しかし特許文献3に記載される技術によってもなお、撥水剤組成物の安定性には改良の余地があった。また、これらの先行技術において撥水性についても改良の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、上記の課題を解決し、撥水性及び耐久撥水性に優れる撥水性繊維製品の製造を可能にするとともに貯蔵安定性にも優れる撥水剤組成物及びその製造方法、並びに撥水性繊維製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
オルガノ変性シリコーン(α)と、撥水性重合体(β)と、有機溶剤(γ)とを含む撥水剤組成物であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)が、下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、
R
20、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、
R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、そして、
aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表され、
前記撥水性重合体(β)が、下記一般式(A-1):
【化2】
[式(A-1)中、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、そして、
R
2は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基を表す。]
で表される単量体(A-1)に由来する構成単位、及び/又は下記一般式(A-f):
【化3】
[式(A-f)中、
X
1は水素原子、1価の有機基又はハロゲン原子を表し、
Y
1は-O-又は-NH-を表し、
Z
1は直接結合又は2価の有機基を表し、そして、
Rは炭素数1~20のフルオロアルキル基を表す。]
で表される単量体(A-f)に由来する構成単位を有し、
前記有機溶剤(γ)は、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が10mL超である有機溶剤である、
撥水剤組成物。
[2]
前記オルガノ変性シリコーン(α)と前記撥水性重合体(β)との合計100質量部に対する前記オルガノ変性シリコーン(α)の量が10~90質量部である、上記態様1に記載の撥水剤組成物。
[3]
前記撥水性重合体(β)が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選択される1種以上である単量体(VC)に由来する構成単位を更に含む、上記態様1又は2に記載の撥水剤組成物。
[4]
前記撥水性重合体(β)が、下記一般式(A-2):
【化4】
[式(A-2)中、
R
11は水素原子又はメチル基を表し、
R
12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、
Zはエステル基又はアミド基を表し、
Wは-CO-R
13(式中、R
13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。)で表される基、-NH-CO-NH
2基、又は下記式(A-3):
【化5】
で表される基を表す。]
で表される単量体(A-2)に由来する構成単位を更に含む、上記態様1~3のいずれかに記載の撥水剤組成物。
[5]
前記撥水性重合体(β)が、
(B1)HLBが7~18であり、下記一般式(I-1):
【化6】
[式(I-1)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、Y
1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、
(B2)HLBが7~18であり、下記一般式(II-1):
【化7】
[式(II-1)中、R
4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Y
2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、及び
(B3)HLBが7~18であり、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種である反応性活性剤(B)に由来する構成単位を更に有する、上記態様1~4のいずれかに記載の撥水剤組成物。
[6]
オルガノ変性シリコーン(α)と、有機溶剤(γ)とを含む、アクリル系撥水剤用の撥水助剤であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)が、下記一般式(1):
【化8】
[式(1)中、
R
20、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、
R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、そして、
aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表され、
前記有機溶剤(γ)は、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が10mL超である有機溶剤である、
撥水助剤。
[7]
上記態様1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)及び前記有機溶剤(γ)を含む乳化分散体と、前記撥水性重合体(β)を含む乳化分散体とを混合する混合工程を含む、方法。
[8]
上記態様1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)及び前記有機溶剤(γ)を含む乳化分散体と、前記撥水性重合体(β)の原料である単量体成分とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後及び/又は前記混合工程中に前記単量体成分を重合させて前記撥水性重合体(β)を生成する重合工程と、
を含む、方法。
[9]
上記態様1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物の製造方法であって、
前記オルガノ変性シリコーン(α)と、前記撥水性重合体(β)の原料である単量体成分と、前記有機溶剤(γ)とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後及び/又は前記混合工程中に前記単量体成分を重合させて前記撥水性重合体(β)を生成する重合工程と、
を含む、方法。
[10]
繊維製品と、前記繊維製品に付着した、上記態様1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物とを有する、撥水性繊維製品。
[11]
上記態様1~5のいずれかに記載の撥水剤組成物を含む処理液で繊維製品を処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、撥水性及び耐久撥水性に優れる撥水性繊維製品の製造を可能にするとともに貯蔵安定性にも優れる撥水剤組成物及びその製造方法、並びに撥水性繊維製品及びその製造方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態(以下、本実施形態ともいう。)について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
[撥水剤組成物]
本発明の一態様は、オルガノ変性シリコーン(α)と、撥水性重合体(β)と、有機溶剤(γ)とを含む撥水剤組成物を提供する。
【0010】
<オルガノ変性シリコーン(α)>
オルガノ変性シリコーン(α)は、下記一般式(1):
【化9】
[式(1)中、
R
20、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
R
23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、
R
30、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数8~40のアルキル基を表し、そして、
aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR
20及びR
21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR
22及びR
23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表される。一般式(1)において、各構成単位は、ブロック、ランダム、交互配列のいずれであってもよい。
【0011】
一般式(1)中、炭素数1~4のアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0012】
一般式(1)中、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基としては、例えば、炭素数8~40のアラルキル基、下記一般式(2):
【化10】
[式(2)中、
R
40は、炭素数2~6のアルキレン基を表し、
R
41は、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、そして、
cは0~3の整数を表し、cが2又は3の場合、複数存在するR
41は同一であっても異なっていてもよい。]
で表される基、又は下記一般式(3):
【化11】
[式(3)中、
R
42は、炭素数2~6のアルキレン基を表し、
R
43は、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、そして、
dは0~3の整数を表し、dが2又は3の場合、複数存在するR
43は同一であっても異なっていてもよい。]
で表される基が挙げられる。
一般式(2)及び(3)中のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0013】
上記の炭素数8~40のアラルキル基としては、例えば、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。中でも、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、フェニルエチル基及びフェニルプロピル基が好ましい。
【0014】
上記一般式(2)で表される基において、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R40は炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、cは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0015】
上記一般式(3)で表される基において、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R42は炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、dは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0016】
上記の芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基としては、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、上記炭素数8~40のアラルキル基、及び上記一般式(2)で表される基が好ましく、得られる繊維製品の撥水性を向上できる点で、上記炭素数8~40のアラルキル基がより好ましい。
【0017】
上記の炭素数8~40のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数8~40のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、1-ヘキサコセニル基(C26)、1-オクタコセニル基(C28)、1-トリアコンテニル基(C30)、1-ドトリアコンテニル基(C32)等が挙げられる。炭素数8~40のアルキル基としては、炭素数12~36のアルキル基が好ましく、炭素数16~30のアルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数が小さい方が、繊維製品のチョークマークの抑制、及び撥水剤組成物の貯蔵安定性において有利である。一方、アルキル基の炭素数が大きい方が、撥水性において有利である。これらの性能のバランスの観点から、上記範囲の炭素数が好ましい。
【0018】
工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、一般式(1)中、R30、R31、R32、R33、R34及びR35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、中でもメチル基であることがより好ましい。また同様の理由で、R20、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0019】
一般式(1)中、aは0以上の整数である。工業的に製造しやすく、入手が容易であり、得られる繊維製品の樹脂コーティングに対する剥離強度がより優れるという点で、aは、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
【0020】
一般式(1)中、(a+b)は10~200である。工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、(a+b)は、20~100であることが好ましく、40~60であることがより好ましい。(a+b)が上記範囲内であると、シリコーン自体の製造や取り扱いが容易になる傾向にある。
【0021】
本実施形態のオルガノ変性シリコーン(α)は、従来公知の方法により合成することができる。本実施形態のオルガノ変性シリコーン(α)は、例えば、SiH基を有するシリコーンに、ビニル基を有する芳香族化合物及び/又はα-オレフィンをヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0022】
上記のSiH基を有するシリコーンとしては、例えば、重合度が10~200であるメチルハイドロジェンシリコーン、又は、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、メチルハイドロジェンシリコーンが好ましい。
【0023】
上記のビニル基を有する芳香族化合物は、上記一般式(1)中のR23において、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基の由来となる化合物である。ビニル基を有する芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、アリルフェニルエーテル、アリルナフチルエーテル、アリル-p-クミルフェニルエーテル、アリル-o-フェニルフェニルエーテル、アリル-トリ(フェニルエチル)-フェニルエーテル、アリル-トリ(2-フェニルプロピル)フェニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
上記のα-オレフィンは、上記一般式(1)中のR23において、炭素数8~40のアルキル基の由来となる化合物である。α-オレフィンとしては、例えば1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ヘキサコセン(C26)、1-オクタコセン(C28)、1-トリアコンテン(C30)、1-ドトリアコンテン(C32)等の、炭素数8~40のα-オレフィンが挙げられる。
【0025】
上記のヒドロシリル化反応は、必要に応じて触媒の存在下、上記SiH基を有するシリコーンに、上記ビニル基を有する芳香族化合物及び上記α-オレフィンを段階的に或いは一度に反応させることにより行ってもよい。
【0026】
ヒドロシリル化反応に用いられるSiH基を有するシリコーン、ビニル基を有する芳香族化合物及びα-オレフィンの使用量はそれぞれ、SiH基を有するシリコーンのSiH基当量、又は数平均分子量等に応じて適宜選択され得る。
【0027】
ヒドロシリル化反応に用いられる触媒としては、例えば、白金、パラジウム等の化合物が挙げられ、中でも白金化合物が好ましい。白金化合物としては、例えば、塩化白金(IV)等が挙げられる。
【0028】
ヒドロシリル化反応の反応条件は、特に制限はなく、適宜調整することができる。反応温度は、例えば10~200℃、好ましくは50~150℃である。反応時間は、例えば、反応温度が50~150℃のとき、3~12時間とすることができる。
【0029】
また、ヒドロシリル化反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。無溶媒下でも反応は進行するが、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、ジオキサン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0030】
撥水剤組成物において、オルガノ変性シリコーン(α)と撥水性重合体(β)との合計100質量部に対するオルガノ変性シリコーン(α)の量は、チョークマーク抑制の観点からは多い方が好ましく、撥水性(初期及び耐久)の観点からは少ない方が好ましい。当該量は、これらの性能のバランスの観点から、好ましくは10~90質量部、より好ましくは10~80質量部、より好ましくは15~70質量部、更に好ましくは20~60質量部である。
【0031】
<撥水性重合体(β)>
撥水性重合体(β)は、下記一般式(A-1):
【化12】
[式(A-1)中、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、そして、
R
2は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基を表す。]
で表される単量体(A-1)(以下、(A1)成分ともいう。)に由来する構成単位、及び/又は下記一般式(A-f):
【化13】
[式(A-f)中、
X
1は水素原子、1価の有機基又はハロゲン原子を表し、
Y
1は-O-又は-NH-を表し、
Z
1は直接結合又は2価の有機基を表し、そして、
Rは炭素数1~20のフルオロアルキル基を表す。]
で表される単量体(A-f)(以下、(Af)成分ともいう。)に由来する構成単位を有する。
【0032】
撥水性重合体(β)は、上記の(A1)成分及び/又は(Af)成分に由来する構成単位のみで構成されてもよいし、その他の1種又は2種以上の構成単位を更に有してもよい。撥水性重合体(β)の少なくとも1種の構成単位又は当該構成単位に対応する(すなわち当該構成単位を形成する)単量体は、架橋剤と反応可能である官能基、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することができる。この場合、得られる繊維製品の耐久撥水性を更に向上させることができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。当該官能基がアミノ基である場合、得られる繊維製品の風合いを更に向上させることができる。
【0033】
(単量体(A-1))
上記(A1)成分は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、撥水性と風合いの観点から、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12以上の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、R2は無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0034】
上記炭化水素基の炭素数は、撥水性の観点から、好ましくは12~40、より好ましくは12~30、更により好ましくは12~24である。上記炭化水素基の炭素数は、12~22であることが特に好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が18~22の直鎖状のアルキル基である。
【0035】
上記(A1)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルが挙げられる。
【0036】
なお本開示で、「(メタ)アクリル酸エステル」とは「アクリル酸エステル」又はそれに対応する「メタクリル酸エステル」を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同義である。
【0037】
上記(A1)成分は、1分子内に重合性不飽和基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。
【0038】
上記(A1)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(単量体(A-f))
上記(Af)成分は、一般に、フルオロアルキル基、及びアクリル酸基若しくはメタクリル酸基若しくはα-置換アクリル酸基を有する重合性化合物である。
一般式(A-f)中、Z1は、直接結合又は2価の有機基を表す。本開示で、有機基とは炭素数1以上の基を意味する。Z1は、例えば、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH2)n-(式中、nは1~10である。)で示される基、或いは、式-Rb(Ra)N-SO2-又は式-Rb(Ra)N-CO-で示される基(式中、Raは、炭素数1~10のアルキル基であり、Rbは、炭素数1~10の直鎖アルキレン基又は分岐状アルキレン基である。)、或いは、式-CH2CH(ORc)CH2-(Ar-O)p-(式中、Rcは、水素原子、又は、炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミル又はアセチルなど)を表し、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基を表し、pは0又は1を表す。)で示される基、或いは、式-CH2-Ar-(O)q-(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基を表し、qは0又は1である。)で示される基、又は、-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基若しくは-(CH2)m-S-(CH2)n-基(但し、mは1~10、nは0~10、である)であってよい。
【0040】
X1は、水素原子、1価の有機基又はハロゲン原子を表し、好ましくは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFXaXb基(但し、Xa及びXbはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、或いは置換又は非置換のフェニル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、シアノ基、又はCF3基であり、更に好ましくは、メチル基又は塩素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0041】
Z1は、好ましくは、直接結合、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基又は環状脂肪族基、-CH2CH2N(Re)SO2-基(但し、Reは炭素数1~4のアルキル基である。)、-CH2CH(OZ2)CH2-(Ph-O)p-基(但し、Z2は水素原子又はアセチル基を表し、Phはフェニレン基を表し、pは0又は1である。)、-(CH2)n-Ph-O-基(但し、Phはフェニレン基を表し、nは0~10である。)、又は、-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基若しくは-(CH2)m-S-(CH2)n-基(但し、mは1~10であり、nは0~10である。)である。
【0042】
Z1は、より好ましくは、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基又は環状脂肪族基、上記-CH2CH2N(Re)SO2-基、上記-CH2CH(OZ2)CH2-(Ph-O)p-基、上記-(CH2)n-Ph-O-基、上記-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基、又は上記-(CH2)m-S-(CH2)n-基である。
【0043】
一般式(A-f)中のZ1が有する脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1~4、例えば1又は2である。)であることが好ましい。芳香族基又は環状脂肪族基は、置換又は非置換であってよい。S基又はSO2基はR基に直接に結合していてよい。
【0044】
一般式(A-f)中、Rは、炭素数1~20のフルオロアルキル基を表し、好ましくは、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。Rは、パーフルオロアルキル基であることがより好ましい。R基の炭素数は、1~12、例えば1~6、特に4~6、特別に6であることが好ましい。R基の例は、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF3)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-(CF2)4CF(CF3)2、-C8F17等である。
【0045】
撥水性重合体(β)が、(A1)成分に由来する構造単位と(Af)成分に由来する構造単位とを含有する場合、その含有割合は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との比率(A1)/(Af)が、70/30~30/70であることが好ましい。(A1)/(Af)が上記の範囲内であると、得られる繊維製品の撥水性能とコストのバランスの観点で良好となる。
【0046】
撥水性重合体(β)の原料である単量体成分の全量に対する(A1)成分と(Af)成分との合計質量比率(これは、撥水性重合体(β)の全構成単位に対する(A1)成分に由来する構成単位と(Af)成分に由来する構成単位との合計質量比率に対応する。他の単量体の量についても同様である。)は、好ましくは、60~100質量%、より好ましくは70~99質量%、更に好ましくは75~98質量%である。
【0047】
(単量体(A-2))
一態様において、撥水性重合体(β)は、下記一般式(A-2):
【化14】
[式(A-2)中、
R
11は水素原子又はメチル基を表し、
R
12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、
Zはエステル基又はアミド基を表し、そして、
Wは-CO-R
13(式中、R
13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。)で表される基、-NH-CO-NH
2基、又は下記式(A-3):
【化15】
で表される基を表す。]
で表される単量体(A-2)(以下、(A2)成分ともいう。)に由来する構成単位を更に含んでもよい。
【0048】
一般式(A-2)中、R12は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式の環状を有していてもよい。
【0049】
上記式(A-2)中、Zがエステル基の場合、R12は、炭素数2~4の炭化水素基であり、Wは、-NH-CO-NH2で表される基、又は上記式(A-3)で表される基であることが好ましい。Zがアミド基である場合、R12は、炭素数2~4の炭化水素基であり、Wは、-CO-R13で表される基であり、R13の炭素数が1~2であることが好ましい。
【0050】
上記(A2)成分としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド、2-メチルプロペン酸[2-(2-オキソ-2-イミダゾリジニル)エチル]、N-[2-(2-オキソイミダゾリジン-3-イル)エチル]メタクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、繊維製品の耐久撥水性の観点から、上記(A2)成分としては、ダイアセトンアクリルアミド、2-メチルプロペン酸[2-(2-オキソ-2-イミダゾリジニル)エチル]が好ましい。
【0051】
上記(A2)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
撥水性重合体(β)において、(A1)成分に由来する構成単位と(A2)成分に由来する構成単位との含有割合は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との比(A1)/(A2)が、99.9/0.1~70/30であることが好ましく、99.8/0.2~80/20であることがより好ましく、99.7/0.3~90/10であることがさらに好ましい。(A1)/(A2)が上記の範囲内であると、得られる繊維製品の耐久撥水性、水はじき性がより良好となる。
【0053】
撥水性重合体(β)の原料である単量体成分の全量に対する(A1)成分と(A2)成分との合計質量比率は、好ましくは、10~100質量%、より好ましくは20~95質量%、更に好ましくは30~90質量%である。
【0054】
(反応性活性剤(B))
撥水性重合体(β)は、一態様において、乳化重合又は分散重合によって得ることができる。重合後の撥水性重合体(β)の撥水剤組成物中での乳化安定性を向上できる点で、撥水性重合体(β)の原料である単量体成分は、反応性活性剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を更に含むことが好ましい。反応性活性剤(B)は、
(B1)HLBが7~18であり、下記一般式(I-1):
【化16】
[式(I-1)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、Y
1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、
(B2)HLBが7~18であり、下記一般式(II-1):
【化17】
[式(II-1)中、R
4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Y
2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
で表される化合物、及び
(B3)HLBが7~18であり、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0055】
本開示で、「反応性活性剤」とは、ラジカル反応性を有する界面活性剤、より具体的には分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する界面活性剤のことであり、(メタ)アクリル酸エステルのような単量体と共重合させることができるものである。
【0056】
また、本開示を通じ、「HLB」とは、グリフィンのHLBに準じたものであり、グリフィンの式を下記の式に変更したものである。ここで、親水基とはエチレンオキサイド基を指す。
HLB=(親水基×20)/分子量
【0057】
上記(B1)~(B3)の化合物のHLBは、7~18であり、本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化重合時又は分散重合時、及び重合後の撥水剤組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という)の点で、9~15が好ましい。さらには、撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で、上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の反応性活性剤(B)を併用することがより好ましい。
【0058】
上記一般式(I-1)で表される反応性活性剤(B1)において、R3は水素原子又はメチル基であり、(A1)成分及び/又は(Af)成分との共重合性の点で、メチル基であることがより好ましい。
【0059】
一般式(I-1)中、Xは、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0060】
一般式(I-1)中、Y1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Y1におけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0061】
上記一般式(I-1)で表される化合物としては、下記一般式(I-2):
【化18】
[式(I-2)中、
R
3は水素原子又はメチル基を表し、
Xは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、
A
1Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、
mは上記HLBの範囲内になるように適宜選択され、一態様において、1~80の整数であり、mが2以上のときm個のA
1Oは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物が好ましい。
【0062】
一般式(I-2)において、R3は水素原子又はメチル基であり、(A1)成分及び/又は(Af)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。
【0063】
一般式(I-2)において、Xは炭素数1~6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0064】
一般式(I-2)において、A1Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。A1Oの種類及び組み合わせ、並びにmの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、mは1~80の整数が好ましく、1~60の整数であることがより好ましい。mが2以上のときm個のA1Oは同一であっても異なっていてもよい。また、A1Oが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0065】
上記一般式(I-2)で表される(B1)成分は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王株式会社製の「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等を挙げることができる。
【0066】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-1)で表される(B2)成分において、R4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であり、トリデセニル基、トリデカジエニル基、テトラデセニル基、テトラジエニル基、ペンタデセニル基、ペンタデカジエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、R4は炭素数14~16の1価の不飽和炭化水素基がより好ましい。
【0067】
Y2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Y2におけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、アルキレンオキシ基はエチレンオキシ基がより好ましい。
【0068】
上記一般式(II-1)で表される化合物としては、下記一般式(II-2):
【0069】
【化19】
[式(II-2)中、
R
4は、重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、
A
2Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、
nは、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~50の整数が好ましく、nが2以上のときn個のA
2Oは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される化合物が好ましい。
【0070】
上記一般式(II-2)で表される化合物におけるR4は、上述した一般式(II-1)におけるR4と同様のものが挙げられる。
【0071】
A2Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、A2Oの種類及び組み合わせ、並びにnの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、A2Oはエチレンオキシ基がより好ましく、nは1~50の整数が好ましく、5~20の整数がより好ましく、8~14の整数がさらに好ましい。nが2以上のときn個のA2Oは同一であっても異なっていてもよい。また、A2Oが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0072】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-2)で表される(B2)成分は、従来公知の方法で対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0073】
上記対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールには、工業的に製造された純品または混合物のほか、植物等から抽出・精製された純品又は混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツの殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3-[8(Z),11(Z),14-ペンタデカトリエニル]フェノール、3-[8(Z),11(Z)-ペンタデカジエニル]フェノール、3-[8(Z)-ペンタデセニル]フェノール、3-[11(Z)-ペンタデセニル]フェノール等が挙げられる。
【0074】
本実施形態にて使用される(B3)成分は、HLBが7~18である、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)を含んでいてもよい脂肪酸のモノ又はジグリセライド、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸(リシノール酸、リシノエライジン酸、2-ヒドロキシテトラコセン酸等)を含む脂肪酸のトリグリセライドを挙げることができる。本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のトリグリセライドのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ヒマシ油(リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド)の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。さらに、アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化安定性の点で、20~50モルがより好ましく、25~45モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキサイドが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0075】
本実施形態にて使用される(B3)成分は、従来公知の方法でヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂にアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド、すなわちヒマシ油に苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0076】
本実施形態の撥水性重合体(β)における上記(B)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性、及び本実施形態の撥水性重合体(β)の乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性を向上できる観点で、撥水性重合体(β)を構成する単量体成分の全量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0077】
(単量体(C))
撥水性重合体(β)は、得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、下記(C1)、(C2)、(C3)及び(C4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(C)(以下、(C)成分ともいう)に由来する構成単位を更に含むことが好ましい。
【0078】
(C1)下記一般式(C-1):
【化20】
[式(C-1)中、R
5は水素又はメチル基を表し、R
6はヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を表し、ただし、分子内における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2以下である。]
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下、(C1)成分ともいう。)
【0079】
(C2)下記一般式(C-2):
【化21】
[式(C-2)中、R
7は水素又はメチル基を表し、R
8は置換基を有していてもよい炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を表す。]
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下、(C2)成分ともいう。)
【0080】
(C3)下記一般式(C-3):
【化22】
[式(C-3)中、R
9は無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基を表す。]
で表されるメタクリル酸エステル単量体(以下、(C3)成分ともいう。)
【0081】
(C4)下記一般式(C-4):
【化23】
[式(C-4)中、R
10は水素又はメチル基を表し、pは2以上の整数を表し、Sは(p+1)価の有機基を表し、Tは重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。]
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下、(C4)成分ともいう。)
【0082】
上記(C1)成分は、エステル部分にヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。架橋剤と反応可能な点から、上記炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの架橋剤と反応可能な基を有する(C1)成分に由来する構成単位を有する撥水性重合体(β)を、架橋剤とともに繊維製品に処理した場合に、得られる繊維製品の風合を維持したまま、耐久撥水性を向上することができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基であってもよい。
【0083】
上記鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、上記官能基の他に置換基を更に有していてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、直鎖状であること、及び/又は、飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0084】
具体的な(C1)成分としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。さらに得られる繊維製品の風合を向上させる点で、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。
【0085】
配合する(C1)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。配合する(C1)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0086】
上記(C2)成分は、エステル部分に炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、環状炭化水素基としては、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。これら環状炭化水素基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。ただし、置換基が炭化水素基の場合、置換基及び環状炭化水素基の炭素数の合計が11以下となる炭化水素基が選ばれる。また、これら環状炭化水素基は、エステル結合に直接結合していることが、耐久撥水性向上の観点から好ましい。環状炭化水素基は、脂環式であっても芳香族であってもよく、脂環式の場合、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸イソボルニルがより好ましい。
【0087】
配合する(C2)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C2)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0088】
上記(C3)成分は、エステル部分のエステル結合に、無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基が直接結合したメタクリル酸エステル単量体である。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~2の直鎖炭化水素基、及び、炭素数3~4の分岐炭化水素基が好ましい。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。具体的な化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0089】
配合する(C3)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C3)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0090】
上記(C4)成分は、1分子内に3以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。本実施形態では、上記一般式(C-4)におけるTが(メタ)アクリロイルオキシ基である、1分子内に3以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。一般式(C-4)において、p個のTは同一であっても異なっていてもよい。具体的な化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、テトラメチロールメタンテトラアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートがより好ましい。
【0091】
配合する(C4)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C4)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0092】
配合する(C)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0093】
(単量体(VC))
撥水性重合体(β)は、剥離強度の観点から、塩化ビニル及び塩化ビニリデンからなる群から選択される1種以上である単量体(VC)(本開示で、「(VC)成分」ともいう。)に由来する構成単位を更に含むことが好ましい。
【0094】
(VC)成分は、繊維製品の風合いを維持する観点から、塩化ビニルが好ましい。
【0095】
配合する(VC)成分の量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性、耐久撥水性及び剥離強度の観点から、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。配合する(VC)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(Af)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性、耐久撥水性及び風合いの観点から、100質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましい。
【0096】
(単量体(D))
撥水性重合体(β)は、(A1)成分及び/又は(Af)成分と共重合可能な単官能の単量体(D)(以下、(D)成分ともいう)に由来する構成単位を、本発明の効果を損なわない範囲において更に含んでよい。
【0097】
(D)成分としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エチレン、スチレン等の、フッ素を含まない、(VC)成分以外のビニル系単量体等が挙げられる。なお、炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭化水素基に、ビニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基等の置換基を有していてもよく、第4級アンモニウム基等の、架橋剤と反応可能な基以外の置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合等を有していてもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも得られる繊維製品のコーティングに対する剥離強度を向上できる点で、(メタ)アクリロイルモルホリンがより好ましい。
【0098】
本実施形態の撥水性重合体(β)の重量平均分子量は3万以上であることが好ましい。重量平均分子量が3万以上であると、得られる繊維製品の撥水性が一層向上する傾向がある。さらに、撥水性重合体(β)の重量平均分子量は、10万以上であることがより好ましい。この場合、得られる繊維製品は、より十分に撥水性を発揮させることができる。撥水性重合体(β)の重量平均分子量の上限は500万程度が好ましい。
【0099】
本開示で、撥水性重合体(β)の重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)装置(例えば、東ソー(株)製GPC「HLC-8020」)により、カラム温度40℃、流量1.0ml/分の条件下で、溶離液にテトラヒドロフランを用いて測定し、標準ポリスチレン換算での値をいう。なお、カラムは、東ソー(株)製の商品名TSK-GEL G5000HHR、G4000HHR、G3000HHRの3本を接続したものを用いる。
【0100】
撥水性重合体(β)の105℃における溶融粘度は1000Pa・s以下であることが好ましい。105℃における溶融粘度が1000Pa・s以下である場合、得られる繊維製品の風合を良好に維持しやすくなる傾向にある。また、撥水性重合体(β)の溶融粘度が1000Pa・s以下である場合、撥水性重合体(β)を乳化又は分散して撥水剤組成物とした際に、撥水性重合体(β)が析出したり沈降したりすることを抑制できるため、撥水剤組成物の貯蔵安定性を良好に維持しやすくなる傾向にある。なお、105℃における溶融粘度は、500Pa・s以下であることがより好ましい。この場合、得られる繊維製品等は、十分に撥水性を発揮しつつ、風合もより優れたものとなる。撥水性重合体(β)の105℃における溶融粘度は、撥水性の観点から、例えば、10Pa・s以上、又は50Pa・s以上、又は100Pa・s以上であってよい。
【0101】
「105℃における溶融粘度」とは、高架式フローテスター(例えば、島津製作所製CFT-500)を用い、ダイ(長さ10mm、直径1mm)を取り付けたシリンダー内に撥水性重合体(β)を1g入れ、105℃で6分間保持し、プランジャーにより100kg・f/cm2の荷重を加えて測定したときの粘度をいう。
【0102】
<有機溶剤(γ)>
本実施形態の撥水剤組成物は、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が10mL超である有機溶剤(γ)を含む。上記の、有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量は、一態様において30mL超、好ましくは100mL超、より好ましくは1000mL超である。このような有機溶剤(γ)は、オルガノ変性シリコーン(α)が安定的に乳化分散してなる乳化分散体の形成に寄与し、したがって貯蔵安定性に優れる撥水剤組成物の形成に寄与する。本開示で、乳化分散又は乳化分散体とは、液体媒体中に、液体が乳化状態で存在し、及び/又は固体が分散状態で存在していることを意味する。なお、上記の有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量は、JIS K8001:2017に準拠し、本開示の[実施例]の項で説明する方法で測定される値である。
【0103】
理論に拘束されるものではないが、オルガノ変性シリコーン(α)を水含有媒体中に乳化分散させて乳化分散体又は撥水剤組成物を形成する際、有機溶剤(γ)は、オルガノ変性シリコーン(α)のO/W型乳化分散を促進することによって、オルガノ変性シリコーン(α)の水含有媒体中での乳化分散安定性の向上に寄与するものと推測される。
【0104】
有機溶剤(γ)は、オルガノ変性シリコーン(α)の乳化分散安定性向上効果が良好である点で、炭素と水素とで構成される構造(すなわち炭化水素構造)を分子内に有することが好ましい。このような観点で好ましい有機溶剤(γ)は、例えばエステル(具体例は、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチラート、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルグリコールアセテートなど)、ケトン(具体例は、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル(具体例は、ジブチルジグリコール、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなど)、アルコール(具体例は、1-ブタノール、1-ペンタノール、イソオクタノールなど)、芳香族系溶剤(具体例はトルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレンなど)、石油系溶剤(具体的には、イソパラフィン、鉱物油、ミネラルスピリット、ポリαオレフィンなどの合成油、など)、であってよく、これらの有機溶剤を、1種単独又は2種以上の組合せで使用できる。
【0105】
イソパラフィンの炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは9~20である。
このようなイソパラフィンとしては、IPソルベントIP-2028(炭素数10~16のイソパラフィン、出光興産株式会社製)などを挙げることができる。
【0106】
鉱物油としては、30℃における動粘度が50mm2/s以下の鉱物油が挙げられ、より具体的には、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカン、パラフィン等が挙げられる。なお上記動粘度は、JIS K 2283:2000に準拠した方法で測定される値である。パラフィンの炭素数は、例えば10~16であってよい。鉱物油は、1種単独又は2種以上の組合せで用いてよい。2種以上の組合せの場合には互いに相溶性であることが好ましい。鉱物油は市販品であってもよく、例えば、カクタスノルマルパラフィンN-12D、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンN-14(以上、ENEOS株式会社から入手可能)等を例示できる。
【0107】
ミネラルスピリットとしては、沸点130~230℃のものが特に好ましい。
【0108】
撥水剤組成物中の有機溶剤(γ)の量は、オルガノ変性シリコーン(α)の分散安定性の観点から、オルガノ変性シリコーン(α)100質量部に対して、好ましくは0.5~500質量部、より好ましくは1~400質量部、更に好ましくは1~300質量部、特に好ましくは1~200質量部である。有機溶剤(γ)の量は、撥水剤組成物の貯蔵安定性が良好であり撥水性が良好である点で、上記範囲であることが好ましい。
【0109】
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の撥水剤組成物は、有機溶剤(γ)に加えて水溶性有機溶剤を更に含んでいてもよい。本開示で、水溶性有機溶剤とは、本開示の[実施例]の項に記載の方法で評価される、20℃において有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量が、10mL以下である有機溶剤を意味する。水溶性有機溶剤としては、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられ、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びブチルジグリコールが特に好ましい。
【0110】
<乳化補助剤又は分散補助剤>
オルガノ変性シリコーン(α)を乳化分散させる場合、乳化補助剤又は分散補助剤として、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用してよい。乳化補助剤又は分散補助剤の含有量は、オルガノ変性シリコーン(α)100質量部に対して、0.5~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましく、1~30質量部であることがさらに好ましい。乳化補助剤又は分散補助剤の含有量が0.5質量部以上である場合、オルガノ変性シリコーン(α)の乳化分散体の分散安定性が一層向上する傾向にあり、50質量部以下である場合、撥水剤組成物の撥水性が一層向上する傾向にある。
【0111】
また、撥水性重合体(β)の重合又は乳化分散の際、乳化補助剤又は分散補助剤を用いてよい。用いる乳化補助剤又は分散補助剤は、オルガノ変性シリコーン(α)を乳化分散させる場合に用いるのと同様であってよい。乳化補助剤又は分散補助剤の含有量は、撥水性重合体(β)100質量部に対して、0.5~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましく、1~30質量部であることがさらに好ましい。乳化補助剤又は分散補助剤の含有量が0.5質量部以上である場合、撥水性重合体(β)の乳化分散体の分散安定性が一層向上する傾向にあり、50質量部以下である場合、撥水剤組成物の撥水性が一層向上する傾向にある。
【0112】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、炭素数8~24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8~24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8~24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8~24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8~24のアルキルイミダゾリン4級塩、などが挙げられる。これらの中でも乳化性と加工安定性の観点から、炭素数12~18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数12~18のジアルキルジメチルアンモニウム塩が好ましい。カチオン性界面活性剤の好適例は、ステアリルトリメチルアンモニウム硫酸塩、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等である。
【0113】
これらのカチオン性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、アルコール類、多環フェノール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類、ポリプロピレングリコール、及びそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0115】
アルコール類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノール、下記一般式(AL-1):
【化24】
[式中、R
51及びR
52はそれぞれ独立に、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基又は炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルケニル基を表す。]
又は、下記一般式(AL-2):
【化25】
[式中、R
53は、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基又は炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルケニル基を表す。]
で表されるアセチレンアルコールなどが挙げられる。
【0116】
多環フェノール類としては、炭素数1~12の炭化水素基を有していてもよいフェノールやナフトールなどの1価のフェノール類又はそれらのスチレン類(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、又はビニルトルエン)付加物若しくはそれらのベンジルクロライド反応物などが挙げられる。アミン類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0117】
アミド類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0118】
脂肪酸類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸などが挙げられる。
【0119】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、多価アルコールと炭素数2~30(カルボキシル基の炭素を含む)のカルボン酸との縮合反応物が挙げられる。このような多価アルコール脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタン(アルコール)及び炭素数2~30(カルボキシル基の炭素を含む)のカルボン酸から構成されるソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0120】
ソルビタンエステルを構成するカルボン酸の炭素数は2~30であり、5~21であることが好ましい。ソルビタンエステルは、ソルビタンと1つのカルボン酸とのモノカルボン酸エステル、ソルビトールと2つのカルボン酸とのジカルボン酸エステル及びソルビトールと3つのカルボン酸とのトリカルボン酸エステル等であってよく、モノカルボン酸エステルであることが好ましい。
【0121】
ソルビタンエステルは、下記一般式(4):
【化26】
[式(4)中、
R
61は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、
R
64、R
65及びR
66はそれぞれ独立に水素原子、-CO-R
61、又は-(CH
2CH
2O)
e-(R
62O)
f-R
63(式中、R
62は炭素数3以上のアルキレン基を表し、R
63は水素原子、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、eは2以上の整数を表し、fは0以上の整数を表す。)を表す。]
又は、下記一般式(5):
【化27】
[式(5)中、
R
61は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、
R
64、R
65及びR
66はそれぞれ独立に水素原子、-CO-R
61、又は-(CH
2CH
2O)
e-(R
62O)
f-R
63(式中、R
62は炭素数3以上のアルキレン基を表し、R
63は水素原子、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、eは2以上の整数を表し、fは0以上の整数を表す。)を表す。]
で表される化合物であってよい。
【0122】
上記一般式(4)又は(5)で表される化合物としては、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0123】
油脂類としては、植物性油脂、動物性油脂、植物性ロウ、動物性ロウ、鉱物ロウ、硬化油などが挙げられる。
【0124】
オルガノ変性シリコーン乳化分散体の安定性に優れる点で、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノールと、ソルビタンエステルとの組み合わせがより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルと、ソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせが特に好ましい。
【0125】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。撥水性への影響が少ない、オルガノ変性シリコーン(α)又は撥水性重合体(β)の乳化性が良好になるといった観点から、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。
【0126】
アルキレンオキサイドの付加モル数は1~200が好ましく、より好ましくは3~100であり、更により好ましくは5~50である。アルキレンオキサイドの付加モル数が上記範囲内であると、撥水性及び製品安定性を高水準で得られやすくなる。
【0127】
非イオン性界面活性剤のHLBは、好ましくは2~18、より好ましくは2~16である。撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で、上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の非イオン界面活性剤を併用することがより好ましい。オルガノ変性シリコーン(α)の乳化分散のために非イオン性界面活性剤を用いる場合、HLBが上記範囲内であることは、良好な乳化分散性を得る観点から好ましい。一方、撥水性重合体(β)の重合又は乳化分散のために非イオン性界面活性剤を用いる場合には、水分散液を良好に形成する観点から、HLBは7~18であることが好ましく、乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性の点も考慮すると、HLBは9~15であることがより好ましい。
【0128】
撥水剤組成物の乳化安定性と撥水性とを良好に得る観点から、カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを併用することがより好ましい。
【0129】
<その他の成分>
本実施形態の撥水剤組成物は、追加の撥水性成分を含んでもよい。追加の撥水性成分としては、ワックス、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等、及び、動植物蝋、及び鉱物蝋などが挙げられる。その他、開始剤、連鎖移動剤等の各種添加剤を所望に応じて用いてもよい。
【0130】
[撥水剤組成物の製造方法]
本実施形態の撥水剤組成物は、例えば、
(1)オルガノ変性シリコーン(α)と有機溶剤(γ)とを含む乳化分散体(以下、オルガノ変性シリコーン(α)乳化分散体ともいう。)と、撥水性重合体(β)を含む乳化分散体(以下、撥水性重合体(β)乳化分散体ともいう。)とを混合する混合工程を含む方法、
(2)オルガノ変性シリコーン(α)及び有機溶剤(γ)を含む乳化分散体と、撥水性重合体(β)の原料である単量体成分とを混合する混合工程と、当該混合工程の後及び/又は当該混合工程中に上記単量体成分を重合させて撥水性重合体(β)を生成する重合工程とを含む方法、或いは、
(3)オルガノ変性シリコーン(α)と、撥水性重合体(β)の原料である単量体成分と、有機溶剤(γ)とを混合する混合工程と、当該混合工程の後及び/又は当該混合工程中に上記単量体成分を重合させて撥水性重合体(β)を生成する重合工程とを含む方法、
によって製造できる。
【0131】
上記(1)又は(2)の方法において、オルガノ変性シリコーン(α)乳化分散体は、媒体として、有機溶剤(γ)及び任意に追加の媒体を含み、オルガノ変性シリコーン(α)と、有機溶剤(γ)と、必要に応じて、本実施形態の乳化補助剤、追加の媒体等のうち1種以上である任意成分と、を混合し、乳化分散させることで調製できる。乳化分散の方法は、撹拌混合、超音波分散、これらの組合せ等であってよい。上記追加の媒体としては、水、若しくは本実施形態の水溶性有機溶剤、又はこれらの組合せを例示できる。 オルガノ変性シリコーン(α)乳化分散体中のオルガノ変性シリコーン(α)の量は、好ましくは、1~80質量%、より好ましくは2~70質量%、更に好ましくは5~60質量%である。
【0132】
上記(1)の方法において、撥水性重合体(β)乳化分散体は、撥水性重合体(β)を乳化重合又は分散重合によって製造した際の重合液であってよく、或いは、予め合成した撥水性重合体(β)を適当な媒体に乳化分散させたものであってよい。当該媒体は、水、若しくは本実施形態の水溶性有機溶剤、又はこれらの混合物であってよい。媒体は、水と水溶性有機溶剤とを、例えば、質量比100/0~20/80、又は98/2~30/70で含んでよい。
【0133】
撥水性重合体(β)乳化分散体中の撥水性重合体(β)の量は、好ましくは、1~80質量%、より好ましくは2~70質量%、更に好ましくは5~60質量%である。
【0134】
上記(1)~(3)の方法の混合工程における混合条件としては、撹拌機にて100rpm×10分間の条件を例示できる。
【0135】
上記(2)又は(3)の方法において、撥水性重合体(β)の原料である単量体成分の重合条件は所望に応じて設定すればよいが、例えば、温度60~75℃、時間4~8時間であってよい。
【0136】
上記で得た撥水剤組成物には、高圧ホモジナイズ処理等による分散処理を更に施してもよい。このような分散処理は、予め調製した乳化分散体を用いて撥水剤組成物を調製する方法、すなわち上記(1)又は(2)の方法において特に有用である。
【0137】
[撥水助剤]
本発明の一態様はまた、本実施形態のオルガノ変性シリコーン(α)と、本実施形態の有機溶剤(γ)とを含む、アクリル系撥水剤用の撥水助剤を提供する。アクリル系撥水剤は、一態様において、前述の撥水性重合体(β)であるが、別のアクリル系撥水剤にも適用可能である。したがって本発明の一態様は、本実施形態の撥水助剤と、上記別のアクリル系撥水剤とを含む撥水剤組成物も提供する。本実施形態の撥水助剤は、撥水性、耐久撥水性及び貯蔵安定性に優れる撥水剤組成物を形成し得る。本実施形態の撥水助剤は、一態様において、前述したようなオルガノ変性シリコーン(α)の乳化分散体である。
【0138】
[撥水性繊維製品及びその製造方法]
本発明の一態様は、繊維製品と、当該繊維製品に付着した本実施形態の撥水剤組成物とを有する、撥水性繊維製品を提供する。
本発明の一態様はまた、本実施形態の撥水剤組成物を含む処理液で繊維製品を処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法を提供する。
【0139】
処理液は、本実施形態の撥水剤組成物そのもの、又は当該撥水剤組成物を水等の媒体で希釈したものであってよい。一態様において、処理液は、オルガノ変性シリコーン(α)とアクリル系撥水剤(一態様において撥水性重合体(β))を、合計で、例えば、0.5~70質量%、又は1~50質量%、又は1.5~45質量%含んでよい。処理液は、例えば後述の架橋剤を、例えば、0.1~5.0質量%、又は0.2~3.0質量%、又は0.3~2.0質量%の量で予め含んでもよい。
【0140】
本実施形態の撥水性繊維製品は、本実施形態の撥水剤組成物を含む処理液で繊維を処理することによってオルガノ変性シリコーン(α)とアクリル系撥水剤(一態様において撥水性重合体(β))とを当該繊維に付着させることで得られる。繊維の素材に特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。繊維製品の形態は、繊維、糸、布、不織布、紙などのいずれの形態であってもよい。
【0141】
繊維製品を上記処理液で処理する方法としては、例えば、浸漬、噴霧、塗布等の加工方法が挙げられる。また、撥水剤組成物が水を含有する場合は、繊維製品に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。
【0142】
撥水剤組成物の繊維製品への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、撥水性と風合いの観点から、繊維製品100gに対して、撥水剤組成物に含まれるオルガノ変性シリコーン(α)とアクリル系撥水剤(一態様において撥水性重合体(β))との合計の付着量が0.01~10gとなるように調整することが好ましく、0.05~5gとなるように調整することがより好ましい。当該付着量は、例えば、撥水性繊維製品から溶剤抽出する方法で確認される。
【0143】
また、本実施形態のオルガノ変性シリコーン(α)とアクリル系撥水剤(一態様において撥水性重合体(β))とを繊維製品に付着させた後は、適宜熱処理することが好ましい。温度条件は特に制限されないが、本実施形態の撥水剤組成物を用いると、100~130℃の温和な条件により繊維製品に十分良好な撥水性を発現させることができる。温度条件は130℃以上(好ましくは200℃まで)の高温処理であってもよいが、かかる場合は、フッ素系撥水剤を用いた従来の場合よりも処理時間を短縮することが可能である。したがって、本実施形態の撥水性繊維製品によれば、熱による繊維製品の変質が抑えられ、撥水処理後の繊維製品の風合が柔軟となり、しかも温和な熱処理条件、すなわち低温キュア条件下で繊維製品に十分な撥水性を付与できる。
【0144】
特に、耐久撥水性を向上させたい場合には、撥水剤組成物を含む処理液で繊維製品を処理する上述の工程と、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物に代表される架橋剤を、繊維製品に付着させてこれを加熱する工程とを含む方法によって、繊維製品を撥水加工することが好ましい。更に、耐久撥水性をより向上させたい場合には、撥水剤組成物が、上述の架橋剤と反応可能な官能基を有する単量体を共重合した撥水性重合体(β)を含むことが好ましい。
【0145】
メラミン樹脂としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2~6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、或いは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、或いはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM-3、ベッカミンM-3(60)、ベッカミンMA-S、ベッカミンJ-101、及びベッカミンJ-101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0146】
グリオキザール樹脂としては、従来公知のものを使用することができる。グリオキザール樹脂としては、例えば、1,3-ジメチルグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN-80、ベッカミンNS-11、ベッカミンLF-K、ベッカミンNS-19、ベッカミンLF-55Pコンク、ベッカミンNS-210L、ベッカミンNS-200、及びベッカミンNF-3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0147】
メラミン樹脂及びグリオキザール樹脂には、反応を促進させる観点から触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3、及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0148】
イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物としては、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフタレンイソシアネートなどの単官能(モノ)イソシアネート化合物や、多官能イソシアネート化合物を使用することができる。
【0149】
多官能イソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、アルキレンジイソシアネート、アリールジイソシアネート及びシクロアルキルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物の二量体又は三量体などの変性ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。アルキレンジイソシアネートの炭素数は、1~12であることが好ましい。
【0150】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4又は2,6-トリレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレン又はナフチレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、2,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、3,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-エチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルシクロヘキサン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、酸-ジイソシアネート二量体、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルトルエン、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルトルエン、フマル酸ビス(2-イソシアネートエチル)エステル、1,4-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼン、及び、1,3-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼンが挙げられる。
【0151】
トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)-チオフォスファートなどが挙げられる。
【0152】
ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体などを挙げることができる。また、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)も多官能イソシアネート化合物として使用することができる。
【0153】
多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0154】
多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、そのままでもよく、ブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基であってもよい。ブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール、ピラゾールなどのピラゾール類;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、iso-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、iso-アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。これらの中でも、撥水性の観点から、ピラゾール類及びオキシム類が好ましい。
【0155】
多官能イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート構造に親水基を導入して界面活性効果を持たせることにより、ポリイソシアネートに水分散性を付与した水分散性イソシアネートを用いることもできる。また、反応を促進するため、有機錫、有機亜鉛等の公知の触媒を併用することもできる。
【0156】
架橋剤や触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
架橋剤は、例えば、架橋剤を有機溶剤に溶解するか、水に乳化分散させた処理液に被処理物(繊維製品)を浸漬し、被処理物に付着した処理液を乾燥する方法により、被処理物に付着させることができる。そして、被処理物に付着した架橋剤を加熱することにより、架橋剤と被処理物及び撥水性重合体(β)との反応を進行させることができる。架橋剤の反応を十分に進行させてより効果的に洗濯耐久性を向上させるために、このときの加熱は110~180℃で1~5分間行うのがよい。架橋剤の付着及び加熱の工程は、上述の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程と同時に行ってもよい。同時に行う場合、例えば、撥水剤組成物及び架橋剤を含有する処理液を被処理物に付着させ、水を除去した後、更に、被処理物に付着している架橋剤を加熱する。撥水加工工程の簡素化や、熱量の削減、経済性を考慮した場合、撥水剤組成物の処理工程と同時に行うことが好ましい。
【0158】
また、架橋剤を過度に使用すると風合を損ねるおそれがある。上記架橋剤は、被処理物(繊維製品)に対して0.1~50質量%の量で用いることが好ましく、0.1~10質量%の量で用いることが特に好ましい。
【0159】
こうして得られる本実施形態の撥水性繊維製品は、屋外で長期間使用した場合であっても、十分に撥水性を発揮することができる。また、上記撥水性繊維製品はフッ素系の化合物を使用しない場合は、環境にやさしいものとすることができる。
【0160】
本実施形態の撥水性繊維製品は、所定の部分にコーティング加工を行うことができる。コーティング加工としては、スポーツ用途やアウトドア用途での透湿防水加工や防風加工等が挙げられる。加工方法としては、例えば、透湿防水加工の場合、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等と媒体とを含むコーティング液を、撥水処理された繊維製品の片面に塗布し、乾燥することにより加工することができる。
【0161】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0162】
例えば、本実施形態の撥水剤組成物に含まれる撥水性重合体(β)を製造する場合において、重合反応をラジカル重合により行ってよいが、紫外線、電子線、γ線のような電離性放射線などを照射する光重合により重合反応を行ってもよい。
【0163】
また、本実施形態においては、撥水剤組成物を繊維製品に処理して撥水性繊維製品としているが、撥水剤組成物で処理される製品としては、繊維製品用途に限らず、金属、ガラス、樹脂等の物品であってもよい。また、かかる場合、撥水剤組成物を上記物品に付着させる方法や撥水剤の付着量は、被処理物の種類などに応じて、任意に定めることができる。
【実施例】
【0164】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0165】
[オルガノ変性シリコーンの合成例]
<合成例1>
SiH:SiCH3モル比=9:1(1H NMR(核磁気共鳴)で測定)であるメチルハイドロジェンシリコーン、ヒドロシリル化触媒として、塩化白金(IV)のエチレングリコールモノブチルエーテル・トルエン混合溶液を、系内の反応物に対して白金濃度が5ppmとなるようにフラスコ内に仕込んだ。フラスコ内を窒素置換し、メチルハイドロジェンシリコーンの反応基(Si-H)1モル当量に対して、1モル当量の1-オクタデセンを、滴下しながらフラスコ内の混合物に仕込んだ。釜内部を120℃まで加温し、6時間付加反応させて、式(1)中、R20,R21,R22=CH3、R23=C18H37、a=5、b=45、a:b=1:9、R30~R35=CH3に相当するオルガノ変性シリコーンを得た。付加反応完了の確認は、得られたオルガノ変性シリコーンのFT-IR(フーリエ変換赤外)分光分析を行い、メチルハイドロジェンシリコーンのSiH基由来の吸収スペクトルが消失したことを確認することで行った。
【0166】
<合成例2~8、比較合成例1>
配合を表1に示すとおりに変更した他は合成例1と同様にして、式(1)中、下記に相当するオルガノ変性シリコーンを得た。
合成例2:R20,R21,R22=CH3、R23=C18H37、a=20、b=30、a:b=4:6、R30~R35=CH3
合成例3:R20,R21,R22=CH3、R23=C18H37、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
合成例4:R20,R21,R22=CH3、R23=C18H37、a=35、b=15、a:b=7:3、R30~R35=CH3
合成例5:R20,R21,R22=CH3、R23=C8H17、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
合成例6:R20,R21,R22=CH3、R23=C22H45、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
合成例7:R20,R21,R22=CH3、R23=C26H53、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
合成例8:R20,R21,R22=CH3、R23=C32H65、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
比較合成例1:R20,R21,R22=CH3、R23=C3H7、a=25、b=25、a:b=5:5、R30~R35=CH3
【0167】
[オルガノ変性シリコーン乳化分散体の調製例]
<調製例α1>
300mlのポリ容器に、合成例1で得たオルガノ変性シリコーン30g、IPソルベントIP-2028(炭素数10~16のイソパラフィン)30g、ソルビタン脂肪酸エステル(HLB 7以下)3g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)4.5g、アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.75gを仕込み均一になるまで混合した。均一となった後、純水31.75gを仕込み、超音波で10分間乳化分散させて、オルガノ変性シリコーン含有率30質量%のオルガノ変性シリコーン乳化分散体を得た。
【0168】
<調製例α2~α15、比較調製例α1~α4>
表2に示す配合に従い、調製例α1と同様の手順でオルガノ変性シリコーン乳化分散体を得た。
【0169】
各調製例で用いた有機溶剤について、当該有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量は、JIS K8001:2017 3.2「溶解の程度を表す用語」に従い、有機溶剤1gを一定量の水の中に入れ、20℃±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜたときの、30分以内に溶けるために必要な水の体積(mL)として評価した。なお本測定では、上記一定量の水として、1mL、10mL、30mL、100mL、又は1000mLの水を用い、有機溶剤1gが上記条件下で30分以内に溶解するか否かを調べ、評価基準は以下のとおりとした。
(有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量の評価基準)
1mL以下 :1mLの水に30分以内に溶解した。
1mL超10mL以下 :1mLの水には30分以内に溶解しなかったが、10mLの水に30分以内に溶解した。
10mL超30mL以下 :10mLの水には30分以内に溶解しなかったが、30mLの水に30分以内に溶解した。
30mL超100mL以下 :30mLの水には30分以内に溶解しなかったが、100mLの水に30分以内に溶解した。
100mL超1000mL以下:100mLの水には30分以内に溶解しなかったが、1000mLの水に30分以内に溶解した。
1000mL超 :1000mLの水には30分以内に溶解しなかった。
【0170】
(有機溶剤1gを溶解するために必要な水の量)
・イソパラフィン(炭素数10~16のイソパラフィン):1000mL超
・鉱物油(30℃における動粘度:20mm2/s):1000mL超
・ミネラルスピリット(沸点:180~200℃):1000mL超
・エステル(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチラート):1000mL超
・トリプロピレングリコール(TPG) :1mL以下
・ジプロピレングリコール(DPG) :1mL以下
・ブチルジグリコール :1mL以下
【0171】
[撥水性重合体分散体の調製例]
<調製例β1>
オートクレーブに、アクリル酸ステアリル24.0g、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)0.2g、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)1.3g、ノイゲンXL-40(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)0.5g、アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.4g、トリプロピレングリコール12.5g、及び水54.8gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.2g、ドデシルメルカプタン0.08gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で、塩化ビニル6.0gを、オートクレーブの内圧が0.3MPaを保つよう継続的に圧入しながら、60℃にて6時間ラジカル重合させて、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0172】
<調製例β2>
塩化ビニルを塩化ビニリデンに変更した他は調製例β1と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0173】
<調製例β3>
オートクレーブに、アクリル酸ステアリル28.5g、ラテムルPD-420 0.75gとラテムルPD-430 0.75g、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)0.2g、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)1.3g、ノイゲンXL-40(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)0.5g、アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.4g、トリプロピレングリコール12.5g、及び水54.8gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.2g、ドデシルメルカプタン0.08gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で、60℃にて6時間ラジカル重合させて、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0174】
<調製例β4>
アクリル酸ステアリル量を28.5gから30.0gに変更し、ラテムルPD-420 及びラテムルPD-430を使用しなかった他は調製例β3と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0175】
<調製例β5>
アクリル酸ステアリル量を30.0gから15.0gに変更し、C6SFMA(CF3CF2-(CF2CF2)2-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2(2-(パーフルオロへキシル)エチルメタアクリレート)15.0gを使用した他は調製例β4と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0176】
<調製例β6>
C6SFMAを、C6SFCLA(CF3CF2-(CF2CF2)2-CH2CH2OCOC(Cl)=CH2(2-(パーフルオロへキシル)エチルクロロアクリレート)に変更した他は調製例β5と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0177】
<調製例β7>
アクリル酸ステアリルをアクリル酸ラウリルに変更した他は調製例β4と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0178】
<調製例β8>
アクリル酸ステアリルをアクリル酸ベヘニルに変更した他は調製例β4と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0179】
<調製例β9>
アクリル酸ステアリル量を30.0gから24.0gに変更し、メタクリル酸ステアリル6.0gを使用した他は調製例β4と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0180】
<調製例β10>
アクリル酸ステアリル量を28.5gから29.4gに変更し、ラテムルPD-420 0.75g及びラテムルPD-430 0.75gをダイアセトンアクリルアミド0.6gに変更した他は調製例β3と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0181】
<調製例β11>
混合液の調製において、アクリル酸ステアリルを24.0gから23.4gに変更し、ダイアセトンアクリルアミド0.6gを更に撹拌混合した他は調製例β1と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0182】
<比較調製例β1>
アクリル酸ステアリルをアクリル酸デシルに変更した他は調製例β4と同様の手順で、撥水性重合体(β)を30.0質量%含む撥水性重合体乳化分散体を得た。
【0183】
[撥水剤組成物及び繊維製品の製造及び評価]
<実施例A1>
調製例β4で得た撥水性重合体乳化分散体80gと、調製例α3で得たオルガノ変性シリコーン乳化分散体20gとを、撹拌機にて100rpm×10分間の条件で混合し、撥水剤組成物を得た。
【0184】
<実施例A2>
アクリル酸ステアリル24g、カチオン性界面活性剤としてアルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド 0.25g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)1.1g、トリプロピレングリコール10g、純水44.4gを仕込み混合攪拌し、混合液とした。この混合液に、調製例α3で得たオルガノ変性シリコーン乳化分散体20gを加えさらに攪拌し、ドデシルメルカプタン0.06g、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.2gを加え、65℃で5時間重合反応を行い、撥水剤組成物を得た。
【0185】
<実施例A3>
調製例β4で得た撥水性重合体乳化分散体80gと、調製例α3で得たオルガノ変性シリコーン乳化分散体20gとを混合して得た混合物を、高圧ホモジナイザー(APV GAULIN社製、型番15MR-8TA)を用い、処理圧力300kg/cm2で、50~60℃で高圧ホモジナイズ処理して、撥水剤組成物を得た。
【0186】
<実施例A4>
アクリル酸ステアリル24g、カチオン性界面活性剤としてアルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.25g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)1.1g、合成例3で得たオルガノ変性シリコーン6.0g、イソパラフィン20gを仕込み混合攪拌して、均一な混合液を得た。この混合液に、純水48.4gを仕込み、超音波処理装置(日本精機製作所社製、型番US-600E)を用い、5分間(φ36、振動振幅値80%)で、40~50℃にて超音波を照射して乳化分散体を得た。この乳化分散体に、ドデシルメルカプタン0.06g、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.2gを加え、65℃で5時間重合反応を行い、撥水剤組成物を得た。
【0187】
<比較例A1>
合成例6で得たオルガノ変性シリコーン18.75g、アクリル酸ステアリル11.25g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)2.0g、カチオン性界面活性剤としてアルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.4g、トリプロピレングリコール12.5g、純水55gを仕込み混合攪拌した。さらに、ラウリルメルカプタン0.03g、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.1gを加え、65℃で5時間重合反応を行って、撥水剤組成物を得た。
【0188】
<比較例A2>
ベヘニルメタクリレート11.58g、ステアリルメタクリレート11.58g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.54g、Silwax D222 6.3g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)2.0g、カチオン性界面活性剤としてアルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.4g、ジプロピレングリコール12.5gを仕込み混合攪拌して混合液を得た。この混合液を、前述の高圧ホモジナイザーを用い、処理圧力300kg/cm2で、50~60℃の温度で高圧分散させた。さらに、開始剤V-50 0.2gを加え、65℃で8時間重合反応を行い、比較の撥水剤組成物を得た。
【0189】
得られた各撥水剤組成物について、後述の方法で、処理布の作製、並びに、初期撥水性、耐久撥水性及び貯蔵安定性の評価を行った。
【0190】
<実施例B1~B31、参考例B1、比較例B1~B8>
表5及び6に示す配合(質量部)にて、撥水性重合体分散体、及びオルガノ変性シリコーン分散体、並びに一部の例については更に上記の追加の撥水性成分の分散体、を混合して、撥水剤組成物を得た。混合は、撹拌機にて100rpm×10分間の条件にて行った。なお追加の撥水性成分の分散体は、以下の方法で調製した。
【0191】
(追加の撥水性成分の分散体の調製)
300mlの高圧反応容器に、融点155°Fのパラフィンワックス30g、ソルビタンモノパルミテート1.5g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB 8~14)3.0g、カチオン乳化剤としてアルキル(C16-18)トリメチルアンモニウムクロライド0.75g、純水64.75gを仕込み密閉し、攪拌しながら100℃まで昇温させ、高圧下で30分間高圧乳化し、追加の撥水性成分の分散体としてのワックス分散液を得た。
【0192】
<撥水性繊維製品の製造>
処理布として以下を用いた。
・ポリエステル(PET)/ポリウレタン(PU)混紡布(ポリエステル/ポリウレタン質量比=85/15)
・ポリエステル(PET)100%織布
・ナイロン(Ny)100%織布
・綿100%織布
【0193】
各実施例、参考例及び各比較例に係る撥水剤組成物を6質量%、ブロックドイソシアネート系架橋剤(NKアシストNY-50)を0.6質量%含み、残部が純水である処理液を調製した。得られた処理液に、上記処理布の各々を常圧・20±5℃にて30秒浸漬した後、150℃で2分間熱処理して、繊維製品を得た。得られた繊維製品を以下の評価に供した。
<撥水剤組成物及び繊維製品の評価>
(撥水剤組成物の貯蔵安定性)
各実施例、参考例及び各比較例に係る撥水剤組成物100gをガラス瓶(140ml広口サンプル瓶(マヨネーズ瓶))に入れて密閉し、室温(20±5℃)で静置保管した。2週間後、ガラス瓶内部の撥水剤組成物に存在する浮遊物量を下記基準にて目視評価した。結果を表4~6に示す。
◎:浮遊物が全く存在せず、均一。
〇:浮遊物が液面の5%未満である。
△:浮遊物が液面の5%以上~10%未満である。
×:浮遊物が液面の10%以上である。
【0194】
(繊維製品の初期撥水性)
繊維製品について、JIS L 1092(2009)7.2 はっ水度試験(スプレー試験)に準じ、シャワー水温を20℃として試験を行った。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。また特性が下記基準の間である場合には5刻み(例えば、95、85、75等)で評価した。結果を表4~6に示す。
撥水性:状態
100:表面に湿潤や水滴の付着がないもの
90 :表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの
80 :表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの
70 :表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの
50 :表面全体に湿潤を示すもの
0 :表面及び裏面が全体に湿潤を示すもの
【0195】
(繊維製品の耐久撥水性)
JIS L 0217(1995)の103法による洗濯を20回(L-20)行った後の繊維製品について、上記の初期撥水性と同様の手順で撥水性を評価した。
【0196】
(繊維製品のチョークマーク評価)
繊維製品の表面を爪でひっかき、目視にて下記に示す5段階で評価した。結果を表4~6に示す。
5:明瞭な爪痕が認められる
4:爪痕が認められる
3:少し爪痕が認められる
2:殆ど爪痕が認められない
1:爪痕が全くない
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明に係る撥水剤組成物は、撥水性、耐久撥水性及び貯蔵安定性に優れることから、種々の繊維製品に好適に適用され得る。
【要約】
【課題】撥水性及び耐久撥水性に優れる撥水性繊維製品の製造を可能にするとともに貯蔵安定性にも優れる撥水剤組成物及びその製造方法、並びに撥水性繊維製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、特定構造のオルガノ変性シリコーン(α)と、特定構造の撥水性重合体(β)と、水に対する溶解の程度が特定範囲である有機溶剤(γ)とを含む撥水剤組成物及びその製造方法、並びに、撥水性繊維製品及びその製造方法が提供される。
【選択図】なし