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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20230705BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230705BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08G18/40 063
C08L75/04
C08K5/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022082894
(22)【出願日】2022-05-20
(62)【分割の表示】P 2018029823の分割
【原出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2022103410
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017070571
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昇大
(72)【発明者】
【氏名】天野 良太郎
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172636(JP,A)
【文献】特開2011-208121(JP,A)
【文献】特開2006-282849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/40
C08L 75/04
C08K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数8~36の長鎖脂肪酸エステル、
(b)水酸基価20mg/KOH以上80mg/KOH以下、数平均分子量1000以上10000以下であり、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールから選ばれる水酸基含有ポリオレフィン、
(c)水酸基価20mg/KOH以上250mg/KOH以下、数平均分子量700以上20000以下であり、グリセリンポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、植物油ポリオールから選ばれるポリオール化合物(但し、前記(b)水酸基含有ポリオレフィンを除く)、及び、
(d)1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体から選ばれるイソシアネート化合物を含み、
前記(a)長鎖脂肪酸エステル100重量部に対して、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィン及び前記(c)ポリオール化合物を合計10~200重量部含み、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィンと前記(c)ポリオール化合物との重量比[(b):(c)]が5:95~45:55であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(a)炭素数8~36の長鎖脂肪酸エステル、
(b)水酸基価20mg/KOH以上80mg/KOH以下、数平均分子量1000以上10000以下であり、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールから選ばれる水酸基含有ポリオレフィン、
(c)水酸基価20mg/KOH以上250mg/KOH以下、数平均分子量700以上20000以下であり、グリセリンポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、植物油ポリオールから選ばれるポリオール化合物(但し、前記(b)水酸基含有ポリオレフィンを除く)、及び、
(d)1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体から選ばれるイソシアネート化合物を含み、
前記(a)長鎖脂肪酸エステル100重量部に対して、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィン及び前記(c)ポリオール化合物を合計20~100重量部含み、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィンと前記(c)ポリオール化合物との重量比[(b):(c)]が1:99~50:50であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された樹脂組成物により形成された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた蓄熱性を有するとともに、形状保持性にも優れた成形体を形成することができる樹脂組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギーを蓄える技術、即ち蓄熱技術が、昨今のエネルギー問題を解決する技術の一つとして着目されている。蓄熱技術は、太陽熱、地熱等の自然エネルギーや、冷暖房器具からの余熱を有効利用する技術で、例えば、住宅においては、ヒートポンプ等の高効率熱源機で作った熱エネルギーを使用して熱を蓄え、多目的な熱源として用い、エネルギー消費を抑える技術として利用されている。
【0003】
このような蓄熱技術に用いられる蓄熱材としては、顕熱蓄熱材、潜熱蓄熱材が挙げられ、特に、物質が固体から液体に相変化する時に熱を蓄え(蓄熱)、液体から固体に相変化する時に熱を放出(放熱)するという性質を利用した有機潜熱蓄熱材が広く採用されている。このような有機潜熱蓄熱材を用いた材料として、特許文献1には、熱可塑性エラストマー中にパラフィンが取り込まれて固定されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-10776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の材料は、蓄熱材の相変化に伴って形状変化が生じるおそれがある。また、蓄熱材の相変化の繰り返しによって変形が生じやすく、当初の形状を保持することは困難である。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、優れた蓄熱性を有するとともに、蓄熱材の相変化に起因する形状変化を抑制し、初期の形状を保持することができる成形体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、蓄熱材として長鎖脂肪酸エステルを含み、さらに水酸基含有ポリオレフィン、ポリオール化合物、及びイソシアネート化合物を特定条件で含む樹脂組成物によれば、蓄熱性と共に、形状保持性等に優れた成形体を形成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.(a)炭素数8~36の長鎖脂肪酸エステル、
(b)水酸基価20mg/KOH以上80mg/KOH以下、数平均分子量1000以上10000以下であり、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールから選ばれる水酸基含有ポリオレフィン、
(c)水酸基価20mg/KOH以上250mg/KOH以下、数平均分子量700以上20000以下であり、グリセリンポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、植物油ポリオールから選ばれるポリオール化合物(但し、前記(b)水酸基含有ポリオレフィンを除く)、及び、
(d)1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体から選ばれるイソシアネート化合物を含み、
前記(a)長鎖脂肪酸エステル100重量部に対して、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィン及び前記(c)ポリオール化合物を合計10~200重量部含み、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィンと前記(c)ポリオール化合物との重量比[(b):(c)]が5:95~45:55であることを特徴とする樹脂組成物。
2.(a)炭素数8~36の長鎖脂肪酸エステル、
(b)水酸基価20mg/KOH以上80mg/KOH以下、数平均分子量1000以上10000以下であり、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールから選ばれる水酸基含有ポリオレフィン、
(c)水酸基価20mg/KOH以上250mg/KOH以下、数平均分子量700以上20000以下であり、グリセリンポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、植物油ポリオールから選ばれるポリオール化合物(但し、前記(b)水酸基含有ポリオレフィンを除く)、及び、
(d)1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体から選ばれるイソシアネート化合物を含み、
前記(a)長鎖脂肪酸エステル100重量部に対して、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィン及び前記(c)ポリオール化合物を合計20~100重量部含み、
前記(b)水酸基含有ポリオレフィンと前記(c)ポリオール化合物との重量比[(b):(c)]が1:99~50:50であることを特徴とする樹脂組成物。
3.1.または2.に記載された樹脂組成物により形成された成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、優れた蓄熱性を有するとともに、形状保持性等にも優れた成形体を形成することができる樹脂組成物、及び成形体を得ることができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、長鎖脂肪酸エステル(以下、「(a)成分」ともいう。)、水酸基含有ポリオレフィン(以下、「(b)成分」ともいう。)、ポリオール化合物(但し、前記(b)水酸基含有ポリオレフィンを除く)(以下、「(c)成分」ともいう。)、イソシアネート化合物(以下、「(d)成分」ともいう。)を特定条件で含むことを特徴とするものである。本発明の樹脂組成物は、特に、(a)成分と共に、(b)成分及び(c)成分を特定比で含有することによって、蓄熱性を維持しつつ、優れた形状保持性等を示すことができる。本発明の樹脂組成物は、蓄熱成形体用として好適である。
【0012】
<(a)成分>
本発明の樹脂組成物は、(a)長鎖脂肪酸エステルを含むことを特徴とする。(a)成分を含有することにより、優れた蓄熱性を有する成形体を得ることができ、有用である。
【0013】
(a)成分としては、炭素数8~36(炭素数8以上36以下と同義。以下同様。)の長鎖脂肪酸エステルを使用し、炭素数10~30の長鎖脂肪酸エステルがより好ましく、炭素数15~22の長鎖脂肪酸エステルを使用することが更に好ましい。このような長鎖脂肪酸エステルは、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0014】
(a)成分の具体例としては、例えば、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0015】
<(b)成分>
本発明の樹脂組成物は、水酸基含有ポリオレフィン((b)成分)を含む。(b)成分は、ポリオレフィン構造(ポリジエン構造)を有する物質に少なくとも水酸基を有する(好ましくは水酸基を2以上有する)もので、(a)成分及び(c)成分の双方に対して相溶性が良く、後述するイソシアネート化合物((d)成分)との反応性も有する。本発明では、このような特性を有する(b)成分を使用することによって、形状保持性等において有利な効果を得ることが可能となる。
【0016】
(b)成分としては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、あるいはこれらの水添化物等が挙げられる。(b)成分としては、特に、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールから選ばれる1種以上が好ましい。
【0017】
(b)成分の水酸基価は、20mg/KOH以上80mg/KOH以下である
(b)成分の分子量(数平均分子量)は、1000以上10000以下である。このような(b)成分は、形状保持性の点でより好適であり、可とう性等の点でも好適である。
【0018】
<(c)成分>
本発明の樹脂組成物は、(c)ポリオール化合物を含む。(c)成分は、後述するイソシアネート化合物((d)成分)と反応させることにより成形物を形成し、(a)成分を担持・保持する役割を担う成分である。
【0019】
(c)成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンエチレンポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類、ひまし油、パーム油、大豆油等の植物油ポリオール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、この中でも、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族/脂肪族ポリエステルポリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。具体的に、芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等の芳香族多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール、ポリエチレンテレフタレート等のフタル酸系ポリエステル成形物を分解して得られるフタル酸系ポリエステルポリオール等が挙げられる。脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ひまし油脂肪酸等の脂肪族多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、アミノ基含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。具体的に、芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAを開始剤としてアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の少なくとも1種以上。以下同様。)を付加することで得られるビスフェノールA型ポリエーテルポリオール、芳香族アミン(例えば、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られる芳香族アミン系ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
グリセリン系ポリエーテルポリオールとしては、グリセリンを開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
アミノ基含有ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子量アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。
本発明では、特に、脂肪族ポリエステルポリオール、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオール(グリセリン系ポリエーテルポリオール)等を用いることが好ましい。
【0021】
(c)成分の水酸基価は、20mg/KOH以上250mg/KOH以下、さらに好ましくは80mg/KOH以上250mg/KOH以下である
(c)成分の分子量(数平均分子量)は、700以上20000以下である。このような(c)成分は、形状保持性の点でより好適であり、可とう性等の点でも好適である。
【0022】
(b)成分及び(c)成分の重量比率は、(a)成分100重量部に対して、合計10~200重量部(好ましくは12~150重量部、より好ましくは15~100重量部、さらに好ましくは20~80重量部)であり、(b)成分と(c)成分との重量比[(b):(c)]は1:99~50:50(好ましくは5:95~45:55)である。本発明では、このような比率で(b)成分、(c)成分が含まれることにより、優れた蓄熱性を有するとともに、形状保持性にも優れた成形体を形成することができる。(b)成分が上記比率よりも少なすぎる場合は、(a)成分の保持性に支障をきたすおそれがあり、蓄熱性及びその持続性に不利となる。また、可とう性等の点でも不利となる。(b)成分が上記比率よりも多すぎる場合は、蓄熱材の相変化に伴って形状変化が生じるおそれがあり、また、蓄熱材の相変化の繰り返しによって変形が生じやすく、当初の形状を保持することが困難となる。また、成形体の強度が弱くなり、成形体(特にシート状の場合)の取扱い性が不十分となりやすい。
【0023】
<(d)成分)>
本発明の樹脂組成物は、(d)イソシアネート化合物を含む。本発明で用いる(d)成分としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等、及び、これらをアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及び、それらと共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0024】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ペンタメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ-ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、4,4´-ジフェニルジイソシアネート、2,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2´-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI、ポリオール変性MDI、ひまし油変性MDI、4,4´-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、2,2´-ジフェニルプロパン-4,4´-ジイソシアネート、3,3´-ジメチルジフェニルメタン-4,4´-ジイソシネート、4,4´-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´-ジメトキシジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)、ω,ω´-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(α,α-ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0028】
本発明では、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI及びその誘導体等の脂肪族ジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI及びその誘導体から選ばれるイソシアネート化合物を含むものである。このようなイソシアネート化合物は、ポットライフ、硬化速度の調整等が簡便であり、好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、(c)成分と(d)成分とが反応して、適度な3次元架橋構造を形成し、(b)成分は、(a)成分と(c)成分の双方に相溶しつつ、(d)成分と反応して3次元架橋構造の形成にも寄与する。このような樹脂組成物によって得られる成形体は、従来技術における熱可塑性樹脂による成形体とは大きく異なるものである。本発明で得られる成形体は、架橋構造内に多量の(a)成分を担持・保持することができるとともに、蓄熱材の相変化に起因する形状変化を抑制し、初期の形状を保持することができる。また、強度、可とう性等を兼備した成形体を得ることが可能となり、成形体(特にシート状の場合)の取扱い性も良好となる。さらに、(a)成分の漏れ抑制、成形体の加工性等の点でも優れている。
【0030】
本発明において、(a)成分の混合量は、樹脂組成物全量に対し、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35~95重量%、さらに好ましくは40~90重量である。(a)成分を30重量%以上使用することにより、優れた蓄熱性を得ることができる。
【0031】
(d)成分は、(d)成分に含まれるイソシアネート基と、(b)成分及び(c)成分に含まれる水酸基とのモル比率(NCO/OHモル比率)が0.5~8.0(より好ましくは0.7~7.0、さらに好ましくは0.8~5.0)となる範囲で混合することが好適である。本発明では、(d)成分が、このようなNCO/OHモル比率を満たすように含まれることにより、形状保持性の点で一層好適であり、(a)成分の保持性、蓄熱性能及びその持続性等の点でも好適である。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、上記成分に加え、例えば、層状粘土鉱物、界面活性剤、熱伝導物質、相溶化剤、反応促進剤、難燃剤、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤、脱水剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体等の添加剤を含有することもできる。
【0033】
このうち、層状粘土鉱物としては、有機処理された層状粘土鉱物を用いることが好ましい。層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイト、ヘクトライト等が好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイト、有機処理されたヘクトライト等を好適に用いることができる。
【0034】
層状粘土鉱物の混合量は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.5~50重量部、より好ましくは1~40重量部、さらに好ましくは3~30重量部である。
【0035】
界面活性剤としては、例えば、親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。但し、本発明の樹脂組成物は、このような界面活性剤を含まない態様であってもよい。
【0036】
本発明では、その効果を著しく阻害しない限り、上記成分に加え、(a)成分以外の蓄熱材を混合することもできる。(a)成分以外の蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、ポリエーテル合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分等を含む樹脂組成物であり、例えば、製造方法として、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を混合し、(b)成分及び(c)成分と(d)成分とを反応させる方法等により、成形体を得ることができる。
【0038】
成形体を製造する際の反応温度は、特に限定されないが、(a)成分の相変化温度以上とすることが好ましい。具体的な反応温度は、使用する(a)成分の種類によって異なるが、好ましくは20~80℃であればよい。反応時間は、好ましくは0.2~5時間とすればよい。また、反応を促進するため、上記反応促進剤を混合したり、あるいは熱、光等のエネルギーを与えたりすることもできる。
【0039】
成形体の形状は、シート状、棒状、針状、球状、角状、粉末状等が可能であり、その形状は特に限定されない。本発明では特にシート状として用いることが好ましい。シート状の成形体においては、例えば、成形体の片面または両面に各種基材を積層することもできるし、また、シート成形時に各種基材を予め積層して成形体を得ることもできる。この際、成形体の形成方法としては、特に限定されず、例えば、押出し成形、型枠成形等、または各種基材にスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付する方法等が採用できる。シート状の成形体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1~100mm程度とすればよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、主として、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として好適に使用することができる。また、床暖房システム、冷暖房システム、車輌等の内装材、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、冷却シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に用いる材料としても適用できる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、用途に合わせて蓄熱材を適宜設定することができる。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、蓄熱材の融点が15℃~40℃付近のものを使用すればよく、床暖房に用いる場合は蓄熱材の融点が25℃~40℃付近のものを使用すればよい。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形体には、断熱体を積層することもできる。これにより、優れた蓄熱性・断熱性を示すため、建築物の壁材、天井材、床材等に適用することにより、外部温度の変化に対し、空間内温度を最適な温度に保つことができ、省エネルギー化を図ることができる。このような断熱体としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱体を使用してもよい。断熱体の熱伝導率は、好ましくは0.1W/(m・K)未満、より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下である。
【0043】
本発明で得られる成形体には、熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体を積層することもできる。熱伝導体としては、例えば、ガラス板、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の樹脂ボードや樹脂シート、銅、アルミニウム、鉄、真鍮、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属板等、あるいは金属材料を含む樹脂ボードまたは樹脂シート等、スレート板、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ALC板、木毛セメント板、合板等が挙げられる。
【0044】
本発明で得られる成形体に熱伝導体を積層することにより、優れた蓄熱性・放熱性を示すため、建築物の壁材、天井材、床材等に適用することにより、成形体に蓄えられた冷熱や温熱を、空間内に効率よく伝えることができ、空間内温度を最適な温度に保つことができ、省エネルギー化を図ることができる。熱伝導体で発生しやすい、結露を防止する効果も得ることができる。
【0045】
本発明で得られる成形体には、難燃材、準不燃材及び不燃材等の防火材を積層することもできる。これにより、優れた蓄熱性に加え、防火性を高めることができ、防火性を必要とする部位(例えば、建築物の内装材等)にも適用することができる。このような防火材としては、例えば、コンクリート板、ガラス板、金属板、木毛セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の平板、金属フィルム、グラスファイバー等のフィルム成形体、発泡性防火材料、難燃材含有材料等が挙げられる。
【実施例
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0047】
(実施例1~18、及び、比較例1~4)
表1に示す原料、表2に示す配合量にて温度50℃で主剤成分を調製し、NCO/OHモル比率が1.1/1となるようにイソシアネート化合物を混合した後、250×170×5mmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(100μm)に封入し、50℃で30分間硬化させて試験を得た。得られた試験体について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。実施例1~18は、いずれの試験においても良好な結果であった。
【0048】
(1)蓄熱性
蓄熱成分の潜熱量とその含有率から、試験体の潜熱量を算出した。
○:潜熱量300kJ/m2以上。
×:潜熱量300kJ/m2未満。
【0049】
(2)取扱い性(ハンドリング性)
40℃雰囲気下で水平方向に静置した試験体の端を片手でつかみ、そのまま上方に持ち上げた際の試験体の状態を評価した。
◎:試験体が水平を保持したまま持ち上がる。
○:試験体が概ね水平を保持したまま持ち上がる。
×:試験体が水平を保持することができない。
【0050】
(3)形状保持性
温冷サイクル試験(10℃3時間・40℃3時間を1サイクルとして、計50サイクル)後の試験体の外観を目視で観察した。
◎:試験体に外観変化なし。
○:試験体にほぼ外観変化なし。
△:試験体に一部反りや変形が見られる。
×:試験体に反りや変形が見られる。
【0051】
(4)加工性
カッターで切断した試験体について、温冷サイクル試験(同上)を実施した後、試験体断面からの蓄熱材の染み出し有無を観察した。
◎:蓄熱材の染み出しが見られない。
○:蓄熱材の染み出しがほとんど見られない。
△:蓄熱材の染み出しが一部見られる。
×:蓄熱材の染み出しが見られる。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】