(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】多層体光学偽造防止素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/324 20140101AFI20230705BHJP
B42D 25/465 20140101ALI20230705BHJP
B42D 25/425 20140101ALI20230705BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/465
B42D25/425
(21)【出願番号】P 2022519716
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 CN2020115557
(87)【国際公開番号】W WO2021057574
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】201910932440.3
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517026966
【氏名又は名称】中▲鈔▼特▲種▼防▲偽▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHONGCHAO SPECIAL SECURITY TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6 Xinghuo Road, Science City, Fengtai District, Beijing 100070, China
(73)【特許権者】
【識別番号】517026977
【氏名又は名称】中国印▲鈔▼造▲幣▼▲總▼公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA BANKNOTE PRINTING AND MINTING CORP.
【住所又は居所原語表記】Jia.143,Xizhimenwai Street,Xicheng District, Beijing 100044, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,チュンフア
(72)【発明者】
【氏名】スン,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,バオリー
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジュン
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247483(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104647938(CN,A)
【文献】特開2012-063738(JP,A)
【文献】特開2016-097617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0196587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0029402(US,A1)
【文献】米国特許第06060143(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105015215(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/324
B42D 25/465
B42D 25/425
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学偽造防止素子であって、
起伏構造層(2)であって、第1の微細構造を有する第1の領域(A)及び第2の微細構造を有する第2の領域(B)を含み、前記第2の微細構造の比容積が前記第1の微細構造の比容積よりも大きい起伏構造層(2)と、
前記起伏構造層(2)の片側に順次積層された第1のめっき層(31)、誘電体層(32)、第2のめっき層(33)及び保護層(4)と、を含み、
前記第1のめっき層(31)及び前記誘電体層(32)は前記第1の領域(A)及び前記第2の領域(B)に位置し、前記第2のめっき層(33)及び前記保護層(4)は前記第1の領域(A)に位置するが、前記第2の領域(B)には位置せず、
前記第1のめっき層(31)、前記誘電体層(32)及び前記第2のめっき層(33)は、機能性めっき層群(3)を構成し、前記機能性めっき層群(3)及び前記第1の微細構造は、前記第1の領域(A)において組み合わされた光学特徴を有し、前記第1のめっき層(31)及び前記第2の微細構造は、前記第2の領域(B)において組み合わされた光学特徴を有
し、
前記起伏構造層(2)は、第3の微細構造を有する第3の領域(C)を更に含み、前記第3の微細構造のアスペクト比は前記第2の微細構造のアスペクト比よりも大きく、かつ前記第3の微細構造の比容積は前記第1の微細構造の比容積よりも大きく、
前記第1のめっき層(31)及び前記第2のめっき層(33)は前記第3の領域(C)に位置せず、
前記光学偽造防止素子は前記第3の領域(C)において透かし彫り特徴を有する、ことを特徴とする光学偽造防止素子。
【請求項2】
前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造は、周期構造及び/又は周期構造における構造若しくは組み合わせ構造であり、
前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造の横断面構造は、正弦型構造、長方形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧形格子構造のうちのいずれか1つの構造、又は少なくとも任意の2つの構造からなる組み合わせ構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項3】
前記第1の微細構造の比容積は0um
3/um
2以上0.5um
3/um
2未満であり、
前記第2の微細構造の比容積は0.4um
3/um
2より大きく3um
3/um
2未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項4】
前記第1のめっき層(31)は前記起伏構造層(2)に隣接している、ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項5】
前記第1のめっき層(31)又は前記第2のめっき層(33)の材料は、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、スズ、及びチタンのうちのいずれか1種の金属、又は少なくとも任意の2種の金属の組み合わせからなる合金であり、
前記誘電体層(32)の材料は、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、窒化チタン、二酸化チタン、一酸化チタン、三酸化二チタン、五酸化三チタン、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化セリウム、三酸化ビスマス、酸化クロムグリーン、酸化鉄、酸化ハフニウム及び酸化亜鉛のうちのいずれか1種の化合物、又は少なくとも任意の2種の化合物からなる混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項6】
前記機能性めっき層群(3)は多層干渉光学可変めっき層であり、前記多層干渉光学可変めっき層のいずれかの側に前記光学偽造防止素子はいずれも干渉光学可変特徴を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項7】
前記第3の微細構造のアスペクト比は0.2より大きく1未満であり、
前記第2の微細構造のアスペクト比は0より大きく0.3未満であり、
前記第3の微細構造の比容積は0.4um
3/um
2より大きく3um
3/um
2未満である、ことを特徴とする請求項
1に記載の光学偽造防止素子。
【請求項8】
光学偽造防止素子の製造方法であって、
S1)起伏構造層を形成するステップであって、前記起伏構造層が第1の微細構造を有する第1の領域及び第2の微細構造を有する第2の領域を含み、前記第2の微細構造の比容積が前記第1の微細構造の比容積よりも大きい、ステップと、
S2)前記起伏構造層の片側に、積層された第1のめっき層材料層、誘電体層材料層、第2のめっき層材料層及び保護層材料層を順次形成するステップと、
S3)ステップS2)の半製品を、前記第2の領域に位置する第2のめっき層材料層の一部又はすべてが除去されるまで、前記第2のめっき層材料層と反応できる雰囲気に置き、そして前記第1の領域内にのみ、少なくとも積層された第1のめっき層及び第2のめっき層を残すステップであって、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層がそれぞれ、前記第1の領域に位置しかつ除去されていない前記第1のめっき層材料層及び前記第2のめっき層材料層の一部のめっき層材料層である、ステップと、を含
み、
ステップS1)の起伏構造層は、第3の微細構造を有する第3の領域を更に含み、前記第3の微細構造のアスペクト比は前記第2の微細構造のアスペクト比よりも大きく、前記第3の微細構造の比容積は前記第1の微細構造の比容積よりも大きい、ことを特徴とする光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項9】
S4)ステップS3)の半製品を、前記第3の領域に位置する第1のめっき層材料層及び第2のめっき層材料層が部分的に又は完全に除去されるまで、前記第1のめっき層材料層と反応できる雰囲気に置くステップを更に含む、ことを特徴とする請求項
8に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項10】
ステップS3)の第1のめっき層及び/又は第2のめっき層はアルミニウム層を含み、
ステップS3)において、前記第1のめっき層材料層及び/又は前記第2のめっき層材料層と反応できる雰囲気は酸性液及び/又はアルカリ液である、ことを特徴とする請求項
9に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【請求項11】
無機又は有機のめっき層又はコーティングを施すステップを更に含む、ことを特徴とする請求項
8~
10のいずれか1項に記載の光学偽造防止素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学偽造防止の技術分野に関し、具体的には光学偽造防止素子及び光学偽造防止素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャンやコピーなどの手段による偽造を防止するために、紙幣、クレジットカード、パスポート、有価証券、製品包装など、様々な高セキュリティ又は高付加価値の印刷物には光学偽造防止技術が広く採用されており、非常に高い効果が得られている。
【0003】
様々な光学偽造防止技術において、回折、非回折などの効果を含む微細構造によって形成される光学効果は、輝度が高く、動的効果が明らかであるため、広く使用されている。微細構造による偽造防止技術では、画像の輝度を増加させるために、一般にアルミニウムなどの金属反射層が使用される。
【0004】
そのうち、現在光学フィルムに適用されている最も広範な光学偽造防止技術であるホログラフィック技術は、微細構造によって形成される回折効果を利用して開発された光学技術である。1999年版第5版人民元の5元、10元、20元、50元、100元の偽造防止スレッドはホログラフィック技術を採用している。
【0005】
また、多層機能性めっき層群技術は、異なる観察角度で強力な光学変色効果を有し、又は反射及び透過観察で明らかな変色効果を有するため、ますます注目を集めている。前者は一般に多層干渉光学可変技術と呼ばれる。典型的な多層干渉めっき層は一般に、反射層、誘電体層、及び吸収層で構成されるサンドイッチ式ファベロ干渉キャビティ構造を採用する。
【0006】
反射層は一般に、高輝度の金属材料で製造され、誘電体層は一般に、透明な無機又は有機材料で製造され、吸収層は半透明層とも呼ばれ、一般に吸収性の良い薄い金属材料で製造される。2015版第5版人民元の100元のセキュリティスレッドは多層干渉光学可変技術を採用しており、それは、正面から観察するとマゼンタ色であり、斜めから観察すると緑色である。
【0007】
光学微細構造と高輝度金属反射層特徴及び多層機能性めっき層群特徴を同じ光学偽造防止素子に統合すれば、光学偽造防止効果を大幅に向上させることができる。特許出願CN200980104829.3は、多層干渉光学可変めっき層及び高輝度金属反射層を統合した光学偽造防止製品の製造を、部分印刷透かし彫りプロセスによって実現することを提案しており、即ち一部の領域は多層干渉光学可変特徴を有し、一部の領域は高輝度金属反射層光学特徴を有し、更に、他の領域は透かし彫り効果を有する。
【0008】
しかしながら、該特許出願における3つの領域の相互位置合わせ精度は印刷の精度に依存し、印刷の精度は一般に100um以上であるため、ある程度ハイエンド偽造防止光学製品の応用を制限する。
【0009】
したがって、高輝度金属反射層特徴、多層干渉光学可変特徴を同時に有し、かつ2つの特徴領域が互いに誤差ゼロで位置決めされている光学偽造防止素子を製造することは、非常に重要である。更に、光学偽造防止素子が透かし彫り特徴を統合し、かつ透かし彫り領域と画像領域も誤差ゼロで位置決めされる場合、製品の偽造防止性能は更に向上する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、多層体光学偽造防止素子及びその製造方法を提供することである。光学偽造防止素子の第1の側及び/又は第2の側から観察すると、高輝度金属反射層特徴と多層機能性めっき層群(特に干渉光学可変めっき層)特徴を同時に有する場合、光学偽造防止素子を備えた製品は優れた統合された偽造防止性能を有する。更に、該光学偽造防止素子が透かし彫り特徴を統合し、かつ透かし彫り領域と画像領域も誤差ゼロで位置決めされる場合、該製品の偽造防止性能は更に向上する。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の実施例は光学偽造防止素子を提供しており、構造的に、前記光学偽造防止素子は基材を含み、基材の第1の側面は起伏構造層を有し、前記起伏構造層は、第1の微細構造を有する第1の領域及び第2の微細構造を有する第2の領域を含み、前記第2の微細構造の比容積は前記第1の微細構造の比容積よりも大きく、前記起伏構造層の片側には、順次積層された第1のめっき層、誘電体層、第2のめっき層及び保護層があり、前記第1のめっき層及び前記誘電体層は前記第1の領域及び前記第2の領域に位置し、前記第2のめっき層及び前記保護層は前記第1の領域に位置するが、前記第2の領域には位置せず、ここで、前記第1のめっき層、前記誘電体層及び前記第2のめっき層は、機能性めっき層群を構成し、前記機能性めっき層群及び前記第1の微細構造は、前記第1の領域において組み合わされた光学特徴を有し、前記第1のめっき層及び前記第2の微細構造は、前記第2の領域において組み合わされた光学特徴を有する。反射観察で得られた2つの画像領域(第1の領域及び第2の領域)は微細構造によって決定されるため、位置決め誤差がゼロであるという特徴がある。
【0012】
ここで言及されている起伏構造の比容積は、起伏構造層を水平状態に置く状態で、起伏構造表面をちょうど完全に覆う液体の想定される体積と起伏構造の水平面における投影面積の比を指し、本発明はまた、別の重要な物理量、即ち起伏構造のアスペクト比に関し、これは、起伏構造の深さと幅(又は周期構造の周期)の比を指し、この定義によれば、アスペクト比は無次元の物理量であり、比容積の次元はum3/um2であり、この定義によれば、平坦構造は、アスペクト比がゼロで比容積がゼロの起伏構造とみなされ、アスペクト比と比容積は、量に直接関係しない2つの物理量であり、例えば、A構造は深さ1um、周期1umの1次元ジグザグ格子である場合、そのアスペクト比は1であり、比容積は0.5um3/um2であり、B構造は深さ2um、周期4umの1次元ジグザグ格子である場合、そのアスペクト比は0.5であり、比容積は1um3/um2であり、即ち、A構造のアスペクト比はB構造のアスペクト比よりも大きく、B構造の比容積はA構造の比容積よりも大きく、第1の微細構造と第2の微細構造の比容積の差は、第2の領域における第2のめっき層材料層の除去を達成するための基礎であり、比容積の差に基づいて特定の微細構造上のめっき層の正確な除去を実現することについては、具体的な実施部分で更に説明する。
【0013】
一般に、前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造は、周期構造及び/又は周期構造における構造若しくは組み合わせ構造であり、前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造の横断面構造は、正弦型構造、長方形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧形格子構造のうちのいずれか1つの構造、又は少なくとも任意の2つの構造からなる組み合わせ構造である。
【0014】
好ましくは、前記第1の微細構造の比容積は0um3/um2以上0.5um3/um2未満であり、前記第2の微細構造の比容積は0.4um3/um2より大きく3um3/um2未満である。
【0015】
好ましくは、前記第1のめっき層は前記起伏構造層に隣接している。
【0016】
好ましくは、前記第1のめっき層又は前記第2のめっき層の材料は、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、銅、スズ、及びチタンのうちのいずれか1種の金属、又は少なくとも任意の2種の金属の組み合わせからなる合金であり、前記誘電体層の材料は、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、硫化亜鉛、窒化チタン、二酸化チタン、一酸化チタン、三酸化二チタン、五酸化三チタン、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化セリウム、三酸化ビスマス、酸化クロムグリーン、酸化鉄、酸化ハフニウム及び酸化亜鉛のうちのいずれか1種の化合物、又は少なくとも任意の2種の化合物からなる混合物である。
【0017】
好ましくは、前記機能性めっき層群は多層干渉光学可変めっき層であり、前記多層干渉光学可変めっき層のいずれかの側に前記光学偽造防止素子はいずれも干渉光学可変特徴を有する。
【0018】
更に、製品が正確に位置決めされた透かし彫り特徴を有することを可能にするために、このとき、前記起伏構造層は、第3の微細構造を有する第3の領域を更に含み、前記第3の微細構造のアスペクト比は前記第2の微細構造のアスペクト比よりも大きく、かつ前記第3の微細構造の比容積は前記第1の微細構造の比容積よりも大きく、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層は前記第3の領域に位置せず、前記光学偽造防止素子は前記第3の領域において透かし彫り特徴を有する。第3の微細構造と第1の微細構造の比容積の差、及び第3の微細構造と第2の微細構造のアスペクト比の差は、第3の領域の第1のめっき層及び第2のめっき層の両方の除去を達成するための基礎である。アスペクト比の差に基づいて特定の微細構造上のめっき層の正確な除去を実現することについては、具体的な実施部分で更に説明する。好ましくは、前記第3の微細構造のアスペクト比は0.2より大きく1未満であり、前記第2の微細構造のアスペクト比は0より大きく0.3未満であり、前記第3の微細構造の比容積は0.4um3/um2より大きく3um3/um2未満である。
【0019】
本発明の実施例はまた、光学偽造防止素子の製造方法を提供しており、該製造方法は、
S1)起伏構造層を形成するステップであって、前記起伏構造層が第1の微細構造を有する第1の領域及び第2の微細構造を有する第2の領域を含み、前記第2の微細構造の比容積が前記第1の微細構造の比容積よりも大きい、ステップと、
S2)前記起伏構造層の片側に、積層された第1のめっき層材料層、誘電体層材料層、第2のめっき層材料層及び保護層材料層を順次形成するステップと、
S3)ステップS2)の半製品を、前記第2の領域に位置する第2のめっき層材料層の一部又はすべてが除去されるまで、前記第2のめっき層材料層と反応できる雰囲気に置き、そして前記第1の領域内にのみ、少なくとも積層された第1のめっき層及び第2のめっき層を残すステップであって、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層がそれぞれ、前記第1の領域に位置しかつ除去されていない前記第1のめっき層材料層及び前記第2のめっき層材料層の一部のめっき層材料層である、ステップと、を含む。
【0020】
好ましくは、ステップS1)の起伏構造層は、第3の微細構造を有する第3の領域を更に含み、前記第3の微細構造のアスペクト比は前記第2の微細構造のアスペクト比よりも大きく、前記第3の微細構造の比容積は前記第1の微細構造の比容積よりも大きい。
【0021】
好ましくは、該製造方法は、S4)ステップS3)の半製品を、前記第3の領域に位置する第1のめっき層材料層及び第2のめっき層材料層が部分的に又は完全に除去されるまで、前記第1のめっき層材料層と反応できる雰囲気に置くステップを更に含む。
【0022】
好ましくは、ステップS3)の第1のめっき層及び/又は第2のめっき層はアルミニウム層を含み、ステップS3)において、前記第1のめっき層材料層及び/又は前記第2のめっき層材料層と反応できる雰囲気は酸性液及び/又はアルカリ液である。
【0023】
好ましくは、該製造方法は、他の光学偽造防止機能又は補助機能を実現するために、無機又は有機のめっき層又はコーティングを施すステップを更に含む。
【0024】
本発明の実施例の他の特徴及び利点については、以下の発明を実施するための形態の部分で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図面は、本発明の実施例の更なる理解を提供するために使用され、かつ本明細書の一部を構成し、以下の発明を実施するための形態と共に本発明の実施例を説明するために使用されるが、本発明の実施例を限定するものではない。図面は以下の通りである。
【
図1】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子の平面図である。
【
図2】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子のX‐X方向に沿った可能な断面図である。
【
図3】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において起伏構造層を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図4】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において機能性めっき層群を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図5】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において保護層を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図6】本発明の実施例による第1の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において腐食性雰囲気を受けた後の例示的な素子の断面図である。
【
図7】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子の平面図である。
【
図8】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子のX‐X方向に沿った可能な断面図である。
【
図9】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において起伏構造層を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図10】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において機能性めっき層群を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図11】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において保護層を形成した後の例示的な素子の断面図である。
【
図12】本発明の実施例による第2の例示的な光学偽造防止素子の製造過程において腐食性雰囲気を受けた後の例示的な素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例の具体的な実施形態について詳細に説明する。本明細書に記載される具体的な実施形態は本発明の実施例を例示及び説明するためにのみ使用され、本発明の実施例を限定するために使用されないことを理解されたい。
【0027】
(実施例1)
図1に示されるように、該光学偽造防止素子は第1の領域A及び第2の領域Bを含み、第1の領域Aは、第1の光学微細構造と機能性めっき層群とを組み合わせた光学特徴を有し、第2の領域Bは、第2の光学微細構造と第1のめっき層とを組み合わせた光学特徴を有する。2つの領域は互いに厳密に位置決めされる。画像の局所的な線は非常に細かくてもよく、例えば50um未満である。通常、機能性めっき層群は多層干渉光学可変めっき層であり、第1のめっき層は金属反射めっき層(例えばアルミニウム層)であり、このように、第1の領域Aは干渉光学可変特徴を示し、第2の領域Bは通常の金属反射めっき層の特徴を示す。
【0028】
図2に示されるように、光学偽造防止素子は、基材1、起伏構造層2、第1のめっき層31、誘電体層32、第2のめっき層33、保護層4、及び他の機能性コーティング5を含む。第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33は機能性めっき層群3を構成する。基材1及び起伏構造層2は通常、透明な材料で構成される。前記起伏構造層2は、第1の微細構造からなる第1の領域Aと、第2の微細構造からなる第2の領域Bとを含み、前記第2の微細構造の比容積は、第1の微細構造の比容積よりも大きい。
【0029】
第1の領域Aには、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33からなる機能性めっき層群3が設けられ、第2の領域Bには、第1のめっき層31及び誘電体層32が設けられている。通常、誘電体層32は無色透明の材料であり、第2の領域Bにおいて特別な光学効果を提供しない。
【0030】
偽造防止素子の上方及び/又は下方から観察すると、第1の領域Aは、第1の微細構造と機能性めっき層群3とを組み合わせた光学特徴を示し、第2の領域Bは、第2の微細構造と第1のめっき層31とを組み合わせた光学特徴を示す。
【0031】
第1のめっき層31が半透明であり、第2のめっき層33が不透明又は実質的に不透明である場合、該光学偽造防止素子を下方から観察しなければならず、第1のめっき層31が不透明又は実質的に不透明であり、第2のめっき層33が半透明である場合、該光学偽造防止素子を上方から観察しなければならず、第1のめっき層31及び第2のめっき層33が両方とも半透明である場合、下方からも上方からも該光学偽造防止素子を観察することができる。
【0032】
保護層4は、機能性めっき層群3に隣接している。保護層4は製造過程中の生成物であり、一般に追加の光学効果を提供しない。特に、第1の領域Aにおいて、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33は、それぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層として機能し、かつこれらが組み合わされて、多層干渉光学可変めっき層群を形成し、即ち、第1の領域Aは、第1の微細構造と多層干渉光学可変めっき層とを組み合わせた偽造防止特徴を有し、第2の領域Bは、第2の微細構造と従来の反射層とを組み合わせた偽造防止特徴を有する。必要に応じて、他の機能性コーティング5、例えば、保護対象の主製品と接着するための接着層を設けることができる。
【0033】
以下、本発明による、
図2に示される光学偽造防止素子を製造する方法を、
図3~
図6と併せて説明し、該方法はステップS1~S4を含む。説明を簡潔にするために、機能性めっき層群3を、多層干渉光学可変めっき層として選択し、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33をそれぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層とする。
【0034】
S1、
図3に示されるように、基材1の第1の側面に起伏構造層2を形成し、前記起伏構造層2は少なくとも、第1の微細構造からなる第1の領域Aと、第2の微細構造からなる第2の領域Bとを含み、前記第2の微細構造の比容積は第1の微細構造の比容積よりも大きい。
【0035】
基材1は、少なくとも部分的に透明であってもよく、着色された誘電体層であってもよく、表面に機能性コーティングがある透明な誘電体膜であってもよく、又は複合により形成された多層膜であってもよい。基材1は、一般に、物理的及び化学的耐性が高くかつ機械的強度が高いフィルム材料で形成され、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、及びポリプロピレン(PP)フィルムなどのプラスチックフィルムを使用して基材1を形成することができ、また基材1は、好ましくは、PET材料で形成される。基材1は、基材1と起伏構造層2との接着を強化するために、接着強化層を含んでもよい。基材1はまた、最終製品の基材1と起伏構造層2との分離を実現するために、剥離層を含んでもよい。
【0036】
起伏構造層2は、紫外線鋳造、成形プレス、ナノインプリントなどの加工方法による大量複製によって形成することができる。例えば、起伏構造層2は、成形プロセスを通じて熱可塑性樹脂から形成することができ、即ち、基材1上に事前に塗布された熱可塑性樹脂を、高温の金属テンプレートを通過するときに加熱させ、軟化及び変形させることで、特定の起伏構造を形成し、その後冷却成形する。起伏構造層2はまた、放射線硬化鋳造プロセスを用いて形成することができ、即ち、放射線硬化樹脂を基材1上に塗布し、紫外線又は電子ビームなどの放射線を照射しながら、原版をその上に押し付け、上記材料を硬化させ、その後原版を取り外して起伏構造層2を形成する。
【0037】
その後のめっき層の除去を達成するために、前記第2の微細構造の比容積は、第1の微細構造の比容積よりも大きい。好ましくは、前記第1の微細構造の比容積は0um3/um2以上0.5um3/um2未満であり、第2の微細構造の比容積は、0.4um3/um2より大きく3um3/um2未満である。
【0038】
前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造は、周期構造及び/又は周期構造における構造若しくは組み合わせ構造であり、前記第1の微細構造又は前記第2の微細構造の横断面構造は、正弦型構造、長方形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧形格子構造のうちのいずれか1つの構造、又は少なくとも任意の2つの構造からなる組み合わせ構造である。第1の微細構造及び第2の微細構造のサイズ及び横方向の配置は、必要とされる光学効果によって決定される。第1の微細構造は平坦構造として選択されてもよい。
【0039】
S2、
図4に示されるように、起伏構造層2上に、第1のめっき層31材料層、誘電体層32材料層、及び第2のめっき層33材料層からなる機能性めっき層群3を形成する。
【0040】
本実施例において、機能性めっき層群3は、多層干渉光学可変めっき層として選択され、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33はそれぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層として機能し、即ち、第1のめっき層31は不透明又は実質的に不透明であり、第2のめっき層33は半透明である。
【0041】
第1のめっき層31は、干渉光学可変めっき層における反射層として機能する。第1のめっき層31の材料は、Al、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、及びPtのいずれか1種の金属、少なくとも2種の金属の混合物又は合金であり得る。第1のめっき層31の厚さは、一般に、10nmより大きく80nm未満、好ましくは20nmより大きく50nm未満となるように選択される。金属反射めっき層が薄すぎると輝度が不十分になり、金属反射めっき層が厚すぎると、起伏構造層への堅牢性が悪くなり、コストが高くなる。
【0042】
第1のめっき層31は一般に、限定されないが、例えば熱蒸発、マグネトロンスパッタリング、MOCVDなどを含む物理及び/又は化学気相成長法によって起伏構造層2上に形成することができる。好ましくは、第1のめっき層31は、均一な表面密度で、同じ被覆方法で起伏構造層2上に形成される。
【0043】
誘電体層32は、ファベロ干渉キャビティにおける誘電体層として機能する。誘電体層32は、一般に気相成長法によって形成され、その材料は、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、TiO2、MgO、SiO2、又はそれらの混合物から選択することができる。気相成長後、誘電体層32の表面形態は、第1のめっき層の形態と同じ又は実質的に同じである。誘電体層32の厚さは、最終的な干渉光学可変めっき層に必要とされる光学効果によって決定され、一般に100nmより大きく600nm未満である。
【0044】
第2のめっき層33は、干渉光学可変めっき層における吸収層として機能する。吸収層は一般に薄い金属材料であり、光を透過するときに半透明の特徴を示す。第2のめっき層33は、アルミニウム、銀、銅、スズ、クロム、ニッケル、及びチタンのうちのいずれか1種の金属又は少なくとも2種の金属の合金で構成されてもよく、アルミニウムは低コストであり、かつ酸性液又はアルカリ液によって容易に除去されるため、アルミニウムが好ましい。第2のめっき層33は、一般に気相成長法によって形成される。気相成長後、第2のめっき層33の表面形態は、第1のめっき層31及び誘電体層32の形態と同じ又は実質的に同じである。第2のめっき層33の厚さは、一般に2nmより大きく10nm未満である。
【0045】
S3、
図5に示されるように、機能性めっき層群3上に保護層4材料層を形成する。
【0046】
保護層4は、一般に、印刷プロセスによって形成される。起伏構造層2上の第1の微細構造の比容積が第2の微細構造の比容積よりも小さく、機能性めっき層群3が一般に、同じ被覆方法で起伏構造層2上に形成されるため、第1の領域Aの機能性めっき層群の表面の微細構造の比容積は、依然として、第2の領域Bの機能性めっき層群の表面の微細構造の比容積よりも小さい。
【0047】
第1の領域Aにおける保護層4の機能性めっき層群の表面微細構造の最小厚さが第2の領域Bにおける機能性めっき層群の表面微細構造の最小厚さよりも著しく大きくなるように、適切な保護層4の印刷量を選択することができる。微細構造における保護層4の最小厚さは、一般に、微細構造の最上部に位置する。このように、第1の領域Aの機能性めっき層群に対する保護層4の保護効果は、第2の領域Bの機能性めっき層群に対する保護効果よりも著しく高い。
【0048】
一般に、保護層4の単位面積当たりの塗布量は、0.1g/m2より大きく1g/m2未満であることが必要である。塗布前の保護層4の粘度が低いほどレベリングに有利であるため、保護接着剤の粘度は、一般に100cP未満、好ましくは50cP未満である。保護層4の成分は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂のうちのいずれか1種、又は少なくとも任意の2種の組み合わせを主樹脂とするワニス若しくはインクであってもよい。
【0049】
S4、
図6に示されるように、S3で得た多層構造を、第2の領域Bに位置する第2のめっき層材料層の一部又はすべてが除去されるまで、第2のめっき層33の材料と反応できる雰囲気に置く。
【0050】
前述したように、第1の領域Aの機能性めっき層群に対する保護層4の保護効果は、第2の領域Bの機能性めっき層群に対する保護効果よりも著しく高い。したがって、一定の時間内に、腐食性雰囲気は、第2の領域Bの保護層の脆弱点を通って第2のめっき層33に到達してそれを腐食させ、この時間内に、保護層4は、第1の領域Aの第2のめっき層を効果的に保護する。
【0051】
一般に、誘電体層32は腐食性雰囲気と相互作用せず、即ち誘電体層32は、第1のめっき層31を効果的に保護することができる。このようにして、第1の領域Aに正確に位置する機能性めっき層群3と、第2の領域Bに正確に位置する第1のめっき層31とが得られる。第2のめっき層33がアルミニウム又はアルミニウムを含むめっき層である場合、腐食性雰囲気は酸性液又はアルカリ液であり得る。
【0052】
通常、第2の領域B上の第2のめっき層材料層が腐食した後、めっき層上の保護層もそれと共に剥がれる。場合によっては、第2の領域B上の第2のめっき層材料層が腐食した後、めっき層上の保護層は、部分的に又は完全に多層体に残る可能性があり、これは後続のプロセスの実施に影響を与えない。
【0053】
これで、第1の領域A内の機能性めっき層群3が示す光学特徴と、第2の領域B内の第1のめっき層31が示す光学特徴とを有する光学偽造防止素子の半製品が得られる。
【0054】
図2に示される光学偽造防止素子の製造方法は、一般に、ステップS4の後に、光学めっき層を保護する役割を果たす老化防止接着剤、及び/又は他の基材と接着する役割を果たすホットメルト接着剤などの他の機能性コーティング5を塗布するステップを更に含む。
【0055】
(実施例2)
図7に示されるように、該光学偽造防止素子は、第1の領域A、第2の領域B、及び第3の領域Cを含み、第1の領域Aは、第1の光学微細構造と機能性めっき層群とを組み合わせた光学特徴を有し、第2の領域Bは、第2の光学微細構造と第1のめっき層とを組み合わせた光学特徴を有し、第3の領域Cは、透かして観察すると透かし彫り特徴を有する。3つの領域は互いに厳密に位置決めされ、例えば、
図7に示される透かし彫り領域Cは、厳密に第2の領域Bの境界に位置する。多くの場合、画像又は透かし彫りの線は非常に細かく、例えば50um未満である。通常、機能性めっき層群は多層干渉光学可変めっき層であり、第1のめっき層は金属反射めっき層(例えばアルミニウム層)であり、このように、第1の領域Aは干渉光学可変特徴を示し、第2の領域Bは通常の金属反射めっき層の特徴を示す。
【0056】
図8に示されるように、光学偽造防止素子は、基材1、起伏構造層2、第1のめっき層31、誘電体層32、第2のめっき層33、保護層4、及び他の機能性コーティング5を含む。第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33は機能性めっき層群3を構成する。基材1及び起伏構造層2は通常、透明な材料で構成される。
【0057】
前記起伏構造層2は、第1の微細構造からなる第1の領域Aと、第2の微細構造からなる第2の領域Bと、第3の微細構造からなる第3の領域Cを含み、前記第2の微細構造の比容積は、第1の微細構造の比容積よりも大きく、第3の微細構造の比容積は第1の微細構造の比容積よりも大きく、かつ第3の微細構造のアスペクト比は第2の微細構造のアスペクト比よりも大きい。
【0058】
第1の領域Aには、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33からなる機能性めっき層群3が設けられ、第2の領域Bには、第1のめっき層31及び誘電体層32が設けられ、第3の領域Cには、第1のめっき層31及び第2のめっき層33が設けられていない。通常、誘電体層32は無色透明の材料であり、第2の領域Bにおいて特別な光学効果を提供しない。
【0059】
該光学偽造防止素子の上方及び/又は下方から観察すると、第1の領域Aは、第1の微細構造と機能性めっき層群3とを組み合わせた光学特徴を示し、第2の領域Bは、第2の微細構造と第1のめっき層31とを組み合わせた光学特徴を示す。第1のめっき層31及び第2のめっき層33が設けられていないため、該光学偽造防止素子を透かして観察すると、第1の領域Cは透かし彫り特徴を有する。
【0060】
保護層4は、機能性めっき層群3に隣接している。保護層4は製造過程中の生成物であり、一般に追加の光学効果を提供しない。特に、第1の領域Aにおいて、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33は、それぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層として多層干渉光学可変めっき層群を形成し、即ち、第1の領域Aは、第1の微細構造と多層干渉光学可変めっき層とを組み合わせた偽造防止特徴を有し、第2の領域Bは、第2の微細構造と従来の反射層とを組み合わせた偽造防止特徴を有する。
【0061】
必要に応じて、他の機能性コーティング5、例えば、保護対象の主製品と接着するための接着層を設けることができる。
【0062】
以下、本発明による、
図7に示される光学偽造防止素子を製造する方法を、
図9~
図12と併せて説明し、該方法はステップS1’~S4’を含む。説明を簡潔にするために、機能性めっき層群3を、多層干渉光学可変めっき層として選択し、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33をそれぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層とする。
【0063】
S1’、
図9に示されるように、基材1の第1の側面に起伏構造層2を形成し、前記起伏構造層2は、第1の微細構造からなる第1の領域Aと、第2の微細構造からなる第2の領域Bと、第3の微細構造からなる第3の領域Cとを含み、前記第2の微細構造の比容積は第1の微細構造の比容積よりも大きく、第3の微細構造の比容積は第1の微細構造の比容積よりも大きく、かつ第3の微細構造のアスペクト比は第2の微細構造のアスペクト比よりも大きい。
【0064】
基材1は、少なくとも部分的に透明であってもよく、着色された誘電体層であってもよく、表面に機能性コーティングがある透明な誘電体膜であってもよく、又は複合により形成された多層膜であってもよい。
【0065】
基材1は、一般に、物理的及び化学的耐性が高くかつ機械的強度が高いフィルム材料で形成され、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、及びポリプロピレン(PP)フィルムなどのプラスチックフィルムを使用して基材1を形成することができ、また基材1は、好ましくは、PET材料で形成される。基材1は、基材1と起伏構造層2との接着を強化するために、接着強化層を含んでもよい。基材1はまた、最終製品の基材1と起伏構造層2との分離を実現するために、剥離層を含んでもよい。
【0066】
起伏構造層2は、紫外線鋳造、成形プレス、ナノインプリントなどの加工方法による大量複製によって形成することができる。
【0067】
例えば、起伏構造層2は、成形プロセスを通じて熱可塑性樹脂から形成することができ、即ち、基材1上に事前に塗布された熱可塑性樹脂を、高温の金属テンプレートを通過するときに加熱させ、軟化及び変形させることで、特定の起伏構造を形成し、その後冷却成形する。起伏構造層2はまた、放射線硬化鋳造プロセスを用いて形成することができ、即ち、放射線硬化樹脂を基材1上に塗布し、紫外線又は電子ビームなどの放射線を照射しながら、原版をその上に押し付け、上記材料を硬化させ、その後原版を取り外して起伏構造層2を形成する。
【0068】
その後のめっき層の除去を達成するために、前記第2の微細構造の比容積は、第1の微細構造の比容積よりも大きく、第3の微細構造の比容積は第1の微細構造の比容積よりも大きく、かつ第3の微細構造のアスペクト比は第2の微細構造のアスペクト比よりも大きい。好ましくは、前記第1の微細構造の比容積は0以上0.5um3/um2未満であり、第2の微細構造の比容積は、0.4um3/um2より大きく3um3/um2未満であり、第3の微細構造の比容積は、0.4um3/um2より大きく3um3/um2未満であり、前記第2の微細構造のアスペクト比は0より大きく0.3未満であり、前記第3の微細構造のアスペクト比は0.2より大きく1未満である。第1の微細構造のアスペクト比は限定されず、必要とされる光学効果に応じて設定することができる。
【0069】
前記第1の微細構造、前記第2の微細構造又は前記第3の微細構造は、周期構造及び/又は周期構造における構造若しくは組み合わせ構造であり、前記第1の微細構造、前記第2の微細構造又は前記第3の微細構造の横断面構造は、正弦型構造、長方形格子構造、台形格子構造、ブレーズド格子構造、及び弧形格子構造のうちのいずれか1つの構造、又は少なくとも任意の2つの構造からなる組み合わせ構造である。
【0070】
第1の微細構造及び第2の微細構造のサイズ及び横方向の配置は、必要とされる光学効果によって決定される。第1の微細構造は平坦構造として選択されてもよい。
【0071】
第3の微細構造は、透かし彫りの役割のみを果たしており、一般に追加の光学効果を提供しないため、簡略化することができ、例えば、断面が底辺の幅が10um、高さが5umの二等辺三角形(即ち、アスペクト比0.5、比容積2.5um3/um2)である1次元配置のブレーズド格子である。
【0072】
S2’、
図10に示されるように、起伏構造層2上に、第1のめっき層31材料層、誘電体層32材料層、及び第2のめっき層33材料層からなる機能性めっき層群3を形成する。
【0073】
本実施例において、機能性めっき層群3は、多層干渉光学可変めっき層として選択され、第1のめっき層31、誘電体層32、及び第2のめっき層33はそれぞれ、反射層、誘電体層、及び吸収層として機能し、即ち、第1のめっき層31は不透明又は実質的に不透明であり、第2のめっき層33は半透明である。
【0074】
第1のめっき層31は、干渉光学可変めっき層における反射層として機能する。第1のめっき層31の材料は、Al、Cu、Ni、Cr、Ag、Fe、Sn、Au、及びPtのいずれか1種の金属、少なくとも2種の金属の混合物又は合金であってもよく、アルミニウムは低コストであり、かつ酸性液又はアルカリ液によって容易に除去されるため、アルミニウムが好ましい。
【0075】
第1のめっき層31の厚さは、一般に、10nmより大きく80nm未満、好ましくは20nmより大きく50nm未満となるように選択される。金属反射めっき層が薄すぎると輝度が不十分になり、金属反射めっき層が厚すぎると、起伏構造層への堅牢性が悪くなり、コストが高くなる。第1のめっき層31は一般に、限定されないが、例えば熱蒸発、マグネトロンスパッタリング、MOCVDなどを含む物理及び/又は化学気相成長法によって起伏構造層2上に形成することができる。好ましくは、第1のめっき層31は、均一な表面密度で、同じ被覆方法で起伏構造層2上に形成される。
【0076】
誘電体層32は、ファベロ干渉キャビティにおける誘電体層として機能する。誘電体層32は、一般に気相成長法によって形成され、その材料は、MgF2、Sn、Cr、ZnS、ZnO、TiO2、MgO、SiO2、又はそれらの混合物から選択することができる。気相成長後、誘電体層32の表面形態は、第1のめっき層の形態と同じ又は実質的に同じである。誘電体層32の厚さは、最終的な干渉光学可変めっき層に必要とされる光学効果によって決定され、一般に100nmより大きく600nm未満である。
【0077】
第2のめっき層33は、干渉光学可変めっき層における吸収層として機能する。吸収層は一般に薄い金属材料であり、光を透過するときに半透明の特徴を示す。第2のめっき層33は、アルミニウム、銀、銅、スズ、クロム、ニッケル、及びチタンのうちのいずれか1種の金属又は少なくとも2種の金属の合金で構成されてもよく、アルミニウムは低コストであり、かつ酸性液又はアルカリ液によって容易に除去されるため、アルミニウムが好ましい。第2のめっき層33は、一般に気相成長法によって形成される。気相成長後、第2のめっき層33の表面形態は、第1のめっき層31及び誘電体層32の形態と同じ又は実質的に同じである。第2のめっき層33の厚さは、一般に2nmより大きく10nm未満である。
【0078】
S3’、
図11に示されるように、機能性めっき層群3上に保護層4材料層を形成する。
【0079】
保護層4は、一般に、印刷プロセスによって形成される。起伏構造層2上の第1の微細構造の比容積が第2の微細構造及び第3の微細構造の比容積よりも小さく、機能性めっき層群3が一般に、同じ被覆方法で起伏構造層2上に形成されるため、第1の領域Aの機能性めっき層群の表面の微細構造の比容積は、依然として、第2の領域B及び第3の領域Cの機能性めっき層群の表面の微細構造の比容積よりも小さい。
【0080】
第1の領域Aにおける保護層4の機能性めっき層群の表面微細構造の最小厚さが第2の領域B及び第3の領域Cにおける機能性めっき層群の表面微細構造の最小厚さよりも著しく大きくなるように、適切な保護層4の印刷量を選択することができる。微細構造における保護層4の最小厚さは、一般に、微細構造の最上部に位置する。
【0081】
このように、第1の領域Aの機能性めっき層群に対する保護層4の保護効果は、第2の領域B及び第3の領域Cの機能性めっき層群に対する保護効果よりも著しく高い。
【0082】
一般に、保護層4の単位面積当たりの塗布量は、0.1g/m2より大きく1g/m2未満であることが必要である。塗布前の保護層4の粘度が低いほどレベリングに有利であるため、保護接着剤の粘度は、一般に100cP未満、好ましくは50cP未満である。保護層4の成分は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂のうちのいずれか1種、又は少なくとも任意の2種の組み合わせを主樹脂とするワニス若しくはインクであってもよい。
【0083】
S4’、
図12に示されるように、S3’で得た多層構造を、第2の領域Bに位置する第2のめっき層材料層、第3の領域Cに位置する第1のめっき層材料層及び第2のめっき層材料層の一部又はすべてが除去されるまで、第1のめっき層31及び第2のめっき層33の材料と反応できる雰囲気に置く。
【0084】
前述したように、第1の領域Aの機能性めっき層群に対する保護層4の保護効果は、第2の領域B及び第3の領域Cの機能性めっき層群に対する保護効果よりも著しく高い。したがって、一定の時間内に、腐食性雰囲気は、第2の領域B及び第3の領域Cの保護層の脆弱点を通って第2のめっき層33に到達してそれを腐食させる。第3の微細構造のアスペクト比は第2の微細構造のアスペクト比よりも大きいため、第3の領域の誘電体層は第2の領域Bの誘電体層よりも多くの亀裂を形成し、したがって第3の領域Cの誘電体層の、その下の第1のめっき層材料層に対する保護効果は、第2の領域Bの誘電体層の、その下の第1のめっき層材料層に対する保護効果よりも悪い。
【0085】
したがって、第3の領域Cにおいて、腐食性雰囲気は第3の領域内の第2のめっき層を腐食させた後、引き続き誘電体層の脆弱点を通って第1のめっき層31を腐食させ、第2の領域Bにおいて、第1のめっき層31は、誘電体層によって効果的に保護されるため残る。このようにして、第1の領域Aに正確に位置する機能性めっき層群と、第2の領域Bに正確に位置する第1のめっき層31とが得られ、第2の領域Bに位置する第2のめっき層材料層と、第3の領域Cに位置する機能性めっき層群が正確に除去される。第1のめっき層31及び第2のめっき層33がアルミニウム又はアルミニウムを含むめっき層である場合、腐食性雰囲気は酸性液又はアルカリ液であり得る。
【0086】
通常、第2の領域B及び第3の領域C上の第2のめっき層材料層が腐食した後、めっき層上の保護層もそれと共に剥がれる。場合によっては、第2の領域B及び第3の領域C上の第2のめっき層材料層が腐食した後、めっき層上の保護層は、部分的に又は完全に多層体に残る可能性があり、これは後続のプロセスの実施に影響を与えない。
【0087】
これで、第1の領域A内の機能性めっき層群3が示す光学特徴と、第2の領域B内の第1のめっき層31が示す光学特徴と、第3の領域C内の透かし彫り特徴とを有する光学偽造防止素子の半製品が得られる。
【0088】
図7に示される光学偽造防止素子の製造方法は、一般に、ステップS4’の後に、光学めっき層を保護する役割を果たす老化防止接着剤、及び/又は他の基材と接着する役割を果たすホットメルト接着剤などの他の機能性コーティング5を塗布するステップを更に含む。
【0089】
本発明による光学偽造防止素子の製造方法は、窓明きセキュリティスレッド、ラベル、標識、幅の広いストリップ、透明な窓、フィルムなどを製造するのに適している。前記窓明きセキュリティスレッドが付いた偽造防止紙は、紙幣、パスポート、有価証券などの様々な高セキュリティ製品の偽造防止に使用される。
【0090】
以上は、添付の図面を参照して本発明の実施例の選択可能な実施形態を詳細に説明したが、本発明の実施例は、上記の実施形態における具体的な詳細に限定されず、本発明の実施例の技術的概念の範囲内で、本発明の実施例の技術的解決策に対して様々な単純な修正を行うことができ、これらの単純な修正はすべて、本発明の実施例の保護範囲内に入る。
【0091】
更に、上記の具体的な実施形態に記載されている様々な特定の技術的特徴は、矛盾がない限り、任意の適切な方法で組み合わせることができることに留意されたい。不必要な繰り返しを回避するために、本発明の実施例において、様々な可能な組み合わせ方式を改めて説明しない。
【0092】
当業者は、上記の実施例の方法におけるすべて又は一部のステップが、プログラムを通じて関連するハードウェアに指示することによって完了することができることを理解することができ、該プログラムは記憶媒体に記憶され、シングルチップマイクロコンピュータ、チップ又はプロセッサ(processor)が本出願の各実施例に記載された方法のすべて又は一部のステップを実行できるようにするいくつかの命令を含む。前述の記憶媒体には、USBメモリ、モバイルハードディスク、読み取り専用メモリ(ROM、Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、磁気ディスク又は光ディスクなどのプログラムコードを記憶できる様々な媒体が含まれる。
【0093】
更に、本発明の実施例の様々な異なる実施形態もまた、任意に組み合わせることができ、本発明の実施例の思想に違反しない限り、それは、同様に本発明の実施例において開示された内容とみなされるべきである。
【符号の説明】
【0094】
1 基材
2 起伏構造層
3 機能性めっき層群
31 第1のめっき層
32 誘電体層
33 第2のめっき層
4 保護層
5 他の機能性コーティング