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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20230706BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20230706BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230706BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230706BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
H05K3/28 C
G03F7/023
G03F7/004 501
G09F9/00 346Z
G09F9/00 304Z
H05K3/28 D
G06F3/041 495
G06F3/041 640
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019013804
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2019140389
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2018018585
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 康巨
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 友久
(72)【発明者】
【氏名】浜口 仁
(72)【発明者】
【氏名】多田羅 了嗣
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-114232(JP,A)
【文献】特開2017-111437(JP,A)
【文献】特開2013-209607(JP,A)
【文献】特開2014-232300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
G03F 7/023
G03F 7/004
G09F 9/00
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の上層に配置された硬化膜とを備える配線部材であって、
前記硬化膜は、感光膜形成用組成物の塗膜であり、
前記感光膜形成用組成物は、
(A)アルカリ可溶性基を有する重合体、
(B)感放射線性化合物、及び
(C)溶剤
を含み、
前記硬化膜の一部にテーパ形状の開口領域を有し、そのテーパ角度が10°以上80°以下であり、
前記配線部材の前記硬化膜とは反対側の前記基板の面を外径0.5mmのマンドレルに沿って180°屈曲させた際に前記硬化膜の割れ又は剥がれが生じないことを特徴とする、配線部材。
【請求項2】
前記硬化膜は、最も厚い位置における膜厚が0.3~20μmであることを特徴とする、請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記硬化膜を膜厚10μmに換算した際の、下記式で表される破断伸度が、7%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の配線部材。
破断伸度(%)={(L1-L0)/L0}×(10/T)×100
(式中、Tは前記硬化膜の厚み[μm]であり、L0は試験片の初期長さであり、L1は破断時の試験片の長さである。)
【請求項4】
前記配線部材の一部分に屈曲部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の配線部材。
【請求項5】
アクティブ領域と、前記基板の面に平行な方向に関して該アクティブ領域に隣接する非アクティブ領域とを有するディスプレイ基板又はタッチパネル基板として用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の配線部材。
【請求項6】
前記非アクティブ領域は、前記ディスプレイ基板又は前記タッチパネル基板の主面側から、前記主面とは反対側の背面側に向かって屈曲していることを特徴とする、請求項5に記載の配線部材。
【請求項7】
前記非アクティブ領域は、当該非アクティブ領域の背面と前記アクティブ領域の背面とが対向するように180°屈曲していることを特徴とする、請求項6に記載の配線部材。
【請求項8】
前記非アクティブ領域内に位置する前記硬化膜は、感光膜に対するフォトリソグラフィーにより形成されたパターンを有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項9】
前記パターンが、ホールパターン及び回路パターンのうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8に記載の配線部材。
【請求項10】
前記(A)重合体は、前記アルカリ可溶性基とは別の架橋性官能基を含む構造単位(m1)を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項11】
前記感光膜形成用組成物は、更に(D)架橋性化合物を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項12】
前記(A)重合体は、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンのうちの少なくとも1種に由来する構造単位(m2)を含むことを特徴とする、請求項11のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項13】
前記(A)重合体、又は前記(A)重合体とは異なる前記感光膜形成用組成物に含有される重合体中に、下記式で表される構造単位(a3)が含まれることを特徴とする、請求項12のいずれか1項に記載の配線部材。
【化1】
(式(a3)中、複数あるR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は、炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R6は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【請求項14】
前記構造単位(m2)を含む重合体の含有量が、前記感光膜形成用組成物中の溶剤以外の成分の合計質量の10質量%以上90質量%以下であることを特徴とする、請求項12に記載の配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の柔軟性を有する材料を利用して、平板上の表示装置に代えて、フレキシブル表示装置の開発が進行している。フレキシブル表示装置は、折り曲げ可能な特性を有しているため、かかる特性を利用して、非アクティブ領域(非表示領域)の幅を狭めた表示装置が種々提供されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-512556号公報
【文献】特開2017-111435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なフレキシブル表示装置では、非表示領域の一部に対応するベゼルを最小限に抑えるため、ベンディング領域が極めて小さい曲率で屈曲され、画像出力やタッチパネル信号出力のための接続端子、及び制御チップなどを画面の裏側に配置する形態が採用されることがある。
【0005】
しかしながら、ベンディング領域が大きく曲がった形態を有した状態で、接続端子や制御チップなどを画面の裏側に配置すると、屈曲領域の外側に位置する配線の保護層に大きな引っ張り応力がかかり伸長する。この結果、当該保護層の膜面に割れ又は剥がれが発生し、それに伴い配線の断線が起きる可能性がある。
【0006】
また、屈曲領域に、配線の断線防止目的で、ジグザグ状や8の字状といった断線防止構造が採用されることがある。しかし、このような構成を採用した場合においても、保護層自体に割れ又は剥がれが発生した場合には、かかる箇所に変形が集中し断線に至る可能性がある。
【0007】
更に、近年では表示装置やタッチパネルの高精細化により、狭ピッチでの配線形成が求められている。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、曲げ特性に優れ、且つ、狭ピッチでの配線形成が可能な配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配線部材は、
基板と、該基板の上層に配置された硬化膜とを備える配線部材であって、
前記配線部材の前記硬化膜とは反対側の前記基板の面を外径0.5mmのマンドレルに沿って180°屈曲させた際に前記硬化膜の割れ又は剥がれが生じないことを特徴とする。
【0010】
上記配線部材は、基板上に硬化膜を備える。この硬化膜は、基板上に形成される配線層の保護層として機能させることができる。この硬化膜は、フォトリソグラフィーによりパターンを形成し得る特性を有するため、高解像度でのパターニング性能が実現される。
【0011】
また、この硬化膜は、外径0.5mmのマンドレルに沿って180°屈曲させた際に割れ又は剥がれが生じない。このような特徴を有するため、曲げ特性に優れている。
【0012】
よって、このような硬化膜を備える配線部材によれば、例えば、最も厚い位置における膜厚が0.3~20μmであるような薄膜の屈曲部において狭ピッチの配線層を形成した場合によっても、配線の断線が招来しにくい。
【0013】
また、好ましい態様として、前記硬化膜を、膜厚10μmに換算した際の、下記式で表される破断伸度が10%以上である。
破断伸度(%)={(L1-L0)/L0}×(10/T)×100
(式中、Tは前記硬化膜の厚み[μm]であり、L0は試験片の初期長さであり、L1は破断時の試験片の長さである。)
【0014】
硬化膜が上記の特徴を有することで、高い伸び特性を有するため、屈曲部における断線防止の効果を更に高めることができる。また、前記配線部材が搭載された電子装置に対して、外部から物理的衝撃が加えられた場合においても、割れ又は剥がれの発現を抑制する機能が奏される。
【0015】
具体的な一態様として、前記配線部材の一部分に屈曲部を有する構成を採用することができる。なお、屈曲部は配線部材の一箇所に設けられていても、複数箇所に設けられていても構わない。
【0016】
具体的な一態様において、前記配線部材は、アクティブ領域と、前記基板の面に平行な方向に関して該アクティブ領域に隣接する非アクティブ領域とを有するディスプレイ基板又はタッチパネル基板として用いられる。
【0017】
この場合において、前記非アクティブ領域は、前記ディスプレイ基板又は前記タッチパネル基板の主面側から、前記主面とは反対側の背面側に向かって屈曲しているものとすることができる。このような構成によれば、非アクティブ領域をアクティブ領域とは異なる面上、具体的には側面側又は背面側に設けることができるため、平面上におけるアクティブ領域の割合を高めることができ、ベゼル幅を狭めることが可能となる。なお、この場合における屈曲起点は、非アクティブ領域として構わない。なお、本発明は、前記配線部材が、前記ディスプレイ基板又は前記タッチパネル基板の前記背面側から、前記主面側に屈曲する構成を排除しない。
【0018】
前記非アクティブ領域は、当該非アクティブ領域の背面と前記アクティブ領域の背面にとが対向するように180°屈曲しているものとしても構わない。ここで「対向する」とは、接する場合と、離間している場合の両者を含む。すなわち、非アクティブ領域の背面の少なくとも一部と、アクティブ領域の背面の少なくとも一部とが、接触しているものとしても構わないし、両背面に直交する方向に離間して位置しているものとしても構わない。かかる構成によれば、平面上におけるアクティブ領域の割合が最大限に高められ、極めて狭いベゼル幅の表示装置の実現に寄与することができる。また、180°の屈曲が実現できるため、多数の配線パターンを搭載しながらも厚みの小さい配線部材を実現することができる。
【0019】
具体的な一態様において、前記非アクティブ領域に位置する前記硬化膜は、感光膜に対するフォトリソグラフィーにより形成されたパターンを有する。前記パターンは、ホールパターン及び回路パターンのうちの少なくとも1種とすることができる。
【0020】
ここで、前記ホールパターンとは、同パターン内に導電層を充填させることで、上層に位置する配線層と下層に位置する配線層との電気的な接続を形成するために用いられるパターンを指す。また、前記回路パターンとは、基板の面に平行な方向に関して、複数の電極や配線を配置させるために用いられるパターンのことを指す。
【0021】
具体的な一態様において、前記配線部材に備えられる前記硬化膜は、感光膜形成用組成物の塗膜であり、
前記感光膜形成用組成物は、
(A)アルカリ可溶性基を有する重合体、
(B)感放射線性化合物、及び
(C)溶剤
を含む。
【0022】
好ましくは、前記(A)重合体は、前記アルカリ可溶性基とは別の架橋性官能基を含む構造単位(m1)を有する。これにより、硬化膜の熱耐性と絶縁性が向上する。
【0023】
好ましくは、前記感光膜形成用組成物は、更に(D)架橋性化合物を含む。これにより、硬化膜の熱耐性と絶縁性が向上する。
【0024】
一態様として、前記(A)重合体は、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンのうちの少なくとも1種に由来する構造単位(m2)を含んでも良い。これにより、高い伸び特性が実現される。なお、構造単位(m2)は、非環状構造単位とすることができる。本明細書において、「非環状構造単位」とは環状構造を有しない構造単位を指す。
【0025】
好ましくは、前記構造単位(m2)を含む重合体の含有量が、前記感光膜形成用組成物中の溶剤以外の成分の合計質量の10質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上55質量%以下である。かかる構成により、高い伸び特性を維持しながらも、配線への安定的な保持性を示すことができる。
【0026】
一態様として、前記感光膜形成用組成物は、(E)密着助剤及び(F)界面活性剤のうちの少なくとも1種を更に含む。(E)密着助剤を含むことで基板への密着性が向上し、(F)界面活性剤を含むことで、膜形成性が向上する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、曲げ特性に優れ、且つ、狭ピッチでの配線形成が可能な配線部材が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る配線部材の一つの実施形態であるフレキシブルプリント基板の構造例を模式的に示す断面図である。
図2A図1に示すフレキシブルプリント基板の工程断面図である。
図2B図1に示すフレキシブルプリント基板の工程断面図である。
図2C図1に示すフレキシブルプリント基板の工程断面図である。
図2D図1に示すフレキシブルプリント基板の工程断面図である。
図2E図1に示すフレキシブルプリント基板の工程断面図である。
図3】本発明に係る配線部材の一つの実施形態である有機EL素子の構造例を模式的に示す断面図である。
図4A図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4B図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4C図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4D図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4E図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4F図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図4G図3に示す有機EL素子の工程断面図である。
図5】本発明に係る配線部材の一つの実施形態であるタッチパネルの構造例を模式的に示す断面図である。
図6】絶縁性評価に用いられた基材を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る配線部材の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面は、いずれも模式的に示されたものであり、実際の寸法比と図面上の寸法比とは必ずしも一致しない。また、各図面間において、寸法比が異なる場合がある。
【0030】
[第一実施形態]
(構造)
図1は、本発明に係る配線部材の一つの実施形態であるフレキシブルプリント基板の例を模式的に図示したものである。フレキシブルプリント基板1は、フレキシブル基板2と、フレキシブル基板2の上層に形成された導電層3と、導電層3に電気的に接続された導電層4と、絶縁性の硬化膜(10,10a)とを備える。
【0031】
フレキシブル基板2は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンなどの樹脂からなる。
【0032】
導電層3及び導電層4は、導電性を有する材料であればよく、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅などの金属、若しくはこれを主成分とする合金、又は、酸化インジウム、ITO、タングステンを含むインジウム酸化物などの金属酸化物からなる。
【0033】
硬化膜10は、後述する材料からなり、曲げ特性を有した絶縁性材料である。硬化膜10aは、硬化膜10と同一材料で構成されていても、異なる材料で構成されていてもよい。
【0034】
図1に示されるように、フレキシブルプリント基板1は、湾曲部において導電層4が形成されている。硬化膜10を、後述する材料により構成したことで、パターニング性能を実現しながらも、優れた曲げ特性が実現される。
【0035】
(製造方法)
以下、図2A図2Eを参照して、フレキシブルプリント基板1の製造方法について記載する。
【0036】
図2Aに示すように、フレキシブル基板2の上面の所定の領域に、導電層3を形成する。導電層3は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成される。
【0037】
図2Bに示すように、導電層3の上面を覆うように、塗膜8を形成する。塗膜8は、硬化膜10の構成材料からなる。
【0038】
後述する材料からなる感光膜形成用組成物を、膜厚が例えば0.1~100μmとなるように、導電層3及びフレキシブル基板2の上面に塗布する。この際、膜厚は割れ又は剥がれの抑制や屈曲性の観点から、最も厚みが大きい箇所が0.2~50μmの範囲であることが好ましく、0.3~20μmであることがより好ましい。その後、オーブンやホットプレートを用いて、例えば温度:50~140℃、時間:10~360秒で乾燥して溶剤を除去する。これにより、導電層3及びフレキシブル基板2の上面に、感光膜形成用組成物からなる塗膜8が形成される。
【0039】
図2Cに示すように、塗膜8の所定の領域9を開口する。具体的には、例えば以下の方法によって行われる。
【0040】
開口領域となる領域9の形状に応じたパターニングされたマスクを介して、例えばコンタクトアライナー、ステッパー又はスキャナーを用いて塗膜8に対して露光処理を行う。露光用光としては、紫外光、可視光などが挙げられ、例えば、波長200~500nmの光(例:i線(365nm))が用いられる。活性光線の照射量は、塗膜8の構成材料中の各成分の種類、配合割合、塗膜8の厚さなどによって異なるが、露光用光にi線を使用する場合、露光量は、通常100~1500mJ/cm2である。
【0041】
この露光処理の後、加熱処理(以下「PEB処理」ともいう。)を行ってもよい。PEB条件は、感光性組成物の各成分の含有量及び膜厚などによって異なるが、通常70~150℃、好ましくは80~120℃で、1~60分程度である。
【0042】
次に、アルカリ性現像液により塗膜8を現像して、露光部(ポジ型の場合)又は非露光部(ネガ型の場合)を溶解、除去する。これにより、領域9が開口される。
【0043】
現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法などが挙げられる。現像条件は、例えば20~40℃で0.5~5分程度である。また、アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、コリンなどのアルカリ性化合物を、1~10質量%濃度となるように水に溶解させたアルカリ性水溶液が挙げられる。前記アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノールなどの水溶性の有機溶剤及び界面活性剤などを適量添加することもできる。なお、アルカリ性現像液で塗膜を現像した後は、水で洗浄し、乾燥してもよい。
【0044】
更に、アルカリ性現像液で塗膜を現像した後、更に露光処理(ポスト露光処理)、及び加熱処理(ミドルベーク処理)を行ってもよい。この処理により、後述するポストベーク処理後における、硬化後の塗膜8の形状を更に安定的に維持することができる。
【0045】
現像工程後、塗膜8に対して絶縁膜としての特性を発現させるため、必要に応じて、加熱処理により硬化させる(ポストベーク)。硬化条件は特に限定されないが、例えば100~250℃の温度で15分~10時間程度加熱することが挙げられる。硬化を充分に進行させたり、パターン形状の変形を防止したりするため、二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50~100℃の温度で10分~2時間程度加熱し、第二段階では、更に100℃超250℃以下の温度で20分~8時間程度加熱することが挙げられる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブン及び赤外線炉などを用いることができる。この加熱処理により、塗膜8は硬化膜10に変成される。
【0046】
なお、塗膜8に形成する開口領域9の傾斜面は、図2Cに示すように、フレキシブル基板2に近づくに連れて同基板2の面に平行な方向に係る幅が拡がるように、テーパ形状を有するのが好ましい。このような形状で開口領域9を形成することで、導電層3及び後に形成される導電層4を含む配線層の断線を低減する効果が高められる。フレキシブル基板2の面に対する塗膜8の傾斜面の角度(テーパ角度)は、10°以上80°以下であるのが好ましく、20°以上50°以下であるのがより好ましい。
【0047】
このようなテーパー形状を形成する手法としては、パターニングのための露光処理に用いるマスクに所定領域のマスクパターンに光を部分的に透過させる領域を設けるハーフトーン露光技術や、硬化ベーク時の昇温コントロールによるメルトフロー制御技術などを用いることができる。非アクティブ部に限定的に低角度のテーパー形状を形成するためには、ハーフトーン露光技術を用いることがより好ましい。
【0048】
図2Dに示すように、開口9を含む所定の箇所に導電層4を形成する。導電層4の構成材料及び形成方法は、導電層3と同様にすることができる。この工程により、導電層4と、それよりもフレキシブル基板2側に配置された導電層3とが、電気的に接続される。すなわち、開口9は、配線間(導電層3,4間)を電気的に接続するコンタクトホールとして機能する。このように、2層以上の導電層(3,4)を互いに接続する事により、配線の多層化による低抵抗及び冗長性の確保や、複数の配線間での電流経路の切り替え等を行うことが出来る。
【0049】
図2Eに示すように、導電層4を覆うように、絶縁性の硬化膜10aが形成される。この硬化膜10aは、上述したように、硬化膜10と同一の材料で構成してもよく、他の絶縁性材料で構成してもよい。ただし、硬化膜10aを硬化膜10と異なる材料で実現する場合には、曲げ性能に優れた材料で構成するのが好ましい。また、硬化膜10aについても、硬化膜10(塗膜8)と同様に、フレキシブル基板2の面に対して傾斜を有した状態(テーパ角を有した状態)で形成されるものとしても構わない。
【0050】
その後、フレキシブル基板2に対して応力を加え、全体を湾曲させることで、より詳細には、フレキシブル基板2を硬化膜(10,10a)とは反対側に湾曲させることで、図1に示される態様が実現される。このとき、硬化膜10は、高い伸長性を有すると共に、曲げ性能に優れているため、図1に示すように応力を加えて全体を湾曲させた場合であっても、割れ又は剥がれが生じることがない。このため、フレキシブルプリント基板1によれば、従来のフレキシブルプリント基板では、微細なコンタクトホールを含む配線パターンの形成が困難であったような湾曲領域に係る場所においても、導電層(3,4)のように、微細なコンタクトホール9を含む配線パターンを実現することができる。
【0051】
特に、硬化膜(10,10a)の開口領域(図2C内における開口領域9)を、フレキシブル基板2の面に対して傾斜を有した状態で形成することで、屈曲時に各層の開口領域端部、及び上層に形成された層への変形、応力を分散させることが可能となるため、導電層(3,4)の割れや剥がれをより抑制することができ、好ましい。
【0052】
(別の製造方法)
上記において、所定の領域に導電層3を形成する際に、レジストマスクを利用するものとして説明したが、後述する材料からなる感光膜形成用組成物、すなわち硬化膜10(塗膜8)と同一の材料を用いて同様の処理をしても構わない。この場合、塗膜8から硬化膜10に変成させるための露光後の加熱を行わずに洗浄工程を行うことで、マスクとして配置された塗膜8を除去することができる。
【0053】
[第二実施形態]
以下、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。なお、第一実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付している。以下の第三実施形態においても同様である。
【0054】
(構造)
図3は、本発明に係る配線部材の一つの実施形態である有機EL素子(以下、「OLED」という。)の例を模式的に図示したものである。OLED1aは、フレキシブル基板2と、フレキシブル基板2の上層に形成された導電層3と、配線層21と、表示用電極22と、配線パターン23と、有機発光層24と、絶縁性の硬化膜(10,10a,10b)と、封止層25と、偏光フィルム26と、制御用チップ27とを備える。なお、図3では図示されていないが、OLED1aは、配線層21とフレキシブル基板2との間に、画素選択用及び画素点灯用のトランジスタ素子(例えば薄膜トランジスタ(TFT))を備えている。また、図3では図示されていないが、有機発光層24の上層には表示用電極が形成されている。
【0055】
図3に示すように、OLED1aは、アクティブ領域A1と、非アクティブ領域A2とを有している。アクティブ領域A1は、有機発光層24が形成されている領域に対応する。非アクティブ領域A2は、アクティブ領域A1以外の領域であって、制御用チップ27及び配線パターン23が形成されている領域である。
【0056】
配線層21、表示用電極22、及び配線パターン23は、第一実施形態で上述した、導電層3及び導電層4と同様の材料で構成することができる。
【0057】
硬化膜10は、後述する材料からなり、曲げ特性有した絶縁性材料である。硬化膜10a及び硬化膜10bは、硬化膜10と同一材料で構成されていても、異なる材料で構成されていてもよい。
【0058】
有機発光層24は、キャリアの再結合による発光を行う部位であり、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含むように構成されている。有機発光層24として用いることが可能な材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン及びその誘導体、ポリ3-ヘキシルチオフェン及びその誘導体などを例示することができる。また、有機発光層24として用いることが可能な他の材料として、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル-8-キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5-フェニル-8-キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ-(p-ターフェニル-4-イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、又はこれらの誘導体、或いは、1-アリール-2,5-ジ(2-チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、又はこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物等が挙げられる。
【0059】
封止層25は、配列された複数の有機発光素子(有機発光層24を含む素子)を封止して、外部からの酸素や水分や混入するのを防止する目的で設けられており、これにより、OLED1aの寿命が向上する。封止層5の材料としては、有機物であればUV硬化性のアクリル樹脂やエポキシ樹脂などが利用でき、無機物であればSiONやSiO、SiNなどが利用できる。
【0060】
偏光フィルム26は、既存の偏光板を利用することができる。なお、偏光フィルム26は備えられていないものとしてもよい。
【0061】
(製造方法)
以下、図4A図4Gを参照して、OLED1aの製造方法につき、第一実施形態と異なる箇所を説明する。なお、図3と同様に、図4A図4Gにおいても、図示の都合上、画素選択用のトランジスタ素子を構成する各層の図示を割愛している。
【0062】
まず、フレキシブル基板2の上面の所定の領域に、画素選択用のトランジスタ素子を適宜形成した後(不図示)、導電層3及び配線層21を形成する。トランジスタ素子を構成する層として、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、ソース電極、ドレイン電極、パッシベーション膜を含むことができる。
【0063】
配線層21は、OLED1aの各画素に含まれるトランジスタ素子のソース電極と電気的に接続される。すなわち、配線層21は、ソース電極が形成されている領域の上方に、パッシベーション膜に設けられた開口を通じてソース電極と電気的に接続される。導電層3及び配線層21の形成方法は、第一実施形態の導電層3の形成方法と同様である。なお、本実施形態においては、配線層21が形成されている領域が、OLED1aのアクティブ領域A1(表示領域)に対応し、アクティブ領域A1以外の領域が、OLED1aの非アクティブ領域A2(非表示領域)に対応する。非アクティブ領域A2内には、導電層3が形成されている。
【0064】
図4Bに示すように、配線層21の上面、及び導電層3の一部上面を覆うように、後述する材料からなる感光膜形成用組成物を塗布して、塗膜8を形成する。
【0065】
図4Cに示すように、塗膜8の所定の箇所を露光処理を経て開口した後、開口領域を含む所定の箇所に、表示用電極22、及び配線パターン23を形成する。具体的な方法は、第一実施形態の図2C及び図2Dを参照して上述したのと同様である。
【0066】
すなわち、塗膜8に対して、マスクを介して露光処理を行う。その後、必要に応じて露光後の加熱処理(PEB処理)を行った後、アルカリ性現像液によって現像を行って、不要な塗膜8を除去する。その後、塗膜8に対して加熱処理を行って硬化させ(ポストベーク)、硬化膜10に変成させる。その後、開口部を含む所定の領域に導電性材料膜を形成する。これにより、表示用電極22と配線層21とが電気的に接続され、配線パターン23と導電層3とが電気的に接続される。なお、第一実施形態で上述したのと同様、ポストベーク処理後の形状安定性を高める目的で、露光処理後、ポストベーク処理の実行前に、更に露光処理及び加熱処理を実行するものとしても構わない。
【0067】
図4Dに示すように、表示用電極22の一部上面を開口した絶縁性の硬化膜10bと、配線パターン23の上層を覆うように形成された絶縁性の硬化膜10aとを形成する。その後、図4Eに示すように、露出した表示用電極22の上面に、有機発光層24を、画素ごとに適切な発光色となるような材料膜によって形成する。
【0068】
次に、図4Fに示すように、アクティブ領域A1内に配置された表示用電極22及び硬化膜10bの全面を覆うように、絶縁性材料からなる封止層25を形成する。その後、必要に応じて、図4Gに示すように、非アクティブ領域A2内の導電層3の上層に、制御用チップ27を形成する。また、必要に応じて、封止層25の上層に偏光フィルム26を貼り付ける。
【0069】
その後、第一実施形態と同様に、フレキシブル基板2に対して応力を加え、全体を湾曲させることで、より詳細には、特に非アクティブ領域A2内のフレキシブル基板2を硬化膜(10,10a)とは反対側に湾曲させることで、図3に示される態様が実現される。このとき、硬化膜10は、高い伸長性を有し、曲げ性能に優れているため、図3に示すように応力を加えて全体を湾曲させた場合であっても、割れ又は剥がれが生じることがない。このため、従来のOLEDでは、配線層の形成が困難であったような曲げ領域においても、微細な電極パターンを実現することができる。よって、非アクティブ領域A2に対応する、この曲げ領域部分に複雑な制御機構を実現するための微細な配線を形成することができるため、ベゼル幅の狭い、多機能のOLED1aが実現される。
【0070】
なお、硬化膜(10,10a,10b)を全て同一材料で構成することで、場合によっては、硬化膜(10,10a,10b)を構成する材料を塗布する工程を共通化することができるため、工程数を少なくすることが可能である。
【0071】
[第三実施形態]
以下、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。図5は、本発明に係る配線部材の一つの実施形態であるタッチパネルの例を模式的に図示したものである。タッチパネル1bは、フレキシブル基板2と、フレキシブル基板2の上層に形成された導電層3と、フレキシブル基板2の上層に形成された検出電極31及び配線電極32と、絶縁性の硬化膜(10,10c)と、検出電極31同士を接続するブリッジ用電極層33と、導電層3に電気的に接続された配線パターン23と、制御用チップ27とを備える。
【0072】
検出電極31は、導電体が近づいたことを検出する電極であり、当該検出信号を配線電極32を通じて外部回路に伝達する。複数の検出電極31は、フレキシブル基板2のアクティブ領域の中央部に形成されて、検出領域を形成する。複数の検出電極31に接続する配線電極32は、検出領域の外側に集約して形成されている。
【0073】
図5に示すタッチパネル1bは、図3に示すOLED1aと同様に、アクティブ領域A1と、非アクティブ領域A2とを有している。アクティブ領域A1は、検出電極31が形成されている領域に対応する。非アクティブ領域A2は、アクティブ領域A1以外の領域であって、制御用チップ27及び配線パターン23が形成されている領域である。
【0074】
なお、第二実施形態と同様、フレキシブル基板2は曲げ領域を有しており、この曲げ領域内に制御用チップ27が形成されている。例えば、この制御用チップ27は、配線電極32と電気的に接続されることで、配線電極32を通じて入力された信号に基づいて、所定の処理を行うための信号を出力するものとしてもよい。また、配線電極32自体を、フレキシブル基板2の曲げ領域に配置しても構わない。
【0075】
検出電極31としては、ITO(インジウム・スズ酸化物)、スズ酸化物、亜鉛酸化物、導電性ポリマーなどを堆積した透明導電膜を使用することができる。また、配線電極32としては、透明電極膜や金属膜を利用することができる。
【0076】
検出電極31は、フレキシブル基板2の検出領域内において、マトリクス状に配置されており、検出された座標に対応した信号が、配線電極32を通じて出力される。すなわち、アクティブ領域A1は、フレキシブル基板2の検出領域に対応する。なお、複数の検出電極31はマトリクス状に配置されているため、導電体が近づいた位置を特定するために、例えば、同一行同士の検出電極31、又は同一列同士の検出電極31を接続する、ブリッジ用電極層33が設けられている。なお、ブリッジ用電極層33は、斜め方向にたすき掛けの態様で形成されていても構わない。ブリッジ用電極層33は、検出電極31と同様の材料で構成することができる。
【0077】
図5に示されるように、ブリッジ用電極層33は、硬化膜10c内の所定領域に開口されたコンタクトホールを介して、所定の検出電極31と電気的に接続される。このため、硬化膜10cは、感光性を有した絶縁性材料からなることが好ましい。
【0078】
検出領域内の特定の位置に導電体が接近すると、その導電体が近づいた行の検出電極31と列の検出電極31との間の容量が変化する。この容量変化の信号が配線電極32を介して制御用チップ27に入力される。制御用チップ27は、容量が変化した行及び列を特定し、導電体が接近した位置を特定する。なお、検出電極31とブリッジ用電極層33は互いに役割を入れ替えることが可能である。即ち、上層にあるブリッジ用電極層33のパターンを変え検出電極として用い、下層の検出電極31の層をブリッジ用電極のパターンとしても良い。
【0079】
本実施形態においても、フレキシブル基板2の曲げ領域に配線パターン23が形成されているため、この配線パターン23と制御用チップ27とを電気的に接続することで、制御用チップ27は、上記の位置検出のみならず、複数の処理信号を入出力することができる。また、配線電極32についてもフレキシブル基板2の曲げ領域に設けることができるため、タッチパネルのアクティブ領域の面積を十分に確保することができる。なお、タッチパネルのアクティブ領域とは、タッチ操作の受付が可能な領域である。
【0080】
なお、本実施形態のタッチパネル1bの製造方法は、第一実施形態及び第二実施形態と同様であるため、割愛する。
【0081】
[別実施形態]
上述した第二実施形態におけるOLED1a、タッチパネル1bにおいて、アクティブ領域A1及び非アクティブ領域A2の両方につき、フレキシブル基板2の上面に各層を形成する場合について説明した。しかし、アクティブ領域A1を構成する部分については、ガラス基板などの軟性を有しない基板を用いても構わない。
【0082】
[材料]
以下、各実施形態において上述した硬化膜10(塗膜8)を構成する材料(感光膜形成用組成物)について、説明する。
【0083】
硬化膜10を構成する組成物は、アルカリ可溶性基を有する重合体(A)、感放射線性化合物(B)、及び溶剤(C)を含有し、必要に応じて、架橋性化合物(D)、密着助剤(E)、及び界面活性剤(F)を含有する。
【0084】
〈アルカリ可溶性基を有する重合体(A)〉
重合体(A)はアルカリ可溶性基を有する。一例として、重合体(A)は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有する。より具体的には、重合体(A)を構成する材料として、例えば、ノボラック樹脂、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(ただし、前記ノボラック樹脂を除く)、不飽和カルボン酸、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸及びその部分イミド化物、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。
【0085】
前記ノボラック樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で縮合させることにより得ることができる。フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α-ナフトール、β-ナフトールが挙げられる。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが挙げられる。
【0086】
前記ノボラック樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/サリチルアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、及び、ノボラック樹脂をブタジエン系重合体などの重合性ビニル基を有するゴム状ポリマーで変性した樹脂が挙げられる。
【0087】
重合体(A)は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂からなる場合、好ましくは、下記式(a1)で表される構造単位(以下、「構造単位(a1)」という。)を有する。
【0088】
【化1】
【0089】
式(a1)中、複数あるR1は、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基(フェノール性水酸基)を示す。ただし、複数あるR1のうち、少なくとも1つはアルカリ可溶性基である水酸基(フェノール性水酸基)である。特に好ましくは、p位のR1が水酸基であり、他のR1が水素原子である。R2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0090】
前記フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の例としては、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する単量体の単独又は共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、及び、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂が挙げられる。
【0091】
前記フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、AB型又はABA型ブロック重合体としてもよい。前記ブロック重合体としては、例えば、前記構造単位(a1)からなる重合体ブロックと、(メタ)アクリル酸エステル、1,3-ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンから選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位(m2)からなる重合体ブロックとを有するブロック重合体が挙げられる。前記ブロック重合体としては、別の例として、前記構造単位(a1)からなる重合体ブロックと、CH2 = CH(OR)(式中、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又はアルコキシアルキル基であり、これらの基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)に由来する構造単位からなる重合体ブロックとを有するブロック重合体が挙げられる。
【0092】
前記ブロック重合体は、上記以外のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。これらのモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸又はそれらの酸無水物類、前記不飽和カルボン酸のエステル類、不飽和ニトリル類、不飽和アミド類、不飽和イミド類、不飽和アルコール類、脂環式骨格を有する化合物、含窒素ビニル化合物が挙げられる。
【0093】
より具体的には、例えば、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸又はそれらの酸無水物類;
前記不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、i-プロピルエステル、n-ブチルエステル、i-ブチルエステル、sec-ブチルエステル、t-ブチルエステル、n-アミルエステル、n-ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、2-ヒドロキシエチルエステル、2-ヒドロキシプロピルエステル、3-ヒドロキシプロピルエステル、4-ヒドロキシブチルエステル、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルエステル、ベンジルエステル、イソボロニルエステル、トリシクロデカニルエステル、1-アダマンチルエステルなどのエステル類;
(メタ)アクリロニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミドなどの不飽和アミド類;マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド類;(メタ)アリルアルコールなどの不飽和アルコール類;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10 ]ドデカ-3-エン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デセンなどの脂環式骨格を有する化合物;
N-ビニルアニリン、ビニルピリジン類、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾールなどの含窒素ビニル化合物;
が挙げられる。
【0094】
重合体(A)は、更に、上記のアルカリ可溶性基とは異なる架橋性官能基を含む構造単位(m1)を有していても構わない。これにより、硬化膜10の熱耐性と絶縁性が向上する。
【0095】
上記構造単位(m1)は、例えば、下記式(a2)で表される構造単位(以下、「構造単位(a2)」という。)で表される材料で構成される。
【0096】
【化2】
【0097】
式(a2)中、複数あるR3は、それぞれ独立に、カチオン重合性基を有する基又は水素原子を示す。ただし、複数あるR3のうち、少なくとも1つはカチオン重合性基を有する基である。特に好ましくは、p位のR3がカチオン重合性基を有する基であり、他のR3が水素原子である。R4は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0098】
本明細書において、カチオン重合性基としては、例えば、オキシラニル基、オキセタニル基、メチロール基、アルコキシメチロール基、ジオキソラン基、トリオキサン基、ビニルエーテル基、スチリル基が挙げられる。これらの中でも、伸び物性に優れた硬化膜を形成することができることから、環状エーテル構造を有する基が好ましく、それらの中でもオキシラニル基、又はオキセタニル基が好ましく、オキシラニル基が特に好ましい。
【0099】
本明細書において、カチオン重合性基を有する基としては、例えば、カチオン重合性基そのもの、アルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基)の水素原子(通常1つ以上、好ましくは1つの水素原子)をカチオン重合性基に置換してなる基及び下記式(A)~(C)で表される基が挙げられる。
【0100】
【化3】
【0101】
式(A)~(C)中、Y1~Y3は、それぞれ独立に直接結合、メチレン基、又は炭素数2~10のアルキレン基を示す。Y4~Y6は、それぞれ独立に直接結合、メチレン基、又は炭素数2~10のアルキレン基を示す。Y7~Y9は、それぞれ独立にカチオン重合性基を示し、好ましくはオキシラニル基又はオキセタニル基であり、特に好ましくはオキシラニル基である。式(a2)中、p位のR3が式(A)~(C)で表される基であり、他のR3が水素原子であることが特に好ましい。
【0102】
なお、重合体(A)が架橋性官能基を有する構造単位(m1)を有する場合、重合体(A)は、アルカリ可溶性基を有する構造単位と、架橋性官能基を有する構造単位(m1)とを含むポリマー鎖からなるものとしても構わないし、アルカリ可溶性基を有する構造単位を含むポリマー鎖と、架橋性官能基を有する構造単位(m1)を含むポリマー鎖とが、混合されてなるものとしても構わない。
【0103】
更に、重合体(A)は、上述したアルカリ可溶性基を有する構造単位(例えば構造単位(a1)、構造単位(m2))、架橋性官能基を有する構造単位(m1)の他に、下記(a3)で表される構造単位(以下「構造単位(a3)」ともいう。)を有していてもよく、構造単位(a3)を含む、重合体(A)とは異なる重合体を含有していてもよい。構造単位(a3)を含む、重合体(A)とは異なる重合体を含有することにより、硬化膜の屈曲性や破断強度が向上する場合がある。
【0104】
【化4】
【0105】
式(a3)中、複数あるR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は、炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R6は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基である。このような構造単位(a3)を有することにより、現像工程時における硬化膜の成形性を調整することができる。
【0106】
硬化膜10として、重合体(A)を含有する組成物を用いることにより、硬化膜10の伸び特性が向上する。この理由としては、(1)ミクロ相分離によって海島構造が形成され、伸びやすい部分が集まったこと、及び/又は、(2)ポリマー主鎖の絡み合いが増えたこと、によるものと推定される。
【0107】
硬化膜10として、重合体(A)を含有する組成物を用いると、伸び物性に優れる他、電気絶縁性などの諸特性に優れた硬化膜10を形成することができる。また、硬化膜10として、重合体(A)に加えて、後述する感放射線性化合物(B)を含有する感光性組成物を用いると、解像度及び残膜性などの諸特性に優れた硬化膜10を形成することができる。特に、重合体(A)に非環状構造単位が含まれてなる場合、非環状構造単位は環状構造単位と比べて剛直性が低く、立体障害も少ないので、高い柔軟性が得られる。このため、硬化膜10を構成する組成物の伸び物性を向上させることができる。
【0108】
重合体(A)において、アルカリ可溶性基を含む構造単位(例えば構造単位(a1)、(m2))と、必要に応じて含有される架橋性官能基を含む構造単位(m1)、及び/又は構造単位(a3)との配列は特に限定されるものではなく、重合体(A)はランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでも構わない。
【0109】
重合体(A)において、アルカリ可溶性基を含む構造単位(例えば構造単位(a1)、(m2))と、及び架橋性官能基を含む構造単位(m1)との合計の、含有割合は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは60~95モル%、更に好ましくは70~90モル%である。これらの合計の含有割合が上記範囲内にあると、重合体(A)がスチレン系骨格を主体とする重合体となり、硬化膜10の耐熱性、電気絶縁性などの性能が向上する傾向にある。重合体(A)の構造単位の含有量は、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、及び 13C-NMR分析により測定される。
【0110】
重合体(A)のゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、硬化膜10の熱衝撃性及び耐熱性、並びに組成物の解像性の観点から、ポリスチレン換算で、通常4,000~100,000、好ましくは6,000~80,000、更に好ましくは8,000~30,000である。Mwが前記下限値以上であると、硬化膜10の耐熱性や伸び物性が向上する傾向にあり、Mwが前記上限値以下であると、重合体(A)と他成分との相溶性が向上し、ひいては感光性組成物のパターニング特性が向上する傾向にある。なお、Mwの測定方法の詳細は、実施例において後述される。
【0111】
なお、硬化膜10は、上述した材料からなる、アルカリ可溶性基を有する重合体(A)が、複数種類混合されてなるものとしても構わない。
【0112】
以下、重合体(A)の製造方法について説明する。アルカリ可溶性基を含む構造単位を構造単位(a1)とする場合、同構造単位(a1)を形成し得るモノマーとしては、式(a1')で表されるモノマー(以下「モノマー(a1')」ともいう。)などが挙げられる。また、架橋性官能基を含む構造単位(m1)を構造単位(a2)とする場合、同構造単位(a2)を形成し得るモノマーとしては、式(a2')で表されるモノマー(以下「モノマー(a2')」ともいう。)などが挙げられる。また、構造単位(a3)を形成し得るモノマーとしては、式(a3')で表されるモノマー(以下「モノマー(a3')」ともいう。)などが挙げられる。なお、本明細書において「モノマーに由来する構造単位」を単に「モノマー単位」ともいう。
【0113】
【化5】
【0114】
なお、式(a1')中、R1及びR2は、それぞれ式(a1)中のR1及びR2と同義であり、式(a2')中、R3及びR4は、それぞれ式(a2)中のR3及びR4と同義であり、式(a3')中、R5及びR6は、それぞれ式(a3)中のR5及びR6と同義である。
【0115】
モノマー(a1')としては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物が挙げられ、これらの中では、p-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノールが好ましい。
【0116】
モノマー(a1')の水酸基が、例えばt-ブチル基、アセチル基によって保護されたモノマーを用いることもできる。水酸基が保護されたモノマー由来の構造単位は、得られた重合体を公知の方法(例えば、溶媒中、塩酸、硫酸などの酸触媒下に、温度50~150℃で1~30時間反応を行う)で脱保護することにより、フェノール性水酸基含有構造単位に変換される。モノマー(a1')は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
モノマー(a2')としては、例えば、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルオキセタニルエーテルが挙げられる。モノマー(a2')は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
モノマー(a3')としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。モノマー(a3')は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
重合体(A)は、例えば、モノマー(a1')とモノマー(a2')と必要に応じてモノマー(a3')との共重合体であり、構造単位(a1)と構造単位(a2)と必要に応じて構造単位(a3)とのみからなっていてもよく、非環状構造単位を含んでいてもよい。
【0120】
重合体(A)を得るには、例えば、モノマー(a1')及び/又はその水酸基を保護した化合物と、モノマー(a2')と、必要に応じてモノマー(a3')やその他のモノマーとを、開始剤の存在下、溶剤中で重合させればよい。重合方法は特に限定されるものではないが、上記分子量の重合体を得るためには、ラジカル重合やアニオン重合などにより行われることが好ましい。
【0121】
〈感放射線性化合物(B)〉
硬化膜10を構成する組成物には、感放射線性(感光性)を付与するための、感放射線性化合物(B)が含有される。この場合の感放射線性化合物は、ポジ型又はネガ型のいずれであってもよい。感放射線性化合物(B)は、ポジ型の感放射線性化合物又はネガ型の感放射線性化合物に応じて、適宜選択される。感放射線性化合物(B)としては、ポジ型の場合はキノンジアジド基を有する化合物(以下「キノンジアジド化合物(B1)」ともいう。)などが挙げられ、ネガ型の場合は光感応性酸発生剤(以下「酸発生剤(B2)」ともいう。)などが挙げられる。
【0122】
《キノンジアジド化合物(B1)》
キノンジアジド化合物(B1)は、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物である。
【0123】
キノンジアジド化合物(B1)を含有する感光性組成物から得られる塗膜は、アルカリ性現像液に対して難溶な塗膜である。キノンジアジド化合物(B1)は、光照射によりキノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じる化合物であることから、光照射により前記塗膜がアルカリ難溶の状態からアルカリ易溶の状態になることを利用することにより、ポジ型のパターンが形成される。
【0124】
フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては、例えば、下記式(B1-1)~(B1-5)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
【化6】
【0126】
式(B1-1)中、X1~X10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。X1~X5の少なくとも1つは水酸基である。Aは直接結合、-O-、-S-、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、カルボニル基(-C(=O)-)又はスルホニル基(-S(=O)2-)である。
【0127】
【化7】
【0128】
式(B1-2)中、X11~X24はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。X11~X15の少なくとも1つは水酸基である。Y1~Y4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。
【0129】
【化8】
【0130】
式(B1-3)中、X25~X39は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である。X25~X29の少なくとも1つは水酸基であり、X30~X34の少なくとも1つは水酸基である。Y5は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。
【0131】
【化9】
【0132】
式(B1-4)中、X40~X58はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。X40~X44の少なくとも1つは水酸基であり、X45~X49の少なくとも1つは水酸基であり、X50~X54の少なくとも1つは水酸基である。Y6~Y8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。
【0133】
【化10】
【0134】
式(B1-5)中、X59~X72はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。X59~X62の少なくとも1つは水酸基であり、X63~X67の少なくとも1つは水酸基である。
【0135】
キノンジアジド化合物(B1)としては、例えば、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',4'-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、4,6-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エタンなどと、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物が挙げられる。
【0136】
キノンジアジド化合物(B1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。感放射線性化合物(B)としてキノンジアジド化合物(B1)を用いる場合、キノンジアジド化合物(B1)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常5~50質量部、好ましくは10~30質量部、更に好ましくは15~30質量部である。キノンジアジド化合物(B1)の含有量が前記下限値以上であると、未露光部の残膜率が向上し、マスクパターンに忠実な像が得られやすい。キノンジアジド化合物(B1)の含有量が前記上限値以下であると、パターン形状に優れた硬化膜が得られやすく、硬化時の発泡も防止することができる。
【0137】
《酸発生剤(B2)》
酸発生剤(B2)は、光照射により酸を形成する化合物である。この酸が重合体(A)のカチオン重合性基などに作用することにより、架橋構造を形成する。酸発生剤(B2)を含有する感放射線性化合物(B)から得られる塗膜が、架橋構造の形成により、アルカリ易溶の状態からアルカリ難溶の状態に変化することを利用することにより、ネガ型のパターンが形成される。
【0138】
酸発生剤(B2)としては、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。これらの中では、伸び物性に優れた硬化膜を形成することができることから、オニウム塩化合物が好ましい。
【0139】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0140】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどのs-トリアジン誘導体が挙げられる。
【0141】
スルホン化合物としては、例えば、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα-ジアゾ化合物が挙げられる。好ましいスルホン化合物の具体例としては、4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンが挙げられる。
【0142】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類が挙げられる。好ましいスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネートが挙げられる。
【0143】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドが挙げられる。
【0144】
ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。
【0145】
酸発生剤(B2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。感放射線性化合物(B)として酸発生剤(B2)を用いる場合、酸発生剤(B2)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部、更に好ましくは0.5~5質量部である。酸発生剤(B2)の含有量が前記下限値以上であると、露光部の硬化が充分となり、耐熱性が向上しやすい。酸発生剤(B2)の含有量が前記上限値を超えると、露光光に対する透明性が低下し、解像度が低下するおそれがある。
【0146】
〈溶剤(C)〉
硬化膜10を構成する組成物は、溶剤(C)を含有する。溶剤(C)を用いることで、取扱性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節したりすることができる。
【0147】
溶剤(C)としては、例えば、
メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル等のエステル類、などが挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、乳酸エチル、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0148】
溶剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化膜10を構成する組成物において、溶剤(C)の含有量は、組成物中の溶剤(C)以外の成分の合計100質量部に対して、通常40~900質量部、好ましくは60~400質量部である。
【0149】
〈架橋性化合物(D)〉
硬化膜10を構成する組成物には、その硬化性を向上させ、破断強度を向上させるため、架橋性化合物(D)を更に有させることができる。架橋性化合物(D)は、重合体(A)と反応する架橋成分(硬化成分)として作用する。
【0150】
架橋性化合物(D)としては、例えば、アルキルエーテル化されたアミノ基を2つ以上有する化合物(以下「アミノ基含有化合物」ともいう。)、オキシラン環含有化合物、オキセタン環含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む。)、アルデヒド基含有フェノール化合物、メチロール基含有フェノール化合物が挙げられる。ただし、架橋性化合物(D)からは、重合体(A)に該当する化合物は除外される。また、オキシラン環含有化合物からは、オキシラニル基を有するシランカップリング剤は除外され、イソシアネート基含有化合物からは、イソシアネート基を有するシランカップリング剤は除外される。
【0151】
アルキルエーテル化されたアミノ基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。式中R11はメチレン基又はアルキレン基を示し、R12はアルキル基を示す。
【0152】
【化11】
【0153】
アミノ基含有化合物としては、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレアなどの窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2個)がアルキルエーテル化された化合物が挙げられる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基が挙げられ、これらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果、オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリルなどを用いることができる。
【0154】
オキシラン環含有化合物としては、分子内にオキシラン環(オキシラニル基ともいう)が含有されていればよく、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール-キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール-キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール-ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0155】
オキシラン環含有化合物の具体例としては、例えば、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレン/ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレン/ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0156】
オキセタン環含有化合物としては、分子内にオキセタン環(オキセタニル基ともいう)が含有されていればよく、特に限定されないが、例えば、一般式(d-1)~(d-3)で表される化合物が挙げられる。
【0157】
【化12】
【0158】
式(d-1)~(d-3)中、Aは直接結合、又はメチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基を示し;Rはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基を示し、R1はメチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基を示し、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、キシリル基などのアリール基;式
【0159】
【化13】
【0160】
で表される基(式中、R及びR1は、それぞれ式(d-1)~(d-3)中のR及びR1と同義である。)、下記式(i)で表されるジメチルシロキサン残基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基;フェニレン基;下記式(ii)~(vi)で表される基を示し、iはR2の価数になどしく、1~4の整数である。なお、下記式(i)~(vi)における「*」は、結合部位を示す。
【0161】
【化14】
【0162】
式(i)及び(ii)中、x及びyは、それぞれ独立に、0~50の整数である。式(iii)中、Zは、直接結合、又はO-、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、-CO-、若しくはSO2-で表される2価の基である。
【0163】
一般式(d-1)~(d-3)で表わされる化合物の具体例としては、例えば、1,4-ビス{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}ベンゼン(商品名「OXT-121」、東亜合成(株)製)、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT-221」、東亜合成(株)製)、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(宇部興産(株)製、商品名「ETERNACOLL OXBP」)、ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル-フェニル〕エーテル、ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル-フェニル〕プロパン、ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル-フェニル〕スルホン、ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル-フェニル〕ケトン、ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル-フェニル〕ヘキサフロロプロパン、トリ〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、テトラ〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、下記式(d-a)~(d-d)で表される化合物が挙げられる。
【0164】
【化15】
【0165】
また、これらの化合物以外に、高分子量の多価オキセタン環を有する化合物を用いることができる。例えば、オキセタンオリゴマー(商品名「Oligo-OXT」、東亞合成(株)製)、下記式(d-e)~(d-g)で表される化合物が挙げられる。
【0166】
【化16】
【0167】
式(d-e)~(d-g)中、p、q、及びsは、それぞれ独立に、0~10000の整数であり、好ましくは1~10の整数である。式(d-f)中、Yはエチレン基、プロピレン基などのアルキレン基、又は-CH2-Ph-CH2-で表される基(式中、Phはフェニレン基を示す。)である。
【0168】
架橋性化合物(D)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋性化合物(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常1~60質量部、好ましくは5~50質量部、更に好ましくは5~40質量部である。架橋性化合物(D)の含有量が前記範囲にあると、硬化反応が充分に進行し、感光性組成物を用いた場合は形成される硬化膜は良好なパターン形状を有し、かつ伸び物性に優れ、耐熱性、電気絶縁性に優れたものとなる。
【0169】
〈密着助剤(E)〉
硬化膜10を構成する組成物には、下層との密着性を向上させるため、密着助剤(E)を更に含有させることができる。密着助剤(E)としては、官能性シランカップリング剤が好ましく、例えばカルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的にはトリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3,5-N-トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0170】
硬化膜10を構成する組成物において、密着助剤(E)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。密着助剤(E)の含有量が前記範囲にあると、硬化膜10の、下層(例えば基板1)への密着性がより向上する。
【0171】
〈界面活性剤(F)〉
硬化膜10を構成する組成物には、膜形成性を向上させるため、界面活性剤(F)を更に含有させることができる。界面活性剤(F)としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤、及びその他の界面活性剤を利用することができる。
【0172】
〈その他の添加剤〉
硬化膜10を構成する組成物には、その他、レベリング剤、増感剤、無機フィラー、クエンチャーなどの各種添加剤を、本発明の目的及び特性を損なわない範囲で含有させることができる。
【0173】
また、硬化膜10を構成する組成物には、絶縁性及び熱衝撃性を向上させるため、架橋微粒子を更に含有させることができる。架橋微粒子としては、例えば、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する単量体と、重合性不飽和基を2個以上有する架橋性単量体との共重合体の架橋微粒子が挙げられる。また、更に他の単量体が共重合された共重合体の架橋微粒子を用いることもできる。硬化膜10を構成する組成物において、架橋微粒子の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0~200質量部、より好ましくは0.1~150質量部、更に好ましくは0.5~100質量部である。
【0174】
[製造方法]
硬化膜10を構成する組成物は、各成分を均一に混合することにより調製できる。また、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルターなどで濾過してもよい。各重合体の製造方法は、上述したとおりである。
【0175】
硬化膜10は、上述したように、硬化膜10を構成する組成物を、支持体(例えば基板1)上に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、所望のマスクパターンを介して前記塗膜を露光する工程(露光工程)、アルカリ性現像液により前記塗膜を現像して、露光部(ポジ型の場合)又は非露光部(ネガ型の場合)を溶解、除去することにより、支持体上に所望のパターンを形成する工程(現像工程)を有して形成される。
【実施例
【0176】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。
【0177】
〈重合体(A)その他の重合体の重量平均分子量(Mw)の測定方法〉
下記条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にてMwを測定した。
カラム:東ソー社製カラムのTSK-M及びTSK2500を直列に接続
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
温度:40℃
検出方法:屈折率法
標準物質:ポリスチレン
【0178】
〈重合体(A)の構造単位の含有量の測定方法〉
重合体(A)の構造単位の含有量は、 1H-NMR及び 13C-NMR分析により測定した。
【0179】
〈1.重合体(A)の合成〉
【0180】
[合成例1]重合体(A-1)の合成
フラスコに、p-ヒドロキシスチレン85質量部、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル18質量部、スチレン21質量部及びアゾビスイソブチロニトリル4質量部を、プロピレングリコールジメチルエーテル150質量部に溶解させ、混合液を準備した。この混合液を70℃で10時間加熱した。加熱後の混合液を、トルエン及びヘキサンからなる溶液に投入し、析出した沈殿物をヘキサンで洗浄し、p-ヒドロキシスチレン/p-ビニルベンジルグリシジルエーテル/スチレン共重合体(以下「重合体(A-1)」ともいう。)を得た。
【0181】
重合体(A-1)の重量平均分子量(Mw)は8,800であった。また、重合体(A1)はp-ヒドロキシスチレン単位を70モル%、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル単位を10モル%、及びスチレン単位を20モル%有する重合体であった。p-ビニルベンジルグリシジルエーテルは下記式で表される。
【0182】
【化17】
【0183】
[合成例2]重合体(A-2)の合成
p-t-ブトキシスチレンとスチレンとをモル比80:20の割合で合計100質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル150質量部に溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、アゾビスイソブチロニトリル4質量部を用いて10時間重合させた。その後、反応溶液に硫酸を加えて反応温度を90℃に保持して10時間反応させ、p-t-ブトキシスチレンを脱保護してヒドロキシスチレンに変換した。得られた共重合体に酢酸エチルを加え、水洗を5回繰り返し、酢酸エチル相を分取し、溶剤を除去して、p-ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体(以下、「重合体(A-2)」という)を得た。
【0184】
この重合体(A-2)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5であった。また、13C-NMR分析の結果、p-ヒドロキシスチレンとスチレンとの共重合モル比は80:20であった。
【0185】
[合成例3]重合体(A-4)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8質量部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル220質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸15質量部、メタクリル酸グリシジル25質量部、p-イソプロペニルフェノール10質量部、メタクリル酸メチル25質量部、メタクリル酸ラウリル5質量部及び、N-(シクロヘキシル)マレイミド20質量部を仕込み窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し、重合体溶液を得た(以下、「重合体(A-4)」という)。
【0186】
重合体(A-4)の固形分濃度は31.0質量%であった。重合体(A-4)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.1であった。
【0187】
[合成例4]重合体(A-5)の合成
m-クレゾールとp-クレゾールを重量比60:40の割合で混合し、これにホルマリンを加え、シュウ酸触媒を用いて常法により縮合してクレゾールノボラック樹脂を得た。この樹脂に対して分別処理を施し、低分子領域をカットして重量平均分子量15,000のノボラック樹脂を得た(以下、「重合体(A-5)」という)。
【0188】
[合成例5]重合体(A-6)の合成
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1-ナフトール144.2g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン400g、水96g、及び92質量%パラホルムアルデヒド32.6g(ホルムアルデヒド換算で1.0モル)を仕込んだ。続いて攪拌しながらパラトルエンスルホン酸3.4gを加えた。その後、100℃で8時間反応させた。反応終了後に純水200gを加え、系内の溶液を分液ロートに移して水層を有機層から分離除去した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、下記式で表される構造単位からなる、重量平均分子量(Mw)2,000のノボラック樹脂を得た(以下、「重合体(A-6)」という)。
【化18】
【0189】
[合成例6]重合体(A-7)の合成
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8質量部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル220質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸15質量部、メタクリル酸グリシジル40質量部、p-イソプロペニルフェノール10質量部、メタクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸ラウリル5質量部及び、N-(シクロヘキシル)マレイミド20質量部を仕込み、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し、重合体溶液を得た(以下、「重合体(A-7)」という)。得られた重合体溶液の固形分濃度は31.0重量%であった。
【0190】
[合成例7]重合体(A-8)の合成
テトラヒドロフラン 1000mLにアニオン重合開始剤として、n-ブチルリチウム 0.05gを溶解した後、-70℃に冷却した。この溶液に2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)45gを添加して、3時間重合を行った。ついで、p-t-ブトキシスチレン55gを加え、更に2時間重合を行い、メタノールを添加して重合を停止し、多量のメタノールと混合して生成した重合体を凝固した。
【0191】
続いて、得られた共重合体をテトラヒドロフラン500gに溶解し、p-トルエンスルホン酸1水和物5g、及び蒸留水10gを添加し、加熱還流下で12時間、脱保護反応を行った。その後、反応液を多量の蒸留水に投入し、共重合体を凝固させ、回収し、減圧下で乾燥して白色の共重合体(A-8)を得た。この共重合体(A-8)は、A-B型([イソプレン]-[p-ヒドロキシスチレン])のブロック共重合体であり、Mwが35,000であった。13C-NMR測定の結果、イソプレン、p-ヒドロキシスチレンからなる構成単位の共重合体における質量比は55/45であった。
【0192】
[合成例8]重合体(A-9)の合成
2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)を用いる代わりに、1,3-ブタジエンを用いた以外は、合成例7と同様に合成を行い、共重合体(A-9)を得た。この共重合体(A-9)は、A-B型([1,3-ブタジエン]-[p-ヒドロキシスチレン])のブロック共重合体であり、Mwが30,000であった。13C-NMR測定の結果、1,3-ブタジエン、p-ヒドロキシスチレンからなる構成単位の共重合体における重量比は30/70であった。
【0193】
[合成例9]重合体(A-10)の合成
蒸留水200質量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部を溶解した水溶液、原料モノマーとしてブタジエン46質量部、スチレン31質量部、2-ヒドロキシブチルメタクリレート10質量部、メタクリル酸9質量部、ジビニルベンゼン4質量部、及びレドックス触媒をオートクレーブに仕込み、10℃に温度調整した後、重合開始剤としてクメンハイドロオキサイド0.01質量部を加え、重合転化率85%まで乳化重合した。
【0194】
次いで、反応停止剤N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを添加し、共重合エマルジョンを合成した。その後、この溶液中に水蒸気を吹き込み未反応の原料モノマーを除去した後、この溶液を5%塩化カルシウム水溶液中に添加し、析出した共重合体を80℃に設定した送風乾燥機で乾燥することによって、共重合体(A-10)を単離した。共重合体(A-10)について、DSC法によりガラス転移温度(Tg)を測定したところ、-27℃であった。(モル比63/22/5/8/2)
【0195】
〈3.組成物の調整〉
【0196】
[実施例1]
重合体(A-1)40質量部、重合体(A-9)60質量部、感放射線性化合物(B-1)25質量部、架橋性化合物(D-3)10質量部、密着助剤(E-1)7質量部、及び界面活性剤(F-2)0.05質量部を、溶剤(C-1)260質量部及び溶剤(C-5)180部に溶解させ、組成物を調整した。得られた組成物を用いて、所定の評価を行った。
【0197】
[実施例2~13、比較例1~2]
実施例において、表1に示すとおりに配合成分の種類及び量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、組成物を調製した。得られた組成物を用いて、所定の評価を行った。
【0198】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0199】
(重合体(A))
A-1: 合成例1で得られた重合体(A-1)
A-2: 合成例2で得られた重合体(A-2)
A-3: 商品名「マリルリンカーM2PH」(丸善石油化学(株)社製)
A-4: 合成例3で得られた重合体(A-4)
A-5: 合成例4で得られた重合体(A-5)
A-6: 合成例5で得られた重合体(A-6)
A-7: 合成例6で得られた重合体(A-7)
A-8: 合成例7で得られた重合体(A-8)
A-9: 合成例8で得られた重合体(A-9)
A-10: 合成例9で得られた重合体(A-10)
【0200】
(感放射線性化合物(B))
B-1: 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エタンと、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸との縮合物(モル比=1.0:2.0)
B-2: 1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタンと、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリドとの縮合物(モル比=1.0:2.0)
【0201】
(溶剤(C))
C-1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
C-2: メチルアミルケトン
C-3: 乳酸エチル
C-4: ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
C-5: ジアセトンアルコール
【0202】
(架橋性化合物(D))
D-1: ヘキサメトキシメチロールメラミ、商品名「ニカラックMW-390」((株)三和ケミカル製)
D-2: トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、商品名「デナコールEX-321L」(ナガセケムテックス(株)製)
D-3: 下記式(D3)で表される化合物
D-4: 商品名「XD-1000」(日本化薬(株)製)
D-5: 無水トリメリット酸
【0203】
【化19】
【0204】
(密着助剤(E))
E-1: トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、ジーイー東芝シリコーン(株)製
E-2: 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、JNC(株)製
【0205】
(界面活性剤(F))
F-1: フッ素系界面活性剤、商品名「フタージェント FTX-218」、(株)ネオス製
F-2: シリコーン系界面活性剤、表品名「SH8400 FLUID」、東レダウコーニング(株)製
【0206】
(その他添加物(G))
G-1: 4,4'-[1-[4-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール
【0207】
〈4.評価〉
実施例及び比較例の各組成物について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0208】
(4-1 伸び)
離型材付き基板上に、各組成物を塗布し、その後、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱し、厚さ10μmの均一な塗膜を作製した。次いで、アライナー(Suss Microtec社製、型式「MA-100」)を用い、高圧水銀灯からの紫外線を、波長365nmにおける露光量が300mJ/cm2となるように塗膜の全面に照射した。次いで、塗膜を、ホットプレートを用いて120℃で5分間加熱し、更に、オーブンを用いて230℃で30分間加熱した。
【0209】
離型材付き基板から、加熱後の塗膜を剥離し、2.5cm×0.5cmの短冊状に切断した。塗膜の引張破断伸び(%)を引張圧縮試験機(SDWS-0201型、(株)今田製作所製)によって測定(条件:チャック距離=1.0cm、引っ張り速度=5mm/分、測定温度=23℃)した。結果は、5回の測定値の平均値である。
【0210】
(4-2 破断強度)
上記伸びの評価において、塗膜破断時の応力を破断強度とした。破断強度は、以下の式により算出した値を採用した。
(破断強度)=(破断時の引張力)/(試料の断面積)
【0211】
(4-3 曲げ特性)
4-1と同様の方法により加熱処理された後の塗膜を、JIS K 5600-5-1(耐屈曲性、円筒形マンドレル法)に準拠し、温度25℃、相対湿度50%の環境下のもと、外径0.5mmのマンドレルに沿って180度に折り曲げ(ハゼ折り)、塗膜の割れ、剥れを目視にて観察した。割れ、剥れがない場合をA評価とし、割れ、剥れがあった場合をB評価とした。
【0212】
(4-4 絶縁性)
図6に示すような、基板50と前記基板50上に形成されたパターン状の銅箔51とを有する電気絶縁性評価用の基材52に、各組成物を塗布し、その後、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱し、銅箔51上での厚さが10μmである塗膜を有する基材を作製した。その後、対流式オーブンを用いて230℃で30分間加熱して塗膜を硬化させて硬化膜を得た。得られた試験基材をマイグレーション評価システム(タバイエスペック(株)社製 AEI,EHS-221MD)に投入し、温度121℃、湿度85%、圧力1.2気圧、印加電圧10Vの条件で100時間処理した。その後、試験基材の抵抗値(Ω)を測定し、電気絶縁性を確認した。絶縁性が認められたものをA評価とした。
【0213】
(4-5 反り)
4-1と同様の方法により加熱処理された後の塗膜を5cm角に切り出し、端部の浮き高さが10mm以内のものをA評価とし、それ以上に浮き高さがあるものをB評価とした。
【0214】
(4-6 ポストベーク後の形状)
6インチのシリコンウエハーに樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱し、3μm厚の均一な塗膜を作製した。その後、アライナー(Suss Microtec社製、型式「MA-100」)を用い、一辺が2μmの正方形の抜きパターンが6μm間隔で多数配置されているマスクを介して、高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量が300mJ/cm2となるように露光した。
【0215】
次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間、浸漬現像した。その後超純水にて60秒間洗浄し、エアーにて風乾した後、前記アライナーを用い、高圧水銀灯からの紫外線を、波長365nmにおける露光量が300mJ/cm2となるように塗膜の全面に照射した。
【0216】
次いで、塗膜を、ホットプレートを用いて、120℃で5分間加熱し、更に、オーブンにて230℃で30分間加熱して樹脂塗膜を硬化させて硬化膜を得た。こうして得られた一辺が2μmの正方形の抜きパターンを走査電子顕微鏡((株)日立製作所製、S-4200)を用いて1500倍の倍率で断面形状を観察し、断面形状を評価した。隣接するパターン同士が接触する程度にはパターンは変形せず、パターン開口部が埋まらなかったもの(開口が維持されたもの)をA評価とし、パターンの変形により隣接するパターン同士が接触して、パターン開口部が埋まったものをB評価とした。
【0217】
【表1】
【符号の説明】
【0218】
1 : フレキシブルプリント基板
1a : 有機EL素子
1b : タッチパネル
2 : フレキシブル基板
3 : 導電層
4 : 導電層
8 : 塗膜
9 : 開口領域
10,10a,10b : 絶縁性の硬化膜
21 : 配線層
22 : 表示用電極
23 : 配線パターン
24 : 有機発光層
25 : 封止層
26 : 偏光フィルム
27 : 制御用チップ
31 : 検出電極
32 : 配線電極
33 : ブリッジ用電極層
50 : 絶縁性評価用の基材に備えられた基板
51 : 銅箔
52 : 絶縁性評価用の基材
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6