(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】板状部材に対する部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20230706BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230706BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
F16B5/02 A
B60J5/00 501B
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2019135218
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井坂 岳紀
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-044106(JP,U)
【文献】特開2006-056279(JP,A)
【文献】特開2008-137398(JP,A)
【文献】特開2014-201956(JP,A)
【文献】特開2010-144887(JP,A)
【文献】特開2014-234028(JP,A)
【文献】特開2015-064090(JP,A)
【文献】特開2010-023724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01- 13/04
F16B 5/00- 5/12
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に対して部品をスクリュー締結によって取り付ける取付構造であって、
前記板状部材には、前記部品をスクリュー締結するためのスクリュー孔を有する取付座が板面から突出して設けられるとともに、前記取付座を中心に放射状に延びて前記取付座を前記板面から突出した状態に支持する支持リブが設けられており、
前記部品には前記取付座の前記スクリュー孔を露出させる孔部が設けられるとともに、少なくとも1つの前記支持リブを間に挿通させる一対の位置決めリブが設けられており、
前記一対の位置決めリブは、前記支持リブの延び方向と交差する交差方向に延びており、前記支持リブに臨む一対の端部が前記部品から垂直に立ち上がることで前記支持リブと凹凸が噛み合う形状とされて
おり、
前記部品に、前記支持リブの延び方向に延びて前記支持リブを間に挿通させる一対の補助リブが設けられている板状部材に対する部品の取付構造。
【請求項2】
前記一対の位置決めリブの前記支持リブに臨む一対の端部のうち前記部品からの立ち上がり方向の先端部は、前記支持リブに近づくにつれて前記部品側に傾斜する案内部を備えている請求項1に記載の板状部材に対する部品の取付構造。
【請求項3】
前記板状部材は乗物用ドアの室内意匠面を構成するドアトリムであって、
前記部品は、前記ドアトリムを前記乗物用ドアのドアパネルに取り付けるためのクリップを保持するクリップ座を備えたクリップブラケットである請求項1
または請求項2に記載の板状部材に対する部品の取付構造。
【請求項4】
前記クリップブラケットは前記ドアトリムに対して2箇所以上で締結されている
請求項3に記載の板状部材に対する部品の取付構造。
【請求項5】
前記ドアトリムには前記クリップブラケットをカシメ締結するためのカシメ部が板面から突出して設けられており、前記クリップブラケットには前記カシメ部を挿通させるカシメ孔が設けられており、前記クリップブラケットにおいて前記孔部と前記カシメ孔とは、前記クリップ座を挟んだ反対側に配されている
請求項4に記載の板状部材に対する部品の取付構造。
【請求項6】
前記ドアトリムは、当該ドアトリムのうち上方部分を構成するアッパートリムを含み、前記アッパートリムは、アンダーカット部あるいは前記板面から立ち上がった張出部により囲まれた被囲い領域を有し、前記クリップブラケットは前記被囲い領域に取り付けられている
請求項3から
請求項5のいずれか一項に記載の板状部材に対する部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材に対する部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の乗物用のドアパネルには、室内意匠面を構成する板状のドアトリムが設けられている。このドアトリムの室外側の面には複数のクリップが保持されており、これらのクリップを介してドアトリムが乗物用のドアパネルに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにドアトリムにクリップを保持させるためのクリップ取付座は、ドアトリムを射出成形やプレス成形する際に、ドアトリムと一体に設けることが好ましい。しかし、これらをドアトリムのうちアンダーカット部や立壁に囲まれた狭い領域等に設けたい場合は、成形時の型抜きが不可能となり、一体に設けることができない。このような場合には、クリップ取付座を備えるクリップブラケットが、ドアトリムに対して、スクリュー締結やカシメ締結等により取り付けられる。
【0005】
ところが、もともと複雑で狭い領域に、このような別部材とされたクリップブラケットを取り付けようとする場合、これらを精度よく位置決めすることは容易とは言えない。また、一旦位置決めできたとしても、締結作業を行っている最中に位置ずれを起こす虞があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、位置決めが容易であり、かつ、位置ずれを抑制できる板状部材に対する部品の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板状部材に対して部品をスクリュー締結によって取り付ける取付構造であって、前記板状部材には、前記部品をスクリュー締結するためのスクリュー孔を有する取付座が板面から突出して設けられるとともに、前記取付座を中心に放射状に延びて前記取付座を前記板面から突出した状態に支持する支持リブが設けられており、前記部品には前記取付座の前記スクリュー孔を露出させる孔部が設けられるとともに、少なくとも1つの前記支持リブを間に挿通させる一対の位置決めリブが設けられている。
【0008】
このような構成によれば、部品に設けられた一対の位置決めリブの間に、板状部材に設けられた支持リブが挿通されることにより、部品と板状部材との位置決めを精度よく行うことができる。また、支持リブと位置決めリブとは凹凸が噛み合わされた状態とされるから、一旦位置決めされた後も位置ずれし難い。
【0009】
一対の位置決めリブは、支持リブの延び方向と交差する交差方向に延びており、支持リブに近づくにつれて部品側に傾斜する案内部を備えていてもよい。このような構成によれば、部品は、支持リブに突き当たった案内部によって、一対の位置決めリブの間に支持リブを挿通させる位置にスムーズに案内されるから、板状部材および部品の位置決めを容易に行うことができる。
【0010】
部品に、支持リブの延び方向に延びて支持リブを間に挿通させる一対の補助リブが設けられていてもよい。このような構成によれば、位置決めリブと補助リブの双方で支持リブの位置決めを行うことができるから、板状部材と部品とがよりずれ難くなる。
【0011】
上記構成の具体例として、上記板状部材は乗物用ドアの室内意匠面を構成するドアトリムであって、上記部品は、ドアトリムを乗物用ドアのドアパネルに取り付けるためのクリップを保持するクリップ座を備えたクリップブラケットである。
【0012】
クリップブラケットはドアトリムに対して2箇所以上で締結されていてもよい。このような構成によれば、クリップブラケットが回転し難くなり、ドアトリムに対してよりずれ難くなる。
【0013】
ドアトリムにクリップブラケットをカシメ締結するためのカシメ部が板面から突出して設けられており、クリップブラケットにカシメ部を挿通させるカシメ孔が設けられており、クリップブラケットにおいて孔部とカシメ孔とは、クリップ座を挟んだ反対側に配されていてもよい。このような構成によれば、締結前の状態で比較的に深く嵌合するカシメ部がスクリュー締結部から離れた位置に配されているから、ドアトリムとクリップブラケットとをさらにずれ難い構成とすることができる。
【0014】
ドアトリムは、当該ドアトリムのうち上方部分を構成するアッパートリムを含み、アッパートリムは、アンダーカット部あるいは板面から立ち上がった張出部により囲まれた被囲い領域を有し、クリップブラケットは被囲い領域に取り付けられていてもよい。このような構成によれば、クリップ座をドアトリムに一体に設けられない場合でも、クリップブラケットを別部品として後付けすることにより、クリップ座を所望の位置に設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、位置決めが容易であり、かつ、位置ずれを抑制できる板状部材に対する部品の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のドアトリムを示す車室内側の概略説明図
【
図2】クリップブラケットおよびアッパートリムの車室内側を示す一部拡大斜視図
【
図3】アッパートリムの車室外側を示す一部拡大平面図
【
図4】クリップブラケットがアッパートリムの正規の位置に配された状態を示す車室外側の一部拡大平面図。
【
図6】アッパートリムに締結されたクリップブラケットにクリップを保持させた状態を示す
図4のA-A断面に沿った断面図
【
図8】アッパートリムに締結されたクリップブラケットにクリップを保持させた状態を示す
図4のB-B断面に沿った断面図
【
図9】クリップブラケットの車室内側に配される面の平面図
【
図10】クリップブラケットの車室内側に配される面の斜視図
【
図12】一対の位置決めリブが案内部によって支持リブを間に挿通させる位置に案内される過程を示すC-C断面に沿った断面図
【
図13】他の実施形態の、支持リブの延び方向と交差する方向に延びるリブを有さないクリップブラケットがアッパートリムの非正規の位置に配された状態を示す車室外側の一部拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態を
図1から
図12によって説明する。なお、各図において矢印方向Frを前方、矢印方向Rrを後方、矢印方向Tを上方、矢印方向Bを下方、矢印方向Inを車室内側、矢印方向Outを車室外側として説明する。
【0018】
車両のドアパネルに取り付けられる車両用内装材であるドアトリム10は、複数の板状部材を組み付けて構成されている。具体的には、
図1に示すように、相対的に上方に位置するアッパートリム11と、相対的に下方に位置するロアトリム65と、これらの間に位置するミドルトリム66等を備えて構成されている。さらにミドルトリム66は上下方向に分割された第1ミドルトリム66Aおよび第2ミドルトリム66Bからなる。このうちデコレーションプレートを構成する第1ミドルトリム66Aは、ドアトリム10において後端から前方に向けて約2/3の範囲に細長く張り出すように組み付けられており、オーナメントを構成する第2ミドルトリム66Bは、第1ミドルトリム66Aの下方において第1ミドルトリム66Aより後方側に配されている。すなわち、ドアトリム10の前方側約1/3の範囲はアッパートリム11とロアトリム65とが直接組み付けられており、第1ミドルトリム66Aの前端は、前端側に突出するU字形状をなしてアッパートリム11とロアトリム65の双方と組み付けられている。ロアトリム65には車室内側に膨出するアームレスト67が設けられており、第1ミドルトリム66Aには車両用ドアを開閉するためのインサイドドアハンドル68が設けられている。
【0019】
ドアトリム10は、例えば、繊維と発泡した発泡性樹脂とによって構成された基材12をプレス成形してなり、車室内側の面に、室内意匠面を美しく見せるための皮膜13が形成されている(
図5参照)。繊維としては、木材等を解織して得た木質繊維、ケナフ等の靭皮植物繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、合成樹脂繊維等を採用することができる。発泡性樹脂は、所定温度以上に加熱されることによって発泡する構成となっている。この発泡性樹脂としては、例えば、ウレタン系発泡性樹脂、エポキシ系発泡性樹脂、オレフィン系発泡性樹脂等のうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうち、ウレタン系発泡性樹脂であることが好ましい。またドアトリム10は、例えばポリプロピレン等の樹脂を射出成形することにより形成されていてもよい。
【0020】
上述したアッパートリム11は、車両の前後方向に細長く延びてドアトリム10の上端部を構成する略板状の部材である。詳細には、車両の前方側の一部を表した
図2の一部拡大斜視図を参照して説明すると、アッパートリム11は、細長い板状の平坦部14と、平坦部14の上方に位置し、上側に向かうほど車室外側に湾曲する上方湾曲部15と、第1ミドルトリム66AとのU字型の連結部に沿って車室外側に突出する第1突出部16(張出部の一例)と、平坦部14の下方に位置し、ロアトリム65との直線状の連結部に沿って車室外側に突出する第2突出部17(張出部の一例)と、アッパートリム11の前端縁に沿って車室外側に突出する第3突出部18(張出部の一例)とを備えている。また、アッパートリム11の上端縁部のうち、車両の前端寄りの領域は前後方向に長細く切り欠かれており、この切り欠かれた部分の一部に、上端縁に沿って車室外側および上方に突出する第4突出部19(張出部の一例)が形成されている。なお、アッパートリム11の上端縁のうち、第4突出部より後方の領域は、アンダーカット形状をなしている。
【0021】
アッパートリム11の車室外側の面うち、車両の前後方向における前方側の領域、すなわち、第1突出部16、第2突出部17、第3突出部18、第4突出部19で囲まれた領域(以下被囲い領域20と称する)には、後述するクリップブラケット30をアッパートリム11に対して固定するための取付座である、2つのスクリュー座21および1つのUSカシメ座25が設けられている(
図3参照)。
【0022】
スクリュー座21は、アッパートリム11の板面から車室外側の方向へ突出した円柱状であってその軸に沿って雌ねじが切られた円柱部22(取付座の一例)と、円柱部22から放射状に延びて円柱部22をアッパートリム11から突出した状態に支持する複数の支持リブ23とを有する。支持リブ23は、アッパートリム11の板面からの突出方向の先端面(端面23Tと称する)が平坦部14を含む面と平行とされた板状とされており、その車室内側の端面は、アッパートリム11の板面と連結されている(
図5および
図7参照)。支持リブ23は、アッパートリム11の板面からの円柱部22の突出高さよりやや低い突出高さとされており、円柱部22が後述するクリップブラケット30のスクリュー挿通孔41に挿通された際に、クリップブラケット30の基部32を、端面23Tによってアッパートリム11側から支持する。支持リブ23は、円柱部22よりもクリップブラケット30の厚み寸法分低い高さ寸法に設定されている。これにより、円柱部22がクリップブラケット30のスクリュー挿通孔41に挿通された際には、円柱部22の先端面は、クリップブラケット30の基部32より僅かに肉厚とされたスクリュー挿通孔41の周縁部から僅かに奥まった位置に配される。
【0023】
このようなスクリュー座21は被囲い領域20において、
図3に示すように、平坦部14と上方湾曲部15の双方に跨るように設けられた第1スクリュー座21Aと、第1スクリュー座21Aから斜め前方かつ下方の平坦部14に設けられた第2スクリュー座21Bの2つ設けられている。このうち第1スクリュー座21Aの支持リブ23は3方向に延びており、円柱部22Aから上方に向けて延びて一部が第4突出部19にかかる第1支持リブ23Aと、円柱部22から前方に延びる第2支持リブ23Bと、円柱部22から後方かつ斜め下方に延びる第3支持リブ23Cとを備えてなる。一方、第2スクリュー座21Bの支持リブ23は円柱部22Bから前後方向および上下方向の4方向に延びている。
【0024】
また同じく被囲い領域20には、アッパートリム11の板面(平坦部14)から車室外側の方向へ突出したUSカシメ座25が配されている。USカシメ座25は、円柱状であって突出方向の先端側が空洞とされたカシメ部26と、カシメ部26から3方に放射状に延びる台座リブ27とを有する。USカシメ座25のカシメ部26は、スクリュー座21の円柱部22と比較して、アッパートリム11の板面からの突出高さが比較的に低いものとされている。また台座リブ27の突出方向の端面は、平坦部14と平行に形成されている。このUSカシメ座25は、被囲い領域20において、第1スクリュー座21Aの下方であって、第2スクリュー座21Bの斜め後方かつ下方である位置に設けられている。
【0025】
さて、アッパートリム11の被囲い領域20のうち、上述した第4突出部19の下方には、クリップブラケット30が取り付けられる。クリップブラケット30は、ドアトリム10(アッパートリム11)を乗物用ドアのドアパネルに取り付けるためのクリップ60を保持するクリップ座31を備えている。このようなクリップ座31は、ドアトリム10に一体に形成されている場合が多いが、本願のように、周囲にアンダーカット部や突出あるいは膨出した部分(上述した突出部16,17,18,19)が設けられている等の事情で成形型の型抜きが不可能な場合には、本実施形態にように別部材(クリップブラケット30)を後付けすることで設けることができる。
【0026】
本実施形態のクリップブラケット30は、
図9および
図10に示すように、クリップ60を保持するためのクリップ座31を中央に有するとともに、このクリップ座31を取り囲むように、ドアトリム10(アッパートリム11)に取り付けるための2つのスクリュー挿通孔41(孔部の一例)と1つのUSカシメ孔42とを有してなる。クリップ座31は、板状の基部32から筒状に突出する部分であって、立ち上がり部分を形成する立壁33と、立壁33の突出方向の端部の一部を繋ぐ平坦な板状の座板部35とを有する。
【0027】
クリップ座31は、詳細には、座板部35に沿った立壁33の断面がやや縦長のドーム形とされている。すなわち立壁33は、平板状の第1部分33Aと、第1部分33Aの一対の端縁部を繋ぐ平板状および湾曲状の部分からなる断面U字型の第2部分33Bとから形成されている。上述した座板部35は、第2部分33Bのうち湾曲状とされた領域の突出先端側の端縁部を架け渡す半円状とされており、そのうち直線状とされた端縁部には、後述するクリップ60の軸部61を嵌め入れるための溝状の溝部36が形成されている。さらに、第1部分33Aの端縁部には、座板部35の溝部36に向けて片持ち状に延びるT字形の弾性係止片37が設けられている。第1部分33Aは第2部分33Bと比較して基部32からの立ち上がり寸法がやや低めに設定されており、これにより、弾性係止片37は溝部36よりも基部32に近い位置から溝部36に向けて斜めに延びている(
図7参照)。なお本実施形態においてクリップ座31は、
図4に示すように、立壁33の第1部分33Aが車両の後方側に位置する向きになるように配されている。
【0028】
上述したクリップ座31の基部32は、
図9および
図10に示すように、クリップブラケット30がアッパートリム11に取り付けられた状態(
図4の状態)においてクリップ座31から上方に延びる第1基部32Aと、クリップ座31から前方に延びる第2基部32Bと、クリップ座31から下方に延びる第3基部32Cと、クリップ座31の後方において第1基部32Aと第3基部32Cとを連結する第4基部32Dとを備えている。これらの各基部32は隣り合う基部32とそれぞれ連なっており、これにより、クリップ座31は4つの基部32により取り囲まれている。
【0029】
第1基部32Aは、クリップブラケット30がアッパートリム11の被囲い領域20に取り付けられた状態においてアッパートリム11の上端部(第4突出部19)よりも上方に突出して延びる寸法に設定されており、このアッパートリム11から突出する部分には孔部40が形成されている。また第1基部32Aのうち、アッパートリム11の平坦部14と上方湾曲部15の境界付近に設けられた第1スクリュー座21Aに重畳される領域には、クリップブラケット30とアッパートリム11とをスクリュー締結するための略正方形の第1スクリュー挿通孔41Aが形成されている。この第1スクリュー挿通孔41Aの内径は、第1スクリュー座21Aの円柱部22Aを内側に嵌め入れ可能なサイズに設定されている。
【0030】
第2基部32Bは、クリップ座31の立壁33のうち第2部分33Bと連続して設けられており、第1基部32Aと比較して、座板部35を含む面から遠い位置(アッパートリム11側)に配されている。すなわち、第1基部32Aと第2基部32Bとの間には第1段差部43が設けられている。この第2基部32Bのうち前端寄りの位置には、クリップブラケット30とアッパートリム11とをスクリュー締結するための円形の第2スクリュー挿通孔41Bが形成されている。この第2スクリュー挿通孔41Bの内径も、第2スクリュー座21Bの円柱部22Bを内側に嵌め入れ可能なサイズに設定されている。
【0031】
さらに、第3基部32Cは上述したようにクリップ座31の下方、すなわち、クリップ座31から第1基部32Aの反対側に延びており、第2基部32Bと比較して、座板部35を含む面からさらに遠い位置(アッパートリム11側)に配されている。すなわち、第2基部32Bと第3基部32Cとの間には第2段差部44が設けられている。この第3基部32Cには、クリップブラケット30とアッパートリム11とをUSカシメ締結するためのやや縦長の長孔状をなすUSカシメ孔42が形成されている。またこの第3基部32Cのうち、クリップ座31から離れた位置に配された端縁部に沿った領域の一部には、がたつき防止用の安定リブ47がアッパートリム11との対向面側に突出して設けられている。
【0032】
そして第4基部32Dは、座板部35を含む面から遠い位置(アッパートリム11側)に配された第3基部32Cと、座板部35を含む面に近い位置に配された第1基部32Aとを、クリップ座31の立壁33の第1部分33A側において連結している。この第4基部32Dは、第3段差部45を介して安定リブ47の突出端面を含む面と面一で立壁33の第1部分33Aに沿って延びるとともに、第1基部32Aとの連結部分においては、立壁33の第1部分33Aに沿って延びる第4段差部46により連結されている。第4段差部46は、第1スクリュー挿通孔41Aの後方に第1スクリュー挿通孔41Aと並んで設けられている。
【0033】
上述した2つのスクリュー座21A,21Bは、アッパートリム11のうち、クリップブラケット30が正規の位置に配された状態において第1スクリュー挿通孔41Aおよび第2スクリュー挿通孔41Bに対応する領域に設けられている。また、上述したUSカシメ座25は、同じく、USカシメ孔42に対応する領域に設けられている。このUSカシメ座25とUSカシメ孔42とは、スクリュー座21(円柱部22)およびそのスクリュー挿通孔41との嵌合と比較して深く嵌合するため、比較的にずれ難くなっている(
図5参照)。
【0034】
さらに、アッパートリム11のうち、クリップブラケット30が正規の位置に配された状態においてクリップ座31が配される位置には、クリップ座31の座板部35の裏面(アッパートリム11側の面)に向けて突出する円筒状の撓み規制部28が設けられている。この撓み規制部28は、クリップ座31の溝部36にクリップ60の軸部61が嵌め入れられた状態(
図6および
図8参照)において、クリップ60の脚部62に隣接する位置まで延びており、クリップ60に力が加えられて座板部35がアッパートリム11側に撓もうとした場合に、クリップ60および座板部35をアッパートリム11側から支持して、座板部35の撓みを抑制することができる。
【0035】
さて、このようなクリップブラケット30をアッパートリム11に取り付ける際には、両者の位置決めが必要であるが、第1スクリュー座21A、第2スクリュー座21B、USカシメ座25の3か所において位置決めを行わなければならない上、スクリュー座21とスクリュー挿通孔41との嵌合の深さが浅いため、一旦位置決めした後もずれ易く、正規の位置に確実に保持したまま締結を行うことには困難が伴う。
【0036】
このような問題に対し、本実施形態においては、クリップブラケット30側に、アッパートリム11の第1スクリュー座21Aの第3支持リブ23Cを間に挿通させて位置決めを行う、一対の位置決めリブ50を設ける構成とした(
図4参照)。これら一対の位置決めリブ50は、第3支持リブ23Cの延び方向と交差する交差方向に延びている。具体的には、一対の位置決めリブ50の一方は、
図4に示すように、第3支持リブ23Cの延び方向における中央付近において、第3支持リブ23Cに隣接する位置から第4段差部46まで延びており、他方は、同じく第3支持リブ23Cの延び方向における中央付近において、第3支持リブ23Cに隣接する位置から第1段差部43まで延びている。またこれら一対の位置決めリブ50には、第3支持リブ23Cに近づくにつれてクリップブラケット30側に傾斜する案内部51が形成されている(
図11参照)。これらの案内部51により、第3支持リブ23Cを正規の位置(一対の位置決めリブ50の間)にスムーズに案内することが可能となる。なお、案内部51の角度は、第3支持リブ23Cに対して15度程度とすることが好ましい。
【0037】
さらに、クリップブラケット30には、第3支持リブ23Cの延び方向に延びて第3支持リブ23Cを間に挿通させる一対の補助リブ52が設けられている。一対の補助リブ52は、一対の位置決めリブ50の間に配されるとともに一対の位置決めリブ50と一体に形成されている。すなわち、一の位置決めリブ50と一の補助リブ52とは、T字状に連結している。また、一対の補助リブ52の第1基部32Aからの突出高さは、一対の位置決めリブ50のうち第1基部32Aからの突出高さが最も低い部分、すなわち、最も第3支持リブ23Cに近い部分の高さと同等あるはそれ以下に設定されている。
【0038】
このように、比較的に嵌合が深いUSカシメ座25およびUSカシメ孔42と、クリップ座31を挟んで反対側の位置に配された第1スクリュー座21Aおよび第1スクリュー挿通孔41Aのうちの第1スクリュー挿通孔41Aの周辺に、位置決めの精度を高めると共に位置ずれを防ぐ位置決めリブ50および補助リブ52を設けることにより、クリップブラケット30をアッパートリム11に対して正規の位置に位置決めするとともに保持することが容易となる。
【0039】
クリップブラケット30をアッパートリム11に取り付ける際には、まず、クリップブラケット30の第1スクリュー挿通孔41A、第2スクリュー挿通孔41B、USカシメ孔42に対して、ドアトリム10の第1スクリュー座21Aの円柱部22A、第2スクリュー座21Bの円柱部22B、USカシメ座25のカシメ部26を挿通させる。この時、まず比較的に嵌合が深く位置ずれ難いUSカシメ孔42とカシメ部26とを嵌合させ、USカシメ孔42から遠い位置に配されている第1基部32Aを第1スクリュー座21A付近に近づける。すると、位置決めリブ50および補助リブ52に第1スクリュー座21Aの第3支持リブ23Cが当接して案内部51により案内されることによって(
図12参照)、第1基部32Aが相対的にアッパートリム11の正規の位置に配され、第1スクリュー座21Aの円柱部22Aおよび第2スクリュー座21Bの円柱部22Bが第1スクリュー挿通孔41Aおよび第2スクリュー挿通孔41Bに挿通される。
【0040】
この時、クリップブラケット30の下方部分はカシメ部26およびUSカシメ孔42との深い嵌合により位置決めされ、クリップブラケット30の上方部分は第1スクリュー座21Aの円柱部22Aおよび第1スクリュー挿通孔41Aの嵌合に加え、第1スクリュー座21Aの第3支持リブ23Cがクリップブラケット30の位置決めリブ50および補助リブ52の間に配されることにより、クリップブラケット30がアッパートリム11に対して位置決めされた状態が安定的に保持される。そしてこの状態において、第1スクリュー座21Aおよび第2スクリュー座21Bに対してスクリュー63が締結され、USカシメ座25が熱カシメされることにより、クリップブラケット30がアッパートリム11に対して位置ずれすることなく取り付けられる。
【0041】
本実施形態のクリップブラケット30のドアトリム10への取付構造は以上のようであって、次に、作用効果について説明する。本実施形態は、乗物用ドアの室内意匠面を構成するドアトリム10に対して、当該ドアトリム10を乗物用ドアのドアパネルに取り付けるためのクリップ60を保持するクリップ座31を備えたクリップブラケット30をスクリュー締結によって取り付ける取付構造であって、ドアトリム10には、クリップブラケット30をスクリュー締結するためのスクリュー孔24を有する円柱部22が板面から突出して設けられるとともに、円柱部22を中心に放射状に延びて円柱部22を板面から突出した状態に支持する支持リブ23が設けられており、クリップブラケット30には円柱部22のスクリュー孔24を露出させるスクリュー挿通孔41が設けられるとともに、支持リブ23の1つ23Cを間に挿通させる一対の位置決めリブ50が設けられている。
【0042】
このような構成によれば、クリップブラケット30に設けられた一対の位置決めリブ50の間に、ドアトリム10に設けられた支持リブ23Cが挿通されることにより、クリップブラケット30とドアトリム10との位置決めを精度よく行うことができる。また、支持リブ23Cと位置決めリブ50とは凹凸が噛み合わされた状態とされるから、一旦位置決めされた後も位置ずれし難い。
【0043】
また、一対の位置決めリブ50は、支持リブ23Cの延び方向と交差する交差方向に延びており、支持リブ23Cに近づくにつれてクリップブラケット30側に傾斜する案内部51を備えている。このような構成によれば、クリップブラケット30は、支持リブ23に突き当たった案内部51によって、一対の位置決めリブ50の間に支持リブ23を挿通させる位置にスムーズに案内されるから、ドアトリム10およびクリップブラケット30の位置決めを容易に行うことができる。
【0044】
また、クリップブラケット30に、支持リブ23Cの延び方向に延びて支持リブ23Cを間に挿通させる一対の補助リブ52が設けられている。このような構成によれば、位置決めリブ50と補助リブ52の双方で支持リブ23Cの位置決めを行うことができるから、ドアトリム10とクリップブラケット30とがよりずれ難くなる。
【0045】
また、クリップブラケット30はドアトリム10に対して3箇所で締結されている。このような構成によれば、クリップブラケット30が回転し難くなり、ドアトリム10に対してよりずれ難くなる。
【0046】
また、ドアトリム10にクリップブラケット30をカシメ締結するためのカシメ部26が板面から突出して設けられており、クリップブラケット30にカシメ部26を挿通させるUSカシメ孔42が設けられており、クリップブラケット30においてスクリュー挿通孔41とUSカシメ孔42とは、クリップ座31を挟んだ反対側に配されている。このような構成によれば、締結前の状態で比較的に深く嵌合するカシメ部26がスクリュー締結部から離れた位置に配されているから、ドアトリム10とクリップブラケット30とをさらにずれ難い構成とすることができる。
【0047】
ドアトリム10は、当該ドアトリムのうち上方部分を構成するアッパートリム11を含み、アッパートリム11は、アンダーカット部あるいは板面から立ち上がった突出部16,17,18,19により囲まれた被囲い領域20を有し、クリップブラケット30は被囲い領域20に取り付けられている。このような構成によれば、クリップ座31をドアトリム10に一体に設けられない場合でも、クリップブラケット30を別部品として後付けすることにより、クリップ座31を所望の位置に設けることが可能となる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(1)上記実施形態では、2つのスクリュー締結部と1つのUSカシメ締結部を備える板状部材に対する部品取付構造を例示しているが、これらの個数は適宜変更可能である。
【0050】
(2)上記実施形態では、クリップブラケット30に、支持リブ23Cの延び方向と交差する方向に延びる位置決めリブ50と、支持リブ23Cの延び方向に延びる補助リブ52の双方を設ける構成を示したが、補助リブ52を省略したり、支持リブ23Cの延び方向に延びるリブを位置決めリブ155として位置決めリブ155だけを設けてもよい(
図13および
図14参照)。この場合も、位置決めリブ155が支持リブ23Cを位置決めするとともにずれ難くするが、このように支持リブ23Cの延び方向と交差する方向に延びるリブを設けない場合には、
図13および
図14に示すように、支持リブ23Cが一対の位置決めリブ155の間に挿通されずに外側にはみ出して組み付けられることが考えられる。したがって、位置決めリブは支持リブ23Cと交差する方向に延びるものであることが好ましい。
【0051】
(3)また、支持リブの延び方向と交差する交差方向に延びるリブを位置決めリブとする場合でも、案内部を省略することもできる。
【0052】
(4)上記実施形態では、第1スクリュー座21Aの第3支持リブ23Cを位置決めする位置決めリブ50および補助リブ52を設ける構成をしめしたが、位置決めリブや補助リブは第3支持リブに限らず、他の支持リブ23を位置決めする位置に設けてもよい。また、複数の支持リブ23を位置決めするように複数設けてもよい。
【0053】
(5)上記実施形態では、被囲い領域は突出部16,17,18,19により囲まれる構成を示したが、被囲い領域は、アンダーカット部や膨出した部分により囲まれる構成であってもよい。要は、被囲い領域は、成形時に型抜きが不可能でクリップ座をドアトリムと一体に設けることができない領域のことを指している。
【0054】
(6)クリップブラケットは、被囲い領域以外の領域に設けてもよい。
【0055】
(7)上記実施形態では、板状部材を乗物用ドアのドアトリムとし、部品をクリップブラケットとした例を示したが、板状部材および部品は上記実施形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0056】
10:ドアトリム(板状部材)、11:アッパートリム(板状部材)、16:第1突出部(張出部)、17:第2突出部(張出部)、18:第3突出部(張出部)、19:第4突出部(張出部)、20:被囲い領域、21:スクリュー座、22:円柱部(取付座)、23:支持リブ、24:スクリュー孔、25:USカシメ座、26:カシメ部、27:台座リブ、30:クリップブラケット(部品)、31:クリップ座、32:基部、33:立壁、38:撓み規制部、41:スクリュー挿通孔(孔部)、42:USカシメ孔、50:位置決めリブ、51:案内部、52:補助リブ、60:クリップ、63:スクリュー