IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタウォーター株式会社の特許一覧 ▶ 佐竹化学機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-攪拌装置 図1
  • 特許-攪拌装置 図2
  • 特許-攪拌装置 図3
  • 特許-攪拌装置 図4
  • 特許-攪拌装置 図5
  • 特許-攪拌装置 図6
  • 特許-攪拌装置 図7
  • 特許-攪拌装置 図8
  • 特許-攪拌装置 図9
  • 特許-攪拌装置 図10
  • 特許-攪拌装置 図11
  • 特許-攪拌装置 図12
  • 特許-攪拌装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/86 20220101AFI20230706BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230706BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20230706BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20230706BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20230706BHJP
【FI】
B01F27/86
C02F1/00 W
B01F27/70
B01F35/71
B01F35/75
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019023482
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020131058
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】久本 祐資
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
(72)【発明者】
【氏名】根本 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚文
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-058908(JP,A)
【文献】特開2008-284421(JP,A)
【文献】特開2007-260616(JP,A)
【文献】特開2014-223610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96、21/00-25/90
B01D 21/00-21/34
C02F 1/00、1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流入口及び流出口を備え、水平面において矩形状をなす攪拌槽と、
前記攪拌槽内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか一方に配置され、底面の中心を通る鉛直線に沿って鉛直方向に伸びる回転軸に装着された回転翼と、
前記攪拌槽内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか他方に配置され、底面の中心部を通る鉛直線から外方に伸びる静止翼と、を備えた攪拌装置であって、
前記回転翼は、前記流出口の近傍に設けられ、
前記静止翼は、前記流入口の近傍に設けられ、
前記回転翼の回転により、前記攪拌槽の底面を囲むように立設された壁部の内周に沿って流れる旋回流、及び前記静止翼の中心を起点とし、かつ、前記攪拌槽の中心部を通って上昇又は下降する上昇流又は下降流が発生するように構成されており、
前記静止翼側に配置された前記流入口において、前記流入口から流入される水の流れる方向を、前記旋回流の流れに沿うように制御する、流入口側の流れ方向制御手段と、
前記回転翼側に配置された前記流出口において、前記流出口から流出される水の流れる方向を、前記旋回流の流れに沿うように制御する、流出口側の流れ方向制御手段を有しており、
前記流入口側の流れ方向制御手段は、前記攪拌槽の前記水平面における矩形状の一辺の隅部に形成された開口部で構成され
前記流出口の開口部が、前記旋回流と交差する方向に開口しており、
前記流出口側の流れ方向制御手段は、前記流出口の開口部の内側に設けられ、かつ前記旋回流の一部を該開口部に向かうように変換せしめる邪魔板を有していることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記邪魔板は、前記流出口から流出される水の流れる方向を変換させる第1の邪魔板と、該第1の邪魔板の鉛直方向のいずれかの端部に配置されて、前記流出口から流出される水を鉛直方向のいずれかに流れることを抑制する第2の邪魔板とを有している、請求項記載の攪拌装置。
【請求項3】
浄水システムにおける混和池に適用される、請求項1又は2に記載の攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば河川等から採取した水に凝集剤などの処理剤を混合させる、いわゆる水処理のための攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浄水場においては、河川等から採取した水に凝集剤などの処理剤を混合することにより、水に含まれている浮遊物を凝集させて沈殿除去する処理が行われている。水と処理剤との混合には、攪拌装置が用いられている。このような攪拌装置としては、例えば、円筒形状の容器と、容器の天井の近傍に配され、かつ鉛直方向に延びる回転軸の回りを回転自在な回転翼と、容器の内底に放射状に配置されている複数のバッフルと、を備える攪拌装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-029870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる攪拌装置において、回転翼の回転軸に対して垂直方向から容器に水を流入させる場合がある。このような態様で容器に水を流入させた場合、容器に流入した水の流れが回転翼の回転によって生じた水の流れを阻害し、攪拌の効率が低下することが課題の一例として挙げられる。
【0005】
また、回転翼の回転軸に対して垂直方向から容器の水を外部に流出させる場合がある。このような態様で容器に水を流出させた場合、容器から流出する水の流れが回転翼の回転によって生じた水の流れを阻害し、攪拌の効率が低下することが課題の一例として挙げられる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、効率良く攪拌することが可能な攪拌装置を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の攪拌装置は、水の流入口及び流出口を備えた攪拌槽と、前記攪拌槽内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか一方に配置された回転翼と、前記攪拌槽内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか他方に配置された静止翼と、とを備えた攪拌装置であって、前記回転翼は、前記流入口又は前記流出口のいずれか一方の近傍に設けられ、前記静止翼は、前記流入口又は前記流出口の他方の近傍に設けられ、前記回転翼の回転により、前記攪拌槽の内周に沿って流れる旋回流、及び前記静止翼を起点とし、かつ、前記攪拌槽の中心部を通って上昇又は下降する上昇流又は下降流が発生するように構成されており、前記静止翼側に配置された前記流入口又は前記流出口において、前記流入口から流入される水又は前記流出口から流出される水の流れる方向を、前記旋回流の流れに沿うように制御する流れ方向制御手段を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の攪拌装置によれば、静止翼側に配置された流入口又は流出口は、流入口から流入される水又は流出口から流出される水の流れる方向を、前記旋回流の流れに沿って制御する流れ方向制御手段を有しているので、旋回流の乱れを抑制して、攪拌効果を高めることができる。
【0009】
本発明の攪拌装置においては、前記攪拌槽が水平面において矩形状をなしており、前記流れ方向制御手段は、前記静止翼側に配置された前記流入口又は前記流出口を、前記旋回流の流れに沿って水が流入又は流出するように、前記矩形状の一辺の隅部に形成された開口部で構成されていることが好ましい。
【0010】
上記態様によれば、流れ方向制御手段が、静止翼側に配置された流入口又は流出口の開口部によって、旋回流の流れに沿って水が流入又は流出するように、矩形状の一辺の隅部に設けることにより、旋回流を乱さないように水を流入又は流出させることができる。
【0011】
本発明の攪拌装置においては、前記攪拌槽が水平面において円形状をなしており、前記流れ方向制御手段は、前記静止翼側に配置された前記流入口又は前記流出口を、前記旋回流の流れに沿って水が流入又は流出するように、前記円形状の接線方向に形成した開口部で構成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様によれば、静止翼側に配置された流入口又は流出口の開口部を、旋回流の流れに沿って水が流入又は流出するように、円形状の接線方向に形成することにより、旋回流を乱さないように水を流入又は流出させることができる。
【0013】
本発明の攪拌装置においては、前記静止翼側に配置された前記流入口又は前記流出口の開口部が、前記旋回流と交差する方向に開口しており、前記開口部が流入口である場合には、前記流れ方向制御手段は、前記開口部の内側に設けられ、かつ流入した水を前記旋回流の旋回方向に変換せしめる邪魔板を有し、前記開口部が流出口である場合には、前記流れ方向制御手段は、前記開口部の内側に設けられ、かつ前記旋回流の一部を前記開口部に向かうように変換せしめる邪魔板を有していることが好ましい。
【0014】
上記態様によれば、静止翼側に配置された流入口又は流出口の開口部の内側に、上記邪魔板を設けることにより、旋回流を乱さないように水を流入又は流出させることができる。
【0015】
本発明の攪拌装置においては、前記邪魔板は、前記水の流れを方向変換させる第1の邪魔板と、該第1の邪魔板の上方又は下方に配置されて、前記水の流れが上方又は下方に広がるのを抑制する第2の邪魔板とを有していることが好ましい。
【0016】
上記態様によれば、第1の邪魔板によって水の流れが方向変換されると共に、第2の邪魔板によって水の流れが上方又は下方に広がるのを抑制されるので、旋回流の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の攪拌装置においては、浄水システムにおける混和池に適用されることが好ましい。
【0018】
上記態様によれば、浄水システムにおける、凝集剤を混合分散させるための混和池に用いることによって、凝集剤を効率よく混合分散させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流れ方向制御手段は、流入口から流入される水又は流出口から流出される水の流れる方向を、前記旋回流の流れに沿って制御する。それ故、攪拌装置は、回転翼の回転によって生じた旋回流の流れを阻害することなく攪拌することが可能となる。従って、攪拌装置の攪拌効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】浄水システムの断面図である。
図2図1の薬品混和池の斜視図である。
図3図1の薬品混和池の断面図である。
図4図1の薬品混和池の平面図である。
図5】実施例2である薬品混和池の平面図である。
図6】実施例3である薬品混和池の平面図である。
図7】実施例4である薬品混和池の斜視図である。
図8】実施例5である薬品混和池の平面図である。
図9】実施例6である薬品混和池の平面図である。
図10】静止翼の配置のバリエーションを示す薬品混和池の平面図である。
図11】静止翼の形状のバリエーションを示す薬品混和池の平面図である。
図12図1の薬品混和池の水の流れをシミュレーションした流線図である。
図13】従来の薬品混和池の水の流れをシミュレーションした流線図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る攪拌装置を含む浄水システムの一実施形態について説明する。
【0022】
図1は、浄水システム100の断面図である。図1に示すように、薬品混和池10は、取水塔(図示せず)及び着水井(図示せず)を経た水が流入される。薬品混和池10は、流入された水を収容可能に形成されている攪拌槽11を有する。攪拌槽11は、収容した水を攪拌する回転翼12を有する。
【0023】
攪拌槽11では、流入した水に浮遊している細かい土砂等を凝集させる凝集剤が回転翼12によって水に急速に混合される。すなわち、薬品混和池10は、攪拌装置をなしている。尚、凝集剤には、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)等を用いることができる。
【0024】
フロック形成池20は、薬品混和池10を経た水が流入される。フロック形成池20は、薬品混和池10を経た水を収容可能に形成されている3つの緩速攪拌槽21a~21cを有する。緩速攪拌槽21a~21cの各々には、フロキュレータ22a~22cが配されている。
【0025】
フロック形成池20では、各々のフロキュレータ21a~21cによって水が緩速攪拌される。緩速攪拌が行われることにより、凝集剤が水に一様に混合される。その結果、水に浮遊している細かい土砂等が凝集した固まり、すなわち、フロックが形成され、かつ形成されたフロックの成長が行われる。
【0026】
沈殿池30は、フロック形成池20を経た水が流入される。沈殿池30は、フロック形成池20を経た水を収容可能に形成されている沈殿槽31を有する。沈殿池30では、フロック形成池20で形成されたフロックが沈殿される。沈殿槽31で沈殿されたフロックは、回収設備(図示せず)によって回収される。
【0027】
濾過池40には、沈殿池30を経た水が流入される。濾過池40は、沈殿池30を経た水を収容可能に形成されている濾過槽41を有する。濾過槽41は、沈殿池30において沈殿しきらなかった粒子やフロックを除去する濾過層42を有する。濾過層42で濾過された水は、塩素注入設備(図示せず)を経て浄水池(図示せず)に流入される。
【0028】
図2は、薬品混和池10の斜視図である。尚、図中の白抜き矢印は、薬品混和池10に流入する水が流れる方向を示している。また、図中の実線矢印は、薬品混和池10の上下方向を示している。
【0029】
図2に示すように、攪拌槽11は、矩形板状に形成されている底部11aを有する。攪拌槽11は、底部11a上において、底部11aの一の面である底面の中心CRを囲むように形成されている4つの壁部11bを有する。したがって、攪拌槽11は、角柱状に形成されている。尚、攪拌槽11には、凝集剤を流入口14から攪拌槽11に導入する導入路(図示せず)が設けられている。
【0030】
回転翼12は、攪拌槽11内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか一方に配置されている。本実施例において、回転翼12は、攪拌層11の上部に配置されている。回転翼12は、鉛直方向に延びる回転軸12aに装着されている。回転軸12aは、攪拌槽11の底部11aの底面の中心CRから垂直方向に離れた位置に配されている。回転軸12aは、図示しないモータの駆動によって軸周りに回転可能である。
【0031】
回転翼12は、回転軸12aに取り付けられている一組のフラットパドル12bを有する。図2においては、回転翼12は、4枚のフラットパドル12bを有する。
【0032】
4枚のフラットパドル12bは、回転軸12aの軸周りに互いに90度ずつ離間して配されている。従って、フラットパドル12bは、回転軸12aの回転に伴って回転軸12aの軸周りに回転する。
【0033】
静止翼13は、攪拌槽11内において鉛直方向における異なる高さ位置のいずれか他方に配置されている。本実施例において、静止翼13は、攪拌槽11の下部、すなわち、攪拌槽11の底部11aに配置されている。静止翼13は、4枚の固定されたブレード13aを有する。4枚のブレード13aは、攪拌槽11の底面の中心CRを囲うように互いに90度ずつ離間して配されている。
【0034】
流入口14は、攪拌槽11の下部、すなわち一の壁部11bの底部11aの近傍に設けられている。すなわち、静止翼13は、流入口14の近傍に設けられている。
【0035】
流入口14は、壁部11bの壁面を垂直方向に貫通して形成されている開口部である。流入口14の攪拌槽11の上下方向の長さ、すなわち高さHは、特に限定されないが、例えば、水深に対して20~25%に形成されている。
【0036】
邪魔板としてのバッフル15は、流入口14に設けられている。バッフル15は、流入口14に対向して設けられている第1の邪魔板としての立設部15aを有する。
【0037】
立設部15aは、底部11aから上方に向かって立設されると共に、壁部11bの内面に対して斜めに配置された板状部材からなる。立設部15aは、例えば、流入口14の高さHに対して1.1倍の高さを有するとよい。また、立設部15aが壁部11bに対して成す角度は、例えば、30度とするとよい。立設部15aは、流入口14から流入した水の流れの方向を変換させる。言い換えれば、流入口14から流入した水は、立設部15aに衝突することにより進行方向が変更される。
【0038】
バッフル15は、底部11aに対向して設けられている第2の邪魔板としての被覆部15bを有する。被覆部15bは、立設部15aの上方の端部から流入口14の上端にかけて底部11aを覆うように形成されている板状部材である。被覆部15bは、立設部15aの鉛直方向の上端に配置されて、水の流れが上方に向かうことを抑制する。言い換えれば、流入口14から流入した水は、被覆部15bに衝突することにより攪拌槽11の上方に拡がることを抑制される。
【0039】
バッフル15は、流入口14から攪拌槽11の壁部11bによって囲まれた空間を臨む視野において、静止翼13が含まれないように設けられている。言い換えれば、流入口14から流入した水が直接的に静止翼13に当たらないようにバッフル15が設けられている。
【0040】
流出口16は、攪拌槽11の流入口14が設けられている壁部11bと対向する壁部11bに設けられている。また、流出口16は、攪拌層11の上部であって、かつ回転翼12のフラットパドル12aが配されている位置よりも上方に設けられている。流出口16は、一の壁部11bの幅方向に亘って切り欠いて堰状に形成されている。すなわち回転翼12は、流出口16の近傍に設けられている。
【0041】
したがって、流入口14から流入した水は、回転翼12によって攪拌されて後述する態様で循環した後に流出口16から沈殿池30に向かって越流する。尚、攪拌槽11において水が攪拌されつつ通過する時間は、1~5分程度である。
【0042】
図3は、図2に示される薬品混和池10のA-A線断面を示している。尚、図中の破線矢印は、回転翼12の回転によって生じた水の旋回流及び水の旋回流によって生じる上昇流を示している。
【0043】
図3に示すように、回転翼12のフラットパドル12bが回転軸12aの軸周りに回転すると、その回転方向に応じた旋回流が生じる。この実施例の場合、旋回流は、攪拌槽11の内壁に沿って、回転軸12aの回転方向と同方向に旋回し、かつ、上方から下方に移動する下降流となる。
【0044】
本図において、回転翼12の回転軸12aは、平面視において右回りに回転する。回転軸12aの回転により、フラットパドル12bは、平面視において右回りに回転する。したがって旋回流は、平面視において右回りに旋回する。
【0045】
攪拌槽11の底面側の旋回流は、静止翼13に当たる。静止翼13に当たった旋回流は、攪拌槽11の底面の中心CRに向かって進行する。攪拌槽11の底部11aの底面の中心CRで合流した旋回流は、攪拌槽11の上側に向かって進行する上昇流となる。
【0046】
上昇流は、底部11aから回転翼12に向かって攪拌槽11の中心部を通って旋回しながら上昇する。上昇流は、回転翼12に達すると回転翼12の回転軸12aの回転に沿って旋回し、かつ、上方から下方に移動する下降流となる。
【0047】
すなわち、薬品混和池10は、回転翼12の回転により、攪拌槽11の内周に沿って流れる旋回流、及び攪拌槽11の中心部を通って上昇する上昇流が発生するように構成されている。
【0048】
図4は、薬品混和池10の平面図である。尚、図中において、攪拌翼12は説明のため省略して記載している。また、図中の実線矢印は、旋回流の旋回方向を示している。二点鎖線の白抜き矢印は、水の流入方向を示している。実線の白抜き矢印は、水の流出方向を示している。
【0049】
図4において、攪拌槽11は、平面的に見て、すなわち水平面において矩形状、この実施例では正方形状をなしている。上述のように本実施例においては、回転翼12の回転軸12aが平面視において時計回りに回転している。従って、旋回流は、平面視において右回り、すなわち時計回りに進行する。
【0050】
図4に示すように、流入口14は、旋回流と交差する方向に開口している開口部を有する。バッフル15は、流入口14の内側、すなわち、攪拌槽11の壁部11bに囲まれた空間内に設けられている。
【0051】
流入口14から流入した水は、立設部15aと接触すると旋回流の流れる方向に沿って進行方向が変更される。言い換えれば、立設部15aは流入口14から流入される水の流れる方向を変換させる。
【0052】
また、流入口14から流入した水は、被覆部15bに接触すると底部11aに向かうように進行方向が変更される。言い換えれば、被覆部15bは、流入口14から流入される水を鉛直方向の上側に流れることを抑制する。その結果、流入口14から流入した水は、バッフル15の攪拌槽11内に開口する開口端に向かって進行する。
【0053】
流入口14からバッフル15を経て攪拌槽11に流入した水は、壁部11bに接触しつつ、旋回流に合流する。この流入口14から流入した水は、旋回流の流れを妨げないように旋回流と同一の方向に沿って流入される。
【0054】
このように、バッフル15は、流入口から流入される水の流れる方向を、旋回流の流れに沿って制御する流れ方向制御手段として機能する。すなわち、バッフル15は、流入した水を旋回流の旋回方向に変換せしめる。
【0055】
以上のように、本実施例に係る薬品混和池10によれば、バッフル15は、回転翼12の回転によって発生する旋回流の流れに沿って水を流入させるように構成されている。
【0056】
すなわち、静止翼13側に配置された流入口14の開口部の内側に、バッフル15を設けることにより、旋回流を乱さないように水を流入させることができる。
【0057】
具体的には、第1の邪魔板である立設部15aによって水の流れが方向変換されると共に、第2の邪魔板である被覆部15bによって水の流れが上方に広がるのを抑制されるので、旋回流の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0058】
旋回流の乱れが抑制されることにより、静止翼13によって、底部11aから攪拌槽11の中心部を通って旋回しながら上昇する上昇流を効率よく発生させることができる。したがって、上昇流による攪拌効果、すなわち、攪拌槽11の上下方向の攪拌効果を高めることができる。
【0059】
攪拌槽11においては、流入水による水圧が攪拌層内の水に対してその重力中心を外れた方向に加わって液体に対して回転モーメントが付与されることになり、当該水が攪拌槽11内で旋回することになる。その結果、旋回流の流れが促進され、上昇流を効果的に発生させることが可能となり、高い攪拌作用が得られると考えられる。
【0060】
さらにまた、浄水システム100における、凝集剤を混合分散させるための薬品混和池10に用いることによって、凝集剤を効率よく混合分散させることができる。
【0061】
特に、バッフル15は、既設の薬品混和池10に設置することが可能である。従って、本実施例に係る薬品混和池10の導入コストの低減を図ることが可能となる。
【0062】
尚、回転翼12は、一組のフラットパドル12bによって構成するようにした。しかし、回転翼12は、一組のフラットパドル12bが回転軸12aの軸方向にずらして複数設けられているようにしてもよい。また、回転翼12は、フラットパドル12bに限られず、実施する液体の粘度等に応じて適宜変更することが可能である。
【0063】
また、本実施例においては、凝集剤を導入する導入路が攪拌槽11に設けられているように構成した。しかし、凝集剤を導入する導入路は、着水井と薬品混和池10との間の水路に接続されているようにしてもよい。
【実施例2】
【0064】
図5を参照して、実施例2に係る薬品混和池10について説明する。実施例2に係る薬品混和池10は、流入口14が攪拌槽11の上部に設けられ、かつ流出口16が攪拌槽11の下部に設けられている点で実施例1に係る薬品混和池10とは異なる。
【0065】
図5は、実施例2にかかる薬品混和池10の平面図である。図中において、攪拌翼12は説明のため省略して記載している。また、図中の実線矢印は、旋回流の旋回方向を示している。白抜き矢印は、水の流入方向を示している。二点鎖線の白抜き矢印は、水の流出方向を示している。
【0066】
図5に示すように、流入口14は、攪拌槽11の上部に設けられている。流入口14は、攪拌槽11の壁部11bにおいて幅方向に亘って切り欠いて堰状に形成されている。従って、着水井を経た水は、流入口14から壁部11bを越流して攪拌槽11に流入する。
【0067】
流出口16は、攪拌槽11の下部、すなわち一の壁部11bの底部11aの近傍に設けられている。流出口16は、壁部11bの壁面を垂直方向に貫通して形成されている開口部である。流出口16の攪拌槽11の上下方向の長さ、すなわち高さHは、特に限定されないが、例えば、水深に対して20~25%に形成されている。
【0068】
バッフル15は、流出口16に設けられている。バッフル15は、流出口16の内側、すなわち、攪拌槽11の壁部11bに囲まれた空間内に設けられている。
【0069】
バッフル15は、流出口16に対向して設けられている第1の邪魔板としての立設部15aを有する。立設部15aは、底部11aに対して垂直にかつ壁部11bの内面に対して斜めになるように攪拌槽11の上方に向かって形成された板状部材からなる。
【0070】
バッフル15は、底部11aに対向して設けられている被覆部15bを有する。被覆部15bは、立設部15aの鉛直方向の上端から流出口16の上端にかけて底部11aを覆うように形成されている板状部材である。すなわち、被覆部15bは、立設部15aの上部に配置されている。
【0071】
バッフル15は、流出口16から攪拌槽11の壁部11bによって囲まれた空間を臨む視野において、静止翼13が含まれないように設けられていることが好ましい。
【0072】
バッフル15は、旋回流の一部が流出口16に向かうように変換する。具体的には、攪拌槽11の下方の旋回流の径方向の外側の一部は、バッフル15に進入する。バッフル15に進入した旋回流は、立設部15aに当たると進行方向が変更される。立設部15aに当たった旋回流は、流出口16に向かうように進行する。
【0073】
また、バッフル15に進入した旋回流は、被覆部15bに当たると攪拌槽11の底部11aに向かって進行する。その結果、バッフル15に進入した旋回流は、全体として流出口16に向かうように進行する。
【0074】
このようにバッフル15の立設部15aは、旋回流の一部を流出口16に向かうように変換せしめる。言い換えれば、旋回流の一部は、立設部15aに衝突することにより進行方向が変更される。また、バッフル15の被覆部15bは、バッフル15に進入した旋回流が攪拌槽11の上方に進行することを抑制する。
【0075】
以上のように、本実施例に係る薬品混和池10によれば、静止翼13側に配置された流出口16は、回転翼12の回転によって発生する旋回流の流れに沿って水を流出させるように構成されている。
【0076】
すなわち、静止翼13側に配置された流出口16の開口部の内側に、バッフル15を設けることにより、旋回流を乱さないように水を流出させることができる。
【0077】
具体的には、第1の邪魔板である立設部15aによって水の流れが方向変換されると共に、第2の邪魔板である被覆部15bによって水の流れが上方に広がるのを抑制されるので、旋回流の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0078】
旋回流の乱れが抑制されることにより、底部11aから攪拌槽11の中心部を通って旋回しながら上昇する上昇流を効率よく発生させることができる。したがって、上昇流による攪拌効果、すなわち、攪拌槽11の上下方向の攪拌効果を高めることができる。
【0079】
尚、上記の実施例1及び実施例2の説明においては、静止翼13の近傍に設けられている流入口14又は流出口16にバッフル15が設けられているように説明した。しかし、バッフル15は、回転翼12の近傍に設けられている流入口14又は流出口16の両方に設けられていてもよい。
【実施例3】
【0080】
図6を参照して、実施例3に係る薬品混和池10について説明する。実施例3係る薬品混和池10は、回転翼12が攪拌槽11の底部11aに配置され、かつ静止翼13が攪拌槽11の上部に配置されている点で実施例1及び実施例2に係る薬品混和池10とは異なる。
【0081】
図6は、実施例3に係る薬品混和池10の平面図である。図中において、静止翼13は説明のため省略して記載している。また、図中の実線矢印は、旋回流の旋回方向を示している。二点鎖線の白抜き矢印は、水の流入方向を示している。実線の白抜き矢印は、水の流出方向を示している。
【0082】
図6に示すように、流入口14は、攪拌槽11の下部、すなわち一の壁部11bの底部11aの近傍に設けられている。流入口14は、壁部11bの壁面を垂直方向に貫通して形成されている開口部である。流入口14は、攪拌槽11の壁部11bにおいて幅方向に亘って形成されている。流入口14の攪拌槽11の上下方向の長さ、すなわち高さHは、特に限定されないが、例えば、水深に対して20~25%に形成されている。
【0083】
流出口16は、攪拌槽11の上部に設けられている。流出口16は、壁部11bの壁面を垂直方向に貫通して形成されている開口部である。流出口16の攪拌槽11の上下方向の長さ、すなわち高さHは、特に限定されないが、例えば、水深に対して20~25%に形成されている。
【0084】
回転翼12は、攪拌槽11の底部11aに設けられている。すなわち、回転翼12は、流入口14の近傍に設けられている。尚、静止翼13は、図には示されていないが攪拌槽11の上部であって、かつ流出口16が配されている位置よりも下方に設けられている。すなわち、静止翼13は、流出口16の近傍に設けられている。
【0085】
バッフル15は、流出口16に設けられている。バッフル15は、流出口16の内側、すなわち、攪拌槽11の壁部11bに囲まれた空間内に設けられている。
【0086】
バッフル15は、流出口16に対向して設けられている第1の邪魔板としての立設部15aを有する。立設部15aは、底部11aに対して垂直方向でかつ壁部11bの内面に対して斜めになるように配置された板状部材からなる。
【0087】
バッフル15は、更に底部11aに対向して設けられた被覆部15bを有する。被覆部15bは、立設部15aの鉛直方向の下端から流入口14の下端にかけて底部11aと平行に形成された板状部材からなる。すなわち、被覆部15bは、立設部15aの下部に配置されている。
【0088】
バッフル15は、旋回流の一部が流出口16に向かうように変換する。具体的には、攪拌槽11の上方の旋回流の径方向の外側の一部は、バッフル15に進入する。バッフル15に進入した旋回流は、立設部15aに当たると進行方向が変更される。立設部15aに当たった旋回流は、流出口16に向かうように進行する。
【0089】
また、バッフル15に進入した旋回流は、被覆部15bに当たると攪拌槽11の底部11aに対して離れる方向に向かって進行する。その結果、バッフル15に進入した旋回流は、全体として流出口16に向かうように進行する。
【0090】
このようにバッフル15の立設部15aは、旋回流の一部を流出口16に向かうように変換せしめる。言い換えれば、旋回流の一部は、立設部15aに衝突することにより進行方向が変更される。また、バッフル15の被覆部15bは、バッフル15に進入した旋回流が攪拌槽11の下方に進行することを抑制する。
【0091】
本図において、回転翼12の回転軸12aが平面視において時計回りに回転しているものとする。従って、旋回流は、平面視において右回り、すなわち時計回りに進行する。
【0092】
攪拌槽11の上方の旋回流は、静止翼13に当たる。静止翼13に当たった旋回流は、攪拌槽11の下側に向かって進行する下降流となる。
【0093】
下降流は、静止翼13から回転翼12に向かって攪拌槽11の中心部を通って蛇行しながら下降する。下降流は、回転翼12に達すると回転翼12の回転により、攪拌槽11の壁部11bの内周に沿って旋回しながら上昇する上昇流となる。
【0094】
以上のように、本実施例に係る薬品混和池10によれば、静止翼13側に配置された流出口16は、回転翼12の回転によって発生する旋回流の流れに沿って水を流出させるように構成されている。
【0095】
すなわち、静止翼13側に配置された流出口16の開口部の内側に、バッフル15を設けることにより、旋回流を乱さないように水を流出させることができる。
【0096】
具体的には、第1の邪魔板である立設部15aによって水の流れが方向変換されると共に、第2の邪魔板である被覆部15bによって水の流れが下方に広がるのを抑制されるので、旋回流の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0097】
旋回流の乱れが抑制されることにより、攪拌槽11の中心を通る下降流を効率よく発生させることができる。したがって、上昇流と下降流による攪拌効果、すなわち、攪拌槽11の上下方向の攪拌効果を高めることができる。
【実施例4】
【0098】
図7,8を参照して、実施例4に係る薬品混和池10について説明する。実施例4に係る薬品混和池10は、バッフル15を有しない点で実施例1乃至3に係る薬品混和池10とは異なる。その余の構成については、実施例1乃至3に係る薬品混和池10と同一であるので、説明を省略する。
【0099】
図7は、実施例4に係る薬品混和池10の斜視図である。尚、図中の白抜き矢印は、薬品混和池10に流入する水が流れる方向を示している。また、図中の実線矢印は、薬品混和池10の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。
【0100】
図7に示すように、流入口14は、攪拌槽11の互いに隣接する一対の壁部11bが角度を成す位置、すなわち攪拌槽11の隅部に設けられている。
【0101】
流入口14は、流入口14から攪拌槽11に流入した水が直接的に静止翼13に接触しないように配置されている。すなわち、静止翼13は、流入口14から攪拌槽11の後方に向かう延長上を避けるように設けられている。言い換えれば、静止翼13は、流入口14から当該流入口14が形成されている一の壁部11bと対向する他の壁部11bに向かう延長上を避けるように設けられている。
【0102】
流入口14の攪拌槽11の左右方向の長さ、すなわち幅Wは、静止翼13の大きさに応じて決定される。例えば、攪拌槽11の壁部11bの左右方向の長さを基準にした際の静止翼13の同方向の長さが40%である場合、流入口14の幅Wは、同基準の30%以下とするとよい。
【0103】
本実施例においては、静止翼13の壁部11bの左右方向の長さを40%とし、流入口14の幅Wを幅W2の25%としている。流入口14の攪拌槽11の上下方向の長さ、すなわち高さHは、特に限定されないが、例えば、水深に対して20~25%に形成されている。
【0104】
図8は、実施例4に係る薬品混和池10の平面図である。図中において、回転翼12は説明のため省略して記載している。尚、図中の実線矢印は、旋回流の旋回方向を示している。二点鎖線の白抜き矢印は、水の流入方向を示している。実線の白抜き矢印は、水の流出方向を示している。
【0105】
図8において、攪拌槽11は、平面的に見て、すなわち水平面において矩形状をなしている。上述のように本実施例においては、回転翼12の回転軸12aが平面視において時計回りに回転しているものとする。従って、旋回流は、平面視において右回り、すなわち時計回りに進行する。
【0106】
図8に示すように、流入口14から流入した水は、旋回流の流れ方向に沿って攪拌槽11に流入される。すなわち、流入口14から流入した水は、旋回流の接線となる方向であり、かつ旋回流の旋回方向に対して順方向に流入される。
【0107】
例えば、破線矢印で示される、(1)乃至(4)は、攪拌槽11の平面視の形状である矩形状の一辺の隅部に位置する。これらの(1)~(4)の位置から水が流入される場合、流入する水は、平面視において時計回りの方向に向かって進行するため、旋回流の流れに沿って進行する。流入口14は、これらの(1)~(4)の位置に設けられるとよい。
【0108】
また、破線矢印で示される、(5)乃至(8)は、攪拌槽11の平面視の形状である矩形状の一辺の隅部に位置する。これらの(5)乃至(8)の位置から水が流入される場合、流入する水は、平面視において反時計回りの方向に向かって進行するため、旋回流の流れとは衝突する方向に進行する。このため、旋回流は、流入口14から流入する水によって弱められる。従って、流入口14は、これらの(5)~(8)の位置を避けた位置に設けられるとよい。
【0109】
このように、流入口14は、静止翼13側に配置された流入口14を、旋回流の流れに沿って水が流入するように、攪拌槽11の平面視の形状である矩形状の一辺の隅部に形成されている。従って、流入口14は、攪拌槽11に流入する水の流れ方向を制御する流れ方向制御手段として機能する。
【0110】
言い換えれば、流れ方向制御手段は、静止翼13側に配置された流入口14を、旋回流の流れに沿って水が流入するように、矩形状の一辺の隅部に形成された開口部で構成されている。
【0111】
以上のように、本実施例に係る薬品混和池10によれば、静止翼13側に配置された流入口14は、回転翼12の回転によって発生する旋回流の流れに沿って水を流入させるように構成されている。
【0112】
すなわち、静止翼13側に配置された流入口14の開口部を、旋回流の流れに沿って水が流入するように、矩形状の一辺の隅部に設けることにより、旋回流を乱さないように水を流入させることができる。したがって、旋回流の乱れを抑制することが可能となり、旋回流による攪拌効果を高めることが可能となる。
【0113】
また、旋回流の乱れが抑制されることにより、上昇流を効率よく発生させることができる。したがって、上昇流による攪拌効果、すなわち、攪拌槽11の上下方向の攪拌効果を高めることができる。
【0114】
尚、本実施例においては、流入口14が攪拌槽11の下部に設けられ、かつ流出口16が攪拌槽11の上部に設けられているように説明した。しかし、流入口14が攪拌槽11の上部に設けられ、かつ流出口16が攪拌槽11の下部に設けられているようにしてもよい。
【0115】
このように薬品混和池10を構成しても、旋回流の乱れが抑制されることにより、攪拌槽11の中心を通る上昇流を効率よく発生させることができる。したがって、上昇流と下降流による攪拌効果、すなわち、攪拌槽11の上下方向の攪拌効果を高めることができる。
【実施例5】
【0116】
図9を参照して、実施例5に係る薬品混和池10について説明する。実施例5に係る薬品混和池10は、攪拌槽11の形状が実施例4に係る薬品混和池10と異なる。その余の点は実施例4に係る薬品混和池10と同一であるので説明を省略する。
【0117】
図9は、実施例5に係る薬品混和池10の平面図である。図中において、回転翼12は説明のため省略して記載している。尚、図中の実線矢印は、旋回流の旋回方向を示している。二点鎖線の白抜き矢印は、水の流入方向を示している。実線の白抜き矢印は、水の流出方向を示している。
【0118】
図9に示すように、攪拌槽11は、平面的に見て、すなわち水平面において円形状をなしている。攪拌層11は、円形状に形成されている板状の底部11a及び底部11aを囲むように筒状に形成されている壁部11bを有する。すなわち、攪拌槽11は、円筒状に形成されている。尚、静止翼13は、攪拌槽11の底部11aに配置されている。
【0119】
流入口14は、攪拌槽11の下部、すなわち壁部11bの底部11aの近傍に設けられている。流入口14は、壁部11bの壁面の一部を貫通して形成されている開口部である。
【0120】
流入口14は、攪拌槽11の円形状の接線方向に形成されている。流入口14は、流入口14から流入した水が旋回流の流れに沿って水が流入するように形成されている。
【0121】
流入口14は、流入口14から攪拌槽11に流入した水が直接的に静止翼13に接触しないように配置されている。静止翼13は、流入口14から当該流入口14が形成されている一の壁部11bと対向する他の壁部11bに向かう延長上を避けるように設けられている。
【0122】
流入口14は、例えば、回転軸12aが平面視において時計回りに回転する場合、攪拌槽11に流入した水が平面視において時計回りに進行するように設けられている。
【0123】
言い換えれば、流れ方向制御手段としての流入口14は、静止翼13側に配置され、旋回流の流れに沿って水が流入するように、攪拌槽11の円形状の接線方向に形成されている。
【0124】
流出口16は、攪拌槽11の上部、すなわち壁部11bの上側に設けられている。流出口16は、壁部11bの一部を切り欠いて堰状に形成されている。流出口16は、攪拌槽11の円形状の接線方向に延びて形成されている。流出口16は、旋回流の流れに沿って水が流出するように形成されている。
【0125】
流れ方向制御手段としての流出口16は、回転翼12側に配置され、旋回流の流れに沿って水が流出するように、攪拌槽11の円形状の接線方向に形成されている。すなわち、流れ方向制御手段は、回転翼12側に配置された流出口16を、旋回流の流れに沿って水が流出するように形成された開口部で構成されている。
【0126】
以上のように、本実施例に係る薬品混和池10によれば、静止翼13側に配置された流入口14は、回転翼12によって形成される旋回流の流れに沿って水を流入させるように構成されているので、旋回流の乱れを抑制して、攪拌効果を高めることができる。
【0127】
さらに、流出口16は、旋回流の流れに沿って水が流出するように、円形状の接線方向に形成されていることにより、旋回流を乱さないように水を流出させることができる。
【0128】
尚、上述の実施例において、静止翼13の4枚のブレード13aは、攪拌槽11の底面の中心CRを囲うように互いに90度ずつ離間して配されている旨を説明した。
【0129】
静止翼13のラジアルブレード13aの枚数や配置は、適宜変更して実施することができる。例えば、図10に示されるように、攪拌槽11の中心軸を中心として放射状に配置された4枚の平板から構成されるブレード13bを用いることができる。ブレード13bの放射状配置の中心CRは、ブレード13bによって整流された水流が合流する合流点になっている。
【0130】
また、図11に示されるように、湾曲した板状のブレード13cを用いて、水流をスムーズに導くこともできる。合流点に集められた水流は、流れ方向を変えて上昇流となる。
【0131】
尚、本実施例においては、流れ制御手段を流入口14及び流出口16の両方に設けた。しかし、流れ制御手段は、流入口14及び流出口16のうち静止翼13からみて近位側に設けられているいずれか一方に設けられていればよい。
【0132】
また、上述の実施例においては、薬品混和池10に適用される例を説明したが、これには限られず、例えば、下水処理システムに用いられるようにしてもよい。
[薬品混和池における旋回流及び上昇流のシミュレーション]
以上で説明した薬品混和池10をモデル1とし、従来の薬品混和池をモデル2として、それぞれの水の旋回流及び上昇流についてシミュレーションを行った。すなわち、モデル1の薬品混和池は、実施例1の薬品混和池10と同一の構成を有するものとした。また、モデル2の薬品混和池は、実施例1の薬品混和池10とはバッフル15を有していない点で異なる。また、モデル2の薬品混和池は、モデル1の薬品混和池と攪拌槽11の容量が異なるが、その他の構成はモデル1と同一である。
【0133】
シミュレーションの条件は、以下のように設定した。
【0134】

共通条件:
CFD(Computational Fluid Dynamics)条件
定常解析
乱流モデル:Realizable k-ε
ソフト:Ansys Fluent(ver.19)

モデル1:
攪拌槽11のサイズ:3500mm×3500mm×4500mm
攪拌槽11の容量:55.1m
液物性
密度(ρ)=999.96 kg/m3
粘度(μ)=0.00152 Pa・s

モデル2:
攪拌槽11のサイズ:3500mm×3500mm×6500mm
攪拌槽11の容量:76.3m
液物性
密度(ρ)=999.96 kg/m3
粘度(μ)=0.00152 Pa・s

図12は、モデル1の薬品混和池に係る上記のシミュレーション結果を示す流線図である。図12に示すように、攪拌槽11に流入した水は、旋回流と合流する。その結果、図12においては、旋回流が色濃く表れている。
【0135】
さらに、旋回流は、静止翼13に当たることで、静止翼13から回転翼12に向かう上昇流となる。図12においては、上昇流も色濃くなっており、攪拌槽11の攪拌が良好に行われていることが示されている。
【0136】
図13は、モデル2の薬品混和池に係る上記のシミュレーション結果を示す流線図である。図13の旋回流は、図12と比較すると明確な流れとなっていない。これは、流入口14から流入した水が旋回流の流れの妨げとなっていると考えられる。
【0137】
また、上昇流も一部で確認することができるが図5の上昇流と比べると狭い範囲となっている。これは、旋回流の流れが乱されることにより上昇流の範囲が狭くなったと考えられる。さらに、図13の右上から流出口16から多くの水が流出していることが確認できる。
【0138】
このように、図13に示される流線図は、図12の流線図と比べて、旋回流及び上昇流が減少し、かつ攪拌槽11から流出する水の量が多くなっている。以上により、モデル1の薬品混和池は、モデル2の薬品混和池よりも攪拌効率が高いことが言える。
【符号の説明】
【0139】
100 浄水システム
10 薬品混和池
11 攪拌槽
12 回転翼
13 静止翼
14 流入口
15 バッフル
16 流出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13