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特許7307919インターロイキン-2のスーパーアンタゴニスト、パーシャルアゴニスト及びアンタゴニスト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】インターロイキン-2のスーパーアンタゴニスト、パーシャルアゴニスト及びアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/55 20060101AFI20230706BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230706BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230706BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
A61K38/20
A61P31/12
A61P35/02
A61P37/02
C07K19/00
C12N15/26
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019172064
(22)【出願日】2019-09-20
(62)【分割の表示】P 2017507931の分割
【原出願日】2015-04-24
(65)【公開番号】P2020023506
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】61/983,973
(32)【優先日】2014-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】516316750
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシズ,オフィス オブ テクノロジー トランスファー,ナショナル インスティチューツ オブ ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ケー.,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,スマン
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド,ウォーレン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リング,アーロン,エム.
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502967(JP,A)
【文献】特表2012-515778(JP,A)
【文献】特表2013-512200(JP,A)
【文献】特表2005-511707(JP,A)
【文献】特許第6592505(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/042707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-90
C07K1/00-19/00
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ヒトIL-2(hIL-2)と比較して、L18R、Q22E、Q126T、及びS130Rのアミノ酸置換を有し、野生型hIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和性がより大きく、IL-2Rγc受容体に対する結合親和性がより小さい、IL-2ムテイン(但し、L18R、Q22E、L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rのアミノ酸置換を有するIL-2ムテインを除く)。
【請求項2】
野生型hIL-2と比較して、Q74N、Q74H、Q74S、L80F、L80V、R81D、R81T、L85V、I86V、I89V、及びI92Fから成る群より選択される1つ以上のアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項3】
野生型hIL-2と比較して、
L80F及びL80Vから成る群より選択されるアミノ酸置換;
R81D及びR81Tから成る群より選択されるアミノ酸置換;並びに、
L85V、I86V及びI92Fのアミノ酸置換;
を含む、請求項2に記載のIL-2ムテイン。
【請求項4】
野生型hIL-2と比較して、Q74N及びI89Vのアミノ酸置換を含む、請求項3に記載のIL-2ムテイン。
【請求項5】
野生型hIL-2と比較して、Q74N、L80V、R81T、L85V、I86V及びI92Fのアミノ酸置換を含む、請求項に記載のIL-2ムテイン。
【請求項6】
野生型hIL-2と比較して、Q74Hアミノ酸置換を含む、請求項に記載のIL-2ムテイン。
【請求項7】
野生型hIL-2と比較して、Q74Sアミノ酸置換を含む、請求項に記載のIL-2ムテイン。
【請求項8】
野生型hIL-2と比較して、Q74Nアミノ酸置換を含む、請求項に記載のIL-2ムテイン。
【請求項9】
野生型hIL-2と比較して、Q74S、R81T、L85V、及びI92Fのアミノ酸置換を含む、請求項に記載のIL-2ムテイン。
【請求項10】
IL-2Rβ+T細胞におけるSTAT5リン酸化を刺激する能力が、野生型hIL-2と比較して、低減している、請求項1~のいずれかに記載のIL-2ムテイン。
【請求項11】
前記T細胞が、CD8+T細胞である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項12】
IL-2Rβ+細胞におけるpERK1/ERK2シグナル伝達を刺激する能力が、野生型hIL-2と比較して、低減している、請求項1~のいずれかに記載のIL-2ムテイン。
【請求項13】
IL-2及び/またはIL-15アンタゴニストである、請求項1~1のいずれかに記載のIL-2ムテイン。
【請求項14】
CD8+T細胞におけるIL-2及び/またはIL-15 STAT5リン酸化の阻害剤である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項15】
CD8+T細胞のIL-2及び/またはIL-15誘導性増殖の阻害剤である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項16】
IL-2依存性TCR誘導性細胞増殖の阻害剤である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項17】
IL-2依存性Th1、Th9、及び/またはTreg分化の阻害剤である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項18】
Th17分化のプロモーターである、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項19】
NK細胞のIL-2依存性活性化の阻害剤である、請求項1に記載のIL-2ムテイン。
【請求項20】
ヒトFc抗体フラグメントに連結した請求項1~19のいずれかに記載のIL-2ムテインを含む、IL-2ムテイン融合タンパク質。
【請求項21】
請求項1~19のいずれかに記載のIL-2ムテイン、または、請求項2に記載のIL-2ムテイン融合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項22】
移植片対宿主病(GVHD)の治療用である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
成人T細胞白血病の治療用である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~19のいずれかに記載のIL-2ムテイン及び異種ポリペプチドを含む、IL-2ムテイン融合タンパク質。
【請求項25】
請求項1~19のいずれかに記載のIL-2ムテイン及びアルブミンを含む、IL-2ムテイン融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、National Institutes of Healthにより授与
された助成金番号第AI051321号及び同第DK094541号のもとに、米国政府
の支援で行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-2(IL-2)は、正常な免疫応答をもたらすことにおいて重要な
役割を果たす、活性化CD4T細胞により主に産生される多能性サイトカインである。
IL-2は、活性化Tリンパ球の増殖及び拡張を促進し、B細胞の成長を強化し、単球及
びナチュラルキラー細胞を活性化する。IL-2が試験され、癌の承認治療薬(アルデス
ロイキン、Proleukin(登録商標))として使用されることは、これらの活性の
おかげである。
【0003】
真核細胞において、ヒトIL-2は、153アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成
され、これから20アミノ酸が除去されて、成熟分泌型IL-2を生じる(Tanigu
chi 1983)。組換えヒトIL-2は、E.coli(Rosenberg 19
84)、昆虫細胞(Smith 1985)、及び哺乳類のCOS細胞(Taniguc
hi 1983)で産生されている。
【0004】
インターロイキン-2(IL-2)は、T細胞の成長因子として最初に同定され(Mo
rgan et al.,Science 193: 1007 (1976))、その
後、幅広い作用を有することが示された、4つのαヘリックスバンドルI型サイトカイン
である。IL-2は、Tヘルパーの分化(Zhu et al.,Annual rev
iew of immunology 28:445(2010);Liao et a
l.,Nat Immunol 9:1288(2008);及びLiao et al
.,Nat Immunol 12:551 (2011))、ならびに、制御性T(T
reg)細胞の成長(Cheng et al.,Immunol Rev 241:6
3(2011))を促進し、ナチュラルキラー及びリンホカイン活性化キラー活性を誘導
し(Liao et al.,Immunity 38:13(2013))、活性化誘
導細胞死(AICD)を媒介する(Lenardo et al., Nature 3
53:858(1991))。
【0005】
IL-2は、3つの異なる受容体:インターロイキン-2受容体α(IL-2Rα;C
D25)、インターロイキン-2受容体β(IL-2Rβ;CD122)、及びインター
ロイキン-2受容体γ(IL-2Rγ;CD132;共通γ鎖)と相互作用することによ
り機能する。同定される最初の受容体は、IL-2Rαであった。これは、T細胞活性化
の際に現れ、元々(T活性化(T activation)の代わりに)Tac抗原と呼
ばれていた、55kDポリペプチド(p55)である。IL-2Rαは、約10-8Mの
で、IL-2と結合し、「低親和性」IL-2受容体としても知られている。IL-
2の、IL-2Rαのみを発現する細胞への結合は、任意の検出可能な生物学的応答をも
たらさない。
【0006】
IL-2は、IL-2Rβ及び共通サイトカイン受容体γ鎖であるγ(IL-2Rγ
)からなる休止T細胞及びNK細胞上の中程度の親和性受容体(K約10-9M)を介
して、または、IL-2Rα(CD25)をさらに発現する活性化リンパ球及びTreg
細胞上の高親和性受容体(K約10-11M)を介して、シグナルを出す(Lenar
do et al.,Nature 353:858(1991)、及びYuan et
al.,Immunol Rev 259:103(2014))。γが、IL-4
、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21の受容体により共有され(Leon
ard et al.,Nature Reviews Immunology 1:2
00(2001))、X連鎖重症複合免疫不全症に罹患しているヒトにおいて変異した遺
伝子によりコードされる(Noguchi et al.,Cell 73:147(A
pr 9,1993))が、IL-2Rβは、IL-15の受容体により共有され(Wa
ldmann,Nature Reviews Immunology 6:595(2
006))、IL-15は、NK細胞及びメモリーCD8T細胞の正常な成長のために
重要であるサイトカインである(Waldmann,Nature Reviews I
mmunology 6:595(2006))。
【0007】
受容体と結合されたIL-2及びIL-15の3次元構造は、受容体アセンブリ及びシ
グナル伝達に洞察を加える(Wang et al.,Science 310:115
9 (2005)、及びRing et al.,Nat Immunol 13:11
87(2012))。正常な免疫応答における生理学的役割に加えて、IL-2及びIL
-15は、病理学的応答を促進することができ、治療の目的は、不適当な自己免疫または
免疫抑制応答を遮断しながら、これらのサイトカインの所望の作用を維持することである
。ヒトIL-2Rαに対する2つのモノクローナル抗体(mAb)であるダクリズマブ及
びバシリキシマブは、FDAにより承認されおり、腎移植の拒絶反応(Vincenti
et al.,N Engl J Med 338:161(1998))、心臓移植
(Hershberger et al.,N Engl J Med 352:270
5(2005))、多発性硬化症(Gold et al.,Lancet 381:2
167(2013))、ならびに、ぜんそく(Bielekova et al.,Pr
oc Natl Acad Sci USA 101:8705(2004);及びBu
sse et al.,Am J Respir Crit Care Med 178
:1002(2008))における有効性を示すが、それらは、NK細胞及びメモリーC
D8細胞上に発現された中程度の親和性IL-2Rβ-γ受容体を介するIL-2シ
グナル伝達を遮断せず、IL-15シグナル伝達を遮断できない(Tkaczuk et
al., Am J Transplant 2:31(2002))。抗ヒトIL-
2Rβ mAb Mikβ1が、IL-2及びIL-15の、IL-2Rβ-γ受容体
を発現する細胞へのトランス提示を遮断できる(Morris et al.,Proc
Natl Acad Sci USA 103:401(2006))が、それは、高
親和性ヘテロ三量体受容体複合体を介する、IL-2またはIL-15によるシスシグナ
ル伝達を遮断することにおいて比較的効果がない(Morris et al.,Pro
c Natl Acad Sci USA 103:401(2006)、及びWald
mann et al.,Blood 121:476(2013))。そのため、1つ
以上のIL-2及び/またはIL-15の機能を遮断できる新しいIL-2ムテインが必
要である。本開示はIL-2パーシャルアゴニスト及びアンタゴニストとして機能する新
規IL-2ムテインを提供する。
【発明の概要】
【0008】
IL-2は、免疫系に広範な効果を発揮し、免疫活性化及び免疫恒常性の両方を制御す
ることにおいて重要な役割を果たす。免疫系刺激物質として、IL-2は、癌及び慢性ウ
イルス感染の治療における使用を見出されている。IL-2の刺激作用は、混乱も引き起
こして、自己免疫及び移植拒絶を媒介する可能性がある。免疫制御及び免疫疾患における
有益な役割のために、IL-2パーシャルアゴニスト及びアンタゴニストなどの新しいI
L-2分子の同定は、依然として活発な研究領域である。
【0009】
IL-2がその同種受容体と、どのように相互作用するかの新たな洞察に基づいた新規
IL-2組成物が、本明細書で提供される。ほとんどの状況では、IL-2は、3つの異
なる受容体:IL-2Rα、IL-2Rβ、及びIL-2Rγを介して機能する。休止T
細胞などのほとんどの細胞は、IL-2に対し低親和性を有するIL-2Rβ、及びIL
-2Rγしか発現しないので、IL-2に応答しない。刺激の際に、休止T細胞は、比較
的高親和性のIL-2受容体であるIL-2Rαを発現する。IL-2のIL-2Rαへ
の結合は、この受容体をIL-2Rβ及びIL-2Rγに逐次的に関与させ、T細胞の活
性化をもたらす。
【0010】
IL-2Rβに対する結合親和性の強化により、作用が増大するIL-2「スーパーカ
イン」は、以前に開発された(Levin et al.,Nature 484:52
9(2012))。この高親和性スーパーカイン/IL-2Rβ複合体が、内因性のシグ
ナル伝達を遮断する「受容体シグナル伝達クランプ」を生成するドミナントネガティブな
スカフォールドとして役立つことができると仮定された。IL-2Rγへの結合を減少
させる、これらのスーパーIL-2の「完全アゴニスト」の定方向変異は、IL-2Rβ
-γのヘテロ二量化を減弱させ、内因性サイトカインを遮断し、それら自身の作用を発
揮しないことによりアンタゴニストとして機能的に作用する、作用機序に基づいたIL-
2パーシャルアゴニスト及び非シグナル伝達(ニュートラル)分子の新しいクラスを代表
するであろう(図1の概略図を参照のこと)。
【0011】
新規ヒトインターロイキン-2(IL-2)ムテインまたはその多様体が、本明細書で
提供される。特に、IL-2Rβ受容体に対する結合能力が増加し、IL-2Rγ受容
体への結合能力が減少したIL-2ムテインが提供される。このようなIL-2ムテイン
は、例えば、1つ以上のIL-2及び/またはIL-15の機能の減少または阻害が、(
例えば、移植片対宿主病(GVHD)及び成人T細胞白血病の治療において)有用である
用途におけるIL-2パーシャルアゴニスト及びアンタゴニストとしての使用を見出す。
このようなIL-2ムテインをコードする核酸、このようなIL-2ムテインの作成方法
、このようなIL-2ムテインを含む医薬組成物、及びこのようなIL-2ムテインを使
用する治療法も提供される。
【0012】
一態様では、野生型ヒトIL-2(hIL-2)と比較して、IL-2Rβに対する結
合親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さいIL-2
ムテインが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、IL-2ムテインは、(a)
IL-2Rβ結合親和性を増加させ、野生型hIL-2に従って番号付けされたアミノ酸
位置24、65、74、80、81、85、86、89、92、及び/または93から選
択される1つ以上のアミノ酸置換;及び、(b)IL-2Rγ受容体の結合親和性を減
少させ、野生型hIL-2に従って番号付けされたアミノ酸位置18、22、126、及
び/または130から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0013】
種々の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74N
、Q74H、Q74S、L80F、L80V、R81D、R81T、L85V、I86V
、I89V、及び/若しくはI93、またはそれらの組み合わせを含む。ある特定の実施
形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、L80F、R81D、
L85V、I86V、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和
性を増加させるアミノ酸置換は、N74Q、L80F、R81D、L85V、I86V、
I89V、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加さ
せるアミノ酸置換は、Q74N、L80V、R81T、L85V、I86V、及びI92
Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換
は、Q74H、L80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む。一部の
実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74S、L80
F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、I
L-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74N、L80F、R81D、L
85V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2Rβ結合親
和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74S、R81T、L85V、及びI92Fを含む
【0014】
一部の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は
、アミノ酸置換L18R、Q22E、A126T、及び/若しくはS130R、またはそ
れらの組み合わせを含む。具体的な実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を
減少させるアミノ酸置換は、Q126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2Rγ
受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は、L18R及びQ22Eを含む。一部
の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は、L1
8R、Q22E、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2Rγ受容
体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は、L18R、Q22E、Q126T、及びS
130Rを含む。
【0015】
一実施形態では、IL-2ムテインが、アミノ酸置換L80F、R81D、L85V、
I86V、I92F、及びQ126Tを含む、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2
Rβに対する結合親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより
小さいIL-2ムテイン。
【0016】
一実施形態では、IL-2ムテインが、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、
R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む、野生型ヒトIL-2と比較して、
IL-2Rβに対する結合親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和
性がより小さいIL-2ムテイン。
【0017】
一実施形態では、IL-2ムテインが、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、
R81D、L85V、I86V、Q126T、及びI92Fを含む、野生型ヒトIL-2
と比較して、IL-2Rβに対する結合親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対
する結合親和性がより小さいIL-2ムテイン。
【0018】
一実施形態では、IL-2ムテインが、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、
R81D、L85V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む、野生型
ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和性がより大きく、IL-2Rγ
受容体に対する結合親和性がより小さいIL-2ムテイン。
【0019】
ある特定の実施形態では、主題のIL-2ムテインは、野生型hIL-2と比較して、
IL-2Rβ+T細胞においてSTAT5リン酸化を刺激する能力が低減している。一部
の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0020】
一部の実施形態では、主題のIL-2ムテインの、IL-2Rβ+細胞におけるpER
K1/ERK2シグナル伝達を刺激する能力が、野生型hIL-2と比較して、低減して
いる。
【0021】
ある特定の実施形態では、主題のIL-2ムテインは、IL-2及び/またはIL-1
5アンタゴニストである。一部の実施形態では、IL-2ムテインは、CD8+T細胞に
おけるIL-2及び/またはIL-15 STAT5リン酸化の阻害剤である。一部の実
施形態では、IL-2ムテインは、CD8+T細胞のIL-2及び/またはIL-15誘
導性増殖の阻害剤である。一部の実施形態では、IL-2ムテインは、IL-2依存性T
CR誘導性細胞増殖の阻害剤である。一実施形態では、IL-2ムテインは、IL-2依
存性Th1、Th9、及び/またはTreg分化の阻害剤である。ある特定の実施形態で
は、IL-2ムテインは、Th17分化のプロモーターである。一部の実施形態では、ム
テインは、NK細胞のIL-2依存性活性化の阻害剤である。
【0022】
別の態様では、ヒトFc抗体フラグメントに連結された、本明細書に記載されるIL-
ムテインのいずれか1つを含む、IL-2ムテイン融合タンパク質が、本明細書で提供さ
れる。
【0023】
別の態様では、本明細書に記載されるIL-2ムテインまたはIL-2ムテイン融合タ
ンパク質のいずれか1つ、及び、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が、本明細書
で提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、アミノ酸置換L18R、Q22E、
L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを有
するIL-2ムテインを含む。
【0024】
さらに別の態様では、移植片対宿主病(GVHD)に罹患している対象の治療方法が、
本明細書で提供される。種々の実施形態では、方法は、本明細書で開示されるIL-2ム
テインのいずれか1つを含む治療的有効量の医薬組成物を、対象に投与することを含む。
一部の実施形態では、医薬組成物は、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R8
1D、L85V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを有するIL-2ム
テインを含む。
【0025】
別の態様では、成人T細胞白血病に罹患している対象の治療方法が、本明細書で提供さ
れる。ある特定の実施形態では、方法は、本明細書で開示されるIL-2ムテインのいず
れか1つを含む治療的有効量の医薬組成物を、対象に投与することを含む。一部の実施形
態では、医薬組成物は、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを有するIL-2ムテインを含む
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本明細書で提供される主題のIL-2ムテインを産生するための概略図を示す。左では、IL-2において、緑色の領域は、IL-2Rβへの高親和性結合を有するH9「スーパーIL-2」を生じ、それにより、内因性IL-2の結合を遮断する、以前に報告された変化を示す。赤色の円は、IL-2Rγへの結合及びIL-2Rβ-γヘテロ二量化を減少させるIL-2の変化を示す。右では、IL-2Rγ結合の妨害のレベルに応じて、異なるレベルの活性及び機能が、示されるように生成されるべきである。
図2】本明細書に記載されるようなIL-2ムテインライブラリのFACSプロファイルを示す。ヒトIL-2遺伝子のエラープローンPCRの産物を選択にかけた。第1世代IL-2ライブラリを、6回の選択を通して作成した。IL-2ムテイン(A)を発現する酵母を結合するフィコエリトリン(PE)に連結された四量体のIL-2Rβを使用して、第1回を実施した。PEで標識された単量体のIL-2Rβを使用して、後続の回の選択を達成した。(B)第2世代IL-2ライブラリからの結果。
図3】野生型IL-2配列と比較して示された、高親和性IL-2Rβ結合を有するIL-2ムテイン中の変更されたアミノ酸残基を示す。各ムテイン及びIL-2のIL-2Rβに対する結合親和性も示される。
図4】CD25及びCD25ナチュラルキラー(NK)細胞における、IL-2Rβへの高親和性結合を有するIL-2ムテインの刺激効果を示す。STAT5リン酸化における野生型IL-2及びIL-2ムテイン6-6、D10、ならびにH9の用量-反応関係は、処理された(A)CD25及び(B)CD25YT-1 NK細胞で見られた。円は野生型IL-2であり、四角は、6-6であり、上向き三角は、H9であり、下向き三角は、D10である。
図5】IL-2ムテイン結合のCD25独立性を示す。CD25及びCD25YT-1 NK細胞に対するSTAT5リン酸化の用量-反応曲線。(A)IL-2及びIL-2(F42A)(円、実線は野生型IL-2、CD25+細胞);四角、実線はIL-2 F42A、CD25+細胞;上向き三角、破線は野生型IL-2、CD25-細胞;下向き三角、破線はIL-2 F42A、CD25-細胞である。)(B)H9及びH9(F42A)(円、実線は野生型H9、CD25+細胞);四角、実線はH9 F42A、CD25+細胞;上向き三角、破線はH9、CD25-細胞;下向き三角、破線はH9 F42A、CD25-細胞である。)F42A変異は、CD25細胞上の、野生型IL-2の用量-反応曲線を右シフトするが、CD25上の観察可能な効果はなく、H9及びH9 F42Aに対する用量-反応曲線は、CD25発現にかかわらず、実質的に重なり合っていた。
図6】IL-2Rαの不存在下で、いくつかのIL-2ムテイン「スーパーアゴニスト」(すなわち、IL-2Rβへの高親和性結合を有するムテイン)のT細胞を刺激する能力を示す。CD25ノックアウトマウスから単離されたT細胞を、IL-2ムテインまたは野生型IL-2で刺激した。IL-2ムテインの用量-反応曲線及びそれぞれのEC50が提示される。示されるように、被験IL-2ムテインの全ては、野生型IL-2と比較して、IL-2Rαの不存在下で、T細胞刺激の相対的な増加をもたらした。
図7】IL-2ムテイン「スーパーアゴニスト」の、経験のあるT細胞刺激を誘導する相対的な能力を比較するFACS解析である。T細胞を、2つの濃度(10ng/mlまたは1ng/ml)のIL-2ムテインまたは野生型IL-2で刺激した。刺激されたT細胞の百分率を、各FACSプロファイルに示す。
図8】ナチュラルキラー(NK)細胞機能におけるIL-2「スーパーアゴニスト」ムテインD10の効果、具体的には、自発的及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を示す。ナチュラルキラー細胞(エフェクター)及びCr51で標識された腫瘍細胞(標的)を、抗EGFR抗体であるセツキシマブを用いてまたは用いずに、野生型IL-2またはIL-2ムテインD10の存在下で5時間、一緒にインキュベーションした。NK細胞の自発的細胞傷害のD10による刺激は、IL-2またはD10による刺激なしの、最小限の自発的細胞傷害を有する、高用量のIL-2(p=0.008、**p=0.001)を上回った。さらに、D10の添加により、セツキシマブ抗体のADCCが強化された。
図9】D10の結晶構造を示す。初期疎水性コア変異のL85Vにより、複数の疎水性コア残基及び高親和性コンセンサス配列を標的とする第2世代のIL-2ライブラリがもたらされた。D10の結晶構造は、ヘリックスCの前のループ領域に、明確な電子密度を含んだ。
図10】IL-2Rβへの高親和性結合を有するIL-2「スーパーアゴニスト」ムテインは、IL-2と比較して、CD8T細胞の刺激の強化を示すが、Tregsの刺激の強化は示さない。(A)宿主CD3CD8CD44highメモリー表現型(MP)T細胞の全細胞数、及び、(B)宿主CD3CD4CD25highT細胞(制御性T細胞)を、PBS、20μgのIL-2、20μgのH9、または1.5μgのIL-2/抗IL-2モノクローナル抗体複合体(IL-2/mAb)のいずれかを投与されているマウスの脾臓で測定した。
図11】IL-2Rβへの高親和性結合を有するIL-2ムテインアゴニストは、IL-2と比較して、有害な影響の減少した抗腫瘍応答の強化を示す。肺浮腫(肺の湿潤重量)は、IL-2治療の後の有害な毒性影響の尺度として役立ち、乾燥前後に肺を計量することにより決定された(A)。P値は、治療法間の比較を指す。、p<0.05、**、p<0.01。(B)B16F10黒色腫細胞を使用して、IL-2ムテインの抗腫瘍特性をインビボで試験した。C57Bl/6マウス(n=3~4マウス/群)に、106個のB16F10黒色腫細胞を皮下注入し、続いて、腫瘍結節が、通常は腫瘍細胞注射後の4~5日または約15mmの腫瘍サイズに相当する、可視及び触知可能になった後に、5日間PBS、20μgのIL-2、20μgのH9、または1.5μgのIL-2/抗IL-2モノクローナル抗体複合体(IL-2/mAb)のいずれかを毎日注射した。mm単位の平均腫瘍面積(±SD)対腫瘍接種時からの時間が示される。P値は、IL-2の他の治療法との比較を指す。
図12】γ結合を妨害することによる、作用機序に基づいたIL-2ムテインの生成を示す。(A)H9-IL-2Rβ-γ複合体の構造(H9は緑色;IL-2Rβは青色;γは金色である)。IL-2のγとの相互作用を阻害するために、H9-RETRに組み込まれる変異(L18R、Q22E、Q126T、及びS130R)が、藍色で示される(パネルの右部分)。(B、C)H9-IL-2Rβ(C)及びH9-RET-IL-2Rβ(D)複合体の、γへの結合の表面プラズモン共鳴分析。
図13-1】IL2Rγに対する結合親和性が減少したIL-2ムテインのシグナル伝達の減弱を示す。(A、B)野生型IL-2または種々のH9多様体を、CD25(A)及びCD25(B)YT-1ヒトNK様細胞におけるSTAT5リン酸化を誘導する能力についてアッセイした。(C、D)サイトカイン刺激の後の、CD25YT-1細胞における最大の表面発現と比較した、IL-2Rβ(C)及びIL-2Rγ(D)の内在化の動態。
図13-2】(E)新たに単離された(上パネル)または予め活性化された(下パネル)CD8T細胞を、刺激しないままか、または、30分間、1μg/mlのIL-2、H9-RE、H9-T、H9-RET、またはH9-RETRで刺激した。CD25発現(左パネル)またはpSTAT5(右パネル)を、フローサイトメトリーでアッセイした。(F)示されるような細胞を、IL-2、H9、H9-RET、またはH9-RETRで処理し、溶解し、pSTAT5または全STAT5に対する抗体でウェスタンブロッティングした。(G)野生型IL-2、H9、H9-RE、H9-T、H9-RET、及びH9-RETRにより誘導されるpSTAT5の用量-反応曲線。(H)野生型IL-2、H9、H9-RET、及びH9-RETRによるホスホ-S6リボソームタンパク質(pS6)の用量-反応曲線。MFIは、平均蛍光強度。用量-反応実験(A、B、G、H)の場合、横軸は、ng/ml単位のサイトカイン濃度の対数を示す。MFIは、平均蛍光強度。データは、パネル当たり少なくとも2つの実験を代表するものである(エラーバー、三重測定の平均値の標準誤差)。
図14】2つの異なるアッセイにおいて、IL2Rγに対する結合親和性が減少したIL-2ムテインのシグナル伝達の減弱を示す。(A)CD25YT1ヒトNK様細胞上のホスホ-ERK1/ERK2タンパク質の用量-反応曲線。(B)新たに単離された(上パネル)、または、予め活性化された(下パネル)ヒトCD8T細胞上のIL-2Rβ及びIL-2Rγ発現の比較。データは、パネル当たり少なくとも2つの実験を代表するものである。エラーバーは、三重測定の平均値の標準誤差を表す。
図15】IL-2、H9、H9-RE、H9-T、H9-RET、及びH9-RETRに応答する増殖及びCD25発現を示す。IL-2及びH9によるが、H9-RETまたはH9-RETRによらない、新たに単離されたヒトCD8T細胞の増殖の誘導(H9-Tの効果は中程度)。細胞を、CFSEで標識して、示されたIL-2多様体で刺激し、CFSE希釈物を、5日後にフローサイトメトリーで評価した。
図16-1】増殖、STAT5結合、及び遺伝子発現におけるH9-RET及びRETRの効果を示す。(A)新たに単離され予め活性化されたヒトCD8T細胞を、2日間、様々な濃度の示されたIL-2多様体の入った96ウェルプレートで培養し、[H]チミジン取り込みを測定した。バーは、平均±平均値の標準誤差を表す。2つの個々のドナーからの細胞を、組み合わせた。データは、少なくとも2つの独立した実験を代表するものである。(B)24時間、IL-2、H9、H9-RET、及びH9-RETR(1μg/ml)で処理された予め活性化されたCD8T細胞のRNA-Seqヒートマップ解析。発現が、対照と比較して、IL-2によりアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかをされた遺伝子が示される(各遺伝子の発現は、カラースケールに従って、-1.00及び1.00の間で正規化される)。2倍以上に優先的にアップレギュレーション(赤色)またはダウンレギュレーション(緑色)されたmRNAが示される。
図16-2】(C)示されたサイトカインで刺激した後に、アップレギュレーションされた(白抜きバー)またはダウンレギュレーションされた(黒塗りバー)mRNAの数。IL-2、H9、H9-RET、及びH9-RETRはそれぞれ、731、742、65、及び23のmRNAを誘導し、437、397、13、及び46のmRNAを抑制した(倍数変化≧2;p値<1e-10)。(D)IL-2多様体で処理された、予め活性化されたCD8T細胞における、ChIP-Seqに基づいたSTAT5B結合部位の数及びそれらのゲノム全体の分布。ヒトRefSeqデータベースに規定される5’非翻訳領域(5’UTR)、エクソン、イントロン、及び3’非翻訳領域(3’UTR)が示される(アセンブリGRCh37.p9)。TSSの5kb上流を、プロモーター領域として指定した。
図16-3】(E)IL-2誘導性のSTAT5Bピークを使用して、(位置「0」により示された)STAT『ピーク頂点』の約1kb上流の及び1kb下流の中央を占めるヒートマップクラスタリングを実施した。IL-2、H9、H9-RET、及びH9-RETRにより誘導される結合の強度は、赤色の強さにより示される。(F)刺激されないままか、または、24時間、IL-2、H9、H9-RET、及びH9-RETRで刺激された、予め活性化された細胞におけるRPL7と比較したIL2RA、LTA、CISH、IL7RA、及びBCL6RNAの発現。データは、選択遺伝子が、RT-PCRにより確認されるRNA-Seq実験を除いて、少なくとも2つの実験を代表するものである(テキストを参照のこと)。
図17】IL-2、H9、H9-RE、H9-T、H9-RET、またはH9-RETRで処理された、予め活性化されたCD8T細胞におけるCD25発現を示す。データは、3つの独立した実験を代表するものである。
図18-1】H9-RETRがIL-2R媒介性シグナル伝達を阻害することを示す。(A及びB)H9-RET及びH9-RETRは、IL-2及びIL-15の拮抗的阻害剤である。予め活性化されたヒトCD8T細胞を、1μg/mlのH9-RETまたはH9-RETRの不存在下または存在下で、示された濃度のIL-2またはIL-15とインキュベーションした。(C及びD)H9-RETRは、予め活性化されたCD8T細胞において、抗TacまたはMikβ1 mAbよりも、IL-2誘導性及びIL-15誘導性のSTAT5リン酸化をより強力に遮断する。(E及びF)H9-RETRは、抗TacまたはMikβ1よりも、IL-2誘導性またはIL-15誘導性増殖をより強力に阻害する。平均±平均値の標準誤差が示される。データは、3つの独立した実験を代表するものである。
図18-2】(G)H9-RETRは、IL-2誘導性(上パネル)及びIL-15誘導性(下パネル)のインビボでのSTAT5リン酸化を阻害する。C57BL/6マウスに、IL-2またはIL-15を注射する60分前に、Fc4またはFc4-H9-RETRを腹腔内注射した。pSTAT5を、脾臓のCD4CD25FoxP3T細胞において、30分後に測定した。MFIが示される。データは、3つの独立した実験を代表するものである。(H)Fc4-H9-RETRは、GVHDを減弱させる。BALB/cマウスに照射し(950cGy)、C57BL/6マウス由来の200万のTreg枯渇汎T細胞を用いずにまたは用いて、1000万のT枯渇骨髄(BM)細胞を移植した。汎T細胞が投与されているマウスを、1日に2回、100μg/用量で、10日間、腹腔内注射によりFc4またはFc4-H9-RETR融合タンパク質で治療した。データは、3つの独立した実験からプールされた生存曲線を表し、カプラン・マイヤー法及びログランク検定を使用して解析した。Fc4対H9-RETR-Fc4については、p=0.0001。
図18-3】(I)示されるようなUPC10、ダクリズマブ、Mikβ1、またはH9-RETRの存在下または不存在下で、3日間50U/mlのIL-2と培養されたED40515(+)T細胞の増殖の遮断。データは、2つの実験を代表するものであり、それぞれは、3回実施される。(J)UPC10、ダクリズマブ、Mikβ1、またはH9-RETRで治療された、くすぶり型ATLに罹患している患者由来の細胞の、6日間の自発的増殖アッセイ。アッセイを、3回行った。
図19】CD8T細胞における、IL-2ムテインH9-RET、及びh9-RETRの効果を示す。(A)H9-RET及びH9-RETRは、予め活性化されたCD8T細胞上のIL-2誘導性のCD25発現を阻害した。(B)H9-RETまたはH9-RETRの存在下または不存在下で、IL-2で刺激された予め活性化されたヒトCD8T細胞における(RPL7発現に正規化された)IL2RA mRNAレベル。データは、3つの独立した実験を代表するものである。(C)H9-RETRによる、IL-2誘導性及びIL-15誘導性T細胞増殖の阻害。新たに単離されたCD8T細胞を、1μg/mlのH9-RETまたはH9-RETRの存在下または不存在下で、CFSE標識し、IL-2またはIL-15(1μg/ml)で刺激し、CFSE希釈物を評価した。データは、3つの独立した実験(A及びC)を代表するものであるか、または、3回なされる2つの独立した実験(B)からプールされたものである。
図20】CD8+T細胞における、IL-2ムテインH9-RET、及びh9-RETRの効果を示す。(A)H9-RET及びH9-RETRの両方は、新たに単離されたCD8T細胞のTCR誘導性増殖を抑制する。細胞を、CFSEで標識し、1μg/mlのH9-RETまたはH9-RETRを用いてまたは用いずに、4日間、プレートと結合した抗CD3(2μg/ml)+可溶性抗CD28(1μg/ml)で刺激し、CFSE希釈物をフローサイトメトリーにより評価した。(B)1μg/mlのH9-RETまたはH9-RETRのいずれかは、2μg/mlの抗CD3+1μg/mlの抗CD28で、4日間刺激された末梢血のCD8T細胞において、TCR誘導性のCD25発現を阻害した。データは、3つの独立した実験を代表するものである。
図21】H9-RET及びH9-RETRが、Th1、Th9、及びTreg分化を阻害するが、Th17分化を促進することを示す。細胞を、H9-RETまたはH9-RETRの存在下または不存在下で、種々のTヘルパーの分極条件下で分化した。データは、各タイプの細胞に対する少なくとも2つの独立した実験を代表するものである。
図22】H9-RETRが、IL-2誘導性のNK細胞活性化及び細胞傷害を遮断することを示す。(A)IL-2とは異なり、H9-RETまたはH9-RETR(1μg/ml)のいずれもが、24時間インキュベーションした後の初代ヒトNK細胞においてCD69発現を刺激しなかったが、H9-RETRはIL-2(100ng/ml)誘導性のCD69発現を阻害した。実験を2回実施した。(B、C)H9-RETまたはH9-RETRのいずれもが、初代ヒトNK細胞において細胞傷害を刺激せず、10ng/mLのH9-RETRは、HER18(B)及びK562(C)標的細胞のIL-2誘導性のNK細胞の細胞傷害を阻害した。NK細胞及び標的細胞を、示されたサイトカインの存在下で、4時間、10:1の割合でインキュベーションした。HER18細胞溶解を、51Cr放出により判定し、3回実施した。K562細胞の溶解を、フローサイトメトリーにより評価した。4回の独立した実験を実施した。
図23図18Gの実験に対して使用されたプロトコールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示がより容易に理解されるためには、ある特定の用語及び語句が、以下に、及び、
本明細書を通して、定義される。
【0028】
定義
本明細書で引用された全ての参考文献は、完全に記載されているかのように、その全体
が参照により組み込まれる。別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科
学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を
有する。Singleton et al.,Dictionary of Micro
biology and Molecular Biology 3rd ed., J
. Wiley & Sons(New York,NY 2001);March,A
dvanced Organic Chemistry Reactions,Mech
anisms and Structure 5th ed.,J. Wiley &
Sons(New York,NY 2001);及びSambrook and Ru
ssell,Molecular Cloning:A Laboratory Man
ual 3rd ed., Cold Spring harbor Laborato
ry Press(Cold Spring Harbor,NY 2001)は、当業
者に、本開示で使用される多くの用語に対する一般的指針を提供する。必要に応じて、市
販のキット及び試薬の使用を含む手順は、別途記載のない限り、製造業者の定めたプロト
コール及び/またはパラメータに従って、一般的に実施される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「IL-2」は、天然または組換えにかかわらず、野生型
IL-2を意味する。成熟ヒトIL-2は、Fujita et al.,PNAS U
SA,80,7437-7441(1983)に記載されるように、(さらなる20N末
端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除いた)133アミノ酸配列として発生する。ヒ
トIL-2のアミノ酸配列(配列番号1)は、Genbank受託番号(accessi
on locator):NP_000577.2下に見出される。成熟ヒトIL-2の
アミノ酸配列は、配列番号2に示される。マウス(ハツカネズミ)IL-2アミノ酸配列
は、Genbank受託番号(配列番号3)に見出される。成熟マウスIL-2のアミノ
酸配列は、配列番号4に示される。
配列番号1
【化1】

配列番号2
【化2】

配列番号3
【化3】

配列番号4
【化4】
【0030】
本明細書で使用される場合、「IL-2ムテイン」は、インターロイキン-2タンパク
質に対する特異的置換がなされているIL-2ポリペプチドを意味する。IL-2ムテイ
ンは、天然のIL-2ポリペプチド鎖の1つ以上の部位または他の残基での、アミノ酸挿
入、欠失、置換、及び修飾を特徴とする。本開示に従って、任意のこのような挿入、欠失
、置換、及び修飾は、IL-2Rβ結合活性を保持するIL-2ムテインをもたらす。例
示的ムテインとしては、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の
アミノ酸の置換を挙げることができる
【0031】
ムテインは、IL-2の他の位置での保存的修飾及び置換も含む(すなわち、ムテイン
の2次または3次構造に最小限の影響を有するもの)。このような保存的置換としては、
DayhoffによりThe Atlas of Protein Sequence
and Structure 5(1978)に記載されるもの、及び、Argosによ
りEMBO J., 8:779-785(1989)に記載されるものが挙げられる。
例えば、次のグループ:グループI:ala、pro、gly、gln、asn、ser
、thr;グループII:cys、ser、tyr、thr;グループIII:val、
ile、leu、met、ala、phe;グループIV:lys、arg、his;グ
ループV:phe、tyr、trp、his;及びグループVI:asp、glu、のう
ちの1つに属するアミノ酸は、保存的変更に相当する。
【0032】
「IL-2に従って番号付けされた」は、選択されたアミノ酸が通常、野生型IL-2
の成熟配列中に存在する位置を基準として、そのアミノ酸を同定することを意味し、例え
ば、R81は、配列番号2中に存在する81番目のアミノ酸、アルギニンを指す。
【0033】
「IL-2Rαβγ受容体を有する細胞型」という用語は、この受容体型を有すること
が知られている細胞、すなわち、T細胞、活性化されたT細胞、B細胞、活性化された単
球、及び活性化されたNK細胞を意味する。「IL-2Rβγ受容体を有する細胞型」と
いう用語は、その受容体タイプを有することが知られている細胞、すなわち、B細胞、休
止単球、及び休止NK細胞を意味する。
【0034】
ポリペプチドまたはDNA配列に関して、本明細書で使用される「同一性」という用語
は、2つの分子間のサブユニットの配列の同一性を指す。分子の両方におけるサブユニッ
ト位置が、同じ単量体サブユニット(すなわち、同じアミノ酸残基またはヌクレオチド)
によって占められる時、その場合、分子は、その位置で同一である。2つのアミノ酸配列
間の、または、2つのヌクレオチド配列間の類似性は、同一の位置の数の直接の関数であ
る。一般に、配列は、最高次数の合致が得られるように、アラインされる。必要に応じて
、同一性は、公開された技術及び幅広く利用可能なコンピュータプログラム、例えば、G
CSプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Aci
ds Res.12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(
Atschul et al.,J. Molecular Biol.215:403
,1990)、を使用して計算できる。配列同一性は、デフォルトのパラメータを有する
配列解析ソフトウェア、例えば、University of Wisconsin B
iotechnology Center(1710 University Aven
ue,Madison,Wis.53705)の遺伝学コンピュータグループの配列解析
ソフトウェアパッケージを使用して測定できる。
【0035】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「ペプチド」という用語は、長さまたは翻
訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸残基の任意の
鎖を指す。
【0036】
本開示の変異体IL-2ポリペプチドが、「実質的に純粋」である場合、それらは、少
なくとも約60重量%(乾燥重量)の目的のポリペプチド、例えば、変異体IL-2アミ
ノ酸配列を含有するポリペプチドであることができる。例えば、ポリペプチドは、少なく
とも約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、または
約99重量%の目的のポリペプチドであることができる。純度は、任意の適切な標準的方
法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHP
LC分析で測定できる。
【0037】
「アゴニスト」は、標的と相互作用して、標的の活性化における増加を引き起こす、ま
たは、促進する化合物である。
【0038】
「パーシャルアゴニスト」は、アゴニストと同じ標的と相互作用するが、パーシャルア
ゴニストの投薬量を増加させることによっても、アゴニストと同じくらい大きい生化学的
及び/または生理学的効果の大きさを生じない化合物である。
【0039】
「スーパーアゴニスト」は、標的受容体に対する内因性アゴニストよりも大きい最大応
答を生じることができるアゴニストのタイプであり、それにより、100%を超える有効
性を有する。
【0040】
「アンタゴニスト」は、例えば、アゴニストの活性を、防止する、低減させる、阻害す
る、または中和することによりアゴニストの作用に対抗する化合物である。「アンタゴニ
スト」は、同定されるアゴニストがない場合でさえ、標的、例えば、標的受容体、の構成
的活性も防止する、阻害する、または低減させることができる。
【0041】
「作動可能に連結された」は、目的のヌクレオチド配列(すなわち、IL-2ムテイン
をコードする配列)が、ヌクレオチド配列の発現を可能にするやり方で(例えば、インビ
トロ転写/翻訳系で、または、ベクターが宿主細胞に導入された時の宿主細胞中で)、制
御配列(複数可)に連結されることを意味することが意図される。「制御配列」は、プロ
モーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を
含む。例えば、Goeddel(1990)in Gene Expression T
echnology:Methods in Enzymology 185(Acad
emic Press,San Diego,Calif.)を参照のこと。制御配列は
、多くのタイプの宿主細胞中のヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及び、あ
る特定の宿主細胞中のみでヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異性
制御配列)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換されることになる宿主細胞の選択、
所望されるタンパク質の発現のレベルなどのような要因に依存する可能性があることは、
当業者に理解されるであろう。本発明の発現構築物は、宿主細胞に導入して、それにより
、本明細書で開示されるヒトIL-2ムテインを産生できるか、または、それらの生物学
的に活性な多様体を産生できる。
【0042】
「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で同じ意味で使用される
。このような用語は、特定の対象の細胞のみを指すわけではなく、このような細胞の後代
または潜在的後代も指すことが理解される。変異または環境の影響のいずれかに起因して
、ある特定の修飾が後の世代に生じることがあるため、このような後代は事実上親細胞と
同一ではないことがあるが、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は
、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランス
フェクション、リポフェクション、粒子銃、または電気穿孔法を含む、外来の核酸(例え
ば、DNA)を宿主細胞に導入するための当該技術分野で認識される種々の技術を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と
適合性のある、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗カビ剤、等張剤及
び吸収遅延剤などを含むが、これらに限定されない。補助的な活性化合物(例えば、抗生
物質)も、組成物に組み込むことができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「癌」(または「癌の」)、「過剰増殖性」、及び「新生
物の」という用語は、自律的成長(すなわち、急速に増殖する細胞成長を特徴とする異常
な状況または状態)のための能力を有する細胞を指す。過剰増殖性及び新生物疾患状態は
、病理学的に分類(すなわち、病状を特徴づけることまたは構成すること)されても良く
、または、それらは、非病理学的に(すなわち、正常状態からの逸脱ではあるが、疾患状
態とは関連しない状態として)分類されても良い。用語は、組織病理学的タイプまたは侵
襲性ステージにかかわらず、全てのタイプの癌の成長若しくは発癌プロセス、転移性組織
、または悪性形質転換細胞、組織、若しくは器官を含むことを意味する。「病理学的過剰
増殖性」細胞は、悪性腫瘍生長を特徴とする病状に見られる。非病理学的過剰増殖性細胞
の例は、創傷修復と関連する細胞の増殖を含む。「癌」または「新生物」という用語は、
肺、乳房、甲状腺、リンパ腺及びリンパ系組織、胃腸器官、ならびに泌尿生殖器に影響を
与えるものを含む、種々の器官系の悪性腫瘍、ならびに、一般的に悪性腫瘍、例えば、ほ
とんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌、及び/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌腫、小腸
の癌、及び食道の癌を含むと考えられる腺癌、を指すために使用される。
【0046】
「癌腫」という用語は、当該技術分野で認識され、呼吸器系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器
系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、及び黒色腫を含む、上皮または内分泌腺組
織の悪性腫瘍を指す。「腺癌」は、腺組織に由来する、または、腫瘍細胞が認識可能な腺
構造を形成する、癌腫を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「造血新生物障害」という用語は、造血系由来の、例えば
、骨髄、リンパ、または赤血球系統から生じる、過形成性/新生物細胞、またはそれらの
前駆体細胞が関与する疾患を指す。好ましくは、疾患は、低分化急性白血病(例えば、赤
芽球性白血病及び急性巨核芽球性白血病)から生じる。さらなる例示の骨髄障害としては
、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、及び慢性骨髄性白血
病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit Rev. in Onco
l./Hemotol.11:267-97で概説されている)が挙げられるが、これら
に限定されず、リンパ悪性腫瘍としては、B系統ALL及びT系統ALLを含む急性リン
パ性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL
)、毛様細胞性白血病(HLL)、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症(W
M)が挙げられるが、これらに限定されない。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、非
ホジキンリンパ腫及びその多様体、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(
ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジ
キン病、ならびにリード・シュテルンベルク疾患が挙げられるが、これらに限定されない
【0048】
IL-2ムテイン
IL-2ムテインパーシャルアゴニスト及びアンタゴニスト
一態様では、パーシャルアゴニスト及びアンタゴニストであるIL-2ムテインが、本
明細書で提供される。ある特定の実施形態では、野生型IL-2(例えば、ヒトIL-2
、配列番号2)と比較して、IL-2ムテインのIL-2Rγ受容体に対する結合親和
性を低減させる1つ以上の変異を含有するIL-2ムテインが、本明細書で提供される。
本明細書で使用される場合、「共通γ鎖」、「γ」、「IL-2Rγ」、「Yc」、
「IL-2Rγ」、「IL-2受容体サブユニットγ」、及び「IL-2RG」(Gen
bank受託番号:NM_000206及びNP_000197(ヒト)ならびにNM_
013563及びNP_038591(マウス))という用語は全て、IL-2、IL-
4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21受容体を含むが、これらに限定さ
れない少なくとも6つの異なるインターロイキン受容体のための受容体複合体に対するサ
イトカイン受容体サブユニットであるI型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーを指
す。IL-2Rγは、IL-2Rβと相互作用して、主にメモリーT細胞及びナチュラ
ルキラー(NK)細胞上に中程度の親和性IL-2受容体を形成し、IL-2Rα及びI
L-2Rβと相互作用して、活性化されたT細胞及び制御T細胞(Tregs)上に、高
親和性IL-2受容体を形成する。特定の動作理論に束縛されるものではないが、このよ
うなムテインは、IL-2Rβ+/IL-2Rγ+細胞(例えば、休止T細胞及びナチ
ュラルキラー(NK)細胞)上のIL-2Rβと結合する際に、IL-2β/IL-2γ
ヘテロ二量化及びシグナル伝達を減弱させる、または、阻害することにより、IL-2
パーシャルアゴニストまたはアンタゴニストとして機能できると考えられている。
【0049】
例示的な主題のIL-2ムテインは、野生型IL-2と少なくとも約50%、少なくと
も約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくと
も約87%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくと
も約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくと
も約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。変異は、アミ
ノ酸残基の数または含有量における変化からなる可能性がある。例えば、変異体IL-2
は、野生型IL-2よりも、大きいまたは小さいアミノ酸残基の数を有することができる
。代わりにまたは加えて、例示的変異体ポリペプチドは、野生型IL-2に存在する1つ
以上のアミノ酸残基の置換を含有できる。種々の実施形態では、変異体IL-2ポリペプ
チドは、単一のアミノ酸残基の付加、欠失、または置換により、野生型IL-2とは異な
る可能性がある。
【0050】
実例として、参照アミノ酸配列である配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ
酸配列を含むIL-2ムテインは、配列番号2の参照アミノ酸配列の多くとも5つの変更
を含むことを除いて、参照配列と同一である配列を含むポリペプチドである。例えば、参
照配列における多くとも5%のアミノ酸残基は、欠失されるか、または別のアミノ酸若し
くは多くのアミノ酸と置換されても良く、参照配列における全アミノ酸残基の5%までは
、参照配列に挿入されても良い。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ
(N--)末端位置若しくはカルボキシ(C--)末端位置、または、これらの末端位置
の間のどこにでも、生じることができ、参照配列の残基中に個別に、または、参照配列内
の1つ以上の連続的なグループの中のいずれかに散在する。
【0051】
ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも、少なくとも1
%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40
%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90
%、95%、96%、97%、98%、または99%小さい親和性で、IL-2Rγ
結合する。IL-2ムテインの結合親和性はまた、野生型IL-2のIL-2γに対す
る親和性の1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、
200、250、またはそれ以上分の1と表すことができる。主題のIL-2ムテインの
IL-2γに対する結合親和性は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して
測定できる。IL-2Rγ結合を測定するための好適な方法としては、放射性リガンド
結合アッセイ(例えば、飽和結合、スキャッチャードプロット、非線形カーブフィッティ
ングプログラム、及び競合結合アッセイ);非放射性リガンド結合アッセイ(例えば、蛍
光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、及び表面プラズモン共鳴アッセ
イ(例えば、Drescher et al.,Methods Mol Biol 4
93:323-343(2009)を参照のこと));液相リガンド結合アッセイ(例え
ば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)、及び免疫沈降);ならびに
、固相リガンド結合アッセイ(例えば、マルチウェルプレートアッセイ、ビーズ上のリガ
ンド結合アッセイ、カラム上のリガンド結合アッセイ、及びフィルタアッセイ)が挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0052】
ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、IL-2RβのIL-2Rγとの会
合を分裂させ、その結果、このIL-2Rβ/IL-2Rγ相互作用は、野生型IL-
2と比較して、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、
約90%、約95%、またはそれ以上減少する。
【0053】
一部の実施形態では、IL-2ムテインのIL-2Rγ受容体に対する結合親和性を
低減させる1つ以上の変異は、アミノ酸置換である。一部の実施形態では、主題のIL-
2ムテインは、野生型IL-2(配列番号2)と比較して、1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、または15のアミノ酸置換からなる。置換ア
ミノ酸残基(複数可)は、必ずしもではないが、次のグループ:グリシン、アラニン、バ
リン;イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタ
ミン;セリン、スレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン、内
の置換を通常含む、保存的置換である可能性がある。特定の実施形態では、置換は、IL
-2Rγ結合界面に接触するIL-2のアミノ酸残基の置換である。
【0054】
ある特定の実施形態では、アミノ酸置換は、野生型hIL-2(例えば、配列番号2)
に従って番号付けされた位置:18、22、126、及び/または130から選択された
野生型IL-2の1つ以上のアミノ酸位置での置換である。ある特定の実施形態では、I
L-2Rγ受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は、アミノ酸置換L18R、
Q22E、A126T、及び/若しくはS130R、またはそれらの組み合わせを含む。
【0055】
一部の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は
、Q126Tを含む。他の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を減少させ
るアミノ酸置換は、L18R及びQ22Eを含む。一部の実施形態では、IL-2Rγ
受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置換は、L18R、Q22E、及びQ126T
を含む。他の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を減少させるアミノ酸置
換は、L18R、Q22E、Q126T、及びS130Rを含む。
【0056】
一部の実施形態では、IL-2Rβ受容体に対する結合親和性が減少するIL-2ムテ
インは、IL-2Rβ結合親和性を増加させる、1、2、3、4、5、6、7、8、9、
または10以上の変異をさらに含む。本明細書で使用される場合、「IL-2Rβ」及び
「CD122」(Genbank受託番号NM_000878及びNP_000869(
ヒト))という用語の両方は、IL-2Rγと相互作用して、主にメモリーT細胞及び
ナチュラルキラー(NK)細胞上に中程度の親和性IL-2受容体を形成し、IL-2R
α及びIL-2Rγと相互作用して、活性化されたT細胞及び制御T細胞(Tregs
)上に、高親和性IL-2受容体を形成する、I型サイトカイン受容体ファミリーのメン
バーを指す。特定の動作理論に束縛されるものではないが、強い結合親和性のIL-2R
β及びIL-2Rγに対する弱い結合親和性を有するこのようなIL-2ムテインは、
内因性のシグナル伝達を遮断する「受容体シグナル伝達クランプ」を生成するドミナント
ネガティブなスカフォールドとして役立つと考えられている。このようなIL-2ムテイ
ンは、IL-2Rβ-γヘテロ二量化を減弱させることになり、新しいクラスの、作用
機序に基づいたIL-2パーシャルアゴニスト、及び、内因性サイトカインを遮断し、そ
れ自身の作用はなんら発揮しないことによりアンタゴニストとして機能的に作用する非シ
グナル伝達(ニュートラル)分子、を表す(図1の概略図を参照のこと)。
【0057】
ある特定の実施形態では、主題のIL-2ムテインは、野生型IL-2(例えば、配列
番号2)と比較して、少なくとも1つの変異(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそ
れ以上のアミノ酸残基の欠失、付加、または置換)を含み、野生型IL-2よりも高い親
和性で、IL-2Rβと結合する。
【0058】
ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、野生型IL-2よりも、少なくとも1
%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40
%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90
%、95%、96%、97%、98%、または99%大きい親和性で、IL-2Rβと結
合する。IL-2ムテインの結合親和性はまた、野生型IL-2のIL-2Rβに対する
親和性の1.2、1.4、1.5、2、5、10、15、20、25、50、100、2
00、250、またはそれ以上倍と表すことができる。主題のIL-2ムテインのIL-
2Rβへの結合は、上記の方法を含むが、これらに限定されない、当業者らに知られてい
る任意の好適な方法により評価できる。
【0059】
一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させる少なくとも1つの変異は、
アミノ酸置換である。一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ
酸置換は、野生型hIL-2(配列番号2)に従って番号付けされたアミノ酸位置I24
、P65、Q74、L80、R81、L85、I86、I89、I92、及び/またはV
93に、置換を含み:ある特定の実施形態では、置換は、I24V、P65H、Q74R
、Q74H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D
、L85V、I86V、I89V、I92F、及び/若しくはV93I、またはそれらの
組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、置換としては、Q74N、Q74H、Q7
4S、L80F、L80V、R81D、R81T、L85V、I86V、I89V、及び
/若しくはI93V、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、L80F
、R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2
Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74N、L80F、R81D、L85V
、I86V、I89V、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親
和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74N、L80V、R81T、L85V、I86V
、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミ
ノ酸置換は、Q74H、L80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む
。ある特定の実施形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q7
4S、L80F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施
形態では、IL-2Rβ結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74N、L80F、
R81D、L85V、I86V、及びI92Fを含む。一部の実施形態では、IL-2R
β結合親和性を増加させるアミノ酸置換は、Q74S、R81T、L85V、及びI92
Fを含む。
【0061】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換L80F、R81D、L85V、I86V、I92F、及
びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化5】

を有する。
【0062】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85V、I86
V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸配列

【化6】

を有する。
【0063】
例示的な実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親
和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-
2ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85V、I8
6V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは
、アミノ酸配列:
【化7】

を有する。
【0064】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85V、I86
V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では、IL-2
ムテインは、アミノ酸配列:
【化8】

を有する。
【0065】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74N、L80F、R81D、L85V、I86V、I
89V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテイン
は、アミノ酸配列:
【化9】

を有する。
【0066】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L85
V、I86V、I89V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテ
インは、アミノ酸配列:
【化10】

を有する。
【0067】
例示的な実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親
和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-
2ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L8
5V、I86V、I89V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化11】

を有する。
【0068】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L85
V、I86V、I89V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実
施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化12】

を有する。
【0069】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74N、L80V、R81T、L85V、I86V、I
92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ
酸配列:
【化13】

を有する。
【0070】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80V、R81T、L85
V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、ア
ミノ酸配列:
【化14】

を有する。
【0071】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80V、R81T、L85
V、I86V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ム
テインは、アミノ酸配列:
【化15】

を有する。
【0072】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80V、R81T、L85
V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化16】

を有する。
【0073】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74H、L80F、R81D、L85V、I86V、I
92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ
酸配列:
【化17】

を有する。
【0074】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74H、L80F、R81D、L85
V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、ア
ミノ酸配列:
【化18】

を有する。
【0075】
例示的な実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親
和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-
2ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74H、L80F、R81D、L8
5V、I86V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2
ムテインは、アミノ酸配列:
【化19】

を有する。
【0076】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74H、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化20】

を有する。
【0077】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74S、L80F、R81D、L85V、I86V、I
92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ
酸配列:
【化21】

を有する。
【0078】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74S、L80F、R81D、L85
V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、ア
ミノ酸配列:
【化22】

を有する。
【0079】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74S、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ム
テインは、アミノ酸配列:
【化23】

を有する。
【0080】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74S、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化24】

を有する。
【0081】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74N、L80F、R81D、L85V、I86V、I
92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ
酸配列:
【化25】

を有する。
【0082】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L85
V、I86V、及びI92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、ア
ミノ酸配列:
【化26】

を有する。
【0083】
種々の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ム
テインは、アミノ酸配列:
【化27】

を有する。
【0084】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74N、L80F、R81D、L85
V、I86V、I92F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化28】

を有する。
【0085】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換Q74S、R81T、L85V、I92F、及びQ126
Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化29】

を有する。
【0086】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、Q74S、R81T、L85V、及びI
92Fを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸配列:
【化30】

を有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合
親和性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL
-2ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22S、Q74H、R81T、L85V、I
92F、及びQ126Tを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ
酸配列:
【化31】

を有する。
【0088】
一部の実施形態では、野生型ヒトIL-2と比較して、IL-2Rβに対する結合親和
性がより大きく、IL-2Rγ受容体に対する結合親和性がより小さい主題のIL-2
ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22S、Q74H、R81T、L85V、I92
F、Q126T、及びS130Rを含む。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは
、アミノ酸配列:
【化32】

を有する。
【0089】
種々の実施形態では、主題のIL-2ムテインは、以下の式によるアミノ酸配列を有す
る:
【0090】
A-P-T-S-S-S-T-K-K-T-Q-L-Q-L-E-H-L-(X
L-D-L-(X--M-(X--L-N-G-I-N-N-Y-K-N-
P-K-L-T-R-M-L-T-F-K-F-Y-M-P-K-K-A-T-E-L-
K-H-L-Q-C-L-E-E-E-L-K-(XL-E-E-V-L-N
-L-A-(XS-K-N-F-H-(X-(X--P-R-D
-(X--(X--S-N-(X10--N-V-(X11--(
12--L-E-L-K-G-S-E-T-T-F-M-C-E-Y-A-D-E
-T-A-T-I-V-E-F-L-N-RW-I-T-F-C-(X13--S-
I-I-(X14--T-L-T、
(式中、各nは、0または1から個別に選択され;
は、L(野生型)またはRであり;
は、Q(野生型)またはEであり;
は、I(野生型)またはVであり;
は、P(野生型)またはHであり;
は、Q(野生型)、R、H、N、またはSであり;
は、L(野生型)、F、またはVであり;
は、R(野生型)、I、T、またはDであり;
は、L(野生型)またはVであり;
は、I(野生型)またはVであり;
10は、I(野生型)またはVであり;
11は、I(野生型)またはFであり;
12は、V(野生型)またはIであり;
13は、A(野生型)またはTであり;
14は、S(野生型)またはRである(配列番号50))。
【0091】
配列番号50によるIL-2ムテインのある特定の実施形態では、X、X、X
、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、またはX14
のうちの少なくとも1つにおけるアミノ酸は、野生型アミノ酸ではない。一部の実施形態
では、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X
、X13、またはX14のうち、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、または14におけるアミノ酸は、野生型アミノ酸ではない。一部の実
施形態では、IL-2ムテインは、配列番号50のIL-2ムテインと、少なくとも約9
5%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約9
9%、または約100%の相同性を有する。
【0092】
一部の実施形態では、パーシャルアゴニストである主題のIL-2ムテインは、野生型
IL-2と比較して、1つ以上の機能が低減している。
【0093】
ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、IL-2Rβ/IL-2Rγヘテロ
二量化に依存する、1つ以上のシグナル伝達経路を刺激する能力が低減している。一部の
実施形態では、主題のIL-2ムテインは、野生型hIL-2と比較して、IL-2Rβ
+細胞におけるSTAT5リン酸化を刺激する能力が低減している。一部の実施形態では
、IL-2ムテインは、L-2Rβ+細胞においてSTAT5リン酸化を、野生型IL-
2が同じ細胞においてSTAT5リン酸化を刺激するレベルの1%、5%、10%、15
%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65
%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以下のレベルで、刺
激する。一部の実施形態では、IL-2Rβ+細胞は、T細胞である。特定の実施形態で
は、T細胞は、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、CD8+T細胞は、新たに
単離されたCD8+T細胞である。他の実施形態では、CD8+T細胞T細胞は、活性化
されたCD8+T細胞である。他の実施形態では、IL-2Rβ+細胞は、ナチュラルキ
ラー(NK)細胞である。
【0094】
一部の実施形態では、ムテインは、野生型hIL-2と比較して、IL-2Rβ+細胞
においてERK1/ERK2シグナル伝達を刺激する能力が低減している。一部の実施形
態では、IL-2ムテインは、IL-2Rβ+細胞においてpERK1/ERK2シグナ
ル伝達を、野生型IL-2が同じ細胞においてpERK1/ERK2シグナル伝達を刺激
するレベルの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、
45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、
95%、またはそれ以下のレベルで、刺激する。一部の実施形態では、IL-2Rβ+細
胞は、T細胞である。特定の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞である。一部の実
施形態では、CD8+T細胞は、新たに単離されたCD8+T細胞である。他の実施形態
では、CD8+T細胞T細胞は、活性化されたCD8+T細胞である。他の実施形態では
、IL-2Rβ+細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0095】
STAT5及びERK1/2シグナル伝達は、例えば、当該技術分野で既知の任意の好
適な方法を使用して、STAT5及びERK1/2のリン酸化により測定できる。例えば
、STAT5及びERK1/2リン酸化反応は、本明細書に記載されるように、フローサ
イトメトリー分析と組み合わせて、これらの分子のリン酸化バージョンに特異的な抗体を
使用して測定できる。
【0096】
一部の実施形態では、ムテインは、野生型hIL-2と比較して、IL-2Rβ+細胞
において、PI3キナーゼシグナル伝達を刺激する能力が低減している。一部の実施形態
では、IL-2ムテインは、IL-2Rβ+細胞においてPI3キナーゼシグナル伝達を
、野生型IL-2が同じ細胞においてPI3キナーゼシグナル伝達を刺激するレベルの1
%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または
それ以下のレベルで刺激する。一部の実施形態では、IL-2Rβ+細胞は、T細胞であ
る。特定の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、CD
8+T細胞T細胞は、活性化されたCD8+T細胞である。他の実施形態では、IL-2
Rβ+細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0097】
PI3キナーゼシグナル伝達は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して測
定できる。例えば、PI3キナーゼシグナル伝達は、本明細書に記載されるように、フロ
ーサイトメトリー分析と共に、ホスホ-S6リボソームタンパク質に特異的な抗体を使用
して測定できる。
【0098】
ある特定の実施形態では、ムテインは、野生型IL-2と比較して、リンパ球増殖を誘
導する能力が低減している。一部の実施形態では、リンパ球は、T細胞である。特定の実
施形態では、リンパ球は、初代CD8+T細胞である。他の実施形態では、リンパ球は、
活性化されたCD8+T細胞である。細胞増殖は、当該技術分野で既知の任意の好適な方
法を使用して測定できる。例えば、リンパ球増殖は、本明細書に記載されるように、カル
ボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルジエステル(CFSE)希釈アッセ
イを使用して、または、[H]チミジン取り込みにより、測定できる。一部の実施形態
では、IL-2ムテインは、リンパ球増殖を、野生型IL-2がリンパ球増殖を誘導する
レベルの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45
%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95
%、またはそれ以下のレベルで、誘導する。
【0099】
一部の実施形態では、IL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して、リンパ球にお
いて、IL-2Rα発現を活性化する能力が低減している。一部の実施形態では、IL-
2ムテインは、リンパ球においてIL-2Rα発現を、野生型IL-2が同じ細胞におい
てIL-2Rα発現を活性化するレベルの1%、5%、10%、15%、20%、25%
、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%
、80%、85%、90%、95%、またはそれ以下のレベルで、活性化する。一部の実
施形態では、リンパ球は、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、CD8+T細胞
は、新たに単離されたCD8+T細胞である。他の実施形態では、CD8+T細胞は、活
性化されたCD8+T細胞である。
【0100】
特定の動作理論に束縛されるものではないが、IL-2Rβ結合の強化及びIL-2R
γの減少を示すIL-2ムテインが、ドミナントネガティブなIL-2アンタゴニスト
として機能し、1つ以上のIL-2依存性の機能を妨げる可能性があると考えられている
。このようなアンタゴニストは、IL-2のIL-2Rβへの結合を妨げ、一方、IL-
2Rβ/IL-2Rγヘテロ二量化も阻害することにより、機能する。さらに、IL-
15シグナル伝達がIL-2Rβ/IL-2Rγ受容体結合を介して機能するので、こ
のようなIL-2ムテインがIL-15アンタゴニストとしても機能できると考えられて
いる。ある特定の実施形態では、IL-2ムテインは、1つ以上のIL-2及び/または
IL-15の機能を阻害する。
【0101】
一部の実施形態では、1つ以上のIL-2及び/またはIL-15の機能を阻害するI
L-2ムテインは、野生型hIL-2に従って番号付けされたアミノ酸位置18、22、
及び126でのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IL-2ムテインのアミノ酸
置換は、野生型hIL-2に従って番号付けされたL18R、Q22E、及びQ126T
を含む。
【0102】
一部の実施形態では、1つ以上のIL-2及び/またはIL-15の機能を阻害するI
L-2ムテインは、野生型hIL-2に従って番号付けされたアミノ酸位置18、22、
126、及び130でのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IL-2ムテインの
アミノ酸置換は、野生型hIL-2に従って番号付けされたL18R、Q22E、Q12
6T、及びS130Rを含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、ムテインは、CD8+T細胞における、IL-2及び/また
はIL-15 STAT5リン酸化の阻害剤である。一部の実施形態では、ムテインは、
CD8+T細胞のIL-2及び/またはIL-15誘導性増殖の阻害剤である。一部の実
施形態では、ムテインは、IL-2依存性TCR誘導性細胞増殖の阻害剤である。
【0104】
IL-2は、Th1、Th9、及びTreg T細胞分化を促進し、Th17分化を阻
害する。それ故、特定の動作理論に束縛されるものではないが、IL-2アンタゴニスト
として機能するIL-2ムテインは、Th1、Th9、及び/若しくはTreg細胞分化
を阻害できる、または、Th17細胞分化を促進できると考えられている。一部の実施形
態では、IL-2ムテインは、IL-2依存性のTh1、Th9、及び/またはTreg
分化の阻害剤である。ある特定の実施形態では、ムテインは、Th17分化のプロモータ
ーである。
【0105】
ある特定の実施形態では、ムテインは、ナチュラルキラー(NK)細胞のIL-2依存
性活性化の阻害剤阻害剤である。NK細胞のIL-2活性化は、本明細書に記載されるよ
うに、当該技術分野で既知の任意の好適な方法により、例えば、IL-2誘導性CD69
発現及び/または細胞傷害を測定することにより、測定できる。
【0106】
IL-2ムテインの組換え発現、発現ベクター、及び宿主細胞
種々の実施形態では、本発明の実施に際して使用されるポリペプチドは、合成ポリペプ
チドであるか、または、組換え核酸分子の発現により産生される。ポリペプチドが、キメ
ラ(例えば、少なくとも変異体IL-2ポリペプチド及び異種ポリペプチドを含有する融
合タンパク質)である場合、変異体IL-2の全部または一部をコードする1つの配列、
及び、異種ポリペプチドの全部または一部をコードするもう1つの配列、を含有するハイ
ブリッド核酸分子によりコードできる。例えば、本明細書に記載される主題のIL-2ム
テインは、細菌で発現させたタンパク質の精製を容易にするために、ヘキサヒスチジンタ
グに融合されても良く、または、真核細胞で発現させたタンパク質の精製を容易にするた
めに、赤血球凝集素タグに融合されても良い。
【0107】
IL-2ムテインをコードするDNA配列を構築するための、及び、適切に形質転換さ
れた宿主におけるこれらの配列を発現させるための方法は、PCRアシスト変異誘発技術
を使用することを含むが、これらに限定されない。アミノ酸残基のIL-2ポリペプチド
への欠失または付加からなる変異は、標準的な組換え技術でも行うことができる。欠失ま
たは付加の場合、IL-2をコードする核酸分子は、適当な制限エンドヌクレアーゼで任
意に消化される。得られるフラグメントは、直接発現、または、例えば、もう1つのフラ
グメントへのライゲーションによるさらなる操作のいずれかができる。核酸分子の2つの
端が互いに重なり合う相補的ヌクレオチドを含有する場合、ライゲーションは容易になる
ことがあるが、平滑末端のフラグメントも、ライゲーションできる。PCRで生成された
核酸も、種々の変異体配列を生成するために使用できる。
【0108】
完全なアミノ酸配列は、逆翻訳遺伝子を構築するために使用できる。IL-2ムテイン
をコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーが合成できる。例えば、所望
のポリペプチドの部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドが合成でき、次
に、ライゲーションできる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補的なアセンブリのた
めの5′突出部または3′の突出部を含有する。
【0109】
組換え分子生物学技術により変更されている核酸分子の発現を介して変異体ポリペプチ
ドを生成することに加えて、主題のIL-2ムテインは、化学的に合成できる。化学的に
合成されたポリペプチドは、当業者らにより日常的に生成される。
【0110】
(合成、部位特異的変異誘導法、または別の方法により)、一旦アセンブリングされる
と、IL-2ムテインをコードするDNA配列は、発現ベクターに挿入され、所望の形質
転換された宿主において、IL-2ムテインの発現のために適切な発現制御配列に動作可
能に連結されることになる。適正なアセンブリは、ヌクレオチドの配列決定、制限マッピ
ング、及び、好適な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現により確認するこ
とができる。当技術分野でよく知られているように、宿主において、高発現レベルのトラ
ンスフェクションされた遺伝子を得るためには、この遺伝子を、選択された発現宿主で機
能する、転写及び翻訳の発現制御配列に動作可能に連結されなければならない。
【0111】
IL-2ムテインをコードするDNA配列はまた、部位特異的変異誘導法、化学合成、
または他の方法で調製されるかどうかにかかわらず、シグナル配列をコードするDNA配
列も含むことができる。このようなシグナル配列は、存在する場合、IL-2ムテインを
発現させるために選択される細胞により認識されるものでなければならない。それは、原
核細胞のもの、真核細胞のもの、またはこれら2つの組み合わせであることができる。そ
れはまた、天然IL-2のシグナル配列であることができる。シグナル配列の組入れは、
それがなされる組換え細胞でIL-2ムテインを分泌することが所望されるかどうかに依
存する。選択される細胞が原核細胞である場合、DNA配列がシグナル配列をコードしな
いことが一般に好ましい。選択される細胞が真核細胞である場合は、シグナル配列がコー
ドされることが一般に好ましく、野生型IL-2のシグナル配列が使用されることが最も
好ましい。
【0112】
IL-2ムテイン融合タンパク質
前述したように、例示的な主題のIL-2ムテインは、主題のIL-2ムテイン及び異
種ポリペプチド(すなわち、IL-2またはその変異体でないポリペプチド)(例えば、
米国特許第6,451,308号を参照のこと)を含む融合ポリペプチドまたはキメラポ
リペプチドとして調製できる。例示的な異種ポリペプチドは、インビボで、キメラポリペ
プチドの循環半減期を増加させることができ、それ故、変異体IL-2ポリペプチドの特
性をさらに強化することがある。種々の実施形態では、循環半減期を増加させるポリペプ
チドは、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、または、IgGの重鎖可変領域を欠
く抗体のIgGサブクラスのFc領域であることがある。例示的なFc領域は、補体固定
及びFc受容体結合を阻害する変異を含むことができるか、または、溶解性があっても良
く、すなわち、補体と結合することができるか、若しくは、抗体依存性補体溶解(ADC
C;1994年12月12日に出願されたUSSN08/355,502)などの別の機
構で細胞を溶解させることができる。
【0113】
「Fc領域」とは、IgGをパパインで消化させることにより生成される、IgGのC
末端ドメインと相同な天然または合成のポリペプチドであることができる。IgGのFc
の分子量は、約50kDaである。変異体IL-2ポリペプチドは、Fc領域全体、また
は、小部分が一部となるキメラポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持する小部
分を含むことができる。加えて、完全長またはフラグメント化されたFc領域は、野生型
分子の多様体であることができる。すなわち、それらは、ポリペプチドの機能に影響を及
ぼし得るか、または、及ぼし得ない変異を含有することができる。以下でさらに記載され
るように、天然の活性は、全ての場合に、必要とされない、または、所望されない。ある
特定の実施形態では、IL-2ムテイン融合タンパク質(例えば、本明細書に記載される
ようなIL-2パーシャルアゴニストまたはアンタゴニスト)は、IgG1、IgG2、
IgG3、またはIgG4 Fc領域を含む。
【0114】
Fc領域は、「溶解性」または「非溶解性」であることができるが、通常は非溶解性で
ある。非溶解性のFc領域は通常、高親和性Fc受容体結合部位及びC′1q結合部位を
欠く。マウスIgGのFcの、高親和性Fc受容体結合部位は、IgGのFcの235位
にLeu残基を含む。従って、Fc受容体結合部位は、Leu235を変異または欠失さ
せることにより破壊できる。例えば、GluのLeu235に対する置換は、Fc領域が
高親和性Fc受容体と結合する能力を阻害する。マウスC′1q結合部位は、IgGのG
lu318残基、Lys320残基、及びLys322残基を変異または欠失させること
により機能的に破壊できる。例えば、Glu318、Lys320、及びLys322を
Ala残基で置換すると、IgG1のFcが、抗体依存性補体溶解を指示することができ
なくなる。対照的に、溶解性のIgGのFc領域は、高親和性のFc受容体結合部位及び
C′1q結合部位を有する。高親和性のFc受容体結合部位は、IgGのFcの235位
にLeu残基を含み、C′1q結合部位は、IgG1のGlu318残基、Lys320
残基、及びLys322残基を含む。溶解性IgGのFcは、これらの部位に野生型残基
または保存的アミノ酸置換を有する。溶解性IgGのFcは、細胞を、抗体依存性細胞傷
害または補体依存性細胞傷害(CDC)の標的にすることができる。また、ヒトIgGに
適切な変異も知られている(例えば、Morrison et al.,The Imm
unologist 2:119-124,1994;及びBrekke et al.
,The Immunologist 2: 125,1994を参照のこと)。
【0115】
他の実施形態では、キメラポリペプチドは、主題のIL-2ムテイン及びFLAG配列
などの抗原性タグとして機能するポリペプチドを含むことができる。FLAG配列は、本
明細書に記載されるように、ビオチン化高特異的抗FLAG抗体により認識される(Bl
anar et al.,Science 256:1014,1992; LeCla
ir et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:
8145,1992も参照のこと)。一部の実施形態では、キメラポリペプチドは、C末
端のc-mycエピトープタグをさらに含む。
【0116】
他の実施形態では、キメラポリペプチドは、変異体IL-2ポリペプチド及びAga2
pアグルチニンサブユニット(例えば、Boder and Wittrup,Natu
re Biotechnol. 15:553-7,1997を参照されたい)などの変
異体IL-2ポリペプチドの、発現を強化するか、または、細胞内局在化を指示するよう
に機能する異種ポリペプチドを含む。
【0117】
他の実施形態では、変異体IL-2及び抗体またはその抗原結合部分を含むキメラポリ
ペプチドが生成できる。キメラタンパク質の抗体または抗原結合成分は、標的部分として
機能できる。例えば、それは、キメラタンパク質を、細胞または標的分子の特定のサブセ
ットに局在させるために使用できる。サイトカイン-抗体キメラポリペプチドを生成する
方法は、例えば、米国特許第6,617,135号に記載されている。
【0118】
変異体IL-2をコードする核酸分子
一部の実施形態では、主題のIL-2ムテインは、単独で、または、上述したようなキ
メラポリペプチドの一部として、核酸分子の発現により得ることができる。IL-2ムテ
インが、野生型IL-2ポリペプチドとの同一性の観点から記載できることと同様に、そ
れらをコードする核酸分子も、野生型IL-2をコードするものと一定の同一性を必然的
に有することになる。例えば、主題IL-2ムテインをコードする核酸分子は、野生型I
L-2(例えば、配列番号2)をコードする核酸と少なくとも50%、少なくとも65%
、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少な
くとも95%(例えば、99%)同一であることができる。
【0119】
提供される核酸分子は、天然配列、または、天然に発生するものと異なる配列を含むこ
とができるが、遺伝子コードの縮重に起因して、同じポリペプチドをコードする。これら
の核酸分子は、RNA若しくはDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、または合成D
NA、例えば、ホスホルアミダイトベースの合成により生成されるもの)、または、これ
らのタイプの核酸中のヌクレオチドの組み合わせ若しくは修飾からなる可能性がある。加
えて、核酸分子は、二本鎖または一本鎖(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖)で
あることができる。
【0120】
核酸分子は、ポリペプチドをコードする配列に限定されず、コード配列(例えば、IL
-2のコード配列)の上流または下流にある非コード配列の一部または全部も含むことが
できる。分子生物学の当業者らは、核酸分子を単離するための所定の手順に精通している
。それらは、例えば、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理すること、または、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することにより生成できる。核酸分子がリボ核酸
(RNA)である場合、分子は、例えば、インビトロ転写により生成できる。
【0121】
本開示の例示的な単離核酸分子は、天然状態にそれだけでは見出されないフラグメント
を含むことができる。従って、本開示は、組換え分子、例えば、核酸配列(例えば、変異
体IL-2をコードする配列)が、ベクター(例えば、プラスミドベクター若しくはウイ
ルスベクター)、または、異種細胞のゲノム(若しくは天然の染色体位置以外の位置での
同種細胞のゲノム)に組み込まれるもの、を含む。
【0122】
上記のような、主題のIL-2ムテインは、キメラポリペプチドの一部として存在して
も良い。上記の異種ポリペプチドに加えて、または、これらの代わりに、主題の核酸分子
は、「マーカー」または「レポーター」をコードする配列を含有できる。マーカーまたは
レポーター遺伝子の例としては、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトラ
ンスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホス
ホトランスフェラーゼ(neo、G418)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR
)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(
TK)、lacz(β-ガラクトシダーゼをコードする)、及びキサンチングアニンホス
ホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が挙げられる。当業者は、さらなる有用な
試薬、例えば、マーカーまたはレポーターの機能を果たすことができるさらなる配列、を
知っているであろう。
【0123】
主題の核酸分子は、哺乳動物の細胞などの、任意の生物学的細胞から得た、IL-2を
コードするDNAに、変異を導入することにより得ることができる。従って、主題の核酸
(及びそれらがコードするポリペプチド)は、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヒツ
ジ、ウマ、ブタ、ウサギ、サル、ヒヒ、イヌ、またはネコのものであることができる。一
実施形態では、核酸分子は、ヒトのものとなる。
【0124】
変異体IL-2遺伝子産物の発現
上記核酸分子は、例えば、ベクターが形質導入されている細胞において、核酸分子の発
現を指示することができるベクター内に含まれる可能性がある。従って、主題のIL-2
ムテインに加えて、主題のIL-2ムテインをコードする核酸分子も含有する発現ベクタ
ー、及び、これらのベクターがトランスフェクションされた細胞は、好ましい実施形態の
1つである。
【0125】
本明細書に記載されるDNA配列を発現するために、全てのベクター及び発現制御配列
が十分に等しく機能するわけではないことが当然理解されるべきである。全ての宿主が、
同じ発現系で十分に等しく機能するわけではない。しかし、当業者は、過度の実験なしに
、これらのベクター、発現制御配列、及び宿主の中で選択しても良い。例えば、ベクター
の選択では、ベクターが、宿主の中で複製しなければならないので、宿主は考慮されなけ
ればならない。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び抗生物質マーカ
ーなどのベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現も考慮されるべきであ
る。例えば、使用できるベクターは、IL-2ムテインをコードするDNAを、コピー数
において増幅させるものを含む。このような増幅可能なベクターは、当該技術分野におい
てよく知られている。それらは、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman、米国
特許第4,470,461号;Kaufman and Sharp,“Constru
ction of a Modular Dihydrafolate Reducta
se cDNA Gene:Analysis of Signals Utilize
d for Efficient Expression”,Mol. Cell. B
iol.,2,pp.1304-19(1982)を参照のこと)、または、グルタミン
シンテターゼ(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号及び欧州出願
公開第338,841号を参照のこと)により、増幅することが可能なベクターを含む。
【0126】
一部の実施形態では、本開示のヒトIL-2ムテインは、ベクター、好ましくは発現ベ
クターから発現されるであろう。ベクターは、宿主細胞における自律複製に有用であるか
、または、宿主細胞に導入される際に、宿主細胞のゲノムに組み込まれても良く、それに
より、宿主のゲノムと共に複製される(例えば、非エピソーム性の哺乳動物ベクター)。
発現ベクターは、それらが作動可能に連結されたコード配列の発現を指示することができ
る。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは多くの場合、プラスミド(
ベクター)の形態をとる。しかし、他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター
(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)も含ま
れる。
【0127】
例示的な組換え発現ベクターは、発現に使用されることになる宿主細胞に基づき選択さ
れ、発現されることになる核酸配列に作動可能に連結された、1つ以上の制御配列を含む
ことができる。
【0128】
発現構築物またはベクターは、原核生物または真核生物の宿主細胞における、IL-2
ムテインまたはその多様体の発現のために設計できる。
【0129】
ベクターのDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術により、原核ま
たは真核細胞に導入できる。宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトする好適な方法
は、Sambrook et al.(1989),Molecular Clonin
g:A Laboratory Manual」(2d ed.,Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.
)、及び、他の標準的な分子生物学の研究室マニュアルに見出すことができる。
【0130】
原核生物におけるタンパク質の発現は多くの場合、構成的または誘導的プロモーターを
含有するベクターと、Escherichia coli中で実施される。E.coli
において組換えタンパク質発現を最大化する戦略は、例えば、Gottesman(19
90)in Gene Expression Technology:Methods
in Enzymology 185(Academic Press, San D
iego, Calif.),pp. 119-128及びWada et al.(1
992) Nucleic Acids Res. 20:2111-2118に見出す
ことができる。細胞由来のIL-2ムテインまたはその多様体を、成長させる、採取する
、破壊する、または抽出するプロセスは、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に
組み込まれる、米国特許第4,604,377号;同第4,738,927号;同第4,
656,132号;同第4,569,790号;同第4,748,234号;同第4,5
30,787号;同第4,572,798号;同第4,748,234号;及び同第4,
931,543号に実質的に記載されている。
【0131】
一部の実施形態では、組換えIL-2ムテインまたはそれらの生物学的に活性な多様体
も、酵母またはヒト細胞などの真核生物で作製できる。好適な真核宿主細胞としては、昆
虫細胞(培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキ
ュロウイルスベクターの例としては、pAcシリーズ(Smith et al.(19
83)Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)、及び、pVLシリ
ーズ(Lucklow and Summers(1989)Virology 170
:31-39)が挙げられる);酵母細胞(酵母S.cerenvisiaeにおける発
現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldari et al.(
1987)EMBO J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan and
Herskowitz(1982)Cell 30:933-943)、pJRY88(
Schultz et al.(1987)Gene 54:113-123)、pYE
S2(Invitrogen Corporation,San Diego,Cali
f.)、及びpPicZ(Invitrogen Corporation,San D
iego,Calif.)が挙げられる);または、哺乳動物細胞(哺乳動物の発現ベク
ターとしては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)及び
pMT2PC(Kaufman et al.(1987)EMBO J. 6:187
:195)が挙げられる)が挙げられる。好適な哺乳動物細胞としては、チャイニーズハ
ムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞が挙げられる。哺乳動物細胞では、発現ベ
クターの制御機能は多くの場合、ウイルス制御エレメントにより提供される。例えば、一
般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス
、及びシミアンウイルス40に由来する。原核細胞及び真核細胞の両方に好適な他の発現
系の場合は、Sambrook et al.(1989)Molecular Clo
ning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Sp
ring Harbor Laboratory Press,Plainview,N
.Y.)の第16章及び第17章を参照のこと。Goeddel(1990)in Ge
ne Expression Technology:Methods in Enzy
mology 185(Academic Press,San Diego,Cali
f.)を参照のこと。
【0132】
本開示のヒトIL-2ムテインをコードする配列は、目的の宿主細胞における発現につ
いて最適化することができる。配列のG-Cの含有量は、宿主細胞で発現させた既知の遺
伝子を参照することにより計算されるように、所与の細胞宿主について平均したレベルに
調整できる。コドン最適化のための方法は、当該技術分野においてよく知られている。コ
ード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、また
は多くとも100%が、特定の宿主細胞における発現について最適化されるように、IL
-2ムテインコード配列内のコドンは最適化され、宿主細胞における発現を強化できる。
【0133】
使用に好適なベクターとしては、細菌中で使用されるT7系ベクター(例えば、Ros
enberg et al.,Gene 56:125,1987を参照のこと)、哺乳
動物細胞中で使用されるpMSXND発現ベクター(Lee and Nathans,
J. Biol. Chem. 263:3521,1988)、ならびに、昆虫細胞中
で使用されるバキュロウイルス由来ベクター(例えば、Clontech,Palo A
lto(カリフォルニア州)製の発現ベクターpBacPAK9)が挙げられる。
【0134】
一部の実施形態では、このようなベクターにおいて主題のIL-2ムテインをコードす
る核酸インサートは、配列を、例えば、発現が求められる細胞型に基づき選択されるプロ
モーターに作動可能に連結できる。
【0135】
発現制御配列の選択では、種々の因子も考慮されるべきである。これらは、例えば、配
列の相対強度、制御可能性、及び主題のIL-2ムテインをコードする実際のDNA配列
との適合性、特に、潜在的な二次構造に関するものを含む。宿主は、選択されたベクター
との適合性、本発明のDNA配列によりコードされる産物の毒性、分泌特性、ポリペプチ
ドを正しく折りたたむ能力、発酵または培養要件、及びDNA配列によりコードされる産
物の精製の容易さを考慮することにより選択されるべきである。
【0136】
これらのパラメータのうちで、当業者は、例えば、CHO細胞またはCOS7細胞を使
用して、発酵上または大規模な動物培養物中で、所望のDNA配列を発現することになる
種々のベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを選択しても良い。
【0137】
発現制御配列及び発現ベクターの選択が、一部の実施形態では、宿主の選択に依存する
ことになる。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核宿
主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノ
ウイルス、及びサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を有するベクターが挙げら
れる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、col E1、pCRI、pER32z
、pMB9、及びそれらの誘導体を含むE.coli由来のプラスミドなどの既知の細菌
プラスミド;RP4などの広宿主域プラスミド;ファージDNA、例えば、ラムダファー
ジの多数の誘導体、例えば、NM989、ならびにM13及び糸状一本鎖DNAファージ
などの他のDNAファージが挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターは、2μプラス
ミド及びその誘導体を含む。昆虫細胞に有用なベクターとしては、pVL941及びpF
astBac(商標)1(GibcoBRL,Gaithersburg,Md.)が挙
げられる。Cate et al.,“Isolation Of The Bovin
e And Human Genes For Mullerian Inhibiti
ng Substance And Expression Of The Human
Gene In Animal Cells”, Cell,45,pp.685-9
8(1986)。
【0138】
加えて、多種多様な発現制御配列のうちのいずれかは、これらのベクターで使用できる
。このような有用な発現制御配列は、上述の発現ベクターの構造遺伝子と関連する発現制
御配列を含む。有用な発現制御配列の例としては、例えば、SV40またはアデノウイル
スの初期プロモーター及び後期プロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC
系、ラムダファージの主要なオペレーター領域及びプロモーター領域、例えば、PL、f
dコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素
のプロモーター、酸ホスファターゼのプロモーター、例えば、PhoA、酵母a接合系の
プロモーター、バキュロウイルスの多角体プロモーター、ならびに原核細胞若しくは真核
細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、な
らびにそれらの種々の組み合わせが挙げられる。
【0139】
T7プロモーターは、細菌に使用することができ、多角体プロモーターは、昆虫細胞に
使用することができ、サイトメガロウイルスプロモーターまたはメタロチオネインプロモ
ーターは、哺乳動物の細胞に使用できる。さらに、高等真核生物の場合、組織特異的プロ
モーター及び細胞型特異的プロモーターが幅広く利用可能である。これらのプロモーター
は、それらが体内の所与の組織または細胞型における核酸分子の発現を指示する能力のた
めにそのように呼ばれる。当業者らは、多数のプロモーター及び核酸の発現を指示するこ
とに使用できる他の制御エレメントについて十分に把握している。
【0140】
挿入された核酸分子の転写を容易にする配列に加えて、ベクターは、複製起点及び選択
マーカーをコードする他の遺伝子を含有できる。例えば、ネオマイシン耐性(neo
遺伝子は、それが発現される細胞にG418耐性を付与し、それにより、トランスフェク
ションされた細胞の表現型の選択が可能になる。当業者らは、所与の制御エレメントまた
は選択マーカーが特定の実験状況での使用に適するかどうかを容易に決定できる。
【0141】
本発明に使用できるウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイ
ルス、及びアデノ随伴のベクター、ヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40
)、及びウシパピローマウイルスベクターが挙げられる。(例えば、Gluzman(E
d.),Eukaryotic Viral Vectors,CSH Laborat
ory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)
【0142】
本明細書で開示された主題のIL-2ムテインをコードする核酸分子を含有及び発現す
る原核細胞または真核細胞も、本発明の特色である。本発明の細胞は、トランスフェクシ
ョンされた細胞、すなわち、核酸分子、例えば、変異体IL-2ポリペプチドをコードす
る核酸分子が組換えDNA技術を用いて導入されている細胞である。このような細胞の後
代も、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0143】
発現系の正確な構成要素は、重要ではない。例えば、IL-2ムテインは、細菌である
E.coliなどの原核宿主、または、昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)または哺乳動
物の細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、またはHeLa細胞)などの真核
宿主で産生できる。これらの細胞は、American Type Culture C
ollection(Manassas,Va.)を含む多くの供給源から入手可能であ
る。発現系の選択では、構成要素が互いに適合性があることのみが重要である。当業者ら
は、このような決定を下すことが可能である。さらに、ガイダンスが発現系の選択に必要
される場合、当業者らは、Ausubel et al.(Current Proto
cols in Molecular Biology,John Wiley and
Sons,New York,N.Y.,1993)及びPouwelsら et a
l.(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,
1985 Suppl.1987)を参考にしても良い。
【0144】
発現させたポリペプチドは、所定の生化学的手順を使用して発現系から精製することが
でき、例えば、本明細書に記載されるような治療薬として使用できる。
【0145】
一部の実施形態では、得られたIL-2ムテインは、ムテインを産生させるのに使用さ
れる宿主生物に応じてグリコシル化または非グリコシル化されることになる。細菌が宿主
として選択される場合、続いて、産生したIL-2ムテインは、非グリコシル化されるこ
とになる。他方では、真核細胞は、おそらく天然IL-2がグリコシル化される方法と同
じ方法ではないが、IL-2ムテインをグリコシル化するであろう。形質転換された宿主
により産生されるIL-2ムテインは、任意の好適な方法に従って精製できる。IL-2
を精製するための種々の方法が知られている。例えば、Current Protoco
ls in Protein Science,Vol 2.Eds:John E.
Coligan,Ben M. Dunn,Hidde L. Ploehg,Davi
d W. Speicher,Paul T. Wingfield,Unit 6.5
(Copyright 1997,John Wiley and Sons,Inc.
)を参照のこと。IL-2ムテインは、陽イオン交換、ゲル濾過、及び/または逆相液体
クロマトグラフィーを使用して、E.coliで産生される封入体から、または、所与の
ムテインを産生する哺乳動物または酵母培養物のいずれかに由来する馴化培地から、単離
できる。
【0146】
IL-2ムテインをコードするDNA配列を構築する別の例示的な方法は、化学合成に
よるものである。これは、記載される特性を示すIL-2ムテインをコードするタンパク
質配列の、化学的手段によるペプチドの直接合成を含む。この方法は、IL-2の、IL
-2Rα、IL-2Rβ、及び/またはIL-2Rγとの相互作用に影響を及ぼす位置に
、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方を組み込むことができる。あるいは、所望のI
L-2ムテインをコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成装置を使用して、化学的
手段により合成できる。このようなオリゴヌクレオチドは、所望のIL-2ムテインのア
ミノ酸配列に基づき設計され、組換えムテインが産生されることになる宿主細胞に好まし
いコドンを選択することが好ましい。この点に関しては、遺伝子コードが、縮重している
-アミノ酸が複数のコドンによりコードされることがある-ことが十分に認識されている
。例えば、Phe(F)は、2つのコドンであるTICまたはTTTによりコードされ、
Tyr(Y)は、TACまたはTATによりコードされ、his(H)は、CACまたは
CATによりコードされる。Trp(W)は、単一のコドンであるTGGによりコードさ
れる。従って、特定のIL-2ムテインをコードする所与のDNA配列に対して、そのI
L-2ムテインをコードすることになる多くのDNA縮重配列が存在するであろうことが
理解されるであろう。例えば、図2に示されるムテイン5-2に好ましいDNA配列に加
えて、示されるIL-2ムテインをコードする多くの縮重DNA配列が存在するであろう
ことが理解されるであろう。これらの縮重DNA配列は、本開示の範囲内であるとみなさ
れる。従って、本発明の文脈における「それらの縮重多様体」は、特定のムテインをコー
ドし、それにより、これの発現を可能にする全てのDNA配列を意味する。
【0147】
IL-2ムテインの生物活性は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によりアッセ
イできる。このようなアッセイは、PHA-blast増殖及びNK細胞増殖を含む。
【0148】
治療法
一部の実施形態では、主題のIL-2ムテイン及び/またはそれらを発現する核酸は、
対象に投与して、異常なアポトーシスまたは分化プロセスと関連する障害(例えば、能動
または受動免疫を生成することにより、例えば、癌などの細胞増殖障害または細胞分化障
害)を治療できる。このような疾患の治療では、開示されるIL-2ムテインは、血管漏
出症候群の低減などの有利な性質を有することがある。
【0149】
細胞増殖障害及び/または細胞分化障害の例としては、癌(例えば、癌腫、肉腫、転移
性障害、または造血新生物障害、例えば、白血病)が挙げられる。転移性腫瘍は、前立腺
、結腸、肺、乳房、及び肝臓の腫瘍を含むがこれらに限定されない多数の原発性腫瘍型か
ら生じる可能性がある。本発明の組成物(例えば、変異体IL-2ポリペプチド及び/ま
たはそれらをコードする核酸分子)は、ウイルス(例えば、AIDSまたはインフルエン
ザ)感染している患者にも投与することができる。
【0150】
変異体IL-2ポリペプチドは、腎臓癌若しくは黒色腫、または任意のウイルス疾患を
含む任意のタイプの癌に罹患している、これに罹患している疑いがある、または、これを
発症する高いリスクがあり得る患者を治療するために使用できる。例示的な癌腫としては
、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸、及び卵巣の組織から形成するものが挙げ
られる。この用語は、癌性及び肉腫性組織からなる悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。
【0151】
増殖性障害のさらなる例としては、造血新生物障害が挙げられる。
【0152】
増殖性障害及び/または分化障害の他の例としては、皮膚障害が挙げられる。皮膚障害
は、真皮層、表皮層、または皮下層の細胞または細胞若しくは層の群の異常活性、あるい
は、真皮-表皮接合部の異常を伴うことがある。例えば、皮膚障害は、ケラチノサイト(
例えば、過剰増殖性の基底層及び基底層直上のケラチノサイト)、メラノサイト、ランゲ
ルハンス細胞、メルケル細胞、免疫細胞、及び表皮層、例えば、基底層(発芽層)、有棘
層、顆粒層、透明層、または角質層、のうちの1つ以上において見出される他の細胞の異
常活性を伴うことがある。他の実施形態では、障害は、真皮層、例えば、乳頭層または網
状層において見出される真皮細胞、例えば、真皮内皮細胞、線維芽細胞、免疫細胞(例え
ば、マスト細胞またはマクロファージ)の異常活性を伴うことがある。
【0153】
皮膚障害の例としては、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎(湿疹)、例えば、剥脱性皮膚炎
、またはアトピー性皮膚炎、毛孔性紅色粃糠疹、バラ色粃糠疹、類乾癬、苔癬状粃糠疹、
扁平苔癬、光沢苔癬、魚鱗癬様紅皮症、角皮症、皮膚疾患、円形脱毛症、壊疽性膿皮症、
白斑、類天疱瘡(例えば、眼部瘢痕性類天疱瘡または水疱性類天疱瘡)、蕁麻疹、汗孔角
化症、関節包を覆う上皮関連細胞の過剰増殖及び炎症を伴う関節リウマチ;脂漏性皮膚炎
及び日光皮膚炎などの皮膚炎;脂漏性角化症、老人性角化症、光線性角化症、光誘起角化
症、及び毛包角化症などの角化症;尋常性ざ瘡;ケロイド及びケロイド形成に対する予防
;母斑;疣贅、コンジローム、または尖圭コンジローマ、及び性病性疣贅などのヒトパピ
ローマウイルス(HPV)感染を含む疣;白板症;扁平苔癬;及び角膜炎が挙げられる。
皮膚障害は、皮膚炎、例えば、アトピー性皮膚炎若しくはアレルギー性皮膚炎、または乾
癬である可能性がある。
【0154】
治療に適した患者は、乾癬も有することがある。「乾癬」という用語は、その医学的意
味、つまり、主に皮膚が罹患し、隆起性、肥厚性、鱗屑性、非瘢痕性の病変をもたらす疾
患という意味を有することが意図される。病変は通常、重なり合った光沢のある鱗屑で覆
われた輪郭の鮮明な紅斑性丘疹である。鱗屑は通常、銀色またはわずかに乳白色である。
爪の病変が頻繁に起こり、結果として爪の陥凹、剥離、肥厚、及び変色がもたらされる。
乾癬は、関節炎と関連することがあり、麻痺性である場合がある。ケラチノサイトの過剰
増殖は、表皮炎症及びケラチノサイトの分化の低減と共に乾癬性表皮過形成の重要な特徴
である。乾癬を特徴づけるケラチノサイトの過剰増殖を説明するために、複数の機序が引
き合いに出されている。細胞性免疫の障害は、乾癬の発症機序に関与している。乾癬性障
害の例としては、慢性定常性乾癬、尋常性乾癬、発疹性(滴状)乾癬、乾癬性紅皮症、汎
発性膿疱性乾癬(Von Zumbusch型)、環状膿疱性乾癬、及び限局性膿疱性乾
癬が挙げられる。
【0155】
患者に直接投与する方法に代えてまたはそれに加えて、一部の実施形態では、変異体I
L-2ポリペプチドは、エクスビボでの方法に使用できる。例えば、細胞(例えば、末梢
血リンパ球、または患者から単離され、培養物中に静置若しくは維持される精製されたリ
ンパ球の集団)は、インビトロの培養培地中で培養することができ、接触させるステップ
は、IL-2変異体を培養培地に添加することにより影響を受ける可能性がある。培養ス
テップは、例えば、増殖を刺激するため、または、目的の抗原(例えば、癌抗原またはウ
イルス抗原)に対し反応性がある細胞の集団を増殖させるために、細胞が他の薬剤で刺激
または処理されるさらなるステップを含むことができる。次に、細胞は、処理された後に
、患者に投与される。
【0156】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるIL-2アンタゴニストとして機能す
る主題のIL-2ムテインは、1つ以上のIL-2及び/またはIL-15依存性の機能
の抑制が有用である1つ以上の状態の治療に有用である。ある特定の実施形態では、本明
細書に記載されるIL-2ムテインアンタゴニストは、IL-2Rβ/IL-2Rγヘテ
ロ二量化及び下流シグナル伝達の抑制が有用である1つ以上の疾患または状態(例えば、
GVDHまたは白血病)の治療に使用される。
【0157】
一実施形態では、治療の方法は、移植片対宿主病(GVHD)の治療のためのものであ
る。一部の実施形態では、治療は、IL-2アンタゴニストである治療的有効量のIL-
2ムテインを、GVHDに罹患している対象に投与するステップを含む。IL-2及びI
L-15は、GVHDに寄与することが知られている((Ferrara et al.
,Journal of Immunology 137:1874(1986);及び
Blaser et al.,Blood 105:894(2005))。それ故、特
定の動作理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載されるIL-2アンタゴニス
トは、GVHDの治療に有用であると考えられている。一実施形態では、GVHDの治療
のためのIL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して、IL-2ムテインのIL-2
Rγ受容体への結合を低減させる1つ以上の変異を含む(例えば、本明細書に記載され
るようなIL-2Rγ受容体結合を低減させる変異のうちの任意の1つ)。一部の実施
形態では、IL-2Rγ受容体の結合親和性を低減させる変異は、アミノ酸置換L18
R、Q22E、Q126T、及びS130Rを含む。一部の実施形態では、IL-2Rγ
受容体の結合親和性がさらに減少したIL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して
、IL-2Rβに対するIL-2ムテイン結合親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸変
異(例えば、本明細書に記載されるようにIL-2Rβ結合を増加させる変異のうちの任
意の1つ)をさらに含む。一部の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸置換L8
0F、R81D、L85V、I86V、及びI92Fをさらに含む。一部の実施形態では
、IL-2ムテインは、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85
V、Q126T、S130R、I86V、及びI92Fを含む。
【0158】
別の実施形態では、治療方法は、IL-2及び/またはIL-15媒介性白血病の治療
のためのものである。特定の実施形態では、白血病は、成人T細胞白血病(ATL)であ
る。ATLは、IL-2及びIL-15による自己分泌シグナル、ならびに、IL-9に
よるパラ分泌シグナルを伴う初期の成長段階を示すCD4+T細胞の悪性増殖を特徴とす
る。このようなサイトカイン依存性増殖は、急性ATLでなく、慢性ATL及びくすぶり
型ATLに罹患している患者において明らかである。それ故、特定の動作理論に束縛され
るものではないが、IL-2パーシャルアゴニスト及びアンタゴニストは、白血病のこの
ような形態を治療するために使用できると考えられている。一部の実施形態では、治療は
、IL-2アンタゴニストである治療的有効量のIL-2ムテインを、成人T細胞白血病
に罹患している対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、患者は、慢性AT
L及びくすぶり型ATLに罹患している。一実施形態では、ATLの治療のためのIL-
2ムテインは、野生型IL-2と比較して、IL-2ムテインのIL-2Rγ受容体へ
の結合を低減させる1つ以上の変異(例えば、本明細書に記載されるようなIL-2Rγ
受容体結合を低減させる変異のうちの任意の1つ)を含む。一部の実施形態では、IL
-2Rγ受容体の結合親和性を減少させる変異は、アミノ酸置換L18R、Q22E、
Q126T、及びS130Rを含む。一部の実施形態では、IL-2Rγ受容体の結合
親和性がさらに減少したIL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して、IL-2Rβ
に対するIL-2ムテイン結合親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸変異(例えば、本
明細書に記載されるようにIL-2Rβ結合を増加させる変異のうちの任意の1つ)をさ
らに含む。一部の実施形態では、IL-2ムテインは、アミノ酸置換L80F、R81D
、L85V、I86V、及びI92Fをさらに含む。一部の実施形態では、IL-2ムテ
インは、アミノ酸置換L18R、Q22E、L80F、R81D、L85V、Q126T
、S130R、I86V、及びI92Fを含む。
【0159】
医薬組成物及び投与方法
一部の実施形態では、主題のIL-2ムテイン及び核酸は、医薬組成物を含む組成物に
組み込むことができる。このような組成物は通常、ポリペプチドまたは核酸分子及び薬学
的に許容される担体を含む。
【0160】
医薬組成物は、意図される投与経路と適合性があるように製剤化される。本発明の変異
体IL-2ポリペプチドは、経口投与されても良いが、非経口経路により投与されること
になる可能性が高い。投与の非経口経路の例としては、例えば、静脈内投与、皮内投与、
皮下投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、及び直腸内投与が挙げられる。非経口用途に
使用される溶液または懸濁液は、次の構成成分:注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレ
ングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈
剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫
酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、ク
エン酸、またはリン酸などの緩衝液、及び、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど等
張性を調整するための薬剤を含むことができる。pHは、一塩基性及び/若しくは二塩基
性リン酸ナトリウム、塩酸、または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で(例えば、約
7.2~7.8、例えば、7.5のpHに)調整できる。非経口製剤は、アンプル、使い
捨て注射器、またはガラス製若しくはプラスチック製の複数回投与のバイアルに封入でき
る。
【0161】
注射使用に適する医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び、滅
菌注射用溶液若しくは分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、好適な
担体としては、生理食塩液、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,P
arsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)が挙げられる
。全ての場合において、組成物は滅菌であり、容易な注射針通過性(syringabi
lity)が存在するような程度にまで流動性がなければならない。組成物は、製造及び
保管条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対し保護さ
れなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロ
ール、プロピレングリコール、及び液体のポリエチレングリコールなど)、ならびにそれ
らの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。例えば、レシチンな
どのコーティングを使用すること、分散液の場合に必要とされる粒子サイズを維持するこ
と、及び界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムを使用することにより適正な流体
性が維持できる。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、
クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成できる。
多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖;マンニトール、ソルビトールなどのポリ
アルコール;塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収
は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物
中に含むことにより、もたらされることができる。
【0162】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中の必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、上
記に列挙された成分の1つとまたはそれらの組み合わせと組み込み、続いて、濾過の滅菌
処理をすることにより、調製できる。一般に、分散液は、基本的な分散媒、及び、上記で
列挙されたものに由来する必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、活性化合物
を組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好
ましい調製法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらは、任意のさらなる所望の成分を
加えた活性成分の粉末を、予め滅菌濾過されたその溶液から、生じる。
【0163】
経口組成物は、使用される場合、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口療
法薬投与の場合、活性化合物は、賦形剤と組み込むことができ、錠剤、トローチ、または
カプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で使用できる。経口組成物はまた、マウスウ
ォッシュとして使用される流動性担体を使用して調製できる。薬学的に適合性のある結合
剤及び/または補助剤材料は、組成物の一部として含まれる可能性がある。錠剤、丸剤、
カプセル、トローチなどは、次の成分または性質の類似する化合物:結晶セルロース、ト
ラガカントゴム、若しくはゼラチンなどの結合剤;デンプン若しくはラクトースなどの賦
形剤、アルギン酸、Primogel(商標)、若しくはトウモロコシデンプンなどの崩
壊剤;ステアリン酸マグネシウム若しくはSterotes(商標)などの滑沢剤;コロ
イド状の二酸化ケイ素などの滑剤;スクロース若しくはサッカリンなどの甘味剤;または
ペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジ香料などの着香剤のうちのいずれか
を含有する可能性がある。
【0164】
吸入投与の場合、主題のIL-2ムテインまたはそれらをコードする核酸は、好適な噴
射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する加圧容器若しくはディスペンサー、また
は、ネブライザからのエアゾールスプレーの形態で送達される。このような方法としては
、米国特許第6,468,798号に記載されるものが挙げられる。
【0165】
主題のIL-2ムテインまたは核酸の全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるも
のである可能性がある。経粘膜または経皮投与の場合、浸透されることになるバリアに適
している浸透剤が、製剤に使用される。このような浸透剤は一般に、当該技術分野で知ら
れており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄薬、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体を含む
。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用により、実施できる。経皮投与の場合、
活性化合物は、当該技術分野で一般に知られているような軟膏、膏薬、ゲル、またはクリ
ームに製剤化される。
【0166】
一部の実施形態では、化合物(変異体IL-2ポリペプチドまたは核酸)はまた、(例
えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を有する)坐剤または経直
腸送達用の停留浣腸の形態で調製できる。
【0167】
一部の実施形態では、化合物(主題のIL-2ムテインまたは核酸)はまた、McCa
ffrey et al.(Nature 418:6893,2002)、Xia e
t al.(Nature Biotechnol.20:1006-1010,200
2)、またはPutnam(Am. J. Health Syst. Pharm.
53:151-160,1996,Am. J. Health Syst. Phar
m. 53:325,1996に正誤表)に記載された方法を含むがこれらに限定されな
い、当該技術分野で知られている方法を使用するトランスフェクションまたは感染により
投与できる。
【0168】
一実施形態では、主題のIL-2ムテインまたは核酸は、インプラント及びマイクロカ
プセル化された送達系を含む放出制御製剤などの、身体からの迅速な排泄から、変異体I
L-2ポリペプチドを保護することになる担体と調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ
無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分
解性の生体適合性ポリマーが使用できる。このような製剤は、標準的な技術を使用して調
製できる。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharma
ceuticals,Inc.から商業的に入手できる。(ウイルス抗原に対するモノク
ローナル抗体で感染した細胞を標的とするリポソームを含む)リポソーム懸濁液はまた、
薬学的に許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,
811号に記載されるように、当業者らに知られている方法に従い調製できる。
【0169】
このような主題のIL-2ムテインまたは核酸化合物の投薬量、毒性、及び治療的有効
性は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)及びED50(集団の50%
において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標
準的な薬学的手順により決定できる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、
これは、比LD50/ED50と表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好まし
い。毒性の副作用を示す化合物が使用されても良いが、感染していない細胞への潜在的損
傷を最小化して、それにより、副作用を低減するために、このような化合物を影響を受け
る組織部位に向ける送達系を設計するように注意が払われるべきである。
【0170】
細胞培養物アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトに使用される幅広い投薬
量を処方することに使用できる。このような化合物の投薬量は、毒性のほとんどないまた
は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、用いられ
る剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動しても良い。本発明の方法で
使用される任意の化合物の場合、治療有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定で
きる。用量は、細胞培養物中で決定さるようなIC50(すなわち、最大半量の症状の阻
害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成するために、動物モデ
ルにおいて処方されても良い。このような情報は、ヒトの有用な用量をより正確に決定す
るために使用できる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測
定しても良い。
【0171】
本明細書で定義されるように、主題のIL-2ムテインの治療的有効量(すなわち、有
効な投薬量)は、選択されるポリペプチドに依存する。例えば、患者体重1kg当たり約
0.001~0.1mgの範囲の単回投与量が投与できるが、一部の実施形態では、約0
.005、0.01、0.05mg/kgが投与されても良い。一部の実施形態では、6
00,000IU/kgが投与される(IUは、リンパ球増殖バイオアッセイにより決定
することができ、World Health Organization 1st In
ternational Standard for Interleukin-2(ヒ
ト)に定められた国際単位(IU)で表される)。投薬量は、PROLEUKIN(登録
商標)について規定されたものと同様であっても良いが、これよりも少ないと予測される
。組成物は、1日おきに1回を含む、日に1回以上~週に1回以上投与できる。当業者は
、対象の、疾患若しくは障害の重症度、過去の治療、全般的な健康状態、及び/または年
齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されないある特定の因子が、対象を
効果的に治療することに必要とされる投薬量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを理
解するであろう。さらに、治療的有効量の主題のIL-2ムテインでの対象の治療は、単
回治療を含むことができ、または一連の治療を含むことができる。一実施形態では、組成
物は、5日間、8時間ごとに投与し、続いて、2~14日間、例えば、9日間、の休薬期
間、続いて、さらに5日間、8時間ごとに投与する。
【0172】
医薬組成物は、投与のための使用説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサー
に含まれる可能性がある。
【0173】
本明細書で提供される本発明のある特定の実施形態について記載する次の実施例が提供
され、これらは、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0174】
実施例1:酵母の表面におけるIL-2の機能的発現
IL-2は既にバクテリオファージ上にディスプレイされている(Buchli et
al.,Arch. Biochem. Biophys.339:79-84,19
97)が、従来の系は、指向的進化に従わず、それ故、IL-2Rのサブユニットに対す
る結合が改善されたIL-2の変異体を得るのに好適でない。これを克服するため、IL
-2を、酵母細胞の表面に発現させた。ヒトIL-2DNAを、酵母ディスプレイベクタ
ーであるpCT302にクローニングした。Saccharomyces cerevi
siaeの株EBY100を、pCT302_IL-2ベクターで形質転換し、SD-C
AAプレート上30℃で3日間成長させた。IL-2酵母の個別のコロニーを、SD-C
AA中30℃で一晩成長させ、次に、20℃で2日間SGCAAに導入した。酵母を、ビ
オチン化γの存在下で、四量体化ビオチン化IL-2Rβ、ビオチン化γ、またはビオチ
ン化IL-2Rβで染色した。IL-2Rβ及びγの外部ドメインを、C末端でビオチン
化し、染色及び選別試薬として使用されるフィコエリトリンコンジュゲートストレプトア
ビジンに連結させた。氷上で15分間、2μΜのビオチン化IL-2Rβを、470nM
のストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE、Invitrogen)とイン
キュベーションすることにより、IL-2Rβ四量体を形成した。これらの受容体「四量
体」は、低親和性単量体外部ドメイン(ECD)のIL-2との相互作用の結合活性を強
化して、ライブラリからのIL-2多様体の最大限の回収を可能にした。溶体の野生型I
L-2と同様に、IL-2Rβ単独に弱く結合する、酵母により提示されるIL-2は、
γ単独には全く結合しないが、フローサイトメトリー(データは示さない)により見られ
る対角染色(diagonal staining)で証明されるように、IL-2Rβ
の存在下ではγに結合した。従って、酵母ディスプレイされるIL-2は、可溶性のIL
-2に見られる、細胞上におけるヘテロ二量体受容体複合体の協調的アセンブリを繰り返
し、それ故、ライブラリ選択のためのプラットフォームとして適する。
【0175】
実施例2:IL-2変異体ライブラリの構築及びスクリーニング
第1世代のインビトロ戦略は、IL-2遺伝子全体のエラープローンPCRライブラリ
を作成することであった。第1世代の変異体IL-2ライブラリは、次のように構築した
。野生型ヒトインターロイキン2(IL-2)を、製造者の使用説明書に従い、Gene
Morph(登録商標)IIランダム変異誘発キットを使用するエラープローン変異誘発
にかけた。次のプライマーを、エラープローンPCRのために使用した:5’-GCAC
CTACTTCAAGTTCTAC-3’(IL-2_errprone_for)及び
5’-GCCACCAGAGGATCC-3’(IL-2_errprone_rev)
。次に、次のプライマー:5’AGTGGTGGTGGTGGTTCTGGTGGTGG
TGGTTCTGGTGGTGGTGGTTCTGCTAGCGCACCTACTTCA
AGTTCTAC-3’(配列番号33)及び5’ACACTGTTGTTATCAGA
TCTCGAGCAAGTCTTCTTCGGAGATAAGCTTTTGTTCGCC
ACCAGAGGATCC-3’(配列番号34)を使用して、エラープローンPCR反
応の生成物を増幅して、約130μgのDNAを得た。酵母ディスプレイベクターpCT
302を、制限酵素NheI及びBamHIでダブル消化し、ゲル精製した。エレクトロ
コンピテントEBY100酵母と、IL-2DNA及びpCT302DNAを、5:1の
μg比で共に混合した。酵母を電気穿孔して、ライブラリDNAの酵母への移入を容易に
した。この電気穿孔を約20回繰り返し、最終ライブラリサイズ1×10の形質転換体
を得た。
第1世代のIL-2ライブラリの選択:
ライブラリは、IL-2Rβに対する選択に6回かけた(図2A)。第1回では、ライ
ブラリを470nMの四量体のIL-2Rβで標識した。これは、2μMのビオチン化I
L-2Rβを470nMのストレプトアビジン-フィコエリトリンコンジュゲート(SA
V-PE)と15分間混合することにより形成した。ライブラリを、IL-2Rβと1.
5時間インキュベーションし、PBS-BSA緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水+ウシ血清
アルブミン)で洗浄し、Miltenyi 抗PE MicroBeadsと4℃で20
分間インキュベーションした。細胞を再度洗浄し、選択用の磁気カラムに流した。IL-
2Rβの濃度(2回目:1μM、3回目:1μM、4回目:300nM、5回目:300
nM、6回目:100nM、全て単量体IL-2Rβ)のみを変更して、この選択方法を
さらに5回反復することに成功した。選択の終わりに、5回目及び6回目の酵母培養物を
SD-CAAプレート上に塗布し、これが、個別の酵母コロニーを生じた。得られる18
の酵母コロニーを、500nMのIL-2Rβへの結合について試験した。これらの18
の酵母コロニーから単離されたIL-2DNAを、配列決定した。これらの18個の酵母
コロニー間の、野生型IL-2の対応する残基と比較したアミノ酸の差異を、表1に示す

【表1】

第2世代のIL-2ライブラリのライブラリ構築:
L85Vを含有する高い割合のクローンに基づき、第2のIL-2ライブラリを、主に
疎水性のコア残基に焦点を当てて構築した。Q74、L80、R81、L85、I86、
I89、I92、V93に変異を有する部位特異的IL-2ライブラリを構築した。Q7
4を、H/K/N/Q/R/Sとして変化させた。R81は、NNK縮重コドンを伴う2
0アミノ酸の全てで変化させた。ここで、Nは、アデニン、チミン、グアニン、及びシト
シンヌクレオシドのそれぞれ25%の混合物を表し、Kは、グアニンまたはチミンのいず
れかである。残りの残基を、F/I/L/Vとして変化させた。ライブラリを、次のオリ
ゴを使用するアセンブリPCRにより構築した。
IL-2_affmat_ass01
【化33】

(配列番号35)
IL-2_affmat_ass02
【化34】

(配列番号36)
IL-2_affmat_ass03
【化35】

(配列番号37)
IL-2_affmat_ass04B
【化36】

(配列番号38)
IL-2_affmat_ass05B
【化37】

(配列番号39)
IL-2_affmat_ass06
【化38】

(配列番号40)
IL-2_affmat_ass07
【化39】

(配列番号41)
IL-2_affmat_ass08
【化40】

(配列番号42)
IL-2_affmat_ass09
【化41】

(配列番号43)
IL-2_affmat_ass10
【化42】

(配列番号44)
IL-2_affmat_ass11
【化43】

(配列番号45)
IL-2_affmat_ass12
【化44】

(配列番号46)
IL-2_affmat_ass13
【化45】

(配列番号47)
部位特異的PCRを、次のオリゴで増幅した。
PCR増幅オリゴ(50bp相同性を含む)

IL-2_site2_assFor:
【化46】
IL-2_site2_assRev:
【化47】
PCRは、40μgのDNAを生成し、これを、ダブル消化されたpCT302及びエレ
クトロコンピテントEBY100酵母と混合し、第1世代のライブラリと同様に電気穿孔
した。
第2世代IL-2ライブラリの選択:
ライブラリを、IL-2Rβに対する選択に5回かけた(図2B)。使用されるIL-
2Rβの濃度(1回目:1μM、2回目:100nM、3回目:30nM、4回目:30
nM、5回目:10nM、全て単量体IL-2Rβ)のみを変更して、この選択方法を、
第1世代ライブラリと全く同様に、実施した。選択の終わりに、4回目及び5回目の酵母
培養物をSD-CAAプレート上に塗布し、これが、個別の酵母コロニーを生じた。両方
の回からの48の個別の酵母クローンを、96ウェルブロックフォーマットで成長させ、
5nMのIL-2Rβ、次に、SAV-PEで標識することによりスクリーニングした。
スクリーニングにより、IL-2Rβへの7つの高親和性結合物が生じた(図3及び表2
)。野生型IL-2の対応する残基と比較した、これらの7個の高親和性結合物間のアミ
ノ酸の差異を、IL-2Rβに対する結合親和性と共に表2に示す。
【表2】
【0176】
実施例3:IL-2ムテインタンパク質発現及び精製
ヒトIL-2多様体(アミノ酸1~133)、IL-2Rβ外部ドメイン(アミノ酸1
~214)、及びγ(アミノ酸34~232)を、N末端gp67シグナル配列及びC
末端ヘキサヒスチジンタグとインフレームでpAcGP67-Aベクター(BD Bio
sciences)にクローニングし、バキュロウイルス発現系を使用して生成した。S
F900II培地(Invitrogen)中で成長したSpodoptera fru
giperda(Sf9)細胞におけるトランスフェクション及び増幅により、バキュロ
ウイルスストックを調製し、BioWhittaker(登録商標)Insect-XP
RESS(商標)培地(Lonza)中で成長したTrichoplusia ni(H
igh Five(商標))細胞懸濁液中で、タンパク質発現を実施した。タンパク質を
発現させ、ニッケルアガロース(QIAGEN)により48~60時間後のHigh F
ive(商標)上清から捕捉し、10mMのHEPES(pH7.2)及び150mMの
NaCl中で平衡化されたSuperdex(商標)200カラム(GE Health
care)のサイズ排除クロマトグラフィーで濃縮及び精製した。SPR及び細胞系アッ
セイに使用されるIL-2多様体を、完全にグリコシル化させて発現させた。ビオチン化
受容体発現の場合、IL-2Rβ及びγを、C末端ビオチンアクセプタペプチド(BA
P)LNDIFEAQKIEWHE及びヘキサヒスチジンタグと、pAcGP67-Aベ
クターにクローニングした。受容体タンパク質を、過剰なビオチン(100uM)を有す
るBirAリガーゼと共に共発現させた。
【0177】
実施例4:CD25及びCD25ナチュラルキラー(YT-1)細胞の刺激
10%のウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、最小限の非必須アミノ酸、ピルビン
酸ナトリウム、25mMのHEPES、及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibc
o)が補充されたRPMI1640培地中で、YT-1細胞及びCD25+YT-1細胞
を培養した。CD25YT-1細胞を、次のように精製した:1×10個の細胞をF
ACS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水+2%のウシ血清アルブミン)で洗浄し、4℃で2
0分間、FACS緩衝液1mL中、PEとコンジュゲートした抗ヒトCD25(1:20
;Biolegend,San Diego,CA)で染色した。染色された細胞を、抗
PE IgGへと連結された常磁性マイクロビーズで標識し、製造者(Miltenyi
Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)の使用説明書
に従い、LS MACS(登録商標)分離カラムにより分離した。溶出された細胞を、完
全RPMI培地中に1×10個の細胞濃度で再懸濁させ、後続の実験のために増殖させ
た。Accuri(登録商標)C6フローサイトメーターを使用して、FL-2チャネル
でのフローサイトメトリーで、細胞の濃縮をモニタリングした。
【0178】
フローサイトメトリーでSTAT5リン酸化をアッセイすることにより、YT-1細胞
に対するH9、D10、及び6-6の用量-反応関係を決定した(図4A及び4B)。C
D25またはCD25YT-1細胞を、FACS緩衝液で洗浄し、96ウェルプレー
ト内のFACS緩衝液200μL中で、示された濃度の野生型、6-6、H9、またはD
10と再懸濁させた。細胞を、室温で20分間刺激し、次いで、ホルムアルデヒドを1.
5%まで添加することにより固定し、10分間インキュベーションした。細胞を、氷上で
20分間、100%の氷冷メタノールで透過処理した後、-80℃で一晩インキュベーシ
ョンした。固定され、透過処理された細胞を、過剰なFACS緩衝液で洗浄し、FACS
緩衝液中で1:20に希釈された、Alexa647コンジュゲート抗STAT5 pY
694(BD Biosciences,San Jose,CA)50μLと20分間
インキュベーションした。細胞を、FACS緩衝液中で2回洗浄し、Accuri(登録
商標)C6フローサイトメーターのFL-4チャネルを使用して、平均細胞蛍光を決定し
た。
【0179】
IL-2の十分に特徴づけられた変異(42位のフェニルアラニンをアラニンにした(
F42A))を利用することにより、IL-2ムテイン(いわゆる「スーパー2」分子)
のCD25非依存性を、さらに試験した。この変異(F42A)は、CD25への結合を
消滅させるが、IL-2RβまたはIL-2Rγに結合する能力に影響を及ぼさない(M
ott,1995)。この変異を、H9ムテインにも導入して、H9 F42Aを得た。
IL-2、IL-2 F42A、H9、及びH9 F42Aによる、CD25及びCD
25YT-1細胞に対するSTAT誘導の比較を実施した(図5)。IL-2 F42
A変異は、CD25+細胞に対する野生型IL-2の用量-反応曲線を約1logだけ右
側にシフトさせたが、このF42A変異は、CD25-細胞におけるSTAT誘導に対す
る観察可能な影響がなかった(図5A)。これに対して、H9及びH9 F42Aの用量
-反応曲線は、CD25-及びCD25+細胞の両方で実質的に重なり合った(図5B
。従って、これらの実験は、IL-2ムテインが、CD25の存在から明らかに利益を受
けないが、それらの活性は、CD25の界面を破壊する変異に対して反応しないことを実
証する。
【0180】
実施例5:CD25-及びCD25+T細胞の刺激
ヒト及びマウスのCD4T細胞を、PBMC(Stanford Blood Ban
k)ならびにBALB/Cマウスの脾臓及びリンパ節から、それぞれ、抗体でコーティン
グされたCD4 T細胞単離磁気ビーズ(Stem Cell Technologie
s及びMiltenyi Biotec)を使用して調製した。ナイーブ細胞刺激アッセ
イの場合、細胞を即座に使用した。「経験のある(experienced)」T細胞の
インビトロ生成の場合、100ng/mLの抗CD3(ヒトの場合OKT3、マウスの場
合2C11、eBiosciences)でプレートをコーティングする前に、ウェルを
、pH9.6の重炭酸緩衝液中の二次抗体(Vector Labs)でプレコーティン
グした。T細胞を、可溶性の抗CD28(ヒトの場合CD28.2、マウスの場合37.
51、eBiosciences)と、0.1×10個の細胞/ウェルで播種した。細
胞を、刺激された完全TCRと3日間培養した後、馴化培地中に2日間静置し、新鮮な培
養培地中に2日間静置した。使用前に、生細胞を、Lympholyte-M(Cede
rlane)遠心分離で回収し、計数した。
【0181】
CD25の発現不全またはCD25の発現のいずれかであるT細胞上のIL-2ムテイ
ンの活性を評価した(図6)。野生型IL-2及び6つのIL-2ムテインの用量-反応
関係を、1ng/ml~1000ng/mlの範囲のタンパク質濃度において、STAT
5リン酸化についてアッセイした。IL-2ムテインの、CD25欠損T細胞におけるS
TAT5リン酸化を刺激する能力は、それらのIL-2Rβに対する親和性とよく相関し
た。IL-2ムテインによるSTAT5リン酸化の増加は、IL-2より2桁大きかった
【0182】
大量の完全IL-2受容体複合体、CD25(IL-2Rα)、IL-2Rβ、及びγ
を発現する経験のあるヒトCD4+T細胞におけるSTAT5リン酸化を刺激する、I
L-2ムテインの能力も評価した(図7)。ヒトCD4 T細胞をインビトロでTCR刺
激し、静置して、「経験のある」ヒトCD4+CD25+Tリンパ球を生じさせた。1n
g/mLでは、STAT5リン酸化の差異がほとんど観察されなかった。野生型を含む各
IL-2多様体は、90%を超える細胞を刺激した。0.1ng/mLでは、小さな差異
が観察された。野生型IL-2は、48%のpSTAT5刺激をもたらし、IL-2ムテ
インは、65~79%のpSTAT5刺激を生じた。それ故、IL-2ムテインは、経験
のあるヒトT細胞を、野生型IL-2よりも、明らかによく刺激するが、この強化は、C
D25を欠く細胞においての強化程、顕著ではない。
【0183】
実施例6:NK細胞の細胞傷害アッセイ
EGFR(内皮成長因子受容体)発現扁平上皮癌細胞株(SCC6)及びEGFRモノ
クローナル抗体セツキシマブを使用して、ナチュラルキラー細胞の機能、特に、自発的な
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)におけるD10 IL-2ムテインの効果を
評価した。ヒトEGFR+扁平上皮癌細胞株SCC6を、J.Sunwoo研究室(St
anford,CA)から供与された。10%の加熱不活性化したFCS(HyClon
e Laboratories)、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mL
のストレプトマイシン(いずれもInvitrogen Life Technolog
ies製)が補充されたDMEM/F12培地(Invitrogen Life Te
chnologies)中で、SCC6細胞株を培養した。細胞を、5%CO中37℃
で、培養液中に付着させて成長させた。セツキシマブ(マウスキメラIgG1抗ヒト上皮
成長因子受容体-EGFR、IMC-C225、Erbitux(登録商標))を、Br
istol-Myers Squibbから入手した。
【0184】
クロム放出を、次のように実施した:約1×10個の細胞を含有する健康なドナーの
白血球除去システム(LRS)生成物から、NK細胞を単離した。製造者の使用説明書に
従い、NK細胞単離ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用するネガティブ磁
気細胞選別により、NK細胞を単離した。NK細胞を純度(CD3CD56フローサ
イトメトリーにより規定される>90%の純度)について評価した。SCC6標的細胞を
、細胞1×10個当たり150μCiの51Crで2時間標識した。培地単独中で、セ
ツキシマブ(100pg/mL)中で、IL-2(1000IU/mL)中で、IL-2
D10(1pg/mL)中で、IL-2 D10(10pg/mL)中で、または、I
L-2(1000IU/mL)を加えたセツキシマブ(100pg/mL)、IL-2D
10(1pg/mL)を加えたセツキシマブ(100pg/mL)、若しくはIL-2D
10(10pg/mL)を加えたセツキシマブ(100pg/mL)を含む、組み合わせ
中で、51Cr標識されたSCC6細胞と、0:1、1:1、及び5:1の可変のエフェ
クター細胞:標的細胞比で、精製されたNK細胞を5時間培養した後に、細胞溶解率を決
定した。アッセイを、3回実施した。精製されたNK細胞を、種々の濃度のセツキシマブ
、IL-2またはIL-2 D10の存在下または不存在下で、51Cr標識SCC6細
胞と培養した。D10によるNK細胞の自発的細胞傷害の刺激は、高用量のIL-2(図
8、p=.008、**p=.001)を上回り、IL-2またはD10による刺激の
ない自発的細胞傷害は最小限であった。セツキシマブ結合SCC6のADCCを、高用量
のIL-2またはセツキシマブ単独と比較して、D10による刺激で同様に増加させた(
*p=.0005、**p=.0001)。特に、D10を高用量のIL-2と比較して
、細胞傷害(自発的な細胞傷害及びADCCの両方)のより高い機能強化が、1:1を含
む、全てのエフェクター:標的比において生じた。
【0185】
実施例7:IL-2ムテインは、抑制型T細胞(Tregs)の比較的低い刺激で、メモ
リー表現型増殖の強化をもたらす。
低レベルのCD25を発現するが、高レベルのIL-2Rβγを発現するメモリー表現
型CD8T細胞の増殖におけるIL-2ムテインH9の効能を、インビボで評価した。
C57B1/6マウスは、PBS、20μgのIL-2、20μgのH9、または1.5
μgのIL-2/抗IL-2モノクローナル抗体複合体のいずれかを投与され、脾臓のC
D3CD4CD44highメモリー表現型T細胞の全細胞数を、フローサイトメト
リーで評価した。脾臓細胞懸濁液を調製し、蛍光色素コンジュゲートモノクローナル抗体
CD3(クローン145-2C11、eBioscience)、CD4(クローンRM
4-5、Caltag Laboratories)、CD8a(クローン53-6.7
、BD Biosciences)、CD25(クローンPC61、BD Biosci
ences)、CD44(クローンIM7、eBioscience)NK1.1(クロ
ーンPK136、BD Biosciences)、及びThy1.1(クローンHIS
51、eBioscience)で染色した。少なくとも100,000個の生存細胞を
、BD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーターを使用して取得し、Fl
owJoソフトウェア(TriStar, Inc.)を使用して解析した。図10A
示されるように、開示されるIL-2ムテインでの治療は、CD3CD4CD25
ighT細胞である制御性T細胞の増殖は制限されながら、他の治療法と比較して、メモ
リー表現型T細胞のより大きい増殖をもたらした(図10B)。
【0186】
実施例8:IL-2ムテインのインビボ毒性の低減
IL-2治療は、急性肺浮腫などの重度の有害な影響をもたらす可能性があることが知
られており、これは、現時点では、IL-2の有効な使用を妨げる制約となっている。従
って、IL-2と比較した、開示されるIL-2ムテインの毒性を評価した(図11A
。C57B1/6マウスは、PBS、IL-2 20μg、H9 20μg、または1.
5μgのIL-2/抗IL-2モノクローナル抗体複合体の毎日の腹腔内注射を、5日間
連続して受けた。養子細胞移入の6日後、肺を取り出し、真空下58℃で一晩乾燥する前
後で計量した。肺の湿潤重量は、脱水後の肺重量から初期の肺重量を差し引くことにより
計算した。
【0187】
実施例9:インビボでのIL-2ムテインの抗腫瘍活性の増加
開示されたIL-2ムテインの腫瘍細胞に対する効能を、インビボで試験した。100
μlのRPMI中の10個のB16F10黒色腫細胞を、マウス(群当たり3~4匹の
マウス)の背部の真皮上層に注射した。治療は、PBS、20μgのIL-2、20μg
のH9、または1.5μgのIL-2/抗IL-2モノクローナル抗体複合体(IL-2
/mAb)のいずれかの毎日の注射5回からなり、腫瘍小塊が約15mmのサイズでは
っきりと目に見え、かつ触知できた1日後に開始した。開示されるIL-2ムテインは、
図11Bで実証されるように、インビボでの抗腫瘍活性の強化をもたらした。
【0188】
実施例10:IL-2ムテイン及びIL-2の構造比較
表面プラズモン共鳴(SPR)により、IL-2ムテインのIL-2Rβに対する結合
親和性及び反応速度を測定するために、IL-2ムテインのうちのいくつかを組換え発現
させた。IL-2及びIL-2Rβ間の親和性は、K=280nMであった。IL-2
ムテインを、低親和性、中親和性、及び高親和性のクラスにクラスタリングした。低親和
性IL-2ムテイン(5-2及び6-6)は、それぞれ、50~70nMのKでIL-
2Rβと結合し、野生型IL-2の4~6倍の親和性の獲得は、ほぼ完全にL85V置換
によるものであった。第2の部位特異的ライブラリから選択された中親和性及び高親和性
変異体は、それぞれ、10~15nM(C5、H4)及び1.2~1.7nM(B1、D
10、E10、G8、H9)のKを有した。親和性の増加は、オフレートの減少に一様
に現れ、高親和性のIL-2ムテインは、L80F/R81D/L85V/I86V/I
92Fのうちの無作為の位置にコンセンサス配列を含有した。
【0189】
IL-2ムテインの構造的結果を理解するために、D10ムテイン、ならびに、IL-
2Rβ及びγに結合されたD10の三元複合体を結晶化させた。D10単独の構造では
、6つの変異のうちの5つが、B-Cループ上及びCヘリックスコア内に、IL-2Rβ
に接触しない位置で、クラスタを形成する。特に、B-Cヘリックスのリンカー領域は、
電子密度マップにおいて、この領域が部分的にまたは完全に無秩序である他のIL-2と
比較して秩序立っている(図9)。全体的に、F80、V85、及びV86の置換は、ル
ープを安定させ、Cヘリックスを分子のコアに「ピン止め」して、ヘリックスBを充填す
る疎水性クラスタへと陥没したように見える。H74及びD81変異は、溶媒に曝露され
ており、従って、それらの構造的役割はそれほど明らかではないが、Aspは、ヘリック
スC構造にさらに寄与することができる、よく知られているヘリックスNキャッピング残
基である。6つのコンセンサス変異のうちの1つ、I92Fのみが、受容体複合体におい
てIL-2Rβに接触する位置にあった。Phe92は、CヘリックスとAヘリックスと
の間に深く挿入され、Ile92と比較して、複合体のIL-2Rβに覆われる分子表面
のさらなる10Åだけ寄与するに過ぎない。従って、そのIL-2Rβ接触は、全体で
約300倍のD10の親和性の獲得に、わずかに寄与する可能性がある。
【0190】
D10三元受容体複合体の低解像度(3.8Å)の構造も決定して、変異がIL-2R
β/γc受容体の結合形状を混乱させているかどうかを評価した。D10及びIL-2R
βの安定的な三元複合体を結晶化させ、CD25の不存在下で精製した。D10三元複合
体における全体のIL-2Rβ/γcヘテロ二量体アーキテクチャ及びサイトカイン/I
L-2Rβ接触の様式は、既に報告されている四元アセンブリの場合と実質的に同一であ
る。従って、スーパー2の効能増加は、受容体二量体アーキテクチャの構造変化に起因す
るものではなく、親和性の強化に起因する可能性がある。
【0191】
上述したように、IL-2のCヘリックスは、二元及び四元複合体の両方に見られるよ
うに、IL-2Rαへの結合時に微細な再配置を受けるように見える。対照的に、PDB
データベースにおいて、3つの野生型のリガンド結合していない構造を検査することによ
り、Cヘリックスの位置のばらつきが明らかになり、このことは、分子の残りの部分と比
較して、このヘリックスのより高いB因子と一致する。D10の構造の、リガンド結合し
ていないIL-2及び受容体複合体におけるIL-2の構造との比較が行われた。D10
のCヘリックスが、遊離形態よりも、IL-2の2つの受容体が結合したコンフォメーシ
ョンに見られるものとより類似し、ヘリックスコアの上方及び内部にシフトされているこ
とが観察された。
【0192】
分子動力学(MD)シミュレーションを使用して、IL-2ムテインがIL-2Rβに
対するより高い結合親和性を与えられる機構を調べた。IL-2対IL-2ムテインの相
対的なコンフォメーションの可撓性を精査するために、原子レベルの精密なマルコフ状態
モデル(MSM)を構築した。このMSMにおける状態は、原子論的シミュレーションか
ら得られる急速に相互変換するコンフォメーションの動態クラスタリングに由来する。こ
れらの準安定状態のそれぞれは、系の構造及び動態を最終的に決定する根本的な自由エネ
ルギー状況における極小値に対応する。MSMの分析は、IL-2ムテインが、IL-2
よりも安定であることができ、IL-2が、IL-2ムテインのほぼ2倍のクラスタを与
えることを実証する。例えば、IL-2ムテインの最も密度の高い状態(most po
pulated state)は、平衡確率が、IL-2の場合の約0.05と比較して
、約0.20である。IL-2ムテインのヘリックスB、B-Cループ、及びヘリックス
Cは、IL-2と比較して剛直化される。発生した変異は、B-Cループ内(H74、D
81)上に、及びB及びCヘリックスとの充填界面内(F80、V85、V86)に存在
するので、ヘリックスCのみでなく、両方のヘリックスが、変異から利益を受け、集合的
安定化を受ける。F92は、ヘリックスCとヘリックスAとの間の分子くさびとして作用
し、ヘリックスのよりC末端側でさらなる安定化の影響として作用すると考えられる。M
Dシミュレーションが、ヘリックスBを、スーパー2においてさらに安定化されることの
原因であると示唆することは、驚きであった。というのは、このことは、IL-2の結晶
構造の比較からは明らかでなかったからである。IL-2Rαは、主にBヘリックス及び
Dヘリックスの一部で、IL-2に結合する。MDシミュレーションは、IL-2Rαの
IL-2への結合は、ヘリックスBを剛直化することがあり、この構造的安定化は、B-
Cループ及びヘリックスCへと伝播し得る可能性を示唆する。原理的には、IL-2ムテ
イン中の変異の明白な効果と同様である。
【0193】
最も密度の高いコンフォメーションを各タンパク質のシミュレーションから視覚化する
と、ヘリックスCは、IL-2ムテインよりも、IL-2において可撓性が大きいことが
示され、IL-2ムテイン中の変異が、受容体結合様コンフォメーションを実際に安定化
させることも示される。
【0194】
実施例11:パーシャルIL-2アゴニスト及びアンタゴニスト
IL-2Rβに対する結合親和性の強化により、作用が増大するIL-2「スーパーカ
イン」は、以前に開発された(Levin et al.,Nature 484:52
9(2012))。この高親和性スーパーカイン/IL-2Rβ複合体が、内因性のシグ
ナル伝達を遮断する「受容体シグナル伝達クランプ」を生成するドミナントネガティブな
スカフォールドとして役立つことができると仮定された。γへの結合を減少させる、こ
れらのスーパーIL-2「完全アゴニスト」の定方向変異は、IL-2Rβγのヘテロ
二量化を減弱させ、作用機序に基づいたIL-2パーシャルアゴニスト、及び、内因性サ
イトカインを遮断し、それ自身の作用はなんら発揮しないことによりアンタゴニストとし
て機能的に作用する非シグナル伝達(ニュートラル)分子の新しいクラスを表すであろう
図1の概略図を参照のこと)。
【0195】
IL-2-IL-2R結晶構造に基づいて、IL-2γ界面での4つの重要な残基を
特定し(図12A)、H9多様体を生じ、各H9多様体は、1つ(Q126[T])、2つ
(L18[R]、Q22[E])、3つ(L18[R]、Q22[E]、及びQ126[T])、ま
たは4つ(L18[R]、Q22[E]、Q126[T]、及びS130[R])の変異(新しく
導入されたアミノ酸に基づいて、それぞれ、H9-T、H9-RE、H9-RET、及び
H9-RETRと表記される)を含有する。(訳者注:上記で[ ]で囲まれている箇所は
PCT/US2015/027635では下線が引かれた文字である。)表面プラズモン
共鳴により、組換えH9及びH9-RETタンパク質は、IL-2Rβに対する類似した
親和性を有する。しかし、これに対して、H9-IL-2Rβ複合体が、γと効率的に
結合した(図12B)が、H9-RET-IL-2Rβは、結合しなかった(図12C
【0196】
H9多様体の活性を測定するために、NK様YT-1細胞のCD25及びCD25
亜集団を精製し、シグナル伝達を定量した。H9変異体は、IL-2パーシャルアゴニス
トとして挙動し、STAT5のリン酸化の野生型Emax(最大可能効果)レベルの約9
0%から約10%までの幅広いシグナル伝達効力を生じ(図13A)、各類似体に対する
活性のレベルは、γ界面での変異の程度と逆相関する。CD25YT-1細胞(図1
3B)対CD25YT-1細胞(図13C)上のH9-RET及びH9-RETRに対
する相対Emax値により実証されるように、シグナル伝達効能は、IL-2Rαに相対
的に依存せず、IL-2Rβ及びγへの変更された結合が、H9多様体の挙動の主な原
因になったことを示唆した。
【0197】
H9-RET及びH9-RETRは、CD25YT-1細胞のpERK1/ERK2
を含む他のIL-2シグナル伝達経路の誘導の減少も示した(図14A)。受容体の内在
化が、シグナル伝達における重要なイベントであるので、IL-2多様体に応答するYT
-1細胞におけるIL-2Rβ及びIL-2Rγの表面発現も評価した。IL-2及びH
9のように、H9-RET及びH9-RETRの両方は、IL-2Rβの内在化を急速に
引き起こし、完成させる(図13B)が、これらのパーシャルアゴニストは、γの内在
化を促進することにおいて、極めて効率が低く(図13C)、このことは、γへの結合
の減少と一致する。従って、H9のγ結合界面を可変的に撹乱すると、豊富なレパート
リーのシグナル伝達の効果を潜在的に有する種々のIL-2パーシャルアゴニストを得る
ことができる。
【0198】
次に、初代細胞におけるこれらの分子の効果を分析した。H9-RETまたはH9-R
ETRのいずれもが、新たに単離されたCD8T細胞のpSTAT5を誘導できなかっ
たことが判明した(図13、E及びF、上パネル)。このCD8T細胞は、活性化され
たCD8T細胞よりも少ないIL-2Rβ及びIL-2Rγを発現し(図14b、上パ
ネル対下パネル)、IL-2Rαをほとんどまたは全く発現しない(図13E、左上パネ
ル)。しかし、驚くべきことに、抗CD3+抗CD28を有するCD8T細胞の活性化
後に、H9-RETは、PI3キナーゼシグナル伝達経路のメンバーである、STAT5
図13Eの右下パネル;図13Fの下パネル;図13G)及びS6リボソームタンパク
質(図13H)の弱い/部分的リン酸化を誘導することができる。一方、H9-RETR
は本質的に不活性のままであった。興味深いことに、H9-Tは、新たに単離されたCD
T細胞のpSTAT5を著しく誘導し(図13Eの右上パネル)、これは、予め活性
化されたT細胞において顕著に増加したが、それでも、IL-2、H9、またはH9-R
Eで観察されたレベルまではない(図13Eの右下パネル、及び図13G)。従って、H
9-T及びH9-RETは、真のパーシャルアゴニストを連想させる中程度の活性を示す
【0199】
H9-RET及びH9-RETRにより誘導される弱いpSTAT5発現を前提として
、リンパ球増殖におけるこれらの分子の効果をさらに調べた。IL-2及びH9は、初代
CD8T細胞の増殖を強く誘導し、H9-Tは、その効果が中程度であったが、H9-
RETまたはH9-RETRのいずれもが、カルボキシフルオレセインジアセテートスク
シンイミジルエステル(CFSE)希釈(図15)または[H]チミジン取り込み(図
16Aの上パネル)により評価される場合に、これらの細胞の増殖を誘導しなかった。し
かし、予め活性化された細胞が使用された時に、H9-RETRは、依然として効果がな
いが、H9-RETは、増殖を再現可能に誘導して(図16Bの下パネル)、H9-RE
Tが、別の細胞サブセットにおける、異なる機能的結果を誘導できることを明らかにした
。このことは、新たに単離されたCD8T細胞対予め活性化されたCD8T細胞にお
けるpSTAT5上のH9-RETの異なる効果と一致する(図13E)。予想されるよ
うに、IL-2及びH9は、予め活性化されたCD8T細胞におけるIL-2Rα発現
を強力に誘導でき、H9-Tは、IL-2Rα誘導のレベルが中程度であった。一方、H
9-RET及びH9-RETRは、IL-2Rα発現を、実際に対照レベル以下まで著し
く減少させ、このことは、おそらく、内因性IL-2との強力な競合を反映している(図
17)。次に、RNA-Seqを使用して、予め活性化されたCD8T細胞におけるH
9-RET及びH9-RETRの弱い作用に対する条件をさらに明らかにした(図16
B及びC)。予想されるように、IL-2及びH9は、細胞周期を制御するか、またはサ
イトカインシグナル伝達に関与する遺伝子(例えば、CCND2、IL2RA、CISH
、及びCDK6)を誘導したが、多くの他の遺伝子(例えば、IL7R,BCL6)を抑
制した。一方、H9-RETは、弱い刺激活性しか有せず、H9-RETRは、ほとんど
効果がなく(図16B及び表S1)、完全アゴニストシグナルとパーシャルアゴニストシ
グナルとの間の、遺伝子発現における定量的差異及び定性的差異の両方を明らかにした。
IL-2及びH9は、抑制するよりも多くの遺伝子を誘導し、一方、H9-RETRは、
全体的な効果が最小であったが、誘導するよりも多くの遺伝子を抑制した(図16C)。
STAT5は、IL-2誘導性転写の重要なメディエーターであり、クロマチン免疫沈降
、及び次世代塩基配列決定(ChIP-Seq)を使用して、ゲノムSTAT5結合を全
体的に評価した。H9-RET及びH9-RETR誘導性STAT5のコンセンサスTT
CnnnGAAモチーフへの結合を、IL-2またはH9のいずれかで観察したよりも、
より少ない部位で、観察した(図16D)。ヒートマップクラスタリングに基づいて、わ
ずか約35%のIL-2誘導性STAT5部位を、H9-RETでも誘導し、一方、H9
-RETRはほとんど効果がなかった(図16E)。IL-2及びH9により予め活性化
されたCD8T細胞におけるいくつかのSTAT5標的遺伝子の誘導(IL2RA、C
ISH、LTA)または抑制(IL7RA、BCL6)は、RT-PCRにより確認され
た(図16F)。一方、H9-RETまたはH9-RETRのいずれもが、興味深いこと
に、RETRとは異なり、RETがBCL6発現を再現可能に低下させたことを除いて効
果がなかった(図16F)。
【0200】
上記の研究により、事実上、IL-2のドミナントネガティブなアンタゴニストである
H9-RETの活性の減少及びH9-RETRのごくわずかの活性を確認した。予め活性
化されたT細胞上でのIL-2Rβへの結合及びIL-2Rα発現を減少させる能力の強
化を前提として、これらの分子が、IL-2Rβ及びγによってもシグナル伝達する内
因性IL-2だけでなくIL-15も阻害するであろうことが仮定された。確かに、H9
-RET及びH9-RETRの両方は、CD8T細胞におけるIL-2誘導性(図18
A)及びIL-15誘導性(図18B)pSTAT5を阻害し、H9-RETRは、より
強力であった。H9-RET及びH9-RETR処理によるpSTAT5の阻害は、それ
によりTCR誘導性(図17)及びIL-2誘導性(図19A)CD25発現が、刺激さ
れていない対照細胞で観察されたもの以下のレベルへ低下したことと相関した。それに対
応してH9-RET及びH9-RETRは、IL-2誘導性IL2RA mRNA発現(
図19B)ならびに予め活性化されたヒトCD8T細胞におけるIL-2誘導性及びI
L-15誘導性増殖(図19C)を阻害した。
【0201】
H9-RETRが、IL-2シグナル伝達を阻害するので、H9-RETRが、IL-
2に依存するTCR誘導性細胞増殖も阻害するであろうことが推測され、これは実際に事
実であり(図20A)、CD25発現の減少と相関性があった(図20B)。同様に、I
L-2がTh1、Th9、及びTreg分化を促進できるが、Th17分化を阻害でき(
Liao et al.,Immunity 38:13(2013))、これらのプロ
セスにおけるH9-RET及びH9-RETRの効果を試験した。驚くべきことに、H9
-RET及びH9-RETRの両方が、Th1、Th9、及びTreg分化を阻害したが
、Th17分化を増大させて(図21)、IL-2の強力なアンタゴニストとしての作用
を明白に示した。
【0202】
IL-2誘導性CD69発現(図22A)ならびに乳癌細胞株HER18(図22B
及び慢性骨髄性白血病細胞株K562(図22C)に対する細胞傷害で測定される場合、
IL-2による初代ヒトNK細胞の活性化も、H9-RETRで強力に遮断した。H9-
RETまたはH9-RETRのいずれもが、初代NK細胞でのCD69発現または細胞傷
害を刺激しなかった(図22A)。
【0203】
実施例12:パーシャルIL-2アゴニスト及びアンタゴニスト-インビボでの効果
インビトロのIL-2/IL-15アンタゴニストとしてのH9-RETRの有効性を
前提として、発明者らは、インビボでの内因性サイトカインの効果に拮抗する能力を調べ
た。IL-2が、短い血清半減期を有するので(Boyman et al.,Natu
re Reviews Immunology 12:180(2012))、H9-R
ETRを、抗体依存性細胞傷害/食作用(ADCC/ADCP)が減少したアイソタイプ
であるヒトIgG4のFcフラグメント(Fc4)に融合させた(Strohl,Cur
rent Opinion in Biotechnology 20:685 (20
09))。驚くべきことに、CD25に対する抗Tac mAb及びIL-2Rβに対す
るMikβ1 mAb(Morris et al.,Proc Natl Acad
Sci USA 103:401(2006))と比較された場合、H9-RETR-F
c4は、予め活性化されたヒトCD8T細胞において、IL-2媒介性(図18C)及
びIL-15媒介性(図18D)pSTAT5誘導を非常により強力に遮断し、ヒトCD
T細胞のIL-2誘導性(図18E)及びIL-15誘導性(図18F)増殖を遮断
した。重要なことに、H9-RETR-Fc4は、IL-2増殖を遮断することにおいて
、抗Tac及びMikβ1の組み合わせと同程度の有効性があり(図18E)、IL-1
5誘導性増殖を阻害することにおいて、Mikβ1よりもより強力であった(図18F
【0204】
次に、インビボでのH9-RETR-Fcの有効性を評価した。定常状態条件下で、T
reg細胞は、高親和性IL-2受容体を発現する初代細胞の優性集団であり、IL-2
のシグナル伝達の体系的な「バロメータ」として作用できる。IL-2またはIL-15
の投与前に、H9-RETR-Fc4でのマウスの前処理は、エクスビボで評価した場合
、CD4FoxP3Treg細胞においてSTAT5のリン酸化を有意に阻害して(
図23及び図18G)、IL-2アンタゴニストとしてのH9-RETR-のFc4のイ
ンビボでの可能性を示した。IL-2及びIL-15シグナル伝達が、実験のマウスモデ
ルの急性GVHDの一因となっている(Ferrara et al.,Journal
of Immunology 137:1874(1986);及びBlaser e
t al.,Blood 105:894(2005))ので、H9-RETR-Fc4
が、完全HMCミスマッチの骨髄移植のT細胞媒介性C57BL/6-into-BAL
B/Cモデルにおいて、致死性GVHDを阻害し得ると仮定された。確かに、H9-RE
TR-Fc4で10日間治療されたマウスは、アイソタイプ対照Fc4タンパク質で治療
されたマウスよりも長く生存していた(P<0.001)(図18H)。
【0205】
ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスI(HTLV-I)は、成人T細胞白血病(ATL)
、すなわち、IL-2及びIL-15による自己分泌シグナルならびにIL-9によるパ
ラ分泌シグナルを伴う初期の増殖段階を示すCD4T細胞の悪性増殖を引き起こす。こ
のようなサイトカイン依存性増殖は、急性ATLでなく、慢性ATL及びくすぶり型AT
Lに罹患している患者において明らかである(Ju et al.,Blood 117
,1938(2011))。そのため、この系におけるH9-RETRの有効性を試験し
た。外因性IL-2を添加することにより、成長がインビトロでサポートされているAT
L由来細胞株、ED40515を最初に使用した。H9-RETRは、これらの細胞の増
殖を強力に阻害し、ダクリズマブ及びMikβ1よりも上回っていた(図18I)。そこ
で、次に、くすぶり型ATLに罹患している患者から新たに単離された細胞を使用し、6
日間のアッセイで自発的増殖についてアッセイした。10μg/mlのRETRは、ダク
リズマブよりもわずかに効果的であり、Mikβ1よりもかなり効果があり(図18J
、これらの勢いよく増殖する悪性細胞の制御における潜在的有用性を明白に示した。
【0206】
リガンド飽和でのシグナル伝達振幅(Emax)の減少として定義される部分作動は、
GPCR、チャネル、及び他のマルチパス膜貫通タンパク質を標的とする小分子と通常関
連する薬理学的特性である。サイトカインなどのタンパク質成長因子に応答するI型膜貫
通受容体の二量体を介した調整可能なシグナル伝達の概念(部分作動)は、実証されてい
ない。構造情報に基づいて、二量化及びシグナル開始を操作するために、1つの受容体部
位(IL-2Rβ)における親和性を強化する一方、第2の受容体結合部位(γ)にお
ける相互作用を弱めることにより、IL-2多様体を改変した。IL-2Rβ結合の増大
のために、これらの分子は、内因性IL-2よりも優性であり、γ相互作用のレベルが
、細胞により認識されるシグナルの強度を設定し、それにより、パーシャルアゴニストの
Emaxのレベルでのシグナル伝達振幅を「クランピング」した。これらのパーシャルア
ゴニストを使用して、新たに単離されたCD8T細胞対予め活性化されたCD8T細
胞が、これらの細胞におけるH9-T及びH9-RETの異なる効果により証明されるよ
うに、IL-2シグナル伝達強度に対する個別の活性化の閾値を有していたことを実証し
た。これに対して、pSTAT誘導により示されるような極めて弱いパーシャルアゴニス
トであるH9-RETRは、新しいタイプの免疫抑制剤としての可能性のある顕著な阻害
特性を有した。特に、それは、エクスビボで評価された場合、IL-2Rα誘導を遮断す
ることができ、GVHDモデルにおける生存を延長し、くすぶり型ATLに罹患している
患者由来の末梢血T細胞の自発的増殖を強力に阻害した。T細胞におけるその効果に加え
て、H9-RETRは、NK媒介性細胞傷害も阻害した。パーシャルアゴニストの異なる
活性を前提として、より多数のレパートリーのIL-2多様体は、部分作動から完全拮抗
までおよび、エフェクターT細胞と比較して、Treg細胞などのT細胞サブセット上の
特徴的な作用を有するさらなる分子を潜在的に含む、さらに広範な特徴的なシグナル伝達
活性を示すことがある。さらに、発明者らが使用している合理的な設計アプローチは、他
のγファミリーサイトカインに適合することができ、実際に広範なサイトカイン及び成
長因子にも同様に適合できる。さらなるパーシャルアゴニストサイトカイン類似体は場合
により、別の多面発現性免疫経路の機能を解明することができ、状況に応じて特徴的な治
療上の利点を有することができる可能性がある。
【0207】
材料及び方法
タンパク質発現及び精製
ヒトIL-2(アミノ酸1~133)及びその多様体、ヒトIL-2Rβ外部ドメイン
(アミノ酸1~214)、ならびにγ外部ドメイン(アミノ酸34~232)を、上述
のように、バキュロウイルス発現系を使用して分泌及び精製した(Morgan et
al.,Science 193:1007(Sep 10,1976))。簡単に言う
と、全ての構築物配列を、N末端gp67シグナルペプチド及びC末端ヘキサヒスチジン
タグを有するpAcGP67Aベクター(BD Biosciences)にクローニン
グした。SF900II SFM培地(Invitrogen)中28℃で培養されたS
podoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞を、プラスミド構築物と
トランスフェクションして、高力価組換えウイルスを樹立し、続いて増幅した。Inse
ct-XPRESS(商標)培地(Lonza)中28℃で成長したTrichopul
sia ni(High-Five(商標))昆虫細胞(Invitrogen)を、抗
力価ウイルスに感染させて、組換えタンパク質を発現させた(Zhu et al.,A
nnual Review of Immunology 28:445(2010)及
びW. Liao et al.,Nat Immunol 9:1288(2008)
)。組換えウイルスに感染した3日後に、タンパク質をNi-NTA(Qiagen)ア
フィニティークロマトグラフィーで抽出し、濃縮し、10mMのHEPES(pH7.3
)及び150mMのNaCl中で平衡化されたSuperdex200サイジングカラム
(GE Healthcare)で>98%の均質性までさらに精製した。Fc4及びF
c4-RETR融合タンパク質も、ヒトIgG4 Fcドメイン(Fc4)またはヒトI
L-2RETR多様体、続いて、C末端ヒトIgG4 Fcドメイン(Fc4-RETR
)を、N末端gp67シグナルペプチド及びC末端ヘキサヒスチジンタグを含有するpA
cGP67Aベクターにクローニングすることにより、このバキュロウイルス発現系を使
用して分泌及び精製した。ヒトIgG4 Fcドメインを、改変されたSer228Pr
o変異を有する変性pFUSE-hIgG4-Fcベクター(Invivogen)から
得た(Liao et al.,Nat Immunol 12:551(2011))
。インビボの実験の場合、内毒素を、上述したように、Triton X-114を使用
して調製されたタンパク質から除去した(Cheng et al.,Immunol
Rev 241:63(2011))、内毒素除去をLAL Chromogenic
Endotoxin Quantitation Kit(Thermo Scient
ific)で確認した。
【0208】
ビオチン化タンパク質発現の場合、C末端ビオチンアクセプタペプチド(BAP)-L
NDIFEAQKIEWHEを有するγを発現させ、Ni-NTA(Qiagen)ア
フィニティークロマトグラフィーで精製し、次に、0.5mMのビシンpH8.3、10
0mMのATP、100mMの酢酸マグネシウム、及び500mMのビオチン(Sigm
a)中の可溶性BirAリガーゼ酵素でビオチン化した。タンパク質を、10mMのHE
PES(pH7.3)及び150mMのNaCl中で平衡化されたSuperdex20
0カラム(GE Healthcare)のサイズ排除クロマトグラフィーで精製した。
【0209】
表面プラズモン共鳴結合測定
Biacore T100機器でBiacore SAセンサーチップ(GE Hea
lthcare)を使用する結合相互作用を表面プラズモン共鳴(SPR)研究により特
性決定した。γを、低密度でチップ表面に固定し(RUmax<100応答単位)、及
びH9:IL-2RβまたはH9-RET:IL-2Rβ複合体の系列希釈液を、60秒
間表面に曝露した。次に、解離を200秒間追跡した。無関係なビオチン化タンパク質を
、参照チャネル内に固定して、非特異的結合を測定値から差し引いた。実験を、25℃で
、0.2%のBSAが補充されたHBS-P+緩衝液(GE Healthcare)中
で実施した。全ての結合研究を、30mL/分の流速で実施して、物質輸送の寄与を最小
限にし、検体の再結合を防止した。測定値については、データ解析ならびに平衡及び動態
パラメータの決定を、1:1のラングミュア結合モデルを想定した、BiacoreT1
00評価版ソフトウェア バージョン2.0を使用して実施した。
【0210】
組織培養物及びCD25YT-1細胞の磁気精製
未変性YT9(Zhu et al.,Annual Review of Immu
nology 28:445(2010))及びCD25YT-1ナチュラルキラー様
細胞(Liao et al.,Nat Immunol 9:1288(2008))
を、RPMI完全培地(10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、最小限の非必
須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、25mMのHEPES、及びペニシリン-ストレプ
トマイシン(Gibco)が補充されたRPMI1640培地)中で培養した。両方の細
胞株を、5%のCOの加湿雰囲気中、37℃で維持した。
【0211】
CD25を発現するかまたは発現しないYT-1細胞の亜集団を、上述したように、磁
気選択で精製した(Liao et al.,Immunity 38:13(2013
))。1000万の選別されていないCD25YT-1細胞を、FACS緩衝液(0.
1%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水pH7.2)で洗浄し、その後、
4℃で2時間、FACS緩衝液中で、PEコンジュゲート抗ヒトCD25抗体(Biol
egend、クローンBC96)とインキュベーションした。次に、PE染色されたCD
25細胞を、4℃20分間、抗PE IgGにコンジュゲートされた常磁性マイクロビ
ーズで標識し、冷FACS緩衝液で1回洗浄し、製造者のプロトコールに従い、LS M
ACS分離カラム(Miltenyi Biotec)を使用して選別した。溶出した細
胞を、再懸濁させ、RPMI完全培地中で成長させ、Accuri C6フローサイトメ
ーターを使用してCD25細胞の濃縮を評価した。選別されたCD25YT-1細胞
上のCD25発現の持続性を、PEコンジュゲート抗ヒトCD25抗体を使用して、フロ
ーサイトメトリー分析でモニタリングした。
【0212】
細胞内ホスホ-STAT5及びホスホ-ERK1/2のフローサイトメトリー分析
約2×10個のYT細胞またはCD25YT-1細胞を、96ウェルプレートの各
ウェルにプレーティングし、FACS緩衝液で洗浄し、IL-2、H9、H9-RET、
またはH9-RETRの系列希釈液を含有するFACS緩衝液で再懸濁させた。細胞を、
37℃で20分間刺激し、1.5%までのホルムアルデヒドの添加により直ちに固定し、
続いて、室温で10分間インキュベーションした。次に、細胞を、4℃30分間100%
の氷冷メタノールで透過処理して、細胞内シグナルエフェクターの検出を可能にした。固
定及び透過処理された細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、室温で2時間、FACS緩
衝液で希釈されたAlexa488コンジュゲート抗STAT5 pY694(BD B
iosciences)またはAlexa488コンジュゲート抗ERK1/2 pT2
02/pY204(BD Biosciences)とインキュベーションした。次に、
細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、平均蛍光強度(MFI)を、Accuri C6
フローサイトメーター(BD Biosciences)で定量化した。刺激されていな
い細胞のMFIを差し引き、サイトカイン刺激により誘導された最大シグナル強度に正規
化した後に、用量-反応曲線を生成し、EC50及びEmax値を、グラフパッドプリズ
ムデータ解析ソフトウェアを使用して計算した。
【0213】
ヒトCD8T細胞単離及びpSTAT5及びpS6リボソームタンパク質の細胞内染色
バフィーコートを、NIH Blood Bankの健康なドナーから得、リンパ球分
離培地(Mediatech, Inc.,VA)を使用して、末梢血単核球細胞(PB
MC)を、勾配遠心分離により単離した。ヒトCD8T細胞アイソレーションキットI
(Miltenyi Biotec,Germany)を使用して、細胞を単離した。細
胞を予め活性化する場合、6ウェルプレートを、2μg/mlのプレート結合抗CD3
mAb(BD Biosciences)でプレコーティングした。細胞を、3日間1μ
g/mlの可溶抗CD28 mAb(BD Biosciences)を有する完全培地
(グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、及び10%のFBSが補充されたRP
MI培地)に1×10個の細胞/mlで播種して、次に、新鮮な培地中に48時間置い
た。初代ヒトCD8T細胞における用量-反応実験を、上述したように実施した(Li
ao et al.,Immunity 38:13(2013));簡単に言うと、細
胞を、IL-2、H9、H9-RET、H9-RETRの系列希釈液で処理し、次に、1
0分間室温で、Phosflow Fix Buffer I(BD Bioscien
ces)で固定し、FACS緩衝液で1回洗浄した。次に、冷BD Phosflow(
商標)Perm Buffer IIIを徐々に加えることにより、細胞を、透過処理し
、氷上で30分間インキュベーションした。細胞を洗浄し、暗所で30分間室温で、PE
コンジュゲート抗STAT5 pY694(BD Biosciences)またはAP
Cコンジュゲート抗ホスホ-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)(クロ
ーンD57.2.2E)で染色し、FACS緩衝液で再度洗浄し、データを、FACSC
anto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得し、Fl
owJo(Tree Star)を使用することにより解析した。
【0214】
エクスビボでのSTAT5リン酸化の分析
C57BL/6マウスを、Jackson実験室から入手した。動物プロトコールは、
NHLBI Animal Care and Use Committeeから承認を
得、NIHのガイドライン「Using Animals in Intramural
Research」に従った。STAT5リン酸化を、製造者のプロトコール(BD
Bioscience)を使用してアッセイした。簡単に言うと、IL-2またはIL-
15を、C57BL/6マウスに腹腔内注射し、全脾細胞を単離し、BD Phosph
oflow(商標)Lyse/Fix緩衝液を使用して直ちに固定し、氷冷PBSで2回
洗浄し、抗CD4及び抗CD25抗体(Biolegend)を使用して染色し、次に、
暗所の氷上で30分間、BD PhosFlow Perm Buffer IIIを使
用して透過処理した。次に、細胞を氷冷FACS緩衝液で2回洗浄し、製造者のプロトコ
ール(eBioscience)により、抗FoxP3で染色し、氷冷FACS緩衝液で
2回洗浄し、暗所で30分間室温で、抗ホスホ-STAT5-PE(1:30)(BD)
で染色した。細胞を、FACS緩衝液で3回洗浄して、データをFACSCantoフロ
ーサイトメーター(BD)で取得し、FlowJo(Tree Star)を使用して解
析した。
【0215】
IL-2受容体の内在化実験
IL-2、H9、H9-RET、またはH9RETR(1μM)を、2、5、10、1
5、30、60、90、120、180、または240分間、96ウェルプレート中で、
3×10個のYT-1細胞とインキュベーションした。さらなる受容体の内在化を防ぐ
ために、細胞を直ちに氷に移し、氷冷PBSA緩衝液(PBS中0.1%のBSA)で2
回洗浄した。細胞を、氷上で30分間、PBSA緩衝液中で、アロフィコシアニンコンジ
ュゲート抗ヒトIL-2Rβ抗体(TU27;Biolegend)及びフィコエリトリ
ンコンジュゲート抗ヒトIL-2Rγ抗体(TUGh4;Biolegend)の1:5
0の希釈液で同時染色した。氷冷PBSA緩衝液でさらに2回洗浄した後に、細胞を、P
BSA中1.5%のパラホルムアルデヒドで室温で10分間固定し、最後に1回洗浄し、
PBSA緩衝液中で再懸濁した。平均細胞蛍光を、Accuri C6フローサイトメー
ターで定量化した。内在化データを、Prismソフトウェアパッケージ(GraphP
ad)の非線形最小二乗回帰法を使用して、単一指数減衰モデルに適合させた。
【0216】
IL-2誘導性pSTAT5の阻害
新たに単離されたヒトCD8T細胞及び予め活性化されたヒトCD8T細胞を、H
9-RETまたはH9-RETRIL-2の不存在下または存在下で、IL-2で刺激し
、pSTAT5のレベルを評価した。細胞を、抗Tac若しくはMikβ1またはFc4
-H9-RETRを用いてまたは用いずに1時間インキュベーションし、次に、30分間
広範な用量のIL-2またはIL-15で刺激し、pSTAT5のレベルをフローサイト
メトリーで測定した。NK細胞実験の場合、新たに単離されたヒトNK細胞(NK細胞ア
イソレーションキットII、Miltenyi Biotech)を、示されたIL-2
多様体の存在下または不存在下で、IL-15の系列希釈液で刺激し、pSTAT5を評
価した。
【0217】
ウェスタンブロット分析
サイトカインを用いてまたは用いずに刺激された細胞を、1%のIGEPAL CA-
630(Sigma)を含有するRIPA緩衝液に溶解させた。等量の溶解物を、4~1
2%のBis-Tris NuPAGEゲル(Invitrogen)上で分離させ、膜
に転写し、この膜を、pSTAT5(Y694)に対する抗体(Cell Signal
ing Technology, Inc.,Beverly,MA)またはSTAT5
(BD Transduction Laboratories,San Diego
,CA)と室温で1時間インキュベーションした。結合された抗体を、ヤギ抗ウサギIg
G(H+L)-HRPコンジュゲート(1:5,000希釈)及びヤギ抗マウスIgG(
H+L)-HRPコンジュゲート(1:10,000希釈)(Biorad)で検出した
。増強化学発光(ECL,GE healthcare)を使用して、免疫ブロットを可
視化した。一部の実験では、室温で15分間ストリッピング緩衝液(Millipore
)中でインキュベーションした後に、膜を再利用した。
【0218】
CFSE希釈及びEdU増殖アッセイ
新たに単離されたCD8T細胞または予め活性化されたCD8T細胞(20×10
個/ml)を、7分間室温で、PBS中の2.5μMのCFSE(Molecular
Probes)で標識して、100%FBS(2ml/試料)で1回すぐに洗浄して、
次に完全RMPI中で洗浄した。2×10個/mlのCFSE標識細胞を、野生型IL
-2、H9、H9-RET、H9-RETR、またはH9-RETRを加えたIL-2の
不存在下または存在下で培養した。示された時点でのCFSE希釈物をフローサイトメト
リー分析することにより、細胞増殖を評価した。EdU増殖アッセイの場合、上記のよう
に予め活性化されたCD8T細胞を培養した。採取の16時間前に、製造者のプロトコ
ール(BD Biosciences)に従い、10mMのEdUを添加し、細胞を、示
されるような表面抗原について染色し、次に、細胞内EDUについて染色した。細胞増殖
を、フローサイトメトリーで評価した。
【0219】
ED40515細胞及びくすぶり型ATLに罹患している患者由来の細胞の増殖
IL-2依存性ED40515(+)(Lenardo,Nature 353:85
8(1991))細胞を、PBSで2回洗浄した。細胞を、IL-2を用いてまたは用い
ずに、かつ、試薬を用いてまたは用いずに、RPMI1640培地の1×10個の細胞
/100μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、次に、3日間37℃でインキュベ
ーションした。
【0220】
ATL患者由来の血液試料を、NIHのNCIのリンパ性悪性腫瘍支部の臨床試験チー
ムのケアの下で入手した。この実験プロトコールは、National Cancer
Instituteの施設内倫理委員会により承認された。インフォームドコンセントは
、ヘルシンキ宣言に従って得られた。ATL患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、
ヘパリン添加血からフィコール・ハイパック密度勾配遠心分離により分離した。1×10
個の細胞/100μl/ウェルのアリコートを、6日間、試薬を用いてまたは用いずに
、10%のFBSが補充されたRPMI1640培地中でエクスビボで培養した。
【0221】
培養の最後の6時間に、ED40515(+)細胞またはATLのPBMCを、1μC
i(0.037MBq)の[H]チミジンでパルスし、次に、セルハーベスター(To
mtec,Hamden,CT)で細胞を採取し、MicroBeta2マイクロプレー
トカウンター(PerkEmer)で計数した。アッセイを、3回行った。
【0222】
NK細胞の活性化
末梢血単核細胞(PBMC)を、24時間、1μg/mLのIL-2類似体の存在下で
培養した。次に、細胞を、APCコンジュゲート抗CD56(BD Bioscienc
es)、パシフィックブルーコンジュゲート抗CD3(BioLegend)、及びFI
TCコンジュゲート抗CD69(BD Biosciences)で染色した。試料を、
FACSAria II (BD Biosciences)を使用してフローサイトメ
トリーで分析した。NK細胞を、CD3陰性、CD56陽性としてゲーティングした。
【0223】
PBMCを、Ficoll-Paque Premium(GE Life Scie
nces)を使用して勾配遠心分離で単離し、次に、ヒトNK細胞アイソレーションキッ
ト(Miltenyi)を使用してそのままのNK細胞を精製し、続いて、autoMA
CS(Miltenyi)を使用して分離した。HER18標的細胞を、2時間、1×1
個の細胞当たり150μCiの51Cr(Perkin Elmer)で標識した。
NK細胞を、10:1のエフェクター:標的比で、10,000個のHER18細胞に添
加した。種々の濃度のIL-2類似体の存在下で、培養の4時間後に、特異的溶解を判定
した。
【0224】
初代NK細胞によるK562細胞の溶解を、記載されるように実施した(Yuan e
t al.,Immunol Rev 259,103(2014))。簡単に言うと、
ヒトNKアイソレーションキット(STEMCELL)を使用して、そのままのヒトNK
細胞を精製した。K562細胞を、PKH67緑色蛍光細胞リンカーキット(Sigma
Aldrich)で標識し、NK細胞を、10:1の比で5,000個のK562細胞に
添加し、4時間37℃で、種々の濃度のIL-2類似体の存在下で培養し、さらなる反応
を防ぐために氷上に置いた。次に、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma-
Aldrich)で染色し、PIPKH67K562細胞の百分率をフローサイトメ
トリーで決定した。
【0225】
Tヘルパーの分極及び細胞内サイトカイン染色
ナイーブCD4C57BL/6T細胞を、示されたサイトカインの不存在下または存
在下で、異なるTヘルパーの分極条件下で分化させた。4日後、細胞をまず、示されるよ
うな発現抗原について染色し、次に、製造者のプロトコールに従い、BD cytofi
x及びcytopermまたはeBioscience FoxP3 staining
buffer kit中で、IFNγ(eBioscience)、IL-17A(e
Bioscience)、IL-4(BioLegend)、IL-9(BioLege
nd)、またはFoxP3(eBioscience)対する抗体で染色した。染色され
た細胞を、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc)を使用して、FA
CSCanto IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)で分
析した。全てのマウスサイトカインは、Peprotech製であった。
【0226】
RNA-Seq分析
予め活性化されたヒトCD8T細胞を、完全培地中で2日間休ませ、1μg/mlの
野生型IL-2、H9、H9-RET、またはH9-RETRで24時間刺激し、5×1
個の細胞からの全RNAを単離した(RNeasy kit,Qiagen,Val
encia,CA)。5人のドナー由来のRNAをプールし、1μgのプールされたRN
Aを使用して、cDNAを合成した。RNA-Seqライブラリを、上述のように作成し
た(Liao et al.,Immunity 38:13(2013)。PCR増幅
された産物を、バーコード付けし、Illumina HiSeq2000プラットフォ
ームを使用して配列決定した。配列決定されたリードを、Bowtie 0.12.4を
使用して、ヒトゲノム(hg18、NCBIビルド36.1)に対してアラインした(L
eonard,Nature Reviews.Immunology 1:200(2
001))。独自にマッピングされたリードを維持し、デジタル発現レベルの遺伝子を、
RPKM(Reads Per Kilobase per Million mapp
ed reads)を使用して計算した。RパッケージedgeRを使用して、特異的に
発現させた遺伝子を同定し、倍数変化(log2スケールで)の差を、治療されていない
細胞、または、24時間IL-2多様体で治療された細胞の間で比較した。
【0227】
ChIP-Seqライブラリの作成及び分析
予め活性化されたCD8T細胞を、90分間異なるサイトカインで治療し、次に、1
%のパラホルムアルデヒドで化学的に架橋した。1000~2000万個の細胞からのク
ロマチンを、250~500bpのフラグメントになるように超音波処理し、抗STAT
5B(Invitrogen)で免疫沈降し、上述のように、配列決定のために処理した
(Noguchi et al.,Cell 73:147(1993))。全てのリー
ドを、Bowtie 0.12.4を使用して、ヒトゲノム(hg18、NCBIビルド
36.1)に対してアラインした(Leonard,Nature Reviews.
Immunology1:200(2001)。独自にマッピングされたリードをブラウ
ザ拡張可能なデータ(browser extensible data)(BED)フ
ァイルに変換し、重複リード(同じゲノム位置の複数のリード)をフィルタする。次に、
フィルタされた(非重複)BEDファイルを、バイナリデータ(.tdf)に変換し、I
ntegrative Genome Viewer(Broad Institute
)を使用して可視化した。
【0228】
RT-PCRによる遺伝子発現分析
全RNAを、RNeasy Plus mini kit(Qiagen)を使用して
単離し、200ngを、オリゴdT(Invitrogen)及びOmniscript
reverse transcription kit(Quiagen)と共に使用
して、cDNAを合成した。定量的RT-PCRを、ABI 7900 HD Sequ
ence Detection Systemで実施した。RTプライマー及びプローブ
は、Applied Biosystems製であった。発現レベルを、RPL7に正規
化した。
【0229】
同種異系宿主への骨髄移植
NCI-Frederick Cancer Research Facilityか
らの7週齢の雌のC57BL/6(H)及びBALB/c(H)マウスを、
特定の病原体フリーの施設で飼育し、NCI Animal Care and Use
Committeeにより承認された、承認動物プロトコールに従い治療した。BAL
B/cマウスを、950cGyの全身照射で条件付けし、次に、C57BL/6マウス由
来の1000万個のT細胞枯渇骨髄細胞単独か、または、それと200万個のTreg枯
渇汎T細胞と共に、再構成した。T細胞枯渇を、Miltenyi Biotec製キッ
トを使用して、抗CD90[Thy1.2]マイクロビーズ(全T細胞枯渇)または抗C
D25(Treg枯渇)で実施した。汎T細胞を投与されているマウスを、Fc4または
H9-RETR-Fc4(10日間、1日2回100μgの腹腔内投与)でさらに治療し
た。飲み水に、全身照射の前日~14日目までシプロフロキサシンを補充した。生存及び
体重減少をモニタリングした。生存を、カプラン・マイヤー法に従い分析し、ログランク
検定を使用して、生存曲線を比較した。GraphPad Prism 4ソフトウェア
を使用して、統計分析を実施した。
【0230】
他の実施形態
本発明を、その発明を実施するための形態と共に記載しているが、上述の記載は、添付
の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示するものであって、これを限定す
るものではないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求
の範囲の範囲内にある。例えば、IL-2は、本明細書の全体にわたって言及されている
が、当業者であれば、本明細書に記載される方法及び組成物が、他のサイトカイン、例え
ば、この特性を有する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-
2、IL-3、IL-5、IL-6、またはIL-15、に等しく適用可能であることを
理解するであろう。従って、本発明は、野生型と比較して、それぞれの受容体に対する結
合親和性が増加したGM-CSF、IL-2、IL-3、IL-5、IL-6、及びIL
-15の変異体、ならびにそれらの変異体を同定及び使用するための方法も含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図13-1】
図13-2】
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図16-1】
図16-2】
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図17
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図18-2】
図18-3】
図19
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図23
【配列表】
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