(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】排気圧力読取値を使用して内燃機関の異常を検出するための診断システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02D 17/00 20060101AFI20230706BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20230706BHJP
F02D 41/22 20060101ALI20230706BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20230706BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20230706BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20230706BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20230706BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20230706BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20230706BHJP
【FI】
F02D17/00 F
F02P5/145 Z
F02D41/22
F02D21/08 301G
F02D21/08 311B
F02D23/00 B
F02D23/00 H
F02D23/00 J
F02B37/00 302F
F02B37/00 302G
F02B37/18 A
F02B37/24
F02M26/05
(21)【出願番号】P 2022526006
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020060754
(87)【国際公開番号】W WO2021173196
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-13
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511001747
【氏名又は名称】トゥラ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TULA TECHNOLOGY,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】522175783
【氏名又は名称】カミンズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CUMMINS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シクイ ケヴィン
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0144888(US,A1)
【文献】国際公開第2020/005134(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0314481(US,A1)
【文献】特開2003-286907(JP,A)
【文献】特表2016-532058(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0085563(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0277778(US,A1)
【文献】米国特許第05774823(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 17/00
F02P 5/145
F02D 41/22
F02D 21/08
F02D 23/00
F02B 37/00
F02B 37/18
F02B 37/24
F02M 26/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法において、
(a)点火が成功し、(b)スキップが成功したそれぞれの内燃機関の気筒のための排気圧力の第1及び第2のモデルを生成するステップと、
前記内燃機関の作業サイクルの間に前記気筒を点火又はスキップのいずれかの命令を発行するステップと、
測定された排気圧力を、
前記命令が前記作業サイクルの間に前記気筒を点火することであった場合に前記第1のモデル、及び
前記命令が前記作業サイクルの間に前記気筒をスキップすることであった場合に前記第2のモデルと比較することによって、前記気筒の点火又はスキップを成功したかを判定するステップと、
成功した点火に対する閾値として前記第1のモデルを画定するステップと、
圧力信号差を前記閾値と比較するステップと、
気筒事象に対応する前記圧力信号差が前記閾値より低い場合、点火するように命令した前記気筒事象を失敗としてフラグ付けするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1のモデルは、
前記気筒の点火した作業サイクルに対する排気圧力読取値を示す経験的データを収集するステップと、
前記経験的データから前記気筒の成功した点火に対する排気圧力の第1の分配範囲を画定するステップと、
前記経験的データから前記気筒の失敗した点火に対する排気圧力の第2の分配範囲を画定するステップと、
によって発生されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
点火命令を成功して履行した前記気筒は、前記測定された排気圧力が、成功した点火に対する排気圧力の第1の分配範囲と、失敗した点火に対する排気圧力の第2の分配範囲との間に置かれた閾値圧力より上か下かを判定するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記第2のモデルは、
前記気筒のスキップした作業サイクルに対する排気圧力読取値を示す経験的データを収集するステップと、
前記経験的データから前記気筒の成功したスキップに対する排気圧力の第1の分配範囲を画定するステップと、
前記経験的データから前記気筒の失敗したスキップに対する排気圧力の第2の分配範囲を画定するステップと、
によって発生されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
スキップ命令を成功して履行した前記気筒は、前記測定された排気圧力が、成功したスキップに対する排気圧力の第1の分配範囲と、失敗したスキップに対する排気圧力の第2の分配範囲との間に置かれた閾値圧力より上か下かを判定するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記気筒の成功した点火及び成功したスキップのそれぞれに対する前記排気圧力の前記第1のモデル及び前記第2のモデルを発生するために、ニューラルネットワークを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記第1のモデル及び前記第2のモデルを発生するために前記ニューラルネットワークを使用するステップは、
1つ又は複数の入力を前記ニューラルネットワークの前処理層に提供するステップと、
前記前処理層内の前記1つ又は複数の入力を正規化するステップと、
前記正規化した1つ又は複数の入力を前記ニューラルネットワーク内の処理装置の隠れ層の複数の階層に提供するステップと、
前記ニューラルネットワークの後処理層を使用して前記第1のモデル及び前記第2のモデルを発生するステップであって、前記後処理層は、前記処理装置の隠れ層の複数の階層の最後からの出力を受信するように配置される、発生するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記処理装置の隠れ層の複数の階層のそれぞれは、前記ニューラルネットワーク内の前の層からの前記1つ又は複数の入力の処理された型を受信し、更に処理された出力を前記ニューラルネットワーク内の次の層に提供するように配置されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記1つ又は複数の入力は、
(a)排気圧力サンプルと、
(b)吸気マニホールド圧力サンプルと、
(c)排気ガス再循環(EGR)弁位置サンプルと、
(d)可変ジオメトリターボチャージャ(VGT)羽位置サンプルと、
(e)ウエストゲート位置サンプルと、
(f)前記内燃機関の1つ若しくは複数の気筒のそれぞれのスキップ又は点火のステータス信号と、
(g)エンジン速度と、
(h)気筒負荷と、
(i)スキップした作業サイクルの間及び点火した作業サイクルの間の気筒内圧力のモデルと、
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記点火命令及び前記スキップ命令が、それぞれ成功して履行されるかを判定するために、前記内燃機関の複数の気筒の複数の作業サイクルにわたって前記測定された排気圧力の濾過していない型を使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記内燃機関の複数の気筒の複数の作業サイクルにわたって前記測定された排気圧力の濾過した型を発生するステップと、
前記複数の作業サイクルにわたって前記測定された排気圧力の前記濾過した型における圧力降下が、所定の閾値より下回るかどうかに基づいて、排気ガス再循環(EGR)システムの異常作動が存在するかどうかを判定するステップと、
前記圧力降下が前記所定の閾値より下回る場合に、診断異常信号を発生するステップであって、前記診断異常信号は前記EGRシステムの前記作動の異常を示す、発生するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記内燃機関の複数の気筒の複数の作業サイクルにわたって前記測定された排気圧力の濾過した型を発生するステップと、
前記複数の作業サイクルにわたって前記測定された排気圧力の前記濾過した型の圧力降下の程度に基づいて、ターボチャージャ・システムの異常作動が存在するかどうかを判定するステップと、
前記圧力降下の前記程度が、所定の閾値より下回る場合に
診断異常信号を発生するステップであって、前記診断異常信号はウエストゲート弁の異常作動を示す、発生するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
前記測定された排気圧力は、以下の場所、すなわち
(a)前記気筒を前記内燃機関と関連した排気マニホールドに流体結合する排気ランナ、
(b)排気マニホールド内、
(c)前記排気マニホールドの下流、又は
(d)(a)~(c)のあらゆる組み合わせの内の1つに置かれた、1つ又は複数の圧力測定センサを使用して測定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
複数の気筒が、前記内燃機関に対する変化するトルク要求を満たすために連続した作業サイクルにわたって、必要に応じて選択的に点火又はスキップするように、スキップ点火手法で前記内燃機関を作動するステップと、
前記連続した作業サイクルに対する前記点火又はスキップ命令が、前記複数の気筒のそれぞれによって成功して履行されたかを判定するために、前記連続した作業サイクルのそれぞれに対して測定されたように、前記排気圧力と協同して前記第1のモデル及び前記第2のモデルを使用するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
複数の気筒を点火又はスキップする判定が、点火機会毎に行われる動的スキップ点火手法で、前記内燃機関を作動するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記気筒が点火に失敗したか又はスキップに失敗したかを示す、診断異常信号を発生するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、
前記内燃機関は、以下の種類の内燃機関、すなわち
(a)ディーゼル燃料エンジン、
(b)ガソリン燃料エンジン、
(c)火花発火エンジン、又は
(d)圧縮発火エンジンの内の1つであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項
1に記載の方法において、
前記圧力信号差は、
前記内燃機関と関連した排気マニホールド内、又は前記排気マニホールドの下流のいずれかで測定された生の排気圧力信号を濾過するステップと、
前記内燃機関と関連した複数の気筒事象のそれぞれに対して、前記濾過した生の排気圧力信号の複数のサンプルをラッチするステップと、
各前記複数のサンプルのそれぞれに対して先に収集されたサンプルのそれぞれから各サンプルを引くことにより、前記圧力信号差を発生するステップと、
によって発生されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項
1に記載の方法において、
前記気筒事象は以下のこと、すなわち
(a)前記気筒の不点火、
(b)点火の代わりに前記気筒の予期しないスキップ、又は
(c)前記気筒の予期しない弁の停止の内の1つが起きた場合に、失敗したと判定されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、
成功したスキップに対する閾値として前記第2のモデルを画定するステップと、
圧力信号差を前記閾値と比較するステップと、
スキップするように命令された気筒事象に対する前記圧力信号差が、前記気筒事象に対する前記閾値より高い場合、前記気筒事象に偶発的な点火としてフラグ付けするステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
システムにおいて、
複数の気筒を有する内燃機関と、
スキップ点火手法で前記内燃機関の前記気筒を作動するように配置されたスキップ点火エンジン制御装置であって、
前記スキップ点火手法による作動は、ある作業サイクルの間に前記気筒を点火するステップと、他の作業サイクルの間に前記気筒をスキップするステップと、に関与する、スキップ点火エンジン制御装置と、
記憶装置であって、
前記内燃機関の前記気筒の成功した点火を示す排気圧力の第1のモデルと、
前記内燃機関の前記気筒の成功したスキップを示す排気圧力の第2のモデルと、を記憶するように配置された、記憶装置と、
測定された排気圧力を(a)点火命令のための前記第1のモデル及び(b)スキップ命令のための前記第2のモデルと比較することによって、点火に失敗したか又はスキップに失敗した前記気筒の作業サイクルに対して、異常信号を発生するように配置された異常検出システムと、
を含み、
前記第1のモデルは、成功した点火に対する閾値として画定されており、および/または前記第2のモデルは、成功したスキップに対する閾値として画定されており、
前記異常検出システムが、さらに、
圧力信号差を前記閾値と比較して、
気筒事象に対応する前記圧力信号差が前記閾値より低い場合、点火するように命令した前記気筒事象を失敗としてフラグ付けする、および/またはスキップするように命令された気筒事象に対する前記圧力信号差が、前記気筒事象に対する前記閾値より高い場合、前記気筒事象に偶発的な点火としてフラグ付けするように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記第1のモデルは、
成功した点火に対する排気圧力の第1の分配範囲と、
失敗した点火に対する排気圧力の第2の分配範囲と、
前記第1の分配範囲と前記第2の分配範囲との間の閾値排気圧力と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項
22に記載のシステムにおいて、
前記異常検出システムは、作業サイクルに対して前記測定された排気圧力が閾値より下回る場合に、点火が失敗した気筒の前記作業サイクルに対して異常信号を発生するように判定を行うことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項
22に記載のシステムにおいて、
前記第2のモデルは、
成功したスキップに対する排気圧力の第1の分配範囲と、
失敗したスキップに対する排気圧力の第2の分配範囲と、
前記第1の分配範囲と前記第2の分配範囲との間の閾値排気圧力と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項
24に記載のシステムにおいて、
前記異常検出システムは、作業サイクルに対して前記測定された排気圧力が前記閾値より高い場合に、スキップが失敗した気筒の前記作業サイクルに対して異常信号を発生するように判定を行うことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記第1のモデル及び前記第2のモデルは、前記異常検出システムによりアクセス可能な記憶場所に維持されることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記第1のモデル及び前記第2のモデルは、前記内燃機関の前記気筒の複数の点火及び複数のスキップから収集された経験的データから構築されることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記第1のモデル及び前記第2のモデルは、1つ又は複数の入力を受信するように配置されたニューラルネットワークから構築され、前記1つ又は複数の入力は、
(a)排気圧力サンプルと、
(b)吸気マニホールド圧力サンプルと、
(c)排気ガス再循環(EGR)弁位置サンプルと、
(d)可変ジオメトリターボチャージャ(VGT)羽位置サンプルと、
(e)ウエストゲート位置サンプルと、
(f)前記内燃機関の前記気筒のそれぞれのスキップ又は点火状態と、
(g)エンジン速度と、
(h)気筒負荷と、
(g)前記内燃機関の前記気筒内の圧力サンプルと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記測定された排気圧力は、以下の場所、すなわち
(a)気筒を前記内燃機関と関連した排気マニホールドに流体結合する排気ランナ、
(b)排気マニホールド内、
(c)前記排気マニホールドの下流、又は
(d)(a)~(c)のあらゆる組み合わせの内の1つに置かれた1つ又は複数の圧力測定センサを使用して測定されることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項
21に記載のシステムにおいて、
前記内燃機関は以下の種類の内燃機関、すなわち
(a)ディーゼル燃料エンジン、
(b)ガソリン燃料エンジン、
(c)火花発火エンジン、又は
(d)圧縮発火エンジンの内の1つであることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月24日に出願された米国仮特許出願第62/980,821号明細書の優先権を主張し、本出願は、全ての目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に内燃機関の異常を検出するための診断システム及び方法に関し、より詳細には(a)スキップ点火を制御される内燃機関の気筒が点火を成功したか、又はスキップを成功したかを判定するために、成功した点火及びスキップの両方を示すモデルを使用すること、並びに(b)排気ガス再循環(EGR)システム及び/又はターボチャージャ・システムに関連した弁の異常を検出するために濾過した排気ガス圧力読取値を使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
今日作動中のほとんどの車両は、内燃(IC)機関によって動力供給される。内燃機関は、典型的には燃焼が起きる複数の気筒を有する。標準の運転条件下では、内燃機関によって発生したトルクは、運転者の操作要求を満たすために広範囲にわたって変化する。最大トルクが必要ない状況では、内燃機関の多くの種類の燃費が、エンジン排気量を動的に変えることによって実質的に向上させることができる。エンジン排気量を変える最も一般的な方法は、1つ又は複数の気筒の群を停止することである。例えば6気筒エンジンでは、2気筒、3気筒、又は4気筒の群が停止されてもよい。エンジンの有効排気量を変える別のエンジン制御手法は、スキップ点火エンジン制御と呼ばれる。概してスキップ点火エンジン制御は、ある点火機会の間に気筒を点火することを企図する一方で、他の点火機会の間に気筒の点火を選択的にスキップすることを企図する。このように特定の気筒が3つの連続した作業サイクルにわたって点火され、スキップされ、及び点火又はスキップのいずれかをされてもよい。
【0004】
排気量が可変であり、且つスキップ点火を制御されるエンジンでは、気筒のスキップは、気筒の吸気弁及び排気弁のどちらか又は両方が、スキップした作業サイクルの間は閉じたままであるように停止されることがある。作業サイクルが停止すると、スキップした作業サイクル時にエンジンを通ってポンプ供給される空気は皆無に等しく、これにより概してエンジン効率が向上し、エンジンの排気ガスの温度が高くなる。
【0005】
内燃機関の様々な種類の吸気マニホールド内及び排気マニホールド内の両方に圧力センサを使用することは、種々の診断理由で公知である。例えば米国特許第9,995,652号明細書、第9,891,137号明細書、及び第9,835,522号明細書では、吸気マニホールド内に置かれた圧力センサは、誘導異常が気筒の作業サイクルの間に吸気弁に発生したかを判定する働きをするために使用される。米国特許第9,890,732号明細書は、気筒の作業サイクルの不点火及び/又は気筒の排気弁の作動の異常を検出する働きをするために使用される、排気圧力センサの使用を開示している。米国特許第9,316,565号明細書は、排気圧力変動の変化に依存し、変動を診断閾値と比較し、比較に基づいて気筒の不点火が起きたかを判定する、気筒不点火検出システムを開示している。米国特許出願公開第2011/0144888号明細書では、排気量の低減を制御されるエンジンのための気筒弁監視システムが開示されている。気筒が停止されると、弁監視システムは、対応する吸気及び/又は排気弁が適切に閉じているか(すなわち停止しているか)又は不適切に開いているかを、測定された排気圧力を閾値と比較することによって判定するために使用される。閾値は、現在のエンジン及び周囲作動条件に基づいて決定され、以前の燃焼事象若しくはサイクルのスライディングウインドウに基づいて、及び/又は数学若しくは統計技術によって調節される。測定された圧力が閾値を超える場合は、弁の異常が発生し、不適切に開いたと判定される。
【0006】
しかし上に列挙された先行技術文献のいずれでもない場合は、(a)スキップ点火を制御される内燃機関の気筒が点火を成功したか、又はスキップを成功したかを判定するために、成功した点火及びスキップの両方を示すモデルを使用し、(b)EGRシステム及び/又はターボチャージャ・システムに関連した弁の異常を検出するために濾過した排気ガス圧力読取値を使用する、エンジン診断システム並びに方法を対象とする。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、(a)スキップ点火を制御される内燃機関の気筒が点火を成功したか、又はスキップを成功したかを判定するために、成功した点火及びスキップの両方を示すモデルを使用し、(b)EGRシステム及び/又はターボチャージャ・システムに関連した弁の異常を検出するために濾過した排気ガス圧力読取値を使用する、診断システム並びに方法を対象とする。
【0008】
非排他的一実施形態では、本発明は、(a)点火が成功し、(b)スキップが成功したそれぞれの内燃機関の気筒のための排気圧力の第1のモデル及び第2のモデルを発生するステップと、内燃機関の作業サイクルの間に気筒を点火又はスキップのいずれかの命令を発行するステップと、測定された排気圧力を(a)命令が作業サイクルの間に気筒を点火することであった場合に第1のモデル、及び(b)命令が作業サイクルの間に気筒をスキップすることであった場合に第2のモデルと比較することによって、気筒が点火又はスキップを成功したかを判定するステップと、に関与する方法を対象とする。
【0009】
別の非排他的実施形態では、本発明は、複数の気筒を有する内燃機関と、スキップ点火手法で内燃機関の気筒を作動するように配置されたスキップ点火エンジン制御装置であって、スキップ点火作動は、ある作業サイクルの間に気筒を点火するステップと、他の作業サイクルの間に気筒をスキップするステップと、に関与するスキップ点火エンジン制御装置とを含むシステムを対象とする。システムは、(a)内燃機関の気筒の成功した点火を示す排気圧力の第1のモデルと、(b)内燃機関の気筒の成功したスキップを示す排気圧力の第2のモデルとを記憶するように配置された記憶装置を更に含む。システムは、測定された排気圧力を(a)点火命令のための第1のモデル及び(b)スキップ命令のための第2のモデルと比較することによって、点火が失敗したか又はスキップが失敗した気筒の作業サイクルに対して異常信号を発生するように配置された異常検出システムも含む。
【0010】
尚別の非排他的実施形態では、本発明は、複数の気筒を有する内燃機関と、スキップ点火手法で内燃機関の気筒を作動するように配置されたスキップ点火エンジン制御装置であって、スキップ点火作動は、ある作業サイクルの間に気筒を点火するステップと、他の作業サイクルの間に気筒をスキップするステップと、に関与するスキップ点火エンジン制御装置と、を含む別のシステムを対象とする。システムは、(a)複数の気筒の複数の作業サイクルにわたって測定された排気圧力信号を濾過し、(b)濾過した測定された排気圧力信号が閾値圧力より下回る場合に診断異常信号を発生するように配置された、異常検出システムを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明及びその利点は、以下の記載を添付図面と併せて参照することによって最も良く理解できる。
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の非排他的実施形態による、任意選択で排気ガス再循環(EGR)システム及び/又はターボ過給システムと共に使用される、スキップ点火を制御される内燃機関と協同して使用される、異常検出システムの論理図である。
【
図2A】
図2Aは、いくつかの成功した気筒点火及び1つの失敗した点火(例えば予期しないスキップ)を示す、いくつかの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の例示的グラフである。
【
図2B】
図2Bは、本発明の非排他的実施形態による、いくつかの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の第1の例示的グラフ、及び一部のデータ処理後にいくつかの成功した気筒点火及び1つの失敗した点火を示す第2のグラフの別の例示である。
【
図2C】
図2Cは、いくつかの成功した気筒スキップ及び1つの失敗したスキップを示す、いくつかの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の例示的グラフである。
【
図2D】
図2Dは、本発明の非排他的実施形態による、いくつかの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の第1の例示的グラフ、及び一部のデータ処理後にいくつかの成功した気筒スキップ及び1つの失敗したスキップを示す第2のグラフの別の例示である。
【
図2E】
図2Eは、別の非排他的実施形態による、代替異常検出システムの論理図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の非排他的実施形態による、点火モデルを発展させるためのステップを例示する例示的流れ図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の非排他的実施形態による、成功した気筒点火及び失敗した気筒点火に対する分布範囲、並びに2つの間の閾値を示す例示的点火モデルである。
【
図4A】
図4Aは、本発明の非排他的実施形態による、スキップモデルを発展させるためのステップを例示する例示的流れ図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の非排他的実施形態による、成功した気筒スキップ及び失敗した気筒スキップに対する分布範囲、並びに2つの間の閾値を示す例示的スキップモデルである。
【
図5】
図5は、本発明の別の非排他的実施形態による、点火モデル及びスキップモデルを発生する際に使用する例示的ニューラルネットワークのブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の非排他的実施形態による、EGRシステム及び/又はターボ過給システムの異常を検出するために使用される、複数の作業サイクルにわたって濾過した排気圧力信号を例示するグラフである。
【0013】
図面において、同じ参照番号は、時によって同じ構造要素を指すために使用される。図における描写は図式であり、一定の縮尺ではないことも認識されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願は、(a)スキップ点火を制御される内燃機関の気筒が点火を成功したか、又はスキップを成功したかを判定するために、成功した点火及びスキップの両方を示すモデルを使用し、(b)EGRシステム及び/又はターボチャージャ・システムに関連した弁の異常を検出するために濾過した排気ガス圧力読取値を使用する、異常検出システムを含むエンジン診断システム並びに方法を対象とする。
【0015】
図1を参照すると、内燃機関16のスキップ点火作動を制御するために使用する、スキップ点火制御装置14と協同して作動する異常検出システム12を含む、論理
図10が示されている。示された具体的実施形態では、内燃機関は6気筒を有する。内燃機関16は、吸気マニホールド18並びに1つ又は複数の排気マニホールド20A及び20Bと協同して作動する。
【0016】
内燃機関
示された具体的実施形態では、内燃機関は、図面に1、2、3、4、5及び6のそれぞれを標識付けされた、6つが一列の気筒又は作業チャンバを有する。6気筒では、6つの吸気ランナ22は、吸気マニホールド18と各6気筒の間にそれぞれが提供される。個々の吸気ランナ22は、燃焼用の空気及び潜在的に他のガスを吸気マニホールド18から個々の気筒に供給するためにそれぞれが提供される。示された具体的実施形態では、2つの排気マニホールド20A及び20Bは、燃焼したガスを気筒から排気システム26に向けるように提供される。具体的には、3つの排気ランナ24Aは、気筒6、5及び4と第1の2つの排気マニホールド20Aとの間に提供され、追加の3つの排気ランナ24Bは、気筒3、2及び1と第2の2つの排気マニホールド20Bとの間に提供される。排気マニホールド20A及び20Bは、どちらも排気システム26に排出する。
【0017】
様々な実施形態で、排気システム26は、これに限定されないが、概してディーゼル若しくはリーンバーン内燃機関に使用されるディーゼル微粒子フィルタ、選択的触媒還元(SCR)システム、ディーゼル排気流体(DEF)システム及び/又はNOxトラップ、並びに/或いは典型的にはガソリン燃料の火花発火内燃機関に使用する三元触媒変換器を含む、あらゆる数の様々な後処理システムを含んでもよい。
【0018】
内燃機関16、吸気マニホールド18並びに2つのマニホールドの排気マニホールド20A及び20Bの具体的構成は例示に過ぎないことを理解されたい。実際の実施形態では、気筒の数、並びに気筒の数及び/又は配置は広く変化してもよい。例えば気筒の数は、1から3、4、5、6、8、12又は16以上などのあらゆる数までの範囲であってもよい。また気筒は、示されたように一列に、V字形構成に、複数のシリンダバンクに、その他に配置されてもよい。内燃機関は、ディーゼルエンジン、リーンバーンエンジン、ガソリン燃料エンジン、火花発火エンジン、又は複数の燃料エンジンであってもよい。またエンジンは、発火源、燃料層化、空気/燃料化学量論、又は燃焼サイクルのあらゆる組み合わせも使用してもよい。また排気側では、全ての気筒によって共有される1つのみから又は複数の排気マニホールドまで、様々な数の排気マニホールドが使用されてもよい。
【0019】
ガソリン燃料及びディーゼル燃料の両方を含むほとんどの内燃機関は、燃焼に必要な空気を気筒に供給するための吸気マニホールド、及び燃焼したガスを気筒から排気システムに向けるための排気マニホールドを有する。車両の種類に依存して、排気システムは、典型的には特定のフィルタ、還元触媒変換器、酸化触媒変換器その他などの、1つ又は複数の後処理システムを含む。場合によっては、単一の後処理要素は、有害なテールパイプの排出物を酸化と還元の両方ができる、三元触媒などの複数の機能を実行することがある。
【0020】
ターボチャージャ及び/又は排気ガス再循環(EGR)システム
示された具体的実施形態にも含まれている内燃機関16は、任意選択でターボチャージャ30及び/若しくは排気ガス再循環(EGR)システム40のどちらか又は両方と共に使用することができる。
【0021】
ターボチャージャ30は、吸気マニホールド18内の圧力を気圧より上昇させるために使用される。空気が上昇した状態で、内燃機関16は、より多くの空気、それに比例してより多くの燃料を個々の気筒の中に投入することができるので、自然吸気エンジンに比べてより多くの動力を発生することができる。
【0022】
任意選択でターボチャージャ30は、タービン32、圧縮機34、ウエストゲート弁36及び給気冷却器38を含む。タービン32は、1つ又は複数の排気マニホールド20A及び/若しくは20Bから燃焼した排気ガスを受領する。3つ以上の排気マニホールドが使用される状況では、それらの排気は、典型的にはタービン32を駆動するために組み合わされる。タービンを通過する排気ガスは圧縮機34を駆動させ、圧縮機34は、次いで給気冷却器38に提供された空気の圧力を上昇させる。給気冷却器38は、圧縮された空気を吸気マニホールド18に再循環して戻す前に、所望の温度又は温度範囲に冷却することを担う。
【0023】
一部の任意選択の実施形態では、ウエストゲート弁36が使用されてもよい。ウエストゲート弁36を開くことにより、排気マニホールド20からの燃焼した排気ガスの一部又は全ては、タービン32を迂回することができる。その結果、タービン32のフィンに供給された背圧は、制御することができ、それは次いで圧縮機34が最終的に吸気マニホールド18に供給される吸気を圧縮する程度を制御する。
【0024】
様々な非排他的実施形態で、タービン32は、可変ベーン又は可変ノズル・ターボチャージャ・システムなどの可変ジオメトリ・サブシステムを使用してもよい。その場合、タービン32内の内部機構(図示せず)は、タービンを通る排気ガスの流量が変化すると、タービンの作動を最適化するためにタービンのフィンを通るガス流路を変える。タービン32が可変ジオメトリ又は可変ノズル・ターボチャージャ・システムの一部である場合、ウエストゲート36は必要ないことがある。
【0025】
EGRシステム40は、EGR弁42及びEGR冷却器44を含む。EGR弁42は、1つ又は複数の排気マニホールド20A及び/又は20Bに流体結合され、制御された量の燃焼した排気ガスをEGR冷却器44に提供するように配置される。次いでEGR冷却器44は、排気ガスを吸気マニホールド18に再循環して戻す前に排気ガスを冷却する。EGR弁42の位置を調節することにより、吸気マニホールド18に入る再循環した排気ガスの量が制御される。EGR弁42がより開くほど、吸気マニホールド18に流入する排気ガスは多い。逆にEGR弁42がより閉じるほど、吸気マニホールド18に再循環して戻る排気ガスは少ない。
【0026】
内燃機関16に戻る排気ガスの一部の再循環は、吸気ランナ22によって気筒に供給された新鮮空気の量を薄める作用をする。新鮮空気を燃焼に不活性であるガスと混合することにより、排気ガスは、燃焼で発生した熱の吸収剤として作用し、気筒内のピーク温度を低減する。その結果、NOxの排出が典型的には低減される。
【0027】
スキップ点火エンジン制御
スキップ点火エンジン制御装置14は、内燃機関16のスキップ点火作動を担う。作動中、スキップ点火制御装置14は、トルク要求を受信する。それに応答して、スキップ点火エンジン制御装置14は、要求されたトルクを満たすために気筒のための点火パターン又は点火比を選択する。トルク要求が変わると、点火パターン又は点火比はそれに応じて変わる。こうして所与の点火比パターンに対して、スキップ点火エンジン制御は、ある点火機会の間に気筒を選択的に点火することを企図する一方で、他の点火機会の間に他の気筒の点火を選択的にスキップすることを企図する。
【0028】
スキップ点火エンジン制御装置14は、エンジン速度及びトルク要求のある特定の範囲にわたる点火パターン又は点火比の画定したセットを使用して作動してもよい。各点火パターン/比は、対応する効率的なエンジン排気量を有する。サポートされる点火パターン/比のセットは、比較的限定されることが多く、例えば具体的なエンジンは、1/3、1/2、2/3及び1の点火比を使用することに限定されることがある。他のスキップ点火制御装置は、著しく多い独自の点火パターン又は点火比の使用を促進する。例として、本出願人によって設計された一部のスキップ点火制御装置は、0から9以下の整数の分母を有する1までのあらゆる点火比での作動を促進する。このような制御装置は、29個の潜在的な点火比、詳細には、0、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、2/9、1/4、2/7、1/3、3/8、2/5、3/7、4/9、1/2、5/9、4/7、3/5、5/8、2/3、5/7、3/4、7/9、4/5、5/6、6/7、7/8、8/9及び1のセットを有する。29個の潜在的な点火比が可能であり得るが、全ての点火比が全ての状況で使用するのに適するわけではない。むしろいつでも、所望のエンジントルクを送達できる一方で、製造業者が課した操縦性、並びに騒音、振動及びハーシュネス(NVH)の制約を満足させる点火比のセットは、はるかに限られることがある。またエンジンの点火パターン又は点火比は、現在の作動条件下で燃料の燃焼によってトルクを発生するために使用されるエンジンの平均排気量を示す、効率的な作動排気量として表されてもよい。
【0029】
概してスキップ点火エンジン制御は、従来の可変排気量手法を使用してできるより、効率的なエンジン排気量のより緻密な制御を促進する。例えば4気筒エンジン内で3つ毎に気筒を点火することは、全エンジン排気量の1/3の効率的な排気量を提供するはずであり、これは、気筒のセットを単に停止することによって獲得できないわずかな排気量である。概念的には、事実上のあらゆる効果的な排気量が、スキップ点火制御を使用して獲得できるが、実際はほとんどの実装形態は作動を入手可能な点火比、系列又はパターンのセットに限定する。本出願人は、スキップ点火制御への様々な取り組みを記載する多数の特許を出願している。例として、米国特許第7,849,835号明細書、第7,886,715号明細書、第7,954,474号明細書、第8,099,224号明細書、第8,131,445号明細書、第8,131,447号明細書、第8,464,690号明細書、第8,616,181号明細書、第8,651,091号明細書、第8,839,766号明細書、第8,869,773号明細書、第9,020,735号明細書、第9,086,020号明細書、第9,120,478号明細書、第9,175,613号明細書、第9,200,575号明細書、第9,200,587号明細書、第9,291,106号明細書、第9,399,964号明細書、第9,689,327号明細書、第9,512,794号明細書、及び第10,247,072号明細書などは、広範囲の内燃機関をスキップ点火作動モードで実践的に作動させる、種々のエンジン制御装置について記載している。これらの特許のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
これらの特許の多くは、特定の作業サイクルの間に特定の気筒を基本的にリアルタイムでスキップするか又は点火するかに関する点火判定を行う、動的スキップ点火制御に関する。すなわち所与の気筒に対する点火/スキップ判定は、その気筒に対する次の作業サイクルが始まる直前に(すなわち個々の気筒の点火機会毎に)、又はエンジンサイクル毎に行われる。
【0031】
ディーゼルエンジンなどのリーンバーン内燃機関へのDSFを含むスキップ点火エンジン制御の適用も公知である。例えば米国特許第10,247,072号明細書、及び本出願の譲受人に譲渡され、全ての目的のために参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/576,972号明細書を参照されたい。特許及び出願に記載されたように、エンジン制御は、排気ガスの温度を制御することにより、エンジン排気システムの効率を向上させるために使用される。点火密度及び励起密度を選択的に判定するためにDSFを使用することにより、燃焼した排気ガスの温度は、好ましい範囲内に制御することができる。燃焼した排気ガスの温度を制御することにより、排気システム内の後処理システムの効率は向上され、排出が低減する。
【0032】
異常検出システム
異常検出システム12は、少なくとも2つの診断操作を実行する診断ツールである。1つ目は、異常検出システムは、内燃機関16の6つの気筒1~6がスキップ点火エンジン制御装置14からの命令毎に点火を成功したか又はスキップを成功したかを判定するために、成功した気筒の点火及び成功した気筒のスキップの両方を示す、アクセス可能な記憶場所50内に維持されるモデルを使用する。2つ目は、異常検出システムは、任意選択で使用した場合に、ターボチャージャ・システム30内及び/又はEGRシステム40のEGR弁の異常を検出するために、濾過した排気ガス圧力読取値を発生して使用するように配置される。
【0033】
排気圧力センサ及び場所
異常検出システム12は、排気圧力を測定するために使用する1つ又は複数の排気圧力センサに依存する。様々な実施形態によれば、排気圧力センサは、多数の異なる場所に提供されてもよい。例えば排気圧力センサ52は、内燃機関16の各気筒に対して各排気ランナ24上に提供されてもよい。別の実施形態では、排気圧力センサ54は、排気マニホールド20内に提供されてもよい。例えば
図1に例示された具体的実施形態では、2つの排気圧力センサ54は、それぞれが排気マニホールド20A及び20Bのそれぞれに提供される。尚別の実施形態では、1つの排気圧力センサ56は、排気マニホールド20A及び20Bから下流に提供される。
図1において3つの異なる場所に提供された排気圧力センサ52、54及び56は、例示のみであることを意図し、決して必要条件ではないことに留意されたい。ほとんどの実際の又は現実世界の実施形態では、典型的には3つの場所の1つだけが使用されるはずである。2つ又は3つ全ての場所に排気圧力センサを有することは、通常は必要ないが、所望の場合に実施することができる。
【0034】
上記の排気圧力センサの場所のそれぞれに利点及び欠点がある。ランナベースの排気圧力センサ52は、いくつかの利点を供給する。まず、気筒の排気弁が排気ランナ24の中に直接排出するので、圧力センサ52の位置では、排出事象を下流の圧力センサに比べてより速く検出することができる。その結果、潜在的な異常をより速く検出することができる。加えて、圧力センサ52によって発生された圧力信号は、(a)気筒の近位にあることに起因して、圧力波があまり弱まらないこと、及び(b)個々の気筒ランナは、更に下流に置かれた構成要素より他の気筒から概してあまり影響を受けないことを含む多くの理由で、下流に置かれた圧力センサからの類似信号に比べて「よりクリーン」であり、より多くの情報を運ぶ傾向がある。よりクリーンな信号は、点火又はスキップの事象後に開く又は閉じるいずれかのために、排気弁の完全な異常より曖昧な他の排気弁の異常を画定しようとする時に特に有益である。このような他の異常には、弁が所望の量に上昇しない弁の上昇異常、排気弁の開閉のタイミングが意図した時と異なる弁のタイミング異常、及びスキップした点火機会に関連した異常を停止できないことが含まれる。
【0035】
ランナベースの圧力センサ52では、各気筒に1つが必要である。従ってランナベースの排気圧力センサ52の主な欠点は、主に費用及び複雑性である。
【0036】
逆に下流のセンサ54及び56は、あまりクリーンではなく、あまり情報を運ばない信号を発生する傾向がある。その結果、これらのセンサが使用される時に異常を検出する機能は、あまり正確ではない傾向があり、より遅い可能性がある。しかし排気マニホールド20A及び20B内、並びに/又は排気マニホールドの下流のみに置かれたセンサを使用する利点は、典型的には必要なセンサがより少ないことである。従って費用及び複雑性は低減する。
【0037】
排気ガス圧力変動
気筒の点火が成功した時、空気燃料混交物の燃焼は、ピストンが上死点(TDC)から下死点(BDC)に動く際に作業サイクルの動力行程の間に起きる。ディーゼルエンジンの技術分野で周知であるように、圧力及び熱により燃焼が起きる一方で、火花はガソリン燃料エンジンを発火させるために使用される。いずれの種類のエンジンでも、熱く燃焼したガスは、排気工程の間に気筒の作業チャンバから排気される。ピストンがBDCに到達すると、気筒の排気弁は開き、ピストンはTDCに向かって動く。その結果、燃焼ガスが気筒から押し出され又は排出されることにより、熱く燃焼したガスは、対応する排気ランナ24の中に押し寄せ、排気マニホールド20A及び20Bを通過する。
【0038】
しかし点火するように命令された気筒が点火しない場合、動力行程の間に燃焼が起きることは皆無に等しい。その結果、成功した点火に比べて、排気工程の間に対応する排気ランナ24及び排気マニホールド20A又は20B内の圧力の急上昇は皆無に等しい。
【0039】
スキップでは、上の補完が起きる。スキップが成功すると、燃焼はせず、排気弁は典型的には停止する。その結果、対応する排気ランナ24及び排気マニホールド20を通過する圧力の急上昇は皆無に等しい。しかしスキップが失敗すると、排気弁は一部又は完全に開くことがあり、加えて若干の燃焼が失敗の性質に依存して起きることがある。いずれにしても、空気が気筒を通してポンプ供給され、及び/又は一部の燃焼したガスが排気されるいずれかの際に、典型的には排気システム内の圧力が急上昇する。
【0040】
従って作業サイクルの間に成功した点火を測定された圧力は、基本的にパルスである。点火が失敗した場合は、パルスは皆無に等しい。一方、スキップが成功すると、パルスは皆無に等しいが、スキップが失敗すると、典型的にはある程度のパルスが存在する。いずれの場合も、これらの圧力変動は、圧力センサ52、54及び/又は56のいずれかによって測定することができる。こうして測定された圧力読取値から、排気弁が開く直前の気筒内の圧力は見積もることができる。見積もった圧力読取値から、(1)燃焼事象が起きたか否か、及び(2)燃焼事象が起きた場合、作業出力は何であったかの判定をすることができる。この情報で、気筒が点火命令又はスキップ命令が成功して履行されたか否かの判定をすることができる。
【0041】
図2Aを参照すると、いくつかの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の例示的グラフ60が示されている。この具体的なグラフでは、実線62は、それぞれが標識付けされた64A、64B、64C及び64Dのそれぞれの4つの点火した作業サイクルにわたって、予期した排気ガス圧力パルスを示す。破線66は、センサ52、54又は56のいずれかによって測定されたような実際の圧力を示す。この具体例では、測定された圧力変動又はパルス66は、作業サイクル64A、64B及び64Dに対して予期した排気ガス変動に接近して辿るが、64Cはそうではない。作業サイクル64Cについては、矢印68によって示されたように、パルスの大きさが他のパルスよりはるかに小さい。予期した信号62及び測定された信号66が互いに接近して辿る時、点火が成功したことを示す。予期した信号62及び測定された信号66が互いに接近して辿らない時、点火が失敗したか又は点火しなかったことを示す。こうしてグラフ60は、作業サイクル64A、64B及び64Dにわたって点火が成功したが、64Cについては点火しなかったことを示す。
【0042】
本出願人は、グラフ60がセンサ52、54又は56に関して上記の場所のいずれに使用されてもよいと述べている。しかし上記のように、センサ54及び56は、あまりクリーンではなく、あまり情報を運ばない信号を発生する傾向がある。加えて少なくとも下流のセンサ54及び/又は56では、1気筒事象の排気圧力読取値は、前又は次の気筒事象と重なることがある。従って本出願人は、下流の圧力検知デバイスを使用する時に、成功した気筒の点火と失敗した点火(例えば予期しないスキップ又は予期しない弁の停止)に対する排気ガス圧力読取値を区別する働きをするために、追加の任意選択の信号処理ステップを考案した。
【0043】
図2Bを参照すると、エンジンサイクルにわたる例示的6気筒エンジンの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力変動の第1の例示的グラフ200、並びに数個の成功した気筒点火及び1つの失敗した点火を示す第2のグラフ202が示されている。
【0044】
詳細には、グラフ200は、この具体例では点火比5/6で作動する上述の6気筒エンジンから測定されたような、センサ54及び/又は56による「生」の排気マニホールド圧力読取値204を示す。換言すると、1つの気筒はスキップされ、他の5つは、点火比が変化しない限りエンジンサイクル毎に点火される。排気マニホールド圧力読取値204から見られるように、点火に対する山及びスキップに対する谷は、信号ノイズ及び前後の気筒事象から重なる排気圧力に起因して、例えば
図2Aに描かれたほど区別されず又は明瞭ではない。この課題に取り組むために、本出願人は、以下のことを提案する。
(1)生信号204の移動平均を濾過又は使用することにより、排気マニホールド圧力読取値204を濾過した型206を生成すること。生信号204を濾過することにより、高周波数ノイズが除去され、「より滑らかな」信号がもたらされる。
(2)各気筒事象における生信号204を濾過した型206をサンプル抽出又はラッチすることにより、「ラッチした」信号208を発生すること(すなわち6気筒エンジンについては、排気マニホールド圧力読取値を濾過した型206は、クランク角の120°毎にラッチされる)。
【0045】
第2のグラフ202では、圧力信号「差」210は、前にラッチした値からそれぞれがラッチした値を引くことによってもたらされる。次いで圧力信号差210は、閾値圧力値212と対比してグラフに描かれる。第2のグラフ202に描かれたように、圧力信号差210が閾値圧力値212より大きい時に「点火」が指示される一方で、「スキップ」は、圧力信号差210が閾値212より下回る時は常に指示される。
【0046】
この具体例では、点火比は5/6である。それ故に、圧力信号差210の6気筒の内の5気筒の事象は、閾値212より高い一方で、1気筒の事象は、閾値212より低い。1つ又は複数の予期しないスキップ及び/若しくは予期しない弁の停止が起きた場合、圧力信号差210は、閾値210より下回る傾向があり、予期しない事象にフラグ付けをする。
【0047】
一実施形態では、閾値圧力値212は、経験的データから決定される。すなわち所与のエンジンについて、排気マニホールド圧力読取値は、複数の成功した気筒点火に対して生成される。これらの読取値から、閾値圧力値212を導くことができる。原則として、収集した成功した点火のデータのセットが多いほど、閾値圧力値212がより正確である傾向がある。
【0048】
本明細書に論じたように、5/6の点火比又は密度は例示に過ぎないことを理解されたい。本明細書に論じたように、信号処理は、点火比に関わらず失敗した点火を検出するために使用してもよい。
【0049】
図2Cを参照すると、数個の作業サイクルにわたる予期した排気ガス圧力変動の例示的グラフ70が示されている。このグラフ70では、実線72は予期した圧力を示すのに対して、測定された排気圧力は破線74によって表されている。
【0050】
この例では、3つの成功した点火した作業サイクル76A、76B及び76Dが示されている。これらの場合のそれぞれでは、測定された圧力74は、予期した圧力72に接近して辿る。
【0051】
しかし作業サイクル76Cは、失敗したスキップを示す。スキップした作業サイクルでは、予期した圧力72は、燃焼が予期されず、スキップした気筒の排気弁は通常は開かないので、非常に低い。しかし失敗したスキップでは、測定された圧力74は、矢印78によりこの例に表したように比較的高くなり、これは、若干の燃焼が起きていることがあり、及び/又は排気弁が機能せず開いていることにより、気筒を通して空気をポンプ供給できることを示す。
【0052】
グラフ60、70は、実際の排気を測定するために使用する圧力センサの場所に依存して、数個の方法の内の1つで解釈することができることに留意されたい。例えば、
1.圧力センサが排気ランナ24に沿って置かれたセンサ52の1つである場合、2つのグラフ60、70に例示された連続した作業サイクルは、4つの連続したエンジンサイクルにわたって同じ気筒を示す。例えば問題の気筒が3番である場合、グラフ60、70は、4つの連続したエンジンサイクルにわたって気筒3の測定された圧力出力を示す。
2.一方、圧力センサが排気マニホールド20A若しくは20B内に置かれた圧力センサ54、又は排気マニホールド20A、20Bの下流に置かれた圧力センサ56のいずれか一方である場合、2つのグラフ60、70は、1つのエンジンサイクルの間にそれらの順番に作動する異なる気筒の作業サイクルを示す。
【0053】
両方のグラフ60、70では、測定された圧力は、示されたように予期した圧力に接近して辿る。しかし実際の実施形態では、センサ52、54及び/又は56のどれが使用されるかに依存して、予期した圧力と測定された圧力との間に時間オフセットが存在することがある。センサが気筒から遠いほど、燃焼ガスが排気ランナ24及びマニホールド20A、20Bを通って伝播し、測定センサに達する時間が掛る。その結果、排気センサ内のセンサ52が使用される場合、時間オフセットは最小であるが、センサ54又は56が使用される場合、より大きくなる。原則として、取り込む圧力測定読取値が気筒から遠いほど、時間オフセットは大きくなる。
【0054】
グラフ70は、センサ52、54又は56に関して上に記載された場所のいずれに使用されてもよいと、本出願人は述べている。しかし上記のように、センサ54及び56は、あまりクリーンではなく、あまり情報を運ばない信号を発生する傾向がある。加えて、1気筒事象からの排気圧力読取値は、前後の気筒事象と重なる傾向がある。従って本出願人は、下流の排気ガス圧力センサが、成功した気筒スキップに対する失敗したスキップ(すなわち偶発的な点火)に対する読取値を区別するために使用される時に役立つように、追加の任意選択の信号処理ステップを考案した。
【0055】
図2Dは、6気筒エンジンのエンジンサイクルの作業サイクルにわたって予期した排気ガス圧力読取値の第1の例示的グラフ250、並びにグラフ250の読取値の一部のデータを処理した後の数個の成功した気筒のスキップ及び1つの失敗したスキップ(すなわち偶発的な点火)を示す、第2のグラフ252を示す。
【0056】
詳細には、グラフ250は、この具体例では点火比1/6で作動する6気筒エンジンのエンジンサイクルの間に測定されたように、センサ54及び/又は56による「生」の排気マニホールド圧力読取値254を示す。換言すると、1つの気筒は点火され、他の5つは、点火比が変化しない限りエンジンサイクル毎にスキップされる。排気マニホールド圧力読取値254からわかるように、スキップに対する谷及び点火に対する山は、信号ノイズ、並びに前及び/又は次の気筒事象からの排気圧力読取値の重なりに起因して、例えば
図2Cに描かれたほど区別されず又は明瞭ではない。この課題に取り組むために、本出願人は、以下のことを提案する。
(1)生信号254の移動平均を使用することにより濾過することにより、排気マニホールド圧力読取値254を濾過した型256を生成すること。生信号254を濾過することにより、高周波数ノイズが除去され、「より滑らかな」信号がもたらされる。
(2)各気筒事象における生信号254を濾過した型256をサンプル抽出又はラッチすることにより、「ラッチした」信号258を発生すること(すなわち、やはり濾過した6気筒エンジンについては、排気マニホールド圧力読取値を濾過した型256は、クランク角の120°毎にラッチされる)。
【0057】
第2のグラフ252では、圧力信号「差」260は、前にラッチした値からそれぞれがラッチした値を引くことによってもたらされる。次いで各引算の差がグラフに描かれ、圧力信号差260をもたらす。
【0058】
第2のグラフ252に描かれたように、圧力信号差260が閾値圧力262より大きい時は常に点火が指示される一方で、スキップは、圧力信号差260が閾値圧力262より下回る時に常に指示される。やはり閾値圧力262も、所与のエンジンに対して成功した点火を示す経験的データから発生する。
【0059】
この具体例では、点火比は1/6である。それ故に、圧力信号差260の6気筒の内の1気筒の事象は、理想的には閾値262より高い一方で、5気筒の事象は、閾値262より低い。スキップが命令されたが、得られる圧力信号差260が閾値262を超えることを意味する、1つ又は複数の偶発的な点火が起きた場合、気筒事象は、偶発的な点火事象としてフラグ付けされる。
【0060】
図2Eは、代替異常検出論理300の図である。この具体的実施形態では、異常検出論理300は、内燃機関16の個々の気筒(すなわち1~6)に対するスキップ/点火命令を受信する、異常検出システム12を含む。それに応答して、スキップ/点火命令論理302は、気筒Nと同様に、前の気筒N-1及び次の気筒N+1のスキップ又は点火状態を示す、ステータス信号304を発生する。この非排他的実施形態では、ステータス信号304は、気筒事象N-1、N及びN+1のそれぞれに対して8つ(すなわち2
3=8)の論理状態の1つを想定することができる。より多い又は少ない気筒事象が検討されて使用されてもよく、その場合にステータス信号は8より多い又は少ない論理状態を想定してもよいことを理解されたい。
【0061】
ステータス信号304に基づいて、閾値ルックアップテーブル306は、閾値のテーブルにアクセスし、選択閾値圧力値をステータス信号304に対応する異常スキップ/点火検出モジュール308に提供する。この手法では、閾値圧力値は、(a)気筒Nに対する命令が点火又はスキップのどちらかである場合、及び(b)前及び次の点火事象が点火及び/又はスキップである場合の組み合わせに基づいて調節される。
【0062】
信号処理装置310は、上に論じたように「生」の排気マニホールド圧力読取値204/254から圧力信号差210/260を発生することを担う。それに応答して、スキップ/点火検出モジュール308は、気筒Nに対して受信した閾値を圧力信号差210又は260と比較する。それに応答して、スキップ/点火検出モジュール308は、(a)気筒Nが点火しなかったが、点火するべきであった場合に失敗した点火異常、又は(b)気筒N事象が燃焼を起こしたが、スキップするべきであった場合の失敗したスキップのいずれかを発生する。
【0063】
上のプロセスは、内燃機関16の気筒1~6が各エンジンサイクルの間に並んだ順に点火又はスキップのいずれかを命令されるように反復される。この方法で、失敗した点火及び/又は失敗したスキップには、作動中に継続的にフラグ付けすることができる。
【0064】
経験的データを使用する排気圧力モデルの生成
経験的データは、内燃機関16の気筒を点火又はスキップするいずれかの命令が成功したか否かを判定するために、異常検出システム12によって使用できる点火及びスキップモデルを構築するために使用できることを、本出願人は発見した。
【0065】
図3Aを参照すると、点火モデルを発展させるためのステップを例示する例示的流れ
図80が例示されている。
【0066】
ステップ82では、気筒の点火した作業サイクルに対する排気圧力読取値を示す経験的データが収集される。
【0067】
ステップ84では、成功した気筒の点火に対する排気圧力の第1の分配範囲が、経験的データから画定される。
【0068】
ステップ86では、成功した気筒の点火に対する平均排気圧力が画定される。換言すると、一旦成功した点火からの圧力読取値が第1の分配範囲内に置かれると、平均はそれらの読取値から計算される。
【0069】
ステップ88では、失敗した気筒の点火に対する排気圧力の第2の分配範囲が、経験的データから画定される。
【0070】
ステップ90では、失敗した気筒の点火に対する平均排気圧力が画定される。
【0071】
ステップ92では、2つの分配範囲の間に閾値が画定される。
【0072】
図3Bを参照すると、例示的点火圧力分配モデル100が例示されている。分配モデル100は、成功した点火に対する第1の分配範囲102、及び成功した点火に対する平均排気圧力102Aを示す。分配モデル100は、失敗した気筒の点火に対する第2の分配範囲104、及び失敗した点火に対する排気圧力平均104Aも示す。閾値106は、2つの範囲102と104との間に画定される。
【0073】
ステップ92に画定されたように、モデル100の閾値106は、内燃機関16の実際の作動中に気筒に対する点火命令が成功したか否かを判定するために、異常検出システム12によって使用される。点火命令からもたらされる測定された排気圧力が閾値106より高い場合、異常検出システム12は、点火命令が成功して履行されたと判定する。一方、測定された排気圧力が閾値106より低い場合、異常検出システム12は、点火命令が気筒によって失敗して履行されたと判定する。
【0074】
閾値106を確認するための上記の方法論は、圧力センサ52、54及び/又は56のどれを使用するかに関わらず使用することができる。後者(例えば54又は56)の場合、上記の方法論は、上に論じたように閾値212を確認するために使用することができる。
【0075】
図4Aを参照すると、スキップモデルを発展させるためのステップを例示する例示的流れ
図110が例示されている。
【0076】
ステップ112では、気筒のスキップした作業サイクルに対する排気圧力読取値を示す経験的データが収集される。
【0077】
ステップ114では、成功した気筒のスキップに対する排気圧力の第1の分配範囲が、経験的データから画定される。
【0078】
ステップ116では、成功した気筒のスキップに対する平均排気圧力が画定される。換言すると、一旦成功したステップからの圧力読取値が第1の分配範囲内に置かれると、平均はそれらの読取値から計算される。
【0079】
ステップ118では、失敗した気筒のスキップに対する排気圧力の第2の分配範囲が、経験的データから画定される。
【0080】
ステップ120では、気筒の失敗したスキップに対する平均排気圧力が画定される。
【0081】
ステップ122では、2つの分配範囲の間に閾値が画定される。
【0082】
図4Bを参照すると、スキップ圧力分配モデル130が例示されている。分配モデル130は、成功したスキップに対する第1の分配範囲132、及び成功したスキップに対する平均排気圧力132Aを示す。分配モデル130は、失敗した気筒のスキップに対する第2の分配範囲134、及び失敗したスキップに対する排気圧力平均134Aも示す。閾値136は、2つの範囲132と134との間に画定される。
【0083】
モデル130の閾値136は、ステップ122に画定されたように、内燃機関16の実際の作動中に気筒に対するスキップ命令が成功したか否かを判定するために、異常検出システム12によって使用される。スキップ命令からもたらされる測定された排気圧力が閾値より低い場合、異常検出システム12は、スキップ命令が成功したと判定する。一方、測定された排気圧力が閾値136より高い場合、異常検出システム12は、スキップ命令が失敗したと判定する。
【0084】
モデル100、130を生成するために使用される経験的データは、多数の方法で収集されてもよい。例えばデータは、内燃機関16又は類似のエンジンから収集することができる。データが収集されると、様々な分配範囲が更新され、平均が画定される。原則として、使用する経験的データが多いほど、分配100、130は、より完全で代表的な実世界の運転条件になる。この点を考慮して、非常に多くの排気圧力読取値が、典型的には少なくとも数万又は数十万のサンプルの範囲で、典型的には使用されるが、より多い又は少ないサンプルが使用されてもよい。
【0085】
一旦これらの分配モデル100、130が構築されると、これらのモデルは、典型的には異常検出システム12によって容易にアクセス可能な場所50に記憶される。
【0086】
閾値136を確認するための上記の方法論は、圧力センサ52、54及び/又は56のどれを使用するかに関わらず使用することができる。後者(例えば54又は56)の場合、上記の方法論は、上に論じたように閾値262を確認するために使用することができる。
【0087】
ニューラルネットワークを使用する排気圧力モデルの生成
ニューラルネットワークは、概していかなるタスクの特定の規則もプログラムすることなく、例を考慮することによりタスクを実行することを「学習する」コンピューティングシステムである。ニューラルネットワークの共通アプリケーションは、画像認識、音声認識及び自然言語処理を含む。各アプリケーションでは、ニューラルネットワークは、主題の公知の例から「学習し」、次いで同じ又は類似の主題の未知の例を同定するために、この学習した知識を自動的に適用する。例えば画像、音声又は自然言語の発話の公知の例から学習するニューラルネットワークは、画像、音声及び自然言語の発話のそれぞれの未知の例を認識することを学習する。類似の方法では、ニューラルネットワークは、(1)経験的データから収集した、測定された排気圧力読取値から成功した気筒の点火及び成功した気筒のスキップを学習し、(2)実際の気筒の点火又はスキップ命令が成功したか否かを、成功した気筒の点火及び成功した気筒のスキップの学習したモデルから測定された排気圧力読取値を比較することによって、判定するために使用することができることを、本出願人は見出した。
【0088】
図5を参照すると、任意の所与の点火機会が、点火分配モデル100及びスキップ分配モデル130に基づいた異常であるかどうかを推測するために使用することができる、ニューラルネットワーク140が示されている。
【0089】
ニューラルネットワーク140は、入力層142、入力前処理層142、1つ又は複数の隠れ層144(a)~144(n)及び出力層146を含む。
【0090】
入力層142は、多数の入力を受信するように配置される。非排他的実施形態では、入力は、(a)排気圧力サンプル、(b)吸気マニホールド圧力サンプル、(c)排気ガス再循環(EGR)弁位置サンプル、(d)可変ジオメトリターボ(VGT)羽位置サンプル、(e)ウエストゲート位置サンプル、(f)内燃機関の1つ若しくは複数の気筒のそれぞれのスキップ又は点火状態、(g)エンジン速度、(h)気筒負荷、及び(i)内燃機関の気筒内で測定された圧力サンプルの1つ或いは複数を含んでもよい。本明細書に提供された入力のリストは例示であり、限定と解釈するべきではないことを理解されたい。より少ない又はより多い入力も同様に使用することができる。
【0091】
入力前処理層144は、入力を正規化する。正規化により、異なる規模で測定されたあらゆる入力は、共通又は類似の規模で測定されるように調整される。
【0092】
1つ又は複数の隠れ層144(a)~144(n)のそれぞれは、機能を履行するための1つ又は複数の処理装置(θ1、θ2、θ3、…θN)を含む。隠れ層144(a)~144(n)のそれぞれは、前の層からの入力を受信し、処理した出力を次の層に提供するように配置される。例えば第1の隠れ層144(a)は、前処理層144から正規化した入力を受信し、処理した出力を第2の隠れ層144(b)に提供する。第2の隠れ層144(b)は、その入力を処理した後にその処理した出力を次の隠れ層144(c)に提供する。このプロセスは、隠れ層のそれぞれから反復される。
【0093】
最後の隠れ層144(n)は、その入力を処理し、その出力を出力層146に提供し、出力層146は更なる後処理を実行してもよい。出力層146の最終結果は、閾値106を画定する点火分配モデル100及び閾値136を画定するスキップ分配モデル130であり、これらはやはり異常検出システム12によってアクセス可能な記憶場所50に維持される。
【0094】
示されたニューラルネットワークでは、隠れ層144(a)、114(b)及び114(n)の3つの階層のみが、簡単にするために示されている。あらゆる数の隠れ層が使用されてもよいことを理解されたい。
【0095】
ニューラルネットワーク140は、これに限定されないが、点火密度、気筒負荷、全エンジントルク要求、ターボチャージャ設定、排気ガス再循環設定、及びエンジン速度などの種々の試験エンジン作動条件下で、非常に多くのデータ点を収集することによって訓練されてもよい。試験エンジンは、市販のエンジンにはない特定の計装及び制御機能を有してもよい。弁の異常は、失敗した点火及びスキップを再現するために選択された点火機会に異常な方法で、吸気弁又は排気弁を意図的に作動することによりデータに故意に導入される。ニューラルネットワーク140は、意図的に誘発された異常を有する点火及びスキップ機会、並びに正しい弁起動を有する点火及びスキップ機会の両方に対する排気圧力読取値を辿る。集めたデータに基づいて、ニューラルネットワーク140は、どの排気圧力読取値が、失敗した点火及びスキップの両方に対する異常な弁作動に対応し、どの点火機会が、成功した点火及びスキップに対する適切な弁作動に対応するかを学習する。ニューラルネットワーク140は、点火機会が正しく遂行されたかどうかの判定に、点火機会がスキップ又は点火することを意図するかどうかを知る必要があることを認識されたい。またニューラルネットワーク140は、試験点火機会が正しく遂行されたかどうかの判定に、試験点火機会の前後の点火機会のスキップ点火パターンを知る必要もあることがある。
【0096】
一旦正しい弁作動及び異常な弁作動の両方を表す試験点の大量のデータセットが収集され、ニューラルネットワーク140によって分析されると、ニューラルネットワークは、所与の点火機会に弁が正しく作動したかどうかを予測するために使用されてもよい。これらの予測は、再度エンジンが意図的に弁の異常を導いたデータと比較されてもよい。訓練が成功した場合、ニューラルネットワーク140は、弁の異常を正確に予測することができ、訓練は有効化される。ニューラルネットワーク140が、弁の異常を正確に予測しない場合、許容できる性能に達成するまで再訓練することができる。次いで得られるアルゴリズムは、オンボード診断(OBD)システムの一部としてエンジンの生産に使用し、及び/又は異常検出システム12によってアクセス可能な記憶場所50に維持することができる。
【0097】
ターボチャージャ及び/又はEGR診断
内燃機関16の作動中、6つの気筒1~6は、それらの所定の順で複数のエンジンサイクルにわたって作動される。エンジン16に対するトルク要求が変わると、スキップ点火エンジン制御装置14は、必要な点火パターン又は現在のトルク要求を満たすために必要な点火比をほぼ瞬時に決定し、それに応じて個々の気筒1~6に点火又はスキップ命令を発行する。それ故に内燃機関16の連続作動中に、排気圧力センサ52、45及び/又は56は、気筒のそれぞれの燃焼事象と一致する周波数を有する一連の圧力パルスを調べる。
【0098】
継時的に一連の圧力パルス(又はエンジン16のクランクシャフトのクランク角)を平均することにより、濾過した結果は、ターボチャージャ30のウエストゲート36又はEGRシステム40のEGR弁42のどちらが不適切に作動したかを判定するために、判断ツールとして使用することができることを本出願人は見出した。
【0099】
図6を参照すると、(a)複数のエンジンサイクルの作業サイクルにわたって気筒1~6によって発生された(センサ52、54又は56のいずれかによって測定されたように)一連の排気圧力パルスを含む、濾過していない信号152、及び(b)継時的に信号152のパルスの圧力読取値を平均することによって引き出された、濾過した信号154を例示する、グラフ150が提供されている。別の言い方をすれば、信号152は、パルスが気筒16の作業サイクルの周波数と一致する高周波数レートで起きるので、測定された排気圧力変動の高周波数成分を含有する。この濾過していない信号152は、個々の点火又はスキップ命令が成功して履行されたか否かを判定するために、診断用の異常検出システム12によって使用される。対照的に、濾過した信号154は、高周波数成分が濾過されているので、排気圧力読取値の低周波数成分を含有する。
【0100】
濾過した信号154の圧力に急降下がある場合に、典型的にターボチャージャ30のウエストゲート36又はEGR弁42のどちらかに問題があることを示すことを、本出願人は発見した。例えばウエストゲート36及び/又はEGR弁が適切に閉じる場合、濾過した信号154の圧力は、比較的高いままである。一方、ウエストゲートが開位置から動かなくなる場合、排気ガスのほとんどがタービン32を迂回する際に圧力が急降下する。同様にEGR弁42が開位置から動かない場合、かなりの量の排気ガスが吸気マニホールド18の中に再循環して戻る。いずれにしても、測定された排気圧力は、典型的には急激に下がる。例えば
図6の信号156を参照されたい。
図6の信号156は、ウエストゲート36又はEGR弁42のどちらかの変動を示す、急激な圧力降下を示す。
【0101】
異常検出システム12は、ターボチャージャ30又はEGRシステム40の作動の診断を実行する。異常検出システム12は、濾過した信号154を各システム30、40に対する閾値と比較する。信号154がどちらかに対する閾値より下回る場合、異常検出システム12は、ウエストゲート弁若しくはEGR弁のいずれか又は潜在的に両方に問題があると診断する。
【0102】
結論
本実施形態は、例示であり限定ではないと考えるべきであり、本発明は、本明細書に与えられた詳細に限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及び等価物の範囲内で修正されてもよい。