(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】支持装置及びこれを備えた加工装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/02 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
B23B31/02 601D
B23B31/02 601A
(21)【出願番号】P 2019109960
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】泉 孝明
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-069846(JP,U)
【文献】実開昭62-174802(JP,U)
【文献】特開2005-254365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/02,33/00;
B23F 1/00-23/12;
B24B 41/04-41/06,47/12,47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対象部材を支持する支持装置であって、
ベース部材と、
前記回転対象部材が着脱可能に取り付けられる固定部材と、
前記ベース部材に固定され、前記固定部材を、前記回転対象部材の回転軸の一端部側から前記回転軸周りに回転させる駆動部と、
前記回転対象部材の回転軸の他端部側から前記固定部材に着脱可能に取り付けられ、前記固定部材の回転を支持する支持部と、
前記支持部を、前記固定部材に取り付けられた第1位置と、前記固定部材から離間した第2位置との間で移動させる移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、
前記支持部を前記回転軸の軸方向に延びる第1方向に沿って移動させる第1機構と、
前記支持部を前記回転軸の延長線上から離れた前記第2位置に移動させる第2機構と、
を備
え、
前記第1機構は、前記ベース部材に対して前記軸方向にスライド可能な少なくとも1つのスライド部材を備え、
前記スライド部材がスライドすることで、前記支持部が前記第1方向に移動するように構成され、
前記支持装置はさらに、前記支持部に取り付けられたハンドルを備え、
前記第2機構は、前記スライド部材に取り付けられ、前記第1方向に直交する第2方向に延びる軸部材と、前記軸部材に回転自在に取り付けられた、前記支持部の連結部材とを備え、
前記支持部は、前記ハンドルが前記第1方向に引っ張られることで、前記第1方向に移動した後、前記軸部材周りに回転することで、前記回転軸の延長線上から離れた前記第2位置に移動するように構成されている、
支持装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記支持部が前記第1位置にあるとき、当該支持部を前記ベース部材に保持する少なくとも1つの保持部材をさらに備えている、請求項
1に記載の支持装置。
【請求項3】
工具を支持する工具支持ユニットと、
ワークを支持するワーク支持ユニットと、
を備え、
前記ワークに対して前記工具によって加工を行うために、前記工具支持ユニットと前記ワーク支持ユニットとが相対的に近接離間するように構成され、
前記工具支持ユニットは、請求項1
または2に記載の支持装置によって、前記工具を前記回転対象部材として支持するように構成されている、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転対象部材を支持する支持装置、及びこれを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械などの加工装置において、砥石などの回転可能な工具は、例えば、特許文献1に示すような支持装置に支持されている。この文献においては、工具は、工具ホルダに固定され、この工具ホルダの軸方向の一端部に取り付けられたモータにより回転駆動するように構成されている。このとき、工具ホルダが軸線周りに正確に回転するように、工具ホルダの軸方向において、モータとは反対側には支持部が取り付けられ、この支持部が工具ホルダとともに回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような支持装置において、工具を交換する際には、支持部を支持装置から取り外す必要があり、作業者の負担が大きかった。これに対して、工具ホルダから軸方向に支持部を離間させ、この状態で工具を工具ホルダから取り外す機構も検討されているが、支持部が工具ホルダから離間しても、依然として工具ホルダの軸線上にあるため、作業空間の端に居残る支持部が邪魔になって工具を取り外す際の作業性が悪いという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、工具等の回転対象部材を取り外す際に、作業性を向上することができる支持装置、及びこれを備えた加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転対象部材を支持する支持装置であって、ベース部材と、前記回転対象部材が着脱可能に取り付けられる固定部材と、前記ベース部材に固定され、前記固定部材を、前記回転対象部材の回転軸の一端部側から前記回転軸周りに回転させる駆動部と、前記回転対象部材の回転軸の他端部側から前記固定部材に着脱可能に取り付けられ、前記固定部材の回転を支持する支持部と、前記支持部を、前記固定部材に取り付けられた第1位置と、前記固定部材から離間した第2位置との間で移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記支持部を前記回転軸の軸方向に延びる第1方向に沿って移動させる第1機構と、前記支持部を前記回転軸の延長線上から離れた前記第2位置に移動させる第2機構と、を備えている。
【0006】
上記支持装置において、前記第1機構は、前記ベース部材に対して前記軸方向にスライド可能な少なくとも1つのスライド部材を備えることができ、前記スライド部材がスライドすることで、前記支持部が前記第1方向に移動するように構成することができる。
【0007】
上記支持装置において、前記第2機構は、前記スライド部材に取り付けられ、前記第1方向に直交する第2方向に延びる軸部材を備えることができ、前記支持部は、前記軸部材周りに回転することで、前記回転軸の延長線上から離れた前記第2位置に移動するように構成することができる。
【0008】
上記支持装置において、前記ベース部は、前記支持部が前記第1位置にあるとき、当該支持部を前記ベース部材に保持する少なくとも1つの保持部材をさらに備えることができる。
【0009】
本発明に係る加工装置は、工具を支持する工具支持ユニットと、ワークを支持するワーク支持ユニットと、を備え、前記ワークに対して前記工具によって加工を行うために、前記工具支持ユニットと前記ワーク支持ユニットとが相対的に近接離間するように構成され、前記工具支持ユニットは、上記いずれかの支持装置によって、前記工具を前記回転対象部材として支持するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工具等の回転対象部材を取り外す際に、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明に係る加工装置の一実施形態である歯車仕上げ加工装置の斜視図である。
【
図2】
図1の歯車加工装置に設けられる砥石支持装置の斜視図である。
【
図3】
図2の砥石支持装置を前方から見た図である。
【
図5】
図4の状態から砥石サポートが第2位置へ遷移する途中の断面図である。
【
図6】
図5の状態から砥石サポートがさらに移動し、第2位置にある状態を示す断面図である。
【
図7】砥石サポートが第2位置にあるときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加工装置を歯車仕上げ加工装置に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る歯車加工装置の斜視図である。
【0013】
<1.歯車仕上げ加工装置の概要>
図1に示すように、この歯車仕上げ加工装置は、被加工歯車であるワークWを工具である砥石10と同期回転させながら研削加工するものであり、基台1と、この基台1上に配置され、砥石5を支持する砥石支持ユニット2と、歯車形をしたワークWを支持するワーク支持ユニット3と、を備えている。砥石5の外周面には、図示を省略するが、ネジ状溝が形成されており、後述するように、砥石5とワークWが噛み合いながら、同期駆動させることで、ワークWの歯面が研削されるようになっている。以下、これらについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図1に示す方向にしたがって、説明を行う。但し、本発明のこの方向に限定されない。
【0014】
<2.砥石支持ユニットの概要>
砥石支持ユニット2は、基台1の上面の右側に配置される直方体状の第1支持部21と、第1支持部21の左面に配置される扁平状の第2支持部22と、第2支持部22の左面に配置される砥石支持装置4と、を備えている。
【0015】
第1支持部21は、基台1上に配置されたレール部材(図示省略)に沿って左右方向に移動可能に支持されている。そして、基台1に配置された第1モータ11、この第1モータ11に連結された第1ボールネジ(図示省略)、及び第1支持部21の下面に配置された第1ナット(図示省略)によって、左右方向に移動するようになっている。より詳細に説明すると、第1ボールネジは左右方向に延びるように配置されており、この第1ボールネジに第1ナットが螺合している。そして、第1ボールネジが、その軸周りに第1モータ11によって回転されることで、第1ナットが第1支持部21とともに左右方向に移動するようになっている。
【0016】
第1支持部21には、上下方向に延びるレール部材(図示省略)が取り付けられており、第2支持部22は、このレール部材に沿って、第1支持部21の左面において上下方向に移動するようになっている。そして、第1支持部21に配置された第2モータ211、この第2モータ211に連結された第2ボールネジ(図示省略)、及び第2支持部22の左面に配置された第2ナット(図示省略)によって、第2支持部22は、上下方向に移動するようになっている。より詳細に説明すると、第2ボールネジは上下方向に延びるように配置されており、この第2ボールネジに第2ナットが螺合している。そして、第2ボールネジが、その軸周りに第2モータ211によって回転されることで、第2ナットが第2支持部22とともに上下方向に移動するようになっている。
【0017】
第2支持部22には、前後方向に延びるレール部材(図示省略)が取り付けられており、砥石支持装置4は、このレール部材に沿って、第2支持部22の左面において前後方向に移動するようになっている。そして、第2支持部22に配置された第3モータ221、この第3モータ221に連結された第3ボールネジ(図示省略)、及び砥石支持装置4の右面に配置された第3ナット(図示省略)によって、砥石支持装置4は、前後方向に移動するようになっている。より詳細に説明すると、第3ボールネジは前後方向に延びるように配置されており、この第3ボールネジに第3ナットが螺合している。そして、第3ボールネジが、その軸周りに第3モータ221によって回転されることで、第3ナットが砥石支持装置4とともに前後方向に移動するようになっている。
【0018】
<3.砥石支持装置の概要>
次に、砥石支持装置4について、
図2~
図4も参照しつつ説明する。
図2は砥石支持装置の斜視図、
図3は砥石支持装置を前方から見た図、
図4は
図3のA-A線断面図である。
図2~
図4に示すように、この砥石支持装置4は、第2支持部22に右面に沿って前後方向に移動する扁平状のベース部材41と、このベース部材41の後端部側に配置される第4モータ42と、この第4モータ42から前方側に延びる砥石ホルダ43と、を備えている。そして、砥石ホルダ43には円筒状の砥石5が着脱自在に固定されており、この砥石5が砥石ホルダ43とともに回転するようになっている。また、砥石ホルダ43の前端には、砥石サポート6が着脱自在に取り付けられている。したがって、砥石ホルダ43は、後端が第4モータ42によって支持され、前端が砥石サポート6によって支持されている。すなわち、砥石ホルダ43は、軸方向の両端が支持された状態で、回転駆動するように構成されている。以下、各部材について説明する。
【0019】
<4.砥石ホルダ>
図4に示すように、砥石ホルダ43は、前後方向に延びる円筒状の本体部431と、この本体部431における前方の端部に着脱自在に取り付けられる環状の固定部432と、を備えている。本体部431の先端面の回転中心部分には、後述する砥石サポート6の芯押し軸621の先端が係合される円錐状の凹部433(
図5参照)が形成され、凹部433の仮想頂点は本体部431の回転中心と一致している。一方、本体部431の後端部、つまり第4モータ42側の端部には、径方向外方に延びるフランジ部434が形成されている。そして、本体部431の外周面には、円筒状の砥石5が取り付けられるようになっている。砥石5の軸方向の後端部は、フランジ部434に接し、これによって砥石5が後方に離脱しないようになっている。すなわち、フランジ部434が砥石5の抜け止めとなっている。また、砥石5の軸方向の前端部は、固定部432に接し、前方へ抜けないにようになっている。固定部432は、複数のボルト435によって、本体部431に固定されており、これらボルト435を取り外すことで、固定部432及び砥石5が本体部431から取り外せるようになっている。なお、砥石5は円筒状に形成され、本体部431が砥石5の内部空間に挿入されているため、砥石5を取り外す場合には、本体部431から前方にスライドさせるようになっている。
【0020】
本体部431の回転中心部には、高速回転する砥石5の回転バランスを補正するためのバランサ430が配置されている。
【0021】
また、
図1に示すように、第2支持部22の上面には、クーラント供給部25が設けられており、このクーラント供給部25には、砥石15右面の上方からクーラントを吐出するノズル251が設けられている。クーラントは、後述するように、砥石5とワークWとが噛み合う位置に吐出されるようになっている。
【0022】
<5.砥石サポート及び移動機構の概要>
次に、砥石サポート6及びこれを移動させる移動機構について説明する。なお、以下の説明における前後方向及び左右方向は、特に断りのない限り砥石サポート6が第1位置にあるときの方向を示している。砥石サポート6が第2位置にあるときは、その旨を明示した上で、第2位置にあるときの方向を説明する。
【0023】
砥石サポート6は、砥石ホルダ43に固定される第1位置(
図4)と、砥石ホルダ43から離間した第2位置(
図6)との間を移動機構によって移動するように構成されている。より詳細に説明すると、
図2~
図4に示すように、砥石サポート6は、ブロック状の基部61と、この基部61の第1面611に固定された円筒状の本体部62と、を備えている。基部61の第1面611は、砥石サポート6が第1位置にあるときに右側を向く面である。また、基部61の前端部には、ハンドル63が設けられている。
【0024】
本体部62には、円柱状の芯押し軸621が設けられており、後方に向かって突出し、その先端はテーパー形状としている。そして、砥石サポート6が第1位置にあるとき、この芯押し軸621の先端が上述したように、砥石ホルダ43の凹部433に嵌まるようになっている。また芯押し軸621は、本体部62に対し、軸周りに回転自在に支持されている。したがって、砥石サポート6が第1位置にあるとき、本体部62は静止した状態で、芯押し軸621が、砥石ホルダ43とともに回転するようになっている。これにより砥石5の前方は砥石サポート6により芯ズレなく安定して回転支持される。
【0025】
また、砥石サポート6が第1位置にあるとき、基部61の第1面611とは反対側の第2面612(
図7参照)は、ベース部材41の右側の設置面411に接するようになっている。設置面411は、凹状に湾曲するように形成されており、この設置面411と対応するように、基部61の第2面612は、凸状に湾曲するように形成されている。設置面411と第2面612は、ともに前後方向に延びる軸周りに湾曲するように形成されている。
【0026】
次に、移動機構について、
図5~
図7も参照しつつ説明する。
図5は、
図4の状態から砥石サポートが第2位置へ遷移する途中の断面図であり、
図6は、
図5の状態から砥石サポートがさらに移動し、第2位置にある状態を示す断面図である。また、
図7は、砥石サポートが第2位置にあるときの斜視図である。
【0027】
まず、ベース部材41の構成について説明する。
図7に示すように、ベース部材41には、設置面411の前端から左側へ延びる前端面412が形成されており、この前端面412には、上下方向に離間した2個の取付孔413が形成されている。各取付孔413は、ベース部材41の内部で前後方向に延びている。また、各取付孔413は、前端面412側から延びる小径部4131と、この小径部4131の後端に連結された大径部4132とが連結されることで形成されている。そして、各取付孔413には、棒状のスライド部材71が挿入され、取付孔413内を前後方向にスライドするようになっている。スライド部材71の外径は、小径部4131の内径とほぼ同じである。また、スライド部材71の後端部にはストッパ711が取り付けられており、このストッパ711が、大径部4132に収容されている。ストッパ711は、小径部4131の内径よりも大きく、大径部4132の内径よりも小さく形成されており、このストッパ711により、スライド部材71が取付孔413から前方へ抜けるのを規制している。
【0028】
一方、スライド部材71の前端部には、上下方向に延びる軸部材72が取り付けられている。すなわち、両スライド部材71の前端部同士を連結するように、軸部材72が取り付けられている。そして、軸部材72には、連結部材73が回転自在に取り付けられており、この連結部材73に砥石サポート6の基部61が固定されている。連結部材73は、板状の第1部位731と第2部位732とが鈍角に連結された「くの字」形に形成されており、第1部位731は、軸部材72の軸周りに回転可能に連結されている。一方、第2部位732は、基部61の前端部に連結されている。したがって、基部61は、軸部材72の軸周りに、連結部材73を介して旋回可能となっている。
【0029】
また、連結部材73の上下方向の長さは、両スライド部材71の間の隙間よりも小さく形成されており、連結部材73が、軸部材72周りに回転すると、連結部材73は、
図4及び
図5に示すように、両スライド部材71の間にある位置と、
図6に示すように、両スライド部材71の間から前方に向かって旋回した位置、つまり、上述した第2位置との間を移動するようになっている。
【0030】
より詳細に説明すると、
図4に示すように、砥石サポート6が第1位置にあるとき、連結部材73の第2部位732は、前後方向に延び、両スライド部材71の間に配置されている。そして、第2部位732からは、第1部位731が斜めに延びている。すなわち、第1部位731は、後方にいくにしたがって、右側に延びるように延び、その端部が基部61の前端部に連結されている。このような連結部材73の形状によって、砥石サポート6が第1位置にあるとき、基部61及び本体部62は、スライド部材71よりも右側に配置される。
【0031】
以上の構成により、
図5に示すように、第1位置にある砥石サポート6は、ハンドル63を前方に引っ張ることで、両スライド部材71によって、第1位置から前方に移動するようになっている。そして、両スライド部材71が、前方に移動し、ストッパ711により、前方への移動が規制されたとき、スライド部材71の前端部は、ベース部材41から前方にはみ出した状態になる。そして、この状態から、砥石サポート6を軸部材72周りに回転させると、
図6及び
図7に示すように、砥石サポート6は旋回し、本体部62がベース部材41よりも前方に配置されるようになる。すなわち、基部61が右側に配置され、本体部62が左側に配置されるようになる。このとき、砥石サポート6は、スライド部材71の前方において、スライド部材71よりも右側に配置される。したがって、砥石ホルダ43の前方から、砥石サポート6がずれた位置に配置されるため、砥石ホルダ43の前方には広い作業スペースが形成される。
【0032】
次に、砥石サポート6を第1位置に固定するための構成について説明する。
図3及び
図7に示すように、砥石サポート6の基部61の上側及び下側の面には、それぞれ第1当接面613及び第2当接面614が形成されている。第1当接面613及び第2当接面614は、前後方向に離れた位置に、2個ずつ形成されている。そして、砥石サポート6が第1位置にあるとき、基部61の第1当接面613及び第2当接面614が、それぞれ、ベース部材41に設けられた第1当接部材81及び第2当接部材82に接するようになっている。第1当接部材81及び第2当接部材82は、前後方向に延びるように形成され、それぞれ、ベース部材41の設置面411の上端部及び下端部に設けられている。
【0033】
より詳細に説明すると、
図3に示すように、基部61の第1当接面613は、下方に行くにしたがって前方に延びるように斜めに形成されている。一方、第2当接面614は、上方に行くにしたがって前方に延びるように斜めに形成されている。そして、第1当接部材81は、第1当接面613と接する第1対応面811を有している。同様に、第2当接部材82は、第2当接面614と接するように第2対応面821を有している。
【0034】
また、第1当接部材81は、ベース部材41に固定されているが、
図3及び
図7に示すように、第2当接部材82は、ベース部材41から取り外しできるように、ボルト83によって、ベース部材41に取り付けられている。第1当接部材81の第1対応面811は、第1当接面613に対して密着しているが、移動できないほどに押圧していない。したがって、第1当接面613は、第1対応面811に対して前後方向にスライド可能となっている。一方、第2当接部材82は、ボルト83によってベース部材41に固定されるため、第2当接部材82の第2対応面821を、第2当接面614に対して押圧できるようになっている。すなわち、ボルト83を締め付けることで、第2対応面821が第2当接面614を押圧するため、これによって、砥石サポート6が第1位置に固定される。一方、ボルト83を緩めると、第2当接面614は、第2対応面821に対して前後方向にスライド可能となるため、砥石サポート6を第1位置から前方へ移動させることができる。
【0035】
<6.ワーク支持ユニット>
次に、ワーク支持ユニット3について、
図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、ワーク支持ユニット3は、基台1の右側に配置されており、円柱状の支持台31と、この支持台31の右側に配置されたワークスピンドル32と、ワークスピンドル32の上方に配置されるテールストック33と、を備えている。
【0036】
ワークスピンドル32は、支持台31の下部において、上下方向に延びるように配置されている。そして、ワークスピンドル32は、上下方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている。ワークスピンドル32の下端には、モータ(図示省略)が連結されており、このモータによってワークスピンドル32が軸周りに回転駆動する。また、ワークスピンドル32の上端部には、ワークWである歯車が固定されるようになっている。
【0037】
ワークWは、リングローダ34及び把持アーム341によってワークスピンドル32とワーク受け台35との間を移動可能になっている。リングローダ34は、支持台31の外周面を、旋回モータ345によって回転するようにリング状に形成されるとともに、その外周面には、180度離れた位置に把持アーム341がそれぞれ設けられている。また、ワーク受け台35は、支持台31を挟んでワークスピンドル32とは反対側、つまり、支持台31の右側に配置されている。
【0038】
この構成により、リングローダ34が支持台31の外周面を回転するときに、一方の把持アーム341が、ワーク受け台35にある加工前のワークWを掴み、このワークWをワークスピンドル32に搬送する。これと同時に、他方の把持アーム341が加工後のワークWを掴んでワークスピンドル32から取り外し、ワーク受け台35に搬送するようになっている。
【0039】
テールストック33は、支持台31の外周面に沿って上下方向に移動可能になっており、ワークスピンドル32に取り付けられたワークWを上方から押圧するようになっている。また、テールストック33において、ワークWを押圧する押圧部(図示省略)は、上下方向の軸周りに回転可能となっている。これにより、ワークWの加工中にワークWが回転すると、テールストック33の押圧部もワークスピンドル32とともに回転する。これにより、加工中にワークWが芯ブレするのが防止される。
【0040】
<7.歯車仕上げ加工装置の動作>
次に、上記のように構成された歯車仕上げ加工装置の動作について説明する。まず、ワーク支持ユニット3のリングローダ34を駆動し、加工前のワークWをワークスピンドル32に取り付ける。次に、テールストック33を下方に移動し、押圧部によってワークWを押圧し、この状態で、ワークスピンドル32を回転させる。続いて、砥石支持ユニット2の第2支持部22を上下方向に移動するとともに、砥石支持装置4を前後方向に移動し、砥石5をワークWの正面に配置する。これに続いて、第4モータ42を駆動し、砥石5をワークWと同期回転させた状態で、第1支持部21を右側に移動し、ワーク支持ユニット3に近接させる。そして、ワークWと砥石5を噛み合わせ、両者を駆動することで、砥石によってワークを研削加工する。このとき、ワークWと砥石5とが噛み合っている箇所に、クーラント供給部25からクーラントを吐出する。その後、加工が終了すると、砥石支持ユニット2を移動し、砥石5とワークWとを離間させる。
【0041】
次に、砥石支持装置4における砥石5の交換について説明する。まず、第2当接部材82のボルト83を緩め、第2当接面614に対する第2当接部材82の押圧を解除する。次に、ハンドル63を前方に引っ張ることで、砥石サポート6を前方に移動させる。これに続いて、ストッパ711により、スライド部材71の前方への移動が規制されると、砥石サポート6を軸部材72周りに旋回させる。こうして、砥石サポート6が第2位置へ移動すると、砥石ホルダ43の前方に広い作業スペースが形成される。この状態で、砥石ホルダ43において、固定部432を本体部431から取り外し、砥石5を前方にスライドさせ、本体部431から取り外す。このとき、砥石ホルダ43の前方には作業スペースが形成されているため、砥石5を、本体部431から離脱する位置まで、この作業スペースに向かってスライドさせる。こうして、砥石5が取り外されると、新たな砥石5を本体部431に取り付ける。その後、砥石サポート6を第2位置から旋回させた後、スライド部材71によって後方に移動させ、芯押し軸621を砥石ホルダ43の凹部433に嵌め込む。こうして、砥石5の交換作業が完了する。
【0042】
<8.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、移動機構により、砥石サポート6を砥石ホルダ43から軸方向に前方へ離間させた後、上下方向に延びる軸部材72周りに旋回させることで、第2位置に移動するように構成されている。したがって、砥石サポート6を砥石ホルダ43から軸方向に離間させるだけでなく、砥石サポート6を旋回させることで、砥石サポート6を砥石ホルダ43よりも左側へ移動させることができる。そのため、砥石サポート6の前方には広い作業スペースが形成され、この作業スペースに向かって、砥石ホルダ43から砥石5を移動させるようにして、砥石5を取り外すことができる。したがって、砥石5の取り外し作業を容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
【0043】
<9.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0044】
例えば、上記実施形態では、移動機構が、砥石サポート6をスライド部材71によって前方に移動した後、上下方向に延びる軸部材72周りに旋回させているが、旋回の方向は特には限定されない。すなわち、砥石ホルダ43から前方(砥石5の軸方向)に砥石サポート6が離間した後には、砥石サポート6が砥石ホルダ43の軸線の延長線上から離間した位置に旋回できるように構成されていればよく、例えば、下側、上側、または左側に砥石サポート6が旋回できるように、移動機構を構成することもできる。
【0045】
上記実施形態では、スライド部材71によって、砥石サポート6を砥石5の軸方向に移動させているが、これに限定されず、レールなどの各種の手段で軸方向に移動させてもよい。また、旋回の方法も特には限定されず、公知の手段を採用することができる。
【0046】
上記実施形態では、本発明に係る加工装置を歯車仕上げ加工装置に適用したが、これに限定されず、砥石5の代わりに回転可能な各種の工具によりワークを加工する加工装置に適用することができる。したがって、例えば、砥石の代わりにホブを取り付けた、ホブ盤に本発明の加工装置を適用することができる。
【0047】
また、本発明の支持ユニットは、工具を支持する場合のみならず、種々の回転対象部材を交換可能に支持する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
2 砥石支持ユニット(工具支持ユニット)
3 ワーク支持ユニット
4 支持装置
41 ベース部材
42 第4モータ(駆動部)
43 砥石ホルダ(固定部材)
5 砥石(回転対象部材)
6 砥石サポート(支持部)
71 スライド部材(移動機構)
72 軸部材(移動機構)
73 連結部材(移動機構)
81 第1当接部材(保持部材)
82 第2当接部材(保持部材)