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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/00 20060101AFI20230706BHJP
   B23F 23/04 20060101ALI20230706BHJP
   B23F 5/04 20060101ALI20230706BHJP
   B24B 53/075 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B23F23/00
B23F23/04
B23F5/04
B24B53/075
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019125420
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021010960
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】金野 誠司
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃広
(72)【発明者】
【氏名】瀧 裕貴
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512665(JP,A)
【文献】特開2009-214291(JP,A)
【文献】特開2016-137566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12;
B24B 19/02,53/07-53/075,53/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転可能に支持する主軸と、
前記主軸に対して、相対的に近接離間するように構成され、前記ワークを加工する第1工具を支持する工具支持ユニットと、
支持柱と、
前記支持柱に支持され、当該支持柱の軸周りに旋回可能な心押し具及び少なくとも1つの第2工具と、
を備え、
前記心押し具及び前記第2工具は、前記支持柱の周方向においてずれた位置に配置され、
前記心押し具及び前記少なくとも1つの第2工具のうちの1つが、前記旋回により、前記支持柱の周囲に設けられた加工位置に選択的に配置されるように構成され、
前記心押し具が前記加工位置に配置されたとき、当該心押し具は、前記主軸に支持された前記ワークに当接し、前記主軸とともに回転するように構成され、
前記第2工具の1つが前記加工位置に配置されたとき、当該第2工具は、前記工具支持ユニットの前記第1工具を加工するように構成され、
前記支持柱に支持されると共に、当該支持柱の周囲を前記軸周りに旋回可能な複数のワーク把持具をさらに備えて設けられ、
前記複数のワーク把持具は、前記心押し具及び前記第2工具に対して、前記支持柱の軸方向にずれた位置に配置され、
前記複数のワーク把持具のうちの1つが、前記旋回により、前記支持柱の周囲に設けられた搬入・搬出位置ならびに前記加工位置に選択的に配置されるように構成され、前記ワーク把持具は、前記ワークを把持して前記搬入・搬出位置と前記加工位置との間を移動するように構成されている、
加工装置。
【請求項2】
前記支持柱の近傍に、前記搬入・搬出位置に対応して前記ワークが載置される、載置部をさらに備え、
前記ワーク把持具は、前記主軸と前記載置部との間で前記ワークを移送するように構成されている、請求項に記載の加工装置。
【請求項3】
前記心押し具と少なくとも1つの前記第2工具とが、前記支持柱の周方向において互いに略180°離れた位置に配置されている、請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記心押し具を支持する第1設置台と、少なくとも1つの前記第2工具を支持する第2設置台とが、停止した前記ワーク把持具のそれぞれに対峙するように位置決め固定されると共に、各々の前記ワーク把持具を同時に開もしくは閉操作するアクチュエータをそれぞれ備えさせてある、請求項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記ワークは、歯車であり、
前記第1工具は、前記歯車を加工する砥石であり、
前記第2工具は、前記砥石をドレッシングするドレスディスクである、請求項1からのいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、砥石によって歯車状のワークを研削仕上げし、さらに該砥石を研削再生することができる加工装置が開示されている。この加工装置では、カウンタコラムの周囲に、ワークに対するチャック装置とドレス装置とを支持したチャック旋回リングを設け、この旋回リングによってワーク及びドレス装置を加工位置に移送するように構成されている。そして、加工位置にワークを配置した場合には、このワークに対して砥石が近接制御され、ワークが研削仕上げされる。一方、加工位置にドレス装置が配置されたときには、このドレス装置に対して砥石が近接制御され、ドレス装置によって砥石のドレッシングして研削再生が行われるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4563017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この加工装置のカウンターコラムには、心押し具が上下動可能に取り付けられており、加工位置で、主軸上にあるワークをこの心押し具で押圧して回転時に芯振れが起きないように構成されている。しかしながら、心押し具は、砥石とカウンターコラムとの間に配置されるため、作業スペースが狭く、メンテナンスや、段取り替え時にワークに対応するアーバーを交換する等を行うことが容易ではなかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ワークの加工を行う第1加工具(例えば、砥石)と、この第1加工具の加工を行うことができる第2加工具(例えば、ドレス装置)を備えた加工装置において、ワーク非加工時には、心押し具に対するメンテナンス等の作業を容易に行える加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加工装置は、ワークを回転可能に支持する主軸と、前記主軸に対して、相対的に近接離間するように構成され、前記ワークを加工する第1工具を支持する工具支持ユニットと、支持柱と、前記支持柱に支持され、当該支持柱の軸周りに旋回可能な心押し具及び少なくとも1つの第2工具と、を備え、前記心押し具及び前記第2工具は、前記支持柱の周方向においてずれた位置に配置され、前記心押し具及び前記少なくとも1つの第2工具のうちの1つが、前記旋回により、前記支持柱の周囲に設けられた加工位置に選択的に配置されるように構成され、前記心押し具が前記加工位置に配置されたとき、当該心押し具は、前記主軸に支持された前記ワークに当接し、前記主軸とともに回転するように構成され、前記第2工具の1つが前記加工位置に配置されたとき、当該第2工具は、前記工具支持ユニットの前記第1工具を加工するように構成されている。
【0007】
上記加工装置において、前記支持柱に支持されると共に、当該支持柱の周囲を前記軸周りに旋回可能な複数のワーク把持具をさらに備えて設けられ、前記複数のワーク把持具は、前記心押し具及び前記第2工具に対して、前記支柱の軸方向にずれた位置に配置され、前記複数のワーク把持具のうちの1つが、前記旋回により、前記支持柱の周囲に設けられた搬入・搬出位置ならびに前記加工位置に選択的に配置されるように構成され、前記ワーク把持具は、前記ワークを把持して前記搬入・搬出位置と加工位置との間をするように構成することができる。
【0008】
上記加工装置においては、前記搬入・搬出位置に対応して前記ワークが載置される、載置部をさらに備え、前記ワーク把持具は、前記主軸と前記載置部との間で前記ワークを移送するように構成することができる。
【0009】
上記加工装置において、前記心押し具と少なくとも1つの前記第2工具とは、前記支持柱の周方向において互いに略180°離れた位置に配置することができる。
【0010】
上記加工装置においては、前記心押し具を支持する第1設置台と、少なくとも1つの前記第2工具を支持する第2設置台とが、停止した前記ワーク把持具のそれぞれに対峙するように位置決め固定されると共に、各々のワーク把持具を同時に開もしくは閉操作するアクチュエータをそれぞれ備えることができる。
【0011】
上記加工装置においては、前記ワークを歯車とし、前記第1工具を前記歯車を加工する砥石とし、前記第2工具を前記砥石をドレッシングするドレスディスクとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークの加工を行う第1加工具(例えば、砥石)と、この第1加工具の加工を行うことができる第2加工具(例えば、ドレス装置)を備えた加工装置において、心押し具および第2加工具に対するメンテナンスや段取り替え等の作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明に係る加工装置の一実施形態である歯車仕上げ加工装置の斜視図である。
図2図1の歯車加工装置の支持柱の縦断面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】下部旋回機構を左側から見た正面図である。
図5A】上部位置においてチャック爪が閉じた状態のチャック装置の正面図である。
図5B】上部位置においてチャック爪が開いた状態のチャック装置の正面図である。
図6】下部旋回機構の横断面図である。
図7】チャック装置の縦断面図である。
図8】下部旋回機構のローラ係止板の動作を説明する斜視図である。
図9A】ワークを主軸の保持部に載置させたときのチャック装置の正面図である。
図9B】ワークを主軸にセットした後にチャック爪が開いた状態のチャック装置の正面図である。
図10】ワークの加工を行うときの上部旋回機構の横断面図である。
図11】上部旋回機構の縦断面図である。
図12】ドレッシングをおこなうときの上部旋回機構の横断面図である。
図13】上部旋回機構の他の例の横断面図である。
図14】下部旋回機構の他の例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る加工装置を歯車仕上げ加工装置に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る歯車仕上げ加工装置の斜視図である。
【0015】
<1.歯車仕上げ加工装置の概要>
図1に示すように、この歯車仕上げ加工装置は、被加工歯車であるワークWを工具である砥石20と同期回転させながら研削加工するものであり、基台1と、この基台1上に配置され、砥石(第1加工具)20を支持する砥石支持ユニット(工具支持ユニット)2と、ワーク処理ユニット3を備えている。ワーク処理ユニット3は、主軸41と、支持柱30とを備えており、支持柱30において、その下方には歯車形のワークWを支持するチャック装置(ワーク把持具)6が、上方には、心押し具32及びドレス装置(第2加工具)39が一体で、それぞれ旋回自在に支持されている。砥石20の外周面には、図示を省略するが、ネジ状溝が形成されており、後述するように、砥石20とワークWが噛み合いながら、同期駆動させることで、ワークWの歯面が研削されるようになっている。また、例えば、ワークWを所定個数、連続加工した後で、砥石20のネジ状溝の切れ味を再生させるためにドレス装置39によって砥石20をドレッシング(ドレス加工)できるようになっている。以下、これらについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1に示す方向にしたがって、説明を行う。但し、本発明のこの方向に限定されない。また、図2以降は説明を容易にするために各装置を覆う防護カバーは除外して図示している。
【0016】
<2.ワーク処理ユニットの概要>
図2はワーク処理ユニットの断面図である。同図に示すように、このワーク処理ユニットは、支持柱30と、支持柱30の近傍(図1で左側)に配置された主軸41と、支持柱30を挟んで主軸41とは反対側には位置された載置台42と、を備えている。これら支持柱30、主軸41、及び載置台42は、いずれも基台1上に配置されている。また、支持柱30は、円柱形で先細り状に形成されており、同心上に配置された、3つの第1柱部70、第2柱部80、第3柱部90を備えている。より詳細には、基台1上に、第2柱部80が設置され、その上端に、第1柱部70が連結され、さらにその上端に、第3柱部90を相互連結している。そして、第1柱部70に被嵌された第1旋回筒7には心押し具32及びドレス装置39を旋回させる上部旋回機構50が設けられており、第2柱部80に被嵌された第2旋回筒8には、チャック装置6を旋回させる下部旋回機構60が設けられている。第3柱部90の上端には頂板90aが固定され、後述する第2旋回モータ741を設置している。
【0017】
<2-1.主軸>
主軸41は、ワークWの加工位置を形成するものであって、支持柱30と、砥石支持ユニット2との間に配置されており、加工対象となるワークWを着脱自在に支持するように構成されている。より詳細に説明すると、主軸41は、基台1上に配置される支持部411と、この支持部411に回転自在に支持される本体部412と、本体部412の上端に設けられ、載置されたワークWを着脱自在に保持する保持部413と、を備えている。本体部412は、支持部411から上方に延び、上下方向に延びる軸線周りに回転するように構成されている。また、本体部412は、支持部411に収容されたモータ(図示省略)によって、上記軸線周りに回転駆動するようになっている。そして、保持部413には、ワークWが取り付けられ、本体部412とともに回転するようになっている。保持部413は、ワークを着脱自在に固定できればその構成は特には限定されないが、例えば、公知のコレットチャックなどで構成することができる。なお、ワークWは、本体部412の軸線とワークWの軸線とが一致するように、保持部413に取り付けられる。
【0018】
図3は、図2のA-A線断面図である。図3に示すように、支持柱30の外周面には、ワークWの歯先の位置を割り出すためのセンサ装置9が設けられている。このセンサ装置9は、主軸41に取り付けられたワークWの歯の変位位置を検出可能なセンサ91を備えており、このセンサ91と主軸41の回転センサ(図示せず)との検出結果を演算させることで割出時間の短縮を図り、加工に際し砥石20とワークWを迅速に噛み合わせることができるようになっている。
【0019】
<2-2.載置台>
載置台42は、ワークWの搬入・搬出位置を形成するものであり、支持柱30を挟んで、主軸41と反対側に配置されている。すなわち、載置台42は、基台1上で、砥石支持ユニット2からは最も遠くに配置されている。この歯車仕上げ加工装置は、切粉やクーラントが装置外に出るのを防ぐ保護カバー(図示せず)で覆われており、この載置台42の近傍位置に、作業者が載置台42にアクセス可能とする窓(図示せず)が保護カバー(図示せず)に設けられている。載置台42は、基台1上で上下動可能に支持された本体部421と、この本体部421の上端に取り付けられたワークアダプタ422とを備えている。本体部421は、エアシリンダ等の駆動手段(図示省略)によって、基台1上でチャック装置6に対して接近・離間可能に構成されている。ワークアダプタ422は、ワークWの形態に合わせてワークWを保持するための台であり、前述した窓(図示せず)を通して加工前のワークWが、例えば作業者により載置され、あるいは、チャック装置6により加工後のワークWが載置されたとき、作業者により取り除かれ新たな未加工ワークがそこに載置される。
【0020】
<2-3.下部旋回機構>
次に、下部旋回機構60について説明する。
図4は、下部旋回機構の側面図である。下部旋回機構60は、主軸41と載置台42との間でワークWを移送するチャック装置6を旋回させるための機構である。より詳細に説明すると、図3及び図4に示すように、支持柱30の下部の外周面には、第1リングギア601を固定した第2旋回筒8が第2柱部80に旋回自在に支持されている。第1リングギア601は外歯車状に形成されており、その外周面の歯には、駆動ギア602が噛み合っている。そして、この駆動ギア602は、基台1上に設けられた第1旋回モータ603により回転するようになっており、駆動ギア602の回転によって第1リングギア601が回転するようになっている。
【0021】
また、第1リングギア601の上面には、旋回リング604が取り付けられており、旋回リング604は第1リングギア601とともに、第2柱部80の周囲を、一方向に180°づつ旋回するようになっている。旋回リング604の上面には、一対のチャック装置6が配置されている。これらチャック装置6は、旋回リング604上で180°離れた位置に配置されており、それぞれワークWを把持するように構成されている。各チャック装置6のチャック爪661、662は、旋回リング604の旋回により主軸41の上方及び載置台42の上方にそれぞれ配置されるように構成されている。ここでは、主軸41と対応する位置を第1位置(加工位置)、載置台42と対応する位置を第2位置と称することとする。続いて、チャック装置6について説明するが、両チャック装置6は同一構成であるため、以下では、一方のみ説明する。
【0022】
<2-3-1.チャック装置>
次に、チャック装置について説明する。図5A及び図5Bは、チャック装置の断面図、図6は、下部旋回機構の横断面図である。図5Aに示すように、チャック装置6は、上下方向に延びる一対の第1貫通孔611が形成された本体部61と、この本体部61の第1貫通孔611に挿通され、旋回リング604の上面から上方に延びる一対の棒状のガイド部材62と、一対のガイド部材62の上端部同士を連結する連結部材63とを、備えている。この構成により、本体部61は、旋回リング604上で、ガイド部材62に沿って上下動可能となっている。また、本体部61には、水平方向に延び、上下方向に並ぶ、一対の第2貫通孔612が形成されており、各第2貫通孔612にはラックバー641,642がそれぞれ水平移動可能に挿通されている。ここでは、上方に配置されているラックバーを第1ラックバー641、下方に配置されているラックバーを第2ラックバー642と称することとする。
【0023】
図5A及び図6に示すように、第1ラックバー641において本体部61から突出する左端部には、ブロック状の第1基部651が固定されており、この第1基部651には、支持柱30の径方向外方に延びる第1チャック爪661が取り付けられている。また、第1基部651の下端部には、水平方向に延びる貫通孔6511が形成されており、この貫通孔6511に、本体部61から突出する第2ラックバー642の左端部が挿通されている。同様に、第2ラックバー642において本体部61から突出する右端部には、ブロック状の第2基部652が固定されており、この第2基部652には、支持柱30の径方向外方に延びる第2チャック爪662が取り付けられている。また、第2基部652の上端部には、水平方向に延びる貫通孔6521が形成されており、この貫通孔6521に、本体部61から突出する第1ラックバー641の右端部が挿通されている。この構成により、各ラックバー641,642が、水平方向に互いに反対方向に移動することで、両チャック爪661,662が互いに近接したり離間するようになっている。したがって、両チャック爪661,662が近接することで、ワークWを把持し、この状態から両チャック爪661,662が離間することで、ワークWを離すように構成されている。
【0024】
次に、両ラックバー641,642の駆動機構について説明する。本体部61には、第1貫通孔611の間に上下方向に延びる第3貫通孔613が形成されており、この第3貫通孔613にはラックギア67が上下動可能に挿通されている。また、本体部61の内部には、ラックギア67に噛み合うピニオンギア68が回転可能に収容されている。ピニオンギア68は、上下方向において両ラックバー641,642の間に配置され、且つ、両ラックバー641,642に噛み合っている。したがって、ラックギア67が上下動することで、ピニオンギア68が回転し、その結果、両ラックバー641,642が互いに反対方向に移動するようになっている。
【0025】
第3貫通孔613の下端部は閉じられており、この下端部にはバネ671が配置されている。そして、このバネ671によってラックギア67は上方に付勢されている。また、ラックギア67の上端部には棒状の突出部672が取り付けられており、第3貫通孔613から上方へ突出している。この突出部672は、連結部材63に形成された貫通孔631に挿通されている。さらに、第3貫通孔631の上端部には、ラックギア67と突出部672との段部に係合する抜け止め614が設けられており、これによって、ラックギア67は抜け止め614と係合する位置まで上方に移動可能となっている。すなわち、ラックギア67は、バネ671によって常時上方に押し上げられているため、抜け止め614と係合する位置が初期位置となっている。図5Aは、初期位置を示しており、このときにはチッャク爪661,662は互いに近接してワークWを常時把持可能な状態にある。このとき、両チャック爪661,662は、バネ671の付勢力によって互いに近接しているため、ワークWを確実に把持することができる。
【0026】
また、第1位置及び第2位置の上方には、チャック爪開閉シリンダ(アクチュエータ)95がそれぞれチャック装置6と対峙するように配置されている。より詳細に説明すると、図2に示すように、チャック爪開閉シリンダ95は、後述する上部旋回機構50の第1、第2設置台71、72に取り付けられており、第1位置及び第2位置でチャック装置6が停止したときにチャック爪開閉シリンダ95のピストン951が下方に向かって進出および退避するように構成されている。そして、図5Bに示すように、チャック爪開閉シリンダ95のピストン951が下方に移動し、突出部672を押圧すると、ラックギア67はバネ671に抗して下方に押し込まれる。これによって、ピニオンギア68が回転し、両ラックバー641,642が互いに反対方向、つまり両チャック爪661,662が互いに離間する方向に移動する。これにより、ワークWがチャック爪661,662から離れるようになっている。
【0027】
以上のように構成された各チャック装置6は、第1位置及び第2位置において、チャック爪開閉シリンダ95によって両チャック爪661,662が同時に開閉する。すなわち、第1位置及び第2位置では、ワークWをチャック装置6が掴んだり離すことができ、第1位置と第2位置との間の移送中はワークWを弾性力でチャック爪661,662によって確実に把持できるようになっている。また、チャック爪開閉シリンダ95をチャック装置6から分離させ固定側の設置台71、72に配置したことでパイピング等にはロータリジョイントを介在させることなく簡単な構成で第2旋回筒8を一方向に繰り返し旋回させることが可能となっている。一方向旋回する第2旋回筒8は、チャック装置6を3ステーション化(後述)する際にも都合がよい。
【0028】
<2-3-2.チャック装置の昇降機構>
次に、チャック装置の昇降機構について、図7図9も参照しつつ説明する。図2に示すように、チャック装置6は、第2位置から第1位置に旋回された後、下方に移動するように構成されている。これによって、チャック装置6とともにワークWが下降し、ワークWを主軸41の上端の保持部413に取り付け可能となっている。以下、詳細に説明する。
【0029】
まず、図7に示すように、チャック装置6の本体部61において、支持柱30を向く面には、ローラ69が枢支されている。ローラ69は、支持柱30の径方向に延びる軸周りに自転可能となっている。また、図4に示すように、支持柱30の外周面には、一対の第1ガイドレール33が周方向に沿って設けられている。これら一対の第1ガイドレール33は、ローラ69の直径分相当の、軸方向に隙間を開けて平行に設けられており、これら第1ガイドレール33の間にローラ69が配置されている。これにより、チャック装置6が旋回リング604によって支持柱30の周囲を旋回するとき、チャック装置6の上下方向をガイドするようになっている。
【0030】
また、図2及び図4に示すように、支持柱30の第2柱部80外周面において、上記第1位置と対応する箇所には、凹部34が形成されている。そして、上記一対の第1ガイドレール33は、凹部34が形成されている箇所には設けられていない。すなわち、各ガイドレール33は、凹部34に対応する切欠き部を有するように平面視においてC字状に形成され、第2柱部80の外周面において凹部34が形成されている箇所以外の箇所に設けられている。
【0031】
第2柱部80の凹部34には、ローラ係止板35が上下動可能に設けられている。図6に示すように、このローラ係止板35において、支持柱30の軸芯側を向く面には、ガイドブロック351が設置されると共に、凹部34の対向面にレール301が上下方向に敷設されており、レール301にガイドブロック351を嵌め込んでいる。したがって、ローラ係止板35は、凹部34内でレール301に沿って上下動可能に支持されている。さらに、図8に示すように、凹部34には、昇降用のシリンダ302が設けられており、このシリンダ302によって、ローラ係止板35は、凹部34内で上下動可能となっている。
【0032】
一方、ローラ係止板35の外面は、第1ガイドレール33の切欠き部に位置し、この第1ガイドレール33の外周面に沿って連続するように円弧状に形成され、さらに、この外面には、一対の第2ガイドレール352が平行に延びるように形成されている。これら第2ガイドレール352は、ローラ69の直径分相当の、軸方向に隙間を開けて平行に設けられており、ローラ係止板35が上部位置にあるときには、図4に示すように、各第1ガイドレール33と連続するように配置される。そのため、チャック装置6が旋回リング604の回転により、第2位置から第1位置へ移動するとき、ローラ69は、第1ガイドレール33によってガイドされた後、第2ガイドレール352にガイドされ、チャック装置6が第1位置に配置される。
【0033】
そして、チャック装置6が第1位置に配置された後、シリンダ302が駆動すると、ローラ係止板35が下降する。このとき、ローラ係止板35の第2ガイドレール352の間にローラ69が配置されているため、ローラ係止板35は、ローラ69を下方へ押し遣り、これによってチャック装置6が下方に移動する。なお、図9Aは、チャック装置6が第1位置に移動した後、ワークを把持したまま下方に移動して主軸41の保持部413にワークをセットしたときの状態を示す正面図、図9Bは、チャック装置6が下部位置においてワークを主軸41にセットした後、該ワークを開放した状態を示す正面図である。
【0034】
<2-4.上部旋回機構>
次に、上部旋回機構50について、図10も参照しつつ説明する。図2に示すように、支持柱30の第1柱部70の外周面に第1旋回筒7を旋回可能に取り付けている。そして、この第1旋回筒7を含め、心押し具32及びドレス装置39を旋回するための上部旋回機構50が構成されている。第1旋回筒7は、上筒部7aと下筒部7bとを連接して成り、図10に示すように、下筒部7bの外周面には、第1設置台71と第2設置台72が取り付けられており、第1旋回筒7とともに支持柱30の周囲を旋回可能となっている。これら設置台71,72は、旋回筒7の外周面において、周方向に180°離れた位置、すなわち、第1位置・第2位置にあるチャック装置6の各々と対峙する位置に配置されるものであり、その各々に支持される心押し具32とドレス装置39は互いに大きさや配置において制限し合うことはなく設計の自由度がアップしている。また、心押し具32とドレス装置39の各々は主軸41の保持部413に対して干渉しない程度に低く支持させることができ、加工装置全体の高さを低くすることができる。
【0035】
第1設置台71には、心押し具32が上下動可能に支持されている。心押し具32は、砥石20をドレッシングするとき以外は、主軸41の上方に配置されている。その下方に、ワークWごとに対応する形状のアーバー部32aを着脱自在で空転自在に支持して備え、加工中、ワークWの回転中心部上面に当接させることで、ワークWの回転ブレを防止するように機能する。そして、第1設置台71の上部には、昇降用アクチュエータ712としての油圧シリンダ712a(図1)あるいはサーボモータ712b(図2)が取り付けられる。図2に示すサーボモータ712bである場合は、その回転軸に、下方へ延びるボールネジ713が連結されている。また、ボールネジ713にはナット714が螺合しており、このナット714に心押し具32が固定されている。したがって、昇降用モータ712が駆動すると、ボールネジ713が回転し、これによって心押し具32が上下動するようになっている。前記油圧シリンダ712aに比べサーボモータ712bは数値制御できるため心押し具32の上昇待機位置をワークWの軸方向寸法に応じて任意に設定できアーバー部32aがワークWに当接するまでのストロークを最短化でき加工に入るまでの時間を短縮させることが可能となっている。また、モータ712のトルク制御によりワークWの種類毎に、個々に最適な押付(クランプ)力を自動設定することもできる。
【0036】
また、第1設置台71において、心押し具32よりも第1柱部70側でチャック装置6と対峙する位置には、チャック爪開閉シリンダ95が取り付けられている。このチャック爪開閉シリンダ95は、上述したとおり、第1位置にあるチャック装置6の突出部672を押圧し、チャック爪661,662を開操作するためのものである。
【0037】
次に、第2設置台72について説明する。図10に示すように、第2設置台72には、ドレス装置39が支持されている。このドレス装置39は、後述するように、砥石20に対してドレッシングを行うためのものであり、回転可能なドレスディスク391が設けられている。図10に示すドレス装置39は、コンポジット方式であるが、その他種々のタイプの公知のドレス装置を採用することができる。例えば、ドレス装置としてフェスラー方式を採用することもできる。
【0038】
また、第2設置台72において、ドレス装置39よりも第1柱部70側でチャック装置6と対峙する位置には、チャック爪開閉シリンダ95が取り付けられている。このチャック爪開閉シリンダ95は、上述したとおり、第2位置にあるチャック装置6の突出部672を押圧し、チャック爪661,662を開操作するためのものである。
【0039】
<2-5.第1旋回筒の旋回機構>
次に、第1旋回筒7を旋回させるための機構について、図11も参照しつつ説明する。旋回筒7の上筒部7aには、内歯車状の第2リングギア73が固定されており、この第2リングギア73にギア74が噛み合っている。そして、このギア74は、第1柱部70の上端部に固定された第2旋回モータ741のモータ軸に固定されている。これにより、第2旋回モータ741を正逆駆動すると、第1旋回筒7が第1柱部70、第3柱部90の周囲を180°両方向に交互に旋回するようになっている。これにより心押し具32もしくはドレス装置39を選択的に主軸41と載置台42のそれぞれ上方に配置させることができる。心押し具32もしくはドレス装置39をメンテナンスや段取り替え等をする際は、載置台42の上方に配置するように第1旋回筒7を旋回させる。前述したように載置台42の近傍には作業者がアクセスするための窓(図示せず)が備えられているので、この窓を通じて心押し具32もしくはドレス装置39へのアクセスが容易になり作業性が大幅に向上する。
【0040】
また、先端の第3柱部90は第1柱部70よりも小径に構成され、その外周面と上筒部7aの内周面との間には、円筒状の第1ピストン75が、上筒部7aに対して相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に取り付けられている。第1柱部70の上端面周囲と、この第1ピストン75の下端部とが向き合う位置には、ハースカップリング76が設けられており、これによって第1旋回筒7を所定位置で固定することができる。より詳細に説明すると、ハースカップリング76は、第1ピストン75の下端部に設けられた環状の係止歯761と、第1柱部70の上端面周囲において係止歯761と向き合うように配置された環状の固定歯762と、第1旋回筒7の内壁面において固定歯762の外周面に接するように配置された可動歯763と、を備えている。係止歯761の歯は、下向きに延び、固定歯762と可動歯763の歯は上向きに延びている。これにより、第1ピストン75が下降すると、係止歯761が固定歯762と可動歯763に噛み合い、その結果、上筒部7a(第1旋回筒7)が第3柱部90に固定される。
【0041】
第1ピストン75の外周と可動歯763との間には第1バネ751が配置されており、これによって第1ピストン75は上方に付勢されている。したがって、第1バネ751によって第1ピストン75が付勢されているときには、係止歯761と、固定歯762及び可動歯763は噛み合っておらず、上筒部7aは第3柱部90に対して旋回可能となっている。また、後述するように、第1ピストン75が第1バネ751に抗して押し下げられると、係止歯761が固定歯762及び可動歯763に噛合うようになっている。
【0042】
また、第1ピストン75の上部と第3柱部90の上部との間には、上下動可能な円筒状の第2ピストン77が取り付けられている。第2ピストン77の内部には、第3柱部90から上方に付勢される第2バネ775が設けられており、常時上方に付勢されている。また、後述するように、第2ピストン77が第2バネ775に抗して押し下げられると、第1ピストン75を押圧するようになっている。
【0043】
また、上筒部7aの外表面には径方向に第1油路757が形成され、第1ピストン75の外周面と上筒部7aの内壁面との間に形成された第1油室758まで延びている。そして、この第1油路757は、上筒部7aの外表面に連結された第1管継手759を介して作動油供給回路(図示省略)に接続されている。これにより、第1油室758へ作動油が供給されると、第1ピストン75が押し下げられ、上筒部7aが第3柱部90に固定される。
【0044】
同様に、第3柱部90に設置した頂板90aと第2ピストン77との間には、第2油室771が形成されており、この第2油室771には、頂板90aの上面に繋がる第2油路772が接続されている。この第2油路772は、頂板90aの上面に連結された第2管継手773を介して作動油供給回路(図示省略)に接続されている。これにより、第2油室771へ作動油が供給されると第2ピストン77が押し下げられ、第1ピストン75を押圧するようになっている。旋回モータ741の作動により心押し具32もしはドレス装置39が第1位置に到達したことを図外のポジションセンサーが感知すると、モータ741の作動を停止させると同時に第1油室758と第2油室771への作動油供給が行なわれ、ワークを加工する時の心押し具32あるいは、砥石20をドレッシングするときのドレス装置39を、第1旋回筒7を介して高精度で確実に保持している。上筒部7aの内側に配置されるハースカップリング76は小径のもので済ませることができ、コスト面や旋回機構の性能面での影響は少ない。
【0045】
<3.砥石支持ユニットの概要>
砥石支持ユニット2は通例のごとく、基台1の上面の左側に配置される直方体状の第1支持部21と、第1支持部21の右面に配置される扁平状の第2支持部22と、第2支持部22の右面に配置される砥石支持装置4と、を備えている。
【0046】
第1支持部21は、基台1上に配置されたレール部材(図示省略)に沿って左右方向に移動可能に支持されている。すなわち、基台1に配置された第1モータ11を適宜駆動することにより、この第1モータ11に連結された第1ボールネジ(図示省略)、及び第1支持部21の下面に配置された第1ナット(図示省略)によって、左右方向に移動自在に構成している。
【0047】
第1支持部21には、上下方向に延びるレール部材(図示省略)が取り付けられており、第2支持部22は、このレール部材に沿って、第1支持部21の右面において上下方向に移動するようになっている。そして、第1支持部21の上部に配置された第2モータ211を適宜駆動することにより、この第2モータ211に連結された第2ボールネジ(図示省略)、及び第2支持部22の左面に配置された第2ナット(図示省略)によって、第2支持部22が上下方向に移動自在に構成されている。
【0048】
第2支持部22の左面には、その前後および上下方向中心位置に旋回軸部(図示省略)を有し、第1支持部21内の支持筒(図示省略)に枢支させている。そして、第1支持部21内に配置された第3モータ(図示省略)を適宜駆動することにより、ウォームギア(図示省略)を介して旋回軸部(図示省略)を回転させ、第2支持部22と共に砥石支持装置4を旋回自在に構成している。
【0049】
また、第2支持部22には、前後方向に延びるレール部材(図示省略)が取り付けられており、砥石支持装置4は、このレール部材に沿って、第2支持部22の右面において前後方向に移動するようになっている。そして、第2支持部22に配置された第3モータ221、この第3モータ221に連結された第3ボールネジ(図示省略)、及び砥石支持装置4の右面に配置された第3ナット(図示省略)によって、砥石支持装置4は、前後方向に移動自在に構成されている。
【0050】
砥石支持装置4の後部には、前後方向に延びる回転軸を有する第4モータ401が設けられており、その回転軸には、円筒状の保持部402が取り付けられている。そして、この保持部402の外周面には、円筒状の砥石20が着脱自在に取り付けられる。この構成により、第4モータ401により保持部402が回転すると、これとともに砥石20が回転するようになっている。砥石20の表面には、ネジ状の溝が形成されており、三次元的に砥石20を動かしてこの溝をワークWの歯に噛み合わせ、砥石20とワークWの両方を駆動することで、ワークW歯面の研削加工が行われる。また、保持部402の前方には、前後方向に移動可能な心押し部403が設けられており、この心押し部403が保持部402の前端中心部に当接し、両持ち状態となって剛性が高まり保持部402とともに回転することで、砥石20の回転ブレが抑制される。
【0051】
さらに、砥石支持装置4の上部には、第1クーラント供給部45が設けられている。この第1クーラント供給部45には、高圧のクーラントを吐出するノズル451が設けられており、このノズル451は、砥石の表面において、ワークWと噛み合う位置に向けられている。したがって、このノズル451からは、砥石20がワークWを加工しているときに、その噛み合い位置に向かってクーラントが供給されるようになっている。
【0052】
<4.歯車仕上げ加工装置の概略動作>
<4-1.ワークの加工>
次に、上記のように構成された歯車仕上げ加工装置の動作について説明する。はじめに、ワークの加工について説明する。加工開始指令を受ける、あるいは砥石20のドレッシングが終了すると、旋回モータ741を駆動し、第1旋回筒7を旋回することで、心押し具32を第1位置に移動させる。そして、油圧ポンプから作動油を供給し、第1旋回筒7内の第1及び第2ピストン75,77を下方に押し込むことで、ハースカップリング76により、第1旋回筒7と支持柱30とを固定する。
【0053】
次に、第2位置にあるチャック装置6に対し、チャック爪開閉シリンダ95のピストン951を下降させ、チャック爪661,662を開く。この状態で、未加工ワークWを載置した載置台42を上昇させ、ワークWを両チッャク爪661,662の間に配置する。この状態で、チャック爪開閉シリンダ95のピストン951を上昇させると、両チャック爪661,662が閉じ、ワークWがチャック爪661,662に把持される。
【0054】
続いて、第1旋回モータ603を駆動し、ワークWを把持したチャック装置6を第1位置へ旋回させる。チャック装置6が第1位置に移動すると、昇降シリンダ302を駆動し、ローラ係止板35を下降させる。これにより、チャック装置6がワークWとともに下降し、ワークWが主軸41の保持部413に取り付けられる。ワークWの内径もしくは外径が保持部413に把持されると、その上方に配置されたチャック爪開閉シリンダ95のピストン951を下降させ、チャック爪661,662を開く。これにより、チャック装置6から主軸41へワークWが引き渡される。
【0055】
こうして、ワークWの主軸41への取り付けが完了すると、必要(ワークWの形状など)に応じて心押し具32を下方に移動し、ワークWを押圧する。この状態で、主軸41を所定角度だけ回転させ、センサ装置9によってワークWの歯先位置を割り出す。一方、砥石支持ユニット2は予め第2支持部22を上下方向に移動するとともに、砥石支持装置4を前後方向に移動し、砥石20をワークWの正面に配置しておく。これに続いて、上述したワークWの割出情報に基づいて、第4モータ401と主軸41を駆動し、砥石20をワークWと同期回転させた状態で、第1支持部21を右側に移動し、ワーク処理ユニット3に近接させる。そして、ワークWと砥石20を噛み合わせ、両者を駆動することで、砥石20によってワークWを研削加工する。このとき、ワークWと砥石20とが噛み合っている箇所に、クーラント供給部25からクーラントを吐出する。なお、図6に示すように、砥石20とワークWとが噛み合っている状態では、チャック爪661,662は砥石20には干渉しない。そのため、チャック爪661,662は、下部位置で開いた状態でその位置に保持される。その後、加工が終了すると、砥石支持ユニット2を移動し、砥石20とワークWとを離間させる。
【0056】
その後、第1位置の上方のチャック爪開閉シリンダ95のピストン951を上昇させることで、チャック爪661,662を閉じ、ワークWを把持する。なお、このとき同時に、第2位置にあるチャック装置6は、上述した手順で、載置台42上の未加工ワークWを把持している。主軸41の保持部とワークWとの固定状態を解除した後、チャック装置6をローラ係止板35を介して上部位置まで上昇させる。その後、第1旋回モータ603を駆動し、両チャック装置6を旋回することで、加工済みワークWを第2位置へ移動させるとともに、未加工のワークWを第1位置へ移動させる。第2位置に移動した加工済みワークWは、上昇させた載置台42に一旦置かれ、チャック爪661,662の開放を経て載置台42を下降させる。作業者は加工済みワークをストッカ(図示省略)に移し、新たな未加工ワークWを載置台42に置く。こうして、ワークWの搬入から加工、加工から搬出、と一連の工程を繰り返していく。本実施例の場合、第2旋回筒8にはチャック装置6のみを搭載し、ドレス装置39は搭載しないのでその重量は従来のものと比べて大幅に軽くなり、チャック装置39を高速旋回させて加工時間を短縮させることができ、また、高速化しても第1・第2位置に精度よく停止させることができる。
【0057】
<4-2.砥石のドレッシング(ドレス加工)>
次に、砥石20のドレッシングについて、図12も参照しつつ説明する。まず、ワークWの加工時は図10の状態を維持するが、砥石20のネジ状溝をドレッシングする際は、作動油による両ピストン75,77の押圧が解除され、両バネ751,775によって両ピストン75,77が上方に付勢される。その結果、ハースカップリング76による第1ピストン75と支持柱30との固定が解除され、第1旋回筒7が旋回可能な状態となる。この状態から第2旋回モータ741を駆動し、ドレス装置39を第1位置へ移動させる。(図12)こうして、ドレス装置39が第1位置へ移動すると、両ピストン75,77への給油を再開して第1旋回筒7を支持柱30に固定する。
【0058】
次に、ドレス装置39を駆動し、ドレスディスク391を回転させる。続いて、砥石支持ユニット2の砥石20をドレスディスク391に対して適正な高さおよび角度位置に配置する。これに続いて、第4モータ401を駆動し、砥石20を回転させた状態で、第1支持部21を右側に移動し、ドレスディスク391に近接させる。そして、ドレスディスク391と砥石20の溝を噛み合わせることで、ドレスディスク391によって砥石20の溝をドレッシングして研削再生する。このとき、ドレスディスク391と砥石20とが噛み合っている箇所には低圧のクーラントが振り掛けられる。そのクーラントは、ドレス装置39と共に第2設置部72に搭載された第2クーラント供給部(図示せず)から吐出される。その後、ドレッシングが終了すると、砥石支持ユニット2を左方へ移動させ、砥石20とドレスディスク391とを離間させる。また、両ピストン75,77内の作動油をドレンし第1旋回筒7を旋回させ、ドレス装置39を第2位置に移動するとともに、心押し具32を第1位置に移動させ、次のワークWの加工に備える。
【0059】
<5.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、心押し具32とドレス装置39とを第1旋回筒7に取り付けて、ワークWの加工状態と非加工状態にあわせて旋回自在としている。そのため、心押し具32がワークWを押圧可能な状態のときには、ドレス装置39は加工位置から離れた位置にあり、ドレス装置39が砥石20をドレッシングするときには心押し具32が加工位置から離れた位置にある。特に、本実施形態では、心押し具32とドレス装置39とが、第1旋回筒7を基準に180°離れた位置に配置されているため、ドレス装置39あるいは心押し具32を加工位置から第1旋回筒7を挟んで最も離れた位置に配置させることができる。つまり、ドレス装置39あるいは心押し具32を、作業者がアクセスし易い基台1の右端側に位置させてメンテナンスや段取り替え等を広い作業スペースにて行うことができる。さらに心押し具32は、砥石20のドレッシングを行うのと同時進行でメンテナンスや段取り替え等を行うことができる。このように、本実施形態に係る歯車仕上げ加工装置では、心押し具32やドレス装置39のメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。
【0060】
また、心押し具とドレス装置とが支持柱の周方向に離れた位置に配置されているため、装置が上下方向に大型化するのを防止することができる。
【0061】
また、この歯車仕上げ加工装置においては、支持柱30を利用して上部旋回機構50の下方に、ドレス装置の旋回機構とは別個に、ワーク移送用のチャック装置6のみを旋回させるべく軽量化した下部旋回機構を設けている。したがって、ワークの移送を迅速かつ的確に行えるようにして生産効率を高めている。
【0062】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、上部旋回機構50にドレス装置を1つ設けているが、例えば、図13に示すように、第1旋回筒7の下筒部7bの周方向に複数の第2設置台72を設け、それぞれに、ドレスディスクの形状が異なるコンポジット方式ドレス装置39や異なる種類(コンポジット方式とフェスラー方式)のドレス装置39を配置することもできる。加工対象のワーク変更に伴って砥石を交換する際に、その交換する砥石に合ったドレス装置39を事前に搭載しておくことによりドレス装置の段取り替え工程をなくすことができる。なお、心押し具とドレス装置とは、必ずしも180°離れた位置に配置する必要はなく、一方を使用しているときに、他方をメンテナンス等を行うことができる位置に待避させることできればよく、例えば、90°~180°の範囲にしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、2個のチャック装置6を設け、搬入・搬出位置と加工位置との間を順次送っていくようにしているが、図14に示すように、載置台42を周方向に2つ設けて搬入位置と搬出位置とを分けて設定し、下部旋回機構60に3個のチャック装置6を設け、360°旋回するなかで、それぞれのワーク把持具を順に搬入位置、加工位置、搬出位置とに送っていくようにしてもよい(3ステーション)。その場合には、搬入位置と搬出位置にある両方のワーク把持具に跨るように第2設置台を幅広に形成して対峙させ、それぞれに、チャック爪開閉シリンダを設けるのがよい。
【0065】
砥石支持ユニット2の構成は、特には限定されず、砥石20を回転駆動可能に支持し、ワーク処理ユニット3に対して移動可能であればよい。また、上記実施形態では、砥石支持ユニット2をワーク処理ユニット3に対して移動させているが、少なくとも一方のユニットを移動することで、ワークと砥石とを近接させて加工が行われるにように構成されていればよい。
【0066】
上記実施形態では、支持柱30に設けた下部旋回機構によってワーク給排ユニットを構成したが、下部旋回機構は必ずしも必要ではなく、ロボットアームなど、主軸に対して直接ワークを搬入搬出するような機構を基台1に別途設けることもできる。
【0067】
上記実施形態で説明した各種の駆動機構は、一例であり、モータ、シリンダ等の駆動機構は、公知のものを適宜採用することができる。
【0068】
上記実施形態では、本発明に係る加工装置を歯車仕上げ加工装置に適用し、本発明に係る第1加工具として砥石を用い、第2加工具としてドレス装置を用いているが、これに限定されない。すなわち、本発明に係る加工装置を、歯車仕上げ加工装置以外に適用することができ、ワークとして歯車以外のものを採用することができる。同様に、ワークの加工を行う第1加工具、及び第1加工具の加工を行う第2加工具も、特には限定されず、種々の加工具を採用することができる。したがって、例えば、ホブ盤に本発明の加工装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 砥石支持ユニット(工具支持ユニット)
20 砥石(第1加工具)
39 ドレス装置(第2加工具)
41 主軸
42 載置台
6 チャック装置(ワーク把持具)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14