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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】繊維束補強生体複合医療用インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/48 20060101AFI20230706BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230706BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20230706BHJP
   A61B 17/68 20060101ALI20230706BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20230706BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20230706BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20230706BHJP
   A61L 27/02 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/18 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/16 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/22 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/20 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/26 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/24 20060101ALN20230706BHJP
   A61L 27/12 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
A61L27/48
A61P19/08
A61L27/50
A61B17/68
A61F2/44
A61F2/28
A61F2/30
A61L27/02
A61L27/18
A61L27/16
A61L27/22
A61L27/20
A61L27/26
A61L27/24
A61L27/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020534895
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 IL2018051377
(87)【国際公開番号】W WO2019123462
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】62/608,542
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520061929
【氏名又は名称】オッシオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プレイス-ブルーム,オラーン
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー,タリー,プニナ
(72)【発明者】
【氏名】ウチテル,イラン,オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ゼエヴィ,タル
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0246356(US,A1)
【文献】特表2009-541568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61P 19/08
A61B 17/00
A61F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の補強繊維束を含み、各繊維束が軸を有し、前記軸の0~5度以内で前記束の前記軸に沿って整列される複数の繊維と、前記繊維束を結合するポリマーとを含む、医療用インプラントであって、前記ポリマーおよび前記繊維束が、生分解性であり、前記繊維が、各束内で100ミクロン以下分離され、前記補強繊維の少なくとも一部が、連続長であり、前記長さが、前記医療用インプラントの長さの少なくとも100%であり、かつ前記医療用インプラントの長さの最大10,000%であり、各繊維束内の繊維密度が、平均断面積百分率または体積百分率に関して40%~95%の範囲であり、生体複合医療用インプラント内の補強繊維の体積百分率が、20%~50%の範囲であり、前記束の直径が、35~1300ミクロンである、医療用インプラント。
【請求項2】
前記繊維束が、前記ポリマーに埋め込まれる、または前記繊維束が、前記ポリマーと混合される、請求項1に記載の医療用インプラント。
【請求項3】
前記繊維束軸に対する前記繊維の前記整列が、0~1度であり、および/または前記束内の繊維間の距離が、0~50ミクロン、0~30ミクロン、0~20ミクロン、もしくは0~10ミクロンの範囲である、請求項1または2に記載の医療用インプラント。
【請求項4】
前記医療用インプラント内の前記繊維束が、200ミクロン未満、5~60ミクロン、10~40ミクロン、10~30ミクロン、または10~50ミクロン分離される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項5】
前記医療用インプラント内の隣接する繊維束が、15~75度の角度で、または30~60度の角度で互いにオフセットされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項6】
前記繊維が、補強ミネラル組成物を含み、かつ前記医療用インプラント内のミネラル含有量が、40%~60%w/w、45%~55%w/w、40%~70%w/w、または50%~70%w/wの範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項7】
相溶化剤をさらに含み、前記相溶化剤の重量含有量が、0.5%w/w未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリ乳酸ポリマーのL異性体とD異性体とを含み、および/または前記ポリマーのL:D異性体の比が、60:40~98:2、もしくは70:30~96:4の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、ポリ-LD-ラクチド(PLDLA);ポリグリコリド(PGA);グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC);他のPLAコポリマー、例えばラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d-バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε-カプロラクトンコポリマー、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、ポリラクチド-コ-グリコリド;PLAのターポリマー、例えばラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε-カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー;ポリデプシペプチド;非対称-3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリヒドロキシアルカノエート;例えばポリヒドロキシブチレート(PHB);PHB/b-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV);ポリ-b-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA);ポリ-p-ジオキサノン(PDS);ポリ-d-バレロラクトン-ポリ-ε-カプララクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-DL-ラクチド)コポリマー;メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステルアミド;シュウ酸のポリエステル;ポリジヒドロピラン;ポリアルキル-2-シアノアクリレート;ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ-b-リンゴ酸(PMLA):ポリ-b-アルカンビン酸;ポリカーボネート;ポリオルトエステル;ポリリン酸塩;ポリ(エステル無水物);およびそれらの混合物;および砂糖などの、天然高分子;デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリペプチドおよびタンパク質、またはそれらの混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項10】
各繊維束が、各束内に3~500の補強繊維、20~300の補強繊維、25~200の補強繊維、3~100の補強繊維、5~50の補強繊維、または8~16の補強繊維を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項11】
前記束の直径が、65~650ミクロン、または100~200ミクロンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項12】
前記繊維束が、円形形態である、または前記繊維束が、卵形形態であり、任意により前記卵形が、x軸対y軸で6:1、4:1、3:1、または2:1の比の繊維を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項13】
前記繊維束が、中心を通過する前記束の任意の軸の直径が他の任意の軸の直径の長さの4倍以内、もしくは2倍以内である形状を有する、前記直径が、同一である、または前記繊維束の平均直径が、0.5mm~10mm、1mm~5mm、もしくは1.5mm~3.5mmの範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項14】
前記繊維が、4mm、8mm、12mm、16mm、または20mmよりも長い、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項15】
前記長さが、前記医療用インプラントの長さの最大1000%、前記医療用インプラントの長さの最大500%、前記医療用インプラントの長さの最大450%、前記医療用インプラントの長さの最大400%、前記医療用インプラントの長さの最大350%、前記医療用インプラントの長さの最大300%、前記医療用インプラントの長さの最大250%、または前記医療用インプラントの長さの最大200%である、請求項1に記載の医療用インプラント。
【請求項16】
補強繊維の平均直径が、0.1~100μm、1~20μm、もしくは8~18μmの範囲である、前記医療用インプラント内の繊維間の繊維径の標準偏差が、5μm未満、3μm、もしくは1.5μmである、または生体複合束内の隣接する補強繊維間の距離が、0~50μm、1~30μm、1~20μm、0~25μm、0~15μm、もしくは0~10μmの範囲である、請求項1~15のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項17】
前記生体複合医療用インプラント内の補強繊維の重量百分率が、20~90%、40%~70、もしくは40%~60%の範囲である、または前記生体複合医療用インプラント内の補強繊維の体積百分率が、10~80%、もしくは20%~50%の範囲である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
永久整形外科用インプラント材料
【0002】
医療用インプラントは、金属、合金、セラミック、または分解性の複合材料および安定な複合材料の両方から製造できる。高強度を必要とする耐荷重性の整形外科用途では、通常、ステンレス鋼またはチタン合金が使用される。金属インプラントは、整形外科での使用が奏功した長い歴史があるが、合併症のリスクも多く保有する。これらの材料は不活性であるが、骨折固定のようにインプラントの必要性が一時的のみである場合にも使用される。骨折固定のための金属製ロッドおよびプレートの場合、骨癒合が確認された後約1年に、デバイスを取り除くための2回目の手術が推奨される場合がある。インプラントの除去は、患者にとってさらなるリスクおよび罹患率の上昇を引き起こし、診療所の利用可能性を占有し、全体的な手技コストを増加させる。デバイスを除去しない場合、骨のリモデリングを引き起こし得る。こうしたリモデリングは、宿主組織のストレスシールディングまたは炎症により、骨を弱める可能性がある。皮質骨の剛性および強度に比べて金属の剛性(弾性率)および強度が高いため、ストレスシールディングが発生する可能性があり、そのため、金属により骨にストレスが加わり、その結果、人工関節周囲の骨折または骨強度の低下をもたらし得る。
【0003】
伝統的に金属合金で構築されている耐荷重性医療用インプラントの例としては、骨折の固定ならびに/または治癒のために骨片を固定するための骨切り術のための骨プレート、ロッド、ネジ、鋲、釘、クランプ、およびピンが挙げられる。他の例としては、椎骨固定術(vertebral fusion)および脊椎手術(spinal surgery)における他の手術のための頸部くさび、腰部ケージ、ならびにプレートおよびネジなどが挙げられる。
【0004】
生体安定性ポリマーおよびそれらの複合材料、例えばポリメタクリレート(PMMA)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリシロキサンおよびアクリルポリマーに基づくものもまた、医療用インプラントの製造に使用されている。これらの材料は生分解性または生体再吸収性ではないため、医療用インプラント用途に使用される場合、金属と同じ制限の多くに直面する。例えばそれらは、インプラントの寿命のある時点において、インプラントを交換するかまたは除去するために2回目の手術を必要とし得る。さらに、これらの材料は金属よりも弱く(強度および剛性が低い)、そのため、特に繰り返される動的荷重(すなわち、材料の疲労またはクリープによる)の後、機械的な破損をより受けやすい。
既存の分解性ポリマー医療用インプラント
【0005】
再吸収性ポリマー(resorbable polymer)は、吸収性、生体吸収性、または生分解性インプラントとも呼ばれ得る、再吸収性インプラントの開発に使用されている。生体適合性の再吸収性ポリマーを使用する利点は、ポリマー、したがってインプラントが、身体で再吸収され、身体によって除去される非毒性分解生成物を放出することである。ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリジオキサノンなどのポリマーは、再吸収性生体適合性材料であり、整形外科用プレート、ロッド、アンカー、ピン、またはネジとして、頭蓋顔面用途などの非耐荷重性医療用インプラント用途に現在使用されている。これらの医療用インプラント材料は、最終的な再吸収の利点をもたらし、リモデリングしている骨折部への応力伝達を可能にしつつ、後に除去する必要をなくす。
【0006】
しかし、現在の生体吸収性材料およびインプラントは、金属製のインプラントに一致する機械的特性を有しない。非補強再吸収性ポリマーの機械的強度および弾性率(約3~5GPa)は、約15~20GPaの範囲の弾性係数を有する骨折した皮質骨を支持するには十分でない(Snyder SMら、measured the bending modulus of human tibial bone to be about 17.5 GPa、Snyder SM Schneider E、Journal of Orthopedic Research第9巻、1991年、422-431頁)。したがって、再吸収性ポリマーから構築された既存の医療用インプラントの適応は限られており、それらの固定は通常、動作または大きい荷重からの保護を必要とする。これらのデバイスは、小児患者において、または成人での内側のくるぶし骨折、合皮固定、顎顔面骨折、または骨軟骨骨折でなどの、低応力領域の固定が必要とされる場合(すなわち、非耐荷重用途)にのみ考慮される。
補強分解性ポリマー材料
【0007】
近年では、強度および剛性(弾性率)が改善された補強ポリマー材料が導入されている。これらの生分解性複合材料は、通常は繊維形態で、充填剤で補強されたポリマーを含む。複合材料では、通常、比較的柔軟なマトリックス(すなわち、ポリマー)を硬性の強固な補強材料と組み合わせて、複合マトリックスの機械的特性を向上させる。例えば、生分解性ガラスまたはミネラル材料を使用して、生分解性ポリマーマトリックスの剛性および強度を改善できる。背景技術では、こうした複合材料を製造するいくつかの試みが報告されており、その報告では、生物活性ガラス粒子、ヒドロキシアパタイト粉末、または短いガラス繊維を使用して、生分解性ポリマーの特性を向上させた。ほとんどの場合、これらの複合材料の強度および剛性は皮質骨よりも低いか、または生理学的環境中で急速に分解した後に皮質骨よりも低くなる。したがって、これらの複合材料の大部分は、耐荷重性医療用インプラント用途での使用には適切ではない。しかし、皮質骨と同等のまたはそれを超える強度および剛性を有する生分解性複合材料が最近報告されており、例えば、生分解性ポリマーおよび20~70vol%ガラス繊維を含む生分解性複合材料である(国際公開第2010128039号(A1))。例えば繊維で補強されたポリマーで形成された他の複合材料インプラントは、米国特許第4,750,905号、同5,181,930号、同5,397,358号、同5,009,664号、同5,064,439号、同4,978,360号、同7,419,714号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
補強分解性ポリマ―材料の分解メカニズム
【0008】
生分解性複合材料が骨折の固定などの耐荷重性医療用インプラント用途に使用される場合、医療用インプラントの機械的特性を長期間保持する必要がある。複合材料の分解は、インプラントの強度または剛性の早期喪失をもたらし、不適切な骨の治癒をもたらす骨セグメントの不十分な固定などの、インプラント機能の障害につながり得る。
【0009】
残念なことに、生分解性複合材料は、体液と接触すると加水分解により分解し始める。この分解は、生分解性ポリマー、補強充填剤、またはその両方の分解の結果であり得る。生理学的環境などの水性環境でのこうした分解は特に、無機化合物によって補強された特定の補強ポリマー材料において機械的強度および剛性の急激な低下を生じ得る。吸収性ポリマーマトリックスが有機材料であり、かつ充填剤が無機化合物である場合、吸収性ポリマーマトリックスと充填剤の間の接着は、水性環境でのポリマーまたは充填剤のいずれかの分解によって減少する可能性があり、これにより、補強されたポリマーの初期の機械的特性は急速に低下し、適切な耐荷重性能にとって望ましいものではなくなる。ポリマーと充填剤とが別々に分解することは別にして、ポリマーと補強材の界面の相互作用および接着性が不十分である場合、水性環境においてその界面で初期破損が発生し得、これによって補強材がポリマーから外れ充填剤の補強効果が喪失すると、急激な機械的特性の低下をもたらし得る。
【0010】
Tormalaら(国際公開第2006/114483号)は、ポリマーマトリックス中に2つの補強繊維(1つはポリマーであり、もう1つはセラミックである)を含む複合材料について記載しており、皮質骨の特性と同等である良好な初期の機械的結果(曲げ強度420+/-39MPaおよび曲げ弾性率21.5GPa)を報告している。しかし、先行技術は、吸収性ガラス繊維で補強された生体吸収性複合材料は、高い初期曲げ弾性率を有すること、しかしin vitroではそれらの強度および弾性率が急速に喪失されることを教示している。
【0011】
ポリマーと補強材の間の界面結合(共有結合など)が改善されると、水性環境において、補強された生体吸収性ポリマーの機械的特性の保持が大幅に延長される(国際公開第2010128039号(A1))が、ポリマー、補強材、またはこの2つの間の界面の継続する加水分解は、時間の経過と共に機械的特性の喪失をもたらす。骨癒合には数ヶ月以上要し得るため、共有結合により結合された補強生体吸収性ポリマーでの機械的特性分解プロファイルが延長されても、耐荷重性整形外科用途に使用される医療用インプラントの最適な機能のためには不十分であり得る。
【0012】
補強された分解性ポリマーインプラントでの強度損失の例は、自己補強性ポリL乳酸に関して記載されている(Majola Aら、Journal of Materials Science Materials in Medicine、第3巻、1992年、43-47頁)。そこでは、自己補強性ポリ-L-乳酸(SR-PLLA)複合ロッドの強度および強度の保持を、ウサギでの骨髄内および皮下移植後に評価した。SR-PLLAロッドの初期曲げ強度は、250~271MPaであった。12週間の骨髄内および皮下移植後、SR-PLLAインプラントの曲げ強度は、100MPaであった。
【0013】
PLA、PGAおよびPCLのコポリエステルおよびターポリエステルは、医療デバイス用の再吸収性複合材料のための最適なポリマーの調整において関心が持たれている。モノマー比および分子量の選択は、再吸収性複合材料の強度弾性、弾性率、熱特性、分解速度、および溶融粘度に顕著に影響し、これらのポリマーはすべて、in vitroおよびin vivoの両方の水性条件において分解可能であることが公知である。分解プロセスでは2つの段階が確認されている:第1に、ポリマーの分子量を減少させるエステル結合のランダムな加水分解鎖切断により分解が進行する。第2の段階では、鎖の切断に加え、測定可能な重量の減少が観察される。機械的特性が主に喪失されるか、少なくとも顕著な低下が、重量の減少が開始する点でそれらに見られる。これらのポリマーの分解速度は、ポリマー構造(結晶化度、分子量、ガラス転移温度、ブロック長、ラセミ化、および鎖構造)によって異なる(Middleton JC,Tipton AJ,Biomaterials 21、2000年、2335-2346)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
背景技術は、耐荷重目的での構造上の固定などの、耐荷重医療用インプラント用途で使用するための改善された機械的特性を呈する補強生体吸収性ポリマー材料を教示または示唆していない。背景技術は、インプラントの高い強度および剛性が、少なくとも最大骨治癒時間と同じ期間、皮質骨と同等またはそれを超えるレベルで保持される材料を、教示または示唆していない。
【0015】
本発明では、少なくともいくつかの実施形態において、補強のために複数の繊維束を含む、こうした補強された生体吸収性ポリマー材料を提供することにより、背景技術のこれらの欠点を克服する。このような繊維束は、材料が多くの医療用インプラント用途に必要な高い強度および剛性を達成することを可能にする。これは、医療用インプラントが個々のまたは層状の短繊維または長繊維補強ポリマーを含むポリマーまたは複合材料から製造される、当技術分野で公知であるインプラントの構造、アーキテクチャ、設計、および製造技術との大きな違いを生じる。
【0016】
驚くべきことに、本発明者らは、繊維束が、例えば、束ではなく、層のみに配置された繊維と比較して、優れた強度および他の望ましい特性をもたらすことを発見した。繊維束による補強では、繊維は好ましくは、各繊維または繊維束が複合材料内の経路に沿って並ぶように整列される。このように整列することは、束がインプラント内の特定の軸に沿って補強をもたらして、最も必要とされる場所において応力耐性を提供することを意味する。任意により、繊維束は、最大70%の許容範囲、最大80%の許容範囲、最大90%の許容範囲、最大95%の許容範囲、最大99%の許容範囲、またはその間の任意の整数で整列される。
【0017】
許容範囲に関して、任意により、繊維束は、らせん形態でねじれるように整列されてもよい。本明細書に記載の許容範囲および/または距離測定は、らせんの状況において隣接している束セグメント間の距離にも適用される。
【0018】
好ましくは、生体吸収性繊維束-補強複合インプラントに関して、インプラント内の複合材料の分解プロファイルも考慮に入れられ、それにより、繊維束が、最初はデバイス移植の初期時に、およびまた身体内のその機能期間にわたっての両方において、強度および剛性の補強を提供することを確実にする。
【0019】
本明細書に記載される繊維束補強インプラントの性能に対して好ましくは調整される機械的特性は、曲げ、引張、剪断、圧縮、およびねじりの強度および剛性(弾性率)の1つ以上を含む。 こうしたインプラントの場合、これらの特性は好ましくは、ゼロ時(すなわち、製造後のインプラント中)および身体中の移植期間後の両方で、1つ以上の性能基準を満たしている。 ゼロ時での機械的特性は、成形品内の繊維の整列および配向に依存する。 しかし、身体中の移植(または模擬移植)後の機械的特性の大部分を維持するには、追加の異なる考慮事項が必要である。
【0020】
以下でより詳細に説明するように、医療用インプラント設計に関するこうした考慮事項は好ましくは、以下のパラメータ:組成物、成分比、繊維直径、繊維束の分布および整列、繊維長など、の1つ以上を含む。
【0021】
これらのパラメータは、本明細書に記載の医療用インプラントの性能のいくつかの追加の態様および特性に影響を与え得る。
1.材料の分解率(分解生成物、分解中の局所pHおよびイオンレベル)、
2.インプラントと周囲の局所組織との界面に影響を与える表面特性、
3.抗菌性または骨伝導性などの生物学的効果、
4.滅菌プロセスへの応答(エチレンオキシドガス、ガンマ線、電子ビーム放射など)。
【0022】
本発明は、少なくともいくつかの実施形態では、それらが高い耐荷重強度および剛性を持続して達成できるという点で従来のインプラントから顕著に前進している繊維束補強生体適合性複合材料からのインプラント組成物を提供することにより、これらの問題に対する解決策を提供する。さらに、本明細書に記載の生体複合材料はまた、任意によりおよび好ましくは生体吸収性である。
【0023】
したがって、本発明は、これまでのアプローチの制限を克服しかつ、優れた機械的特性を有し、その後それらの機械的強度および剛性を長期間わたって保持する繊維束補強を特徴とする生分解性生体複合材料組成物を含む医療用インプラントを提供する。
【0024】
少なくともいくつかの実施形態によれば、複数の補強繊維束を含み、各繊維束が軸を有し、この軸の0~5度以内で束の軸に沿って整列される複数の繊維と、上記の繊維束を結合するポリマーとを含む、医療用インプラントであって、上記ポリマーおよび上記繊維束が生分解性であり、かつ上記繊維が各束内で100ミクロン以下分離される、インプラントが提供される。
【0025】
任意により、繊維束は、ポリマーに埋め込まれる。任意により、繊維束は、ポリマーと混合される。任意により、繊維束軸に対する繊維の整列は、0~1度である。
【0026】
任意により、束内の繊維間の距離は0~50ミクロンの範囲である。任意により、束内の繊維間の距離は0~30ミクロンの範囲である。任意により、束内の繊維間の距離は0~20ミクロンの範囲である。任意により、束内の繊維間の距離は0~10ミクロンの範囲である。任意により、医療用インプラント内の繊維束は、200ミクロン未満離れている。任意により、医療用インプラント内の繊維束は、5~60ミクロン未満離れている。任意により、医療用インプラント内の繊維束は、10~40ミクロン未満離れている。任意により、医療用インプラント内の繊維束は、10~30ミクロン未満離れている。任意により、医療用インプラント内の繊維束は、10~50ミクロン未満離れている。任意により、医療用インプラント内の隣接する繊維束は、15~75度の角度で互いにオフセットされる。任意により、医療用インプラント内の隣接する繊維束は、30~60度の角度で互いにオフセットされる。任意により、繊維は、補強ミネラル組成物を含む。任意により、インプラント内のミネラル含有量は40%~60%w/wの範囲である。任意により、インプラント内のミネラル含有量は45%~55%w/wの範囲である。任意により、束内のミネラル含有量は、40%~70%w/wの範囲である。任意により、束内のミネラル含有量は、50%~70%w/wの範囲である。
【0027】
任意により、医療用インプラントは、相溶化剤をさらに含み、相溶化剤の重量含有量は、0.5%w/w未満である。任意により、ポリマーは、ポリ乳酸ポリマーのL異性体およびD異性体を含む。任意により、ポリマーのL:D異性体の比は、60:40~98:2の範囲である。任意により、ポリマーのL:D異性体の比は、70:30~96:4の範囲である。任意により、ポリマーは、ポリ-LD-ラクチド(PLDLA)を含む。任意により、コポリマーは、ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、ポリ-LD-ラクチド(PLDLA);ポリグリコリド(PGA);グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC)、他のPLAコポリマー、例えば、ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d-バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε-カプロラクトンコポリマー、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、ポリラクチド-コ-グリコリド;PLAターポリマー、例えば、ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε-カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー;ポリデプシペプチド;非対称-3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリヒドロキシアルカノエート;例えば、ポリヒドロキシブチレート)PHB);PHB/b-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV);pポリ-b-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA);ポリ-p-ジオキサノン(PDS);ポリ-d-バレロラクトン-ポリ-ε-カプララクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-DL-ラクチド)コポリマー;メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステルアミド;シュウ酸のポリエステル;ポリジヒドロピラン;ポリアルキル-2-シアノアクリレート;ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ-b-リンゴ酸(PMLA):ポリ-b-アルカンビン酸;ポリカーボネート;ポリオルトエステル;ポリリン酸塩;ポリ(エステル無水物);およびそれらの混合物;砂糖などの天然高分子;デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリペプチドおよびタンパク質、またはそれらの混合物を含む。
【0028】
任意により、各繊維束は、3~500の補強繊維を含む。任意により、各束は、各束に20~300の補強繊維を含む。任意により、各束は、25~200の補強繊維を含む。任意により、各束は、3~100の補強繊維を含む。任意により、各束は、5~50の補強繊維を含む。任意により、各束は、8~16の補強繊維を含む。
【0029】
任意により、束の直径は、35~6500ミクロンである。任意により、束の直径は、250~4000ミクロンである。任意により、束の直径は、325~2600ミクロンである。任意により、束の直径は、35~1300ミクロンである。任意により、束の直径は、65~650ミクロンである。
【0030】
任意により、束の直径は、100~200ミクロンである。
【0031】
任意により、繊維束の形状は円形である。任意により、繊維束は卵形である。任意により、卵形は、x軸とy軸の比が6:1の繊維を含む。任意により、この比は、4:1である。任意により、この比は、3:1である。任意により、この比は、2:1である。任意により、この比は、1:1である。
【0032】
任意により、繊維束は、中心を通過する束の任意の軸の直径が、他の任意の軸の直径の長さの4倍以内である形状を有する。任意により、直径は、長さの2倍以内である。任意により、直径は、同一である。任意により、繊維束の平均直径は、0.5mm~10mmの範囲である。任意により、平均直径は、1mm~5mmの範囲である。任意により、平均直径は、1.5mm~3.5mmの範囲である。
【0033】
任意により、各繊維束内の繊維密度は、平均断面積百分率で30%~99%の範囲である。任意により、繊維密度は、40%~95%の範囲である。任意により、各繊維束内の繊維密度は、体積百分率で30%~99%の範囲である。任意により、繊維密度は、40%~95%の範囲である。
【0034】
任意により、繊維は4mmより長い。任意により、繊維は8mmより長い。任意により、繊維は12mmより長い。任意により、繊維は16mmより長い。任意により、繊維は20mmより長い。
【0035】
任意により、補強繊維の少なくとも一部は、医療用インプラントの長手方向の長さの少なくとも50%の連続長である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも80%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも100%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも100%であり、長さは、インプラントの長さの最大150%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも100%であり、長さは、インプラントの長さの最大10,000%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも1000%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも500%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも450%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも400%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも350%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも300%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも250%である。任意により、長さは、医療用インプラントの長さの少なくとも200%である。
【0036】
任意により、補強繊維の平均直径は、0.1~100μmの範囲である。任意により、直径は、1~20μmの範囲である。任意により、直径は、8~18μmの範囲である。
【0037】
任意により、医療用インプラント内の繊維間の繊維径の標準偏差は5μm未満である。任意により、医療用インプラント内の繊維間の繊維径の標準偏差は3μm未満である。任意により、医療用インプラント内の繊維間の繊維径の標準偏差は1.5μm未満である。
【0038】
任意により、生体複合束内での隣接する補強繊維間の距離は、0~50μmの範囲である。任意により、隣接する繊維間の距離は、1~30μmの範囲である。任意により、隣接する繊維間の距離は、1~20μmの範囲である。任意により、隣接する繊維間の距離は、0~25μmの範囲である。任意により、隣接する繊維間の距離は、0~15μmの範囲である。任意により、隣接する繊維間の距離は、0~10μmの範囲である。
【0039】
任意により、生体複合医療用インプラント内の補強繊維の重量百分率は、20~90%の範囲である。任意により、重量百分率は、40%~70%の範囲である。任意により、重量百分率は、40%~60%の範囲である。
【0040】
任意により、生体複合医療用インプラント内の補強繊維の体積百分率は、10~80%の範囲である。任意により、体積百分率は、20~50%の範囲である。
【0041】
本明細書で使用される「生分解性」という用語は、身体内で再吸収性、生体再吸収性、生体吸収性または吸収性である材料も指す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】骨プレートの寸法を示す。
図2】例示的骨プレートインプラントのSEMである。プレート外面での繊維束の存在および配向を示す。
図3】例示的骨プレートインプラントのSEMを示す。プレート外面での繊維束を拡大表示している。
図4】例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示す。繊維の直径範囲を示す繊維束を拡大表示している。
図5】例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示す。1つの束内の繊維間の距離を示す。
図6】例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示す。束間の距離の例を示す。
図7】三点曲げ試験装置を示す。
図8】一般的な斜視図で、縫合糸アンカーインプラントを示す。
図9】外側寸法に関して、縫合糸アンカーインプラントを示す。
図10A】縫合糸アンカーインプラントの全体(図10A)および断面図(図10B)でのマイクロCTスキャンを示す。
図10B】縫合糸アンカーインプラントの全体(図10A)および断面図(図10B)でのマイクロCTスキャンを示す。
図11A】縫合糸アンカー引抜き試験用の試験装置を示す。
図11B】縫合糸アンカー引抜き試験用の試験装置を示す。
図12】縫合糸アンカーのねじれが不良になるまでの試験装置を示す。
図13】非限定的な例として単一のガラス繊維形状を示す。
図14A】2つのプレートタイプについて、特に繊維束プレート(図14A)についての破損様態を示す。
図14B】2つのプレートタイプについて、特にPLDLAプレート(図14B)についての破損様態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の少なくともいくつかの実施形態による医療用インプラントは、耐荷重性の整形外科用インプラント用途に好適であり、1つ以上の生体複合材料、任意により生体吸収性材料を含み、ここでは、持続的な機械的強度および剛性が適切なインプラント機能にとって重要である。生体複合体は、インプラントを補強するために、軸に沿って整列される複数の繊維束を特徴とする。
【0044】
したがって、本発明は、少なくともいくつかの実施形態によれば、耐荷重目的の構造的固定として有用であり、インプラントを構成する生体吸収性材料の分解が妨げられた結果として持続的な機械的特性を呈する、繊維束補強医療用インプラントを提供する。
【0045】
関連するインプラントとしては、これらに限定されないが、骨固定プレート、髄内釘、関節(股関節、膝、肘)インプラント、脊椎インプラント、および骨折固定、腱再付着、脊椎固定、および脊椎ケージなどの用途のための他のデバイスが挙げられる。
【0046】
補強繊維は、好ましくは連続繊維である。こうした連続繊維は、好ましくは4mmより長く、より好ましくは8mm、12mm、16mmより長く、最も好ましくは20mmより長い。
【0047】
代替的に、または追加的に、補強繊維長は、インプラント長に応じて定義され得、補強繊維の少なくとも一部、好ましくは補強繊維の大部分が、これらの繊維で構成される医療用インプラントまたは医療用インプラント構成部品の縦の長さの少なくとも50%の連続長である。好ましくは、補強繊維の一部または大部分は、医療用インプラント長の少なくとも80%、より好ましくは医療用インプラント長の少なくとも100%の連続長である。繊維は、繊維束の長さであり得るため、インプラント長よりも長くてもよい。それぞれについて、繊維および/または束は、インプラント長の少なくとも100%、インプラント長の最大150%、インプラント長の最大200%、インプラント長の最大250%、インプラント長の最大300%インプラント長の最大350%インプラント長の最大400%インプラント長の最大450%インプラント長の最大500%、インプラント長の最大1000%、インプラント長の最大10,000%、またはその間の任意の割合であり得る。こうした連続補強繊維は、インプラントの大部分に構造的補強をもたらすことができる。本明細書で補強された生体複合医療用インプラントと共に使用する補強繊維の平均直径は、0.1~100μmの範囲であり得る。好ましくは、繊維の直径は1~20μmの範囲である。より好ましくは、繊維の直径は、8~16μmの範囲である。
【0048】
医療用インプラント内の繊維間の繊維直径の標準偏差は、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満、最も好ましくは1.5μm未満である。繊維径の均一性は、インプラント全体での一貫した特性にとって有益である。
【0049】
好ましくは、生体複合医療用インプラント内の補強繊維の重量百分率は、20~90%の範囲であり、より好ましくは、重量百分率は40%~70%の範囲であり、最も好ましくは40%~60%の重量範囲である。
【0050】
好ましくは、生体複合医療用インプラント内の補強繊維の体積百分率は、10~80%の範囲であり、より好ましくは、体積百分率は、20%~50%の範囲である。
【0051】
インプラント内の生体複合組成物は、インプラントの機械的特性およびバルク特性を決定する際に重要であるが、インプラントの表面縁と接触する特定の組成物および構造は、周囲の細胞および組織が、身体内への移植後にインプラントとどのように相互作用するかについて、この組成物および構造が大きく影響し得る点で独特の重要性を有する。例えば、生体複合体の吸収性ポリマー部分は性質上疎水性であり得、このため、周囲の組織をある程度はじき、また、生体複合体のミネラル補強繊維部分は性質上親水性であり得、このため、周囲の組織のインプラントへの付着を促進するか、または組織の内部成長を作り出す。
【0052】
本発明の任意の実施形態では、表面積百分率による組成成分の1つの表面の存在は、体積百分率によるインプラントのバルク組成物におけるその成分の存在よりも大きい。例えば、表面のミネラルの量は、ポリマーの量よりも多くてよく、その逆の場合もある。1つの仮説に限定されることを望むものではないが、骨とのより大きい統合のために、より多くの量のミネラルが、任意によりおよび好ましくは、表面に存在する。骨との少ない統合のために、より多くの量のポリマーが、任意によりおよび好ましくは、表面に存在する。好ましくは、1つの成分の表面積組成の割合は、生体複合インプラント全体におけるその成分の体積百分率の割合よりも10%以上大きい。より好ましくは、この割合は、30%以上大きく、最も好ましくは50%以上大きい。
【0053】
任意により、医療用インプラントの1つの表面は、生体複合成分の1つの局所的な優位性を有し得、別の表面または同じ表面の異なる部分は、異なる生体複合成分の局所的な優位性を有し得る。
【0054】
任意により、医療用インプラントは、ねじ付きネジまたは他のねじ付きインプラントである。好ましくは、インプラントの外層は、繊維の方向がねじ切りのらせん角に近づくような方向的に整列される。好ましくは、繊維方向の整列角度は、らせん角度の45度以内である。より好ましくは、整列角度は30度以内であり、最も好ましくは、整列角度はらせん角度の15度以内である。この方法で繊維の整列角度をらせんの角度に近づけることは、ねじ切りの堅牢性を改善でき、かつねじ切り内の補強繊維の裂開を防ぐことができる。
【0055】
円形インプラントについては、補強繊維は任意により、インプラントの完全な円形形状を取り、その周囲から逸脱することなく、インプラントの円形形状の周りで湾曲してもよい。好ましくは、補強繊維の一部または大部分は、接線角度が形成されるように、インプラントの円形形状から逸脱している。接線角度は、固定された開始点での曲線の方向からの偏差として定義され、固定された開始点は、繊維が断面円形領域の中心に接触しているか、接触するのに最も近い点である。
【0056】
好ましくは、円形医療用インプラント内の補強繊維とインプラントの曲率の間の接線角度は、90度未満、より好ましくは45度未満である。
【0057】
好ましくは、本発明で使用するための生体複合組成物の密度は、1~2g/mLである。より好ましくは、密度は1.2~1.9g/mLである。最も好ましくは、1.4~1.8g/mLである。
束で繊維を配置することはさらなる強度をもたらす
【0058】
驚くべきことに、本発明者らは、繊維を束で配置することが、例えば、繊維を個別にまたは層のみで配置するのとは対照的に、インプラントに対してより大きい強度をもたらすことを見出した。本明細書で使用する場合、「繊維束」という用語は、別個の繊維の束を指し、繊維はそれぞれ、束の長さに沿って互いに平行に長手方向に延在する。各繊維は、独立型の構成要素であり、好ましくは単一のフィラメントを含む。繊維束は、互いに非常に近接しているが一般にある量のポリマーが束内の繊維間に散在する、複数の個々の繊維を含む。好ましくは、各繊維束の断面は楕円形を有し、これは、限定されないが円形または卵形を含む、任意の型の楕円であり得る。この楕円形状により、各繊維束の断面の少なくとも一部は、近くの束へより接近し、さらには接触し、一方で各繊維束の少なくとも別の部分は、近くの束へそれほど接近していないことが予想される。
【0059】
炭素から構成要素を作製する現在の技術では、炭素で作られたフィラメントは典型的には、「繊維」と呼ばれるものに、数千のこうしたフィラメントの量で組み合わされる。繊維を次に、個別に使用して物品を形成する。しかし、この構造は、本発明の各繊維が独立型構成要素であるように十分に太くて強いという点で、本発明の繊維とは異なる。本発明の繊維は、例えば強度などのさらなる利点のために、束へと組み合わされる。
【0060】
例えば、米国特許第5064439号は、「好ましくは、本発明では炭素繊維が使用される。便宜上、以下では、繊維を炭素繊維(「CF」)と呼ぶ」と記載する。次に、こうした炭素繊維の調製方法は、3,000~15,000フィラメント/束を有するフィラメントの束をコーティング用溶液に通すと記載される。
【0061】
換言すると、複合繊維組成物中の炭素繊維に関して「繊維」という単語が典型的に使用される場合、それはフィラメントの束である繊維、典型的には繊維あたり3000~15000フィラメントを有する繊維を、典型的には意味する。炭素繊維の文脈での個々のフィラメントは、独立型の構成要素ではなく、かつ一般にフィラメント間に散在するポリマーはない。炭素繊維自体は通常、繊維束へと配置されない。
【0062】
少なくともいくつかの実施形態によれば、複数の補強繊維束を含み、各繊維束が軸を有し、束の軸に沿って整列される複数の繊維と、上記の繊維束を結合するポリマーとを含む、医療用インプラントであって、上記ポリマーおよび上記繊維束は生分解性であり、かつ上記繊維は各束内で100ミクロン以下分離される、インプラントが提供される。
【0063】
任意により、束内の繊維間の距離は0~50ミクロンの範囲である。また、任意により、束内の繊維間の距離は0~30ミクロンの範囲である。好ましくは、束内の繊維間の距離は0~20ミクロンの範囲である。より好ましくは、束内の繊維間の距離は0~10ミクロンの範囲である。
【0064】
少なくともいくつかの実施形態によれば、本発明は、複数の繊維束によって補強された生体複合材料組成物で構成される医療用インプラントに関する。好ましくは、生体複合材料組成物は、ミネラル組成物によって補強された(任意により生体吸収性の)ポリマーから構成される。好ましくは、ミネラル組成物補強は、ミネラル組成物から作製された補強繊維によってもたらされる。
【0065】
好ましくは、医療用インプラントまたはその一部は、複数の生体複合繊維束から構成され、各束は、一方向補強繊維によって補強された生体吸収性ポリマーを含む。インプラントの特性は、任意によりかつ好ましくは少なくとも部分的に、繊維束の組成物および寸法、ならびにデバイスに関する、例えば繊維束の方向に関する束の配置に従って決定される。繊維は、任意により別個のままであり得るが、任意により周囲のポリマーがある程度溶融してそれらの束を一緒に結合し得る。
【0066】
生体複合繊維束は、医療用インプラントの一部またはすべてを通過する繊維の連続または半連続の集合として定義でき、束は、一方向に整列された補強繊維で構成される。
【0067】
好ましくは、各生体複合繊維束を形成する5~2000の補強繊維が存在する。好ましくは、各束には10~150の補強繊維が存在し、最も好ましくは20~100の補強繊維が存在する。任意により、補強繊維は連続的である。あるいは、補強繊維は、セグメント化されてよい(すなわち、連続的ではない)。
【0068】
好ましくは、繊維束は、形状がほぼ円形である。代替的には、繊維束は、卵形である。
【0069】
任意により、繊維束は、束の中心を通る束の任意の軸の直径が同じであるか、または他の任意の軸の直径の長さの4倍以内、好ましくは長さの2倍以内である、任意の規則的または不規則な形状をとってもよい。
【0070】
好ましくは、繊維束の平均直径は、0.5mm~10mmの範囲である。より好ましくは、平均直径は、0.5mm~5mmの範囲である。最も好ましくは、平均直径は、1mm~3.5mmの範囲である。
【0071】
好ましくは、各繊維束内の繊維密度は、平均断面積百分率に関して30%~99%の範囲、より好ましくは40%~95%の範囲、最も好ましくは45%~70%の範囲である。
【0072】
好ましくは、各繊維束内の繊維密度は、重量百分率に関して30%~99%の範囲、より好ましくは40%~95%の範囲、最も好ましくは45%~70%の範囲である。
【0073】
任意により、各繊維束内の繊維密度は、医療用インプラントの全体的な密度よりも少なくとも3%大きい。好ましくは、少なくとも5%大きい。
【0074】
この文脈において隣接している束は、2つの異なる隣接している束、または2つの隣接している束セグメントを意味し得、両方のセグメントが同じ長い繊維束のセグメントである。
【0075】
任意により、繊維束内の隣接する繊維間の方向性繊維の配向は、同じであるか、または類似している。好ましくは、束内の繊維間の平均角度または角度中央値の差は、0~15度、より好ましくは0~10度、最も好ましくは0~5度である。
【0076】
医療用インプラント内の生体複合繊維束は、特定の許容範囲内で互いに十分に近接していることが好ましい。好ましくは、インプラントの一部またはすべてで隣接する束間の平均距離または距離中央値は、1つの束の最後の繊維とその次の束の最初の繊維との間の距離によって測定したとき、0~200μm、より好ましくは1~60μm、2~40μm、最も好ましくは3~30μmである。束内の繊維を隣接する束内の繊維に適切に接近させることはり、各束が隣接する束を機械的に支持できるようにする。しかし、束間のある程度の距離は、隣接する束の繊維間にある程度のポリマーを残し、それによりそれらが互いに接着して、高い機械的荷重下での層開裂を防ぐことを可能にするために望ましい場合がある。
【0077】
この文脈において隣接している束は、2つの異なる隣接する束、または2つの隣接する束セグメントを意味し得、両方のセグメントが同じ長い繊維束のセグメントである。
【0078】
任意により、生体複合材料束内の隣接する補強繊維間の距離は、0~50μmの範囲であり、好ましくは隣接する繊維間の距離は1~30μmの範囲、より好ましくは1~20μmの範囲であり、最も好ましくは1~10μmの範囲である。
【0079】
好ましくは、インプラントは、好ましくは1~100の生体複合繊維束、より好ましくは1~50の束、最も好ましくは3~20の束を含み、各束は、異なる方向に整列されてよく、または束の一部は、他の束と同じ方向に整列されてよい。
【0080】
好ましくは、複数の繊維束は、医療用インプラントの長手方向軸の方向に整列される。任意により、繊維束の大部分は、医療用インプラントの長手方向軸の方向に整列される。
生体吸収性ポリマー
【0081】
本発明の好ましい実施形態では、生分解性複合材料は、生体吸収性ポリマーを含む。
【0082】
本明細書に記載される医療用インプラントは、任意の生分解性ポリマーから作製され得る。生分解性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、もしくはグラフトコポリマーなど)であり得る。生分解性ポリマーは、直鎖状ポリマー、分岐鎖状ポリマー、またはデンドリマーであり得る。生分解性ポリマーは、天然起源または合成起源であってよい。適切な生分解性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、炭酸塩(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、など)、ジオキサノン(例、1,4-ジオキサノン)、δ-バレロラクトン、1,ジオキセパノン(例、1,4-ジオキセパン-2-オンおよび1,5-ジオキセパン-2-オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ-ヒドロキシ吉草酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、α-ヒドロキシ酸、ヒドロキシ酪酸塩、ポリ(オルトエステル)、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート、例えば、ポリ(ビスフェノールA-イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノンイミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリ無水物、ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソル、ポリアスピリン、およびタンパク質治療)およびコポリマーならびにそれらの組み合わせ、から作製されるものなどのポリマーが挙げられる。好適な天然生分解性ポリマーとしては、コラーゲン、キチン、キトサン、セルロース、ポリ(アミノ酸)、多糖類、ヒアルロン酸、腸、コポリマーおよび誘導体ならびにそれらの組み合わせから作製されるものが挙げられる。
【0083】
本発明によれば、生分解性ポリマーは、コポリマーまたはターポリマー、例えば:ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、ポリ-LD-ラクチド(PLDLA);ポリグリコリド(PGA);グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC)、他のPLAコポリマー、例えば、ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d-バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε-カプロラクトンコポリマー、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、ポリラクチド-コ-グリコリド;PLAターポリマー、例えば、ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε-カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー;ポリデプシペプチド;非対称-3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリヒドロキシアルカノエート;例えば、ポリヒドロキシブチレート)PHB);PHB/b-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV);ポリ-b-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA);ポリ-p-ジオキサノン(PDS);ポリ-d-バレロラクトン-ポリ-ε-カプララクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-DL-ラクチド)コポリマー;メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー;ポリエステルアミド;シュウ酸のポリエステル;ポリジヒドロピラン;ポリアルキル-2-シアノアクリレート;ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリペプチド;ポリ-b-リンゴ酸(PMLA):ポリ-b-アルカンビン酸;ポリカーボネート;ポリオルトエステル;ポリリン酸塩;ポリ(エステル無水物);およびそれらの混合物;砂糖などの天然高分子;デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、多糖類、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリペプチドおよびタンパク質であり得る。上記のポリマーのいずれかの混合物およびそれらの様々な形態も使用できる。
【0084】
好ましくは、ポリマーはPLDLAであり、L異性体とD異性体の比はL:D60:40~L:D99:1の範囲であり、より好ましくは、比は、70:30~96:4である。
補強生体吸収性ポリマー
【0085】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、医療用インプラントは、補強生体吸収性ポリマー(すなわち、前述のポリマーを含み、かつこのポリマーの機械的強度を高めるために、一般的に繊維形態で、補強充填剤を組み込む生体吸収性複合材料)を含む。
【0086】
本発明のより好ましい実施形態では、補強生体吸収性ポリマーは、上記の生体吸収性ポリマーのいずれかと、好ましくは繊維形態で補強充填剤とを含む補強ポリマー組成物である。補強充填剤は、有機または無機(すなわち、天然のまたは合成の)材料から構成され得る。補強充填剤は、生分解性ガラス、セルロース材料、ナノダイヤモンド、または生体吸収性ポリマーの機械的特性を高めるために当技術分野で公知である任意の他の充填剤であってよい。充填剤は、好ましくは、生体吸収性ポリマー自体以外の材料または材料のクラスから作られる。しかし、これは任意により、生体吸収性ポリマー自体の繊維であってもよい。
【0087】
こうした補強ポリマー組成物の多くの例が、これまでに文書化されている。例えば:ガラス繊維を連続ポリマーマトリックスに埋め込むことができる生体適合性でかつ再吸収性である溶融物由来のガラス組成物(欧州特許出願公開第2243749号(A1))、生分解性ポリマーおよび20~70vol%のガラス繊維を含む生分解性複合材料(国際公開第2010128039号(A1))、ポリマーマトリックスに埋め込むことができる、再吸収性でかつ生体適合性であるガラス繊維(米国特許出願公開第2012/0040002号(A1))、生体適合性複合材料およびその使用(米国特許出願公開第2012/0040015号(A1))、充填剤としてポリ[スクシンイミド]を含む吸収性ポリマー(欧州特許第0671177号(B1))である。
【0088】
本発明のより好ましい実施形態では、補強効果が長期間にわたって維持されるように、補強充填剤は生体吸収性ポリマーに結合される。こうしたアプローチは、米国特許出願公開第2012/0040002号(A1)および欧州特許第2243500号(B1)に記載されており、それらは生体適合性ガラス、生体適合性マトリックスポリマー、および共有結合を形成できるカップリング剤を含む複合材料について論じている。
【0089】
好ましくは、ポリマーと繊維との間の結合を増大させるために、サイズ剤または相溶化剤が生体複合インプラント組成物に含まれる。好ましくは、こうした相溶化剤またはサイズ剤は、全インプラント組成の重量超および/または1体積%を占める。好ましくは、こうした相溶化剤またはサイズ剤は、0.5%重量未満および/または0.5%体積未満を占める。最も好ましくは、こうした相溶化剤またはサイズ剤は、0.3重量%および/または0.3体積%未満を占める。
【0090】
好ましくは、相溶化剤またはサイズ剤の大部分は、上に列挙した吸収性ポリマーから選択される生体吸収性ポリマーで構成される。好ましくは、サイズ剤内のポリマーは、インプラントのポリマー構造成分を含む生体吸収性ポリマーとは異なる組成、固有粘度、または平均分子量のものである。こうした相溶化剤は、好ましくは、インプラントのポリマー構造成分よりも低い分子量(より短い鎖)である。こうした相溶化剤の非限定的な例は、国際特許第2010122098号に記載されており、本明細書に完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、任意により、相溶化剤は、相溶化剤の構造単位の少なくとも10%が、構造ポリマーの構造単位と同一であるポリマーを含み、相溶化剤の分子量は、30000g/モル未満である。任意により、相溶化剤の構造単位の少なくとも30%が、構造ポリマーの構造単位と同一であり、相溶化剤の分子量は、10000g/モル未満である。より好ましくは、相溶化剤の分子量は10000g/モル未満である。あるいは、相溶化剤の構造単位の0%は、構造ポリマーの構造単位と同一である。これらの特徴の範囲内で、相溶化剤および構造ポリマーは、本明細書に記載されるポリマー材料から独立して任意により選択される。上記のように、生分解性複合材料および繊維は好ましくは、生分解性複合繊維束の形態で配置され、各束は、1つ以上の生体吸収性ポリマーから構成されたポリマーマトリックスに埋め込まれた一方向に整列された連続補強繊維を含む。
【0091】
生分解性複合材料は、好ましくは、任意により上記のポリマーのいずれかを含み得るポリマーマトリックスに組み込まれる。任意によりおよび好ましくは、それは、PLLA(ポリ-L-ラクチド)、PDLLA(ポリ-DL-ラクチド)、PLDLA、PGA(ポリ-グリコール酸)、PLGA(ポリ-ラクチド-グリコール酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PLLA-PCLおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含み得る。PLLAが使用される場合、マトリックスは好ましくは、少なくとも30%のPLLA、より好ましくは50%、最も好ましくは少なくとも70%のPLLAを含む。PDLAが使用される場合、マトリックスは、好ましくは少なくとも5%のPDLA、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも20%のPDLAを含む。
【0092】
好ましくは、ポリマーマトリックス(補強繊維とは関係なく)の固有粘度(IV)は、1.2~2.4dl/gの範囲、より好ましくは1.5~2.1dl/gの範囲である。
【0093】
固有粘度(IV)は、分子サイズを測定するための粘度測定方法である。IVは、キャピラリーを通る純粋な溶媒のフロー時間に対する、狭いキャピラリーを通るポリマー溶液のフロー時間に基づく。
【0094】
好ましくは、GPCによって測定する場合、ポリマーマトリックスの平均分子量は、100kDa~400kDaの範囲である。より好ましくは、平均分子量は、120kDa~250kDaの範囲である。最も好ましくは、平均分子量は、150kDa~250kDaの範囲である。
補強繊維
【0095】
好ましくは、補強繊維が生体再吸収性ガラス繊維を含むように、補強繊維はシリカベースのミネラル化合物から構成され、これは、生体ガラス繊維複合材とも呼ばれ得る。
【0096】
生体再吸収性ミネラル繊維は任意により、以下のモル%範囲で酸化物組成を有し得る:
NaO:10.0~19.0モル%、
CaO:9.0~14.0モル%、
MgO:1.5~8.0モル%、
:0.5~3.0モル%、
Al:0~0.8モル%、
:0.1~0.8モル%、
SiO:67~73モル%、
O:0~0.8モル%、
および、より好ましくは、以下のモル%範囲:
NaO:11.5~13.0モル%、
CaO:9.0~10.0モル%、
MgO:7.0~8.0モル%、
:1.4~2.0モル%、
:0.5~0.8モル%、
SiO:67~70モル%、
O:0~0.4モル%。
【0097】
あるいは、上記のミネラル組成の範囲は、モル%ではなく、重量%(w/w)として適用可能である。
【0098】
追加の任意のガラス繊維組成物は、これまでにLehtonen TJら(Acta Biomaterialia 9(2013年)4868-4877、参照により全体が本明細書に含まれる)によって記載されており、こうしたガラス繊維組成物は、上記の組成物の代わりに、または上記の組成物に加えて、任意により使用され得る。
【0099】
追加の任意の生体再吸収性ガラス組成物は、以下の特許出願に記載されており、これらは、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。生体適合性複合材料およびその使用(国際出願第2010122098号)ならびに再吸収性および生体適合性ガラス繊維組成物およびその使用(国際出願第2010122019号)。
任意による追加の特徴
【0100】
以下の特徴および実施形態は任意により、上記の特徴および実施形態のいずれかと組み合わせてもよい。
【0101】
補強繊維の引張強度は好ましくは、1200~2800MPaの範囲、より好ましくは1600~2400MPaの範囲、最も好ましくは1800~2200MPaの範囲である。
【0102】
補強繊維の弾性率は好ましくは、30~100GPaの範囲、より好ましくは50~80GPaの範囲、および最も好ましくは60~70GPaの範囲である。
【0103】
任意により、医療用インプラントの長手方向軸に対して整列された補強繊維の大部分は、インプラントの全長の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは85%以上の長さである。
医療用インプラント複合構造
【0104】
インプラントは、整形外科用ピン、ネジ、プレート、髄内ロッド、股関節置換術、膝関節置換術、メッシュなどを含む群から選択され得る。
【0105】
インプラントの平均壁厚は、好ましくは0.2~10mmの範囲、より好ましくは0.4~5mmの範囲、より好ましくは0.5~2mmの範囲、および最も好ましくは0.5~1.5mmの範囲である。
【0106】
任意により、インプラントは、補強リブ、ガセット、または支柱を備えてもよい。
【0107】
リブ基部の厚さは、好ましくは隣接する壁厚の20%超、より好ましくは隣接する壁厚の30%超、最も好ましくは50%超である。
【0108】
好ましくは、リブの高さは、隣接する壁厚の少なくとも2.0倍、より好ましくは壁厚の少なくとも3.0倍である。
【0109】
補強リブの抜き勾配は、好ましくは0.2~3.0°、より好ましくは0.4~1.0°である。
【0110】
好ましくは、リブの中心間の距離は、隣接する壁厚の少なくとも2倍である。より好ましくは、隣接する壁厚の少なくとも3倍である。
【0111】
任意により、リブは、対角で、および端で結合させてもよい。
【0112】
任意により、インプラントの挿入を容易に進めるために、1つの軸(例えば、インプラントの長手方向軸)に沿ったリブは、その垂直軸(例えば、インプラントの横方向軸)に沿ったリブよりも高い。
【0113】
任意により、インプラントは、ネジの挿入に対応するために1つ以上のボスを含み得る。好ましくは、ボスは、セルフタッピングネジ用途のネジ直径の2~3倍である。ボスは、サポートゲスまたはリブをさらに含み得る。
【0114】
任意により、インプラントの1つ以上の側面は型押されてよい。
【0115】
任意により、インプラントは、インプラント内のネジ穴またはピン穴などの穴の周りに円形配置で整列された連続繊維を含んでよい。
穿孔インプラント部品の壁
【0116】
いくつかの医療用インプラントでは、組織へのインプラントの組み込みを強化し、生理学的機能におけるインプラントのコンプライアンスを高めるように、インプラントを介して細胞または組織の内部成長が存在することが望ましい。こうした内部成長をさらに促進するために、本明細書に記載の医療用インプラントの壁に間隙または穴を有することが有益である。
【0117】
好ましくは、存在する場合、インプラント壁のこうした穿孔は、インプラントの表面積の少なくとも10%、より好ましくはインプラントの表面積の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%を含む。
【0118】
本発明の1つの任意の実施形態では、インプラントはネジであり、ねじ切りの穿孔術は、穿孔を含む。
【0119】
好ましい実施形態では、穿孔の大部分は補強繊維間にあり、補強繊維を貫通しない。
骨充填剤のケージ
【0120】
本発明の別の実施形態では、インプラントは、整形外科用インプラントを含み、インプラントは、部分的または完全な容器を形成し、骨伝導性材料または骨誘導性材料がインプラント容器内に含まれる。
【0121】
好ましい実施形態では、インプラント容器は、インプラントケージ内に含まれる骨伝導性材料または骨誘導性材料への骨の内部成長の改善を可能にするように、さらに穿孔される。
【0122】
任意の実施形態では、インプラントは、それを通じて骨充填剤を導入でき、かつ/または骨の内部成長が起こり得る開口部またはドアを備える。
【0123】
任意の実施形態では、インプラントは、インプラントケージが骨充填剤材料で充填され、その後その内部で骨充填剤を捕捉するように組み立てられるかまたは閉じられるように、継手によって接合される2つ以上の別個の部品または分離した部品を備える。
非補強周囲材料による連続繊維補強構造のフレームワーク
【0124】
本発明の一実施形態では、医療用インプラントは、連続繊維補強生体吸収性複合材料で構成される構造的支持体を含み、非補強ポリマー材料で構成される部分をさらに含む。
【0125】
任意により、非補強ポリマー部分は骨界面層であり、界面層の寸法は、特定の患者または患者集団の骨の形状によって部分的または全体的に決定される。
【0126】
任意により、患者または患者集団の骨の形状は、X線、CT、MRIなどの画像技術によって測定することにより決定される。
【0127】
任意により、構造的支持体の弾性係数および/または曲げ強度は、非補強ポリマー部分のそれらよりも少なくとも20%大きい。
【0128】
任意により、インプラント内の連続繊維補強複合材料は、ポリマー樹脂でコーティングされ、複合材料中の繊維上のポリマー樹脂は、流動性マトリックス樹脂よりも高いかもしくは低い溶融温度を有し、または、繊維上のポリマー樹脂は、流動性マトリックス樹脂よりも遅いかもしくは速い分解速度を有し、または繊維上のポリマー樹脂は、流動性マトリックス樹脂よりも高い疎水性もしくは親水性を有する。
【0129】
任意の実施形態では、追加のセクションまたは層は、補強ポリマーで構成されるが、ポリマーは非連続繊維、好ましくは長さが10mm未満、より好ましくは長さが5mm未満の繊維、によって補強される。
【0130】
任意の実施形態では、非補強ポリマーまたは非連続繊維補強ポリマーの追加のセクションまたは層は、添加剤をさらに含む。
【0131】
任意により、添加剤は、βリン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、脱細胞化骨などの骨伝導性材料または骨伝導性材料の組み合わせを含む。
【0132】
任意により、添加剤は、抗菌剤または骨誘導剤を含む。
製造方法
【0133】
連続繊維補強生体吸収性インプラントは、当技術分野で公知である任意の方法を使用して任意により製造され得る。好ましくは、インプラントは主に、射出成形以外の方法で製造される。より好ましくは、インプラントは主に、インプラントを圧縮成形などの圧縮圧力に供する製造方法を使用して製造される。
【0134】
好ましくは、成形後のインプラントの含水率は、30%未満、より好ましくは20%未満、さらにより好ましくは10%、8%、6%、5%未満である。
インプラントの作製
【0135】
上記の生体吸収性ポリマーまたは補強生体吸収性ポリマーのいずれも、本発明で使用するための任意の所望の物理的形状に作製されてよい。ポリマー基材は、例えば、圧縮成形、鋳造、射出成形、引抜成形、押出、フィラメントワインディング、コンポジットフロー成形(CFM)、機械加工、または当業者に既知の任意の他の作製技術によって製造されてよい。ポリマーは、例えば、プレート、ネジ、釘、繊維、シート、ロッド、ステープル、クリップ、ニードル、チューブ、発泡体、または医療デバイスに好適である任意の他の構成などの、任意の形状にされてよい。
耐荷重機械的強度
【0136】
本発明は特に、骨の剛性と比較して高い強度および剛性を必要とする医療用途において使用できる生体吸収性複合材料に関する。これらの医療用途は、身体によってまたは身体に対して加えられる荷重の全部または一部を支える医療用インプラントを必要とし、このため、一般に「耐荷重」用途と称され得る。これらの用途としては、骨折固定、腱再付着、関節置換術、脊椎固定、および脊椎ケージが挙げられる。
【0137】
本明細書に記載の耐荷重性医療用インプラントからの好ましい曲げ強度は、少なくとも200MPa、好ましくは400MPa超、より好ましくは600MPa超、さらにより好ましくは800MPa超である。本発明で使用するための生体吸収性複合材料の弾性係数(またはヤング率)は、好ましくは少なくとも5GPa、より好ましくは10GPa超、さらにより好ましくは15GPa超、20GPa超であるが、100GPaを超えず、好ましくは60GPaを超えない。
持続的な機械的強度
【0138】
十分な骨の治癒を可能にする長期間にわたりそれらの機械的特性(高い強度および剛性)を維持するために、本発明の生体吸収性耐荷重性医療用インプラントが必要とされる。強度および剛性は好ましくは、皮質骨の強度および剛性、それぞれ、約150~250MPaおよび15~25GPaを超えて、in vivoにおいて(すなわち生理学的環境において)少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、さらにより好ましくは少なくとも9ヶ月の間、維持される。
【0139】
より好ましくは、曲げ強度は、400MPa超を維持し、さらにより好ましくは、600MPa超を維持する。
【0140】
本発明の別の実施形態では、コーティングされた医療用インプラントの機械的強度の分解速度は、生分解性複合材料の重量損失によって測定した場合、インプラントの材料分解速度に近似する。
【0141】
好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込み3ヶ月後にその機械的強度の50%超を保持し、一方で50%超の材料の分解、したがって重量損失が、埋め込み12ヶ月以内に生じる。
【0142】
好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込み3ヶ月後にその機械的強度の70%超を保持し、一方で70%超の材料の分解、したがって重量損失が、埋め込み12ヶ月以内に生じる。
【0143】
好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込み6ヶ月後にその機械的強度の50%超を保持し、一方で50%超の材料の分解、したがって重量損失が、埋め込み9ヶ月以内に生じる。
【0144】
好ましい実施形態では、インプラントは、埋め込み6ヶ月後にその機械的強度の70%超を保持し、一方で70%超の材料の分解、したがって重量損失が、埋め込み9ヶ月以内に生じる。
【0145】
医療用インプラントの機械的強度の分解および材料の分解(重量損失)速度は、in vivo移植後またはin vitro模擬移植後に測定され得る。In vitro模擬移植の場合、模擬はリアルタイムで、または加速された分解基準に従って実施され得る。
【0146】
本明細書で使用される「生分解性」は、in vivoでの分散による分解により細分化する材料、例えばポリマーを含む、一般化された用語である。身体内の生分解性材料の質量の減少は、宿主組織内の物理化学的条件(湿度、pH値など)によって触媒される、受動的プロセスの結果であり得る。生分解性の好ましい実施形態では、身体内の生分解性材料の質量の減少はまた、分解副産物の単純な濾過のため、または材料の代謝後(「生体再吸収」または「生体吸収」)のいずれかにより、自然経路を通じて削減され得る。いずれの場合であっても、質量の減少により、初期の異物が部分的にまたは完全に除去され得る。初期の異物の除去は、in vivoでの完全な分散を含み、またはin vivo環境で初期の異物の一部を周囲に組み込むことまたはリモデリングすることをさらに含み得る。好ましい実施形態では、生分解性複合材料は、水性環境での高分子分解により鎖切断を受ける、生分解性ポリマーを含む。
【0147】
ポリマーは、それが害を及ぼすことなく身体から代謝され得るか、または排除され得る小さい非毒性セグメントに細分化できる場合、本発明の意味の範囲内で「吸収性」である。一般に、吸収性ポリマーは、体組織に曝されると膨潤し、加水分解し、および分解し、大幅な重量損失をもたらす。加水分解反応は、場合によっては酵素的に触媒され得る。完全な生体吸収、すなわち完全な重量損失は、若干の時間を要し得るが、完全な生体吸収は24ヶ月以内、最も好ましくは12ヶ月以内に生じる。
【0148】
「ポリマー分解」という用語は、それぞれのポリマーの分子量の減少を意味する。好ましくは本発明の範囲内で使用されるポリマーに関して、分解は、エステル結合の切断により遊離水によって誘発される。実施例に記載する、例えば生体材料で使用されるようなポリマーの分解は、バルク侵食の原理に従う。それにより、分子量の継続的な減少が、非常に顕著な質量損失より先に生じる。こうした質量損失は、分解生成物の溶解度に起因する。水により誘発されたポリマー分解の測定方法は、分解生成物の滴定、粘度測定、示差走査熱量測定(DSC)など、当技術分野でよく知られている。
【0149】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、マトリックス、および繊維の補強材によって形成された複合材料であり、マトリックスおよび繊維の両方が、生体適合性であり、かつ任意により生体吸収性である。ほとんどの場合、マトリックスはポリマー樹脂であり、より具体的には、合成生体吸収性ポリマーである。繊維は、任意によりかつ好ましくは、異なるクラスの材料であり(すなわち、合成生体吸収性ポリマーではない)、任意により、ミネラル、セラミック、セルロース、または他のタイプの材料を含んでよい。
臨床用途
【0150】
本明細書で論じられる医療用インプラントは一般に、骨折の縮小および固定のために使用されて、解剖学的関係を回復させる。こうした固定は任意によりかつ好ましくは、安定な固定、骨および周囲の軟組織への血液供給の保存、ならびに部分および患者の早期の能動的動員の1つ以上、より好ましくはすべてを含む。
【0151】
いくつかの例示的で例解される非限定的なタイプの骨固定インプラントがあり、それについて本発明の少なくともいくつかの実施形態によって記載される材料および概念は、以下のように、関連し得る。
骨プレート
【0152】
骨プレートは通常、折れた、またはさもなければ切断された骨の様々な部分を、骨が一緒に回復する治癒プロセス中および/またはプロセス後に、互いに対して実質的に固定して維持するために使用される。四肢の骨は、その端のいずれかに頭部を有する骨幹部を含む。骨幹部は、一般的に細長く、比較的円筒形状である。
【0153】
骨幹部または頭部、および折れた骨の骨幹部に付着して骨の2つ以上の片を互いに対して実質的に固定された位置に維持する骨プレートを提供することが知られている。こうした骨プレートは一般に、対向する実質的に平行な側面と、対向する側面間に延在する複数の孔とを有する形状を含み、孔は、プレートを骨片に取り付けるためのピンまたはネジを受け入れるために好適である。
【0154】
折れた骨の異なる部分の互いに対する固定した状態を維持する際に骨プレートが適切に機能するために、プレートは、骨の断片または片の位置を維持するのに十分な機械的強度および剛性でなければならない。しかし、骨プレートが骨と周囲の軟部組織の間に適合するための十分な空間が確保されるように、薄い外形でこれらの機械的特性を達成する必要がある。骨プレートの厚さは一般に、2.0mm~8.0mmの範囲であり、より一般的には2.0mm~4.0mmの範囲である。プレートの幅は、可変であるが
ネジ
【0155】
ネジは、骨を内部固定するために使用され、骨折の種類およびネジの使用方法に基づいて様々なデザインが存在する。ネジは、様々なサイズの骨での使用のために、様々なサイズである。ネジは、骨折を保持するために単独で、およびプレート、ロッド、または釘と一緒に使用され得る。骨の治癒後、ネジはそのままにされるか、または取り除かれてよい。
【0156】
ネジは、ねじ切りされるが、ネジ切りは、完全または部分的であり得る。ネジとしては、圧縮ネジ、固定ネジ、および/またはカニューレネジが挙げられる。ネジの外径は、0.5または1.0mmほど小さくてよいが、より小さい骨固定では、一般に3.0mm未満である。より大きい骨皮質ネジは、最大5.0mmであり得、海綿質ネジは、7~8mmに達することさえあり得る。いくつかのネジは、セルフタッピングであり、他のネジは、ネジの挿入前に穴を開ける必要がある。カニューレ付きネジの場合、ガイドワイヤーを収容するために、中央の中空部分は一般に直径1mmよりも大きい。
ワイヤー/ピン
【0157】
ワイヤーは多くの場合、骨同士を一緒に固定するために使用される。これらのワイヤーは多くの場合、非常に小さいためネジで固定できない骨片を一緒に保持するために使用される。それらは他の形態の内部固定と組み合わせて使用され得るが、それらは、手または脚に見られるようなものなどの、小さい骨の骨折の治療に単独で使用されてよい。ワイヤーまたはピンは、骨への挿入または穴あけのために、片側または両側に鋭端を有してもよい。
【0158】
「Kワイヤー」は、一般的にステンレス鋼、チタン、またはニチノールで作製される特定のタイプのワイヤーであり、直径が0.5~2.0mm、および長さが2~25cmの範囲の寸法である。「スタインマンピン」は一般的に、直径2.0~5.0mm、長さ2~25cmの範囲である。それにもかかわらず、骨固定のためのピンおよびワイヤーという用語は、本明細書では同義的に使用される。
アンカー
【0159】
アンカー、特に縫合糸アンカーは、腱および靭帯を骨に固定するための固定デバイスである。これらは、骨に挿入されるアンカー機構と、縫合糸が通過するアンカーの1つ以上のアイレット、穴、またはループとで構成される。これは、アンカーを縫合糸に繋ぐ。骨に挿入されるアンカーは、ネジ機構または干渉機構であり得る。アンカーは通常、直径1.0~6.5mmの範囲である。
ケーブル、タイ、ワイヤータイ
【0160】
ケーブル、タイまたはワイヤータイを使用して、セルクラージュによる固定、または骨を一緒に結合することを実施できる。このようなインプラントは、骨の損傷または骨内のインプラントシャフトの存在のいずれかが原因で、貫通ネジまたはワイヤー/ピンを使用して固定できない骨を、任意により一緒に保持できる。一般に、こうしたケーブルまたはタイインプラントの直径は、任意により1.0mm~2.0mmの範囲、好ましくは1.25~1.75mmの範囲である。ワイヤータイの幅は任意により、1~10mmの範囲であり得る。
釘またはロッド
【0161】
長骨のいくらかの骨折では、骨片を一緒に保持するための医学的なベストプラクティスは、通常は若干の骨髄を含む骨の中空中心を通してロッドまたは釘を挿入することによる。ロッドの両端でネジを使用して、骨折が短くなることまたは回転することを防ぎ、またロッドを、骨折が治癒するまで所定の位置に保持する。ロッドおよびネジは、治癒完了後に骨に残されてよい。骨固定用の釘またはロッドは一般に、長さが20~50cm、直径が5~20mm(好ましくは9~16mm)である。釘またはロッドの中心にある中空部分は一般的に、ガイドワイヤーを収容するために、直径1mmよりも大きい。
【0162】
上記の骨固定インプラントのいずれかは任意により、これらに限定されないが、粉砕骨折、分節骨折、非癒合骨折、骨量減少を伴う骨折、近位骨折および遠位骨折、骨幹骨折、骨切り部位などを含む様々な骨折タイプを固定するために使用され得る。
実施例1-生体複合医療用インプラント骨プレート
【0163】
以下の例は、補強繊維束を含む補強生体複合材料から製造された整形外科用固定プレートインプラントを記載する。
【0164】
折れた骨の異なる部分の互いに対し固定された状態を維持する際に、骨プレートが適切に機能するために、プレートは、骨の断片または片の位置を維持するのに十分な機械的強度および剛性でなければならない。この実施例では、骨プレート厚は、2mm厚であり(図1の画像「A」に示す)、最も重要な方向での曲げに対するプレートの抵抗を高めるために、プレートの長手方向軸に整列された直線状の繊維束を有する。繊維束内の繊維は、繊維束の軸に沿って整列され(軸に対して約0度の角度)、生体吸収性ポリマーと一緒に結合される。
【0165】
図1は、骨プレートの寸法を示す。図1は、側面図(「A」)にも示される、繊維束整列軸102を有する骨プレート100を示す。上面図は、長さ60mm、幅12.7mmおよび厚さ2mmの例示的な寸法を示し、これらはすべて、様々な用途に応じて変更され得る。
材料および調製
【0166】
複合材料は、50%w/w、70%、または85%w/wの連続ミネラル繊維で補強されたPLDLA70/30ポリマーで構成された。ミネラル繊維の組成は、約NaO14%、MgO5.4%、CaO9%、B2.3%、P1.5%、およびSiO67.8%w/wであった。骨プレートの試験サンプルは、繊維束で補強された生体複合材料を指定された単一キャビティ型に圧縮成形することによって製造した。生体複合材料は、PLDLAポリマーを含み、一方向に整列された連続繊維束を埋め込んだ。各繊維束に対する繊維の配向は、約0°であった。プレートの長手方向軸に対する層の配向は、約0°であった。
【0167】
得られたプレートは、プレートの長手方向軸に沿って直線状の繊維束を有する。繊維束の存在およびその配向は、骨プレートの外面において明らかである(図2、3、および4)。
【0168】
図2は、例示的な骨プレートインプラントのSEMであり、プレート外面上の繊維束の存在およびその配向が示される。インプラントプレートの表面を上から見た図を示し、この図では、一部の繊維束の幅が、インプラントのポリマー表面から露出していることが観察され得る。各束の幅(すなわち直径)は、本明細書に示される各束中に20~80の繊維があるように、5~10の繊維幅である。幅は、矢印で示される。
【0169】
図3は、例示的な骨プレートインプラントのSEMを示し、プレート外面での繊維束を拡大表示する。個々の繊維が、図3で明確に目視で確認される。各束内の繊維の直径は、9.5μm~16.8μmの範囲である。インプラントプレートの表面を上から見た図を示し、この図では、1つの繊維束の幅が、インプラントのポリマー表面を通って露出していることが観察され得る。この束の幅(すなわち直径)は、この束に約80の繊維があるように約(部分的にのみ目視で確認できる)10束幅である。
【0170】
図2および図3で見ることができるように、このような各束が典型的には数千のこのようなフィラメントを特徴とする、炭素繊維フィラメントなどの技術と比較して、比較的少ない繊維が各束に存在する。
【0171】
図4は、骨プレートの断面における1つの束内の繊維の代表的な測定結果を示す。図4は、例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示し、繊維の直径範囲を示す繊維束の拡大図を拡大表示する。特に、SEMは、繊維束の断面切断部からの繊維束内の繊維の拡大図である。断面内の様々な繊維の繊維幅(直径)は、9.5ミクロン、13.8ミクロン、および16.8ミクロンとして示される(矢印は、幅を示す)。
【0172】
図5は、例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示し、1つの束内の繊維間の距離を示す。SEMは、繊維束の断面切断部からの繊維束(境界が点線で示される)の図である。束内の繊維間の距離は、このような繊維間の完全な接近(0um)~最大25ミクロンで様々である。図6は、例示的な骨プレートインプラント断面のSEMを示し、束間の距離の例を示している。2つの繊維束の境界は、点線で示される。繊維束内の繊維の数は、50繊維(図5)~束あたり約150繊維(図6)の範囲である。
【0173】
束内の繊維間の距離は、束の一部では0~15μm、他の束では0~25μmの範囲である。図5は、このような距離の例を示す。1つの繊維束と別の束の間の距離は、0~50μmである(図6)。
実施例2-追加の骨プレート試験
方法
【0174】
2つのタイプの骨プレートインプラントを、比較のために曲げについて試験した。1つ目のプレートは、長手方向の一方向性繊維束を有する上記の繊維束プレートである。2つ目のプレートは、多方向層プレートであり、プレート軸に対して0°および45°の交互の一方向性生体複合繊維補強材料層の配向で作製した。各層の厚さは、約0.18mmであった。サンプルの曲げ試験を、ASTM D790に準拠した三点曲げ法を使用して行った。図7は、三点曲げ試験装置を示す。
【0175】
荷重を、支持体を32mm離して、たわみ率2mm/分で試験片の中央に印加した。荷重および変位を、5kNロードセル(S/N 040017)を備えたTestResources Single Column Test Machine、model 220 Frame-1505017-10Fによって測定し、記録した。到達した最大荷重を、最大曲げ荷重として記録した。
結果
【0176】
表1は、最大荷重の平均値、計算した曲げ強度およびヤング率、ならびにそれらの標準偏差を列挙する。
【表1】
【0177】
一方向繊維束を使用して製造された骨プレートインプラントの結果は、層プレートの場合よりも有意に高かった。破損時の平均最大荷重および平均曲げ強度は、層プレートと比較して繊維束プレートでは約73%高かった。これらの値は、骨プレートインプラントで予想される最も重大な破損モードでの層プレートに対する繊維束プレートの明確な機械的優位性を反映する。
実施例3-生体複合医療用インプラント縫合糸アンカー
【0178】
以下の例は、補強繊維束を含む補強生体複合材料から製造された縫合糸アンカーインプラントを記載する。
【0179】
縫合アンカーは、腱および靭帯を骨に固定するための固定デバイスである。これらは、骨に挿入されるアンカー機構と、縫合糸が通過するアンカーの1つ以上のアイレット、穴、またはループとで構成される。これが、アンカーを縫合糸に繋げる。骨に挿入されるアンカーは、ネジ機構または干渉機構であり得る。干渉機構は、ネジも含むが、ネジの隣に縫合糸を配置すること、および例えば骨などの対応する身体組織に穴を作製することを伴う。
【0180】
図8は、縫合糸アンカー800の全体的な斜視図を示す。図9は、端面図(「A」)および側面図(「B」)とともに、アンカー800の外側寸法を詳細に示す。図9は、例示的な寸法を示す。他の適切な寸法が可能であり、これらの寸法の代わりに使用できる。図示のとおり、アンカー800の端部の直径は0.475mmであり、アンカー800の長さは15mmである。
【0181】
PLDLA70/30ポリマーを含む複合材料を、45~50%w/wの連続ミネラル繊維により補強した。ミネラル繊維の組成は、約NaO14%、MgO5.4%、CaO9%、B2.3%、P1.5%、およびSiO67.8%w/wであった。サンプルを、繊維束で補強された生体複合材料を指定された単一キャビティ型に圧縮成形することによって製造した。生体複合材料を、連続繊維束が埋め込まれたPLDLAポリマーで構成した。各繊維束に対する繊維の配向は、約0°であった。
【0182】
アンカーを、インプラント本体全体に巻き付けられた緩いらせん形態に配置した生体複合材料の繊維束を使用して製造した。圧縮成形プロセス中、繊維束のインプラント軸に対する配向はアモルファスである(すなわち、特に整列されない)。
【0183】
マイクロCTスキャンは、縫合糸アンカーインプラント内の繊維束の配向のよりよい理解を可能にする。図10Aおよび図10Bは、縫合糸アンカーインプラントの全体(図10A)および断面図(図10B)でのマイクロCTスキャンを示す。図は両方とも、インプラント全体で実行する繊維束のマイクロCT視覚化を示す。この解像度では、束内の個々の繊維は、見ることができない。繊維のように見える各構成要素は実際には、複数の繊維で構成される繊維束である(これらの画像では見えない)。
【0184】
マイクロCTは、縫合糸アンカー内の繊維束の一般的な配向が円周であることを示す。各束内の繊維の直径は、8μm~18μmの範囲である。繊維束内の繊維の数は、1束あたり10繊維~約200繊維の範囲である。束内の繊維間の距離は、0~25μmである。1つの繊維束から別の束までの距離は、0~50μmの範囲である。
方法
【0185】
縫合糸アンカーネジを、破損するまでの引抜きおよびトルク適用試験について試験した。
【0186】
引抜き試験を、15PCF鋸骨で実施した。縫合糸アンカーを30x30x30mmの鋸骨ブロックにねじ込み、アンカーネジの内側に縫合糸を巻き付けた。鋸骨ブロックを次に、試験のために指定されたジグに配置した。縫合糸ループを次に、引張り機の上部ジグに接続する。張力を、破損が生じるまで12mm/分の速度で加える。荷重および変位を、TestResources Single Column Test Machine、model 220 Frame-1505017-10Fによって測定し、記録した。
【0187】
図11Aおよび図11Bは、縫合糸アンカー引抜き試験用の試験装置を示す。図11Aは、試験装置の概略図を示し、図11Bは、実際のデバイスの写真を示す。図11Aに示すように、試験装置1100は、鋸骨ブロック1104を保持するジグ1102を特徴とする。DUT(試験中のデバイス)である縫合糸アンカー1106を、鋸骨ブロック1104に挿入し、それにより、このような縫合糸アンカー1106の実際の使用を模倣する。縫合糸ループ1108を次に、縫合糸アンカー1106に取り付ける。張力を、上述のように、破損が生じるまで、矢印の方向に縫合糸アンカー1106に加える。
【0188】
破損までのトルク試験を、30PCFで実施した。主要な4.2mmの穴を、30x30x30mmの鋸骨ブロックに、事前に穿孔した。指定されたドライバー器具を使用して、縫合糸アンカーネジを部分的に穴に挿入した。縫合糸アンカーおよび鋸骨ブロックを有するドライバーを次に、ねじりばね成形機に取り付けた。ドライバーをねじりばね成形機の回転チャックに接続し、試験中での回転運動を防止するために鋸骨ブロックを固定した。ドライバーの回転を、破損が生じるまで1800度/分の速度で加えた。トルクおよび角度を、TestResources Torsion Test Machine、160シリーズフレーム、model 160 GT20(Test Resources、Shakopee、MN、USA)によって測定し、記録した。
【0189】
図12は、縫合糸アンカーのねじれが破損するまでの試験装置を示す。試験装置1200は、矢印の方向に示されるようにねじりを加えるためのねじり機械チャック1202を特徴とする。ねじり機械チャック1202は、ドライバー1204に取り付けられ、ドライバー1204は、縫合糸アンカー1206に取り付けられる。縫合糸アンカー1206は、前述のように再び鋸骨ブロック1208に取り付けられる(縫合糸アンカー1206の明るい色は、それが鋸骨ブロック1208内で保持されることを示すためである;挿入された縫合糸アンカー1206のその部分は、試験中に必ずしも見えるとは限らない)。鋸骨ブロック1208は、ねじりが加えられている間、鋸骨ブロック1208の不動性を維持するために、固定プレート1210に取り付けられる。ねじりを、上記のように、破損が生じるまで加えた。
結果
【0190】
試験結果の詳細を下表2に示す。
【表2】
表2は、引抜き試験およびねじり試験から破損試験までの縫合アンカー試験結果の概要を示す。
実施例#4-生体複合医療用インプラント原料-コーティングされたガラス繊維
【0191】
この実施例は、生体複合医療用インプラントを製造するための原料としての、単一のコーティングガラス繊維に関する。
【0192】
単一のガラス繊維は、指定された相溶化剤材料でコーティングされる。単一のガラス繊維の外径は、9μm~17μmの範囲である。図13は、非限定的な例として単一のガラス繊維の形状を例解する。図13は、端部1302が「A」で拡大表示される、単一のガラス繊維1300を示す。ガラス繊維1300上のコーティング1304を示す。
【0193】
複数のガラス繊維原料を1つの束にまとめることができる。この繊維束は、様々な選択肢において、生体複合医療用インプラント内に組み込まれる。原材料生産プロセスで制御され得る繊維束パラメータ:各束の繊維数、束内の繊維間の距離、束間の距離、束軸に対する繊維の整列(直線/低角度らせん/高角度らせん)、繊維束の直径、繊維束のアスペクト比(長軸と短軸の比率)。医療用インプラント内の最終的な繊維束の種類は、生体力学的予測および組織成長予測の両方から、インプラントの性能に貢献し得る。
方法
【0194】
3つの単一のガラス繊維を、各繊維個別に、引張強度について試験した。単一のガラス繊維の平均極限引張強度(UTS)を次に、繊維ごとに計算した。合計9つの単一の繊維試験片を測定し、試験した。単一のガラス繊維の平均外径は、14~16μmであった。原材料の比較のために、純粋なポリマープレートおよび生体複合繊維束プレートを、同じパラメータについて試験した。
【0195】
PLDLAプレートの試験サンプルを、PLDLA樹脂を指定された単一のキャビティ金型に圧縮成形することによって製造した。PLDLA樹脂を計量し、金型キャビティ内に入れ、能動的圧力を加えずに、加熱した。所望の温度に到達後、圧力を5分間印加した。圧力を、金型を室温に冷却するまで維持した。
【0196】
生体複合繊維束プレートは、50%w/w連続ミネラル繊維で補強されたPLDLA70/30ポリマーで構成された。ミネラル繊維の組成は、約Na2O14%、MgO5.4%、CaO9%、B2O32.3%、P2O51.5%、およびSiO267.8%w/wであった。プレート試験サンプルを、指定された単一のキャビティ型に、繊維束に配置したポリマーおよび連続ミネラル繊維を含む生体複合材料を圧縮成形することによって製造した。各繊維束に対する繊維の配向は、約0°であった。
【0197】
表3は、PLDLAプレート(上)および繊維束プレート(下)について、プレートの種類ごとの実際の試験片の平均寸法を詳細に示す。
【表3】
【0198】
4つのサンプルを、5KNロードセルおよび適切な固定具(220Q1125-95、TestResources、MN、USA)を使用して、改変ASTM D3039Mに従い引張強度、引張弾性率、および最大荷重について試験した。クロスヘッド速度を、2mm/分に設定した。サンプルの寸法、重量、および密度を記録した。
【0199】
試験片を上部および下部のクランプに固定し、各クランプに10mmの試験片を取り付けた。張力を、2mm/分の速度で印加した。荷重および変位を、TestResources Single Column Test Machine、model 220 Frame-1505017-10Fによって測定し、記録した。
結果
【0200】
表4Aおよび表4Bは、PLDLAプレート(n=4)、繊維束プレート(n=4)(両方とも表4A)、および単一のガラス繊維(n=9)(表4B)の機械的特性およびバルク特性の中央値および標準偏差を示す。

【表4A】
【表4B】
【0201】
PLDLAプレートの破損モードは、構築物の張力の結果としてのプレートの完全な分離であった。繊維束プレートは、このような破損を示さず、プレートは元の形態を維持し、外側の剥離または破れはなかった。図14Aおよび図14Bは、2つのプレートタイプについて、特に繊維束プレート(図14A)およびPLDLAプレート(図14B)についての破損モードを示す。
結果の要約
【0202】
繊維束プレートの引張試験は、PLDLA(層)プレートと比較して、引張強度が約65%高く、ヤング率が約170%高い結果であった。これらの結果は、プレートの機械的特性に対するプレートに埋め込まれた繊維束の寄与を強調する。したがって、繊維束プレートは、層プレートよりも著しく高い引張強度を有した。
【0203】
繊維束プレートの破損モードも異なった。PLDLAプレートは破損し、その結果、材料が完全に分離した。繊維束プレートの破損は目視では確認されず、これは、繊維束がそれらの耐荷重状態を維持し、引張試験中に破れなかったことを意味する。むしろ、このタイプの破損は、束と周囲のPLDLAポリマーの間の接続に起因する可能性があり、インプラントが支持および引張強度を提供することをまだ可能にできる破損である。
【0204】
明確にするため、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供できることも理解されよう。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈に記載される本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の好適な下位の組み合わせで提供されてもよい。また、本発明は、上記で特に示され記載されたものによって限定されないことも当業者であれば理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B