(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】熱利用システム
(51)【国際特許分類】
E01H 5/10 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
E01H5/10 Z
(21)【出願番号】P 2021123424
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500575972
【氏名又は名称】株式会社リビエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】今 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】今 祐治郎
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-127325(JP,U)
【文献】特開平09-194817(JP,A)
【文献】実開平06-018426(JP,U)
【文献】特開2005-344953(JP,A)
【文献】特開2003-321821(JP,A)
【文献】実開平06-027924(JP,U)
【文献】実開昭61-036281(JP,U)
【文献】実開平03-093809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E01H 1/00-15/00
E04H 9/16
F24T 10/00-50/00
F24V 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱領域と、前記吸熱領域によって吸収した熱を利用する熱利用流路と、前記熱利用流路を流れる流体を制御する制御部とを備え、
前記吸熱領域は、所定の大きさの複数の小面積領域に区切られ、
各々の前記小面積領域は、太陽熱を吸収可能な吸熱媒体と、前記吸熱媒体の内部を通過する熱交換流路と、該小面積領域の温度を直接的又は間接的に検出する温度検出器とを備え、
前記熱交換流路は、注入口から注入される熱媒体流体を排出口から排出する過程で、前記吸熱媒体の熱を前記熱媒体流体に伝達するものであり、
前記熱利用流路は、
複数の前記排出口から排出される熱媒体流体を合流して
利用側熱交換機の前に前記熱媒体流体を一時的に貯溜する第一の貯溜部を具備しており、
熱利用した後の前記熱媒体流体を一時的に貯溜する第二の貯溜部を具備しており、
第二の貯溜部で貯溜した後に前記熱媒体流体を分配して複数の前記注入口へ戻すものであり、
前記制御部は、前記小面積領域毎に、前記温度検出器による検出温度に応じて熱媒体流体の流量を制御するものであることを特徴とする熱利用システム。
【請求項2】
前記吸熱媒体がコンクリートであることを特徴とする請求項1記載の熱利用システム。
【請求項3】
前記吸熱媒体の少なくとも露出面が、熱を吸収し易い熱吸収色であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱利用システム。
【請求項4】
前記吸熱領域が、駐車場または道路を構成していることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の熱利用システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記小面積領域毎に、前記温度検出器による検出温度に応じて前記熱媒体流体の流路を閉鎖又は開放することを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の熱利用システム。
【請求項6】
前記熱利用流路は、
流量制御弁を備え、前記流量制御弁は、前記制御部の制御信号に応じて、前記熱媒体流体の流量を連続的に調整するものであることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の熱利用システム。
【請求項7】
前記吸熱領域により温熱を吸収するようにしたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の熱利用システム。
【請求項8】
前記吸熱領域により冷熱を吸収するようにしたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の熱利用システム。
【請求項9】
前記熱利用流路を通過する前記熱媒体流体を加熱することで、前記吸熱領域を融雪領域として用いるようにしたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の熱利用システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の熱を吸収して利用するようにした熱利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、道路等の路体に埋設された融雪用配管を利用して太陽熱を吸収し、この吸収された熱をヒートポンプ等により回収して冷媒蒸発熱源として利用するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-315476号公報
【文献】特開2021-85616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路面は日の当たるところや日の当たらないところがある。また、時間帯によって日が当たったり日が当たらなくなったりする場合もある。
このため、道路上の位置や時間帯等によって、太陽熱を十分に収集できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
吸熱領域と、前記吸熱領域によって吸収した熱を利用する熱利用流路と、前記熱利用流路を流れる流体を制御する制御部とを備え、前記吸熱領域は、所定の大きさの複数の小面積領域に区切られ、各々の前記小面積領域は、太陽熱を吸収可能な吸熱媒体と、前記吸熱媒体の内部を通過する熱交換流路と、該小面積領域の温度を直接的又は間接的に検出する温度検出器とを備え、前記熱交換流路は、注入口から注入される熱媒体流体を排出口から排出する過程で、前記吸熱媒体の熱を前記熱媒体流体に伝達するものであり、前記熱利用流路は、複数の前記排出口から排出される熱媒体流体を合流して熱利用した後に分配して複数の前記注入口へ戻すものであり、前記制御部は、前記小面積領域毎に、前記温度検出器による検出温度に応じて熱媒体流体の流量を制御するものであることを特徴とする熱利用システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、位置や時間帯によって日当たりが異なる場合でも、効率的に熱収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る熱利用システムの一例を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、吸熱領域と、前記吸熱領域によって吸収した熱を利用する熱利用流路と、前記熱利用流路を流れる流体を制御する制御部とを備え、前記吸熱領域は、所定の大きさの複数の小面積領域に区切られ、各々の前記小面積領域は、太陽熱を吸収可能な吸熱媒体と、前記吸熱媒体の内部を通過する熱交換流路と、該小面積領域の温度を直接的又は間接的に検出する温度検出器とを備え、前記熱交換流路は、注入口から注入される熱媒体流体を排出口から排出する過程で、前記吸熱媒体の熱を前記熱媒体流体に伝達するものであり、前記熱利用流路は、複数の前記排出口から排出される熱媒体流体を合流して
利用側熱交換機の前に前記熱媒体流体を一時的に貯溜する第一の貯溜部を具備しており、熱利用した後の前記熱媒体流体を一時的に貯溜する第二の貯溜部を具備しており、第二の貯溜部で貯溜した後に前記熱媒体流体を分配して複数の前記注入口へ戻すものであり、前記制御部は、前記小面積領域毎に、前記温度検出器による検出温度に応じて熱媒体流体の流量を制御するものである(
図1及び
図2参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記吸熱媒体がコンクリートである。
【0010】
第3の特徴として、前記吸熱媒体の少なくとも露出面が、熱を吸収し易い熱吸収色である。
【0011】
第4の特徴として、前記吸熱領域が、駐車場または道路を構成している(
図2参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記制御部は、前記小面積領域毎に、前記温度検出器による検出温度に応じて前記熱媒体流体の流路を閉鎖又は開放する。
【0013】
第6の特徴として、
前記熱利用流路は、流量制御弁を備え、前記流量制御弁は、前記制御部の制御信号に応じて、前記熱媒体流体の流量を連続的に調整するものである。
なお、実施例は、前記熱利用流路は、前記熱媒体流体を一時的に貯溜する貯溜部を具備している(
図1参照)
ものも開示している。
【0014】
第7の特徴として、前記吸熱領域により温熱を吸収するようにした。
【0015】
第8の特徴として、前記吸熱領域により冷熱を吸収するようにした。
【0016】
第9の特徴として、前記熱利用流路を通過する前記熱媒体流体を加熱することで、前記吸熱領域を融雪領域として用いるようにした。
【0017】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
この熱利用システムは、太陽光に晒される吸熱領域10と、吸熱領域10によって吸収した熱を利用する熱利用流路20と、熱利用流路20を流れる流体を制御する制御部30とを備える。
【0018】
吸熱領域10は、太陽光による輻射熱(温熱)を吸収するための領域であり、駐車場や道路等に構成される。
この吸熱領域10は、所定の広さの複数(図示例によれば3つ)の小面積領域10a,10b,10cに区切られている。
【0019】
小面積領域10a,10b,10cの各々は、太陽熱を輻射熱として吸収する吸熱媒体11と、吸熱媒体11の内部に熱交換流路12aを通過させるように埋設された吸熱側熱交換器12と、各小面積領域10a(10b又は10c)の温度を直接的又は間接的に検出する温度検出器13とを備えている。
【0020】
吸熱媒体11は、コンクリート製の駐車場または道路であり、その露出面が熱を吸収し易い熱吸収色である。前記熱吸収色は、好ましくは黒色とするが、紺色等とすることも可能である。この吸熱媒体11は、駐車場または道路を構成している。なお、吸熱媒体11の材質は、アスファルトや、その他の硬質材料とすることも可能である。
【0021】
吸熱媒体11の露出面を前記熱吸収色にする手段は、例えば吸熱媒体11(コンクリート)を構成する骨材や結合剤に、前記熱吸収色の材料を用いた態様や、吸熱媒体11の表面を前記熱吸収色の塗料により塗装した態様等とすればよい。
【0022】
吸熱側熱交換器12は、連続する長尺配管を適宜形状に曲げ形成してなる熱交換流路12aと、この熱交換流路12aを支持する支持体12bとから搬送可能な一体状に構成され、吸熱媒体11の表層側に埋設されている。
【0023】
熱交換流路12aは、例えば熱伝導率の比較的高い材料(例えば、銅を含む合金等)からなる管材を、蛇行状やトグロ状等に曲げたものである。
この熱交換流路12aは、注入口12a1から注入される熱媒体流体を排出口12a2から排出する過程で、吸熱媒体11の熱を、内部を流通する熱媒体流体に伝達する。
【0024】
前記熱媒体流体は、防食不凍液であり、ブライン等と呼称される場合もある。この熱媒体流体には、例えばエチレングリコール等を主成分としたブライン不凍液を用いればよいが、水やその他の液体を用いることも可能である。
【0025】
支持体12bは、硬質金属材料等によって熱交換流路12aを支持する枠状や網目状等に構成される。
【0026】
温度検出器13は、例えば、サーミスタや測温抵抗体等を用いた温度センサである。この温度検出器13は、図示例によれば、熱交換流路12aの排出口12a2近傍の温度を検出して、その検出温度を有線電気信号として制御部30へ伝送する。
【0027】
熱利用流路20は、複数の小面積領域10a,10b,10cに対応する複数の排出口12a2から排出される前記熱媒体流体を合流して熱利用した後に分配して複数の注入口12a1へ戻すように構成された配管系統である。
【0028】
この熱利用流路20は、小面積領域10a(10b又は10c)毎の排出口12a2に接続された排出管21と、複数の排出管21の下流側を合流するように接続して更に下流へ導く合流管22と、合流管22の下流側に接続された第一の貯溜部23と、第一の貯溜部23の吐出側に接続された利用側熱交換器24と、利用側熱交換器24の吐出側に接続された第二の貯溜部25と、第二の貯溜部25の吐出側に接続されたポンプ26と、ポンプ26の吐出側に接続された吐出管27と、吐出管27から分岐されてそれぞれ吸熱側熱交換器12の注入口12a1へ戻される戻り管28と、各戻り管28毎に設けられた流量制御弁29とを具備し、地上または地下に設けられる。
【0029】
第一の貯溜部23は、流体導入口と流体排出口を有するタンク状に構成され、合流管22から導入される熱媒体流体を一時貯溜した後、利用側熱交換器24へ流通される。
この第一の貯溜部23によれば、利用側熱交換器24へ流通する熱媒体流体の流量を略一定に維持することができる。
【0030】
利用側熱交換器24は、前記熱媒体流体を流通する一次側流路24aと、利用側流体を流通する二次側流路24bとをそれぞれ独立した流路として備え、前記熱媒体流体と前記利用側流体の熱交換を行う。この利用側熱交換器24には、例えば、周知のシェルアンドチューブ式熱交換器やプレート式熱交換器等を用いればよい。
【0031】
二次側流路24bを流れる利用側流体は、水やブライン等とすればよい。この利用側流体は、そのまま温水として用いたり、さらに加熱して給湯用給水として用いたり、他の利用側機器(例えば、図示しないヒートポンプ機器等)の熱源として用いたりすることが可能である。
また、前記利用側流体は、図示しない貯溜タンク等に蓄えておき、必要に応じて利用することも可能である。
【0032】
第二の貯溜部25は、流体導入口と流体排出口を有するタンク状に構成され、利用側熱交換器24側の配管から導入される熱媒体流体を一時貯溜した後、ポンプ26を介して吐出管27へ強制搬送する。
この第二の貯溜部25によれば、利用側熱交換器24によって熱交換された熱媒体流体を、略一定な流量に維持して吐出管27へ吐出して、複数の流量制御弁29へ分配することができる。
【0033】
流量制御弁29は、制御部30の制御信号に応じて各戻り管28の流路を開閉して、戻り管28を流れる熱媒体流体を100%流量又は0%流量にする電動開閉弁である。
なお、流量制御弁29の他例としては、制御部30の制御信号に応じて、戻り管28の流れる熱媒体流体の流量を連続的に調整する構成とすることも可能である。
【0034】
制御部30は、小面積領域10a,10b,10c毎に、温度検出器13による検出温度に応じて熱利用流路20を流れる熱媒体流体の流量を制御するものである。
【0035】
詳細に説明すれば、この制御部30は、マイコン回路やシーケンサ等によるプログラムドロジック回路、あるいは電子回路やリレー回路等によるワイヤ-ドロジック回路等によって構成され、小面積領域10a,10b,10c毎に、温度検出器13の検出温度に応じて前記熱媒体流体の流路を閉鎖又は開放する。
【0036】
一例としては、制御部30は、小面積領域10a,10b,10cのそれぞれについて、温度検出器13による検出温度が、予め設定された第一の温度以下になった際に流量制御弁29を閉にし、予め設定された第二の温度以上になった際に流量制御弁29を開にする。
ここで、前記第一の温度は、例えば、25~45℃の範囲内の特定の温度である。また、前記第二の温度は、前記第一の温度よりも高く、例えば、30~60℃の範囲内の特定の温度である。
【0037】
次に、上記構成の熱利用システムについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
例えば、日中、小面積領域10aが建物Xの影響により日陰となり、小面積領域10aの検出温度が、上記第一の温度以下となり、他の小面積領域10b,10cの検出温度が、上記第一の温度以上である場合、小面積領域10aに対応する流量制御弁29が閉になる。
このため、利用側熱交換器24を流れる熱媒体流体の温度が、比較的低温の小面積領域10aの影響で極端に下がるようなことがなく、利用側熱交換器24に安定した温度の熱媒体流体を流通させることができる。ひいては、利用側熱交換器24の利用側流体の温度を安定させることができる。
【0038】
すなわち、上記構成の熱利用システムによれば、位置や時間帯によって、小面積領域10a,10b,10cにおける日当たりが、それぞれ異なる場合でも、効率的に熱収集をすることができる。
例えば、二次側流路24bを流れる流体を水とし、この水を利用側熱交換器24により加熱した後に給湯器(図示せず)によってさらに加熱して用いるようにすれば、省エネな給湯システムを提供することができる。
【0039】
<変形例>
上記実施態様によれば、吸熱領域10により温熱を吸収するようにしたが、他例としては、吸熱領域10により冷熱を吸収し、この冷熱を利用側熱交換器24によって利用することも可能である。
すなわち、例えば、冬場であれば、冷え切った地熱(冷熱)を吸熱領域10により吸収することが可能である。
この場合、制御部30は、小面積領域10a,10b,10cのそれぞれについて、温度検出器13による検出温度が、予め設定された第一の温度以上になった際に流量制御弁29を閉にし、予め設定された第二の温度以下になった際に流量制御弁29を開にすればよい。
【0040】
また、上記実施態様によれば、吸熱領域10を熱吸収のために用いたが、他例としては、熱利用流路20を通過する前記熱媒体流体を加熱して、吸熱領域10を融雪領域として用いることも可能である。
この構成では、冬場に、利用側熱交換器24の二次側流路24bに、地下水によって加熱された熱媒体流体(ブライン等)を流通させる。二次側流路24bには、例えば、特許文献2に開示される地中熱利用装置の熱媒体搬送管を接続すればよい。
【0041】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、熱利用流路20中に第一の貯溜部23と第二の貯溜部25を設けたが、他例としては、これら貯溜部のうち、その一方又は双方を省くことも可能である。
【0042】
なお、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:吸熱領域
10a,10b,10c:小面積領域
11:吸熱媒体
12:吸熱側熱交換器
12a:熱交換流路
12a1:注入口
12a2:排出口
13:温度検出器
20:熱利用流路
23:第一の貯溜部
25:第二の貯溜部
24:利用側熱交換器
29:流量制御弁
30:制御部