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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/41 20060101AFI20230706BHJP
   F16C 33/44 20060101ALI20230706BHJP
   F16C 43/08 20060101ALI20230706BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C33/44
F16C43/08
F16C19/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018169499
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020041605
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鯉住 荘太
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-180630(JP,A)
【文献】実開昭54-165639(JP,U)
【文献】特開2009-243609(JP,A)
【文献】特開2017-194141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/38-33/44
F16C 43/06-43/08
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列のボールと、
環状に形成される基部と前記基部から周方向に一定の間隔で軸方向に延びる複数の柱部とを有し、隣り合う前記柱部と前記基部とによって、前記ボールの外周面に沿う曲面を有するポケットが形成され、前記ポケットに前記ボールを保持する樹脂製の保持器と、を具備する車輪用軸受装置であって、
前記柱部には、隣り合う柱部に向かって突出する一方の爪部と他方の爪部と、前記柱部のうち前記爪部よりも径方向内側で先端から基部に向かって切り欠かれた切り欠き部とが形成され、
前記柱部において、
前記切り欠き部に対して径方向内側に位置する内側柱の軸方向端面は、前記切り欠き部に対して径方向外側に位置する外側柱の軸方向端面に比べて、前記ボールの中心側にオフセットしており、
前記一方の爪部、及び前記他方の爪部は、前記外側柱の先端部に各々形成されており、
軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さと前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さとが異なる車輪用軸受装置。
【請求項2】
軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの長さが最短である部分と前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの長さが最短である部分とが、前記ボールの中心を中心とする前記ボールの直径の0.7倍以上1.0倍未満の直径である仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれる請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さと前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さとの合計が前記ボールの直径の0.7倍よりも大きく0.85倍以下である請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列のボールと、
環状に形成される基部と前記基部から周方向に一定の間隔でその軸方向に延びる複数の柱部とを有し、隣り合う前記柱部と前記基部とによって前記ボールの外周面に沿う曲面を有するポケットがそれぞれ形成され、前記ポケットに前記ボールを保持する樹脂製の保持器と、を具備する車輪用軸受装置であって、
前記保持器の前記柱部には、一方の隣り合う柱部に向かって突出する爪部と他方の隣り合う柱部に向かって切り欠かれた切欠き面と先端から基部に向かう切り欠き部とが形成され、
前記柱部において、
前記切り欠き部に対して径方向内側に位置する内側柱の軸方向端面は、前記切り欠き部に対して径方向外側に位置する外側柱の軸方向端面に比べて、前記ボールの中心側にオフセットしており、
前記爪部及び前記切欠き面は、前記外側柱の先端部に各々形成されており、
前記爪部の先端部が、軸方向視で、前記ボールの中心を中心とする所定半径の基準仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれる車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、複数の転動体(ここでは、ボール)を介してハブ輪を含む内方部材が外方部材に回転自在に支持されている。複数のボールは、保持器によって周方向に等配されるとともに、隣り合うボール同士の接触が防止された状態で保持されている。
【0003】
このような車輪用軸受装置において、隣り合うボール同士を仕切っている保持器の柱部の周方向の厚さを薄くするとともに、柱部に切り欠き部を形成してボールの個数を増やすことで、保持器を強度不足の問題ないものとしつつ、軸受寿命の増大を可能としたものが知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
特許文献1に記載の車輪用軸受装置には、樹脂製の保持器のうち柱部の周方向の厚さを薄くするとともに、隣り合うボール同士が最も近接している部分に切り欠き部が形成されている。つまり、隣り合うボール同士は、最も近接している部分に柱部が介在していない。これにより、車輪用軸受装置は、ボールのピッチ円直径を大きくすることなくボールの個数を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-180630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の保持器では、隣り合うボール間の距離を近づけるために、柱部の周方向の厚さが薄くなっている。このため、保持器にボールを組み込む際に、ボールの組み込み性が低下する場合があった。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ボール個数を増大しつつ、保持器へのボールの組み込み性を向上することができる車輪用軸受装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列のボールと、環状に形成される基部と前記基部から周方向に一定の間隔でその軸方向に延びる複数の柱部とを有し、隣り合う前記柱部と前記基部とによって前記ボールの外周面に沿う曲面を有するポケットがそれぞれ形成され、前記ポケットに前記ボールを保持する樹脂製の保持器と、を具備する車輪用軸受装置であって、前記保持器の前記柱部には、隣り合う柱部に向かって突出する一方の爪部と他方の爪部と前記柱部の先端から基部に向かう切り欠き部とが形成され、軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さと前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さとが異なるものである。
【0009】
第二の発明は、軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの長さが最短である部分と前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの長さが最短である部分とが、前記ボールの中心を中心とする前記ボールの直径の0.7倍以上1.0倍未満の直径である仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれるものである。
【0010】
第三の発明は、軸方向視で、前記一方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さと前記他方の爪部のうち前記ボールの中心までの最短長さとの合計が前記ボールの直径の0.7倍よりも大きく0.85倍以下であるものである。
【0011】
第四の発明は、内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列のボールと、環状に形成される基部と前記基部から周方向に一定の間隔でその軸方向に延びる複数の柱部とを有し、隣り合う前記柱部と前記基部とによって前記ボールの外周面に沿う曲面を有するポケットがそれぞれ形成され、前記ポケットに前記ボールを保持する樹脂製の保持器と、を具備する車輪用軸受装置であって、前記保持器の前記柱部には、一方の隣り合う柱部に向かって突出する爪部と先端から基部に向かう切り欠き部とが形成され、前記爪部の先端部が、軸方向視で、前記ボールの中心を中心とする所定半径の基準仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
即ち、第一の発明によれば、保持器の柱部に隣り合うボールを近接させるための切り欠き部が形成されているため、保持可能なボールの個数が増加する。また、軸方向視でボールを保持している二つの爪部とボールとの重複している領域が互いに異なるので、各爪部とボールとが接触するタイミングにずれが生じて柱部が変形し易い周方向に弾性変形される。これにより、車輪用軸受装置は、保持器に組む込むボール個数を増大しつつ、ボールの組み込み性を向上することができる。
【0014】
第二の発明によれば、保持器の軸方向視で保持器の一方の爪部および他方の爪部とボールとの重複している領域の上限が定められているので、保持器の軸方向に沿って複数のボールを保持器のポケットに挿入する際における保持器の柱部の変形量が制限される。これにより、車輪用軸受装置は、ボール個数を増大しつつ、保持器へのボールの組み込み性を向上することができる。
【0015】
第三の発明によれば、軸方向視で保持器の一方の爪部とボールとが重複している領域と他方の爪部とボールとが重複している領域との合計が一定の範囲内なので、保持力を維持しつつ保持器の軸方向に沿って複数のボールを保持器のポケットに挿入する際における保持器の柱部の変形量が制限される。これにより、車輪用軸受装置は、ボール個数を増大しつつ、保持器へのボールの組み込み性を向上することができる。
【0016】
第四の発明によれば、柱部の周方向一側にしか爪部がないので、ボールを保持器のポケットに挿入する際に柱部が変形し易い周方向に弾性変形される。これにより、車輪用軸受装置は、ボール個数を増大しつつ、保持器へのボールの組み込み性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車輪用軸受装置の第一実施形態における全体構成を示す断面図。
図2】車輪用軸受装置の第一実施形態におけるボールと保持器の構成を示す拡大段面図。
図3】車輪用軸受装置の第一実施形態における保持器の全体構成を示す斜視図。
図4】車輪用軸受装置の第一実施形態における保持器の全体構成を示す平面図。
図5図5は保持器の部分拡大平面図を示す。(A)は、車輪用軸受装置の第一実施形態における保持器の爪部とボールとの関係を示す部分拡大平面図、(B)は同じく保持器の切り欠き部を示す部分拡大断面図を示す。
図6図6は保持器とボールの部分拡大平面図を示す。(A)は、車輪用軸受装置の第一実施形態におけるボールの組み込み前の保持器とボールとの関係を示す部分拡大平面図、(B)は同じくボールの組み込み前の保持器とボールとの関係を示す部分拡大側面図を示す。
図7図7はボールが組み込まれる際の保持器を示す。(A)は車輪用軸受装置の第一実施形態における保持器の長爪部にボールが接触した状態を示す部分拡大平面図、(B)は同じく保持器の長爪部をボールが押圧している状態を示す部分拡大平面図、(C)は同じく保持器の長爪部と短爪部とをボールが押圧している状態を示す部分拡大平面図。
図8図8はボールが組み込まれる際の保持器を示す。(A)は車輪用軸受装置の第二実施形態における保持器の長爪部にボールが接触した状態を示す部分拡大平面図、(B)は同じく保持器の長爪部をボールが押圧している状態を示す部分拡大平面図、(C)は同じく保持器の長爪部と短爪部とをボールが押圧している状態を示す部分拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図1図2を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する
【0019】
図1に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側ボール列5、アウター側ボール列6、シール部材であるインナー側シール部材9、シール部材であるアウター側シール部材10を具備する。ここで、本明細書において、インナー側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、車輪用軸受装置1の回転軸と平行な方向を「軸方向」、車輪用軸受装置1の回転軸に直交する方向を「径方向」、車輪用軸受装置1の回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と表す。
【0020】
外輪2は、インナー側ボール列5およびアウター側ボール列6を介してハブ輪3と内輪4を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材9が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材10が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
【0021】
外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが設けられている。外輪2の外周面には、懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
【0022】
ハブ輪3は、車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、円柱状に形成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが挿通されている。また、ハブ輪3は、アウター側の内側軌道面3cが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が嵌合されている。
【0023】
内輪4は、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とに予圧を与えるものである。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、かしめによりハブ輪3のインナー側端部に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。内輪4は、その内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向するように配置されている。
【0024】
インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、転動体である複数のボール8が樹脂製の保持器7によって環状に保持されている。インナー側ボール列5は、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列6は、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。
【0025】
保持器7は、ボール8を保持するものである。保持器7は、耐油性、耐摩耗性、潤滑性に優れた合成樹脂であるポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等から構成されている。また、補強材として、樹脂の中にグラスファイバまたはカーボンファイバ等が含まれていてもよい。
【0026】
図2に示すように、保持器7は、環状の基部7aと、複数の柱部7bとを有している。柱部7bは、基部7aから軸方向に突出している。複数の柱部7bは、基部7aの周方向に沿って等間隔に配置されている。保持器7には、ボール8を独立して保持するポケットPtが隣り合う柱部7bの間に等間隔で形成されている(図3参照)。
【0027】
ボール8は、高炭素クロム軸受鋼SUJ2からなる鋼球等から構成されている。複数のボール8は、保持器7のポケットPtに回転自在に保持されている。
【0028】
インナー側シール部材9は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材9は、例えば二枚のシールリップを接触させる2サイドリップタイプのパックシールから構成されている。インナー側シール部材9は、略円筒状のシール板と略円筒状のスリンガとを具備する。
【0029】
アウター側シール部材10は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材10は、シール板と同じ材質の鋼板を略円筒状に形成された芯金に例えばNBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数のシールリップが固着されている。
【0030】
以下に、図2から図5を用いて、保持器7について詳細に説明する。図2に示すように、基部7aは、ボール8のピッチ円PCDよりも内径側に位置している。本実施形態では、基部7aの全体がピッチ円PCDよりも内径側に位置しているが、基部7aの一部がピッチ円PCDよりも外径側に位置していてもよい。なお、図2において、DPCDが、ボール8のピッチ円PCDを示している。
【0031】
柱部7bの内径面は、軸方向に延びている。柱部7bの外径面は、基部7aの先端から当該基部7aの外周面よりも径方向外側に離れるように傾斜して延びる第1部分7qと、第1部分7qから軸方向に水平に延びる第2部分7rとを有している。つまり、柱部7bは、基部7aから先端に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる第1部分7qを有している。柱部7bの外径面(後述する外側柱7j)は、柱部7bの内径面(後述する内側柱7k)よりも軸方向外側に突出している。
【0032】
図3図4とに示すように、隣り合う柱部7bの対向する側面の基部7a側と、その間の基部7aとから構成される部分には、中心が所定位置P(図2参照)に配置されたボール8の外周面に沿う凹曲面7cが基部7aを底部とする略半球状に形成されている。さらに、柱部7bには、半球状の凹曲面7cの縁から柱部7bの先端に向かって軸方向にストレートに延びる案内面7dが形成されている。案内面7dは、ボール8を柱部7bの先端から凹曲面7cに囲まれた空間に導くように構成されている。これにより、保持器7には、隣り合う柱部7bの間に凹曲面7cと案内面7dとからボール8を保持するポケットPtが等間隔に形成されている。
【0033】
図4に示すように、ボール8が柱部7bの内面に接することで、ピッチ円PCD上における隣り合うボール8間の最小間隔が規制される。柱部7bの厚さは、ピッチ円PCD上で最も薄く、それよりも内径側および外径側に離れるにしたがい、次第に厚くなる。
【0034】
柱部7bの凹曲面7cおよび案内面7d(図3参照)は、軸方向視で柱部7bの径方向幅の略中央部分を底として湾曲している。隣り合う柱部7b同士の間隔は、径方向内側端同士の間隔Wiと径方向外側端同士の間隔Woとが径方向略中央同士の間隔Wcよりも小さくなるように形成されている。これにより、柱部7bは、ポケットPtの内部に配置されているボール8の径方向内側および径方向外側への移動を規制している。柱部7bの先端部分には、周方向一側の隣接する柱部7bに向かって突出している一方の爪部である長爪部7eと、周方向他側の隣接する柱部7bに向かって突出している他方の爪部である短爪部7gとが形成されている。つまり、柱部7bの先端部分には、周方向一側と周方向他側にそれぞれ突出している長爪部7eと短爪部7gとが形成されている。
【0035】
図5(A)に示すように、長爪部7eと短爪部7gとの先端部は、軸方向視で、所定位置Pを中心とする直径D1の基準仮想円C1と直径D0のボール8の外周円C0とに囲まれた径方向幅R1の円環状の範囲(薄墨部分)に含まれるように形成されている。基準仮想円C1はボール8の外周円C0と同心であり、基準仮想円C1の直径D1は外周円C0の直径D0よりも小さい。具体的には、基準仮想円C1の直径D1は、ボール8の直径D0の0.7倍以上、1.0倍未満に設定されている。
【0036】
長爪部7eと短爪部7gとのポケットPt側(径方向内側)の先端部は、径方向幅R1の範囲に含まれるように面取り状に切欠かれている。長爪部7eの先端部には、軸方向視で、直径D1の基準仮想円C1よりも大きく、直径D0のボール8の外周円C0よりも小さい任意の直径Daの仮想円Caに沿った円弧面である長爪誘導面7fが形成されている。長爪誘導面7fは、長爪部7eにおいてボール8の中心に最も近接している部分である。つまり、ボール8の中心までの長さが最短である部分である。短爪部7gの先端部には、軸方向視で、直径Daの仮想円Caよりも大きく、直径D0のボール8の外周円C0よりも小さい任意の直径Dbの仮想円Cbに沿った円弧面である短爪誘導面7hが形成されている。短爪誘導面7hは、短爪部7gにおいてボール8の中心に最も近接している部分である。つまり、ボール8の中心までの長さが最短である部分である。
【0037】
長爪誘導面7fは、軸方向視で、ボール8の中心(所定位置P)から仮想円Caの直径Da/2(仮想円Caの半径)だけ離れた位置に設けられている。短爪誘導面7hは、軸方向視で、ボール8の中心にから仮想円Cbの直径Db/2(仮想円Cbの半径)だけ離れた位置に設けられている。つまり、長爪部7eと短爪部7gとは、軸方向視で、それぞれボール8の中心に最も近接している部分からボール8の中心までの長さ(ボール8の中心までの最短長さ)が異なる。また、長爪部7eと短爪部7gとは、軸方向視で、ボール8の中心から長爪誘導面7fまでの長さとボール8の中心から短爪誘導面7hまでの長さの合計がボール8の直径D0の0.7倍よりも大きく0.85倍以下になるように構成されている。(※基準仮想円C1の範囲から算出しました。)なお、長爪部7eまたは短爪部7gが軸方向視でボール8と重複していない場合、ボール8の中心までの長さは、直径D0/2(外周円C0の半径)とする。
【0038】
長爪部7eと短爪部7gとの先端部は、中心が所定位置Pに配置されたボール8の外周面に接触するように構成されている。これにより、ポケットPt内に配置されているボール8の軸方向への移動が規制されている。なお、長爪誘導面7fと短爪誘導面7hは、仮想円Caに沿う曲面に形成されているが、仮想円Caに近似する面でもよい。
【0039】
長爪部7eにおいて、ボール8の外周円C0から長爪誘導面7f(仮想円Ca)までの部分が、軸方向視で、ボール8と重複する領域(濃い薄墨部分参照)である。同様に、短爪部7gにおいて、ボール8の外周円C0から短爪誘導面7h(仮想円Cb)までの部分が、軸方向視で、ボール8と重複する領域(濃い薄墨部分参照)である。長爪誘導面7fは、軸方向視で、短爪誘導面7hよりもボール8の中心に近接している。つまり、長爪部7eが軸方向視でボール8と重複する領域は、短爪部7gが軸方向視でボール8と重複する領域よりも大きい。また、長爪部7eと短爪部7gとは、それぞれが軸方向視でボール8と重複する領域の大きさの合計値が一定の範囲に含まれるように形成されている。これにより、長爪部7eと短爪部7gとは、軸方向視でボール8との重複する領域の大きさの上限と下限が互いの形状に関連して決定される。
【0040】
図5(B)に示すように、柱部7bの径方向幅の略中央部分には、先端から基部7a側に向かって径方向幅W、軸方向長さLのスリット部7iαと半径Rの曲面部7iβとを有する切り欠き部7iが形成されている。切り欠き部7i(曲面部7iβ)の底部は、所定位置Pよりも基部7a側に設けられている。つまり、切り欠き部7iは、所定位置Pを含むように形成されている。このように、保持器7は、隣接するボール8同士の距離が最も短くなる所定位置Pにおいて、切り欠き部7iの底部が所定位置Pよりも基部7a側に設けられていることで、ボール8の間隔が小さくなり、保持するボール8の個数を増やすことができる。
【0041】
曲面部7iβは、スリット部7iαの終端部に設けられている。柱部7bは、切り欠き部7iによって径方向外側部分の柱(以下、単に「外側柱7j」と記す)と径方向内側部分の柱(以下、単に「内側柱7k」と記す)とに分岐される。外側柱7jの先端部には、周方向一側に長爪部7eが形成され、周方向他側に短爪部7gが形成されている。切り欠き部7iは、凹曲面7cおよび案内面7dによって柱部7bの厚さが最も薄くなる径方向略中央部分を中心に必要な強度を有していない部分を除去するように形成されている。これにより、保持器7は、ピッチ円PCD上でボール8の間隔を小さくして保持するボール8の数を増やしても、柱部7bの強度を確保することができる。
【0042】
また、切り欠き部7iの径方向幅の範囲内にボール8の中心(所定位置P)が設けられている。本実施形態では、ボール8の中心が切り欠き部7iの径方向幅中央よりも外径側に設けられている。切り欠き部7iの半径Rは、ボール8の直径D0に対して0.05倍よりも大きく0.3倍よりも小さくなるように設定されている(0.05<R/D0<0.3)。半径Rがボール8の直径D0の0.05倍を下回るとボール8の保持器7への組み込み性が悪くなる。半径Rがボール8の直径D0の0.3倍を上回ると保持器7の剛性が低下する。
【0043】
また、切り欠き部7iの径方向幅Wは、ボール8の直径D0に対して0.2倍よりも大きく0.5倍よりも小さくなるように設定されている(0.2<W/D0<0.5)。径方向幅Wがボール8の直径D0の0.2倍を下回るとボール8を組み込むことができない。径方向幅Wがボール8の直径D0の0.5倍を上回ると柱部7bが無い形状になり、ボール8を保持できない。このように、保持器7は、隣り合うボール8がピッチ円PCD上で非接触の状態で対向するように保持している。
【0044】
このように形成されている保持器7とボール8とからインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とを構成することで、車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3および内輪4との相対位置の精度が向上し、全ての径方向において等しい荷重を受けることができる。また、同一のピッチ円PCDにおけるボール8の保持個数が増大するので、個々のボール8に負荷される軸受荷重が低減され、車輪用軸受装置1の寿命向上、ひいては車輪用軸受装置1の軽量化、小型化が可能となる。また、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、各ボール8が保持器7のポケットPtによって独立して支持されているので、ボール8同士の接触による摩耗および接触音が生じることがない。
【0045】
図2及び図5(B)に示すように、内側柱7kの軸方向端面S1は、外側柱7jの軸方向端面S2よりもボール8の中心(所定位置P)側にオフセットしている。なお、内側柱7kの軸方向端面S1は、ボール8の中心よりも軸方向外側に設けられている。仮想円Caは、隣り合う内側柱7kと長爪部7eとをボール8が同時に接触する点を通ることで規定されている。また、仮想円Cbは、隣り合う内側柱7kと短爪部7gとをボール8が同時に接触する点を通ることで規定されている。
【0046】
保持器7は、内側柱7kが外側柱7jの軸方向端面S2よりもボール8の中心側にオフセットしているので、仮想円Caの直径Daおよび仮想円Cbの直径Dbを外側柱7jと内側柱7kとのの軸方向端面の位置が一致している場合よりも大きくすることができる。仮想円Caと仮想円Cbとは、内側柱7kの軸方向位置を調整することで、径方向幅R1の範囲(ボール8の直径D0の0.7倍以上1倍未満)に含まれている状態で長爪部7eと短爪部7gとの先端部の設計自由度を向上することができる。
【0047】
以下に、図6図7とを用いて、保持器7にボール8が組み込まれる際の保持器7の変形状態を説明する。なお、ボール8は、図示しないボール挿入具等によって軸方向にのみ移動されるものとする。
【0048】
図6(A)に示すように、保持器7のポケットPtにボール8を組み込む場合、ボール8は、中心が所定位置Pと軸方向視で重複している状態で保持器7の柱部7bの先端側から軸方向に沿って基部7a側に向けて挿入される(図6(B)の黒塗矢印参照)。
【0049】
図6(B)に示すように、始めに、ボール8の外周面には、各外側柱7jの周方向一側に形成されている長爪部7eの長爪誘導面7fが接触する。各長爪誘導面7fは、軸方向視でボール8の直径D0の0.8倍以上1倍未満の径方向幅R1(図5参照)に設定されている任意の直径Daの仮想円Caと重複する位置で接触している。一方、各外側柱7jの周方向他側に形成されている短爪部7gの短爪誘導面7hは、軸方向視で仮想円Caよりも大きい仮想円Cbと重複する位置に配置されているので、ボール8の外周面に接触していない。
【0050】
図7(A)に示すように、長爪部7eには、ボール8の中心と外周面での接触位置とを結ぶ方向の一側外力Fa(薄い薄墨矢印)がボール8から加わる。すなわち、外側柱7jには、一側外力Faの分力として径方向外側に向かう径方向分力Fa1と周方向他側に向かう周方向分力Fa2とが同時に加わる。一方、短爪誘導面7hは、ボール8の外周面に接触していないので力が加わらない(図6(B)参照)。
【0051】
図7(B)に示すように、ボール8が基部7a側に移動されると、長爪部7eは、軸方向視でボール8の外周円C0に向かってボール8の外周面上を摺動される。この際、各外側柱7jは、長爪部7eに加わる一側外力Faによって、短爪誘導面7hが他側のボール8の外周面に接触するまで径方向外側と周方向他側とに押し広げられる。つまり、各外側柱7jは、長爪部7eと短爪部7gとがボール8に同時に接触しないため変形し易い周方向に弾性変形される。
【0052】
図7(C)に示すように、短爪誘導面7hがボール8の外周面に接触すると、短爪部7gには、ボール8の中心と外周面での接触位置とを結ぶ方向の他側外力Fb(薄い薄墨矢印)がボール8から加わる。この結果、外側柱7jには、一側外力Faと他側外力Fbとが合成されて径方向外側に向かう合力Fr(濃い薄墨矢印)が加わる。
【0053】
ボール8がさらに基部7a側に移動されると、長爪部7eと短爪部7gは、軸方向視でボール8の外周円C0に向かってボール8の外周面上を摺動される。この際、外側柱7jは、長爪誘導面7fと短爪誘導面7hとが外周円C0に到達するまで径方向外側に向かって押し広げられる。このようにして、外側柱7jは、周方向他側に向かう弾性変形と径方向外側に向かう弾性変形によって最大でボール8の直径D0の約0.15倍分(任意の直径Daの仮想円Caの半径相当分)だけ弾性変形される。外側柱7jは、その形状から周方向の剛性が径方向の剛性よりも低いので、周方向の弾性変形が含まれることで長爪誘導面7fと短爪誘導面7hとが外周円C0に到達するまでに必要な力とが抑制される。
【0054】
柱部7bには、径方向外側への変形による応力と周方向他側への変形による応力とがそれぞれ発生している。この際、柱部7bに発生している応力は、長爪部7eおよび切り欠き部7iの形状が制限されているため、保持器7の材質の特性から定めた許容限度応力未満に抑制されている。
【0055】
ボール8が柱部7bの案内面7dに到達すると、長爪部7eと短爪部7gとは、外側柱7jの弾性力によって軸方向視でボール8の外周円C0から径方向内側に向かってボール8の外周面上を摺動する。ボール8は、案内面7dに沿って軸方向に移動され、凹曲面7cに到達する。長爪部7eと短爪部7gとは、軸方向視で任意の直径Daの仮想円Caと仮想円Cbとに重複する位置で停止する。ボール8は、凹曲面7cと案内面7dとによって径方向外側および径方向内側への移動が規制されるとともに、長爪部7eと短爪部7gとによって軸方向への移動が規制される。これにより、ボール8は、保持器7によって等間隔に保持される。
【0056】
このように構成することにより、保持器7は、長爪部7eと短爪部7gとにボール8が同時に接触しないため、各外側柱7jが変形し易い周方向に弾性変形される。つまり、外側柱7jは、変形し易い周方向の弾性変形が含まれることで長爪誘導面7fと短爪誘導面7hとが外周円C0に到達するまでに必要な力が抑制される。さらに、保持器7は、軸方向視で長爪部7eと短爪部7gのボール8との重複する領域の大きさの上限が互いの形状に関連して決定されるので、外側柱7jの変形量が一定の範囲に制限される。これにより、車輪用軸受装置は、ボール8の保持個数を増大しつつ、ボール8の保持力を維持し、保持器7へのボール8の組み込み性を向上することができる。
【0057】
次に、図8を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置1の第二実施形態について説明する。なお、以下の実施形態に係る車輪用軸受装置1は、図1から図7に示す車輪用軸受装置1において、車輪用軸受装置1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の各実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0058】
図8(A)に示すように、車輪用軸受装置1が具備する保持器7の外側柱7jの先端部分には、隣接する周方向一側の柱部7bに向かって周方向に突出する爪部7mが形成され、周方向他側に切欠き面7pが形成されている。つまり、外側柱7jには、周方向一側のみに爪部7mが形成され、周方向他側に爪部が形成されていない。爪部7mの先端部は、軸方向視で、所定位置Pを中心とする直径D1の基準仮想円C1と直径D0のボール8の外周円C0とに囲まれた径方向幅R1の円環状の範囲に含まれるように形成されている(図5(A)参照)。基準仮想円C1の直径D1は、ボール8の直径D0の0.7倍以上、1.0倍未満に設定されている。
【0059】
爪部7mのポケットPt側の先端部は、径方向幅R1の範囲に含まれるように面取り状に切欠かれている。爪部の先端部には、軸方向視で、直径D1の基準仮想円C1よりも大きく、直径D0のボール8の外周円C0よりも小さい任意の直径Daの仮想円Caに沿った円弧面である誘導面7nが形成されている。誘導面7nは、爪部7mにおいてボール8の中心に最も近接している部分である。つまり、ボール8の中心までの長さが最短である部分である。
【0060】
以下に、保持器7にボール8が組み込まれる際の保持器7の変形状態を説明する。なお、ボール8は、図示しないボール挿入具等によって軸方向にのみ移動されるものとする。
【0061】
図8(B)に示すように、ボール8の外周面には、各外側柱7jの爪部7mの誘導面7nが接触する。各誘導面7nは、任意の直径Daの仮想円Caと重複する位置で接触している。爪部7mには、ボール8の中心と外周面での接触位置とを結ぶ方向の一側外力Fa(薄い薄墨矢印)がボール8から加わる。すなわち、外側柱7jには、一側外力Faの分力として径方向外側に向かう径方向分力Fa1と周方向他側に向かう周方向分力Fa2が同時に加わる。
【0062】
図8(C)に示すように、ボール8が基部7a側に移動されると、爪部7mは、軸方向視でボール8の外周円C0に向かってボール8の外周面上を摺動される。この際、各外側柱7jは、爪部7mに加わる一側外力Faによって、径方向外側と周方向他側とに押し広げられる。つまり、各外側柱7jは、周方向他側に爪部が形成されていないため変形し易い周方向に弾性変形される。
【0063】
ボール8が柱部7bの案内面7dに到達すると、爪部7mは、外側柱7jの弾性力によって軸方向視でボール8の外周円C0から径方向内側に向かってボール8の外周面上を摺動する。ボール8は、案内面7dに沿って軸方向に移動され、凹曲面7cに到達する。爪部7mは、軸方向視で任意の直径Daの仮想円Caと仮想円Cbとに重複する位置で停止する。
【0064】
このように構成することにより、保持器7は、外側柱7jの周方向一側に形成されている爪部7mのみがボール8に接触しているため各外側柱7jが変形し易い周方向に弾性変形される。つまり、外側柱7jは、誘導面7nが外周円C0に到達するまでに必要な力が抑制される。これにより、車輪用軸受装置は、ボール8の保持個数を増大しつつ、ボール8の保持力を維持し、保持器7へのボール8の組み込み性を向上することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。また、本実施形態において、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に内側軌道面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置として構成されているがこれに限定するものではなく、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された第2世代構造、または、ナックルとハブ輪との間に複列のアンギュラ玉軸受を嵌合させた第1世代構造であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車輪用軸受装置
2 外輪
3 ハブ輪
4 内輪
7 保持器
7a 基部
7b 柱部
7e 長爪部
7g 短爪部
7i 切り欠き部
8 ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8