(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】粉塵回収装置および粉塵回収方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/40 20060101AFI20230706BHJP
B03C 3/019 20060101ALI20230706BHJP
B03C 3/155 20060101ALI20230706BHJP
B03C 3/76 20060101ALI20230706BHJP
B03C 3/88 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B03C3/40 A
B03C3/019
B03C3/155 A
B03C3/76
B03C3/88
(21)【出願番号】P 2018229477
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰稔
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 崇
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185794(JP,A)
【文献】特開平07-088397(JP,A)
【文献】特開平10-277432(JP,A)
【文献】特開2002-011453(JP,A)
【文献】特開2008-055348(JP,A)
【文献】特開2012-245498(JP,A)
【文献】特表2008-523978(JP,A)
【文献】特開平03-258358(JP,A)
【文献】特開2002-331519(JP,A)
【文献】特開平11-179234(JP,A)
【文献】特開昭63-221823(JP,A)
【文献】特開昭60-179158(JP,A)
【文献】特開平10-138083(JP,A)
【文献】中国実用新案第207655316(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107971138(CN,A)
【文献】中国実用新案第204107675(CN,U)
【文献】特開2008-23309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-3/88
G21F 9/02
A47L 9/10
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を解体する解体処理で生じる粉塵を回収する粉塵回収装置であって、
前記解体処理を行う処理空間内
を水平方向に沿って吸引口から排出口に流れる気体から前記粉塵を回収する電気集塵機と、
前記電気集塵機から排気された気体の前記粉塵を回収するHEPAフィルタと、を備え、
前記電気集塵機は、
前記処理空間内気体の流れに沿って配置された複数の集塵電極と、前記集塵電極から剥離した前記粉塵を受容する受容部と、前記受容部に着脱自在に連結されて前記受容部からの粉塵を収容する収容容器と、前記受容部と前記収容容器との間に設けられた開閉弁とを有する回収部をさらに備え、
隣接する一対の前記集塵電極が、
前記気体の吸引口側から
前記気体の排出口側に向かうにつれて、互いに接近するように配置されていることを特徴とする粉塵回収装置。
【請求項2】
前記電気集塵機は、吸引口側において隣接する集塵電極間の最短距離が排気口側において隣接する集塵電極間の最短距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の粉塵回収装置。
【請求項3】
前記吸引口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、50[mm]以上200[mm]以下であり、
前記排気口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、30[mm]以上100[mm]以下であることを特徴とする請求項2に記載の粉塵回収装置。
【請求項4】
前記吸引口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、50[mm]以上100[mm]以下であり、
前記排気口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、30[mm]以上50[mm]以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の粉塵回収装置。
【請求項5】
前記構造物は、放射性物質に汚染された部材であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の粉塵回収装置。
【請求項6】
前記解体処理は、レーザー切断装置により前記構造物を切断する処理であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の粉塵回収装置。
【請求項7】
前記開閉弁は、複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の粉塵回収装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の粉塵回収装置を用いて前記電気集塵機から前記粉塵を回収する粉塵回収方法であって、
所定運転時間にわたって前記電気集塵機による前記粉塵の回収を行い、前記電気集塵機の運転を停止させた後、吸引口および排気口を閉鎖すると共に前記開閉弁を開とした状態で、集塵電極に振動を加えて前記集塵電極に付着した前記粉塵を剥離させ、所定時間にわたって前記粉塵を前記受容部から前記収容容器へと自然沈降させることを特徴とする粉塵回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵回収装置および粉塵回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所で発生するオフガスの処理として、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタによる放射性物質の粒子除去を行うことで、放射性物質の系外拡散を防止している。発電所の通常運転時には、空気中にある粉塵の量が少なく、HEPAフィルタの閉塞は起こりにくい。一方で、建屋や構造物を切断等により解体する際には、大量の粉塵が発生し、粉塵を含んだ気体がオフガス系へと排出されることで、HEPAフィルタの閉塞が発生しやすい。また、汚染された構造物から生じ、放射性物質が付着した粉塵であるため、HEPAフィルタの線量が高くなりやすい。そのため、人が近づける線量範囲でHEPAフィルタの頻繁な交換作業が必要となり、また、使用済みのHEPAフィルタが二次廃棄物として増加してしまう。したがって、HEPAフィルタの交換頻度を低減させるため、HEPAフィルタの閉塞を抑制することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、放射性コンクリートを切断、破砕作業した際に生じる粉塵を回収する粉塵回収装置が記載されている。この粉塵回収装置では、作業を行う領域を覆うバリア部の内部の気体を吸引し、HEPAフィルタの前段にバグフィルタおよびプレフィルタを配置することで、複数のフィルタに粉塵を含む気体を通過させて、粉塵を効率良く捕集させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バグフィルタは圧損が大きく、バグフィルタ交換初期における粉塵除去効率が低い。また、バグフィルタで捕集した粉塵を気体で払い落とすときに、粉塵が系外に飛散する可能性がある。その他の粉塵除去のための装置としては、スクラバーやサイクロンを設けることが考えられる。ただし、スクラバーを用いた場合、スクラバーで発生する水滴(ミスト)が後段のHEPAフィルタに流入することで、HEPAフィルタの性能低下を招く可能性がある。また、サイクロンは、比較的に大きな粒子を除去することができるものの、構造物の解体処理で発生する細かい粒子を除去する目的での使用に好適とはいえない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造物の解体処理で発生する粉塵を、より適正に回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、構造物を解体する解体処理で生じる粉塵を回収する粉塵回収装置であって、前記解体処理を行う処理空間内の気体から前記粉塵を回収する電気集塵機と、前記電気集塵機から排気された気体の前記粉塵を回収するHEPAフィルタと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成により、HEPAフィルタの前段に配置された電気集塵機により、構造物の解体処理で生じた粉塵を良好に回収することができる。その結果、HEPAフィルタの閉塞を抑制し、HEPAフィルタの交換頻度の低減および二次廃棄物の増加の抑制を図ることが可能となる。したがって、本発明によれば、構造物の解体処理で発生する粉塵を、より適正に回収することができる。
【0009】
また、前記電気集塵機は、吸引口側において隣接する集塵電極間の最短距離が、排気口側において隣接する集塵電極間の最短距離よりも大きいことが好ましい。
【0010】
この構成により、排気口側に比べて粉塵を捕集する量が多くなる吸引口側において、隣接する集塵電極間に粉塵が詰まることを抑制することができる。つまり、隣接する集塵電極間の最短距離が粉塵によって小さくなることに起因して、集塵電極間に所定の電圧を印加できなくなることを抑制することができる。したがって、連続的な運転で電気集塵機の性能が低下することを抑制し、したがって、電気集塵機を含む粉塵回収装置の連続運転時間を十分に確保することが可能となる。一方で、比較的に粉塵の量が少なくなる排気口側では、隣接する集塵電極間を小さくしても粉塵が詰まりづらく、かつ、吸引口側で捕集しきれなかった粉塵を、より確実に捕集することができる。
【0011】
また、前記吸引口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、50[mm]以上200[mm]以下であり、前記排気口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、30[mm]以上100[mm]以下であることが好ましい。また、前記吸引口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、50[mm]以上100[mm]以下であり、前記排気口側において隣接する前記集塵電極間の最短距離は、30[mm]以上50[mm]以下であることが、より好ましい。
【0012】
この構成により、吸引口側および排気口側において、隣接する集塵電極間の最短距離を適切な範囲内とし、粉塵の十分な捕集と、粉塵による集塵電極間の目詰まりの抑制との両立を図ることができる。また、集塵電極の最短距離を適切な範囲内とすることで、電気集塵機の大型化を抑制することができる。
【0013】
また、前記構造物は、放射性物質に汚染された部材であっても対応可能である。
【0014】
この構成により、構造物の解体により生じた放射性物質を含む粉塵を、より適正に回収することができる。
【0015】
また、前記解体処理は、レーザー切断装置により前記構造物を切断する処理であっても対応可能である。
【0016】
この構成により、レーザー切断装置による構造物の切断で生じた粉塵を、より適正に回収することができる。
【0017】
また、前記電気集塵機は、集塵電極から剥離した前記粉塵を受容する受容部と、前記受容部に着脱自在に連結されて前記受容部からの粉塵を収容する収容容器と、前記受容部と前記収容容器との間に設けられた開閉弁と、を有する回収部をさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成により、集塵電極で捕集した粉塵を、回収部の受容部から収容容器へと回収させ、粉塵が再飛散することを抑制することができる。また、収容容器を受容部に着脱自在に連結することで、収容容器ごと粉塵を容易に回収することが可能となる。
【0019】
また、前記開閉弁は、複数設けられることが好ましい。
【0020】
この構成により、複数の開閉弁により、粉塵回収装置の系統内から粉塵が漏れ出すことを、より適正に抑制することができる。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、上記粉塵回収装置を用いて前記電気集塵機から前記粉塵を回収する粉塵回収方法であって、所定運転時間にわたって前記電気集塵機による前記粉塵の回収を行い、前記電気集塵機の運転を停止させた後、吸引口および排気口を閉鎖すると共に前記開閉弁を開とした状態で、集塵電極に振動を加えて前記集塵電極に付着した前記粉塵を剥離させ、所定時間にわたって前記粉塵を前記受容部から前記収容容器へと自然沈降させることを特徴とする。
【0022】
この構成により、所定運転時間にわたって電気集塵機により粉塵を回収した後、電気集塵機の運転を停止させている時間帯に、集塵電極に付着した粉塵を振動により剥離させると共に、所定時間にわたって自然沈降させて収容容器に回収させる回収作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる粉塵回収装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる粉塵回収装置による粉塵の回収手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる電気集塵機による消費電力と捕集効率との関係の一例を示す解析結果である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる電気集塵機の変形例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる電気集塵機の他の変形例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる電気集塵機のさらなる他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる粉塵回収装置および粉塵回収方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は、実施形態にかかる粉塵回収装置の構成を模式的に示す説明図である。実施形態にかかる粉塵回収装置100は、例えば原子力発電所といったプラント施設において、建屋や構造物を解体する解体処理で生じる粉塵を回収する装置である。本実施形態において、粉塵回収装置100は、プラント施設のオフガスを排出するオフガス系統の一部としても利用される。
【0026】
本実施形態において、解体処理の対象となる構造物は、例えばコンクリートにより形成される壁面1である。壁面1は、例えば原子炉建屋に使用される鉄筋コンクリート壁である。原子炉建屋に使用される壁面1は、放射性物質に汚染され、壁面1の解体に伴って生じる粉塵には放射性物質が含まれる可能性がある。粉塵回収装置100は、
図1に示すように、構造物の解体処理を行う処理空間2内の気体を吸引し、気体に含まれる粉塵3を回収した上で、気体を系外(大気空間)へと排出する。それにより、放射性物質を含む粉塵3が系外へと飛散することを防止する。なお、解体処理の対象となる構造物は、原子力発電所において用いられるものに限られない。
【0027】
壁面1の解体処理は、処理空間2内でレーザー切断装置4を用いて行うものとする。処理空間2は、防塵カバーで覆われ、解体処理により生じる粉塵3が処理空間2の外部へと飛散することが防がれている。レーザー切断装置4は、例えば空気等の気体を用いたアシストガスを噴射しながら壁面1に向けてレーザーを照射し、レーザーにより壁面1を切断する切断処理を実行する。なお、解体処理は、粉塵が飛散し得るものであれば、レーザー切断装置4を用いるものに限られない。
【0028】
粉塵回収装置100は、
図1に示すように、サイクロン10と、電気集塵機20と、HEPAフィルタ30と、ブロア40とを備えている。粉塵回収装置100は、処理空間2と配管により連通されており、上流側からサイクロン10、電気集塵機20、HEPAフィルタ30、ブロア40の順で接続されている。粉塵回収装置100は、サイクロン10、電気集塵機20、HEPAフィルタ30の順で粉塵3を回収する。
【0029】
サイクロン10は、処理空間2から供給される粉塵を含む気体を遠心分離し、気体から粉塵3を回収する。サイクロン10は、電気集塵機20およびHEPAフィルタ30よりも粒径の大きな粉塵3を回収する。電気集塵機20は、乾式の電気集塵機であり、サイクロン10を通過した気体に含まれる粉塵3を捕集する。HEPAフィルタ30は、電気集塵機20から排気された気体の粉塵3を捕集する。すなわち、HEPAフィルタ30は、サイクロン10および電気集塵機20で捕集できなかった粉塵3を捕集する。
図1に示すように、電気集塵機20とHEPAフィルタ30との間には、気体の流れを遮断可能な弁50が設けられている。ブロア40は、処理空間2から粉塵回収装置100に向かう空気の流れを形成する。
【0030】
電気集塵機20の構成について、
図1および
図2を参照しながら、より詳細に説明する。
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。電気集塵機20は、ケーシング21と、第一集塵部22と、第二集塵部23と、回収部24と、槌打装置25とを備えている。
【0031】
ケーシング21は、
図2に示すように、内部に気体が流通する流路が形成されている。ケーシング21の一端側は、サイクロン10からの気体が流入する吸引口21aが形成されている。吸引口21aには、気体の流入を規制可能な入側ダンパ26が設けられている。また、ケーシング21の他端側は、HEPAフィルタ30へと気体を排気する排気口21bが形成される。排気口21bには、気体の排気を規制可能な出側ダンパ27が設けられている。なお、ケーシング21の形状は、
図2に例示するものに限られない。
【0032】
第一集塵部22は、吸引口21a側に配置される。第一集塵部22は、放電電極221と、集塵電極222とを有する。放電電極221は、ケーシング21内で気体の流れ方向(
図2の左右方向)と直交する方向に沿って延びる複数の主部221aと、主部221aから放射状に突出した複数の放電部221bとを有する。各放電電極221は、図示しない取付枠を介してケーシング21に取り付けられている。集塵電極222は、気体の流れ方向に沿って延びる板形状に形成されている。集塵電極222は、複数(本実施形態では、2つ)が所定の電極間隔H1で配置されている。すなわち、隣接する集塵電極222間の最短距離が所定の電極間隔H1とされる。所定の電極間隔H1は、50[mm]以上200[mm]以下とされることが好ましい。また、所定の電極間隔H1は、50[mm]以上100[mm]以下とされることが、より好ましい。
【0033】
各放電電極221は、図示しない高圧電源に接続されており、負(または正)の電圧が印加される。また、各集塵電極222は、接地電極である。それにより、図示しない高圧電源から各放電電極221へと電圧を印加すると、各放電電極221と各集塵電極222との間でコロナ放電が発生する。その結果、吸引口21aから流入した気体に含まれる粉塵3が帯電し、各集塵電極222へと引きつけられ、各集塵電極222に捕集される。
【0034】
第二集塵部23は、第一集塵部22よりも排気口21b側に配置される。第二集塵部23は、高圧電極231と、集塵電極232とを有する。高圧電極231および集塵電極232は、気体の流れ方向に沿って延びる板形状に形成されている。高圧電極231は、
図2に示すように、複数(本実施形態では、2つ)設けられ、隣接する集塵電極232の間に1つずつ配置されている。集塵電極232は、複数(本実施形態では、3つ)が所定の電極間隔H2で設けられている。隣接する集塵電極232間の最短距離が所定の電極間隔H2とされる。所定の電極間隔H2は、所定の電極間隔H1よりも小さい。所定の電極間隔H2は、30[mm]以上100[mm]以下とされることが好ましい。また、所定の電極間隔H2は、30[mm]以上50[mm]以下とされることが、より好ましい。
【0035】
各高圧電極231は、図示しない高圧電源に接続されており、負(または正)の電圧が印加される。また、各集塵電極232は、接地電極である。それにより、図示しない高圧電源から各高圧電極231へと電圧を印加すると、各高圧電極231と各集塵電極232との間で発生するクーロン力により、第一集塵部22において帯電した粉塵3が各集塵電極232へと引きつけられ、各集塵電極232で捕集される。
【0036】
回収部24は、
図1に示すように、第一集塵部22および第二集塵部23の鉛直方向(
図1の下方向)における下方に配置される。回収部24は、ケーシング21内の流路と連通しており、流路内から粉塵3を回収することができる。回収部24は、受容部241と、収容容器242と、連通路243と、複数の開閉弁244とを有する。
【0037】
受容部241は、各集塵電極222、232から剥離した粉塵3を受容する。収容容器242は、連通路243を介して受容部241に連結され、受容部241からの粉塵3を収容する。収容容器242は、例えばワンタッチカプラー等の連結機構を用いて、受容部241に着脱自在に連結される。収容容器242は、放射性物質を含む粉塵3を内部に収容した状態で保管可能な容器であり、内部の放射性物質による臨界が生じない程度の大きさに形成される。本実施形態の電気集塵機20は、乾式であるため、粉塵3は水分を多量に含んでいない。そのため、放射性物質の分解による水素の発生が極めて少なく、収容容器242内の内圧上昇による破損のリスクを回避することができる。
【0038】
連通路243は、受容部241と収容容器242とを連通させる。連通路243には、複数の開閉弁244が設けられている。開閉弁244は、例えばバタフライ弁であり、受容部241と収容容器242との間の連通状態を開状態および閉状態で切り替える。ここでは、複数の開閉弁244のうち、受容部241側に配置されるものを「第一開閉弁244A」と称し、収容容器242側に配置されるものを「第二開閉弁244B」と称する。第一開閉弁244Aおよび第二開閉弁244Bは、電気集塵機20による粉塵3の捕集を行っている間は、閉状態とされる。また、第一開閉弁244Aおよび第二開閉弁244Bは、電気集塵機20により捕集した粉塵3を収容容器242へと収容させる際には、開状態とされる。
【0039】
槌打装置25は、第一集塵部22および第二集塵部23の双方に設けられている。槌打装置25は、各集塵電極222、232を槌打可能な図示しないハンマーを備えている。電気集塵機20は、槌打装置25により、各集塵電極222、232を槌打することで、各集塵電極222、232に付着した粉塵3を剥離させることができる。なお、電気集塵機20は、槌打装置25に代えて、ケーシング21全体を振動させることにより、各集塵電極222、232に付着した粉塵3を剥離させる振動装置を備えてもよい。
【0040】
次に、実施形態にかかる粉塵回収装置100の動作について説明する。
図3は、実施形態にかかる粉塵回収装置による粉塵の回収手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示す各処理は、作業者により粉塵回収装置100を用いて実行される。
【0041】
作業者は、まず、ステップST1として、粉塵回収処理を実行する。粉塵回収処理は、処理空間2内でレーザー切断装置4により壁面1の切断処理を実行している最中に、粉塵回収装置100を運転し、切断処理により生じる粉塵3を回収する処理である。より詳細には、作業者は、ブロア40を駆動して処理空間2から粉塵3を含む気体を吸引させる。そして、作業者は、サイクロン10および電気集塵機20を駆動し、サイクロン10、電気集塵機20およびHEPAフィルタ30の順に気体を通過させて、気体の粉塵3を順次回収させる。電気集塵機20による粉塵3の回収を行うとき、少なくとも第一開閉弁244Aは閉状態とされ、第二開閉弁244Bは、開状態および閉状態のいずれであってもよい。また、弁50は、開状態とされる。
【0042】
作業者は、ステップST2として、所定運転時間が経過したか否かを判定する。所定運転時間は、レーザー切断装置4による壁面1の切断処理を行うことで生じる粉塵3の回収が必要となる時間である。所定運転時間は、任意の時間として定めることができ、例えば8時間程度である。所定運転時間が経過していない場合、ステップST1の処理を継続する。
【0043】
所定運転時間が経過した場合、作業者は、ステップST3に進み、粉塵回収処理を停止させる。すなわち、ブロア40による気体の吸引を停止させると共に、サイクロン10および電気集塵機20による粉塵回収を停止させる。このとき、電気集塵機20の入側ダンパ26および出側ダンパ27は、閉状態とされ、吸引口21aおよび排気口21bが閉鎖される。また、レーザー切断装置4による壁面1の切断処理も、同様に停止させる。
【0044】
次に、作業者は、ステップST4として、第一開閉弁244Aおよび第二開閉弁244Bを開状態とし、弁50を閉状態とする。さらに、作業者は、ステップST5として、集塵電極222、232に付着した粉塵3の剥離処理を実行する。剥離処理は、上述したように、槌打装置25により集塵電極222、232を槌打して振動させることで行われる。これにより、集塵電極222、232から剥離した粉塵3が、自然沈降により、受容部241、連通路243を介して収容容器242内へと回収される。
【0045】
次に、作業者は、ステップST6として、自然沈降による粉塵3の回収において所定時間が経過したか否かを判定する。作業者は、自然沈降による粉塵3の回収が所定時間行われていない場合、所定時間が経過するまで待機する。そして、作業者は、自然沈降による粉塵3の回収が所定時間行われた場合、ステップST6に進む。所定時間は、例えば、1時間以上24時間以下である。所定時間は、例えば装置の運転を停止している夜間の時間帯など、1時間以上12時間以下であることがより好ましい。
【0046】
作業者は、ステップST7として、収容容器242の交換が必要か否かを判定する。すなわち、収容容器242内に粉塵3が上限量まで収容された場合、収容容器242の交換が必要であると判定することができる。作業者は、収容容器242の交換が必要でない、すなわち収容容器242内に粉塵3が上限量まで収容されていないと判定した場合には、本処理を終了する。それにより、次回に粉塵回収装置100を用いた粉塵3の回収を行う場合(次回にレーザー切断装置4による壁面1の切断処理を行う場合)、現在取り付けられている収容容器242を継続して用いて、粉塵3の回収を行うことができる。
【0047】
作業者は、収容容器242の交換が必要であると判定した場合、ステップST8に進み、第一開閉弁244Aおよび第二開閉弁244Bを閉状態とする。このとき、弁50は、開状態および閉状態のいずれであってもよい。次に、作業者は、ステップST9として、収容容器242を交換する。これにより、新しい収容容器242が電気集塵機20に取り付けられる。新しい収容容器242が電気集塵機20に取り付けられると、本処理を終了する。それにより、次回に粉塵回収装置100を用いた粉塵3の回収を行う場合(次回にレーザー切断装置4による壁面1の切断処理を行う場合)、新しい収容容器242を用いて粉塵3の回収を行うことができる。交換された収容容器242は、放射性物質を含む廃棄物として保管される。
【0048】
上述したステップST1からステップST9の処理は、図示しない制御装置により自動的に実行されてもよい。その場合、収容容器242の交換は、ロボットを用いて自動で行われてもよい。
【0049】
以上説明したように、実施形態にかかる粉塵回収装置100では、HEPAフィルタ30の前段に配置された電気集塵機20により、壁面1(構造物)の解体処理(切断処理)で生じた粉塵3を良好に回収することができる。その結果、HEPAフィルタ30の閉塞を抑制し、HEPAフィルタ30の交換頻度の低減および二次廃棄物(交換後の収容容器242)の増加の抑制を図ることが可能となる。したがって、実施形態にかかる粉塵回収装置100によれば、構造物の解体処理で発生する粉塵3を、より適正に回収することができる。
【0050】
また、電気集塵機20は、吸引口21a側において隣接する集塵電極222間の最短距離(所定の電極間隔H1)が、排気口21b側において隣接する集塵電極232間の最短距離(所定の電極間隔H2)よりも大きい。
【0051】
この構成により、排気口21b側に比べて粉塵3を捕集する量が多くなる吸引口21a側において、隣接する集塵電極222間に粉塵3が詰まることを抑制することができる。つまり、隣接する集塵電極222間の最短距離が粉塵3によって小さくなることに起因して、集塵電極222間に所定の電圧を印加できなくなることを抑制することができる。したがって、連続的な運転で電気集塵機20の性能が低下することを抑制し、電気集塵機20を含む粉塵回収装置100の連続運転時間を十分に確保することが可能となる。一方で、比較的に粉塵3の量が少なくなる排気口21b側では、隣接する集塵電極232間を小さくしても粉塵3が詰まりづらく、かつ、吸引口21a側で捕集しきれなかった粉塵3を、より確実に捕集することができる。
【0052】
また、吸引口21a側において隣接する集塵電極222間の最短距離(所定の電極間隔H1)は、50[mm]以上200[mm]以下であり、排気口21b側において隣接する集塵電極232間の最短距離(所定の電極間隔H2)は、30[mm]以上100[mm]以下であることが好ましい。また、吸引口21a側において隣接する集塵電極222間の最短距離(所定の電極間隔H1)は、50[mm]以上100[mm]以下であり、排気口21b側において隣接する集塵電極232間の最短距離(所定の電極間隔H2)は、30[mm]以上50[mm]以下であることが、より好ましい。
【0053】
この構成により、吸引口21a側および排気口21b側において、隣接する集塵電極222、232間の最短距離(所定の電極間隔H1、H2)を適切な範囲内とし、粉塵3の十分な捕集と、粉塵3による集塵電極222、232間の目詰まりの抑制との両立を図ることができる。また、集塵電極222、232の最短距離(所定の電極間隔H1、H2)を適切な範囲内とすることで、電気集塵機20の大型化を抑制することができる。
【0054】
図4は、実施形態にかかる電気集塵機による消費電力と捕集効率との関係の一例を示す解析結果である。
図4は、表1に示す(1)から(3)の試験条件で、隣り合う集塵電極222の最短距離すなわち所定の電極間隔H1、電極間隔H2、供給される気体流量(m
3/min)、単位体積当たりの粉塵3の濃度(g/m
3)を変更した場合の解析結果を示している。試験条件(1)および(2)は、電極間隔H1、H2を双方ともに50(mm)とした場合の比較例を示す。また、試験条件(3)は、電極間隔H1を120(mm)、電極間隔H2を60(mm)とした本実施形態にかかる電気集塵機20での例を示す。
図4における消費電力は、電気集塵機において消費される単位ガス量(気体流量)あたりの電力である。また、捕集効率(集塵率)は、電気集塵機において捕集した粉塵の粒子流量を、入口すなわち吸引口における粉塵の粒子流量で除算して得られる値である。消費電力および捕集効率(集塵率)は、試験条件(2)に含まれる一つの結果60(
図4参照)を基準とした相対値で示されている。
【0055】
【0056】
本実施形態にかかる電気集塵機20では、
図4の試験条件(3)の例に示すように、試験条件(1)、(2)の比較例に対して、単位ガス量あたりの消費電力すなわち投入電力を大きくすることができる。これは、上述したように、吸引口21a側の電極間隔H1を排気口21b側の電極間隔H2よりも大きくすることで、集塵電極222間に粉塵3が詰まることを抑制できるため、より高い電力の投入が可能となることによる。そして、
図4に示すように、試験条件(3)では、試験条件(1)、(2)の比較例に対して、消費電力の増加に伴って捕集効率(集塵率)をより効果的に高めることができる。
【0057】
また、構造物は、放射性物質に汚染された部材(本実施形態では、壁面1)であっても対応可能である。
【0058】
この構成により、構造物の解体により生じた放射性物質を含む粉塵3を、より適正に回収することができる。
【0059】
また、解体処理は、レーザー切断装置4により構造物を切断する処理であっても対応可能である。
【0060】
この構成により、レーザー切断装置4による構造物の切断で生じた粉塵3を、より適正に回収することができる。
【0061】
また、電気集塵機20は、集塵電極222、232から剥離した粉塵3を受容する受容部241と、受容部241に着脱自在に連結されて受容部241からの粉塵3を収容する収容容器242と、受容部241と収容容器242との間に設けられた開閉弁244と、を有する回収部24をさらに備える。
【0062】
この構成により、集塵電極222、232で捕集した粉塵3を、回収部24の受容部241から収容容器242へと回収させ、粉塵3が再飛散することを抑制することができる。また、収容容器242を受容部241に着脱自在に連結することで、収容容器242ごと粉塵3を容易に回収することが可能となる。特に、実施形態にかかる電気集塵機20は、上述したように、その大型化を抑制することができる。そのため、収容容器242も比較的に小型のものを用いることが可能であり、収容容器242の交換や、使用済みの収容容器242の取り扱いを容易に行うことができる。
【0063】
また、開閉弁244は、複数設けられる。
【0064】
この構成により、複数の開閉弁244(第一開閉弁244A、第二開閉弁244B)により、粉塵回収装置100の系統内から粉塵3が漏れ出すことを、より適正に抑制することができる。
【0065】
また、実施形態にかかる粉塵回収方法は、粉塵回収装置100を用いて電気集塵機20から粉塵を回収する粉塵回収方法であって、所定運転時間にわたって電気集塵機20による粉塵3の回収を行い、電気集塵機20の運転を停止させた後、吸引口21aおよび排気口21bを閉鎖すると共に、第一開閉弁244A、第二開閉弁244Bを開とした状態で、集塵電極222、232に振動を加えて集塵電極222、232に付着した粉塵3を剥離させ、所定時間にわたって粉塵3を受容部241から収容容器242へと自然沈降させる。
【0066】
この構成により、所定運転時間にわたって電気集塵機20により粉塵3を回収した後、電気集塵機20の運転を停止させている時間帯(つまり、レーザー切断装置4による壁面1の切断処理を停止している時間帯)に、集塵電極222、232に付着した粉塵3を振動により剥離させると共に、所定時間にわたって自然沈降させて収容容器242に回収させる回収作業を行うことができる。
【0067】
図5は、実施形態にかかる電気集塵機の変形例を示す説明図である。
図5に示す電気集塵機20Aは、第一集塵部22が、放電電極221に代えて放電電極221Aを備えている。放電電極221Aは、高圧電極231と同様に、気体の流れ方向に沿って延びる平板状の電極である。このように、放電電極は、集塵電極222との間でコロナ放電を発生させることさえできれば、
図2に示す放電電極221に限られず、平板状、または線状など、いかなる形状であってもよい。
【0068】
図6は、実施形態にかかる電気集塵機の他の変形例を示す説明図である。
図6に示す電気集塵機20Bは、第一集塵部22および第二集塵部23が、一対の集塵電極222Bを備えている。すなわち、第一集塵部22および第二集塵部23が、一対の集塵電極222Bを共有する。また、
図6に示す例では、第二集塵部23において、高圧電極231は、一対の集塵電極222Bの間に一つ配置されている。そして、一対の集塵電極222Bは、図示するように、吸引口21a側から排気口21b側に向かうにつれて、互いに接近するように配置されている。それにより、吸引口21a側において隣接する集塵電極222B間の最短距離である電極間隔H1を、排気口21b側において隣接する集塵電極222B間の最短距離である電極間隔H2よりも、大きくすることができる。この構成によっても、吸引口21a側において隣接する集塵電極222間に粉塵3が詰まることを抑制することができ、電気集塵機20を含む粉塵回収装置100の連続運転時間を十分に確保することが可能となる。また、排気口21b側で、吸引口21a側で捕集しきれなかった粉塵3を、より確実に捕集することができる。
【0069】
なお、電気集塵機20Bにおいても、電極間隔H1は、50[mm]以上200[mm]以下であり、電極間隔H2は、30[mm]以上100[mm]以下であることが好ましい。また、電極間隔H1は、50[mm]以上100[mm]以下であり、電極間隔H2は、30[mm]以上50[mm]以下であることが、より好ましい。
【0070】
図7は、実施形態にかかる電気集塵機のさらなる他の変形例を示す説明図である。なお、
図7において入側ダンパ26、出側ダンパ27の記載は省略する。
図7に示す電気集塵機20Cは、第一集塵部22および第二集塵部23が、一対の集塵電極222Cを、複数(本実施形態では2セット)備えている。すなわち、第一集塵部22および第二集塵部23が、一対の集塵電極222Cを共有する。また、第二集塵部23には、一対の集塵電極222Cのセット間の中央に、集塵電極222Dが配置されている。なお、
図7に示す例では、隣り合う集塵電極222Cの間には、第一集塵部22において放電電極221が配置され、第二集塵部23において高圧電極231が配置される。
【0071】
一対の集塵電極222Cは、
図6に示す一対の集塵電極222Bと同様に、吸引口21a側から排気口21b側に向かうにつれて、互いに接近するように配置されている。そのため、吸引口21a側において隣接する集塵電極222C間の最短距離である電極間隔H1を、排気口21b側において隣接する集塵電極222C間の最短距離である電極間隔H2より、大きくすることができる。
【0072】
また、一対の集塵電極222Cのセット間の中央に、集塵電極222Dが配置されることで、吸引口21a側において隣接する集塵電極222C間の最短距離である電極間隔H1を、排気口21b側において隣接する集塵電極222Cと集塵電極222Dとの最短距離である電極間隔H3よりも、大きくすることができる。なお、本実施形態では、電極間隔H2と電極間隔H3とは、同一である。ただし、電極間隔H2と電極間隔H3とは、電極間隔H1よりも小さければ、異なるものであってもよい。
【0073】
なお、電気集塵機20Cにおいても、電極間隔H1は、50[mm]以上200[mm]以下であり、電極間隔H2および電極間隔H3は、30[mm]以上100[mm]以下であることが好ましい。また、電極間隔H1は、50[mm]以上100[mm]以下であり、電極間隔H2および電極間隔H3は、30[mm]以上50[mm]以下であることが、より好ましい。
【符号の説明】
【0074】
1 壁面
2 処理空間
3 粉塵
4 レーザー切断装置
10 サイクロン
20 電気集塵機
21 ケーシング
21a 吸引口
21b 排気口
22 第一集塵部
221 放電電極
222、232 集塵電極
23 第二集塵部
231 高圧電極
24 回収部
241 受容部
242 収容容器
243 連通路
244 開閉弁
25 槌打装置
26 入側ダンパ
27 出側ダンパ
30 HEPAフィルタ
40 ブロア
50 弁
100 粉塵回収装置