(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/20 20060101AFI20230706BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B22D17/20 G
B22D17/20 F
B22D17/32 J
(21)【出願番号】P 2019047924
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 俊治
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-279268(JP,A)
【文献】特開平03-032460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に溶湯を供給するためのスリーブと、
前記スリーブ内を直線的に往復移動可能に構成され、前記スリーブ内の前記溶湯を前記金型内に射出するためのチップと、
前記チップを駆動する射出シリンダと、
前記射出シリンダの射出戻り力に関する情報に基づいて、前記チップの交換時期を検出する制御を行う
とともに、今回の前記射出シリンダの射出戻り力に関する情報と、過去の前記射出シリンダの射出戻り力に関する情報または予め決められた基準情報のいずれかとの比較結果に基づいて、前記チップの異常を検出する制御を行う制御部と、を備える、ダイカストマシン。
【請求項2】
前記射出シリンダの射出戻り力に関する情報は、前記射出シリンダの射出戻り力に関する値を含み、
前記制御部は、前記射出シリンダの射出戻り力に関する値が、第1しきい値以上である場合、時期が前記チップの交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている、請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記射出シリンダの射出戻り力に関する値は、前記射出シリンダの低圧側の圧力と高圧側の圧力とに基づいて算出された、前記射出シリンダの射出戻り力である、請求項2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記制御部は、前記チップの交換時期が検出された場合、前記チップの交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記制御部は、前記チップの異常が検出された場合、前記チップの異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている、請求項
1に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記制御部は、前記チップの所定の交換時点から、前記チップの前記所定の交換時点の次の交換時点までの期間である交換サイクルに基づいて、前記スリーブの交換時期を検出する制御を行うように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記制御部は、前記交換サイクルが、第2しきい値以下である場合、時期が前記スリーブの交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている、請求項
6に記載のダイカストマシン。
【請求項8】
前記制御部は、前記スリーブの交換時期が検出された場合、前記スリーブの交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている、請求項
6または
7に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイカストマシンに関し、特に、スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのチップを備えるダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのチップを備えるダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、溶湯により鋳造品を製造するダイカストマシンが開示されている。このダイカストマシンは、金型内に溶湯を供給するための射出スリーブと、射出スリーブ内に設けられ、射出スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのプランジャチップとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されるようなダイカストマシンでは、高温の溶湯と触れるプランジャチップは消耗品であるため、たとえば一定ショット数(射出回数)の使用により定期交換が行われている。しかしながら、プランジャチップの寿命は溶湯温度や溶湯材質などの鋳造条件に起因して変動するため、プランジャチップを一定ショット数の使用により定期交換する場合には、プランジャチップの実際の寿命の近くではない場合にも、プランジャチップが交換されてしまう場合がある。この場合には、消耗品であるプランジャチップをプランジャチップの実際の寿命の近くまで使用して交換することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、消耗品であるチップをチップの実際の寿命の近くまで使用して交換することが可能なダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるダイカストマシンは、金型内に溶湯を供給するためのスリーブと、スリーブ内を直線的に往復移動可能に構成され、スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのチップと、チップを駆動する射出シリンダと、射出シリンダの射出戻り力に関する情報に基づいて、チップの交換時期を検出する制御を行うとともに、今回の射出シリンダの射出戻り力に関する情報と、過去の射出シリンダの射出戻り力に関する情報または予め決められた基準情報のいずれかとの比較結果に基づいて、チップの異常を検出する制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面によるダイカストマシンでは、上記のように、射出シリンダの射出戻り力に関する情報に基づいて、チップの交換時期を検出する制御を行う制御部を設ける。これにより、実際のチップの状態を反映した情報である、射出シリンダの射出戻り力に関する情報に基づいて、チップの交換時期を検出することができる。その結果、消耗品であるチップを定期交換する場合と異なり、消耗品であるチップをチップの実際の寿命の近くまで使用して交換することが可能なダイカストマシンを提供することができる。また、チップの交換時期を検出するための情報として、射出シリンダの射出戻り力に関する情報を用いることにより、チップの交換時期を検出するための情報として、溶湯の熱の影響などの鋳造条件の影響が大きい射出シリンダの射出時の力に関する情報を用いる場合に比べて、実際のチップの状態を精度良く反映した情報をチップの交換時期を検出するための情報として用いることができる。その結果、チップの交換時期を精度良く検出することができる。
【0009】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、射出シリンダの射出戻り力に関する情報は、射出シリンダの射出戻り力に関する値を含み、制御部は、射出シリンダの射出戻り力に関する値が、第1しきい値以上である場合、時期がチップの交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、チップの劣化が進行するにつれて射出シリンダの射出戻り力に関する値が大きくなることを利用して、第1しきい値により、時期がチップの実際の寿命に近い交換時期であることを容易かつ簡単に検出することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、射出シリンダの射出戻り力に関する値は、射出シリンダの低圧側の圧力と高圧側の圧力とに基づいて算出された、射出シリンダの射出戻り力である。このように構成すれば、チップの交換時期を検出するための情報として、高圧側の圧力のみに基づいて算出された、射出シリンダの射出戻り力を用いる場合に比べて、実際のチップの状態をより精度良く反映した情報をチップの交換時期を検出するための情報として用いることができる。その結果、チップの実際の寿命に近い交換時期をより精度良く検出することができる。
【0011】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、チップの交換時期が検出された場合、チップの交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザは、使用中のチップが交換を要することを認識することができる。その結果、ユーザは、交換を要するチップの交換作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、チップの異常が検出された場合、チップの異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザは、使用中のチップに異常が発生したことを認識することができる。その結果、ユーザは、異常が発生したチップの整備作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0014】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、チップの所定の交換時点から、チップの所定の交換時点の次の交換時点までの期間である交換サイクルに基づいて、スリーブの交換時期を検出する制御を行うように構成されている。ここで、高温の溶湯と触れるスリーブは、チップと同様に、消耗品であり、定期交換するだけでは、実際の寿命の近くまで使用して交換することが困難である。そこで、上記のように、制御部を、チップの所定の交換時点から、チップの所定の交換時点の次の交換時点までの期間である交換サイクルに基づいて、スリーブの交換時期を検出する制御を行うように構成すれば、実際のスリーブの状態を反映した情報である、チップの交換サイクルに基づいて、スリーブの交換時期を検出することができる。その結果、チップだけでなく、スリーブも実際の寿命の近くまで使用して交換することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、制御部は、交換サイクルが、第2しきい値以下である場合、時期がスリーブの交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、スリーブの劣化が進行するにつれてチップの交換サイクルが小さくなることを利用して、第2しきい値により、時期がスリーブの交換時期であることを容易かつ簡単に検出することができる。
【0016】
上記スリーブの交換時期を検出するダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、スリーブの交換時期が検出された場合、スリーブの交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ユーザは、使用中のスリーブが交換を要することを認識することができる。その結果、ユーザは、交換を要するスリーブの交換作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、消耗品であるチップをチップの実際の寿命の近くまで使用して交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図2】一実施形態によるダイカストマシンの射出戻り工程を説明するための模式図である。
【
図3】一実施形態によるダイカストマシンの射出シリンダの射出戻り力の変化を示した模式的なグラフである。
【
図4】一実施形態によるダイカストマシンのチップ交換時期の検出を説明するための模式的なグラフである。
【
図5】一実施形態によるダイカストマシンのチップ交換時期の検出のユーザへの通知を説明するための模式的な図である。
【
図6】一実施形態によるダイカストマシンのチップ交換時期の推定を説明するための模式的なグラフである。
【
図7】一実施形態によるダイカストマシンのチップ交換時期の推定のユーザへの通知を説明するための模式的な図である。
【
図8】一実施形態によるダイカストマシンのチップ異常の検出を説明するための模式的なグラフである。
【
図9】一実施形態によるダイカストマシンのチップ異常の検出のユーザへの通知を説明するための模式的な図である。
【
図10】一実施形態によるダイカストマシンのスリーブ交換時期の検出を説明するための模式的なグラフである。
【
図11】一実施形態によるダイカストマシンのスリーブ交換時期の検出のユーザへの通知を説明するための模式的な図である。
【
図12】一実施形態によるダイカストマシンのチップ交換時期検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】一実施形態によるダイカストマシンのスリーブ交換時期検出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1~
図11を参照して、一実施形態によるダイカストマシン1の構成について説明する。なお、図面では、Z方向を上下方向とし、Z方向のうちのZ1方向を上方向、Z方向のうちのZ2方向を下方向としている。また、X方向を水平方向とし、X方向のうちのX1方向を後述するチップ61の前進方向とし、X方向のうちのX2方向をチップ61の後進方向としている。
【0021】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すように、ダイカストマシン1は、移動金型21が水平方向に移動される横型のマシンである。また、ダイカストマシン1は、コールドチャンバ方式のマシンであり、ダイカストマシン1に取り付けられた金型2内(移動金型21と固定金型22とにより形成されるキャビティC)に、液状の金属材料である溶湯を射出することによりダイカスト製品(成形品)を製造するように構成されている。
【0022】
ダイカストマシン1は、金型2と、スリーブ3と、注湯機構4と、蓋機構5と、チップ6(プランジャチップ)と、射出シリンダ7と、制御部8と、記憶部9と、表示部10と、表示灯11とを備えている。
【0023】
金型2は、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティC(空洞部分)を形成するように構成されている。
【0024】
具体的には、金型2は、移動金型21と、固定金型22とを含んでいる。固定金型22は、固定ダイプレート23に固定されている。移動金型21は、固定金型22に当接または離間する方向(X方向)に移動可能に移動ダイプレート24に取り付けられている。キャビティCは、固定金型22に移動金型21を当接させることにより形成されている。
【0025】
スリーブ3は、金型2内に溶湯を供給するために設けられている。また、スリーブ3は、チップ6をX方向に移動可能に収容するとともに溶湯を注湯可能に構成されている。
【0026】
具体的には、スリーブ3は、注湯口31と、溶湯通路32とを含んでいる。スリーブ3は、筒形状を有している。スリーブ3は、X方向に延びている。注湯口31は、注湯機構4により溶湯を溶湯通路32内に注湯するために設けられている。注湯口31は、スリーブ3の上側(Z1方向側)の部分をZ方向に貫通している。溶湯通路32は、スリーブ3をX方向に貫通する貫通孔である。溶湯通路32は、X1方向においてキャビティCに連通している。
【0027】
注湯機構4は、保持炉(図示せず)から液状の金属材料である溶湯を汲み取って、スリーブ3に供給(注湯)するように構成されている。
【0028】
具体的には、注湯機構4は、ラドル41と、アーム42とを備えている。ラドル41は、保持炉から液状の金属材料である溶湯を汲み取るように構成されている。アーム42は、スリーブ3の注湯口31までラドル41を移動させるとともに、ラドル41を傾けて溶湯をスリーブ3内に注湯するように構成されている。
【0029】
蓋機構5は、注湯機構4によりスリーブ3内に溶湯が注湯された後、注湯口31を塞ぐように構成されている。
【0030】
具体的には、蓋機構5は、蓋部51と、アーム52とを含んでいる。蓋部51は、Z1方向から視て、注湯口31の形状に沿った形状を有している。蓋部51は、アーム52の先端部に配置されている。アーム52は、蓋部51を注湯口31まで移動させるように構成されている。
【0031】
チップ6は、スリーブ3内をX方向に沿って直線的に往復移動可能に構成され、スリーブ3内の溶湯を金型2内に射出するように構成されている。
【0032】
射出シリンダ7は、チップ6を駆動するように構成されている。射出シリンダ7は、液圧(油圧)により動作する液圧シリンダ(油圧シリンダ)である。射出シリンダ7は、油圧回路7aに接続されており、油圧回路7aにより動作されるように構成されている。なお、射出シリンダ7の詳細な構成は、後述する。
【0033】
制御部8は、ダイカストマシン1の各部の駆動を制御するように構成されている。制御部8は、ダイカストマシン1の各部に電気的に接続されている。制御部8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含んでいる。
【0034】
記憶部9は、フラッシュメモリなどの記録媒体を含み、情報を記憶するように構成されている。表示部10は、液晶モニタなどの表示媒体を含み、情報を表示するように構成されている。表示灯11は、ランプなどの発光部を含み、点灯することにより、ユーザへの通知を行うように構成されている。
【0035】
(射出シリンダの構成)
図2に示すように、射出シリンダ7は、ロッド71(プランジャロッド)と、ピストン72と、シリンダ部73と、後室であるヘッド側室74と、前室であるロッド側室75とを含んでいる。
【0036】
ロッド71は、X方向に沿って延びる柱形状を有している。ロッド71の一端部であるX1方向側の端部には、チップ6が連結されている。また、ロッド71の他端部であるX2方向側の端部には、ピストン72が連結されている。ピストン72は、シリンダ部73内をX方向に沿って直線的に往復移動可能に設けられている。シリンダ部73は、X方向に沿って延びる筒形状を有し、内部にピストン72を保持するように設けられている。
【0037】
ヘッド側室74は、ピストン72によって区切られたシリンダ部73の後側(X2方向側)の部屋である。ロッド側室75は、ピストン72によって区切られたシリンダ部73の前側(X1方向側)の部屋である。ヘッド側室74およびロッド側室75は、油圧が供給されたり、油圧が開放されたりされるように構成されている。ヘッド側室74の油圧およびロッド側室75の油圧は、それぞれ、圧力センサ76aおよび76bにより検出される。圧力センサ76aは、ヘッド側室74の圧力の検出結果を制御部8に送信するように構成されている。同様に、圧力センサ76bは、ロッド側室75の圧力の検出結果を制御部8に送信するように構成されている。
【0038】
射出シリンダ7は、射出工程を行うように、チップ6を駆動する。射出工程は、射出前進工程と、射出戻り工程とを含んでいる。なお、
図2では、射出戻り工程を示している。射出前進工程は、スリーブ3内においてチップ6を前進させて(すなわち、X1方向側へ移動させて)、金型2内に溶湯を射出する工程である。また、射出戻り工程は、射出前進工程において前進させたチップ6をスリーブ3内において後進させて(すなわち、X2方向側へ移動させて)、チップ6を次の溶湯の射出のための待機位置に移動させる工程である。なお、1回の射出工程のことを、「1ショット」とも称する。
【0039】
射出前進工程では、射出シリンダ7は、チップ6を前進させるように駆動する。具体的には、射出シリンダ7は、ヘッド側室74に油圧が供給され、ロッド側室75の油圧が開放されることにより、ピストン72がX1方向に移動されるように構成されている。これにより、射出シリンダ7は、ピストン72に連結されたロッド71を介して、チップ6にX1方向に移動するような駆動力を伝達するように構成されている。その結果、射出シリンダ7は、チップ6を前進させるように構成されている。また、射出前進工程は、低速前進工程と、高速前進工程とを含んでいる。射出前進工程では、低速前進工程が行われた後、低速前進工程よりも大きい速度によりチップ6を前進させる工程である高速前進工程が行われる。
【0040】
同様に、射出戻り工程では、射出シリンダ7は、射出前進工程において前進されたチップ6を後進させるように駆動する。具体的には、射出シリンダ7は、ヘッド側室74の油圧が開放され、ロッド側室75に油圧が供給されることにより、ピストン72がX2方向に移動されるように構成されている。これにより、射出シリンダ7は、ピストン72に連結されたロッド71を介して、チップ6にX2方向に移動するような駆動力を伝達するように構成されている。その結果、射出シリンダ7は、チップ6を後進させるように構成されている。射出戻り工程では、射出前進工程とは異なり、チップ6は、射出前進工程よりも小さい速度である一定速度により、移動される。
【0041】
(1ショットの射出戻り力の変化)
ここで、
図3を参照して、1ショットの射出戻り工程における、射出シリンダ7の射出戻り力の変化について説明する。
図3に示すグラフでは、縦軸が射出シリンダ7の射出戻り力を示し、横軸が時間を示している。また、射出シリンダ7の射出戻り力は、具体的には、射出シリンダ7によるチップ6の駆動力を意味している。このような力は、たとえば、射出シリンダ7のヘッド側室74の圧力(低圧側の圧力)に、ピストン72の油圧受面の面積を乗じることにより得られた低圧側の力と、ロッド側室75の圧力(高圧側の圧力)に、ピストン72の油圧受面の面積を乗じることにより得られた高圧側の力との差として求めることができる。
【0042】
図3では、チップ6およびスリーブ3の劣化がない場合における、1ショットの射出戻り工程における射出シリンダ7の射出戻り力の変化を実線により示している。チップ6およびスリーブ3の劣化がない場合、射出シリンダ7の射出戻り力は、略一定である。また、
図3では、チップ6およびスリーブ3の劣化がある場合における、1ショットの射出戻り工程における射出シリンダ7の射出戻り力の変化を破線により示している。チップ6およびスリーブ3の劣化がある場合、チップ6およびスリーブ3の劣化がない場合に比べて、射出シリンダ7の射出戻り力は、大きくなる傾向を示す。チップ6およびスリーブ3の劣化に起因して、チップ6とスリーブ3との間の抵抗が大きくなるためである。
【0043】
また、チップ6およびスリーブ3の劣化がある場合、射出シリンダ7の射出戻り力の時間変化を示す波形は、ピークを有する場合がある。スリーブ3の特定の部分では、特定の部分以外の他の部分に比べて、スリーブ3の劣化が大きく、チップ6とスリーブ3との間の抵抗が大きくなる場合があるためである。スリーブ3の特定の部分とは、たとえば、スリーブ3の注湯口31に対応する部分、スリーブ3の射出前進工程の高速前進工程が行われる部分などであり得る。なお、高温の溶湯に触れるチップ6およびスリーブ3は、交換を要する消耗品である。
【0044】
(ショット数に応じた射出戻り力の変化)
ここで、
図4を参照して、ショット数に応じた射出シリンダ7の射出戻り力の変化について説明する。
図4に示すグラフでは、縦軸が射出シリンダ7の射出戻り力を示し、横軸がショット数を示している。
図4に示すように、射出シリンダ7の射出戻り力は、ショット数が大きくなるにつれて大きくなる傾向を示している。上記の通り、ショット数が大きくなるにつれてチップ6およびスリーブ3の劣化が進行するとともに、チップ6およびスリーブ3の劣化の進行に起因して、チップ6とスリーブ3との間の抵抗が大きくなるためである。
【0045】
(チップの交換時期の検出に関する構成)
そこで、本実施形態では、制御部8は、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報に基づいて、チップ6の交換時期を検出する制御を行うように構成されている。射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報は、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値を含んでいる。具体的には、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値は、射出シリンダ7の低圧側の圧力(すなわち、ロッド側室75の圧力)と高圧側の圧力(すなわち、ヘッド側室74の圧力)とに基づいて算出された、射出シリンダ7の射出戻り力である。
【0046】
制御部8は、圧力センサ76aから取得した射出シリンダ7の低圧側の圧力と、圧力センサ76bから取得した射出シリンダ7の高圧側の圧力とに基づいて、射出シリンダ7の射出戻り力を算出する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部8は、射出シリンダ7の低圧側の圧力に、ピストン72の油圧受面の面積を乗じることにより得られた低圧側の力と、高圧側の圧力に、ピストン72の油圧受面の面積を乗じることにより得られた高圧側の力との差を、射出シリンダ7の射出戻り力として算出する制御を行うように構成されている。
【0047】
また、制御部8は、射出戻り工程の射出シリンダ7の射出戻り力の代表値を、チップ6の交換時期の検出に用いる射出戻り力として取得する制御を行うように構成されている。このような代表値としては、どのような代表値が用いられてもよいが、たとえば、射出戻り工程の全区間の射出シリンダ7の射出戻り力の平均値、射出戻り工程の全区間のうちの射出シリンダ7の射出戻り力の最大値(ピーク値)、射出戻り工程の特定の区間の射出シリンダ7の射出戻り力の平均値、射出戻り工程の特定の区間のうちの射出シリンダ7の射出戻り力の最大値(ピーク値)などを用いることができる。なお、射出戻り工程の特定の区間とは、たとえば、劣化が発生しやすいスリーブ3の特定の部分(上記したスリーブ3の注湯口31に対応する部分、スリーブ3の射出前進工程の高速前進工程が行われる部分など)に対応する、射出戻り工程の区間である。また、制御部8は、取得した射出シリンダ7の射出戻り力(すなわち、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報)を、記憶部9に記憶させる制御を行うように構成されている。
【0048】
そして、制御部8は、1ショット毎に、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値である射出シリンダ7の射出戻り力と、しきい値Th1とを比較する制御を行うように構成されている。制御部8は、1ショット毎に、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値である射出シリンダ7の射出戻り力と、しきい値Th1との比較結果に基づいて、チップ6の交換時期を検出する制御を行うように構成されている。なお、しきい値Th1は、特許請求の範囲の「第1しきい値」の一例である。
【0049】
具体的には、制御部8は、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値である射出シリンダ7の射出戻り力が、しきい値Th1以上である場合、時期がチップ6の交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている。一方、制御部8は、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値である射出シリンダ7の射出戻り力が、しきい値Th1未満である場合、時期がチップ6の交換時期ではないことを検出する制御を行うように構成されている。なお、実際には、射出シリンダ7の射出戻り力がしきい値Th1以上になるまでには、数万ショット程度のショット数を要する。しかしながら、
図4では、理解の容易化のために、実際よりも少ないショット数により、射出シリンダ7の射出戻り力がしきい値Th1以上になるように図示している。
【0050】
しきい値Th1は、たとえば、基準値に基づいて決定される値であり得る。この場合、しきい値Th1は、たとえば、新品のチップ6による最初のショット時における、射出シリンダ7の射出戻り力を基準値として、この基準値に対して、実験などにより決定された割合だけ増加した値とすることができる。あるいは、しきい値Th1は、実験などにより決定された固定の値であり得る。
【0051】
また、制御部8は、チップ6の交換時期が検出された場合、チップ6の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。たとえば、制御部8は、表示灯11を点灯させることにより、チップ6の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。また、たとえば、制御部8は、
図5に示すように、表示部10に情報を表示させることにより、チップ6の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。
【0052】
(チップの交換時期の推定に関する構成)
また、本実施形態では、制御部8は、
図6に示すように、記憶部9に記憶された過去の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報に基づいて、チップ6の交換時期を推定する制御を行うように構成されている。
【0053】
具体的には、制御部8は、記憶部9に記憶された過去の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報に基づいて、今後の射出シリンダ7の射出戻り力の増加傾向を示す情報を取得する制御を行うように構成されている。射出シリンダ7の射出戻り力の増加傾向を示す情報は、たとえば、射出シリンダ7の増加傾向を示す関数であり得る。そして、制御部8は、取得した射出シリンダ7の射出戻り力の増加傾向を示す情報に基づいて、射出シリンダ7の射出戻り力が、しきい値Th1以上になると推定される時期を取得する制御を行うように構成されている。そして、制御部8は、取得された時期を、チップ6の交換時期として推定する制御を行うように構成されている。
【0054】
また、制御部8は、チップ6の交換時期が推定された場合、推定されたチップ6の交換時期をユーザに通知する制御を行うように構成されている。たとえば、制御部8は、
図7に示すように、表示部10に情報を表示させることにより、推定されたチップ6の交換時期をユーザに通知する制御を行う。これにより、ユーザは、チップ6の交換の準備を迅速に行うことができる。
【0055】
(チップの異常の検出に関する構成)
また、本実施形態では、制御部8は、
図8に示すように、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報と、記憶部9に記憶された過去の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報との比較結果に基づいて、チップ6の異常を検出する制御を行うように構成されている。
【0056】
具体的には、制御部8は、1ショット毎に、今回の射出シリンダ7の射出戻り力と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力とを比較する制御を行うように構成されている。制御部8は、1ショット毎に、今回の射出シリンダ7の射出戻り力と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力との比較結果に基づいて、チップ6の異常を検出する制御を行うように構成されている。比較対象である過去の射出シリンダ7の射出戻り力としては、前回の射出シリンダ7の射出戻り力、直近の複数回の射出シリンダ7の射出戻り力の平均値などを用いることができる。なお、
図8では、一例として、今回の射出シリンダ7の射出戻り力と、前回の射出シリンダ7の射出戻り力とが比較される例を図示している。
【0057】
制御部8は、今回の射出シリンダ7の射出戻り力と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力との差が、しきい値Th2以上である場合、チップ6に異常が発生したことを検出する制御を行うように構成されている。一方、制御部8は、今回の射出シリンダ7の射出戻り力と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力との差が、しきい値Th2未満である場合、チップ6に異常が発生していないことを検出する制御を行うように構成されている。しきい値Th2は、たとえば、基準値に基づいて決定される値、または、実験などにより決定された固定の値であり得る。なお、制御部8は、チップ6の異常が検出された場合、今回の射出シリンダ7の射出戻り力が、しきい値Th1以上であっても、時期がチップ6の交換時期であることを検出しない。チップ6の異常の検出の制御は、チップ6の交換時期の検出の制御の前に行われる。
【0058】
また、制御部8は、チップ6の異常が検出された場合、チップ6の異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。たとえば、制御部8は、表示灯11を点灯させることにより、チップ6の異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。また、たとえば、制御部8は、
図9に示すように、表示部10に情報を表示させることにより、チップ6の異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。
【0059】
(チップの交換サイクルの変化)
ここで、
図10を参照して、チップ6の交換サイクルの変化について説明する。
図10に示すグラフでは、縦軸が射出シリンダ7の射出戻り力を示し、横軸がショット数を示している。また、チップ6の交換サイクルは、具体的には、チップ6の所定の交換時点から、チップ6の所定の交換時点の次の交換時点までの期間(ショット数)を意味している。
【0060】
図10に示すように、チップ6の交換サイクルは、チップ6の交換回数が大きくなるにつれて小さくなる傾向を示している。これは、スリーブ3がチップ6よりも高寿命(たとえば、4~5倍程度高寿命)であり、1本のスリーブ3に対して複数(たとえば、4~5つ)のチップ6が用いられるためである。すなわち、後に使用されるチップ6程、より劣化が進行したスリーブ3に対して使用されるために、チップ6が劣化しやすく、チップ6の劣化が進行しやすいためである。
【0061】
(スリーブの交換時期の検出に関する構成)
そこで、本実施形態では、制御部8は、チップ6の交換サイクルに基づいて、スリーブ3の交換時期を検出する制御を行うように構成されている。
【0062】
具体的には、制御部8は、チップ6が交換される毎に、チップ6の交換サイクルと、しきい値Th3とを比較する制御を行うように構成されている。制御部8は、チップ6が交換される毎に、チップ6の交換サイクルと、しきい値Th3との比較結果に基づいて、スリーブ3の交換時期を検出する制御を行うように構成されている。なお、しきい値Th3は、特許請求の範囲の「第2しきい値」の一例である。
【0063】
制御部8は、チップ6の交換サイクルが、しきい値Th3以下である場合、時期がスリーブ3の交換時期であることを検出する制御を行うように構成されている。一方、制御部8は、チップ6の交換サイクルが、しきい値Th3よりも大きい場合、時期がスリーブ3の交換時期ではないことを検出する制御を行うように構成されている。
【0064】
しきい値Th3は、たとえば、基準値に基づいて決定される値であり得る。この場合、しきい値Th3は、たとえば、新品のスリーブ3による最初の交換サイクルを基準値として、この基準値に対して、実験などにより決定された割合だけ減少した値とすることができる。あるいは、しきい値Th3は、実験などにより決定された固定の値であり得る。
【0065】
また、制御部8は、スリーブ3の交換時期が検出された場合、スリーブ3の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成されている。たとえば、制御部8は、表示灯11を点灯させることにより、スリーブ3の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。また、たとえば、制御部8は、
図11に示すように、表示部10に情報を表示させることにより、スリーブ3の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行う。
【0066】
(チップ交換時期検出処理)
次に、
図12を参照して、本実施形態のダイカストマシン1によるチップ交換時期検出処理をフローチャートに基づいて説明する。フローチャートの各処理は、制御部8により行われる。
【0067】
図12に示すように、まず、ステップS1において、射出動作が行われる。すなわち、ステップS1では、射出工程の射出前進工程と、射出戻り工程とが行われる。
【0068】
そして、ステップS2において、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報の取得が行われる。
【0069】
そして、ステップS3において、今回の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報との比較が行われる。
【0070】
そして、ステップS4において、ステップS3における比較結果に基づいて、チップ6に異常が発生したことが検出されたか否かの判断が行われる。ステップS4において、チップ6に異常が発生したことが検出されたと判断された場合、ステップS5に進む。
【0071】
そして、ステップS5において、ユーザへのチップ6の異常の検出の通知が行われる。その後、チップ交換時期検出処理が終了される。
【0072】
また、ステップS4において、チップ6に異常が発生したことが検出されないと判断された場合、ステップS6に進む。
【0073】
そして、ステップS6において、今回の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報と、チップ6の交換時期のしきい値であるしきい値Th1との比較が行われる。
【0074】
そして、ステップS7において、ステップS6における比較結果に基づいて、時期がチップ6の交換時期であることが検出されたか否かの判断が行われる。ステップS7において、時期がチップ6の交換時期であることが検出されたと判断された場合、ステップS8に進む。
【0075】
そして、ステップS8において、ユーザへのチップ6の交換時期の検出の通知が行われる。そして、ステップS9に進む。
【0076】
また、ステップS7において、時期がチップ6の交換時期であることが検出されないと判断された場合、ステップS8の処理を行わずに、ステップS9に進む。
【0077】
そして、ステップS9において、ダイカストマシン1によるダイカスト製品の生産が終了されるか否かが判断される。ステップS9において、ダイカストマシン1によるダイカスト製品の生産が終了されないと判断された場合、ステップS1に進む。そして、次のショットについて、ステップS1~S9の処理が適宜行われる。また、ステップS9において、ダイカストマシン1によるダイカスト製品の生産が終了されると判断された場合、チップ交換時期検出処理が終了される。
【0078】
(スリーブ交換時期検出処理)
次に、
図13を参照して、本実施形態のダイカストマシン1によるスリーブ交換時期検出処理をフローチャートに基づいて説明する。フローチャートの各処理は、制御部8により行われる。
【0079】
図13に示すように、まず、ステップS11において、チップ6の交換サイクルの取得が行われる。
【0080】
そして、ステップS12において、チップ6の交換サイクルと、スリーブ3の交換時期のしきい値であるしきい値Th3との比較が行われる。
【0081】
そして、ステップS13において、ステップS12における比較結果に基づいて、時期がスリーブ3の交換時期であることが検出されたか否かの判断が行われる。ステップS13において、時期がスリーブ3の交換時期であることが検出されたと判断された場合、ステップS14に進む。
【0082】
そして、ステップS14において、ユーザへのスリーブ3の交換時期の検出の通知が行われる。そして、スリーブ交換時期検出処理が終了される。
【0083】
また、ステップS13において、時期がスリーブ3の交換時期であることが検出されないと判断された場合、ステップS14の処理を行わずに、スリーブ交換時期検出処理が終了される。
【0084】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
【0085】
本実施形態では、上記のように、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報に基づいて、チップ6の交換時期を検出する制御を行う制御部8を設ける。これにより、実際のチップ6の状態を反映した情報である、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報に基づいて、チップ6の交換時期を検出することができる。その結果、消耗品であるチップ6を定期交換する場合と異なり、消耗品であるチップ6をチップ6の実際の寿命の近くまで使用して交換することが可能なダイカストマシン1を提供することができる。また、チップ6の交換時期を検出するための情報として、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報を用いることにより、チップ6の交換時期を検出するための情報として、溶湯の熱の影響などの鋳造条件の影響が大きい射出シリンダ7の射出時の力に関する情報を用いる場合に比べて、実際のチップ6の状態を精度良く反映した情報をチップ6の交換時期を検出するための情報として用いることができる。その結果、チップ6の交換時期を精度良く検出することができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報を、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値を含むように構成する。また、制御部8を、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値が、しきい値Th1以上である場合、時期がチップ6の交換時期であることを検出する制御を行うように構成する。これにより、チップ6の劣化が進行するにつれて射出シリンダ7の射出戻り力に関する値が大きくなることを利用して、しきい値Th1により、時期がチップ6の実際の寿命に近い交換時期であることを容易かつ簡単に検出することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、射出シリンダ7の射出戻り力に関する値を、射出シリンダ7の低圧側の圧力と高圧側の圧力とに基づいて算出された、射出シリンダ7の射出戻り力であるように構成する。これにより、チップ6の交換時期を検出するための情報として、高圧側の圧力のみに基づいて算出された、射出シリンダ7の射出戻り力を用いる場合に比べて、実際のチップ6の状態をより精度良く反映した情報をチップ6の交換時期を検出するための情報として用いることができる。その結果、チップ6の実際の寿命に近い交換時期をより精度良く検出することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、チップ6の交換時期が検出された場合、チップ6の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成する。これにより、ユーザは、使用中のチップ6が交換を要することを認識することができる。その結果、ユーザは、交換を要するチップ6の交換作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、今回の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報と、過去の射出シリンダ7の射出戻り力に関する情報との比較結果に基づいて、チップ6の異常を検出する制御を行うように構成する。これにより、チップ6に異常が発生した場合、チップ6の交換時期とは別途独立して、チップ6の異常を検出することができる。その結果、チップ6に異常が発生した場合に、チップ6の異常に起因してチップ6の交換時期が誤検出されることを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、チップ6の異常が検出された場合、チップ6の異常が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成する。これにより、ユーザは、使用中のチップ6に異常が発生したことを認識することができる。その結果、ユーザは、異常が発生したチップ6の整備作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、チップ6の所定の交換時点から、チップ6の所定の交換時点の次の交換時点までの期間である交換サイクルに基づいて、スリーブ3の交換時期を検出する制御を行うように構成する。ここで、高温の溶湯と触れるスリーブ3は、チップ6と同様に、消耗品であり、定期交換するだけでは、実際の寿命の近くまで使用して交換することが困難である。そこで、上記のように、制御部8を、チップ6の所定の交換時点から、チップ6の所定の交換時点の次の交換時点までの期間である交換サイクルに基づいて、スリーブ3の交換時期を検出する制御を行うように構成することにより、実際のスリーブ3の状態を反映した情報である、チップ6の交換サイクルに基づいて、スリーブ3の交換時期を検出することができる。その結果、チップ6だけでなく、スリーブ3も実際の寿命の近くまで使用して交換することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、交換サイクルが、しきい値Th3以下である場合、時期がスリーブ3の交換時期であることを検出する制御を行うように構成する。これにより、スリーブ3の劣化が進行するにつれてチップ6の交換サイクルが小さくなることを利用して、しきい値Th3により、時期がスリーブ3の交換時期であることを容易かつ簡単に検出することができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、制御部8を、スリーブ3の交換時期が検出された場合、スリーブ3の交換時期が検出されたことをユーザに通知する制御を行うように構成する。これにより、ユーザは、使用中のスリーブ3が交換を要することを認識することができる。その結果、ユーザは、交換を要するスリーブ3の交換作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0094】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0095】
たとえば、上記実施形態では、ダイカストマシンを横型に構成した例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンを縦型に構成してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、射出シリンダの射出戻り力に関する値として、射出シリンダの射出戻り力が用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、射出シリンダの射出戻り力に関する値として、射出シリンダの射出戻り圧力が用いられてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、射出シリンダの低圧側の圧力と高圧側の圧力とに基づいて、射出シリンダの射出戻り力が算出される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、射出シリンダの低圧側の圧力が小さい場合、射出シリンダの低圧側の圧力を用いずに、射出シリンダの高圧側の圧力に基づいて、射出シリンダの射出戻り力が算出されてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、チップの交換時期の検出に加えて、チップの異常の検出が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、チップの交換時期の検出が行われれば、必ずしもチップの異常の検出が行われなくてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、今回の射出シリンダの射出戻り力に関する情報と、過去の射出シリンダの射出戻り力に関する情報との比較結果に基づいて、チップの異常の検出が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、今回の射出シリンダの射出戻り力に関する情報と、予め決められた基準情報との比較結果に基づいて、チップの異常の検出が行われてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、チップの交換時期の検出に加えて、スリーブの交換時期の検出が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、チップの交換時期の検出が行われれば、必ずしもスリーブの交換時期の検出が行われなくてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 ダイカストマシン
2 金型
3 スリーブ
6 チップ
7 射出シリンダ
8 制御部
Th1 しきい値(第1しきい値)
Th3 しきい値(第2しきい値)