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  • 特許-感震センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】感震センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20230706BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20230706BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
G01P15/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019072173
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020169927
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝一
(72)【発明者】
【氏名】三谷 靖幸
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-285952(JP,A)
【文献】特開2016-118421(JP,A)
【文献】特開2004-45232(JP,A)
【文献】特開平6-317605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出部を備えたMEMSセンサと、前記MEMSセンサが出力するアナログ信号をデジタル値に変換するA/D変換部とがハウジングに組み込まれた感震センサであって、
前記加速度検出部の原点を、ひずみ領域から離れた部位に移動させるために、前記直交3軸の方向が、前記ハウジングの水平/垂直方向に対して30度乃至60度の間で設定される所定角度傾いていることを特徴とする感震センサ。
【請求項2】
前記MEMSセンサは第1の基板に実装されると共に、前記第1の基板は第2の基板上に固定されて成り、
前記第2の基板は鉛直方向に起立配置される一方、前記第1の基板は前記第2の基板に対して直交し且つ水平面に対して所定角度傾斜させて配置され、
前記MEMSセンサが所定角度回転して前記第1の基板の実装面に組み付けられることで、加速度を検出する前記直交3軸の方向が前記ハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾くことを特徴とする請求項記載の感震センサ。
【請求項3】
前記MEMSセンサは、台座を介して基板に組み付けられ、
前記基板は水平或いは鉛直方向に配置される一方、前記台座は前記基板の実装面に組み付けられて成り、
前記MEMSセンサを実装する前記台座の実装面が前記基板の実装面に対して所定角度傾斜して成ると共に、前記MEMSセンサが、前記台座の実装面に所定角度回転して組み付けられることで、加速度を検出する前記直交3軸の方向が前記ハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾くことを特徴とする請求項記載の感震センサ。
【請求項4】
加速度を検出する前記直交3軸の方向は、前記MEMSセンサを組み付ける基板の面及びその直交方向と一致し、
前記基板が前記ハウジングの底面及びその垂直方向に対して所定角度傾けられて前記ハウジングの内部に配置されることを特徴とする請求項記載の感震センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感震センサに関し、特にMEMS技術を使用した感震センサに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による電気火災の発生を防止するために分電盤に感震センサを設けて、地震が発生したら電源を遮断して電気機器への通電を停止する機能を設けた分電盤が普及している。
例えば特許文献1には、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を応用して3軸方向の加速度を検出するMEMSセンサを使用して、所定レベルの地震を検知したら遮断信号を出力する感震センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-198518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記MEMSセンサを使用した感震センサは、MEMSセンサがワンチップ化されて基板に組み付けられており、省スペースで組み込むことができた。
しかしながら、MEMSセンサは小さい加速度を検出することが不得意であり、小さい加速度が継続される長周期地震動を精度良く検出するのが難しかった。
【0005】
この理由の一つは、例えばA/D変換部の電子回路によるひずみが考えられる。図4はこの従来のMEMSセンサの直交3軸それぞれの加速度検出部の動作説明図であり、横揺れを検知した場合を示している。Aは検出した加速度波形、Eはゼロクロス付近のひずみ領域を示している。
MEMSセンサが内蔵している加速度検出部は、水平面上で直交するX-Y軸と、鉛直方向のZ軸との直交3軸方向が設定されているが、図4に示すように個々の軸のゼロクロス付近は、ひずみ領域Eが存在するため、小さな加速度の検出が難しい。
一方で、高層マンション、免震構造建物の増加により地震時に水平方向に対し、長い周期かつ大きい変位で揺れる長周期地震動に対する地震検知が求められている。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、長周期地震動の検出を可能とした感震センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出部を備えたMEMSセンサと、MEMSセンサが出力するアナログ信号をデジタル値に変換するA/D変換部とがハウジングに組み込まれた感震センサであって、加速度検出部の原点を、ひずみ領域から離れた部位に移動させるために、直交3軸の方向が、ハウジングの水平/垂直方向に対して30度乃至60度の間で設定される所定角度傾いていることを特徴とする。
この構成によれば、MEMSセンサに組み込まれている加速度検出部の加速度検出方向の直交3軸方向と、感震センサのハウジングの水平/垂直方向とが所定角度異なるため、感震センサを分電盤内の基台等所定の位置に組み付けた状態では、組み付け部位の水平/垂直方向とMEMSセンサの直交3軸方向は一致しない。
そのため、MEMSセンサの3軸それぞれの加速度検出方向に対して従来と異なる重力加速度のバイアスが加わった状態となるため、加速度検出部の加速度ゼロの状態であるゼロクロス点が、個々の軸に対して本来の位置から移動する。よって、ひずみ領域から外れた位置に新たなゼロクロス点を配置でき、加速度が小さい長周期地震動の検出を行うことが可能となる。
【0008】
加えて、30度乃至60度傾けられることで、加速度検出方向の3軸方向に対して発生する重力加速度のバイアスにより、本来のゼロクロス付近のひずみの影響を確実に削減できる。
【0010】
請求項の発明は、請求項に記載の構成においてMEMSセンサは第1の基板に実装されると共に、第1の基板は第2の基板上に固定されて成り、第2の基板は鉛直方向に起立配置される一方、第1の基板は第2の基板に対して直交し且つ水平面に対して所定角度傾斜させて配置され、MEMSセンサを所定角度回転して第1の基板の実装面に組み付けることで、加速度を検出する直交3軸の方向がハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾くことを特徴とする。
この構成によれば、加速度を検出する直交3軸はMEMSセンサの実装方向と2枚の基板の配置形態により、ハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置される。よって、MEMSセンサは3軸に傾斜の無い従来のものが使用できる。
【0011】
請求項の発明は、請求項に記載の構成において、MEMSセンサは、台座を介して基板に組み付けられ、基板は水平或いは鉛直方向に配置される一方、台座は基板の実装面に組み付けられて成り、MEMSセンサを実装する台座の実装面が基板の実装面に対して所定角度傾斜して成ると共に、MEMSセンサが、台座の実装面に所定角度回転して組み付けられることで、加速度を検出する直交3軸の方向がハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾くことを特徴とする。
この構成によれば、MEMSセンサは台座を介して基板に組み付けられるため、基板がハウジング底面或いは側面に平行に配置されても、加速度を検出する直交3軸はハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置される。よって、MEMSセンサは3軸に傾斜の無い従来のものが使用できるし、従来の基板取付形態を変更すること無く加速度を検出する直交3軸を傾けて配置できる。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の構成において、加速度を検出する直交3軸の方向は、MEMSセンサを組み付ける基板の面及びその直交方向と一致し、基板がハウジングの底面及びその垂直方向に対して所定角度傾けられてハウジングの内部に配置されることを特徴とする。
この構成によれば、基板がハウジングの底面或いは側面に対して傾斜配置されるため、MEMSセンサの加速度を検出する3軸は、ハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置される。よって、基板によって加速度検出方向が傾斜配置されるため、MEMSセンサは3軸に傾斜の無い従来のものが使用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、MEMSセンサに組み込まれている加速度検出部の加速度検出方向の直交3軸方向と、感震センサのハウジングの水平/垂直方向とが所定角度異なるため、感震センサを分電盤内の基台等所定の位置に組み付けた状態では、組み付け部位の水平/垂直方向とMEMSセンサの直交3軸方向は一致しない。
そのため、MEMSセンサの3軸それぞれの加速度検出方向に対して従来と異なる重力加速度のバイアスが加わった状態となるため、加速度検出部の加速度ゼロの状態であるゼロクロス点が、個々の軸に対して本来の位置から移動する。よって、ひずみ領域から外れた位置に新たなゼロクロス点を配置でき、加速度が小さい長周期地震動の検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る感震センサの一例を示す構成図である。
図2】MEMSセンサを組み付け形態を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図3】45度傾けたMEMSセンサの直交3軸それぞれの加速度検出部の動作説明図である。
図4】従来の設置状態のMEMSセンサの直交3軸それぞれの加速度検出部の動作説明図である。
図5】MEMSセンサ組み付けの他の形態を示し、台座を使用して基板に組み付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る感震センサ10の一例を示す構成図であり、1は加速度センサとしてのMEMSセンサ、2はA/Dコンバータ、3はA/Dコンバータ2からのデータ基に、地震レベルを演算・判定する演算部である感震センサCPUである。
【0016】
MEMSセンサ1は、MEMS技術を使用して作製された公知の加速度センサであり、直交3軸方向の加速度を検出する3つの加速度検出部が組み込まれ、1チップICとして作製されている。
そして、MEMSセンサ1に組み込まれている加速度検出部の3軸X,Y,Zは、ICの基板への装着面に平行にX,Y軸が配置され、装着面に直交する方向にZ軸が配置されている。
【0017】
A/Dコンバータ2は、MEMSセンサ1が出力するアナログ信号をデジタル変換して感震センサCPU3に出力する。
感震センサCPU3は、デジタル変換されたMEMSセンサ1の出力信号を基に、震度を算出して出力する。
【0018】
図2はMEMSセンサ1を基板に組み付けた説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。図2に示すように、1チップICから成るMEMSセンサ1は、プリント基板から成る第1の基板4に実装され、この第1の基板4が同様にプリント基板から成る第2の基板5に固着されている。
【0019】
第1の基板4は、鉛直方向に起立配置された第2の基板5に対して、その面上に水平面から所定の傾斜角S1を設けて立設され、この第1の基板4の実装面4aにMEMSセンサ1が所定の角度S2回転させた状態で実装されている。
即ち、MEMSセンサ1の加速度を検出する3つの加速度検出部の軸(X',Y',Z')全てが、水平面上に配置されるX軸、Y軸、その鉛直方向を向くZ軸に対して異なる角度となるよう実装される。
そして、ここでは傾斜角S1、回転角S2は何れも45度となっており、加速度を検出する3つの加速度検出部の軸(X',Y',Z')は、上記直交3軸に対して45度傾いた状態で組み付けられる。
【0020】
そして、このようにMEMSセンサ1が組み付けられた第2の基板5が、図示しないハウジングにA/Dコンバータ2、感震センサCPU3と共に収容され、感震センサ10は形成される。その際、第2の基板5は、ハウジングの背面或いは側面に平行に配置されて組み付けられ、ハウジングは分電盤等の取付対象に傾斜配置等せず従来と同様に地面に対して垂直な面に取り付けられる。
【0021】
図3は、こうして加速度を検出する直交3軸を45度傾けたMEMSセンサ1の加速度検出部の動作説明図であり、横揺れが発生した場合を示している。Aは検出した加速度波形、Eはひずみ領域を示し、検出が不安定な領域を示している。
図3に示すように、直交3軸方向に配置された加速度検出部の各軸が45度傾けられることで、各加速度検出部には重力による加速度が常時発生した状態となる(具体的には、ルート3分の1の重力が加わった状態となる。)。
そのため図3に示すように、ひずみ領域Eから離れた部位に原点が移動し、小さな横揺れが発生しても3軸全で加速度の検出が可能となる。こうして、精度の高い観測が可能となる。
【0022】
一方、従来の設置状態のMEMSセンサ1の場合、上記図4に示すように横揺れはZ軸方向の加速度検出部は加速度を検出しないし、水平面内のX,Y軸方向は、小さい加速度はひずみ領域Eに埋もれて観測できず、ひずみ領域Eより大きな加速度のピークを僅かに検出する程度である。
【0023】
このように、MEMSセンサ1に組み込まれている加速度検出部の加速度検出方向の直交3軸方向と、感震センサ10のハウジングの水平/垂直方向とが所定角度(45度)異なるため、感震センサ10を分電盤内の基台等所定の位置に組み付けた状態では、組み付け部位の水平/垂直方向とMEMSセンサ1の直交3軸方向は一致しない。
そのため、MEMSセンサ1の3軸それぞれの加速度検出方向に対して従来と異なる重力加速度のバイアスが加わった状態となるため、加速度検出部の加速度ゼロの状態であるゼロクロス点が、個々の軸に対して本来の位置から移動する。よって、ひずみ領域から外れた位置に新たなゼロクロス点を配置でき、加速度が小さい長周期地震動の検出を行うことが可能となる。
そして、加速度検出方向の3軸の方向が45度傾けられるため、直交3軸の方向は等しい重力加速度のバイアスが効率良く加わる。よって、本来のゼロクロス付近のひずみの影響を確実に無くすことができ、加速度が小さい長周期地震動の検出を良好に実施できる。
加えて、MEMSセンサは実装方向と2枚の基板4,5の配置形態により、感震センサCPU3が実装された第2の基板5がハウジング底面或いは側面に平行に配置されても、加速度を検出する直交3軸はハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置される。よって、MEMSセンサ1は3軸に傾斜の無い従来のものが使用できる。
【0024】
尚、上記実施形態では、MEMSセンサ1を自身の実装角度と第1の基板4とよりに傾斜させているが、第1の基板4を介さずに第2の基板5に組み付け、第2の基板5自体をハウジング内に傾斜配置しても良い。このように構成しても、MEMSセンサ1の加速度を検出する3軸はハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置されるため、MEMSセンサ1は3軸に傾斜の無い従来のものを使用して、長周期地震動の検出が可能となる。
【0025】
図5はMEMSセンサ1の他の組み付け形態を示し、第1の基板4に替えて台座11を使用し、水平に配置した第3の基板12上に台座11を配置した構成を示している。図5に示すように、1チップICから成るMEMSセンサ1は、台座11を介して第3の基板12に実装しても良い。尚、6はA/Dコンバータ2と感震センサCPU3を一体化したICを示している。
【0026】
具体的に、台座11はMEMSセンサ1を組み付ける実装面11aが、第3の基板12の実装面12aに密着する底面に対して傾斜形成され、上面及び底面が直角2等辺三角形を有する三角柱を倒したような形状を有している。尚、第3の基板12の実装面12aからの傾斜角S3,MEMSセンサ1の回転角S4は何れも45度となっている。
このような形状の台座11にMEMSセンサ1を組み付けることで、第3の基板12の直交3軸(第3の基板12の実装面12aにX軸,Y軸が平行に配置され、Z軸は実装面12aに直交配置される)に対して、MEMSセンサ1は45度傾いた状態となる。即ち、加速度を検出する3つの加速度検出部の軸は全て第3の基板12の直交3軸に対して45度傾いた状態で組み付けられる。
尚、第3の基板12は垂直に配置しても良く、その場合もMEMSセンサ1の加速度検出部の3軸は全て第3の基板12の直交3軸に対して45度傾いた状態にできる。
【0027】
このように、MEMSセンサ1は台座11を介して第3の基板12に組み付けられるため、第3の基板12がハウジング底面或いは側面に平行に配置されても、加速度を検出する直交3軸はハウジングの水平/垂直方向に対して所定角度傾斜配置される。よって、MEMSセンサ1は3軸に傾斜の無い従来のものが使用できるし、従来の基板取付形態を変更すること無く加速度を検出する直交3軸を傾けて配置できる。
【0028】
尚、上記実施形態は、何れもMEMSセンサ1を組み付ける段階で加速度検出方向に角度を持たせているが、MEMSセンサ1を作製する段階で、内部の加速度検出部の形成する直交3軸自体を傾斜させても良い。
また、3軸全てを45度傾けているが、30度程度の傾斜(或いは45度を超えて60度の傾斜)でも良く、加速度検出方向の3軸方向に対して発生する重力加速度のバイアスにより、本来のゼロクロス付近のひずみの影響を確実に削減でき、小さな加速度の検出は可能である。
【符号の説明】
【0029】
1・・MEMSセンサ(加速度センサ)、2・・A/D変換部、3・・感震センサCPU(演算部)、4・・第1の基板(基板)、4a・・実装面、5・・第2の基板(基板)、10・・感震センサ、11・・台座、11a・・実装面、12・・第3の基板(基板)。
図1
図2
図3
図4
図5