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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】車両充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230706BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230706BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230706BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230706BHJP
   B60L 53/63 20190101ALI20230706BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20230706BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20230706BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J13/00 311T
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
B60L53/63
B60L53/67
B60L53/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019084360
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020182330
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】三谷 靖幸
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023204(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099160(WO,A1)
【文献】特開2013-066372(JP,A)
【文献】特開2013-153601(JP,A)
【文献】特開2012-257436(JP,A)
【文献】特開2011-188657(JP,A)
【文献】特開2015-106962(JP,A)
【文献】特開2013-225971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 13/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 53/63
B60L 53/67
B60L 53/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を充電するための複数の充電器と、前記充電器の充電電流を一括制御する充電制御部と、充電対象車両の蓄電池容量情報、満充電時の走行距離情報、更に蓄電池残量情報を入手する車両情報入手部と、を有し、
前記充電制御部は、充電する車両に優先順位を設定するために車両毎に設けた充電量の閾値を記憶すると共に、当該閾値を前記車両情報入手部から入手した情報を基に算出した所定の距離を走行可能とするための充電量とし、
充電量が前記閾値に達していない車両の充電を、閾値以上に充電が進んでいる車両より優先する充電制御を実施し、
且つ商用電力からの受電電力情報を電力量計から入手して、受電電力のデマンド値が設定された基準値を超えないよう個々の車両に対して充電制御を実施し、
受電電力が前記基準値を超えると予想された場合、前記閾値に達した車両から充電電流を削減する制御を行うことを特徴とする車両充電装置。
【請求項2】
車両を充電するための複数の充電器と、前記充電器の充電電流を一括制御する充電制御部と、充電対象車両の蓄電池容量情報、蓄電池残量情報を入手する車両情報入手部と、を有し、
前記充電制御部は、充電する車両に優先順位を設定するために車両毎に設けた充電量の閾値を記憶すると共に、当該閾値を前記車両情報入手部から入手した情報を基に算出した満充電に対して所定の充電率となる充電量とし、
充電量が前記閾値に達していない車両の充電を、閾値以上に充電が進んでいる車両より優先する充電制御を実施し、
且つ商用電力からの受電電力情報を電力量計から入手して、受電電力のデマンド値が設定された基準値を超えないよう個々の車両に対して充電制御を実施し、
受電電力が前記基準値を超えると予想された場合、前記閾値に達した車両から充電電流を削減する制御を行うことを特徴とする車両充電装置。
【請求項3】
前記充電制御部は、前記閾値に達した車両のグループの中で充電を開始してからの充電量の多い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の低い車両から順に充電電流を削減することを特徴とする請求項1又は2記載の車両充電装置。
【請求項4】
前記充電制御部は、前記閾値に達した車両のグループの中で充電を開始してからの充電時間の長い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の低い車両から順に充電電流を削減することを特徴とする請求項1又は2記載の車両充電装置。
【請求項5】
前記充電制御部は、受電電力が基準値を下回っている場合、充電量が前記閾値未満の車両から充電電流を増加さる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両充電装置。
【請求項6】
前記充電制御部は、前記閾値を下回る車両のグループの中で充電を開始してからの充電量の多い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の高い車両から順に充電電流を増加させることを特徴とする請求項5記載の車両充電装置。
【請求項7】
前記充電制御部は、前記閾値を下回る車両のグループの中で充電を開始してからの充電時間の長い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の高い車両から順に充電電流を増加させることを特徴とする請求項5記載の車両充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両充電装置に関し、詳しくは店舗等に設置されて同時に複数の電気自動車を充電可能な車両充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の車両を複数同時に充電可能とする充電装置には、充電する車両に対して優先順位を設けて、優先順位の高い車両ほど充電電流を大きくする制御を実施するものがある。例えば、特許文献1の車両充電システムでは、車両の現在の充電量と車両内の蓄電池の電池容量を基に優先順位を設定して制御され、且つ全体の電力量がピーク電力量(予め設定された電力量の数値、或いはデマンド値)を超えないように制御して充電が実施された。
【0003】
ここでデマンド値について説明する。電気料金の基本料金には、過去1年間(当月と前11ヶ月)のデマンド値(30分毎の平均使用電力の1ヶ月間最大値)の最大値(最大デマンド値)が適用されるため、1ヶ月のうちで一度でも過去11ヶ月のデマンド値より大きなデマンド値が計測されると、その値を基準に以降一年間の電気料金の基本料金が決定されることになる。つまり、電気料金の削減には、デマンド値を抑えて契約電力を下げるデマンド制御を行うことが有効になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-162555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術は、電池容量に合わせて優先順位が設定されるため、多くの充電電力を必要とする車両ほど優先順位を高く設定して大きな電流で充電でき、効率の良い充電を実施できた。また、ピーク電力量を超えないように全体の電流を制限するため、電気料金の上昇を抑制できた。
しかしながら、ある程度充電された車は満充電に至らなくても十分な距離を走行できるため、その後は充電電流を抑制しても、利用者に不都合となる問題は発生し難い。そして、こうして削減した電力を充電が開始されたばかりの充電量の少ない車両の充電に回せば、デマンド制御中であっても所定の充電量までの時間を短縮でき利便性が良い。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、充電量に閾値を設けて、商用電力からの受電電力を制限するデマンド制御が実施されも、閾値に達していない車両の充電を優先して実施し、閾値に達するまでの時間を短くできる電気自動車充電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明にかかる車両充電装置は、車両を充電するための複数の充電器と、充電器の充電電流を一括制御する充電制御部と、充電対象車両の蓄電池容量情報、満充電時の走行距離情報、更に蓄電池残量情報を入手する車両情報入手部と、を有し、充電制御部は、充電する車両に優先順位を設定するために車両毎に設けた充電量の閾値を記憶すると共に、当該閾値を車両情報入手部から入手した情報を基に算出した所定の距離を走行可能とするための充電量とし、充電量が閾値に達していない車両の充電を、閾値以上に充電が進んでいる車両より優先する充電制御を実施し、且つ商用電力からの受電電力情報を電力量計から入手して、受電電力のデマンド値が設定された基準値を超えないよう個々の車両に対して充電制御を実施し、受電電力が基準値を超えると予想された場合、閾値に達した車両から充電電流を削減する制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、商用電力の受電電力を制限するデマンド制御が実施されても、充電量が閾値に達していない車両は優先的に充電される。よって、ある程度の距離を走行できる閾値までの充電時間を短くでき、全体の電流が制限される状況でも利用者が感じるストレスを軽減できる。
また、閾値に達していない車両は電流削減制御の影響を受け難く、閾値までの充電が優先されるし、閾値は所定の距離の走行を可能とする充電量で設定されるため、例えば帰宅に要する充電量までは優先的に充電でき、利用者にとって利便性が良い。
【0008】
請求項2の発明に係る車両充電装置は、車両を充電するための複数の充電器と、充電器の充電電流を一括制御する充電制御部と、充電対象車両の蓄電池容量情報、蓄電池残量情報を入手する車両情報入手部と、を有し、充電制御部は、充電する車両に優先順位を設定するために車両毎に設けた充電量の閾値を記憶すると共に、当該閾値を車両情報入手部から入手した情報を基に算出した満充電に対して所定の充電率となる充電量とし、充電量が閾値に達していない車両の充電を、閾値以上に充電が進んでいる車両より優先する充電制御を実施し、且つ商用電力からの受電電力情報を電力量計から入手して、受電電力のデマンド値が設定された基準値を超えないよう個々の車両に対して充電制御を実施し、受電電力が基準値を超えると予想された場合、閾値に達した車両から充電電流を削減する制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、商用電力の受電電力を制限するデマンド制御が実施されても、充電量が閾値に達していない車両は優先的に充電される。よって、ある程度の距離を走行できる閾値までの充電時間を短くでき、全体の電流が制限される状況でも利用者が感じるストレスを軽減できる。
また、閾値に達していない車両は電流削減制御の影響を受け難く、閾値までの充電が優先されるし、閾値は所定の充電率で設定されるため、車種による不平等を招くことが無く、利用者にとって利便性が良い。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、充電制御部は、閾値に達した車両のグループの中で充電を開始してからの充電量の多い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の低い車両から順に充電電流を削減することを特徴とする。
この構成によれば、閾値に達した車両の中で最も充電量の少ない車両から充電電流が削減されるため、後から充電を開始した車両の充電量が先に充電を開始した車両の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、充電制御部は、閾値に達した車両のグループの中で充電を開始してからの充電時間の長い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の低い車両から順に充電電流を削減することを特徴とする。
この構成によれば、閾値に達した車両の中で最も充電時間の短い車両から充電電流が削減されるため、後から充電を開始した車両の充電量が先に充電を開始した車両の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、充電制御部は、受電電力が基準値を下回っている場合、充電量が閾値未満の車両から充電電流を増加さる制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、受電電力が基準値以下で余力がある場合、まず閾値に達していない車両の充電電流が増加されるため、閾値に至る充電時間を短くでき利便性が良い。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の構成において、充電制御部は、閾値を下回る車両のグループの中で充電を開始してからの充電量の多い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の高い車両から順に充電電流を増加させることを特徴とする。
この構成によれば、充電量が閾値を下回る車両の中で最も充電量の多い車両から充電電流を増加させるため、後から充電を開始した車両の充電量が先に充電を開始した車両の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5に記載の構成において、充電制御部は、閾値を下回る車両のグループの中で充電を開始してからの充電時間の長い順に優先順位を割り振り、その中で最も優先順位の高い車両から順に充電電流を増加させることを特徴とする。
この構成によれば、充電量が閾値を下回る車両の中で最も充電時間の長い車両から順に充電電流を増加させるため、後から充電を開始した車両の充電量が先に充電を開始した車両の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、商用電力の受電電力を制限するデマンド制御が実施されも、充電量が閾値に達していない車両は優先的に充電される。よって、ある程度の距離を走行できる閾値までの充電時間を短くでき、全体の電流が制限される状況でも利用者が感じるストレスを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車両充電装置の一例を示すブロック図である。
図2】優先順位を割り振る流れを示すフローチャートである。
図3】繰り返し処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る車両充電装置の一例を示すブロック図である。車両充電装置1は、図1に示すように、車両4から延びた充電ケーブルL1が接続される複数の充電器2と、スマートメータ(電力量計)10から受電電力情報を入手して電力の制御信号を各充電器に出力する充電制御部3とを有している。
【0019】
充電器2は、充電制御部3からの制御信号を受けて、充電電流を増減する回路(図示せず)を備えている。
充電制御部3は、スマートメータ10に通信線L2を介して接続される計測部31、デマンド値、後述する基準値及び閾値等を記憶する記憶部32、各充電器2への充電電流を決定すると共に充電制御部3の各部を制御する充電制御部CPU34、個々の充電器2と通信する複数の通信部35等を備えている。
【0020】
尚、EVは充電器に接続された車両4の1つである電気自動車(Electric Vehicle)、5は高圧を低圧に変換する降圧変圧器、6は三相電力供給される空調機等の負荷、7は単相100/200Vが供給される照明等の負荷を示している。充電器2には単相200Vの電力が供給される。
【0021】
このように構成された車両充電装置の充電制御は、以下のように実施される。まず、充電電流を割り振る優先順位が設定される。
図2は充電する車両4の優先順位を割り振る流れを示し、図2を参照して説明する。充電制御部CPU34は、充電器2に車両4が接続されて(車両4の充電プラグが接続されて)、充電開始操作が成されると、既定値の電流で充電が開始される。同時に、既に充電制御を実施している他の車両4と合わせて、優先順位の割り振りが行われる。
まず、充電量が閾値未満の車両4の数(未達成数:n)を把握(S1)し、次に閾値以上の充電が成されている車両4の数(達成数:m)を把握(S2)する。
尚、充電制御部CPU34は、個々の車両4に対する充電を開始してからの充電量を、充電電流と充電時間により把握し、この値と閾値とを比較し判断する。
【0022】
次に、未達成数nに含まれる車両4を充電量の多い順に並べて、1番目からn番目と順位付けして割り振り(S3)、更に達成数mに含まれる車両4を充電量の多い順に並べて、n+1番目からn+m番目まで順位付けして割り振る(S4)。こうして1番目からn+m番まで順番付けが成され、1~n番目の車両4の中では1番目の車両4の充電量が最も多く、n番目の車両4が最も少ない。また、n+1~n+m番目の車両4の中ではn+1番目の車両4の充電量が最も多く、n+m番目の車両4の充電量が最も少ない順となる。このように優先順位を割り振った後、電流の増減制御に進む。
【0023】
図3は、順番付けされた個々の車両4に対する電流の増減制御の流れを示すフローチャートを示し、このフローを参照して制御を説明する。この制御は充電制御部3が一括して実施され、デマンド値或いは基準値に対して現在の受電電力がどうかで制御は大きく変化する。
尚、基準値とは、最大デマンド値より例えば10%小さい電力値であり、最大デマンド値を削減して契約料金を削減するために需要家が設定する数値を示すものである。
【0024】
以下、制御の判断基準が基準値である場合を説明する。優先順位の割り振り(S11)情報を受けて、まず逸脱情報が0に等しい場合(S12で左へ進む)、即ち現在の受電電力が基準値にほぼ等しい場合は、何れの車両4の充電電流も変更せず終了し、最初のステップであるS11に戻り、優先順位の割り振りが行われる。
但し、逸脱情報は次式の式1のように定義された値である。
逸脱情報=現在の受電電力-基準値 ・・・(式1)
【0025】
次に逸脱情報が正の値の場合(S12で下へ進む)、即ち受電電力が基準値を超えている場合は、電流を削減する制御が実施される。尚、正確には、現在の受電電力から30分間の平均電力を計算して予想した場合、基準値を超える可能性があると判断した場合、電流を削減する制御が実施される。
具体的に、オーバーする電流値(逸脱値)を次の式2で算出(S13)し、閾値に達して且つ充電量の最も少ない車両4から順に充電電流の削減制御(S14)が実施される。
逸脱値=逸脱情報/電圧 ・・・ (式2)
【0026】
但し、車両1台あたり最大の削減量は、現在の電流値から所定の最小電流値を引いた値か、算出した逸脱値のうちの小さい方とする(S15)。例えば、逸脱値が10アンペアで、現在の電流値から所定の最小電流値を引いた値が5アンペアであれば、5アンペアが選択され、最も充電量の多いn+m番目の車両4の充電電流を5アンペア削減する制御が実施される。こうして、閾値に達した中で最も充電量の少ない車両4は充電電流削減の最優先対象となる。換言すれば、充電の優先度が最下位となる。
【0027】
そして、逸脱値から削減した電流値を引いた電流値を新たな逸脱値とし(S16)、逸脱値が0に成るまで或いは全ての充電車両4に対してS14からS17のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が通信部35から個々の充電器2に通知(S23)され、このS11からS23の制御が所定の時間間隔で繰り返されて充電電流が制御される。
このように、閾値に達した車両4の中で最も充電量の少ない車両4から充電電流が削減されるため、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0028】
一方、逸脱情報が負の場合、即ち受電電力が基準値に達していない場合は、充電電流を増やす制御が実施される。
具体的に、増やせる電流値(余裕値)を次式の式3で算出(S18)し、閾値に満たない車両4の内、充電量の最も多い車両4から少ない車両4の順に充電電流を増加させる(S19)。
余裕値=-逸脱情報/電圧 ・・・(式3)
【0029】
但し、車両1台あたり最大の増加量は、所定の充電最大電流値から現在の電流値を引いた値か算出した余裕値のうちの小さい方とする(S20)。例えば、充電最大電流値から現在の電流値を引いた値が5アンペアで、余裕値が10アンペアであれば、5アンペアが選択されて最も充電量の少ない1番目の車両4の充電電流を5アンペア増やす制御が実施される。
こうして、閾値に達していない車両4の中で最も充電量の多い車両4が、充電電流増加の最優先対象となり、電流増が実施される。
【0030】
そして、余裕値から増加させた電流値を引いた電流値を新たな余裕値とし(S21)、余裕値が0になるまで或いは全ての充電車両4に対してS18からS22のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が個々の充電器2に通知(S23)され、充電が制御される。
このように、充電量が閾値を下回る車両4の中で最も充電量の多い車両4から充電電流を増加させるため、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0031】
ここで閾値を説明する。閾値は走行可能距離や車両4に搭載された蓄電池の充電率で設定され、充電制御部CPU34の制御により車両4毎に設定される。
所定距離の走行を可能とする充電量で設定される場合、充電制御部CPU34の制御により、充電器2に接続された図示しない充電プラグを介して車両4から必要な情報を入手する。例えば蓄電池容量情報、満充電時の走行距離情報、さらに蓄電池残量情報を入手して、これらの情報を基に例えば50km走行するのに必要な充電量を算出し、その充電量から蓄電池残量を削減した値を閾値とする。
また、蓄電池の充電率で設定される場合、車両4の蓄電池容量情報、蓄電池残量情報を入手して、一律満充電の例えば20%の充電量を確保するのに新たに必要な充電量を算出して閾値とする。
尚、閾値の算出に必要な車両情報は、車両から直接入手せずに、車両情報が蓄積されたサーバをクラウド上に配置し、車両充電装置1にそのサーバとの通信機能を設けて入手しても良い。
【0032】
このように、商用電力の受電電力を制限するデマンド制御が実施されも、充電量が閾値に達していない車両4は優先的に充電される。よって、ある程度の距離を走行できるまでの充電時間を短くでき、全体の電流が制限される状況でも利用者が感じるストレスを軽減できる。
また、閾値に達していない車両4は電流削減制御の影響を受け難く、閾値までの充電が優先されるし、受電電力が基準値以下で余力がある場合は、まず閾値に達していない車両4の充電電流が増加されるため、閾値に至る充電時間を短くでき利便性が良い。
加えて、閾値を例えば帰宅するのに十分な距離の走行を可能とする充電量とすれば、帰宅するための充電は優先的に行われるため、利用者にとって利便性が良い。
また、閾値を蓄電池の所定の充電率で設定すれば、車種による不平等を招くことが無い。
【0033】
尚、上記実施形態では、充電量を基準に優先順位を割り振っているが、充電時間を基準に優先順位を割り振っても良い。その場合、図2のS4、S4の「充電量の多い順に並べ」を「充電時間の長い順に並べ」とすることで実施できる。
そして、この制御によっても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。即ち、充電電流を削減する場合、閾値に達した車両4の中で最も充電時間の短い車両4から充電電流が削減されるため、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
また、充電電流を増やす場合、充電量が閾値を下回る車両4の中で最も充電時間の長い車両4から順に充電電流が増加されるため、後から充電を開始した車両4の充電量が先に充電を開始した車両4の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【符号の説明】
【0034】
1・・車両充電装置、2・・充電器(車両情報入手部)、3・・充電制御部、4・・車両、10・・電力量計、31・・計測部、32・・記憶部(閾値記憶部)、34・・充電制御部CPU、35・・通信部。
図1
図2
図3