(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20230706BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20230706BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20230706BHJP
B65G 17/26 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
B25J5/00 A
B65G1/00 501C
B65G17/26 C
(21)【出願番号】P 2019104698
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2021-12-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト/ロボットのプラットフォーム化技術開発(ハードウェア)/人と共働して軽作業をするロボットプラットフォームの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永塚 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山之上 祥介
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕希
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517875(JP,A)
【文献】特開2017-87404(JP,A)
【文献】特開平4-183318(JP,A)
【文献】特開2006-34257(JP,A)
【文献】特開平9-267277(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108527378(CN,A)
【文献】実公昭58-18749(JP,Y2)
【文献】実開昭62-203781(JP,U)
【文献】特許第5903449(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B65G 1/00
B65G 17/26
A47B 31/00
A47G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持可能なハンド部を有するマニピュレータ装置と、
複数の前記対象物を収容可能な収容部を有する収容装置と、
を備え、
前記マニピュレータ装置は、前記マニピュレータ装置の本体部であるマニピュレータ本体部に対する前記ハンド部の位置が制御可能に構成され、
前記収容装置は、前記収容部に収容されている該対象物を1つずつ、前記収容装置において前記ハンド部がアクセス可能な所定位置に運ぶように構成され、
前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結された状態で、前記マニピュレータ装置と前記収容装置は一体で走行可能に構成され、
前記所定位置は、前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結されて前記マニピュレータ装置と前記収容装置が一体となった状態で、該マニピュレータ本体部を基準としたときに既知の位置として設定さ
れ、
前記マニピュレータ本体部と前記収容装置との連結及びその解除は自在に構成され、
前記マニピュレータ装置と前記収容装置との少なくとも一方が、自律走行が可能に構成される、
搬送システム。
【請求項2】
前記収容部は、
前記複数の対象物を、それぞれ上下方向に並べて配置するように構成された複数の配置部と、
前記複数の配置部を上下方向に駆動する駆動部と、
前記複数の配置部の少なくとも何れかに前記対象物が配置されている場合には、配置されている該対象物のうち最も上方に位置する最上対象物が前記所定位置に位置するように前記駆動部を制御する制御部と、
を有する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記マニピュレータ装置は、
前記マニピュレータ本体部であるロボット本体部と、
第1の前記ハンド部である第1ハンド部を有し、前記ロボット本体部に対する該第1ハンド部の位置が制御可能に構成された第1アーム部と、
第2の前記ハンド部である第2ハンド部を有し、前記ロボット本体部に対する該第2ハンド部の位置が制御可能に構成された第2アーム部と、
を有し、
前記ロボット本体部は、前記第1アーム部と前記第2アーム部の姿勢を維持した状態で両者を昇降させる昇降関節部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記ロボット本体部は、更に、前記第1アーム部と前記第2アーム部の姿勢を維持した状態で両者をヨー軸回りに回転させるヨー軸関節部を有する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
対象物を把持可能なハンド部を有するマニピュレータ装置と、
複数の前記対象物を収容可能な収容部を有する収容装置と、
を備え、
前記マニピュレータ装置は、前記マニピュレータ装置の本体部であるマニピュレータ本体部に対する前記ハンド部の位置が制御可能に構成され、
前記収容装置は、前記収容部に収容されている該対象物を1つずつ、前記収容装置において前記ハンド部がアクセス可能な所定位置に運ぶように構成され、
前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結された状態で、前記マニピュレータ装置と前記収容装置は一体で走行可能に構成され、
前記所定位置は、前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結されて前記マニピュレータ装置と前記収容装置が一体となった状態で、該マニピュレータ本体部を基準としたときに既知の位置として設定され、
前記マニピュレータ本体部と前記収容装置との連結及びその解除は自在に構成され、
前記収容装置が、前記収容部に収容される前記対象物を収容するための収容場所と、該収容される該対象物を搬送する搬送先との間を移動するように、該収容装置に対して制御信号を送信する処理装置を、更に備え、
前記マニピュレータ装置は、前記処理装置又は前記収容装置から前記搬送先に関する情報を受け取って該搬送先に移動し、前記マニピュレータ本体部を前記収容装置に連結させ、
前記マニピュレータ装置による、前記収容部に収容された前記対象物の取り出しが終了すると、該マニピュレータ装置は、前記マニピュレータ本体部と前記収容装置との連結を解除する、
搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の搬送を行う搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ロボットは日常の生活に広く利用されてきている。例えば、特許文献1には、ユーザに対して飲食物等の対象物を搬送するロボットが開示されている。当該ロボットは、対象物を載せるトレイを有し、その上に対象物を載せた状態でユーザの元まで移動することで、上記搬送を行っている。しかし、このようにロボットを用いた搬送システムでは、一度に多くの対象物を搬送することは容易ではなく、また、搬送中における対象物への影響(例えば、揺れや転倒等)を考慮して、その搬送時の速度等は大きく制限される。
【0003】
また、対象物を搬送するシステムとしては、例えば特許文献2や特許文献3に示す配膳車が例示できる。これらの配膳車は、一度に多くの対象物(ユーザに配膳される飲食物)を収容できるとともに、その対象物の取り出しを容易にするために、配膳車内にリフタ(昇降装置)が設けられている。そして、配膳車は、所定の出入口から内部に収容されている対象物の取り出しが可能となるように構成されている。また、特許文献4には、車椅子利用者による飲食物の配膳を円滑に行うために、車椅子の側方にリフト機能を有した収容棚を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第108527378号明細書
【文献】実公昭58-18749号公報
【文献】実開昭62-203781号公報
【文献】特許第5903449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットの多機能性に着目し日常生活での利用は幅広く提案されており、上記の通り、飲食物等の対象物の搬送場面においてもロボットの利用が検討されている。特に、多くの対象物を搬送し、その搬送先で対象物を収容場所から取り出したりユーザに渡したりする作業を行う場面でも、ロボットは有用に利用し得るものである。しかし、ロボットにこのような有用な動作を実行させるためには、ロボットを的確に制御する必要がある。例えば、対象物の詳細な認識処理や、ロボットのエンドエフェクタ等のハンド部による把持のための位置決め処理等、多くの処理が必要となり、一般にこのような処理の実行は容易ではない。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、対象物の好適な搬送を実現し得る搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、上記課題を解決するために、対象物を把持するためのハンド部を有するマニピュレータ装置と複数の対象物を収容する収容装置とを連結して一体にした状態で走行可能とするとともに、ハンド部がアクセス可能となるように、収容装置において予め定められた所定位置に対象物が運ばれる構成を採用した。このような構成により、マニピュレータ装置のハンド部による対象物の把持を容易な制御により実現することができる。
【0008】
詳細には、本発明は対象物を把持可能なハンド部を有するマニピュレータ装置と、複数の前記対象物を収容可能な収容部を有する収容装置と、を備え、前記マニピュレータ装置は、前記マニピュレータ装置の本体部であるマニピュレータ本体部に対する前記ハンド部の位置が制御可能に構成され、前記収容装置は、前記収容部に収容されている該対象物を1つずつ、前記収容装置において前記ハンド部がアクセス可能な所定位置に運ぶように構成される搬送システムである。そして、前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結された状態で、前記マニピュレータ装置と前記収容装置は一体で走行可能に構成され、また、前記所定位置は、前記マニピュレータ本体部と前記収容装置が連結されて前記マニピュレータ装置と前記収容装置が一体となった状態で、該マニピュレータ本体部を基準としたときに既知の位置として設定される。
【発明の効果】
【0009】
対象物の好適な搬送を実現し得る搬送システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】搬送システムに含まれるロボットの概略構造を示す第1の図である。
【
図3】搬送システムに含まれるロボットの概略構造を示す第2の図である。
【
図4】搬送システムに含まれるロボットの概略構造を示す第3の図である。
【
図5】ロボットにおける関節軸を説明する図である。
【
図6】搬送システムに含まれる収容装置の概略構造を示す図である。
【
図7】
図6の収容装置に含まれる収容棚の概略構造を示す図である。
【
図8】
図7の収容棚に含まれるチェーンの構造を示す図である。
【
図9】
図7の収容棚に含まれるトレイ台座の構造を示す図である。
【
図12】搬送システムで実行される、対象物の搬出処理の第1のフローチャートである。
【
図13】搬送システムで実行される、対象物の搬出処理の第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の搬送システムは、対象物を把持可能なハンド部を有するマニピュレータ装置と、複数の対象物を収容可能な収容装置との組み合わせにより構成される。ここで、マニピュレータ装置が有するハンド部は、対象物を把持できる構成であれば、任意の形態のものを採用することができる。例えば、ハンド部として、複数本の指部で挟むように構成された機構を採用できる。また、別法として、吸引や吸着の作用により対象物を把持する形態も、ハンド部に適用することができる。そして、マニピュレータ装置は、その本体部であるマニピュレータ本体部に対してハンド部の位置が制御可能に構成されている。そのため、対象物に対するハンド部の位置決めやハンド部により把持された対象物の移動が可能となる。なお、本開示では、マニピュレータ本体部に対するハンド部の変位のための機構は、特定の形態の機構に限定されない。例えば、当該機構は、複数のリンクにより形成されるリンク機構、複数の関節部を有するアーム機構等により変位を実現するものであってもよい。
【0012】
例えば、前記マニピュレータ装置は、前記マニピュレータ本体部であるロボット本体部と、第1の前記ハンド部である第1ハンド部を有し、前記ロボット本体部に対する該第1ハンド部の位置が制御可能に構成された第1アーム部と、第2の前記ハンド部である第2ハンド部を有し、前記ロボット本体部に対する該第2ハンド部の位置が制御可能に構成された第2アーム部と、を有するロボットとして構成されてもよい。更に、当該マニピュレ
ータ装置は、更なるアーム部を有していても構わない。
【0013】
また、収容装置は、収容部内に複数の対象物が収容可能であり、そこに収容されている対象物は1つずつ所定位置に運ばれるように構成される。当該所定位置は、収容装置においてハンド部がアクセス可能な位置である。そのため、所定位置に運ばれた対象物はハンド部によって把持され、更に、ハンド部とマニピュレータ本体部との位置制御によって把持された対象物は任意の位置に移動され得る。
【0014】
このように構成される搬送システムは、更に、マニピュレータ本体部と収容装置とが連結されてマニピュレータ装置と収容装置が一体となって走行することが可能となるように構成される。そのため、収容部に複数の対象物を収容した状態で、マニピュレータ装置と収容装置が共に対象物の搬送先に移動でき、その場で、収容されていた対象物の一部又は全部をマニピュレータ装置により搬出することが可能となる。
【0015】
このように上記搬送システムでは、所定位置が、上記のようにマニピュレータ装置と収容装置が一体となった状態で、該マニピュレータ本体部を基準としたときに既知の位置として設定されている。この結果、対象物の把持を行う際に、マニピュレータ装置と収容装置の相対関係は固定化されるため、マニピュレータ本体部から見たときに把持すべき対象物は、常に既知の場所(所定位置)に位置決めされていることになる。そのため、マニピュレータ装置におけるハンド部の位置制御を容易なものとすることができる。すなわち、所定位置の相対的な位置関係が既知であれば、ハンド部による把持を行う際に、対象物の位置を詳細に認識する必要がなくなり、又は、その認識のための処理を軽減することができる。このことは、対象物を収容部から1つずつ取り出す作業の負荷を軽減することになるため、好適な対象物の搬送を実現することができる。
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
<搬送システム1の構成>
先ず、本実施形態の搬送システムの概略構成について、
図1に基づいて説明する。搬送システム1は、本開示のマニピュレータ装置に相当するロボット10と、収容装置95を含む。詳細は後述するが、ロボット10は、ロボット本体部30に取り付けられた2本の腕部50と、ロボット本体部30に含まれる骨盤部16と、骨盤部16から下方に取り付けられた脚部35を有している。なお、腕部50の先端には、対象物を把持するためのハンド部60が取り付けられている。また、収容装置95は、本開示の収容部に相当する収容棚70と、台車90とを有している。台車90における台座91(後述の
図6を参照)にロボット10が取り付けられ、両者が一体となって搬送システム1を構成している。
【0018】
なお、本実施形態では、搬送システム1に含まれる台車90の進行方向(ロボット10の正面方向)をx軸正方向、台車90(ロボット10)から見て左手方向をy軸正方向、台車90(ロボット10)における反重力方向をz軸正方向としたとき、x軸がロール軸、y軸がピッチ軸、z軸がヨー軸である。したがって、x軸回りの回転がロール回転(左右方向への回転)、y軸回りの回転がピッチ回転(前後方向への回転)、z軸回りの回転がヨー回転となる。また、本実施形態における上方向とは、z軸正方向、すなわち反重力方向であり、一方で下方向とは、z軸負方向、すなわち重力方向であり、左右方向は台車90(ロボット10)から見たときの左右方向であり、y軸正方向が左方向、y軸負方向が右方向となる。
【0019】
<ロボット10の構成>
次に、ロボット10の概略構成について、
図2~
図4に基づいて説明する。
図2はロボット10の正面図であり、
図3はロボット10の背面図である。また、
図4は、ロボット10の一部を分解した状態を示す図である。なお、各図において、ロボット10の内部構造が把握できるように、その本体カバーを省略した状態で示されている。ロボット10は、人間型ロボットであり、人間の骨格構造を模したボディを有している。このボディが、
図2に示すロボット10の上半身の骨格構造である、ロボット本体部30である。ロボット本体部30は、概略的には、
図2においてz軸方向に延在している背骨部14及び後述する板金で形成された各種の骨部14a~14d、背骨部14を支持するように背骨部1
4に連結された腰骨部15、更に腰骨部15を支持し脚部35が接続される骨盤部によって形成されている。すなわち、このロボット本体部30に対して、腕部50や脚部35等が取り付けられる。そして、背骨部14には、ロボット10の首部13が接続され、更にその上に頭部11が配置されている。なお、頭部11には、外部を撮影するためのカメラが搭載されてもよい。この首部13を介した頭部11の背骨部14との接続により、頭部11は背骨部14に対してロール回転、ピッチ回転、ヨー回転が可能となる。
【0020】
また、ロボット10には、その上半身の駆動を司る駆動ユニット20が右上半身と左上半身のそれぞれに対応して配置されている。駆動ユニット20には、ロボット10の腕部50を、肩部においてピッチ回転及びロール回転させるためのアクチュエータ等が備えられている。ここで、
図4に示すように、背骨部14には、ロボット10の肩部に位置する部位で、ロボット前面側の前方鎖骨部14aとロボット背面側の背面鎖骨部14bが接続されている。更に、背骨部14には、ロボット10の胸部(肩部より下方の部位)に位置する部位で、ロボット前面側の前方胸骨部14cとロボット背面側の背面胸骨部14dが接続されている。これらの骨部14a~14d及び背骨部14によって、背骨部14を挟んだロボット10の上半身内の左右に所定の空間が形成され、当該左右の所定の空間に駆動ユニット20がそれぞれ収まるように配置され、各骨部14a~14dに対して駆動ユニット20が接続されることになる。これにより、2つの駆動ユニット20がロボット10内に取り付けられることになる。骨部14a~14dは、背骨部14に対して平板状の板金で形成されているため、背骨部14に対する駆動ユニット20の取り付けは、比較的弾性的に行われることになる。更に、駆動ユニット20は、腰骨部15にも接続される。腰骨部15は、骨盤部16に支持されている。
【0021】
このように構成されるロボット10の上半身構造においては、
図5に示す駆動軸が設定されている。詳細には、頭部11に関連する駆動軸としては、頭ロール軸、頭ピッチ軸、頭ヨー軸が設定され、各軸に対応してアクチュエータが備えられることで、頭部11は、首部13に対してロール回転、ピッチ回転、ヨー回転が可能となる。また、腰骨部15に関連する駆動軸としては、腰ロール軸、腰ピッチ軸、腰ヨー軸が設定され、各軸に対応してアクチュエータが備えられることで、ロボット10の上半身は、腰骨部15に対してロール回転、ピッチ回転、ヨー回転が可能となる。更に、腕部50に関連する駆動軸としては、肩ロール軸、肩ピッチ軸、肩ヨー軸、肘ピッチ軸、手首ロール軸、手首ピッチ軸、手首ヨー軸の7軸が設定されており、各軸に対応してアクチュエータが備えられることで、ロボット10の腕部50においては、肩部でのロール回転、ピッチ回転、ヨー回転が可能となり、肘部でのピッチ回転が可能となり、手首部でのロール回転、ピッチ回転、ヨー回転が可能となる。このような構造から理解できるように、ロボット10の腕部50は、人間の腕を模した構造を有している。なお、各軸に対応するアクチュエータの具体的な配置や構造は公知の技術であるから、本願ではその詳細な説明は省略する。
【0022】
また、骨盤部16の下方には、
図1に示すように脚部35が取り付けられている。脚部35は、上述したロボット10の上半身構造を支持するように構成され、具体的には、上側脚リンク部31と、下側脚リンク部32を含む。下側脚リンク部32は、台車90の台座91に固定されることで、脚部35を介してロボット本体部30と収容装置95とが連
結された状態となっている。また、上側脚リンク部31と下側脚リンク部32とは、アクチュエータを有する膝関節部33でピッチ回転可能に接続され、更に、上側脚リンク部31と骨盤部16とは、アクチュエータを有する腰盤下関節部34でピッチ回転可能に接続される。この膝関節部33と腰盤下関節部34との連携したピッチ回転により、ロボット10の上半身構造の姿勢を維持したまま、その高さを昇降させることができる。
【0023】
<収容装置95の構成>
次に、収容装置95の概略構成について、
図6及び
図7に基づいて説明する。
図6は収容装置95の概略構成を示す図であり、
図7はその収容装置95に搭載される収容棚70の概略構成を示す図である。収容装置95は、収容棚70と台車90を含む。収容棚70には、
図6に示すように、ハンド部60による把持対象である複数のトレイを、上下方向(z軸方向)に並べて配置することが可能である。このトレイには、例えば、ユーザに給仕される飲食物を載せた状態で、収容棚70内に並べることができる。また、台車90は、4つの駆動輪92を有しており、その前方には衝突の際の衝撃軽減のためのバンパ93が配置されている。そして、台車90の前方上面には収容棚70が配置され、その後方がロボット10を配置するための領域となるように、台車90の後方上面に台座91が形成されている。
【0024】
続いて、
図7に基づいて収容棚70について説明する。収容棚70は台車90に取り付けられた状態でx軸方向に延在する、対のベース部材71を有し、そのベース部材71にz方向に延在する4本の支柱72が固定されている。この4本の支柱72のうち、yz平面を形成する2本の支柱72を1組として、2台のリフト装置が形成されている。すなわち、収容棚70は、yz平面に形成される一方のリフト装置と、それよりx軸方向に離れた、yz平面に形成される他方のリフト装置が、対のベース部材71上に配置されて構成されている。したがって、把持の対象物であるトレイは、一方のリフト装置のトレイ台座80と他方のリフト装置のトレイ台座80とに当該トレイの端部を掛けた状態で置かれることで、収容棚70内に上下方向に並んで収容されることになる。
【0025】
収容棚70を構成するリフト装置について説明するが、基本的には同一の構造を有するため、主に一方のリフト装置について説明することとする。1つのリフト装置においては、一方の支柱72と他方の支柱72との間に上下に配置されている複数のトレイ台座80を昇降するためのアクチュエータ74が、一方の支柱72の下方に配置されている。アクチュエータ74の出力軸は、図示しない伝達機構(ギア等)を介して、2つの支柱間の下方に、各支柱に対して回転可能に支持された下方回転軸75aに接続されている。更に、この下方回転軸75aには、各支柱に対応するように2つのスプロケット76aが取り付けられている。また、同じように2つの支柱72間の上方にも、各支柱に対して上方回転軸75bが回転可能に支持され、更に、この上方回転軸75bにも、各支柱に対応するように2つのスプロケット76bが取り付けられている。そして、2つの支柱72のそれぞれに対応するように、下側のスプロケット76aと上側のスプロケット76bとを結ぶようにチェーン77が架けられている。このような構成により、アクチュエータ74の駆動力は下方回転軸75aに伝えられ、チェーン77を介して上方回転軸75bに伝えられる。また、各支柱に沿って平面状のガイド板73が上下方向に延在して配置されている。
【0026】
そして、チェーン77の構成について、
図8に基づいて説明する。チェーン77は、複数のローラチェーン77aがリンク77b、77cによって接続されて形成されている。ここで、チェーン77の片側のリンク77cは、
図8に示すように、トレイ台座80を取り付けるためのフランジ付きリンクとされている。詳細には、フランジ付きリンク77cは、ローラチェーン77aを接続する平面部から垂直に折れ曲がったフランジ77c1と、そこに設けられた貫通孔77c2を有する。この貫通孔77c2が、トレイ台座80の取り付けのために使用される。なお、フランジ付きリンク77cは、チェーン77の全て
のローラチェーン77aに設ける必要はなく、好ましくは、チェーン77の連続する半周程度の領域において設けられる。
【0027】
続いて、トレイ台座80の構成について、
図9に基づいて説明する。トレイ台座80は、トレイの両端部をそれぞれ掛けて該トレイを配置することで、複数のトレイを収容棚70に収容可能とするための台座である。収容棚70において、後述するように対のトレイ台座80によって1つのトレイが配置されるように構成され、この対のトレイ台座80が本開示の配置部に相当する。そこで、トレイ台座80は、そのトレイ端部が配置される平面状の配置板81と、それに対して概ね垂直に折り曲げられた背板82を有する。この背板82の両端部の近くには、トレイ台座80をチェーン77に取り付けるための貫通孔86が設けられている。すなわち、一方の端部近くの貫通孔86と一方のチェーン77の貫通孔77c2とが重ねられ、且つ、他方の端部近くの貫通孔86と他方のチェーン77の貫通孔77c2とが重ねられた状態で、トレイ台座80が2本のチェーン77に取り付けられることになる。また、背板82の両端部のそれぞれに設けられた貫通孔86の下方近傍では、背板82に押さえ板84が接続されている。押さえ板84は背板82と同一平面上に配置されており、押さえ板84に対応する形状を有する切り欠き83が配置板81上に形成されている。この押さえ板84は、トレイ台座80が2本のチェーン77に取り付けられ状態で、そのチェーン77を押さえるように位置する。そのため、収容棚70におけるチェーン77の弛みを防止でき、上述したアクチュエータ74の駆動力の伝達を好適に行える。
【0028】
また、背板82の両端部82から更にその延在方向に、クランク状に折り曲げられて形成されたガイド部85が設けられている。ガイド部85は、背板82と概ね平行な面を有しており、背板82より配置板81とは反対側に所定距離離れて位置している。このガイド部85は、トレイ台座80が2本のチェーン77に取り付けられ状態で、
図10に示すように2本の支柱72のそれぞれに沿って配置されている両側のガイド板73に面接触した状態となる。なお、ガイド部85とガイド板73の面接触において両者に作用する摩擦力は、アクチュエータ74によるチェーン77の駆動に実質的に影響を及ぼさない程度の軽度のものである。このようにトレイ台座80の両端部においてガイド部85とガイド板73の面接触状態を形成することで、トレイの昇降を行う際にトレイ台座80が傾いてしまうのを防止でき、トレイ上に置いてある飲食物等がこぼれたり倒れたりするのを回避できる。
【0029】
このように構成される収容棚70の動作について説明する。収容棚70においては、上記の通り2つのリフト装置が設けられており、各リフト装置に取り付けられているトレイ台座80は、互いに向かい合った状態となっている(
図7を参照)。このような配置により、一方のリフト装置のトレイ台座80と、それに対応する他方のリフト装置のトレイ台座80のそれぞれにトレイの端部を掛けてトレイが配置されることになる(
図6を参照)。なお、
図6、
図7に示すように、収容棚70においては、2つのリフト装置は互いに離間されており、その離間距離は、トレイの幅より若干長く設定されている。したがって、収容棚70において複数のトレイを収容する場合は、リフト装置間の空間を利用して、y軸方向からトレイを収容棚70にスライドさせればよい。なお、
図6には、4つのトレイが収容された状態が示されている。
【0030】
ここで、収容棚70に収容されているトレイをロボット10のハンド部60で把持して搬出する場合、2本の腕部50のハンド部60のそれぞれがトレイのy軸方向の両端部を把持し、その把持した状態でトレイを持ち上げる。そのため、把持の対象となるトレイが、収容棚70において最も上方に位置するトレイであって、且つ、そのトレイの上方に、当該トレイには対応しないトレイ台座80(例えば、別のトレイが配置されていたトレイ台座80等)が位置していない状態が形成されている必要がある。これは、仮にこのよう
なトレイ台座80が位置していると、ハンド部60で把持されて持ち上げられたトレイと、当該トレイ台座80が干渉し、安定したトレイの搬出が妨げられる恐れがあるからである。
【0031】
そこで、本実施形態では、把持の対象となるトレイが上記条件を満たすように、収容棚70でのトレイ位置の制御が行われる。当該制御の詳細については後述する。そして、そのトレイ位置が、本開示の所定位置に相当し、当該位置を「トレイ把持位置」と称する。当該トレイ把持位置は、収容棚70において予め設定された固定位置である。ここで、上述したように、収容棚70は台車90上に固定されて収容装置95が形成され、且つ、その台車90上にロボット10が固定されることで収容装置95とロボット10が一体化して搬送システム1が形成されている。そのため、トレイ把持位置は、搬送システム1においてロボット10のロボット本体部30を基準としたときに既知の位置となる。この結果、ロボット10の両方の腕部50が有するハンド部60による把持を行う際に、トレイの位置を詳細に認識する必要がなくなり、又は、その認識のための処理を軽減することができる。このことは、ロボット10がトレイを収容棚70から1つずつ取り出す作業の負荷を軽減することになるため、ロボット10によるハンド部60の位置制御を容易なものとでき、以てトレイの好適な搬送を実現することができる。
【0032】
このように構成されるロボット10と収容装置95を有する搬送システム1によれば、収容装置95の収容棚70に複数の対象物であるトレイを収容した状態で、その台車90によりロボット10とともに、対象物の搬送先まで移動することができる。そして、搬送先に到着すると、容易なハンド部60の位置制御で的確にトレイを把持し搬出して、ユーザ等に引き渡す作業を実行することができる。このような搬送システムに1によるトレイの搬送処理を実現するために、ロボット10と収容装置95のそれぞれに制御装置10A、95Aが配置されている。制御装置10A、95Aは、演算装置やメモリ等を有するコンピュータであり、そこで所定の制御プログラムが実行されることで上記の搬送処理が実現される。また、制御装置10Aと制御装置95Aは、互いに電気的に接続されており、トレイの搬送処理のために必要な信号の授受が両制御装置間で行われる。
【0033】
ここで、これらの所定の制御プログラムの実行により形成される機能部について、
図11に基づいて説明する。先ず、ロボット10の制御装置10Aは、機能部としてハンド制御部101と、姿勢制御部102と、確認部103を有している。ハンド制御部101は、各腕部50が有するハンド部60の開閉を制御する機能部である。本実施形態では、上記の通り、把持の対象となるトレイは、常に、収容棚70において予め決められているトレイ把持位置に位置している。その上でトレイは、収容棚70のリフト装置のトレイ台座80に掛かった状態で置かれているため、トレイ把持位置にあるトレイの状態は一定の状態を保っている。したがって、ハンド制御部101は、後述の姿勢制御部102によるハンド部60の位置制御が完了すれば、直ちにトレイの把持のためにハンド部60の開閉制御を実行できる。
【0034】
次に、姿勢制御部102は、ロボット10の姿勢を制御する機能部である。特に、収容棚70のトレイ把持位置にあるトレイを把持するためにハンド部60を位置決めするための姿勢制御や、把持後にトレイを搬出するための姿勢制御を行う。ここでも、上記の通り、把持の対象となるトレイは、常に、収容棚70において予め決められているトレイ把持位置に位置しているため、トレイの状態や位置をカメラ等で詳細に認識しそれに合わせてロボット10の姿勢制御を行う必要はなく、トレイ把持位置にハンド部60が到達するようにロボット10の姿勢を制御すればよい。このことから、姿勢制御部102による制御内容も容易なものとなる。次に、確認部103は、把持の対象となるトレイが、トレイ把持位置に位置していることを確認する機能部である。当該確認処理は、後述の検知部953から送られる検知信号に基づいて行われる。確認部103によりトレイがトレイ把持位
置に位置していると確認されることで、姿勢制御部102による制御が実行されることになる。
【0035】
次に、収容装置95の制御装置95Aは、機能部として移動制御部951と、昇降制御部952と、検知部953を有している。移動制御部951は、台車90による搬送システム1の移動に関する制御を行う機能部である。例えば、トレイを収容した場所から、その搬送先までの移動のために、台車90の駆動輪92の駆動及び操舵を制御する。なお、台車90には、その現在位置を検出するためのGPS装置が搭載され、その検出信号に基づいて移動制御部951は台車90を制御してもよく、別法として外部から送信される駆動信号に基づいて台車90を制御してもよい。
【0036】
次に、昇降制御部952は、収容棚70におけるリフト装置の昇降を制御する機能部である。特に、把持対象となるトレイがトレイ把持位置に位置するようにリフト装置の昇降を制御する。なお、収容棚70においては、図示しない近接センサ等により各トレイ台座80でのトレイの有無が検出可能であり、また、アクチュエータ74に搭載されているエンコーダの検出信号に基づいて各トレイ台座80がどの位置にあるのかを把握可能である。昇降制御部952は、これらの検出信号を利用して各リフト装置の昇降を制御する。また、検知部953は、上述した検出信号を利用して、把持対象となるトレイ、すなわち収容棚70において最も上方に位置するトレイがトレイ把持位置に位置していることを検知する機能部である。検知部953の検知により生成された信号は、制御装置10Aの確認部103に引き渡されることになる。
【0037】
続いて、搬送システム1によるトレイの搬送処理について、
図12に基づいて説明する。
図12は、搬送処理に関するフローチャートである。当該搬送処理は、搬送システム1に対して複数のトレイを所定の目的地に搬送する指示が出されたことをトリガーとして実行される。したがって、以下の説明においては、収容棚70には複数のトレイが収容されていることを前提とする。先ず、S101では、移動制御部951により、搬送システム1の目的地への移動が実行される。当該目的地に関する情報は、既に搬送システム1に提供されている。
【0038】
続いて、S102では、把持対象となる最も上方に位置するトレイが、所定位置であるトレイ把持位置に位置しているか否かが判定される。当該判定は、検知部953によって検出された収容棚70内のトレイの状態に基づいて、確認部103によって行われる。S102で肯定判定されると処理はS104へ進み、否定判定されると処理はS103へ進む。S103へ進んだ場合、昇降制御部952により収容棚70に含まれる2つのリフト装置においてリフト処理が行われる。すなわち、最も上方に位置するトレイがトレイ把持位置に到達するように、アクチュエータ74の駆動制御が行われる。また、S104へ進んだ場合には、姿勢制御部102によりロボット10の姿勢処理が行われ、把持対象のトレイに対するハンド部60の位置決めが実行される。上記の通り、搬送システム1において収容装置95とロボット10は一体となっており、トレイ把持位置は、ロボット10のロボット本体部30を基準としたときに既知の位置であるため、姿勢制御部102の姿勢処理は容易に、且つ正確に実現することができる。
【0039】
上記姿勢処理によってトレイに対するハンド部60の位置決めが行われると、続いてS105でハンド制御部101によって当該トレイの把持処理が行われる。その後、ハンド部60でトレイを把持した状態を維持して、そのトレイを収容棚70から搬出する搬出処理が行われる。なお、搬出処理においては、膝関節部33と腰盤下関節部34が利用される。これらの関節部が協働することで、ロボット10の上半身の姿勢、特に両腕部50によるトレイの把持姿勢を変化させることなく把持したトレイを持ち上げることができる。このことは、安定したトレイの搬出に大きく寄与する。そして、トレイが収容棚70から
搬出されると、腰骨部15において設定されている腰ヨー軸のアクチュエータにより、ロボット10の上半身は、その姿勢を保ったまま腰骨部15においてヨー回転される。このことも安定したトレイの搬出に大きく寄与する。
【0040】
そして、S106では、収容棚70内のトレイの搬出が完了したか否かが判定される。当該判定は、検知部953によって検出された収容棚70内のトレイの状態に基づいて、確認部103が行ってもよい。S106で肯定判定されると処理はS107へ進み、否定判定されるとS102以降の処理が繰り返される。そして、S107では、移動制御部951により、搬送システム1の所定の帰還場所への移動が実行される。当該帰還場所に関する情報は、予め設定されていてもよく、または、次の対象物の搬送を行うために収容装置95への収容を行う場所に関する情報が帰還場所の情報として外部から搬送システム1に提供されてもよい。
【0041】
<変形例>
搬送システム1による対象物の搬送処理の変形例について、
図13に基づいて説明する。なお、本変形例では、搬送システム1を構成する収容装置95とロボット10は、その連結と解除が自在になるように構成されるとともに、両者とも自律して移動が可能となるように構成されている。例えば、上記実施例で示した台車90が、収容棚70とロボット10の下部にそれぞれに設置されることで、自律走行が可能な収容装置95とロボット10が実現される。このとき、収容装置95には、
図11に示す移動制御部951、昇降制御部952、検知部953の機能部が形成され、ロボット10には、ハンド制御部101、姿勢制御部102、確認部103に加えて、ロボット10の自律走行を司る移動制御部が形成されることになる。そして、互いの台車90が連結することで収容装置95とロボット10の一体化が実現される。このとき、両者間で必要な情報の授受が可能となる。また、一体化後の自律走行については、収容装置95側の移動制御部951かロボット10側の移動制御部が統合的に司るものとする。
【0042】
また、
図13に示すように、搬送システム1には、処理装置が含まれる。処理装置はサーバ装置であり、収容装置95及びロボット10に対して対象物の搬送処理に必要な指示を送信する。そして、当該処理装置と収容装置95、ロボット10は互いに通信可能となるようにネットワークを介して電気的に接続されている。また、搬送システム1には、他の収容装置が含まれていてもよい。
【0043】
ここで、処理装置が、ユーザから対象物(例えば、飲食物を載せたトレイ)の搬送要求を受信する(S201の処理)。当該搬送要求には、搬送すべき対象物の種類や数、その搬送先に関する情報が含まれる。処理装置は、当該搬送要求を受けて、収容装置95に対して、要求された対象物を収容棚70に収容した上で、与えられた搬送先に移動するように移動指示を出す(S202の処理)。なお、このとき、収容装置95とロボット10は分離した状態となっている。当該移動指示を受けた収容装置95は、所定の場所で搬送すべき対象物を収容棚70に収容した上で、要求された搬送先への移動を行う(S203の処理)。
【0044】
そして、上記移動処理を行っている収容装置95は、その移動中においてロボット10に対して、与えられた搬送先に移動するように移動要求を送る(S204の処理)。すなわち、収容装置95が対象物を搬送した搬送先で、ロボット10による搬出作業を提供するために、分離しているロボット10に対して収容装置95から移動要求を送る。ロボット10においては、S204で移動要求を送信した収容装置95とは別の収容装置に対して搬出作業を提供している場合もあり得る。そこで、移動要求を受けたロボット10は、S205でその要求に対応できるか否か確認処理を行う。その結果、搬出作業の提供が可能であると判定された場合には、S206で承認回答を収容装置95に対して送信すると
ともに、指定された搬送先への移動を開始する(S207の処理)。なお、別法として、ロボット10は、処理装置から上記移動要求を受け取ってもよい。
【0045】
その後、搬送先に収容装置95とロボット10が集まると、S208で両者の台車を連結する連結処理が行われ、
図1に示す状態と実質的に同じように両者が一体となる。そして、その搬送先において、収容装置95に収容されている対象物をロボット10が搬出するための、対象物の把持及び搬出の処理が行われる(S209の処理)。なお、S209の処理は、
図12に示すS102~S106の処理と実質的に同一である。そして、対象物の搬出が終了すると、収容装置95とロボット10との連結を解除する解除処理が行われ、それぞれが自律走行可能な状態に戻る(S210の処理)。解除処理が終了した時点で、収容装置95は処理装置に対して、S201で受けた搬送要求に関する処理を完了した報告を行う(S211の処理)。
【0046】
その後は、収容装置95は、所定の帰還場所に帰還し、処理装置からの次の指示を待つ(S212の処理)。また、ロボット10においても、次の搬出作業の提供のための移動要求を待つべく、待機状態となる(S213の処理)。この待機状態では、ロボット10は、搬送システム1に含まれる何れの収容装置95からの移動要求にも対応できる状態である。
【0047】
このような搬送処理によれば、対象物の搬出作業が必要な収容装置95に対してロボット10を逐次連結させて搬出作業を提供することができるため、ロボット10の稼働率を高め、搬送システム1として効率的な対象物の搬送処理が実現できる。また、収容装置95が搬送先に移動する間は、収容装置95はロボット10と分離しているため、移動に要するエネルギー消費を抑制することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・搬送システム、10・・・ロボット、10A・・・制御装置、30・・・ロボット本体部、33・・・膝関節部、34・・・骨盤下関節部、35・・・脚部、50・・・腕部、60・・・ハンド部、62・・・第1フレーム、65・・・第2フレーム、66・・・スライド部材(スライド部)、70・・・収容棚、74・・・アクチュエータ、77・・・チェーン、80・・・トレイ台座、81・・・配置板、90・・・台車、95・・・収容装置、95A・・・制御装置