(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】光照射デバイス、及び、光照射システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20230706BHJP
A61B 18/24 20060101ALN20230706BHJP
A61N 5/06 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
A61N5/067
A61B18/24
A61N5/06 A
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2019190447
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】桂田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 俊彦
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0287197(US,A1)
【文献】米国特許第4747661(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0029270(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/24
A61N 5/06 - A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の外形を有する光照射デバイスであって、
先端から光を照射する光ファイバであって、湾曲部を有し、前記湾曲部によって前記先端が前記光照射デバイスの長軸方向に交差する方向を向いている光ファイバと、
前記光ファイバの前記湾曲部の形状を保持する光透過性の保持部材と、
を備え、
前記光ファイバは、コア、または、コアと1又は複数の被覆層を有しており、
前記保持部材の屈折率は、前記光ファイバの外表面を構成する部材の屈折率よりも小さい、光照射デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射デバイスであって、
前記保持部材は、少なくとも前記湾曲部の内周側に隣接して配置されている、光照射デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の光照射デバイスであって、
前記保持部材は、
前記湾曲部の内周側に隣接して配置された内側保持部材と、
前記湾曲部の外周側に隣接して配置された外側保持部材と、を含み、
前記外側保持部材の屈折率は、前記内側保持部材の屈折率よりも小さい、光照射デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の光照射デバイスであって、
前記内側保持部材は、
先端側に配置された第1内側保持部材と、
基端側に配置された第2内側保持部材と、を含み、
前記第2内側保持部材の屈折率は、前記第1内側保持部材の屈折率よりも小さく、かつ、前記外側保持部材の屈折率よりも大きい、光照射デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光照射デバイスであって、さらに、
前記光ファイバと前記保持部材とが収容された中空シャフトを備え、
前記中空シャフトの内側のうち、前記保持部材よりも基端側には、前記保持部材の屈折率よりも小さな屈折率を有する樹脂部材が充填されている、光照射デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の光照射デバイスであって、
前記湾曲部の先端側の一部分は、前記中空シャフトの先端から突出しており、
前記保持部材は、前記中空シャフトから突出した前記湾曲部の周囲を覆っている、光照射デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の光照射デバイスであって、さらに、
前記光ファイバと前記保持部材とが収容された中空シャフトを備え、
前記湾曲部の先端側の一部分は、前記中空シャフトの先端から突出しており、
前記保持部材は、前記中空シャフトから突出した前記湾曲部の周囲を覆うと共に、前記中空シャフトと略同一の外径を有し、前記中空シャフトの先端に接合されている、光照射デバイス。
【請求項8】
光照射システムであって、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光照射デバイスと、
前記光照射デバイスが挿入される長尺管形状のカテーテルと、
を備え、
前記カテーテルは、
前記カテーテルに前記光照射デバイスを挿入した際の、前記光ファイバの先端に対応する位置に、内部の光を外部に透過させる光透過部を有する、光照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射デバイス、及び、光照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
がん治療においては、外科的、放射線的、薬物的(化学的)手法が単独で、あるいは併用されて用いられ、それぞれの技術が近年発展を遂げている。しかしながら、未だ満足のいく治療技術が見出されていないがんも多く存在し、さらなる治療技術の発展が期待されている。がん治療技術の1つとして、PDT(Photodynamic Therapy:光線力学的療法)と呼ばれる手法が知られている。PDTでは、光感受性物質を静脈投与後、光照射をすることで、がん細胞で活性酸素を発生させ、がん細胞を死滅させる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、PDTは、光感受性物質のがん細胞への集積選択性が低く、正常細胞に取り込まれることによる副作用の大きさが課題となり、治療技術として広く普及していない。
【0003】
そこで近年注目されている治療技術として、NIR-PIT(Near-infrared photoimmunotherapy:近赤外光線免疫療法)がある。NIR-PITでは、がん細胞の特異的な抗原に対する抗体と、光感受性物質(例えば、IRDye700DX)との2化合物を結合させた複合体を用いる。この複合体は、静脈投与されると、体内のがん細胞に選択的に集積する。その後、複合体中の光感受性物質の励起波長(例えば、690nm)の光を照射することで、複合体が活性化し、抗がん作用を示す(例えば、特許文献1参照)。NIR-PITでは、抗体によるがんへの集積選択性と、局部光照射によって、PDTと比較して副作用を減らすことができる。また、NIR-PITでは、例えば690nmという近赤外線領域での光照射(NIR照射)を行うため、NIR照射による免疫系への作用も期待できる(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
上記において例示した690nmを含む所定の波長領域は、生体の分光学的窓とも呼ばれ、他の波長領域と比べて生体成分による光の吸収が少ない波長領域であるものの、体表からの光照射では光の浸透性が不足するため、体内深部のがんに適用できないという課題があった。そこで近年、体表からの光照射ではなく、よりがん細胞に近い位置で光照射を行うNIR-PITの研究がされている(例えば、非特許文献3参照)。例えば、特許文献2~特許文献4には、このようなPDTやNIR-PITにおいて使用可能なデバイスが開示されている。特許文献2~特許文献4に記載のデバイスは、いずれも、血管等の生体管腔内に挿入して使用され、光ファイバによって伝達された光を体内深部で照射することができる。また、特許文献5に記載のデバイスは、レーザ光を用いて体内組織に創傷を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-523907号公報
【文献】特開2018-867号公報
【文献】特表2007-528752号公報
【文献】特開2001-37892号公報
【文献】特表2009-533078号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Makoto Mitsunaga, Mikako Ogawa, Nobuyuki Kosaka Lauren T. Rosenblum, Peter L. Choyke, and Hisataka Kobayashi、Cancer Cell-Selective In Vivo Near Infrared Photoimmunotherapy Targeting Specific Membrane Molecules、Nature Medicine 2012 17(12): 、p.1685-1691
【文献】Kazuhide Sato, Noriko Sato, Biying Xu, Yuko Nakamura, Tadanobu Nagaya, Peter L. Choyke, Yoshinori Hasegawa, and Hisataka Kobayashi、Spatially selective depletion of tumor-associated regulatory T cells with near-infrared photoimmunotherapy、Science Translational Medicine 2016 Vol.8 Issue352、ra110
【文献】Shuhei Okuyama, Tadanobu Nagaya, Kazuhide Sato, Fusa Ogata, Yasuhiro Maruoka, Peter L. Choyke, and Hisataka Kobayashi、Interstitial near-infrared photoimmunotherapy: effective treatment areas and light doses needed for use with fiber optic diffusers、Oncotarget 2018 Feb 16; 9(13): 、p.11159-11169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、光ファイバは一般的に、コアと、コアの外周面を被覆するクラッドとの屈折率差を利用した光の全反射によって光を伝達し、先端において露出したコアから光を出射する。一方、生体管腔内に挿入して使用されて体内深部で光を照射するデバイスにおいて、光の照射方向は、生体管腔を取り巻く組織の方向、すなわちデバイスの長軸方向と交差する方向であることが好ましい。この点、特許文献4及び特許文献5に記載のデバイスでは、ガイド手段(ガイド部材)を備えており、このガイド手段を用いて光ファイバを動かすことによって、光ファイバの先端をデバイスの長軸方向と交差する方向に向けることができる。しかし、特許文献4及び特許文献5に記載の技術では、デバイスの構造が複雑化し、デバイスが太径化するという課題があった。また、特許文献2及び特許文献3に記載のデバイスでは、デバイスの長軸方向と交差する方向に光を照射することについて何ら考慮されていない。
【0008】
なお、このような課題は、PDTやNIR-PITに限らず、体内において光を照射するプロセスを含む検査又は治療において使用されるデバイス全般に共通する。また、このような課題は、血管に挿入されるデバイスに限らず、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるデバイス全般に共通する。
【0009】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、光ファイバからの光をデバイスの長軸方向と交差する方向に照射可能なデバイスにおいて、デバイスを細径化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0011】
(1)本発明の一形態によれば、長尺状の外形を有する光照射デバイスが提供される。この光照射デバイスは、先端から光を照射する光ファイバであって、湾曲部を有し、前記湾曲部によって前記先端が前記光照射デバイスの長軸方向に交差する方向を向いている光ファイバと、前記光ファイバの前記湾曲部の形状を保持する光透過性の保持部材と、を備え、前記光ファイバは、コア、または、コアと1又は複数の被覆層を有しており、前記保持部材の屈折率は、前記光ファイバの外表面を構成する部材の屈折率よりも小さい。
【0012】
この構成によれば、光ファイバの先端は、湾曲部によって光照射デバイスの長軸方向に交差する方向に向けられた状態で、保持部材によって湾曲部の形状を保持されている。このため、ガイド手段を用いて光ファイバを動かすことによって、光ファイバの先端を光照射デバイスの長軸方向と交差する方向に向ける構成と比較して、光照射デバイスの構成を簡略化することができるため、光照射デバイスを細径化できる。また、保持部材の屈折率は、光ファイバの外表面を構成する部材の屈折率よりも小さい。このため、例えば光ファイバの外表面を構成する部材の屈折率と同程度の屈折率、または光ファイバの外表面を構成する部材の屈折率よりも高い屈折率を有する保持部材を用いて湾曲部の形状を保持する場合と比較して、光ファイバの外表面を構成する部材と保持部材との境界において、光ファイバ内部の光を反射させることができる。この結果、本構成の光照射デバイスによれば、光ファイバ内部から漏出する光を低減できる。
【0013】
(2)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記保持部材は、少なくとも前記湾曲部の内周側に隣接して配置されていてもよい。
この構成によれば、少なくとも湾曲部の内周側から光ファイバの湾曲部の形状を保持できる。また、湾曲部の内周側はすなわち、光ファイバの先端が向いている方向であり、光ファイバから光が照射される方向である。ここで、一般に、保持部材を形成する物質は、空気よりも屈折率が大きい。このため、例えば、湾曲部の外周側(光ファイバから光が照射されない方向)に保持部材を配置せず空隙としておくことにより、光ファイバから光が照射されない方向に対する光の漏出をより一層抑制できる。
【0014】
(3)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記保持部材は、前記湾曲部の内周側に隣接して配置された内側保持部材と、前記湾曲部の外周側に隣接して配置された外側保持部材と、を含み、前記外側保持部材の屈折率は、前記内側保持部材の屈折率よりも小さくてもよい。
この構成によれば、湾曲部の内周側と、湾曲部の外周側の異なる方向から、湾曲部の形状を強固に保持できる。また、湾曲部の外周側に配置された外側保持部材の屈折率は、湾曲部の内周側に配置された内側保持部材の屈折率よりも小さい。このため、光ファイバから光が照射されない方向に設けられた外側保持部材からの光の漏出を、光ファイバから光が照射される方向に設けられた内側保持部材からの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。
【0015】
(4)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記内側保持部材は、先端側に配置された第1内側保持部材と、基端側に配置された第2内側保持部材と、を含み、前記第2内側保持部材の屈折率は、前記第1内側保持部材の屈折率よりも小さく、かつ、前記外側保持部材の屈折率よりも大きくてもよい。
この構成によれば、内側保持部材は、先端側に配置された第1内側保持部材と、基端側に配置された第2内側保持部材と、を含んでいるため、第1及び第2内側保持部材の屈折率を制御することで、光の漏出度合いを変えることができる。また、第2内側保持部材の屈折率は、第1内側保持部材の屈折率よりも小さく、かつ、外側保持部材の屈折率よりも大きい。このため、光ファイバから光が照射されない方向に設けられた外側保持部材からの光の漏出を、光ファイバから光が照射される方向に設けられた第1及び第2内側保持部材からの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。さらに、基端側に配置された第2内側保持部材からの光の漏出を、先端側に配置された第1内側保持部材からの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。
【0016】
(5)上記形態の光照射デバイスでは、さらに、前記光ファイバと前記保持部材とが収容された中空シャフトを備え、前記中空シャフトの内側のうち、前記保持部材よりも基端側には、前記保持部材の屈折率よりも小さな屈折率を有する樹脂部材が充填されていてもよい。
この構成によれば、中空シャフトの内側のうち、保持部材よりも基端側には樹脂部材が充填されているため、光照射デバイスの長尺形状を維持することができる。また、樹脂部材の屈折率は、保持部材の屈折率よりも小さいため、樹脂部材を介して漏出する光を低減できる。
【0017】
(6)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記湾曲部の先端側の一部分は、前記中空シャフトの先端から突出しており、前記保持部材は、前記中空シャフトから突出した前記湾曲部の周囲を覆っていてもよい。
この構成によれば、湾曲部の先端側の一部分、すなわち光ファイバの先端を中空シャフトの先端から突出させることで、光ファイバの先端から照射される光が中空シャフトに遮られることを抑制できる。また、保持部材は、突出した湾曲部の周囲を覆っているため、突出した湾曲部の周囲を保護できる。
【0018】
(7)上記形態の光照射デバイスでは、さらに、前記光ファイバと前記保持部材とが収容された中空シャフトを備え、前記湾曲部の先端側の一部分は、前記中空シャフトの先端から突出しており、前記保持部材は、前記中空シャフトから突出した前記湾曲部の周囲を覆うと共に、前記中空シャフトと略同一の外径を有し、前記中空シャフトの先端に接合されていてもよい。
この構成によれば、湾曲部の先端側の一部分、すなわち光ファイバの先端を中空シャフトの先端から突出させることで、光ファイバの先端から照射される光が中空シャフトに遮られることを抑制できる。また、保持部材は、突出した湾曲部の周囲を覆っているため、突出した湾曲部の周囲を保護できる。
【0019】
(8)本発明の一形態によれば、光照射システムが提供される。この光照射システムは、上記形態の光照射デバイスと、前記光照射デバイスが挿入される長尺管形状のカテーテルと、を備え、前記カテーテルは、前記カテーテルに前記光照射デバイスを挿入した際の、前記光ファイバの先端に対応する位置に、内部の光を外部に透過させる光透過部を有する。
この構成によれば、光照射システムは、光照射デバイスと、光ファイバの先端に対応する位置に、内部の光を外部に透過させる光透過部を有するカテーテルとを個別に備えるため、デバイス設計の自由度を向上できると共に、手技の幅を拡げることができる。
【0020】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、光照射デバイス、これらが別体又は一体とされた光照射システム、カテーテル、光照射デバイス、及び光照射システムの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。
【
図2】
図1のA-A線における断面構成を例示した説明図である。
【
図3】
図1のB方向から見た光照射デバイスの上面図である。
【
図4】光照射システムの使用状態を例示した説明図である。
【
図5】第2実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図6】
図5のC-C線における断面構成を例示した説明図である。
【
図7】第3実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図8】
図7のD-D線における断面構成を例示した説明図である。
【
図9】第4実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図10】
図9のE-E線における断面構成を例示した説明図である。
【
図11】第5実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図12】第6実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図13】第7実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図14】第8実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図15】第9実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図16】第10実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図17】第11実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。光照射システムは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用される。光照射システムは、生体管腔内から生体組織に向けて、光ファイバを介して伝達される光を照射するシステムである。光照射システムは、例えば、PDT(Photodynamic Therapy:光線力学的療法)や、NIR-PIT(Near-infrared photoimmunotherapy:近赤外光線免疫療法)において使用可能である。光照射システムは、カテーテル1と、カテーテル1に挿入して使用される光照射デバイス2とを備えている。
図1では、カテーテル1と、光照射デバイス2とを個別に図示している。
【0023】
図1では、カテーテル1の中心を通る軸と、光照射デバイス2の中心を通る軸とを、それぞれ軸線O(一点鎖線)で表す。以降、光照射デバイス2をカテーテル1に挿入した状態において、互いの中心を通る軸は軸線Oに一致するものとして説明するが、挿入状態における両者の中心を通る軸は、それぞれ相違していてもよい。また、
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の長軸方向(軸線O方向)に対応し、Y軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の高さ方向に対応し、Z軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の幅方向に対応する。以降、
図1の左側(-X軸方向)をカテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)をカテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、カテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は、生体内部へ挿入される「遠位側」に相当し、基端側は、医師等の術者により操作される「近位側」に相当する。これらの点は、
図1以降の全体構成を示す図においても共通する。
【0024】
カテーテル1は、長尺管形状であり、シャフト110と、先端チップ120と、コネクタ140とを備えている。シャフト110は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。シャフト110は、先端部110dと基端部110pとの両端部が開口した中空の略円筒形状(管形状)である。シャフト110は、内部にルーメン110Lを有する。ルーメン110Lは、カテーテル1のデリバリ時には、カテーテル1に対してガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンとして機能する。ルーメン110Lは、カテーテル1のデリバリ後においては、カテーテル1に対して光照射デバイス2を挿通させるためのデバイス用ルーメンとして機能する。このように、ガイドワイヤルーメンとデバイス用ルーメンとを単一のルーメンで兼用することにより、カテーテル1を細径化できる。シャフト110の外径、内径及び長さは任意に決定できる。
【0025】
先端チップ120は、シャフト110の先端部に接合されて、他の部材よりも先行して生体管腔内を進行する部材である。
図1に示すように、先端チップ120は、カテーテル1の生体管腔内での進行をスムーズにするために、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。先端チップ120の略中央部分には、軸線O方向に先端チップ120を貫通する貫通孔120hが形成されている。ここで、貫通孔120hの開口径Φ1は、シャフト110のルーメン110Lの内径Φ2よりも小さい。このため、
図1に示すように、シャフト110と先端チップ120との境界では、先端チップ120の内表面120iが突出することによる段差が形成されている。先端チップ120の開口120oは、貫通孔120hに通じており、カテーテル1に対してガイドワイヤ(図示省略)を挿通する際に使用される。先端チップ120の外径及び長さは任意に決定できる。
【0026】
コネクタ140は、カテーテル1の基端側に配置され、術者によって把持される部材である。コネクタ140は、略円筒形状の接続部141と、一対の羽根142とを備えている。接続部141の先端部には、シャフト110の基端部110pが接合され、基端部には、羽根142が接合されている。羽根142は、コネクタ140と一体的な構造であってもよい。コネクタ140の開口140oは、コネクタ140の内部を介してルーメン110Lに通じており、カテーテル1に対して光照射デバイス2を挿通する際に使用される。接続部141の外径、内径及び長さと、羽根142の形状とは、任意に決定できる。
【0027】
カテーテル1のシャフト110には、さらに、光透過部139と、第1マーカー部131,132が設けられている。光透過部139は、シャフト110の内部の光を、外部に透過させる。光透過部139は、中空の略円筒形状の部材であり、シャフト110の外径と略同一の外径を有し、シャフト110のルーメン110Lの内径Φ2と略同一の内径を有している。換言すれば、光透過部139は、周方向の全体に設けられ、周方向の全体においてシャフト110の内部の光を外部に透過させる。光透過部139は、基端側と先端側とにおいて、それぞれシャフト110に接合されている。光透過部139は、光透過性を有する透明な樹脂材料、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等により形成できる。
【0028】
第1マーカー部131,132は、光透過部139の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部131は、光透過部139の先端部に近接して設けられており、光透過部139の先端部の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部132は、光透過部139の基端部に近接して設けられており、光透過部139の基端部の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部131,132は、それぞれ、中空の略円筒形状の部材である。
図1の例では、第1マーカー部131,132は、それぞれ、シャフト110の外表面に形成された凹部に配置され、シャフト110の外表面に接合されている。換言すれば、第1マーカー部131,132は、それぞれ、シャフト110の周方向を取り囲むようにして、シャフト110の外表面に埋設されている。なお、第1マーカー部131,132は、凹部のないシャフト110の外表面に接合されることにより、シャフト110の外表面から突出して設けられてもよい。第1マーカー部131,132の少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0029】
光照射デバイス2は、長尺状の外形を有しており、シャフト210と、先端チップ220と、コネクタ240と、光ファイバ250と、保持部材260とを備えている。シャフト210は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。シャフト210は、先端部210dと基端部210pとの両端部が開口した中空の略円筒形状(管形状)である。シャフト210の先端側の外周面には、光ファイバ250の先端を露出させるための開口が形成されている(
図3において後述)。シャフト210の内側(内部)には、光ファイバ250と保持部材260とが収容されている。また、シャフト210の内側のうち、光ファイバ250と保持部材260とを除く空隙部分には、樹脂部材270が充填されている。なお、シャフト210は「中空シャフト」に相当する。
【0030】
先端チップ220は、シャフト210の先端部210dに接合されて、他の部材よりも先行してカテーテル1のルーメン110Lを進行する部材である。
図1に示すように、先端チップ220は、光照射デバイス2の長軸方向に延びる略円柱形状の部材である。ここで、先端チップ220及びシャフト210の外径Φ3(換言すれば、光照射デバイス2の外径Φ3)は、カテーテル1の貫通孔120hの開口径Φ1よりも大きく、かつ、カテーテル1のシャフト110及び光透過部139の内径Φ2よりも小さいことが好ましい(Φ1<Φ3<Φ2)。
【0031】
コネクタ240は、光照射デバイス2の基端側に配置され、術者によって把持される部材である。コネクタ240は、略円筒形状の接続部241と、一対の羽根242とを備えている。接続部241の先端部には、シャフト210の基端部210pが接合され、接続部241の基端部には、羽根242が接合されている。羽根242は、コネクタ240と一体的な構造であってもよい。
【0032】
図2は、
図1のA-A線における断面構成を例示した説明図である。
図2に示すXYZ軸は、
図1のXYZ軸にそれぞれ対応する。図示のように、光ファイバ250は、光照射デバイス2の長軸方向(軸線O方向)に延びるコア250cと、コア250cの外周面(外表面)を被覆するクラッド250clとを備えている。コア250cは、クラッド250clの略中央に配置されており、クラッド250clよりも高い光屈折率を有する。クラッド250clは、屈折率が均一である。光ファイバ250は、コア250cとクラッド250clとの屈折率差を利用した光の全反射によって光を伝達する。このような光ファイバ250において、クラッド250clは、コア250cを被覆する「被覆層」に相当し、かつ、「光ファイバ250の外表面を構成する部材」に相当する。
【0033】
本実施形態の光ファイバ250は、コア250cとクラッド250clとが共に樹脂製のプラスチック光ファイバである。コア250cは、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethylmetacrylate)、ポリスチレン、ポリカーボネート、含重水素化ポリマー、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー等により形成できる。コア250cは、光が伝搬するモード数によってシングルモードと、マルチモードとに分類されるが、本実施形態ではどちらを用いてもよい。また、マルチモードのコア250cの場合、屈折率分布によってステップインデックスと、グレーデッドインデックスとに分類されるが、本実施形態ではどちらを用いてもよい。クラッド250clは、例えば、フッ素系ポリマーにより形成できる。なお、光ファイバ250には、プラスチック光ファイバに代えて、石英ガラス光ファイバや、多成分ガラス光ファイバを採用してもよい。光ファイバ250の長軸方向の長さは任意に決定できる。
【0034】
図1に示すように、光ファイバ250の先端側は、シャフト210の内側に挿入されて、樹脂部材270によって固定されている。光ファイバ250の基端側は、コネクタ240の内部を通過して外部へと引き出されている。光ファイバ250の基端部は、図示しないコネクタを介して、直接的、または他の光ファイバを介して間接的に光源3に接続されている。光源3は、例えば、任意の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生装置である。
【0035】
図3は、
図1のB方向から見た光照射デバイス2の上面図である。
図1に示すように、光ファイバ250の先端部には、光ファイバ250が+Y軸方向に湾曲した湾曲部251が形成されている。また、
図3に示すように、光ファイバ250の先端(先端面)は、シャフト210の外周面(外表面)に露出して配置されている。光ファイバ250の先端では、クラッド250clが除去されてコア250cが露出した状態とされている。露出したコア250cからは、光源3によって発生され、光ファイバ250を介して伝達されたレーザ光LTが照射される。すなわち、光ファイバ250の先端において露出したコア250cは、光LTを外部へと照射する光照射部239として機能する。このように、本実施形態の構成では、レーザ光LTを照射する光ファイバ250の先端が、光ファイバ250の湾曲部251によって、光照射デバイス2の長軸方向(軸線O方向)に交差する方向に向けられている。これにより、光ファイバ250の先端において露出したコア250c(光照射部239)から、光照射デバイス2の側面の一方向に向かって光LTが照射される。
【0036】
なお、光ファイバ250の先端(先端面)において、コア250cには、周知の加工(例えば、先端面を斜めにカットする加工、刻み目を形成する加工、サンドブラスト加工、化学的処理)が施されていてもよい。また、コア250cの先端または先端近傍には、レーザ光LTを透過、屈折、増幅するための樹脂体や光反射ミラーが設けられていてもよい。樹脂体は、例えば、石英微粉末を分散させたアクリル系紫外線硬化樹脂に塗布し、紫外光で硬化させることにより形成できる。
【0037】
保持部材260は、光ファイバ250の湾曲部251の形状(湾曲形状)を保持する部材である。保持部材260は、シャフト210の内側、かつ、光ファイバ250の湾曲部251の位置に配置されている(
図1)。また、保持部材260は、光ファイバ250の湾曲部251の外周面の全体を覆うように配置されている(
図2)。保持部材260は、光透過性樹脂により形成されている。ここで、光透過性樹脂とは、透明または半透明であって、光を透過する性質を有する樹脂を意味する。光透過性樹脂としては、例えば、無機粉末が充填されたエポキシ系樹脂等の任意の樹脂を使用可能である。保持部材260に用いられる光透過性樹脂は、PDTやNIR-PITにおいて用いられる波長域(例えば、650nm~700nm)の光透過性が、他の波長域と比較して高いことが好ましい。なお、保持部材260は、異なる複数種類の光透過性樹脂を混合して形成されてもよい。
【0038】
このような光透過性の保持部材260について、保持部材260の屈折率R6は、光ファイバ250の外表面を構成する部材(すなわちクラッド250cl)の屈折率R5よりも小さい(R6<R5)。また、樹脂部材270の屈折率R7は、保持部材260の屈折率R6よりも小さい(R7<R6)。すなわち、クラッド250clの屈折率R5と、保持部材260の屈折率R6と、樹脂部材270の屈折率R7との関係は「R7<R6<R5」である。なお、クラッド250clの屈折率R5、保持部材260の屈折率R6、及び、樹脂部材270の屈折率R7には、カタログ値等の代表値を利用できる。
【0039】
ここで、屈折率が異なる第1部材と、第2部材とが隣接して配置されている場合を想定する。このような場合において、一般的に、第1部材から第2部材へと進む光は、第1部材と第2部材の屈折率の差が大きいほど、第1部材と第2部材との境界面で全反射しやすくなる(すなわち、第2部材へと進まない)。一方、第1部材と第2部材の屈折率の差が小さいほど、第1部材と第2部材との境界面で屈折しつつ、第1部材から第2部材へと進みやすくなる。この点、本実施形態の光照射デバイス2では、保持部材260の屈折率R6は、光ファイバ250の外表面を構成するクラッド250clの屈折率R5よりも小さい(R6<R5)。このため、例えば、クラッド250clの屈折率と同程度の屈折率、またはクラッド250clの屈折率よりも高い屈折率を有する保持部材を用いて、湾曲部251の形状を保持する場合と比較して、クラッド250clと保持部材260との境界において、光ファイバ250内部の光を反射させることができる。従って、保持部材260を介して漏出する光を低減できる。また、樹脂部材270の屈折率R7は、保持部材260の屈折率R6よりも小さい(R7<R6)。このため、樹脂部材270と保持部材260と比較した場合に、樹脂部材270とクラッド250clとの屈折率の差は、保持部材260とクラッド250clとの屈折率の差よりも大きくなる。従って、樹脂部材270を介して漏出する光を低減できる。
【0040】
なお、光ファイバ250は、コア250cのみから構成され、クラッド250cl等の被覆層を備えていなくてもよい。この場合、コア250cが「光ファイバ250の外表面を構成する部材」に相当する。このとき保持部材260の屈折率R6は、コア250cの屈折率R51よりも小さい(R6<R51)。また、光ファイバ250は、クラッド250clの外周面を被覆するカバーをさらに備えていてもよい。この場合、クラッド250clとカバーとが、コア250cを被覆する「被覆層」に相当し、カバーが「光ファイバ250の外表面を構成する部材」に相当する。このとき保持部材260の屈折率R6は、カバーの屈折率R52よりも小さい(R6<R52)。さらに、カバーが複数層により構成されている場合、最も外側に配置されたカバーが「光ファイバ250の外表面を構成する部材」に相当する。このとき保持部材260の屈折率R6は、最も外側に配置されたカバーの屈折率R53よりも小さい(R6<R53)。
【0041】
図1に戻り、説明を続ける。光照射デバイス2のシャフト210には、さらに、第2マーカー部231,232が設けられている。第2マーカー部231,232は、光照射部239(すなわち光ファイバ250の先端)の位置を表す目印として機能する。
図3に示すように、第2マーカー部231は、光照射部239の先端側に近接して設けられており、光照射部239の先端側の位置を表す目印として機能する。第2マーカー部232は、光照射部239の基端側に近接して設けられており、光照射部239の基端側の位置を表す目印として機能する。第2マーカー部231,232は、それぞれ、中空の略円筒形状の部材である。
図1の例では、第2マーカー部231,232は、それぞれ、シャフト210の外表面に形成された凹部に配置され、シャフト210の外表面に接合されている。換言すれば、第2マーカー部231,232は、それぞれ、シャフト210の周方向を取り囲むようにして、シャフト210の外表面に埋設されている。なお、第2マーカー部231,232は、凹部のないシャフト210の外表面に接合されることにより、シャフト210の外表面から突出して設けられてもよい。第2マーカー部231,232の少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0042】
カテーテル1の第1マーカー部131,132と、光照射デバイス2の第2マーカー部231,232とは、放射線不透過性を有する樹脂材料や金属材料により形成できる。例えば、樹脂材料を用いる場合、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等に対して、三酸化ビスマス、タングステン、硫酸バリウム等の放射線不透過材料を混ぜて形成できる。例えば、金属材料を用いる場合、放射線不透過材料である金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金)等で形成できる。
【0043】
カテーテル1のシャフト110と、光照射デバイス2のシャフト210と、光照射デバイス2の樹脂部材270とは、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用できる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン鋼等を採用できる。また、シャフト110と、シャフト210とは、上述した材料を複数組み合わせた接合構造体とすることもできる。カテーテル1の先端チップ120と、光照射デバイス2の先端チップ220とは、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の樹脂材料により形成できる。カテーテル1のコネクタ140と、光照射デバイス2のコネクタ240とは、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成することができる。
【0044】
図4は、光照射システムの使用状態を例示した説明図である。
図1及び
図4を参照しつつ、光照射システムの使用方法について説明する。まず、術者は、生体管腔内にガイドワイヤを挿入する。次に、術者は、ガイドワイヤの基端側を、
図1に示すカテーテル1の先端チップ120の開口120oから、ルーメン110Lへと挿通し、コネクタ140の開口140oから突出させる。次に、術者は、ガイドワイヤに沿わせてカテーテル1を生体管腔内に押し進め、カテーテル1の光透過部139を、光照射の目的部位(例えば、NIR-PITの場合はがん細胞の付近)までデリバリする。このように、カテーテル1の先端チップ120に形成された貫通孔120hからガイドワイヤを挿通することによって、術者は、カテーテル1を生体管腔内の目的部位まで容易にデリバリできる。なお、デリバリの際、術者は、X線画像において、光透過部139の近傍に配置された第1マーカー部131,132の位置を確認しつつ、生体管腔内におけるカテーテル1の位置決めをすることができる。その後、術者は、カテーテル1からガイドワイヤを抜去する。
【0045】
次に、術者は、カテーテル1のコネクタ140の開口140oから、光照射デバイス2を挿入する。術者は、カテーテル1のルーメン110Lに沿わせて、光照射デバイス2をカテーテル1の先端側へと押し進める。ここで、上述の通り、光照射デバイス2の外径Φ3を、カテーテル1のルーメン110Lの径Φ2よりも小さく、先端チップ120の貫通孔120hの径Φ1よりも大きくしておけば、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入した際に、光照射デバイス2の先端面220eが、先端チップ120の内表面120iに突き当たることによって、光照射デバイス2の先端側への抜けを抑制できる(
図4)。
【0046】
その後、術者は、X線画像において、第1マーカー部131,132と、第2マーカー部231,232との位置関係を確認することで、光透過部139と、光照射部239(光ファイバ250の先端)との軸線O方向(X軸方向)における位置を合わせる。これにより、光照射部239(光ファイバ250の先端)から射出されたレーザ光LTを、カテーテル1の光透過部139を透過させて、外部の生体組織へと射出することができる。なお、本実施形態のカテーテル1では、光透過部139が、周方向の全体に設けられている。このため、本実施形態の光照射システムでは、術者は、軸線O方向(X軸方向)における光透過部139と光照射部239との位置合わせをするのみでよく、周方向における光透過部139と光照射部239との位置合わせは不要である。
【0047】
以上説明した通り、第1実施形態の光照射デバイス2によれば、光ファイバ250の先端は、湾曲部251によって光照射デバイス2の長軸方向(軸線O方向)に交差する方向に向けられた状態で、保持部材260によって湾曲部251の形状を保持されている(
図4)。このため、例えば、ガイド手段を用いて光ファイバを動かすことによって、光ファイバの先端を光照射デバイスの長軸方向と交差する方向に向けるような構成と比較して、光照射デバイス2の構成を簡略化することができるため、光照射デバイス2を細径化できる。また、保持部材260の屈折率R6は、クラッド250cl(光ファイバ250の外表面を構成する部材)の屈折率R5よりも小さい。このため、
図2において説明した通り、例えば、クラッド250clの屈折率と同程度の屈折率、またはクラッド250clの屈折率よりも高い屈折率を有する保持部材を用いて湾曲部251の形状を保持する場合と比較して、クラッド250clと保持部材260との境界において、光ファイバ250内部の光を反射させることができる。この結果、第1実施形態の光照射デバイス2によれば、光ファイバ250内部から漏出する光を低減できる。
【0048】
また、第1実施形態の光照射デバイス2によれば、シャフト210(中空シャフト)の内側のうち、保持部材260よりも基端側には樹脂部材270が充填されている。このため、光照射デバイス2の長尺形状を容易に維持することができる。また、樹脂部材270の屈折率R7は、保持部材260の屈折率R6よりも小さい。このため、
図2において説明した通り、樹脂部材270を介して漏出する光を低減できる。
【0049】
さらに、第1実施形態の光照射システムでは、光照射デバイス2と、光ファイバ250の先端(すなわち光照射部239)に対応する位置に、内部の光LTを外部に透過させる光透過部139を有するカテーテル1と、を個別に備える。このため、デバイス設計の自由度を向上できると共に、手技の幅を拡げることができる。
【0050】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の光照射デバイス2Aの構成を例示した説明図である。
図6は、
図5のC-C線における断面構成を例示した説明図である。第2実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図5及び
図6に示す光照射デバイス2Aとを備える。光照射デバイス2Aは、保持部材260に代えて保持部材260Aを備えると共に、樹脂部材270を備えていない。保持部材260Aは、光ファイバ250の湾曲部251の内周側に隣接して配置されている。湾曲部251の内周側とは、光ファイバ250の外周面のうち、湾曲した形状を有している部分の内側を意味し、
図5及び
図6の例では+Y軸方向側を意味する。光ファイバ250の湾曲部251の外周側(
図5、
図6:-Y軸方向側)には、樹脂部材270が配置されている。クラッド250cl、保持部材260A、及び樹脂部材270の屈折率の大小関係は第1実施形態と同様である。
【0051】
このように、光照射デバイス2Aの保持部材260Aの構成は種々の変更が可能であり、保持部材260Aが、光ファイバ250の湾曲部251の内周側にのみ配置されていてもよい。なお、
図6の例では、保持部材260Aは、湾曲部251の内周側において、周方向に約170度の範囲に亘って配置されているが、保持部材260Aが設けられる範囲は任意に変更可能であり、例えば30度でもよく、90度でもよく、270度でもよい。また、
図5及び
図6の例では、湾曲部251の外周側には樹脂部材270が充填されているが、湾曲部251の外周側には樹脂部材270が充填されておらず、例えば空隙であってもよい。
【0052】
以上のような第2実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の光照射デバイス2Aによれば、少なくとも湾曲部251の内周側から光ファイバ250の湾曲部251の形状を保持できる。また、湾曲部251の内周側はすなわち、光ファイバ250の先端が向いている方向(すなわち、光照射部239が設けられている方向)であり、光ファイバ250から光LTが照射される方向である。ここで、一般に、保持部材260Aを形成する物質を含む物質全般は、空気よりも屈折率が大きい。このため、第2実施形態の光照射デバイス2Aのように、湾曲部251の外周側(光ファイバ250から光が照射されない方向)において、保持部材260A及び樹脂部材270を配置せず空隙としておくことにより、光ファイバ250から光が照射されない方向に対する光の漏出をより一層抑制できる。
【0053】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の光照射デバイス2Bの構成を例示した説明図である。
図8は、
図7のD-D線における断面構成を例示した説明図である。第3実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図7及び
図8に示す光照射デバイス2Bとを備える。光照射デバイス2Bは、保持部材260に代えて保持部材260Bを備える。保持部材260Bは、内側保持部材261と、外側保持部材262とを含む。
【0054】
内側保持部材261は、光ファイバ250の湾曲部251の内周側に隣接して配置されている。外側保持部材262は、光ファイバ250の湾曲部251の外周側に隣接して配置されている。なお、
図8の例では、内側保持部材261は、湾曲部251の内周側において、周方向に約170度の範囲に亘って配置されており、外側保持部材262は、湾曲部251の外周側において、周方向の残余の範囲(約190度の範囲)に亘って配置されている。しかし、周方向において内側保持部材261が配置される範囲と、外側保持部材262が配置される範囲とは、任意に変更できる。
【0055】
内側保持部材261と、外側保持部材262とは、それぞれ異なる光透過性樹脂により形成されている。外側保持部材262の屈折率R62は、内側保持部材261の屈折率R61よりも小さい(R62<R61)。また、第1実施形態と同様に、保持部材260B(内側保持部材261、外側保持部材262)の屈折率R61,R62は、共に、光ファイバ250の外表面を構成するクラッド250clの屈折率R5よりも小さい。このため、屈折率の大小関係は、R62<R61<R5の関係となる。
【0056】
このように、光照射デバイス2Bの保持部材260Bの構成は種々の変更が可能であり、保持部材260Bは、それぞれ異なる光透過性樹脂により形成された内側保持部材261と、外側保持部材262とを含んでいてもよい。以上のような第3実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態の光照射デバイス2Bによれば、湾曲部251の内周側と、湾曲部251の外周側との異なる方向から、湾曲部251の形状(湾曲形状)を強固に保持できる。また、湾曲部251の外周側(光LTが照射される側とは反対側、
図7の例では-Y軸方向)に配置された外側保持部材262の屈折率R62は、湾曲部251の内周側(光LTが照射される側、
図7の例では+Y軸方向)に配置された内側保持部材261の屈折率R61よりも小さい。このため、外側保持部材262と内側保持部材261とを比較した場合に、外側保持部材262とクラッド250clとの屈折率の差は、内側保持部材261とクラッド250clとの屈折率の差よりも大きくなる。従って、光ファイバ250から光が照射されない方向に設けられた外側保持部材262からの光の漏出を、光ファイバ250から光が照射される方向に設けられた内側保持部材261からの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。
【0057】
なお、第3実施形態の光照射デバイス2Bにおいて、内側保持部材261の屈折率R61と、外側保持部材262の屈折率R62との大小関係は、逆でもよい(R61<R62)。また、内側保持部材261の屈折率R61と、外側保持部材262の屈折率R62とは略同一であってもよい。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を奏することができると共に、湾曲部251の内周側と、湾曲部251の外周側との異なる方向から、湾曲部251の形状を強固に保持できる。
【0058】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態の光照射デバイス2Cの構成を例示した説明図である。
図10は、
図9のE-E線における断面構成を例示した説明図である。第4実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図9及び
図10に示す光照射デバイス2Cとを備える。光照射デバイス2Cは、保持部材260に代えて保持部材260Cを備える。保持部材260Cは、内側保持部材261Cと、外側保持部材262Cとを含む。
【0059】
図10に示すように、内側保持部材261Cは、光ファイバ250の湾曲部251の内周側において、周方向に約100度の範囲に亘って配置されている。同様に、外側保持部材262Cは、光ファイバ250の湾曲部251の外周側において、周方向に約100度の範囲に亘って配置されている。
図10の例では、周方向の残余の部分には、樹脂部材270が充填されているが、湾曲部251の周方向の残余の部分には樹脂部材270が充填されておらず、例えば空隙であってもよい。内側保持部材261C及び外側保持部材262Cの材料については、第3実施形態と同様である。内側保持部材261C、外側保持部材262C、及びクラッド250clの屈折率の大小関係は第3実施形態と同様である(R62<R61<R5)。
【0060】
このように、光照射デバイス2Cの保持部材260Cの構成は種々の変更が可能であり、保持部材260Cは、周方向において離間して配置された内側保持部材261Cと、外側保持部材262Cとを含んでいてもよい。以上のような第4実施形態の光照射システムによっても、上述した第1及び第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態の光照射デバイス2Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図11に示す光照射デバイス2Dとを備える。光照射デバイス2Dは、保持部材260に代えて保持部材260Dを備える。保持部材260Dは、第1内側保持部材261Dと、第2内側保持部材263Dと、外側保持部材262Dとを含む。
【0062】
第1内側保持部材261Dは、光ファイバ250の湾曲部251の内周側であって、光照射デバイス2Dの先端側(-X軸方向)に配置されている。第2内側保持部材263Dは、光ファイバ250の湾曲部251の内周側であって、光照射デバイス2Dの基端側(+X軸方向)に配置されている。第1内側保持部材261Dと第2内側保持部材263Dとは「内側保持部材」に相当する。外側保持部材262Dは、光ファイバ250の湾曲部251の外周側に隣接して配置されている。第1内側保持部材261D、第2内側保持部材263D、及び外側保持部材262Dが配置される周方向の範囲は、任意に定めることができる。例えば、第3実施形態のように、周方向の所定角度の範囲に第1内側保持部材261D及び第2内側保持部材263Dが配置され、周方向の残余の範囲に外側保持部材262Dが配置されてもよい。また、例えば、第4実施形態のように、周方向の所定角度の範囲に第1内側保持部材261D及び第2内側保持部材263Dが配置され、異なる周方向の所定角度の範囲に外側保持部材262Dが配置され、周方向の残余の範囲に樹脂部材270が充填されてもよい。
【0063】
第1内側保持部材261Dと、第2内側保持部材263Dと、外側保持部材262Dとは、それぞれ異なる光透過性樹脂により形成されている。第2内側保持部材263Dの屈折率R63は、第1内側保持部材261Dの屈折率R61よりも小さく、外側保持部材262Dよりも大きい(R62<R63<R61)。また、第1実施形態と同様に、保持部材260D(第1内側保持部材261D、第2内側保持部材263D、外側保持部材262D)の屈折率R61,R63,R62は、いずれも、光ファイバ250の外表面を構成するクラッド250clの屈折率R5よりも小さい。このため、屈折率の大小関係は、R62<R63<R61<R5の関係となる。
【0064】
このように、光照射デバイス2Dの保持部材260Dの構成は種々の変更が可能であり、保持部材260Dの内側保持部材は、それぞれ異なる光透過性樹脂により形成された第1内側保持部材261Dと、第2内側保持部材263Dとを含んでいてもよい。また、光ファイバ250の湾曲部251の内周側には、3つ以上の内側保持部材を備えていてもよい。以上のような第5実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態の光照射デバイス2Dによれば、内側保持部材は、先端側に配置された第1内側保持部材261Dと、基端側に配置された第2内側保持部材263Dと、を含んでいるため、第1及び第2内側保持部材261D,263Dの屈折率R61,R63を制御することで、光の漏出度合いを変えることができる。また、第2内側保持部材263Dの屈折率R63は、第1内側保持部材261Dの屈折率R61よりも小さく、かつ、外側保持部材262Dの屈折率R62よりも大きい。このため、光ファイバ250から光が照射されない方向に設けられた外側保持部材262Dからの光の漏出を、光ファイバ250から光が照射される方向に設けられた第1及び第2内側保持部材261D,263Dからの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。さらに、基端側に配置された第2内側保持部材263Dからの光の漏出を、先端側に配置された第1内側保持部材261Dからの光の漏出と比べて、より一層抑制できる。
【0065】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態の光照射デバイス2Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図12に示す光照射デバイス2Eとを備える。光照射デバイス2Eは、第1実施形態で説明した樹脂部材270を備えておらず、シャフト210の内側のうち、光ファイバ250及び保持部材260が収容されていない部分は、空隙である。このように、光照射デバイス2Eの構成は種々の変更が可能であり、樹脂部材270を備えていなくてもよく、樹脂部材270に代わる他の補強部材を備えていてもよい。他の補強部材としては、例えば、編組体や、コイル体を採用できる。このような補強部材は、シャフト210の内側に配置されていてもよく。シャフト210の肉厚部に埋設されていてもよい。以上のような第6実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
<第7実施形態>
図13は、第7実施形態の光照射デバイス2Fの構成を例示した説明図である。第7実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図13に示す光照射デバイス2Fとを備える。光照射デバイス2Fは、先端チップ220を備えておらず、かつ、光ファイバ250に代えて光ファイバ250Fを備え、保持部材260に代えて保持部材260Fを備えている。
【0067】
光ファイバ250Fは、湾曲部251の先端側の一部分が、シャフト210の先端から突出して配置されている。湾曲部251の突出長さについては任意に決定できる。保持部材260Fは、シャフト210から突出した湾曲部251の周囲を覆っている。換言すれば、保持部材260Fは、シャフト210から突出した湾曲部251の周方向の表面全体を覆っている。保持部材260Fは、基端側から先端側に向かって縮径し、かつ、先端部に丸みが付された形状である。保持部材260Fは、+Y軸方向に湾曲した湾曲部251に沿って設けられているため、
図13に示す断面において、保持部材260の縮径形状は軸線Oに対して非対称である。保持部材260Fの最大の外径は、シャフト210の外径Φ3(換言すれば、光照射デバイス2Fの外径Φ3)と同じである。保持部材260Fの材料、及び、屈折率は第1実施形態と同様である。
【0068】
このように、光照射デバイス2Fの構成は種々の変更が可能であり、光ファイバ250Fの湾曲部251がシャフト210から突出し、さらに、突出した湾曲部251の周囲を覆う保持部材260Fを備える構成とされてもよい。この際、保持部材260Fの形状は任意に変更することができる。例えば、保持部材260Fは、シャフト210から突出した湾曲部251の周方向の全体ではなく、少なくとも一部分を覆っていてもよい。以上のような第7実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の光照射デバイス2Fによれば、湾曲部251の先端側の一部分、すなわち光ファイバ250Fの先端をシャフト210(中空シャフト)の先端から突出させることで、光ファイバ250Fの先端から照射される光LTがシャフト210に遮られることを抑制できる。また、保持部材260Fは、突出した湾曲部251の周囲を覆っているため、突出した湾曲部251の周囲を保護できる。
【0069】
<第8実施形態>
図14は、第8実施形態の光照射デバイス2Gの構成を例示した説明図である。第8実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図14に示す光照射デバイス2Gとを備える。光照射デバイス2Gは、第7実施形態で説明した光ファイバ250Fの湾曲部251がシャフト210から突出した構成において、第7実施形態とは異なる形状の保持部材260Gを備えている。保持部材260Gは、シャフト210から突出した湾曲部251の周囲(周方向の表面全体)を覆っている。保持部材260Gは、略一定の外径を有する略円柱形状の部材であり、保持部材260Gの外径は、シャフト210の外径Φ3と略同一とされている。保持部材260Gは、シャフト210の先端部に接合されている。接合には、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。このように、光照射デバイス2Gの構成は種々の変更が可能であり、第7実施形態とは異なる形状の保持部材260Gを備えていてもよい。以上のような第8実施形態の光照射システムによっても、上述した第1、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0070】
<第9実施形態>
図15は、第9実施形態の光照射デバイス2Hの構成を例示した説明図である。第9実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図15に示す光照射デバイス2Hとを備える。光照射デバイス2Hは、第7実施形態で説明した光ファイバ250Fの湾曲部251がシャフト210から突出した構成において、第7実施形態とは異なる形状の保持部材260Hを備えている。保持部材260Hは、先端側保持部材261Hと、基端側保持部材262Hとを含む。先端側保持部材261Hは、光照射デバイス2Hの先端に配置されており、シャフト210から突出した湾曲部251のうち、先端側の周囲(周方向の表面全体)を覆っている。基端側保持部材262Hは、先端側保持部材261Hとシャフト210との間に配置されており、シャフト210から突出した湾曲部251のうち、基端側の周囲(周方向の表面全体)を覆っている。先端側保持部材261Hと、基端側保持部材262Hとは、共に、略一定の外径を有する略円柱形状の部材である。先端側保持部材261Hの外径と、基端側保持部材262Hの外径とは、共に、シャフト210の外径Φ3と略同一とされている。このように、光照射デバイス2Hの構成は種々の変更が可能であり、第7実施形態とは異なる形状の保持部材260Hを備えていてもよい。以上のような第9実施形態の光照射システムによっても、上述した第1、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
<第10実施形態>
図16は、第10実施形態の光照射デバイス2Iの構成を例示した説明図である。第10実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図16に示す光照射デバイス2Iとを備える。光照射デバイス2Iは、シャフト210に代えてシャフト210Iを備え、光ファイバ250に代えて光ファイバ250Iを備え、光照射部239に代えて光照射部239Iを備えている。
【0072】
シャフト210Iは、第1実施形態のシャフト210と同様に、先端部と基端部との両端部が開口した中空の略円筒形状である。シャフト210Iは、第1実施形態のシャフト210とは異なり、光ファイバ250Iの先端を露出させるための開口が形成されていない。また、シャフト210Iのうち、光ファイバ250Iの先端が当接する部分は、光透過性樹脂により形成されており、レーザ光LTが透過可能な構成とされている。光ファイバ250Iは、第1実施形態の光ファイバ250と同様に、先端部において、光ファイバ250Iが+Y軸方向に湾曲した湾曲部251が形成されている。光ファイバ250Iは、第1実施形態の光ファイバ250とは異なり、先端(先端面)がシャフト210Iの内周面に当接して配置されている。光ファイバ250Iの先端において露出したコア250cから照射された光LTは、シャフト210Iを透過して外部に照射される。このため、本実施形態では、シャフト210Iの一部分が光照射部239Iとして機能する。
【0073】
このように、光照射デバイス2Iの構成は種々の変更が可能であり、光ファイバ250Iの先端が、シャフト210Iの外周面に露出して配置されていなくてもよい。この場合において、シャフト210Iのうち、光ファイバ250Iの先端が当接する部分の肉厚を他の部分よりも薄くすることで光LTを透過可能としてもよい。また、シャフト210Iのうち、光ファイバ250Iの先端が当接する部分に、光LTを透過、屈折、増幅するための樹脂体や光反射ミラーを設けてもよい。また、シャフト210Iの全体を光透過性樹脂により形成してもよい。以上のような第10実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
<第11実施形態>
図17は、第11実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。第11実施形態の光照射システムは、第1実施形態で説明したカテーテル1と、
図17に示す光照射デバイス2Jとを備える。光照射デバイス2Jは、第1実施形態で説明したシャフト210、先端チップ220、及びコネクタ240を備えておらず、光ファイバ250Jと、保持部材260Jとから構成されている。光ファイバ250Jの構成は第1実施形態で説明した光ファイバ250と同様であり、保持部材260Jの構成は第1実施形態で説明した保持部材260と同様である。このように、光照射デバイス2Jの構成は種々の変更が可能であり、シャフト210と、先端チップ220と、コネクタ240との少なくとも一部を備えていなくてもよい。以上のような第11実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第11実施形態の光照射デバイス2Jでは、光照射デバイス2Jの構成を簡略化することができるため、光照射デバイス2Jの製造を容易にできると共に、光照射デバイス2Jの製造コストを低減できる。加えて、光照射デバイス2Jの細径化が可能になることにより、経口内視鏡や、経鼻内視鏡といった、細径内視鏡の鉗子口からのデバイスデリバリが可能となる。
【0075】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
[変形例1]
上記第1~11実施形態では、カテーテル1、及び、光照射デバイス2,2A~2Jの構成の一例を示した。しかし、カテーテル1及び光照射デバイス2の構成は種々の変更が可能である。例えば、カテーテル1を備えず、光照射デバイス2のみによって光照射システムを構成してもよい。
【0077】
例えば、カテーテル1のシャフト110、及び、光照射デバイス2のシャフト210には、編組体や、コイル体からなる補強層が埋設されていてもよい。このようにすれば、カテーテル1や光照射デバイス2のトルク伝達性や、形状保持性を向上できる。例えば、カテーテル1の外表面や、光照射デバイス2の外表面には、親水性又は疎水性の樹脂からなるコーティングが施されていてもよい。このようにすれば、生体管腔内におけるカテーテル1の滑り性を向上できる。また、カテーテル1のルーメン110L内における光照射デバイス2の滑り性を向上できる。また、ヘパリンなどの抗血栓性材料をカテーテル1の外表面や、光照射デバイス2の外表面にコーティングしてもよい。このようにすれば、出射光(レーザ光)LTの照射によるカテーテル1の内外面や、光照射デバイス2の外面への血栓付着によるレーザ出力の低下を抑制できる。
【0078】
例えば、カテーテル1には、径方向(YZ方向)に拡張可能な拡張部を備えていてもよい。拡張部としては、例えば、柔軟性を有する薄膜からなるバルーンや、素線を網目状にしたメッシュ体を用いることができる。拡張部は、シャフト110において、光透過部139の先端側と、光透過部139の基端側と、の少なくとも一方に設けられ得る。このようにすれば、生体管腔内におけるカテーテル1の位置決めの後、拡張部を拡張することによって、生体管腔内においてカテーテル1を固定することができる。また、拡張部としてバルーンを用いれば、光照射箇所における血流を遮断することができるため、血流による光の遮断を抑制できる。
【0079】
例えば、カテーテル1は、ルーメン110Lとは異なる複数のルーメンを有する、マルチルーメンカテーテルとして構成されていてもよい。同様に、光照射デバイス2は、第1光ファイバ250が挿通されたルーメン210Lとは異なる別途のルーメンを有する、マルチルーメンカテーテルとして構成されていてもよい。この場合、シャフト210を中空の略円筒形状の部材で構成し、かつ、先端チップ220に軸線O方向に沿って延びる貫通孔を設けることができる。
【0080】
例えば、カテーテル1の先端チップ120の内表面と、光照射デバイス2の先端チップ220の外表面とを磁性体によって構成し、互いに引き寄せあう構成としてもよい。このようにすれば、
図4に示すように、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入し、先端チップ220を先端チップ120に押し当てた状態を容易に維持できる。例えば、カテーテル1の先端チップ120を省略し、シャフト110の先端側が開放した構成を採用してもよい。
【0081】
[変形例2]
上記第1~11実施形態では、光照射デバイス2,2A~2Jについて、光ファイバ250,250F,250I,250J、及び保持部材260,260A~260H,260Jの構成の一例を示した。しかし、これらの構成は種々の変更が可能である。例えば、光ファイバ250の先端を光照射デバイス2の長軸方向に交差させるための湾曲部251は、図示の形状に限らず、任意の形状を採用できる。例えば、光ファイバ250は、光ファイバ250の先端を光照射デバイス2の長軸方向に交差させるための湾曲部251とは異なる、別途の湾曲部分を有していてもよい。この湾曲部分は、例えば湾曲部251の基端側に設けられ得る。湾曲部分の形状は任意に定めることができ、例えば、シャフト210の内周面に沿った螺旋形状や、波形状、蛇腹形状とできる。
【0082】
例えば、湾曲部251の周囲に隣接して配置された保持部材260、湾曲部251の内周側に隣接して配置された内側保持部材、及び、湾曲部251の外周側に隣接して配置された外側保持部材の、長軸方向(軸線O方向)における範囲は任意に決定できる。例えば、湾曲部251の外周側に隣接して配置された外側保持部材は、シャフト210の先端(シャフト210と先端チップ220との境界面)まで設けられていてもよい。
【0083】
例えば、光照射デバイス2は、湾曲部251の内周側に隣接して配置された内側保持部材を備えておらず、湾曲部251の外周側に隣接して配置された外側保持部材のみを備えていてもよい。例えば、第5実施形態と同様に、湾曲部251の外周側に隣接して配置された外側保持部材について、先端側に配置された第1外側保持部材と、基端側に配置された第2外側保持部材とを設けてもよい。また、湾曲部251の外周側に隣接して配置された外側保持部材が、3つ以上の外側保持部材を備えていてもよい。
【0084】
[変形例3]
上記第1~11実施形態では、光透過部139、及び、光照射部239,239Iの構成の一例を示した。しかし、光透過部139及び光照射部239の構成は種々の変更が可能である。例えば、光透過部139を、放射線不透過性を有する材料により構成することで、光透過部139と、第1マーカー部131,132とを一体に構成してもよい。同様に、クラッド250clの少なくとも先端部(光照射部239)を、放射線不透過性を有する材料により構成することで、光照射部239と、第2マーカー部231,232とを一体に構成してもよい。
【0085】
例えば、光透過部139は、シャフト110の一部分を薄肉化することにより形成されていてもよい。例えば、光透過部139の少なくとも一方を、シャフト110に形成された切欠き(シャフトの内外を連通する貫通孔)として形成してもよい。このようにすれば、光透過部139を簡単に形成できる。例えば、光透過部139が設けられる軸線O方向(X軸方向)の範囲や周方向(YZ軸方向)の範囲については任意に変更できる。具体的には、例えば、光透過部139を軸線O方向の広範囲に設けてもよい。
【0086】
例えば、カテーテル1には、さらに、光透過部139の先端側や、光透過部139の基端側等、任意の位置に配置された別途のマーカー部を備えていてもよい。例えば、光照射デバイス2には、さらに、光照射部239の先端側や、光照射部239の基端側等、任意の位置に配置された別途のマーカー部を備えていてもよい。カテーテル1や、光照射デバイス2のマーカー部の形状は任意に定めることができ、周方向(YZ方向)の全体又は一部分に延びる形状でもよく、軸線O方向(X軸方向)に延びる形状でもよく、シャフトの周囲を取り囲む形状でもよい。また、カテーテル1の先端チップ120や、光照射デバイス2の先端チップ220がマーカー部として構成されていてもよい。
【0087】
[変形例4]
第1~11実施形態のカテーテル1、及び、光照射デバイス2,2A~2Jの構成、及び上記変形例1~3のカテーテル1、及び、光照射デバイス2,2A~2Jの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第6実施形態で説明した構成(樹脂部材270が充填されていない構成)において、第2~第5実施形態、または第7~第9実施形態で説明した保持部材260を備えていてもよい。例えば、第10実施形態で説明した構成(光ファイバ250の先端がシャフト210の内周面に当接した構成)において、第2~第5実施形態、または第7~第9実施形態で説明した保持部材260を備えていてもよい。例えば、第11実施形態で説明した構成(シャフト210、先端チップ220、コネクタ240を備えない構成)において、第2~第5実施形態、または第7~第9実施形態で説明した保持部材260を備えていてもよい。
【0088】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…カテーテル
2,2A~2J…光照射デバイス
3…光源
110…シャフト
120…先端チップ
131,132…第1マーカー部
139…光透過部
140…コネクタ
141…接続部
142…羽根
210,210I…シャフト
220…先端チップ
231,232…第2マーカー部
239,239I…光照射部
240…コネクタ
241…接続部
242…羽根
250,250F,250I,250J…光ファイバ
250c…コア
250cl…クラッド
251…湾曲部
260,260A~260H,260J…保持部材
261,261C…内側保持部材
261D…第1内側保持部材
261H…先端側保持部材
262,262C,262D…外側保持部材
262H…基端側保持部材
263D…第2内側保持部材
270…樹脂部材