(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】自律走行作業装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230706BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 J
(21)【出願番号】P 2019232945
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月27日、JR新潟鉄道サービス株式会社への販売により公開 令和1年9月30日、株式会社京王設備サービスへの販売により公開 令和1年10月31日、株式会社サンケイビルメンテナンスサービスへの販売により公開 令和1年11月13日から令和1年11月15日、ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO2019への出品により公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】小島 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 豪
(72)【発明者】
【氏名】千木崎 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】紺野 尚之
(72)【発明者】
【氏名】野村 慎之介
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-53507(JP,A)
【文献】特開2017-182175(JP,A)
【文献】特開2012-22468(JP,A)
【文献】特開2009-169802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、
装置本体と、
前記装置本体を所定の作業エリア内で走行させる走行部と、
前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、
予め記憶された前記作業エリアの環境地図、並びに走行データおよび作業データに基づいて前記走行部および前記作業部を制御して前記自動走行作業を行う再現制御部と、
前記環境地図の作成時に検出されなかった未検出障害物が、前記自動走行作業を行う際に検出された場合の走行パターンとして、前記未検出障害物を回避して走行する回避走行パターンと、前記未検出障害物を回避せずに前記自動走行作業を停止する狭路走行パターンとの何れかを設定する走行パターン設定部と、を備え、
前記走行パターン設定部は、前記環境地図の作成時に所定の幅閾値未満の道幅の狭路を検出すると手動または自動で前記狭路走行パターンを設定し、
前記再現制御部は、前記走行パターン設定部で設定された前記走行パターンに従って前記走行部を制御し、前記狭路走行パターンが設定されている場合には、前記狭路に拘わらず走行させることを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
動作モードを学習モードまたは再現モードに切り替え可能なモード切替部と、
前記学習モードにおいて、前記環境地図を作成すると共に、前記走行部の手動走行時の前記走行データおよび前記作業部の手動作業時の前記作業データを取得して記憶する学習走行作業を行う学習制御部と、を更に備え、
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記自動走行作業を行うことを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記装置本体と該装置本体の周囲の非作業対象との位置関係を計測する計測部と、
道幅が前記所定の幅閾値未満である前記走行経路の位置を前記狭路と判定する狭路判定部と、を更に備え、
前記狭路判定部は、前記学習モードにおいて、前記計測部の計測結果に基づいて作成される前記作業エリアの前記環境地図から前記走行経路の各位置の道幅を算出し、または前記計測部の計測結果と前記装置本体の最大横幅とに基づいて前記走行経路の各位置の道幅を算出し、算出した前記道幅に基づいて前記狭路を判定し、
前記走行パターン設定部は、前記学習モードにおいて前記狭路判定部が前記狭路を判定すると、自動で前記狭路走行パターンを設定することを特徴とする請求項2に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記狭路判定部は、前記走行経路の各位置の道幅に応じた狭路フラグ情報を判定し、このとき、前記道幅が手動旋回可能な幅以上である場合、前記狭路フラグ情報を通常路と判定し、前記道幅が手動旋回可能な幅未満である場合、前記狭路フラグ情報を前記道幅に応じた段階的な狭路レベルの前記狭路と判定し、更に前記道幅が該自律走行作業装置の最小横幅以下である場合、前記狭路フラグ情報を通行禁止狭路と判定することを特徴とする請求項3に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記走行部に前記装置本体の信地旋回を指示するための信地旋回ボタンを更に備え、
前記学習制御部は、前記狭路判定部によって判定された前記狭路を走行するとき、前記狭路の前記道幅が、手動旋回可能な幅未満で、且つ信地旋回可能な幅以上である場合、前記装置本体の旋回動作を、前記信地旋回ボタンによる信地旋回に制限することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記狭路判定部は、前記再現モードにおいて、前記計測部の計測結果と前記装置本体の最大横幅とに基づいて前記走行経路の進行方向側の位置の道幅を算出し、算出した前記道幅が前記所定の幅閾値以上の場合には、前記進行方向側を前記狭路でないと判定し、また、前記道幅が前記所定の幅閾値未満の場合には、前記進行方向側を前記狭路であると判定し、
前記走行パターン設定部は、前記再現モードにおいて、前記狭路判定部が前記進行方向側を前記狭路でないと判定した場合、自動で前記回避走行パターンを設定し、また、前記狭路判定部が前記進行方向側を前記狭路であると判定した場合、自動で前記狭路走行パターンを設定することを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記学習モードまたは前記再現モードにおいて前記狭路判定部が前記走行経路の所定の位置を前記狭路と判定すると、前記狭路の存在を操作者へ通知すると共に、前記狭路の道幅に応じた狭路フラグ情報を記憶することを特徴とする請求項3ないし請求項6の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
前記学習制御部は、前記学習モードにおいて前記狭路判定部が該自律走行作業装置の最小横幅以下である道幅の前記狭路を判定したとき、前記学習走行作業を停止することを特徴とする請求項3ないし請求項7の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項9】
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されたとき、所定の停止時間の間、前記自動走行作業を停止させることを特徴とする請求項2ないし請求項8の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項10】
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されたために、前記狭路走行パターンに従って前記自動走行作業を停止させたとき、前記自動走行作業の停止を操作者へ通知することを特徴とする請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項11】
前記再現制御部は、音出力、画面表示、警告灯の点灯または点滅および前記操作者の保有する端末との通信の少なくとも何れか一つによって、前記自動走行作業の停止を前記操作者へ通知することを特徴とする請求項10に記載の自律走行作業装置。
【請求項12】
前記再現制御部は、前記狭路走行パターンに従って前記自動走行作業を停止させてから所定の停止時間を経過した後、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されなくなった場合には、前記自動走行作業を再開し、また、前記未検出障害物が前記狭路上に検出される場合には、前記自動走行作業の停止を操作者へ再度通知することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の自律走行作業装置。
【請求項13】
前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の左右両側および前側に亘って備え、
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち、前記装置本体の前側に配置された検知部によって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御することを特徴とする請求項2ないし請求項12の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項14】
前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の左右両側および前側に亘って備え、
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち、前記狭路判定部で判定された前記狭路フラグ情報に応じた検知部によって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御することを特徴とする請求項4に記載の自律走行作業装置。
【請求項15】
前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の前側で上下方向に亘って備え、
前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち1つの検知部によって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御することを特徴とする請求項2ないし請求項14の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項16】
前記走行パターン設定部は、前記作業エリアを利用する利用者の活動時間帯に応じて前記走行パターンを設定し、このとき、前記利用者が多い時間帯では前記狭路走行パターンを設定し、また、前記利用者が少ない時間帯では前記回避走行パターンを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項15の何れか1項に記載の自律走行作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行作業装置は、手動操作により走行および作業(清掃)を行いながら走行データおよび作業データ(清掃データ)を記憶する学習モードと、記憶した走行データおよび作業データに従って走行および作業(自動走行作業)を制御する再現(自動走行)モードとを切り替えて動作するように構成される。自律走行作業装置は、例えば、産業用(業務用)の清掃ロボット(自律走行清掃装置)として構成されて、ショッピングモールなどの商業施設の床面の清掃作業や、工場、鉄道ターミナルなどの作業エリアの自動作業を行うために用いられる。
【0003】
自律走行作業装置は、道幅が狭い場合、走行や旋回をする際に、左右の壁や障害物に接触して、壁や障害物あるいは自身を損傷する恐れがある。そのため、自律走行作業装置は、走行予定の経路から狭路を判定すると、進行を停止するようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1の自律走行体では、狭路判定部は、基準位置から周囲の点まで延びる環境地図ベクトルに基準距離を加味した壁距離ベクトルのうち、X軸方向成分の向きが同じもの同士を合成した右合成壁距離ベクトルおよび左合成壁距離ベクトルのX軸方向成分の絶対値の和が、第1の閾値を超えるかを判定し、これにより狭路判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自律走行作業装置は、例えば、走行経路において、一時的に通路幅が狭くなっているに過ぎないボトルネック部分が存在する場合でも、進行方向に亘って道幅を平均化することにより、このようなボトルネック部分を狭路と判定することなく、正確に狭路判定することができる。そして、自律走行作業装置は、安全に旋回できない道幅の走行経路を狭路と判定して、進行を停止するようになっている。しかし、操作者によって、あるいは作業エリアまたは作業位置によって、狭路であっても進行して自動作業を継続したい場合がある。これに対して、従来の自律走行作業装置では、狭路を判定すると、一律的に停止することになるので、狭路および狭路よりも先の領域で自動走行作業を実施することができず、狭路および狭路よりも先の領域が未作業領域となって残ってしまう問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、作業エリアの走行経路に狭路が存在する場合でも、狭路内での自動走行作業を安全に継続させ、未作業領域の発生を抑制することができる自律走行作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置であって、装置本体と、前記装置本体を所定の作業エリア内で走行させる走行部と、前記装置本体の前記作業エリア内の走行経路上で作業を行う作業部と、予め記憶された前記作業エリアの環境地図、並びに走行データおよび作業データに基づいて前記走行部および前記作業部を制御して前記自動走行作業を行う再現制御部と、前記環境地図の作成時に検出されなかった未検出障害物が、前記自動走行作業を行う際に検出された場合の走行パターンとして、前記未検出障害物を回避して走行する回避走行パターンと、前記未検出障害物を回避せずに前記自動走行作業を停止する狭路走行パターンとの何れかを設定する走行パターン設定部と、を備え、前記走行パターン設定部は、前記環境地図の作成時に所定の幅閾値未満の道幅の狭路を検出すると手動または自動で前記狭路走行パターンを設定し、前記再現制御部は、前記走行パターン設定部で設定された前記走行パターンに従って前記走行部を制御し、前記狭路走行パターンが設定されている場合には、前記狭路に拘わらず走行させることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、作業エリアに狭路が存在する場合でも、狭路走行パターンを設定することで、自動走行作業において狭路を走行させることができるので、狭路を作業領域にすることができ、未作業領域が発生しなくなる。また、狭路走行パターンが設定されている場合、未検出障害物を検出すると、自動走行作業を停止するので、狭路内で自動走行作業を行う場合の危険を回避することができ、換言すれば、安全性を確保することができる。このように、作業エリアの走行経路に狭路が存在する場合でも、狭路内での自動走行作業を安全に継続させ、未作業領域の発生を抑制することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置は、動作モードを学習モードまたは再現モードに切り替え可能なモード切替部と、前記学習モードにおいて、前記環境地図を作成すると共に、前記走行部の手動走行時の前記走行データおよび前記作業部の手動作業時の前記作業データを取得して記憶する学習走行作業を行う学習制御部と、を更に備え、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記自動走行作業を行う。
【0011】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、走行パターン設定部は、学習モードにおいて学習走行作業を行った際に検出されなかった未検出障害物が、再現モードにおいて自動走行作業を行う際に検出された場合の走行パターンを設定することができる。また、前記走行パターン設定部は、学習モードにおいて学習走行作業を行う際に幅閾値未満の道幅の狭路を走行した場合に、狭路走行パターンを設定することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第3の自律走行作業装置は、前記装置本体と該装置本体の周囲の非作業対象との位置関係を計測する計測部と、道幅が前記所定の幅閾値未満である前記走行経路の位置を前記狭路と判定する狭路判定部と、を更に備え、前記狭路判定部は、前記学習モードにおいて、前記計測部の計測結果に基づいて作成される前記作業エリアの前記環境地図から前記走行経路の各位置の道幅を算出し、または前記計測部の計測結果と前記装置本体の最大横幅とに基づいて前記走行経路の各位置の道幅を算出し、算出した前記道幅に基づいて前記狭路を判定し、前記走行パターン設定部は、前記学習モードにおいて前記狭路判定部が前記狭路を判定すると、自動で前記狭路走行パターンを設定する。
【0013】
本発明の第3の自律走行作業装置によれば、学習走行作業を行うことによって、作業エリアの走行経路に含まれる狭路を、自動走行作業を行う前に、確実に判定することができる。また、走行経路に狭路が含まれていると、狭路を作業領域にすることになるが、自動的に狭路走行パターンが設定されるので、狭路内での自動走行作業を安全に継続させ、未作業領域の発生を抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第4の自律走行作業装置において、前記狭路判定部は、前記走行経路の各位置の道幅に応じた狭路フラグ情報を判定し、このとき、前記道幅が手動旋回可能な幅以上である場合、前記狭路フラグ情報を通常路と判定し、前記道幅が手動旋回可能な幅未満である場合、前記狭路フラグ情報を前記道幅に応じた段階的な狭路レベルの前記狭路と判定し、更に前記道幅が該自律走行作業装置の最小横幅以下である場合、前記狭路フラグ情報を通行禁止狭路と判定する。
【0015】
本発明の第4の自律走行作業装置によれば、作業エリアに存在する様々な狭路を的確に判定することができる。そのため、狭路フラグ情報を参照することで、狭路が自律走行作業装置の通行にどのように影響するかを把握することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第5の自律走行作業装置は、前記走行部に前記装置本体の信地旋回を指示するための信地旋回ボタンを更に備え、前記学習制御部は、前記狭路判定部によって判定された前記狭路を走行するとき、前記狭路の前記道幅が、手動旋回可能な幅未満で、且つ信地旋回可能な幅以上である場合、前記装置本体の旋回動作を、前記信地旋回ボタンによる信地旋回に制限する。
【0017】
本発明の第5の自律走行作業装置によれば、学習走行作業において自律走行作業装置を狭路に走行させる場合、自律走行作業装置を壁や障害物などの非作業対象に衝突させることがなく、安全に学習走行作業を継続することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第6の自律走行作業装置において、前記狭路判定部は、前記再現モードにおいて、前記計測部の計測結果と前記装置本体の最大横幅とに基づいて前記走行経路の進行方向側の位置の道幅を算出し、算出した前記道幅が前記所定の幅閾値以上の場合には、前記進行方向側を前記狭路でないと判定し、また、前記道幅が前記所定の幅閾値未満の場合には、前記進行方向側を前記狭路であると判定し、前記走行パターン設定部は、前記再現モードにおいて、前記狭路判定部が前記進行方向側を前記狭路でないと判定した場合、自動で前記回避走行パターンを設定し、また、前記狭路判定部が前記進行方向側を前記狭路であると判定した場合、自動で前記狭路走行パターンを設定する。
【0019】
本発明の第6の自律走行作業装置によれば、狭路と通常路とが混在する作業エリアで自動走行作業を行う場合、狭路では狭路走行パターンに従って自動走行作業を継続することができ、通常路では回避走行パターンに従って未検出障害物を回避しながら自動走行作業を継続することができる。そのため、手間を掛けることなく効率的に自動走行作業を行うことができ、また、狭路を作業領域にすることができるので、未作業領域を発生させることなく自動走行作業を行うことができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第7の自律走行作業装置は、前記学習モードまたは前記再現モードにおいて前記狭路判定部が前記走行経路の所定の位置を前記狭路と判定すると、前記狭路の存在を操作者へ通知すると共に、前記狭路の道幅に応じた狭路フラグ情報を記憶する。
【0021】
本発明の第7の自律走行作業装置によれば、操作者が、学習走行作業を行っている間に狭路の存在を気づくことによって、狭路を走行させるか否かを判断したり、狭路走行パターンを設定するか否かを判断したりすることができる。また、操作者は、自動走行作業を行っている間に狭路の存在を気づくことによって、狭路上の未検出障害物を予め移動させたり、自動走行作業の進捗状況を把握したりすることができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第8の自律走行作業装置において、前記学習制御部は、前記学習モードにおいて前記狭路判定部が該自律走行作業装置の最小横幅以下である道幅の前記狭路を判定したとき、前記学習走行作業を停止する。
【0023】
本発明の第8の自律走行作業装置によれば、学習走行作業で走行データや作業データから作成される作業プランは、自律走行作業装置の最小横幅以下である道幅の狭路を作業領域として含むことがなくなる。そのため、作成した作業プランを再現モードで実行したとき、未作業領域が発生することを防ぐことができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第9の自律走行作業装置において、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されたとき、所定の停止時間の間、前記自動走行作業を停止させる。
【0025】
本発明の第9の自律走行作業装置によれば、自動走行作業において、人などの移動物または荷物などの配置物が未検出障害物として狭路上に検出された場合には、停止時間の間に移動物が検出範囲から退出し、または停止時間の間に配置物を検出範囲から運び出すことで、未検出障害物が検出されなくなるので、移動物または配置物をやり過ごして自動走行作業を継続することができる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の第10の自律走行作業装置において、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されたために、前記狭路走行パターンに従って前記自動走行作業を停止させたとき、前記自動走行作業の停止を操作者へ通知する。
【0027】
本発明の第10の自律走行作業装置によれば、自動走行作業において、人などの移動物または荷物などの配置物が未検出障害物として狭路上に検出された場合、自動走行作業の停止を通知された操作者は、即座に、移動物に対して検出範囲からの退出を促すことができ、または配置物を検出範囲から運び出すことができる。そのため、検出した未検出障害物を、即座に移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第11の自律走行作業装置において、前記再現制御部は、音出力、画面表示、警告灯の点灯または点滅および前記操作者の保有する端末との通信の少なくとも何れか一つによって、前記自動走行作業の停止を前記操作者へ通知する。
【0029】
本発明の第11の自律走行作業装置によれば、自動走行作業を停止したことを、操作者により確実に、より早く気付かせることができる。そのため、検出した未検出障害物を、より早く移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の第12の自律走行作業装置において、前記再現制御部は、前記狭路走行パターンに従って前記自動走行作業を停止させてから所定の停止時間を経過した後、前記未検出障害物が前記狭路上に検出されなくなった場合には、前記自動走行作業を再開し、また、前記未検出障害物が前記狭路上に検出される場合には、前記自動走行作業の停止を操作者へ再度通知する。
【0031】
本発明の第12の自律走行作業装置によれば、自動走行作業を停止したことを、操作者により確実に、より早く気付かせることができる。そのため、検出した未検出障害物を、より早く移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の第13の自律走行作業装置は、前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の左右両側および前側に亘って備え、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち、前記装置本体の前側に配置された検知部によって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御する。
【0033】
本発明の第13の自律走行作業装置によれば、自動走行作業中に作業エリアの狭路を走行するとき、自律走行作業装置の左右両側で狭路を構成する壁や障害物などの非作業対象を検知することがなくなるため、左右両側の非作業対象の存在によって減速または停止することがないので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。また、狭路において自律走行作業装置の前側の非作業対象は確実に検知されるので、安全に自動走行作業を継続することができる。
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の第14の自律走行作業装置は、前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の左右両側および前側に亘って備え、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち、前記狭路判定部で判定された前記狭路フラグ情報に応じた検知部によって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御する。
【0035】
本発明の第14の自律走行作業装置によれば、自動走行作業中に作業エリアの狭路を走行するとき、狭路の道幅に応じて、自律走行作業装置の左右両側の検知範囲を変えることができる。そして、自律走行作業装置の左右両側で狭路を構成する壁や障害物などの非作業対象を検知することがなくなるため、左右両側の非作業対象の存在によって減速または停止することがないので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。また、狭路において自律走行作業装置の前側の非作業対象は確実に検知されるので、安全に自動走行作業を継続することができる。
【0036】
上記課題を解決するために、本発明の第15の自律走行作業装置は、前記装置本体の周囲の非作業対象を検知する複数の検知部を前記装置本体の前側で上下方向に亘って備え、前記再現制御部は、前記再現モードにおいて、前記回避走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部のうち1つの検知部によって前記非作業対象を検知させ、また、前記狭路走行パターンが設定されている場合、前記複数の検知部の全てによって前記非作業対象を検知させて、前記装置本体に近接する前記非作業対象が検知された場合、前記走行部を減速または停止するように制御する。
【0037】
本発明の第15の自律走行作業装置によれば、装置本体2の前側において、上下方向の位置に起因して計測部のレーザーレンジファインダなどによって検知し難い非作業対象がある場合、例えば、床面の近傍に非作業対象がある場合でも、上下方向に複数配置された検知部によって、上下方向の検知範囲を広くしているので、非作業対象をより確実に検知することができる。そのため、非作業対象との接触を、より確実に防ぐことができ、より安全に自動走行作業を継続することができる。
【0038】
上記課題を解決するために、本発明の第16の自律走行作業装置において、前記走行パターン設定部は、前記作業エリアを利用する利用者の活動時間帯に応じて前記走行パターンを設定し、このとき、前記利用者が多い時間帯では前記狭路走行パターンを設定し、また、前記利用者が少ない時間帯では前記回避走行パターンを設定する。
【0039】
本発明の第16の自律走行作業装置によれば、再現モード時の走行パターンとして、作業エリアの活動時間帯に適した走行パターンを、操作者の手間をかけず容易に設定することができる。
そのため、自動走行作業の停止回数を減少することができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行作業を継続することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、自律走行作業装置は、作業エリアの走行経路に狭路が存在する場合でも、狭路内での自動走行作業を安全に継続させ、未作業領域の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、学習走行清掃で作成された清掃プランの例を示す表である。
【
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、走行経路の道幅に応じた通常路および狭路の例を示す概要図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、回避走行パターンが設定された場合の計測部および障害物検知部の検知範囲の例を上方から示す概要図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定されて狭路レベル1または狭路レベル2の狭路を走行する場合の計測部および障害物検知部の検知範囲の例を上方から示す概要図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定されて狭路レベル3の狭路を走行する場合の計測部および障害物検知部の検知範囲の例を上方から示す概要図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定された場合の計測部および障害物検知部の検知範囲の例を右方から示す概要図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の操作表示部およびモード選択画面の例を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、回避走行パターンが設定された場合に操作表示部に表示されるデータ設定画面の例を示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定された場合に操作表示部に表示されるデータ設定画面の例を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置における自動走行清掃の開始時の動作の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定された場合の自動走行清掃の動作の例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、回避走行パターンが設定された場合の自動走行清掃の動作の例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、回避走行パターンが設定された場合に、未検出障害物が検出されたときの自動走行清掃の動作の例を示す概要図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置において、狭路走行パターンが設定された場合に、未検出障害物が検出されたときの自動走行清掃の動作の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0043】
本発明の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。
図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作を受け付ける走行操作部4とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面FLの清掃作業を実行する清掃部5を作業部として備えて、自律走行清掃装置として機能する。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモールなどの商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場などの全部または一部の領域を清掃エリア(作業エリア)として、清掃エリアの床面FLを清掃の対象とする。
【0044】
また、自律走行作業装置1は、装置本体2と周囲の壁や障害物(例えば、置物など)などの非作業対象との位置関係を計測する計測部6と、所定距離内の壁や障害物を検知する障害物検知部7とを備える。また、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各種機能の操作や表示のためのタッチパネル29(
図9参照)からなる操作表示部8と、自律走行作業装置1の各部に電力を供給し、バッテリー(図示せず)の残量監視や充電を制御するための電源部9とを備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測など)を統括制御する制御部10と、走行部3の走行データや清掃部5の清掃データ(作業データ)からなる清掃プラン(作業プラン)を記憶する記憶部11とを備える(
図2参照)。
【0045】
なお、自律走行作業装置1は、障害物などに衝突した際に損傷することを防止するためのバンパー12を装置本体2に備えるとよい。また、自律走行作業装置1は、
図2に示すように、自律走行作業装置1の操作者に警告などを知らせたるための警告灯13、自律走行作業装置1の操作者や清掃エリアの利用者に自律走行作業装置1の稼働や警告などを知らせるためのスピーカ14、外部機器と通信するための通信部15を備えていてよい。
【0046】
次に、自律走行作業装置1の動作の概要を説明する。
【0047】
自律走行作業装置1は、手動操作による走行および自動操作による自律的な走行が可能な車両であって、学習モード、再現(自動走行)モードおよび手動モードの何れかの動作モードに切り替えられて動作する。
【0048】
自律走行作業装置1は、学習モードおよび手動モードでは、学習走行清掃(学習走行作業)および手動走行清掃(手動走行作業)をそれぞれ行って、操作者による走行操作部4や操作表示部8の手動操作に応じて手動走行や手動清掃(手動作業)を行う。学習走行清掃では、更に、学習走行に伴って清掃エリアの環境地図を作成して記憶すると共に、学習走行時の走行経路や走行状態を示す走行データと、学習清掃時の清掃状態を示す清掃データとを取得して、走行データおよび清掃データを含む
図3に示すような清掃プランを記憶する。清掃プランには、学習走行時の環境地図や学習モードで設定された走行パターン(回避走行パターンまたは狭路走行パターン)が関連付けられて記憶される。走行パターンは、学習モードにおいて検出されなかった未検出障害物が、再現モードにおいて検出された場合に、未検出障害物を回避して走行する回避走行パターンと、未検出障害物を回避せずに自動走行清掃を停止する狭路走行パターンとの何れかに設定される。
【0049】
自律走行作業装置1は、再現モードでは、自動走行清掃(自動走行作業)を行って、学習走行清掃で記憶された清掃プランのうちで、操作者に選択された清掃プランを再現するように、選択された清掃プランおよび対応する環境地図並びに走行パターンに基づいて、制御部10による自動操作に応じて自動走行および自動清掃(自動作業)を行う。
【0050】
清掃プランは、
図3に示すように、走行経路に沿った複数のステップで構成され、各ステップには、走行データおよび清掃データ、並びに狭路フラグ情報が関連付けられる。ステップの間隔は、学習走行清掃を行う際に、所定の時間間隔(例えば、25ms)に設定されてもよく、あるいは、自律走行作業装置1の所定の移動距離(例えば、0.5m)に設定されてもよい。また、清掃プランは、上記した以外に、学習走行清掃開始からの経過時間をステップ毎に関連付けて記憶してもよい。
【0051】
走行データは、例えば、走行部3の走行経路上の自己位置データ(環境地図上の自己位置を示すX座標およびY座標、開始位置の向きに対する角度)、操舵フラグ(直進、左折、右折)、進行方向への走行速度[m/s]および旋回速度[deg/s]を含み、走行データに基づいて走行経路を図化することができる。あるいは、走行速度は、複数段階の速度の何れかに切り替えられてよく、走行データは、走行速度の段階的な速度を数字(例えば、0~7の8段階)に換算して記憶するとよい。
【0052】
清掃データは、例えば、清掃部5の清掃部材16のパッド圧、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量を含む。パッド圧は、清掃部材16を床面FLに押し付ける力であり、供給水量は、洗浄液供給部17によって床面FLに供給される洗浄液(作業液)の量であり、吸引量は、吸引部18によって床面FLから洗浄後の汚水を吸引する際の吸引ブロア(図示せず)の稼働強度である。なお、パッド圧、供給水量および吸引量は、複数段階の強度の何れかに切り替えられてよく、清掃データは、パッド圧、供給水量および吸引量の段階的な強度を数字(例えば、0~2の3段階や、0~4の5段階など)に換算して記憶するとよい。なお、清掃データは、清掃部材16の作動/停止、回転速度を含んでもよい。
【0053】
狭路フラグ情報は、
図4に示すように、走行経路の各位置、即ち、走行データの各ステップの位置における道幅に応じて定まり、走行経路が狭路であるか否かのフラグを示していて、更に狭路である場合には、道幅に応じた狭路レベルを示す。例えば、走行経路が狭路ではなく通常路である場合、狭路フラグ情報は通常路に設定されてもよいが、狭路なしとして設定されてもよい。通常路とは、自律走行作業装置1の手動旋回可能な幅以上の道幅を有する走行経路であり、手動旋回可能な幅とは、自律走行作業装置1が装置本体2の横幅より大きいスキージ19(大スキージ)などの幅広部品を装着した状態、即ち、最大横幅の状態で、操作者が自律走行作業装置1を手動操作する場合に、周囲の壁や障害物などに接触することなく、安全に旋回可能な幅である。走行経路が狭路である場合、狭路フラグ情報は狭路に設定され、更に狭路レベルが設定される。
【0054】
狭路フラグ情報の狭路レベルは、
図4に示すように、狭路の道幅に応じて段階的に設定され、好ましくは、狭路の道幅が狭いほど高く設定される。例えば、狭路の道幅が、手動旋回可能な幅未満であるが、信地旋回可能な幅以上である場合、狭路レベル1に設定される。ここで、信地旋回可能な幅とは、自律走行作業装置1が幅広部品を装着した状態で、周囲の壁や障害物などに接触することなく、自律走行作業装置1の信地旋回が可能な幅である。また、狭路の道幅が、信地旋回可能な幅未満であるが、自律走行作業装置1が幅広部品を装着した状態で、周囲の壁や障害物などに接触することなく、安全に通行可能な幅以上である場合、狭路レベル2に設定される。更に、狭路の道幅が、自律走行作業装置1が幅広部品を装着した状態で、安全に通行可能な幅未満であるが、幅広部品を取り外した状態、即ち、最小横幅の状態で、周囲の壁や障害物などに接触することなく、安全に通行可能な幅以上である場合(装置本体2の横幅より大きい場合)、狭路レベル3に設定される。ここで、自律走行作業装置1が最小横幅の状態とは、装置本体2の横幅以下のスキージ19(小スキージ)などの部品(幅狭部品)を装着した状態も含まれる。
【0055】
なお、狭路の道幅が、自律走行作業装置1が幅広部品を取り外した状態で通行可能な幅未満、即ち、自律走行作業装置1の最小横幅以下である場合、狭路フラグ情報は通行禁止狭路となり、この狭路を学習走行清掃において走行することはない。この場合、狭路フラグ情報や狭路レベルは設定されなくてもよいが、通行禁止狭路に設定されてもよい。
【0056】
次に、自律走行作業装置1の各部を説明する。
【0057】
走行部3は、装置本体2の下部に設けられていて、駆動輪として1つの前輪3aを備え、補助輪として一対の後輪3bを備える。前輪3aは、進行方向前側で装置幅方向中央に設けられ、走行駆動用モータ(図示せず)と前輪回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、走行駆動用モータを駆動して前輪3aを回転させることで装置本体2を前進させ、前輪3aの回転を停止させることで装置本体2を停止させる。走行駆動用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)が行われる。なお、走行部3は、走行駆動用モータが前輪3aを逆転させることで装置本体2を後退させてもよい。
【0058】
また、前輪3aは、操舵軸(図示せず)と操舵用モータ(図示せず)と操舵回転用エンコーダ(図示せず)とを備える。走行部3は、操舵用モータを駆動して操舵軸を回転させることで前輪3aの向きを変えて装置本体2を操舵し、前輪3aの向きを変えながら装置本体2を前進させることで、自律走行作業装置1(走行部3)を左折(左旋回)や右折(右旋回)させる。操舵用モータの駆動を制御することで、自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。例えば、操舵軸を回転させて進行方向に対して操舵角を左側または右側に90度傾けるように操舵用モータを制御しながら、装置本体2を前方または後方へ旋回することで、装置本体2は左側または右側に信地旋回する。
【0059】
一対の後輪3bは、進行方向後側で装置幅方向(左右方向)に間隔を空けて設けられ、それぞれ走行距離を回転量から把握するためのエンコーダ(図示せず)を備える。一対の後輪3bは、前輪3aの駆動による装置本体2の移動に応じて従動回転する。自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度の調整(加減速)と操舵は、後輪3bに備えられたエンコーダを用いて後輪3bの各々の回転量をフィードバックしながら走行駆動用モータと操舵用モータを制御することで行われてもよい。なお、本実施形態では、駆動輪の前輪3aと補助輪の後輪3bとを備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、他の実施形態では、補助輪の前輪3aと一対の駆動輪の後輪3bとを備えてもよい。
【0060】
走行部3は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている場合、操作者による走行操作部4の手動操作に応じて動作する。また、走行部3は、動作モードが再現モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの走行データおよび環境地図に基づく制御部10(再現制御部26)の制御に応じて動作する。
【0061】
走行操作部4は、装置本体2の後上側に設けられ、操作者が手動操作可能なハンドル(図示せず)およびスロットル(図示せず)を備える。なお、走行操作部4は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている間は、操作者による手動操作を受け付けるが、再現モードに設定されている間は、緊急停止ボタン28の操作以外の操作者による手動操作を受け付けないように構成される。
【0062】
走行操作部4は、操作者によるハンドルの操舵量を電気信号に変換し、電気信号を操舵用モータに出力して駆動させることで、前輪3aの操舵軸を回転させて装置本体2を左折(左旋回)または右折(右旋回)させる。走行操作部4のハンドルの操舵量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の操舵角が調整される。具体的には、ハンドル操作時の操舵回転用エンコーダのパルス数をカウントすることで、ハンドルの操舵量をパルス数に置き換え、このパルス数に合わせて操舵用モータを制御することで自律走行作業装置1の操舵角を調整することができる。操舵角(deg)は、走行部3の進行方向を基準(0度)にして、進行方向に対して左旋回をプラスの角度で示し、進行方向に対して右旋回をマイナスの角度で示す。なお、操舵角は、可変抵抗器を用いて電気信号に変換して検出してもよい。
【0063】
また、走行操作部4は、操作者によるスロットルの回動量(開度)を電気信号に変換し、電気信号を走行駆動用モータに出力して駆動させることで、前輪3aを回転させて装置本体2を進行方向に前進させる。走行操作部4のスロットルの回動量に応じて自律走行作業装置1(走行部3)の走行速度が調整される。
【0064】
清掃部5は、装置本体2の下部に設けられ、装置本体2の下方の床面FLを清掃するように構成される。清掃部5は、動作モードが学習モードまたは手動モードに設定されている場合、操作者による操作表示部8の手動操作に応じて動作する。また、清掃部5は、動作モードが再現モードに設定されている場合、操作者に選択された清掃プランの清掃データに基づく制御部10(再現制御部26)の制御(自動操作)に応じて動作する。
【0065】
清掃部5は、例えば、洗浄液を用いて床面FLを清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面FLに接触して床面FLを清掃する清掃部材16と、洗浄液を床面FLに供給する洗浄液供給部17と、床面FLを清掃した使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部18とを備える。また、清掃部5は、清掃部材16を床面FL上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材16を床面FLに対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。更に、清掃部5は、吸引部18で吸引された汚水を回収する汚水回収部(図示せず)を備える。
【0066】
清掃部材16は、装置本体2の内部から下方に突出した清掃シャフト(図示せず)に対して着脱可能に取り付けられる。清掃部材用モータが清掃シャフトを回転させると、清掃部材16は清掃シャフトを回転軸として回転し、清掃部材用アクチュエータが清掃シャフトを上下方向に移動させると、清掃部材16も上下方向に移動する。
【0067】
清掃部材16は、一対の洗浄パッドや一対の洗浄ブラシなどで構成され、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシは、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられる。左側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視時計回りに回転し、右側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ排出する。
【0068】
洗浄液供給部17は、洗浄液を収容する洗浄液タンクや、この洗浄液タンクに接続された供給ポンプを備えていて、供給ポンプを用いて洗浄液タンクから床面FLに洗浄液を供給して散布する。洗浄液供給部17は、例えば、供給ポンプに電圧を印加して供給ポンプのインペラ(羽根車)を回転させることで洗浄液を供給する。この電圧を変更してインペラの回転数を調整することで、洗浄液の供給水量が調整される。例えば、電圧と洗浄液の供給水量との相関データを予め記憶部11に記憶しておくことで、所定の供給水量を要求された場合に、この供給水量に対応する電圧を供給水ポンプに印加することで、要求された供給水量に調整する。
【0069】
吸引部18は、吸引ブロアで構成される。汚水回収部は、スキージ19と、汚水ダクト(図示せず)と、汚水タンク(図示せず)とを備えていて、スキージ19は、清掃部材16より後方で床面FLに接地して設けられる。汚水回収部は、清掃部材16から後方に排出される汚水をスキージ19で受け止めて収集し、吸引部18は、汚水ダクトに接続されていて、スキージ19が収集した汚水を汚水ダクトへ吸引する。汚水回収部において、汚水ダクトへ吸引された汚水は、汚水ダクトに接続された汚水タンクへ回収される。
【0070】
このような清掃部5は、洗浄液供給部17が床面FLに洗浄液を散布しながら、清掃部材16の洗浄パッドまたは洗浄ブラシを清掃部材用モータが回転させると共に清掃部材用アクチュエータが床面FLに付勢して押し付けることで、床面FLを洗浄し、洗浄後の汚水を汚水回収部が回収する。
【0071】
計測部6は、装置本体2と周囲の壁や障害物などの非作業対象との位置情報(例えば、装置本体2の進行方向に対する角度や距離)を計測するレーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)6aなどを備える。計測部6は、装置本体2が走行している間、例えば、所定のタイミング毎(例えば、25ms毎)に非作業対象との位置情報を計測する。LRF6aは、装置本体2の前側で左右方向に亘って切り欠いて形成された切り欠き部に配置され、
図5~
図8に示すように、前側および左右両側に亘って検知範囲を有する。なお、
図5~
図8では、LRF6aの検知範囲は、LRF6aの周囲の扇形で示されている。
【0072】
障害物検知部7は、装置本体2から所定距離内の壁や障害物の有無を検知する超音波センサなどの複数の近接センサ7a(検知部)や、装置本体2付近の床面FLの段差を検知する赤外線センサなどの段差センサ7b、装置本体2の前下側のバンパー12に取り付けられて壁や障害物との接触を検視するバンパーセンサ7cを備える。障害物検知部7は、装置本体2が走行している間、常時稼働していてよい。
【0073】
複数の近接センサ7aは、
図5~
図7に示すように、装置本体2の左右両側および前側に亘って配置され、好ましくは、左右対称に配置されるとよい。なお、
図5~
図7では、各近接センサ7aの検知範囲は、各近接センサ7aの周囲の扇形で示されている。例えば、装置本体2の左側中央および右側中央に配置される近接センサ7aは、装置本体2の左方および右方を検知範囲として、装置本体2の左方および右方の壁や障害物などの非作業対象を検知する。また、装置本体2の左側前部および右側前部に配置される近接センサ7aは、装置本体2の左方前側および右方前側を検知範囲として、装置本体2の左方前側および右方前側の非作業対象を検知する。更に、装置本体2の前側左部および前側右部に配置される近接センサ7aは、装置本体2の前方左側および前方右側を検知範囲として、装置本体2の前方左側および右側の非作業対象を検知する。
【0074】
また、複数の近接センサ7aは、
図8に示すように、装置本体2の前側で上下方向に亘って異なる位置に配置されて、上下方向において異なる位置で検知範囲を有するように配置されるとよい。なお、
図8では、各近接センサ7aの検知範囲は、各近接センサ7aの周囲の扇形で示されている。例えば、装置本体2の前側左部および前側右部に配置される近接センサ7aは、それぞれ上下方向に亘って複数配置される。
【0075】
操作表示部8は、装置本体2の後上側で走行操作部4の近傍に設けられ、
図9に示すように、キースイッチ27と、緊急停止ボタン28と、タッチパネル29とを備え、操作表示部8の各部は、制御部10に接続されている。操作表示部8は、装置本体2に取り付けられる操作表示パネルなどで構成されてよく、あるいは、装置本体2に対して着脱可能に装着されるタブレット端末などで構成されてもよい。なお、タブレット端末などで構成される操作表示部8は、通信部15によって無線通信を介して制御部10に接続されて、自律走行作業装置1を遠隔操作可能となる。
【0076】
キースイッチ27は、オン、オフを切替可能に構成されている。キースイッチ27をオンに切り替えることで、電源部9から各部に電力が供給されて自律走行作業装置1が稼働する一方、キースイッチ27をオフに切り替えることで、電源部9から各部への電力供給が停止されて自律走行作業装置1の稼働が停止する。緊急停止ボタン28は、操作されることで、自律走行作業装置1の各部の動作(特に、再現モードでの自動走行清掃)を強制的に停止(制動)する。
【0077】
タッチパネル29は、制御部10からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部10へと送信する。例えば、キースイッチ27をオンにして自律走行作業装置1を稼働すると、タッチパネル29は、
図9に示すように、動作モードを選択可能なモード選択画面30を表示する。
【0078】
モード選択画面30には、学習ボタン31、自動ボタン32および手動ボタン33が操作可能に表示される。
【0079】
学習ボタン31または手動ボタン33が操作されると、動作モードが学習モードまたは手動モードに切り替えられて、タッチパネル29は、
図10および
図11に示すように、手動走行や手動清掃に関するデータを設定操作可能なデータ設定画面40を表示する。また、自動ボタン32が操作されると、動作モードが再現モードに切り替えられて、タッチパネル29は、自動走行清掃の対象の清掃プランを選択操作可能な清掃プラン選択画面(図示せず)を表示する。
【0080】
データ設定画面40には、走行部3の走行速度を変更する速度変更ボタン41が表示される。速度変更ボタン41は、例えば、操作する度に走行速度を段階的に上げる上ボタンと、操作する度に走行速度を段階的に下げる下ボタンとを備える。
【0081】
データ設定画面40には、清掃部5の清掃部材16の清掃スイッチ42および清掃部材16のパッド圧を調整するパッド圧調整ボタン43が表示される。清掃スイッチ42は、操作する度に清掃部材16による清掃の稼働/停止を切り替える。パッド圧調整ボタン43は、操作する度に清掃部材16のパッド圧を段階的かつ循環的に切り替える。
【0082】
データ設定画面40には、清掃部5の洗浄液供給部17の供給スイッチ44および洗浄液供給部17の供給水量を調整する供給水量調整ボタン45が表示される。供給スイッチ44は、操作する度に洗浄液供給部17による洗浄液供給の稼働/停止を切り替える。供給水量調整ボタン45は、操作する度に洗浄液供給部17の供給水量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0083】
データ設定画面40には、清掃部5の吸引部18の吸引スイッチ46および吸引部18の吸引量を調整する吸引量調整ボタン47が表示される。吸引スイッチ46は、操作する度に吸引部18による吸引の稼働/停止を切り替える。吸引量調整ボタン47は、操作する度に吸引部18の吸引量を段階的かつ循環的に切り替える。
【0084】
更に、データ設定画面40には、学習モードにおいて、学習走行清掃を開始する学習開始ボタン48、学習走行清掃を中断する学習中断ボタン49、学習走行清掃を完了する学習完了ボタン50、学習走行清掃の結果を清掃プランとして記憶する記憶ボタン51が操作可能に表示される。なお、学習中断ボタン49および学習完了ボタン50は、学習走行清掃の実行中のみ表示するようにしてもよく、記憶ボタン51は、学習走行清掃の完了後のみ表示するようにしてもよい。
【0085】
更に、データ設定画面40には、走行パターン設定ボタン52と、信地旋回ボタン53とが表示される。
【0086】
走行パターン設定ボタン52は、学習モードおよび再現モードにおいて、手動操作に応じて走行パターンを回避走行パターンまたは狭路走行パターンに設定し、例えば、押圧操作する度に回避走行パターンと狭路走行パターンとを切り替える。回避走行パターンの場合には、
図10に示すように、走行パターン設定ボタン52に回避ありが表示され、狭路走行パターンの場合には、
図11に示すように、走行パターン設定ボタン52に回避なしが表示される。また、走行パターン設定ボタン52は、学習モードにおいて所定の幅閾値未満の道幅の狭路を走行した場合に、操作可能となってもよい。ここで、幅閾値とは、例えば、自律走行作業装置1を走行操作部4によって、周囲の壁や障害物などに接触することなく、安全に手動旋回可能な幅に設定される。
【0087】
信地旋回ボタン53は、手動モードまたは学習モードにおいて、走行操作部4のハンドル操作によらずに、手動操作に応じて信地旋回を走行部3に指示する。例えば、信地旋回ボタン53は、1回の押圧操作で単位角度毎の信地旋回を走行部3に指示してもよく、または、押圧操作している間、信地旋回を継続するように走行部3に指示してもよい。信地旋回ボタン53は、左旋回と右旋回とで異なるボタンで構成されてよい。なお、信地旋回ボタン53は、走行部3が進行を停止している場合に、操作可能となるとよい。本実施形態では、信地旋回ボタン53をデータ設定画面40に備える例を説明するが、他の例として、信地旋回ボタン53は、走行操作部4に設けられてもよい。
【0088】
清掃プラン選択画面(図示せず)は、記憶部11に記憶されている各清掃プランを選択可能に構成され、また、選択された清掃プランの自動走行清掃の開始、一時停止、中止などを操作可能な操作ボタン(図示せず)を有して構成される。なお、選択された清掃プランの自動走行清掃が開始されると、タッチパネル29は、自動走行清掃の実行中を示す画面を表示する。
【0089】
電源部9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)および充電回路を備え、外部電源に接続することでバッテリーが充電され、また、自律走行作業装置1の各部へと電力を供給する。電源部9は、バッテリーの残量を示す信号を制御部10へと出力してもよい。
【0090】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)などのコンピュータで構成され、
図2に示すように、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリなどを含む記憶部11に接続されている。また、制御部10は、上記の走行部3、走行操作部4、清掃部5、計測部6、障害物検知部7、操作表示部8、電源部9、警告灯13、スピーカ14および通信部15などの自律走行作業装置1の各部に接続されている。
【0091】
また、制御部10は、通信部15を介して外部機器と通信可能に接続される。通信部15は、装置本体2と別体となるタブレット端末などで構成される操作表示部8や、操作者の保有する操作者端末60などの外部機器と、Wi-Fiなどの無線LANやBluetooth(登録商標)などの通信規格によって無線通信を行う。
【0092】
記憶部11は、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御部10が、記憶部11に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各部および各種機能を統括制御する。例えば、制御部10は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、モード切替部20、学習制御部21、地図作成部22、清掃プラン作成部23、走行パターン設定部24、狭路判定部25および再現制御部26として動作する。これにより、自律走行作業装置1は、事前に記憶されたプログラムに従って自律的に走行し自動で作業することができる。また、記憶部11は、1つ以上の清掃プランを記憶すると共に、各清掃プランに対応する環境地図および走行パターンも記憶する。
【0093】
モード切替部20は、動作モードを学習モード、再現モードおよび手動モードの何れかに切り替える。モード切替部20は、例えば、上記したモード選択画面30において、学習ボタン31、自動ボタン32および手動ボタン33の操作に応じて動作モードを学習モード、再現モードおよび手動モードにそれぞれ切り替える。
【0094】
学習制御部21は、学習モードにおいて、データ設定画面40の学習開始ボタン48の操作に応じて学習走行清掃を開始して、走行部3の走行データおよび清掃部5の清掃データの取得を開始する。学習制御部21は、学習走行清掃が行われる間、所定のステップ間隔毎に、走行データおよび清掃データを取得して記憶部11に一時的に記憶しておく。
【0095】
学習制御部21は、例えば、走行データとして、計測部6が計測した位置情報に基づいて自己位置データ(X座標およびY座標、角度)を取得する。また、走行部3の前輪3aの前輪回転用エンコーダで前輪3aの走行回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の走行速度を取得する。更に、走行部3の前輪3aの操舵回転用エンコーダで前輪3aの操舵回転数を検出し、その検出結果に基づいて走行部3の旋回速度を取得する。
【0096】
学習制御部21は、例えば、清掃データとして、清掃部5の清掃部材16のパッド圧、洗浄液供給部17の供給水量および吸引部18の吸引量について、データ設定画面40を介して設定されていた段階的な強度を取得する。
【0097】
更に、学習制御部21は、学習走行清掃中に走行パターン設定部24によって設定された走行パターンを記憶部11に一時的に記憶するとよい。また、学習制御部21は、学習走行清掃の走行経路の各位置(各ステップ)について、狭路判定部25による狭路判定結果を狭路フラグ情報としてステップ毎に関連付けて記憶部11に一時的に記憶するとよい。
【0098】
例えば、学習走行清掃中に狭路判定部25が各ステップの狭路を判定している場合には、学習制御部21は、後述するように、学習走行清掃中に狭路判定部25がステップ間隔毎に判定した狭路フラグ情報を取得して、各ステップに関連付けて記憶部11に記憶する。即ち、この場合、狭路フラグ情報は、走行データおよび清掃データと同様に、学習走行清掃中にステップを経過する毎に取得されて逐一記憶される。あるいは、学習走行清掃中に狭路判定部25が各ステップの狭路を判定していない場合には、学習制御部21は、後述するように、学習走行清掃が完了したときに狭路判定部25が環境地図に基づいて判定した各ステップの狭路フラグ情報を取得して、各ステップに関連付けて記憶部11に記憶する。即ち、この場合、狭路フラグ情報は、学習走行清掃を完了してから全てのステップについて取得されて一度に記憶される。
【0099】
また、学習制御部21は、学習走行清掃中に狭路判定部25によって判定された狭路を走行するとき、狭路の道幅が、手動旋回可能な幅未満で、且つ信地旋回可能な幅以上である場合には、走行操作部4を用いた手動操作による装置本体2の旋回動作を制限して、信地旋回ボタン53による信地旋回のみを可能にしてもよい。なお、学習制御部21は、狭路の道幅が、信地旋回可能な幅未満である場合には、走行操作部4による旋回動作だけでなく、信地旋回ボタン53による旋回動作も制限するとよい。
【0100】
更に、学習制御部21は、学習走行清掃中に狭路判定部25が自律走行作業装置1の最小横幅以下である道幅の狭路、すなわち通行禁止狭路を判定したとき、走行操作部4による手動操作によって自律走行作業装置1が通行禁止狭路に接近した場合には、学習走行清掃を停止するように走行部3および清掃部5を制御してもよい。
【0101】
そして、学習制御部21は、データ設定画面40の学習中断ボタン49の操作(学習走行清掃の中断操作)に応じて学習走行清掃を中断し、学習モードでの手動走行および手動清掃を強制的に停止すると共に、走行データおよび清掃データの取得を停止する。
【0102】
また、学習制御部21は、データ設定画面40の学習完了ボタン50の操作に応じて学習走行清掃を完了し、走行データおよび清掃データの取得を停止する。
【0103】
地図作成部22は、学習モードにおいて学習走行清掃が行われる間、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を用いて、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行う。
【0104】
具体的には、地図作成部22は、所定の清掃エリアの学習走行清掃の間に、計測部6の計測結果として、装置本体2と装置本体2の周囲の非作業対象との位置情報を取得し、この計測部6の計測結果に基づいて、所定の時間間隔毎または所定の距離間隔毎に、装置本体2の周囲の局所地図を作成する。また、地図作成部22は、局所地図と走行部3の各エンコーダによる検出結果(走行部3の移動量)とに基づいて、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置(座標)を推定する。
【0105】
そして、地図作成部22は、学習走行清掃を完了する際に、各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで清掃エリアの環境地図を作成する。また、地図作成部22は、局所地図中の自己位置(計測部6が計測した各位置情報)をつなぎ合わせる(合成する)ことで走行経路を作成する。この環境地図を用いることで、局所地図中の自己位置と、計測部6が計測した非作業対象の位置情報とに基づいて、走行経路に沿って走行可能範囲を把握することができ、この走行可能範囲に基づいて、走行経路の各位置(各ステップ)の道幅を算出することができる。
【0106】
清掃プラン作成部23は、データ設定画面40の学習完了ボタン50の操作に応じて学習走行清掃が完了すると、学習制御部21が記憶部11に一時的に記憶していた走行データおよび清掃データ並びに狭路フラグ情報をステップ毎に関連付けて清掃プラン(作業プラン)を作成する。
【0107】
清掃プラン作成部23は、作成した清掃プランについてプラン名の入力を操作者に問い合わせる問合せ画面をタッチパネル29に表示させ、操作者によって入力されたプラン名を、作成した清掃プランに付加する。清掃プラン作成部23は、プラン名の入力後、データ設定画面40の記憶ボタン51の操作に応じて、作成した清掃プランを、同じ学習走行清掃で地図作成部22が作成した環境地図および走行パターン設定部24が設定した走行パターンと関連付けて記憶部11に記憶する。なお、清掃プラン作成部23は、学習走行清掃を行うことなく、自律走行作業装置1をコンピュータとして用いることによって、または操作者端末60などの外部機器によって、あるいは事前に入力されたプログラムに従って自動で走行経路を作成することによって、事前に環境地図、走行データおよび清掃データが作成された場合、これらの環境地図、走行データおよび清掃データについて清掃プランを作成してもよく、この場合でも、狭路フラグ情報や走行パターンを設定してよい。
【0108】
走行パターン設定部24は、学習モードにおいて(環境地図の作成時に)検出されなかった未検出障害物が、再現モードにおいて(自動走行清掃を行う際に)検出された場合の走行パターンとして、未検出障害物を回避して走行する回避走行パターンと、未検出障害物を回避せずに自動走行清掃を停止する狭路走行パターンとの何れかを設定する。回避走行パターンおよび狭路走行パターンは、学習モードおよび再現モードの何れのモードにおいても操作者のボタン押下などの手動操作により設定されてよい。なお、上記操作者の手動操作により狭路走行パターンが設定される清掃エリアは、操作者の判断に従い、所定の幅閾値以上の道幅であっても設定してよい。
【0109】
学習モードにおいて走行パターンを設定する場合、走行パターン設定部24は、基本的には、学習走行清掃において(環境地図の作成時に)自律走行作業装置1が所定の幅閾値未満の道幅の狭路を走行(検出)した場合、換言すれば、学習走行清掃を行った清掃エリアの走行経路に狭路が含まれる場合、走行パターン設定ボタン52の手動操作に応じて、または狭路判定部25による狭路の判定に応じて自動的に、狭路走行パターンを設定する。一方、走行パターン設定部24は、学習走行清掃において自律走行作業装置1が所定の幅閾値未満の道幅の狭路を走行しない場合、即ち、狭路走行パターンを設定しない場合には、回避走行パターンを設定してよい。また、再現制御部26が、学習走行清掃に拘わらず、事前に作成された環境地図、走行データおよび清掃データに基づいて自動走行清掃を行う場合、走行パターン設定部24は、環境地図の作成時に検出されなかった未検出障害物が、自動走行清掃を行う際に検出された場合の走行パターンを設定してよく、また、環境地図の作成時に所定の幅閾値未満の道幅の狭路を検出した場合、手動または自動で狭路走行パターンを設定してよい。
【0110】
走行パターン設定部24は、自律走行作業装置1が学習走行清掃を行っている間に、または学習走行清掃を完了する際に、走行パターン設定ボタン52による狭路走行パターンの手動操作を受け付ける。あるいは、走行パターン設定部24は、学習モードにおいて自律走行作業装置1が学習走行清掃を行っている間に、狭路判定部25が狭路を判定したときに、自動的に狭路走行パターンを設定する。
【0111】
また、再現モードにおいて走行パターンを設定する場合、走行パターン設定部24は、清掃プランの選択後であって自動走行清掃を開始する前に、走行パターン設定ボタン52による狭路走行パターンの手動操作を受け付ける。あるいは、自動走行清掃を行っている間に、狭路判定部25による狭路の判定結果に応じて、走行パターンを切り替えて設定する。このとき、走行パターン設定部24は、狭路判定部25が走行経路の進行方向側の位置を狭路でないと判定した場合、自動的に回避走行パターンを設定し、一方、狭路であると判定した場合、自動的に狭路走行パターンを設定する。
【0112】
更に、走行パターン設定部24は、自動走行清掃を行う際に、清掃エリアを利用する利用者の活動時間帯に応じて自動的に走行パターンを設定してもよい。例えば、走行パターン設定部24は、清掃エリアの利用者が多い昼間などの時間帯では狭路走行パターンを設定し、一方、利用者が少ない夜間などの時間帯では回避走行パターンを設定する。
【0113】
狭路判定部25は、学習モードまたは再現モードにおいて、走行経路の各位置の道幅を算出し、道幅が所定の幅閾値以上の場合には走行経路の位置を狭路でないと判定する一方、道幅が所定の幅閾値未満の場合には走行経路の位置を狭路であると判定する。
【0114】
なお、狭路判定部25が狭路の存在を判定した場合、学習制御部21または再現制御部26は、スピーカ14による音出力、操作表示部8による画面表示、警告灯13の点灯または点滅および通信部15を介した操作者の保有する操作者端末60との通信の少なくとも何れか一つによって、狭路の存在を操作者へ通知するように、スピーカ14、操作表示部8、警告灯13または通信部15を制御する。このとき、通信部15による操作者端末60との通信として、電子メールの送信やショートメッセージサービスを通じたショートメールの送信を用いてよい。なお、学習モードでは、狭路の存在を通知すると共に、狭路走行パターンの設定を操作者に促すように通知するとよい。
【0115】
例えば、学習モードで狭路を判定する場合、狭路判定部25は、学習走行清掃を行っている間に、計測部6の計測結果として、装置本体2と装置本体2の周囲の非作業対象との位置情報を取得し、この計測部6の計測結果と、装置本体2の最大横幅とに基づいて、走行経路の各位置の道幅を算出する。また、狭路判定部25は、学習走行清掃を完了する際に、計測部6の計測結果に基づいて作成される清掃エリアの環境地図を用いて、局所地図中の自己位置と、計測部6の計測結果である非作業対象の位置情報とに基づいて、走行経路の各位置(各ステップ)の走行可能範囲を把握し、この走行可能範囲の道幅を計測することで、走行経路の各位置の道幅を算出する。
【0116】
あるいは、再現モードで狭路を判定する場合、狭路判定部25は、自動走行清掃を行っている間に、上記した学習走行清掃中の動作と同様にして、計測部6の計測結果と装置本体2の最大横幅とに基づいて、走行経路の進行方向側の位置の道幅を算出する。
【0117】
更に、狭路判定部25は、学習モードにおいて、走行経路の各位置(各ステップ)の道幅を算出すると、その道幅に応じた狭路フラグ情報を判定し、その狭路フラグ情報を清掃プランの各ステップに関連付けて記憶する。
【0118】
例えば、狭路判定部25は、走行経路の道幅が手動旋回可能な幅以上である場合、狭路フラグ情報を通常路と判定し、走行経路の道幅が手動旋回可能な幅未満である場合、狭路フラグ情報を狭路と判定する。なお、狭路判定部25は、通常路の狭路フラグ情報を清掃プランに記憶してもよいが、記憶しなくてもよい。
【0119】
狭路フラグ情報を狭路と判定した場合、狭路判定部25は、更に、道幅に応じた狭路レベルを判定する。狭路判定部25は、狭路の道幅が、手動旋回可能な幅未満であるが、信地旋回可能な幅以上である場合、狭路レベル1と判定する。また、狭路判定部25は、狭路の道幅が、信地旋回可能な幅未満であるが、自律走行作業装置1が幅広部品を装着した状態で通行可能な幅以上である場合、狭路レベル2と判定する。更に、狭路判定部25は、狭路の道幅が、自律走行作業装置1が幅広部品を装着した状態で通行可能な幅未満であるが、最小横幅の状態で通行可能な幅以上である場合、狭路レベル3と判定する。なお、狭路判定部25は、狭路の場合には、狭路フラグ情報に代えて狭路レベルを清掃プランに記憶してもよい。
【0120】
また、狭路判定部25は、狭路の道幅が、自律走行作業装置1の最小横幅以下である場合、狭路レベルを通行禁止狭路と判定するが、自律走行作業装置1が通行禁止狭路を走行することはないので、通行禁止狭路の狭路フラグ情報や狭路レベルは清掃プランに記憶されない。
【0121】
再現制御部26は、動作モードが再現モードの場合に、タッチパネル29に表示された清掃プラン選択画面の操作に応じて清掃プランが選択されると、選択された清掃プランを記憶部11から読み出し、この清掃プランの走行データおよび清掃データ並びに清掃プランに対応する環境地図および走行パターンに基づいて、走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う。
【0122】
このとき、再現制御部26は、清掃プランに対応する環境地図上の自律走行作業装置1の自己位置を推定しながら自動走行清掃を実行する。例えば、再現制御部26は、地図作成部22を利用してSLAMなどの技術を用いて局所地図を作成し、局所地図中の自律走行作業装置1の自己位置を推定して、局所地図を環境地図にマッチングさせることで、環境地図上の自己位置を推定する。また、再現制御部26は、自動走行清掃中に、狭路判定部25が判定した狭路フラグ情報を取得して記憶部11に記憶してもよい。その際、自己位置の推定の為に作成した前記局所地図を複数つなげて部分的に環境地図を作成し、狭路判定に用いて狭路フラグ情報を取得してもよい。再現制御部26は狭路が部分的に狭まっているのか、それとも連続して狭まっているのか、正確な狭路フラグ情報を得ることができ、正確な狭路フラグ情報に合わせて自動走行清掃を継続させることができる。
【0123】
そして、再現制御部26は、清掃プランの走行データのステップ毎の自己位置データと、環境地図上で推定される自己位置を合わせて走行部3を制御しつつ、清掃部5の清掃データに基づいてステップ毎に清掃作業を制御する。
【0124】
また、再現制御部26は、学習モードにおいて検出されなかった未検出障害物が、自動走行清掃中に、計測部6または障害物検知部7によって進行方向側に検出された場合、走行パターンに従って走行部3および清掃部5を制御する。
【0125】
例えば、回避走行パターンが設定されている場合、再現制御部26は、装置本体2と未検出障害物との距離が所定の安全距離になるまで自動走行清掃を行った後、装置本体2と未検出障害物の間に所定の安全距離を保ちつつ、未検出障害物を回避して走行するように走行部3を制御する。このような未検出障害物の回避動作中、再現制御部26は、自動清掃を継続するように清掃部5を制御してもよいが、あるいは、自動清掃を停止するように清掃部5を制御してもよい。また、回避走行パターンが設定されている場合、再現制御部26は、狭路判定部25によって所定の幅閾値未満の道幅の狭路が判定されていると、狭路との距離が所定の安全距離になるまで自動走行清掃を行った後、自動走行清掃を停止するように走行部3および清掃部5を制御する。あるいは、狭路に進入せず再現モードを再開可能な位置を探して移動し、前記再開可能な位置から再現モードを再開して自動走行清掃を継続させてもよい。
【0126】
狭路走行パターンが設定されている場合、再現制御部26は、装置本体2と未検出障害物との距離が所定の安全距離になるまで自動走行清掃を行った後、自動走行清掃を停止するように走行部3および清掃部5を制御する。このように狭路走行パターンに従って自動走行清掃を停止させる場合、再現制御部26は、所定の停止時間の間、自動走行清掃を停止させる。所定の停止時間の経過後、未検出障害物が検出されなくなれば、再現制御部26は、自動走行清掃を再開し、一方、未検出障害物が再度検出されれば、再現制御部26は、再度、所定の停止時間の間、自動走行清掃を停止させることを繰り返す。また、狭路走行パターンが設定されている場合、再現制御部26は、狭路判定部25によって所定の幅閾値未満の道幅の狭路が判定されていても、通行禁止狭路でなければ、自動走行清掃を継続する。なお、再現制御部26は、狭路内では減速するように走行部3を制御してもよい。
【0127】
また、再現制御部26は、狭路走行パターンに従って自動走行清掃を停止させる場合、スピーカ14による音出力、操作表示部8による画面表示、警告灯13の点灯または点滅および通信部15を介した操作者の保有する操作者端末60との通信の少なくとも何れか一つによって、自動走行清掃の停止を操作者へ通知するように、スピーカ14、操作表示部8、警告灯13または通信部15を制御する。このとき、通信部15による操作者端末60との通信として、電子メールの送信やショートメッセージサービスを通じたショートメールの送信を用いてよい。なお、再現制御部26は、上記した所定の停止時間の経過後に、未検出障害物が再度検出されて、自動走行清掃を再度停止させる場合にも、同様にして自動走行清掃の停止を操作者へ通知する。
【0128】
更に、再現制御部26は、自動走行清掃において、計測部6のレーザーレンジファインダ6aおよび障害物検知部7の複数の近接センサ7aによって障害物などの非作業対象の検知を行い、非作業対象との距離が所定の安全距離に近づくと減速するように走行部3を制御し、非作業対象との距離が所定の安全距離以下になると停止するように走行部3を制御するとよい。このとき、再現制御部26は、走行パターン設定部24が設定した走行パターンに応じて、または、狭路判定部25が判定した狭路フラグ情報に応じて、選択的に近接センサ7aを使用するとよい。
【0129】
例えば、再現制御部26は、回避走行パターンが設定されている場合、
図5に示すように、装置本体2の左右両側および前側に亘る複数の近接センサ7aの全てを稼働して、複数の近接センサ7aの全ての検知結果に基づいて非作業対象を検知する。また、再現制御部26は、回避走行パターンが設定されている場合、装置本体2の前側で上下方向に亘る複数の近接センサ7aについては、1つの近接センサ7aのみを稼働して、この近接センサ7aの検知結果を取得し、または複数の近接センサ7aの全てを稼働して、1つの近接センサ7aのみの検知結果を取得し、取得した検知結果に基づいて非作業対象を検知する。
【0130】
一方、再現制御部26は、狭路走行パターンが設定されている場合、
図6および
図7に示すように、装置本体2の左右両側の壁を非作業対象として検知しないように、装置本体2の左右両側および前側に亘る複数の近接センサ7aのうち、装置本体2の前側に配置された近接センサ7aのみを稼働して、この近接センサ7aの検知結果を取得し、または複数の近接センサ7aの全てを稼働して、装置本体2の前側に配置された近接センサ7aのみの検知結果を取得し、取得した検知結果に基づいて非作業対象を検知する。
【0131】
あるいは、再現制御部26は、狭路走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aのうち、狭路判定部25が判定した狭路フラグ情報に応じて選択される近接センサ7aのみを稼働して、この近接センサ7aの検知結果を取得し、または複数の近接センサ7aの全てを稼働して、狭路フラグ情報に応じて選択される近接センサ7aのみの検知結果を取得し、取得した検知結果に基づいて非作業対象を検知する。
【0132】
例えば、狭路フラグ情報が、狭路レベル1や狭路レベル2の場合には、
図6に示すように、装置本体2の左側中央および右側中央に配置される近接センサ7aの検知結果を取得せずに、装置本体2の左側前部および右側前部に配置される近接センサ7aと、装置本体2の前側左部および前側右部に配置される近接センサ7aとの検知結果を取得して、非作業対象を検知する。
【0133】
また、狭路フラグ情報が、狭路レベル3の場合には、
図7に示すように、装置本体2の左側中央および右側中央に配置される近接センサ7aと、装置本体2の左側前部および右側前部に配置される近接センサ7aとの検知結果を取得せずに、装置本体2の前側左部および前側右部に配置される近接センサ7aの検知結果を取得して、非作業対象を検知する。
【0134】
また、再現制御部26は、狭路走行パターンが設定されている場合、
図8に示すように、装置本体2の前側で上下方向に亘る複数の近接センサ7aについては、複数の近接センサ7aの全てを稼働して、複数の近接センサ7aの全ての検知結果に基づいて非作業対象を検知する。
【0135】
再現制御部26について、自動走行清掃の動作を
図12~
図14のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、自動走行清掃の開始時に走行パターンを設定する動作を説明する。
【0136】
動作モードが再現モードの場合、再現制御部26は、操作者に選択された清掃プランを記憶部11から読み出し(
図12のステップS1)、清掃プランの走行データおよび清掃データに基づいて自動走行清掃を制御する。このとき、再現制御部26は、清掃プランに走行パターンが関連付けられていれば(
図12のステップS2:YES)、その走行パターンが狭路走行パターンの場合(
図12のステップS3:YES)、走行パターン設定部24が狭路走行パターンを設定し(
図13のステップS11)、一方、走行パターンが回避走行パターンの場合(
図12のステップS3:NO)、走行パターン設定部24が回避走行パターンを設定する(
図14のステップS21)。
【0137】
また、再現制御部26は、清掃プランに走行パターンが関連付けられていなければ(
図12のステップS2:NO)、清掃プランに関連付けられた環境地図を取得し、狭路判定部25が、環境地図の走行経路に狭路が含まれているか否かを判定する(
図12のステップS4)。そして、狭路が含まれている場合(
図12のステップS5:YES)、走行パターン設定部24が狭路走行パターンを設定し(
図13のステップS11)、一方、狭路が含まれていない場合(
図12のステップS5:NO)、走行パターン設定部24が回避走行パターンを設定する(
図14のステップS21)。
【0138】
次に、狭路走行パターンが設定されている場合(
図13のステップS11)の動作を説明する。再現制御部26は、自動走行清掃を行っている間(
図13のステップS12)、計測部6のレーザーレンジファインダ6aおよび障害物検知部7の複数の近接センサ7aによって障害物などの非作業対象の検知を行う(
図13のステップS13)。そして、非作業対象が検知されない場合(
図13のステップS13:NO)、再現制御部26は、自動走行清掃を継続する(
図13のステップS14)。
【0139】
一方、非作業対象が検知された場合(
図13のステップS13:YES)、
図16に示すように、再現制御部26は、装置本体2と非作業対象との距離が所定の安全距離になるまで(
図13のステップS15:NO)、自動走行清掃を継続する。また、再現制御部26は、装置本体2と非作業対象との距離が所定の安全距離以下になると(
図13のステップS15:YES)、自動走行清掃を一時停止させ(
図13のステップS16)、自動走行清掃の停止を操作者へ通知する(
図13のステップS17)。
【0140】
その後、所定の停止時間が経過すると、再現制御部26は、非作業対象の検知を再度行って(
図13のステップS18)、非作業対象が再度検知された場合には(
図13のステップS18:YES)、自動走行清掃の停止(
図13のステップS16)および操作者への通知(
図13のステップS17)を繰り返し、一方、非作業対象自身が移動したり、操作者が非作業対象を移動させたりして、非作業対象が検知されなくなった場合には(
図13のステップS18:NO)、自動走行清掃を継続する(
図13のステップS14)。
【0141】
そして、再現制御部26は、自動走行清掃において自律走行作業装置1が清掃エリアの目的地(走行経路の終了地点)に到達するまで(
図13のステップS19:NO)、上記の処理を繰り返し、自律走行作業装置1が目的地に到達すると(
図13のステップS19:YES)、自動走行清掃を終了する。
【0142】
次に、回避走行パターンが設定されている場合(
図14のステップS21)の動作を説明する。再現制御部26は、自動走行清掃を行っている間(
図14のステップS22)、計測部6のレーザーレンジファインダ6aおよび障害物検知部7の複数の近接センサ7aによって障害物などの非作業対象の検知を行う(
図14のステップS23)。そして、非作業対象が検知されない場合(
図14のステップS23:NO)、再現制御部26は、自動走行清掃を継続する(
図14のステップS24)。
【0143】
一方、非作業対象が検知された場合(
図14のステップS23:YES)、
図15に示すように、再現制御部26は、装置本体2と非作業対象との距離が所定の安全距離になるまで(
図14のステップS25:NO)、自動走行清掃を継続する。また、再現制御部26は、装置本体2と非作業対象との距離が所定の安全距離に到達すると(
図14のステップS25:YES)、装置本体2と非作業対象との安全距離を保ちつつ、非作業対象を回避して走行するように走行部3を制御する(
図14のステップS26)。更に、再現制御部26は、非作業対象を回避した自律走行作業装置1が清掃プランの走行経路に戻ると、自動走行清掃を継続する(
図14のステップS24)。
【0144】
そして、再現制御部26は、自動走行清掃において自律走行作業装置1が清掃エリアの目的地(走行経路の終了地点)に到達するまで(
図14のステップS27:NO)、上記の処理を繰り返し、自律走行作業装置1が目的地に到達すると(
図14のステップS27:YES)、自動走行清掃を終了する。
【0145】
上記のように、本実施形態によれば、自律的に走行し自動で清掃(作業)する自動走行清掃(自動走行作業)を実行可能な自律走行作業装置1は、装置本体2と、装置本体2を所定の清掃エリア(作業エリア)内で走行させる走行部3と、装置本体2の清掃エリア内の走行経路上で清掃(作業)を行う清掃部5(作業部)と、予め記憶された清掃エリアの環境地図、並びに走行データおよび清掃データに基づいて走行部3および清掃部5を制御して自動走行清掃を行う再現制御部26と、環境地図の作成時に検出されなかった未検出障害物が、自動走行清掃を行う際に検出された場合の走行パターンとして、未検出障害物を回避して走行する回避走行パターンと、未検出障害物を回避せずに自動走行清掃を停止する狭路走行パターンとの何れかを設定する走行パターン設定部24と、を備える。走行パターン設定部24は、環境地図の作成時に所定の幅閾値未満の道幅の狭路を検出すると手動または自動で狭路走行パターンを設定する。再現制御部26は、走行パターン設定部24で設定された走行パターンに従って走行部3を制御し、狭路走行パターンが設定されている場合には、狭路に拘わらず走行させる。
【0146】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃エリアに狭路が存在する場合でも、狭路走行パターンを設定することで、自動走行清掃を行う際に狭路を走行させることができるので、狭路を清掃領域にすることができ、未清掃領域が発生しなくなる。また、狭路走行パターンが設定されている場合、未検出障害物を検出すると、自動走行清掃を停止するので、狭路内で自動走行清掃を行う場合の危険を回避することができ、換言すれば、安全性を確保することができる。このように、清掃エリアの走行経路に狭路が存在する場合でも、狭路内での自動走行清掃を安全に継続させ、未清掃領域の発生を抑制することができる。
【0147】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、動作モードを学習モードまたは再現モードに切り替え可能なモード切替部20と、学習モードにおいて、環境地図を作成すると共に、走行部3の手動走行時の走行データおよび清掃部5の手動清掃(手動作業)時の清掃データを取得して記憶する学習走行清掃(学習走行作業)を行う学習制御部21と、を更に備える。再現制御部26は、再現モードにおいて自動走行清掃を行う。
【0148】
このような構成により、自律走行作業装置1において、走行パターン設定部24は、学習モードにおいて学習走行清掃を行った際に検出されなかった未検出障害物が、再現モードにおいて自動走行清掃を行う際に検出された場合の走行パターンを設定することができる。また、走行パターン設定部24は、学習モードにおいて学習走行清掃を行う際に幅閾値未満の道幅の狭路を走行した場合に、狭路走行パターンを設定することができる。
【0149】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、装置本体2と装置本体2の周囲の非作業対象との位置関係を計測する計測部6と、道幅が所定の幅閾値未満である走行経路の位置を狭路と判定する狭路判定部25と、を更に備える。狭路判定部25は、学習モードにおいて、計測部6の計測結果に基づいて作成される清掃エリアの環境地図から走行経路の各位置の道幅を算出し、または計測部6の計測結果と装置本体2の最大横幅とに基づいて走行経路の各位置の道幅を算出し、算出した道幅に基づいて狭路を判定する。走行パターン設定部24は、学習モードにおいて狭路判定部25が狭路を判定すると、自動で狭路走行パターンを設定する。
【0150】
このような構成により、自律走行作業装置1は、学習走行清掃を行うことによって、清掃エリアの走行経路に含まれる狭路を、自動走行清掃を行う前に、確実に判定することができる。また、走行経路に狭路が含まれていると、狭路を清掃領域にすることになるが、自動的に狭路走行パターンが設定されるので、狭路内での自動走行清掃を安全に継続させ、未清掃領域の発生を抑制することができる。
【0151】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、狭路判定部25は、走行経路の各位置の道幅に応じた狭路フラグ情報を判定する。このとき、狭路判定部25は、道幅が手動旋回可能な幅以上である場合、狭路フラグ情報を通常路と判定し、道幅が手動旋回可能な幅未満である場合、狭路フラグ情報を道幅に応じた段階的な狭路レベルの狭路と判定し、更に道幅が自律走行作業装置1の最小横幅以下である場合、狭路フラグ情報を通行禁止狭路と判定する。
【0152】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃エリアに存在する様々な狭路を的確に判定することができる。そのため、狭路フラグ情報を参照することで、狭路が自律走行作業装置1の通行にどのように影響するかを把握することができる。
【0153】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、走行部3に装置本体2の信地旋回を指示するための信地旋回ボタン53を更に備える。学習制御部21は、狭路判定部25によって判定された狭路を走行するとき、狭路の道幅が、手動旋回可能な幅未満で、且つ信地旋回可能な幅以上である場合、装置本体2の旋回動作を、信地旋回ボタン53による信地旋回に制限する。
【0154】
このような構成により、自律走行作業装置1は、学習走行清掃において自律走行作業装置1を狭路に走行させる場合、自律走行作業装置1を壁や障害物などの非作業対象に衝突させることがなく、安全に学習走行清掃を継続することができる。
【0155】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、狭路判定部25は、再現モードにおいて、計測部6の計測結果と装置本体2の最大横幅とに基づいて走行経路の進行方向側の位置の道幅を算出し、算出した道幅が所定の幅閾値以上の場合には、進行方向側を狭路でないと判定し、また、道幅が所定の幅閾値未満の場合には、進行方向側を狭路であると判定する。走行パターン設定部24は、再現モードにおいて、狭路判定部25が進行方向側を狭路でないと判定した場合、自動で回避走行パターンを設定し、また、狭路判定部25が進行方向側を狭路であると判定した場合、自動で狭路走行パターンを設定する。
【0156】
このような構成により、自律走行作業装置1は、狭路と通常路とが混在する清掃エリアで自動走行清掃を行う場合、狭路では狭路走行パターンに従って自動走行清掃を継続することができ、通常路では回避走行パターンに従って未検出障害物を回避しながら自動走行清掃を継続することができる。そのため、手間を掛けることなく効率的に自動走行清掃を行うことができ、また、狭路を清掃領域にすることができるので、未清掃領域を発生させることなく自動走行清掃を行うことができる。
【0157】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、学習制御部21または再現制御部26は、学習モードまたは再現モードにおいて、狭路判定部25が走行経路の所定の位置を狭路と判定すると、狭路の存在を操作者へ通知すると共に、狭路の道幅に応じた狭路フラグ情報を記憶する。
【0158】
このような構成により、自律走行作業装置1では、操作者が、学習走行清掃を行っている間に狭路の存在を気づくことによって、狭路を走行させるか否かを判断したり、狭路走行パターンを設定するか否かを判断したりすることができる。また、操作者は、自動走行清掃を行っている間に狭路の存在を気づくことによって、狭路上の未検出障害物を予め移動させたり、自動走行清掃の進捗状況を把握したりすることができる。
【0159】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、学習制御部21は、学習モードにおいて狭路判定部25が自律走行作業装置1の最小横幅以下である道幅の狭路を判定したとき、学習走行清掃を停止する。
【0160】
このような構成により、自律走行作業装置1では、学習走行清掃で作成される清掃プランは、自律走行作業装置1の最小横幅以下である道幅の狭路を清掃領域として含むことがなくなる。そのため、作成した清掃プランを再現モードで実行したとき、未清掃領域が発生することを防ぐことができる。
【0161】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、再現制御部26は、再現モードにおいて狭路走行パターンが設定されている場合、未検出障害物が狭路上に検出されたとき、所定の停止時間の間、自動走行清掃を停止させる。
【0162】
このような構成により、自律走行作業装置1では、自動走行清掃において、人などの移動物または荷物などの配置物が未検出障害物として狭路上に検出された場合には、停止時間の間に移動物が検出範囲から退出し、または停止時間の間に配置物を検出範囲から運び出すことで、未検出障害物が検出されなくなるので、移動物または配置物をやり過ごして自動走行清掃を継続することができる。
【0163】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、再現制御部26は、再現モードにおいて狭路走行パターンが設定されている場合、未検出障害物が狭路上に検出されたために、狭路走行パターンに従って自動走行清掃を停止させたとき、自動走行清掃の停止を操作者へ通知する。
【0164】
このような構成により、自律走行作業装置1では、自動走行清掃において、人などの移動物または荷物などの配置物が未検出障害物として狭路上に検出された場合、自動走行清掃の停止を通知された操作者は、即座に、移動物に対して検出範囲からの退出を促すことができ、または配置物を検出範囲から運び出すことができる。そのため、検出した未検出障害物を、即座に移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。
【0165】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、再現制御部26は、スピーカ14の音出力、操作表示部8の画面表示、警告灯13の点灯または点滅および操作者の保有する操作者端末60との通信の少なくとも何れか一つによって、自動走行清掃の停止を操作者へ通知する。
【0166】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃を停止したことを、操作者により確実に、より早く気付かせることができる。そのため、検出した未検出障害物を、より早く移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。
【0167】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、再現制御部26は、狭路走行パターンに従って自動走行清掃を停止させてから所定の停止時間を経過した後、未検出障害物が狭路上に検出されなくなった場合には、自動走行清掃を再開し、また、未検出障害物が狭路上に検出される場合には、自動走行清掃の停止を操作者へ再度通知する。
【0168】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃を停止したことを、操作者により確実に、より早く気付かせることができる。そのため、検出した未検出障害物を、より早く移動させることができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。
【0169】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、装置本体2の周囲の非作業対象を検知する複数の近接センサ7a(検知部)を装置本体2の左右両側および前側に亘って備える。再現制御部26は、再現モードにおいて、回避走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aの全てによって非作業対象を検知させ、また、狭路走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aのうち、装置本体2の前側に配置された近接センサ7aによって非作業対象を検知させて、装置本体2に近接する非作業対象が検知された場合、走行部3を減速または停止するように制御する。
【0170】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃中に清掃エリアの狭路を走行するとき、自律走行作業装置1の左右両側で狭路を構成する壁や障害物などの非作業対象を検知することがなくなるため、左右両側の非作業対象の存在によって減速または停止することがないので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。また、狭路において自律走行作業装置1の前側の非作業対象は確実に検知されるので、安全に自動走行清掃を継続することができる。
【0171】
あるいは、本実施形態では、自律走行作業装置1は、装置本体2の周囲の非作業対象を検知する複数の近接センサ7a(検知部)を装置本体2の左右両側および前側に亘って備える。再現制御部26は、再現モードにおいて、回避走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aの全てによって非作業対象を検知させ、また、狭路走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aのうち、狭路判定部25で判定された狭路フラグ情報に応じた近接センサ7aによって非作業対象を検知させて、装置本体2に近接する非作業対象が検知された場合、走行部3を減速または停止するように制御する。
【0172】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃中に清掃エリアの狭路を走行するとき、狭路の道幅に応じて、自律走行作業装置1の左右両側の検知範囲を変えることができる。そして、自律走行作業装置1の左右両側で狭路を構成する壁や障害物などの非作業対象を検知することがなくなるため、左右両側の非作業対象の存在によって減速または停止することがないので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。また、狭路において自律走行作業装置1の前側の非作業対象は確実に検知されるので、安全に自動走行清掃を継続することができる。
【0173】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1は、装置本体2の周囲の非作業対象を検知する複数の近接センサ7a(検知部)を装置本体2の前側で上下方向に亘って備える。再現制御部26は、再現モードにおいて、回避走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aのうち1つの近接センサ7aによって非作業対象を検知させ、また、狭路走行パターンが設定されている場合、複数の近接センサ7aの全てによって非作業対象を検知させて、装置本体2に近接する非作業対象が検知された場合、走行部3を減速または停止するように制御する。
【0174】
このような構成により、自律走行作業装置1は、装置本体2の前側において、上下方向の位置に起因して計測部6のLRF6aによって検知し難い非作業対象がある場合、例えば、床面FLの近傍に非作業対象がある場合でも、上下方向に複数配置された近接センサ7aによって、上下方向の検知範囲を広くしているので、非作業対象をより確実に検知することができる。そのため、非作業対象との接触を、より確実に防ぐことができ、より安全に自動走行清掃を継続することができる。
【0175】
また、本実施形態では、自律走行作業装置1において、走行パターン設定部24は、清掃エリアを利用する利用者の活動時間帯に応じて走行パターンを設定し、このとき、利用者が多い時間帯では狭路走行パターンを設定し、また、利用者が少ない時間帯では回避走行パターンを設定する。
【0176】
このような構成により、自律走行作業装置1は、再現モード時の走行パターンとして、清掃エリアの活動時間帯に適した走行パターンを、操作者の手間をかけず容易に設定することができる。
そのため、自動走行清掃の停止回数を減少することができるので、作業時間を長引かせることなく、自動走行清掃を継続することができる。
【0177】
なお、上記した実施形態では、学習モードにおいて検出されなかった未検出障害物が再現モードにおいて検出されたとき、回避走行パターンが設定されている場合には、未検出障害物を回避して走行し、一方、狭路走行パターンが設定されている場合には、未検出障害物を回避せずに自動走行作業を停止する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、学習モードにおいて検出されなかった未検出障害物が再現モードにおいて検出されたとき、狭路判定部25が、その未検出障害物で構成される道幅に応じて狭路を判定してもよい。そして、再現制御部26は、この未検出障害物に起因する狭路判定部25の判定結果である狭路フラグ情報に従って自動走行清掃を行ってもよい。また、このような未検出障害物に起因する狭路フラグ情報は、自動走行清掃において一時的に参照されてもよく、あるいは、清掃プラン内で書き換えられてもよい。書き換えられた前記清掃プランは記憶部11に記憶されてもよく、さらに操作者の手動操作により意思を反映させた上で記憶部11に記憶されてもよい。例えば、ショッピングモールでの店舗の閉店により仮囲い工事が実施されることで、仮囲いが通路に大きくはみ出し道幅が狭くなり、通常路が一時的に狭路となる場合がある。その後新たな店舗が出店することで仮囲いが撤去され、通路の道幅が元通り広くなり通常路に戻るが、こうした一時的な前記未検出障害物に起因する狭路フラグ情報の変化を清掃プラン内で書き換え、さらに書き換え後の清掃プランを記憶させるかどうかについては、操作者の判断によって行われる方がよい。
【0178】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明は、自律的に走行し自動で作業する自動走行作業を実行可能な自律走行作業装置によって、ショッピングモールなどの商業施設の床面の清掃作業や、工場、鉄道ターミナルなどの作業エリアの自動作業を行う、自動床面洗浄・清掃装置やカメラで監視を行う警備装置などの産業用(業務用)作業ロボットに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0180】
1 自律走行作業装置
3 走行部
4 走行操作部
5 清掃部(作業部)
6 計測部
7 障害物検知部
8 操作表示部
9 電源部
10 制御部
11 記憶部
13 警告灯
14 スピーカ
15 通信部
20 モード切替部
21 学習制御部
22 地図作成部
23 清掃プラン作成部
24 走行パターン設定部
25 狭路判定部
26 再現制御部
60 操作者端末