(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】消火組成物、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A62D 1/02 20060101AFI20230706BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
A62D1/02
A62C3/00 J
(21)【出願番号】P 2019561235
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 US2018031685
(87)【国際公開番号】W WO2018236477
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェラルド・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ラジブ・ラトナ・シング
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ハルス
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0109771(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0028240(US,A1)
【文献】国際公開第2017/165225(WO,A1)
【文献】特開2018-153463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00- 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20重量%~80重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))と、
20重量%~80重量%の1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(FK5-1-12)と、を含む、消火剤
。
【請求項2】
前記HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12の合計量が、前記消火剤の少なくとも
90重量%を構成する、請求項1に記載の消火剤。
【請求項3】
HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12からなる、請求項1に記載の消火剤。
【請求項4】
50重量%~80重量%のHFO-1233zd(E)と、
20重量%~50重量%のFK5-1-12と、を含む、請求項1に記載の消火剤。
【請求項5】
40重量%~60重量%のHFO-1233zd(E)と、
40重量%~60重量%のFK5-1-12と、を含む、請求項1に記載の消火剤。
【請求項6】
50重量%のHFO-1233zd(E)と、
50重量%のFK5-1-12と、を含む、請求項5に記載の消火剤。
【請求項7】
火炎を消火する方法であって、
(a)
20重量%~80重量%のトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))と、
20重量%~80重量%の1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(FK5-1-12)とを含む消火剤を提供することと、
(b)前記消火剤を前記火炎に適用することと、を含む、方法
。
【請求項8】
前記消火剤を、6体積%以下の空気中の濃度をもたらす量で前記火炎に適用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12の合計量が、前記消火剤の少なくとも
90重量%を構成する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
40重量%~60重量%のHFO-1233zd(E)と、
40重量%~60重量%のFK5-1-12と、を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
50重量%のHFO-1233zd(E)と、
50重量%のFK5-1-12と、を含む、請求項7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記適用する工程が、5体積%以下の空気中の前記消火剤の濃度をもたらし、前記適用することが、前記消火剤を80°F(27℃)を超える温度及び70%を超える相対湿度を有する領域に適用することを含む、請求項7~11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月8日出願の米国仮出願第62/502,905号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、消火剤、消火剤を含む組成物、並びに消火剤を使用する方法、システム及び容器に関する。
【背景技術】
【0003】
サイズ、場所及び関与する可燃性材料の種類などの要因に応じて、火災を抑制及び/又は消火するための多くの薬剤及び方法が知られており、特定の火災のために選択することができる。
【0004】
ある特定のハロゲン化炭化水素消火剤は、防火産業において、具体的には、閉鎖領域(例えば、コンピュータルーム、保管庫、電気通信スイッチングギアルーム、図書館、文書アーカイブ、石油パイプラインポンピングステーションなど)が、有効量の薬剤で完全に満たされる(フラッドする)トータルフラッディングアプリケーションを含むアプリケーションにおいて、又は消火剤が火災の場所に配向されるストリーミングアプリケーション(例えば、市販の手持ち式消火器)において使用されている。そのような消火剤は有効であるだけでなく、水とは異なり、「清潔な消火剤」としても機能し、囲い又はその内容物への損傷を、たとえあるとしてもほとんど生じさせない。
【0005】
以前に、最も一般的に使用されているハロゲン化炭化水素消火剤は、ブロモトリフルオロメタン(CF3Br、Halon 1301)及びブロモクロロジフルオロメタン(CF2CIBr、Halon 1211)などの臭素含有化合物であった。これらの臭素含有ハロカーボンは、火災の消火において非常に有効であり、ストリーミング機器又はトータルフラッディングシステムのいずれかから分配され得るが、これらの化合物は、成層圏オゾンの破壊(「オゾン破壊」)に関連している。例えば、Halon 1301は、約10のオゾン破壊係数(Ozone Depletion Potential、ODP)を有し、Halon 1211は、約3のODPを有する。1987年には、臭素含有ハロカーボンを含むオゾン破壊製品を段階的に削減するためのタイムテーブルを定めた、地球環境を保護するためのモントリオール議定書に多くの政府が署名した。
【0006】
更に、これらの化合物のある特定のものは、比較的低い濃度レベルであっても毒性に関する問題を有する。例えば、Halon 1211は、空気中1~2体積%を超えるレベルで使用したときに、心臓感作を引き起こす。
【0007】
臭素含有ハロカーボンに代わる不燃性、非毒性の代替物の要求に応じて、業界では、オゾン破壊係数がゼロであるいくつかのヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)が開発された。例えば、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(1,1,1,2,3,3,3-heptafluoropropane、HFC-227ea)は、特定の消火アプリケーションに採用されており、またオゾン破壊に寄与しない。
【0008】
しかしながら、HFC-227eaは、約3220の地球温暖化係数(Global Warming Potential、GWP)を有する(IPCC(2007)Climate Change 2007:The Physical Science Basis.Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change.S.Solomon et al.,Cambridge University Press.Cambridge,United Kingdomによる)。したがって、低いオゾン破壊係数(ODP)及び低い地球温暖化係数(GWP)の両方を有する清潔な消火剤が当該技術分野において必要とされている。
【0009】
当該技術分野では、交換用の清潔な消火剤は、好ましくは望ましくない結果を最小に抑えて、火災を効果的かつ安全に消火することが可能であるように、特性の集成を有しなければならないことが理解される。その集成は、中でも一般に、優れた消火特性、並びに化学的安定性、低毒性又は無毒性を含む。交換用の清潔な消火剤はまた、許容される環境特性、すなわち、低い地球温暖化係数(GWP)及び低いオゾン破壊係数(ODP)を有しなければならない。しかしながら、これらの要件の全てを満たす火炎消火剤の特定は、当業者にとって重要な課題を提示する。
【0010】
ほぼ大気圧(すなわち約1atm)で測定したときに、室温(すなわち、約21℃)でガス状であるか、又は室温若しくはほぼ室温(すなわち、約21℃)の沸点を有する消火剤を提供することも望ましい。室温より高い沸点を有する火災消火剤(したがって排出されたときに液体である)を使用することができるが、室温又はほぼ室温(すなわち、約21℃)の沸点を有する消火剤は、室温を超える沸点を有する消火剤よりも迅速に蒸発し、したがって、消火される火炎を取り囲む領域(又は不活性化される領域)をより速く満たし、他の全てのものは等しい。
【0011】
国際公開第2007/002625号は、火炎を抑制する方法において、式(I)のフルオロアルケン、XCFzR3-zを使用できることを開示している。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1-chloro-3,3,3-triflouropropene、HFO-1233zd)を含むモノクロロ、トリフルオロプロペン(monochloro, trifluoropropene、HFO-1233)は、式(I)の化合物として開示される。
【0012】
米国特許第9,387,352号は、火災を抑制するための液体消火/不活性化システムを開示し、1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノンを潜在的な液体消火剤として特定する。
【0013】
出願人らは、以前に利用可能な火災抑制組成物、システム及び方法が、1つ以上の欠点を有することを理解するであろう。例えば、1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノンは、火炎抑制の有効性の程度を有するが、室温で液体であって、その結果、火災抑制領域内の表面に液体として堆積する傾向があり得る。このような状況は、液体でコーティングされた材料が、その後に清浄される必要があるか、又は場合によっては、補修若しくは交換が必要であり得るという点で不都合であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の消火剤の方法及びシステムの一実施形態による、トータルフラッディングシステムを概略的に示す。
【
図2】本明細書の実施例に記載される「密閉ドラム試験」で使用される密閉ドラムの概略図である。
【発明の概要】
【0015】
出願人らは、先行の組成物、方法及びシステムによる問題のうちの1つ以上を回避しながら、迅速かつ効果的な火炎抑制を達成する、非常に有利な組成物、システム及び方法を開発した。
【0016】
本発明は、相対比率でHFO-1233zd及び1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(1,1,1,2,2,4,5,5,5-nonafluoro-4-(trifluoromethyl)-3-pentanone、FK5-1-12)を含む組成物を含み、これは予想外かつ驚くべきことに、迅速かつ効果的に火炎抑制を達成すると同時に、液体抑制剤に関連する問題を回避し、並びに消火アプリケーションにおけるそのような組成物を含有及び/又は使用する方法、システム及び容器を達成する能力を有する。
【0017】
したがって、本発明は、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約80重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤1と呼ばれることがある。
【0018】
したがって、本発明は、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約80重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤1Aと呼ばれることがある。
【0019】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約90重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤2と呼ばれることがある。
【0020】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約90重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤2Aと呼ばれることがある。
【0021】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約95重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤3と呼ばれることがある。
【0022】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約80重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約95重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤3Aと呼ばれることがある。
【0023】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤4と呼ばれることがある。
【0024】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤4Aと呼ばれることがある。
【0025】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤5と呼ばれることがある。
【0026】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤5Aと呼ばれることがある。
【0027】
したがって、本発明は、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約80重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤6と呼ばれることがある。
【0028】
したがって、本発明は、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約80重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤6Aと呼ばれることがある。
【0029】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約90重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤7と呼ばれることがある。
【0030】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約90重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤7Aと呼ばれることがある。
【0031】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約95重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤8と呼ばれることがある。
【0032】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)と、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む消火剤を含み、HFO-1233zd(E)及びFKF-1-12の量は共に、好ましくは消火剤の少なくとも約95重量%を構成する。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤8Aと呼ばれることがある。
【0033】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zd及び約20重量%~約50重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤9と呼ばれることがある。
【0034】
本発明はまた、約50重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)及び約20重量%~約50重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤9Aと呼ばれることがある。
【0035】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤10と呼ばれることがある。
【0036】
本発明はまた、約20重量%~約80重量%のHFO-1233zd(E)及び約20重量%~約80重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤10Aと呼ばれることがある。
【0037】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12を含む消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤11と呼ばれることがある。
【0038】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd(E)及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12を含む消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤11Aと呼ばれることがある。
【0039】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤12と呼ばれることがある。
【0040】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd(E)及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤12Aと呼ばれることがある。
【0041】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤13と呼ばれることがある。
【0042】
本発明はまた、約40重量%~約60重量%のHFO-1233zd(E)及び約40重量%~約60重量%のFK5-1-12からなる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤13Aと呼ばれることがある。
【0043】
本発明はまた、約50重量%のHFO-1233zd及び約50重量%のFK5-1-12を含む消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤14と呼ばれることがある。
【0044】
本発明はまた、約50重量%のHFO-1233zd(E)及び約50重量%のFK5-1-12を含む消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤14Aと呼ばれることがある。
【0045】
本発明はまた、約50重量%のHFO-1233zd及び約50重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤15と呼ばれることがある。
【0046】
本発明はまた、約50重量%のHFO-1233zd(E)及び約50重量%のFK5-1-12から本質的になる消火剤を含む。便宜上、本段落による消火剤は、本明細書では、消火剤15Aと呼ばれることがある。
【0047】
本発明はまた、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、火炎と接触させることを含む、火炎を抑制する方法を含む。本明細書で使用するとき、消火剤1~15への言及は、上記に定義したような消火剤1、1A、2、2A、3、3A、4、4A、5、5A、6、6A、7、7A、8、8A、9、9A、10、10A、11、11A、12、12A、13、13A、14、14A、15及び15Aのそれぞれを意味する。本発明はまた、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の火災消火剤を、火炎の潜在的部位に送達するシステムを提供することを含む、火炎を抑制するためのシステムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0048】
「消火」という用語は、通常、火災の完全な消滅を示すために使用されるのに対して、「抑制」は、火災の低減を示すためにしばしば使用されるが、必ずしも完全な消滅ではない。
【0049】
本明細書における本発明の説明の目的のために、特定された成分の量に関して「約」という用語は、特定された成分の量が、+/-1重量%の量で変動し得ることを意味する。本発明の消火剤は、好ましい実施形態では、「約」であるものとして指定された量の特定された化合物又は成分を含み、この量は、特定された量の+/-0.5重量%、又は+/-0.3重量%である。
【0050】
温度に関する「約」という用語は、規定された温度が、+/-5℃の量で変動し得ることを意味する。好ましい実施形態では、「約」として特定される温度は、指定された温度の+/-2℃、又は+/-1℃、又は+/-0.5℃を含む。
【0051】
秒で表される時間に関して「約」という用語は、規定の時間が+/-2秒の量で変動し得ることを意味する。好ましい実施形態では、「約」として特定される時間は、好ましくは、指定された時間の+/-1秒又は0.5秒を含む。
【0052】
psiで表される圧力に関して「約」という用語は、規定の圧力が+/-5psiの量で変動し得ることを意味する。好ましい実施形態では、「約」として特定される圧力は、好ましくは、指定された圧力の+/-2psi、又は+/-1psi、又は+/-0.5psiの圧力を含む。
【0053】
HFO-1233zdという用語は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを指し、したがって、特に指定がない限り、この用語は、シス異性体(HFO-1233zd(Z))、トランス異性体(HFO-1233zd(E))、又はこれらの任意の組み合わせを包含する。
【0054】
HFO-1233zdは、特定されていない異性体又は他の不純物を含んでもよく、但し、これらの他の成分は、特定の異性体の特性に材料効果を有しない。
【0055】
消火剤
本発明は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)及び1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(FK5-1-12)を含む消火剤を含む。
【0056】
HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になり得るか、又はHFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdからなり得る。あるいは、HFO-1233zdは、シス-HFO-1233zdから本質的になり得るか、又はHFO-1233zdは、シス-HFO-1233zdからなり得る。好ましくは、HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になり、又はHFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdからなる。
【0057】
消火剤は、本明細書の広範な教示内の広範な量でHFO-1233zd及びFK5-1-12を含んでもよく、当業者であれば、本明細書に含まれる教示を使用して、任意の特定の必要性を最良に満たす特定の比率を選択することができることが理解されるであろう。例えば、消火剤は、少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約7重量%、より好ましくは少なくとも約10重量%のFK5-1-12を含んでもよい。
【0058】
例えば、FK5-1-12は、消火剤中に、約5重量%~約95重量%の量で、又は約10重量%~約90重量%の量で、又は約20重量%~約80重量%の量で、約30重量%~約70重量%の量で、又は約40重量%~約60重量%の量で、又は約45重量%~約55重量%の量で存在してもよい。
【0059】
消火剤は、HFO-1233zdを、約5重量%~約95重量%の量で、又は約10重量%~約90重量%の量で、又は約20重量%~約80重量%の量で、約30重量%~約70重量%の量で、又は約40重量%~約60重量%の量で、又は約45重量%~約55重量%の量で含んでもよい。消火剤は、HFO-1233zd及びFK5-1-12から本質的になり得るか、又は消火剤は、HFO-1233zd及びFK5-1-12からなり得る。
【0060】
したがって、本開示は、HFO-1233zd及びFK5-1-12から本質的になる消火剤を含み、FK5-1-12は、消火剤の少なくとも約5重量%の量で、好ましくは少なくとも約7重量%の量で、より好ましくは少なくとも約10重量%の量で存在する。HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になり得るか、又はシス-HFO-1233zdから本質的になり得る。好ましくは、HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になる。
【0061】
本開示はまた、HFO-1233zd及びFK5-1-12から本質的になる消火剤を提供し、FK5-1-12は、消火剤の約5重量%~約95重量%の量で、又は約10重量%~約90重量%の量で、又は約20重量%~約80重量%の量で、約30重量%~約70重量%の量で、又は約40重量%~約60重量%の量で、又は約45重量%~約55重量%の量で存在する。HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になり得るか、又はシス-HFO-1233zdから本質的になり得る。好ましくは、HFO-1233zdは、トランス-HFO-1233zdから本質的になる。
【0062】
出願人らは、特に消火剤1~15を含む、本明細書に記載のHFO-1233zd及びFK5-1-12の量を有する本発明の消火剤を使用することによって、非常に望ましい及び予想外の特性の組み合わせが達成され得ることを見出した。例えば、消火剤1~15に記載の好ましい実施形態では、指定した成分の相対比率は、優れた急速消火特性を有する消火剤を可能にすると同時に、少なくとも主に蒸気として、更により好ましくは実質的に完全に蒸気として、ほぼ大気圧条件に送達可能である。
【0063】
本発明は、HFO-1233zd及びFK5-1-12に加えて、1つ以上の更なる化合物を含み得る消火剤を含む。例えば、消火剤は、わずかな比率で、例えば、約20重量%未満、又は約5重量%未満、又は約2重量%未満、又は約1重量%未満の量で他の成分を含んでもよく、好ましくはこれらの他の成分は、消火剤の新規かつ基本的な特性を打ち消さない。1つ以上の更なる化合物は、好ましい実施形態では、HFC-245fa、HCFC-22、HFC-23、HCFC-123、HCFC-123a、HCFC-123b、HCFC-124、HCFC-124a、HFC-125、HFC-134、HCFC-134a、HCFC-132、HFC-227ea、HFC-227ca、HFC-236fa、HFC-236ea、HFC-236cb、HFC-245ea、HFC-245eb、HFC-245cb及びCF3Iからなる群から選択されてもよい。
【0064】
例えば、消火剤は、HFO-1233zd、FK5-1-12を含んでもよく、1つ以上の更なる化合物は、HFC-245fa、HCFC-22、HFC-23、HCFC-123、HCFC-123a、HCFC-123b、HCFC-124、HCFC-124a、HFC-125、HFC-134、HCFC-134a、HCFC-132、HFC-227ea、HFC-227ca、HFC-236fa、HFC-236ea、HFC-236cb、HFC-245ea、HFC-245eb、HFC-245cb及びCF3Iからなる群から選択されてもよく、HFO-1233zdは、消火剤の約5重量%~約95重量%の量で、若しくは約10重量%~約90重量%の量で、若しくは約20重量%~約80重量%の量で、約30重量%~約70重量%の量で、若しくは約40重量%~約60重量%の量で、若しくは約45重量%~約55重量%の量で存在し、及び/又はFK5-1-12は、消火剤の約5重量%~約95重量%の量で、若しくは約10重量%~約90重量%の量で、若しくは約20重量%~約80重量%の量で、約30重量%~約70重量%の量で、若しくは約40重量%~約60重量%の量で、若しくは約45重量%~約55重量%の量で存在し、好ましくは、そのような場合のそれぞれにおいて、HFO-1233zd及びFK5-1-12は共に、消火剤の少なくとも約80重量%を構成する。
【0065】
消火剤は、約500以下、好ましくは約300以下、より好ましくは約150以下の地球温暖化係数(GWP)を有し得る。好ましくは、組成物は、約150以下のGWPを有する。
【0066】
消火剤は、約0.02以下、好ましくは約0.01以下のオゾン破壊係数を有し得る。
【0067】
沸点
本明細書の消火剤1~10のうちのいずれかを含む本発明の消火剤は、ほぼ大気圧で(すなわち、約1atmで)約40℃未満、好ましくは約40℃未満、又は約35℃未満、又は約30℃未満、又は約25℃未満の沸点を有し得る。消火剤が温度の範囲にわたってほぼ一定の大気圧で沸騰する場合、「沸点」という用語は、組成物の露点及び気泡温度の中点を指す。
【0068】
消火速度
消火剤1~15を含む本発明の好ましい消火剤は、空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0069】
本発明の消火剤1~15を含む消火剤及び方法は、空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0070】
本発明の消火剤1~15を含む消火剤及び方法は、空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0071】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0072】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0073】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0074】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0075】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0076】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0077】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0078】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0079】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0080】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0081】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0082】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約6体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0083】
消火剤1~15を含む本発明の好ましい消火剤は、空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0084】
本発明の消火剤1~15を含む消火剤及び方法は、空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0085】
本発明の消火剤1~15を含む消火剤及び方法は、空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を予想外に有する。
【0086】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0087】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0088】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0089】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0090】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0091】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約20秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0092】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0093】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0094】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約30秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0095】
本発明は、(i)約40℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0096】
本発明は、(i)約30℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0097】
本発明は、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)空気中に約5体積%以下の濃度で存在するとき、約100°Fの試験温度及び約90%以下の相対湿度で約15秒以下の(実施例を含む、本明細書に記載の手順に従って測定される)消火速度をもたらす能力を有する、消火剤1~15を含む本発明の消火剤のうちのいずれかを含む。
【0098】
組成物
本開示は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明による消火剤のうちのいずれかを含む、組成物を提供する。
【0099】
組成物は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤の少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95%を構成し得る。
【0100】
組成物は、噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、消火される火災の場所に保管される容器から消火剤を噴射するために使用されてもよい。好ましくは、噴射剤は、アルゴン(argon、Ar)、窒素(nitrogen、N2)、ヘリウム(helium、He)、二酸化炭素(carbon dioxide、CO2)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、噴射剤は、Ar及びN2から選択される。
【0101】
組成物は、1種以上の解毒剤を含んでもよい。解毒剤は、約0.1重量%~約10重量%の量で組成物中に存在してもよい。1種以上の解毒剤は、シトラール、リモネン、テルピネン、サビエン、オシメン、β-ピネン、フィトール、スクアレン、オレアノール酸、ルテイン、オレイン酸、エレオステアリン酸、パルミトレイン酸、シトロネラール、ジペンテン、テルピノレン、メンタジエン、ミルセン、テルペンチン、ビタミンA、ラノステロール、リコピン、α-テルピネオール、リノール酸、リンカン酸(lincanic acid)、ペトロセレン酸、シトロネロール、メントール、シルベスト、ジンジベレン、α-ピネン、カンファー、アビエチン酸、サポニン、β-カロテン、パラ-シメーム、リノレン酸、リシノール酸、バクセン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくは1種以上の解毒剤は、リモネンである。
【0102】
組成物は、消火剤、噴射剤、及び任意に上記に定義したような1種以上の解毒剤から本質的になってもよい。
【0103】
方法及びシステム
本開示は、火炎を消火する方法、又は火炎を抑制する方法を提供する。本方法は、火炎を、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤と接触させる工程を含む。
【0104】
あるいは、本方法は、火炎を、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を含む組成物と接触させる工程を含む。組成物は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤の少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95重量%を構成し得る。
【0105】
組成物は、噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、消火される火災の場所に保管される容器から消火剤を噴射するために使用されてもよい。好ましくは、噴射剤は、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、噴射剤は、Ar及びN2から選択される。
【0106】
組成物は、1種以上の解毒剤を含んでもよい。解毒剤は、約0.1重量%~約10重量%の量で組成物中に存在してもよい。1種以上の解毒剤は、シトラール、リモネン、テルピネン、サビエン、オシメン、β-ピネン、フィトール、スクアレン、オレアノール酸、ルテイン、オレイン酸、エレオステアリン酸、パルミトレイン酸、シトロネラール、ジペンテン、テルピノレン、メンタジエン、ミルセン、テルペンチン、ビタミンA、ラノステロール、リコピン、α-テルピネオール、リノール酸、リンカン酸(lincanic acid)、ペトロセレン酸、シトロネロール、メントール、シルベスト、ジンジベレン、α-ピネン、カンファー、アビエチン酸、サポニン、β-カロテン、パラ-シメーム、リノレン酸、リシノール酸、バクセン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくは1種以上の解毒剤は、リモネンである。
【0107】
組成物は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤、噴射剤及び任意に上記に定義したような1種以上の解毒剤から本質的になってもよい。
【0108】
消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤、又は消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤を含む組成物は、火炎上に噴霧又は注入されてもよいことが理解されるであろう。あるいは、火炎の少なくとも一部分は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤、又は消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤を含む組成物に浸漬されてもよい。
【0109】
消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤は、トータルフラッディングアプリケーションにおいて、及びストリーミングアプリケーションにおいて使用することができる。
【0110】
トータルフラッディングアプリケーション
本開示は、トータルフラッディングアプリケーションにおいて火炎を消火するための方法を提供する。トータルフラッディングアプリケーションを使用して、閉鎖領域内の火炎を消火するか、又は閉鎖領域を不活性化することができ、それによって火炎が伝播することを防止する。トータルフラッディングアプリケーションにおいて、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤は、閉鎖領域に放出される。次いで、消火剤は分散し、最初に液体である場合は蒸発して、空気及び気体消火剤の混合物を形成する。消火の成功は、消火剤が最小消火濃度(minimum extinguishing concentration、MEC)を超えると発生し、それによって火炎消火を引き起こす。しかしながら、低酸素症、消火剤毒性、又は両方に起因して人々にとって有害な空気/消火剤雰囲気の生成を防止するために、過剰量の消火剤を使用することを回避することが望ましい。また、効率的かつ急速な消火が低コストで達成されることも望ましく、これは一般的に、低いMEC値を有する消火剤によって、並びに処理されている領域及び/若しくは処理されている領域内の物品に損傷をほとんど若しくは全くもたらさず、かつ/又は火災が消火されると、放出された液体消火剤をその領域から除去することをほとんど若しくは全く必要としない消火剤によって有益になる傾向がある。消火剤1~15を含む本発明の消火剤、並びに消火剤1~15を使用するものを含む本発明の好ましい方法及びシステムは、驚くべきことに、この特性と性能利点との達成困難な組み合わせを達成することができる。
【0111】
閉鎖領域内の火炎を消火するための方法が提供され、この方法は、
【0112】
任意に、閉鎖領域内の火炎を検出する工程と、
【0113】
消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤、又は消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を含む組成物を閉鎖領域に放出することによって、火炎を消火する。
【0114】
消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤は、火炎を消火するのに十分な量で閉鎖領域に放出され得る。好ましくは、火炎は、最初に消火剤が閉鎖領域に放出された時点から測定して、約60秒以内、より好ましくは約30秒以内、より好ましくは約20秒以内に消火される。好ましくは、消火剤は、約20秒以内、より好ましくは約10秒以内に放出される。
【0115】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、閉鎖領域に導入することを含み、閉鎖領域内の温度は、少なくとも約15℃(59°F)、少なくとも約20℃(68°F)、少なくとも約25℃(77°F)、又は少なくとも約30℃(86°F)、又は少なくとも約38℃(100°F)である。
【0116】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、少なくとも約20%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約80%の相対湿度(relative humidity、RH)を有する閉鎖領域に導入することを含む。
【0117】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、閉鎖領域内に導入することを含み、(i)閉鎖領域内の温度は、少なくとも約25℃(77°F)であり、(ii)閉鎖領域内の相対湿度(RH)は、少なくとも約50%である。
【0118】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、閉鎖領域に導入することを含み、(i)閉鎖領域内の温度は、少なくとも約30℃(86°F)であり、(ii)閉鎖領域内の相対湿度(RH)は、少なくとも約50%である。
【0119】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、閉鎖領域に導入することを含み、(i)閉鎖領域内の温度は、少なくとも約30℃(86°F)であり、(ii)閉鎖領域内の相対湿度(RH)は、少なくとも約65%である。
【0120】
本方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を、閉鎖領域に導入することを含み、(i)閉鎖領域内の温度は、少なくとも約30℃(86°F)であり、(ii)閉鎖領域内の相対湿度(RH)は、少なくとも約80%である。
【0121】
本開示はまた、閉鎖領域内の火災を防止する方法(すなわち、不活性化する方法)も提供する。したがって、火災を防止する方法が提供され、この方法は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤、又は消火剤1~15のうちのいずれかを含む本発明の消火剤を含む組成物を、閉鎖領域に放出する工程を含む。不活性化方法では、消火剤は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤のうちのいずれかであってもよい。消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤は、そのような不活性化方法で、火炎が伝播するのを防止するのに十分な量で閉鎖領域に放出され得る。好ましくは、火炎は、消火剤が最初に閉鎖領域に放出されてから約60秒以内、より好ましくは約30秒以内に消火される。好ましくは、消火剤は、約20秒以内、より好ましくは約10秒以内に放出される。閉鎖領域内の温度は、少なくとも約15℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、又は少なくとも約30℃であってもよい。閉鎖領域内の相対湿度(RH)は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約80%であってもよい。
【0122】
火炎を消火する方法、又は不活性化する方法のいずれかのための閉鎖領域は、建築物若しくは構造物、船舶、自動車若しくは鉄道車両、宇宙機、又は航空機の一部(若しくは全体)であってもよい。「建築物又は構造物」という用語は、永久的及び半永久的建築物又は構造物の両方を包含し、住宅、商業的、又は工業的建築物又は構造物であってもよい。例えば、閉鎖領域は、保管庫、コンピュータルーム(例えば、コンピュータサーバルーム)、航空機キャビン又はコックピット、船舶、自動車、鉄道車両、宇宙機、又は航空機のエンジンコンパートメント、博物館、図書館、文書アーカイブ、石油パイプラインポンピングステーション、航空機又は水容器の荷物室などであってもよい。
【0123】
したがって、上記の方法を使用して、閉鎖領域内に収容された貴重品、水の損傷を受けやすい品目、又は可燃性材料(例えば、可燃性ガス又は液体を含む容器)を火災から保護することができる。
【0124】
本開示は、トータルフラッディングシステムを提供する。トータルフラッディングシステムは、閉鎖領域(複数可)(1)と、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤を含む1つ以上の容器(複数可)(2)と、分配配管ネットワーク(3)と、分配配管ネットワーク(3)から閉鎖領域(複数可)(1)に消火剤を送達するためのオリフィス(ノズル又はスプリンクラーなど)(4)とを含む。システムは、任意に、閉鎖領域(複数可)(1)内の火災を検出するための1つ以上の検出器(複数可)(5)を含んでもよい。システムはまた、検出制御システム(6)及び/又はアラーム(7)を備えてもよい。検出制御システム(6)は、1つ以上の容器(複数可)(2)と連通していてもよく、これにより、火災が検出されると、検出制御システム(6)は、消火剤を1つ以上の容器(複数可)(2)から放出させる。
【0125】
このようなトータルフラッディングシステムでは、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤を使用することができる。容器は、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の消火剤を含んでもよく、少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95重量%の量で使用することができる。
【0126】
容器は、追加的に噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、容器から消火剤を噴射するために使用されてもよい。好ましくは、噴射剤は、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、噴射剤は、Ar及びN2から選択される。
【0127】
容器は、21℃で約80~約800psiの圧力に加圧され得る。
【0128】
容器は、代替的に又は追加的に、1種以上の解毒剤を含んでもよい。解毒剤は、約0.1重量%~約10重量%の量で容器内に存在してもよい。1種以上の解毒剤は、シトラール、リモネン、テルピネン、サビエン、オシメン、β-ピネン、フィトール、スクアレン、オレアノール酸、ルテイン、オレイン酸、エレオステアリン酸、パルミトレイン酸、シトロネラール、ジペンテン、テルピノレン、メンタジエン、ミルセン、テルペンチン、ビタミンA、ラノステロール、リコピン、α-テルピネオール、リノール酸、リンカン酸(lincanic acid)、ペトロセレン酸、シトロネロール、メントール、シルベスト、ジンジベレン、α-ピネン、カンファー、アビエチン酸、サポニン、β-カロテン、パラ-シメーム、リノレン酸、リシノール酸、バクセン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくは1種以上の解毒剤は、リモネンである。
【0129】
ストリーミングアプリケーション
本開示はまた、ストリーミングアプリケーションを使用して火炎を消火するための方法を提供する。
【0130】
したがって、本開示は、ストリーミングアプリケーションにおいて火炎を抑制又は消火するための方法に関し、この方法は、
【0131】
本明細書に開示される消火剤、又は本明細書に開示される消火剤を含む組成物を含む容器を、火炎付近に輸送する工程であって、当該容器が、消火剤又は組成物を放出することが可能である、工程と、
【0132】
消火剤又は組成物を、火炎周囲の領域に放出することによって、火炎を抑制又は消火する工程と、を含む。
【0133】
ストリーミングアプリケーションに関しては、消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の任意の消火剤を使用してもよく、又は消火剤1~15のうちのいずれかを含む、本発明の任意の消火剤を含む組成物を使用してもよい。組成物は、本発明の消火剤の少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95重量%を構成し得る。
【0134】
組成物は、噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、消火される火災の場所に保管される容器から消火剤を噴射するために使用されてもよい。好ましくは、噴射剤は、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、噴射剤は、Ar及びN2から選択される。
【0135】
組成物は、1種以上の解毒剤を含んでもよい。解毒剤は、約0.1重量%~約10重量%の量で組成物中に存在してもよい。1種以上の解毒剤は、シトラール、リモネン、テルピネン、サビエン、オシメン、β-ピネン、フィトール、スクアレン、オレアノール酸、ルテイン、オレイン酸、エレオステアリン酸、パルミトレイン酸、シトロネラール、ジペンテン、テルピノレン、メンタジエン、ミルセン、テルペンチン、ビタミンA、ラノステロール、リコピン、α-テルピネオール、リノール酸、リンカン酸(lincanic acid)、ペトロセレン酸、シトロネロール、メントール、シルベスト、ジンジベレン、α-ピネン、カンファー、アビエチン酸、サポニン、β-カロテン、パラ-シメーム、リノレン酸、リシノール酸、バクセン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくは1種以上の解毒剤は、リモネンである。
【0136】
組成物は、消火剤、噴射剤、及び任意に上記に定義したような1種以上の解毒剤から本質的になってもよい。
【0137】
本開示はまた、本明細書に開示される消火剤を含む容器を提供する。消火剤は、本明細書に記載される消火剤のうちのいずれかであってもよい。容器は、消火剤を放出するように構成される。消火剤は、火炎を取り囲む領域に噴霧又は注入されてもよい。
【0138】
消火剤は手動で排出されてもよく、又は容器から自動的に排出されてもよい。例えば、シリンダは、作動されると消火剤又は消火剤を含む組成物をシリンダから放出する弁アセンブリを含んでもよい。
【0139】
容器は、少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも約95重量%の消火剤を含んでもよい。
【0140】
容器は、噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、容器から消火される火災の場所に消火剤を噴射するために使用されてもよい。好ましくは、噴射剤は、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、噴射剤は、Ar及びN2から選択される。
【0141】
容器は、21℃で約80~約800psiの圧力に加圧され得る。
【0142】
容器は、1種以上の解毒剤を含んでもよい。解毒剤は、約0.1重量%~約10重量%の量で容器内に存在してもよい。1種以上の解毒剤は、シトラール、リモネン、テルピネン、サビエン、オシメン、β-ピネン、フィトール、スクアレン、オレアノール酸、ルテイン、オレイン酸、エレオステアリン酸、パルミトレイン酸、シトロネラール、ジペンテン、テルピノレン、メンタジエン、ミルセン、テルペンチン、ビタミンA、ラノステロール、リコピン、α-テルピネオール、リノール酸、リンカン酸(lincanic acid)、ペトロセレン酸、シトロネロール、メントール、シルベスト、ジンジベレン、α-ピネン、カンファー、アビエチン酸、サポニン、β-カロテン、パラ-シメーム、リノレン酸、リシノール酸、バクセン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、好ましくは1種以上の解毒剤は、リモネンである。
【0143】
容器は、消火剤、噴射剤、及び任意に上記に定義したような1種以上の解毒剤から本質的になってもよい。
【0144】
容器は、手持ち式消火器であってもよい。
【0145】
試験
クラスB試験火災を消火するために、NFPA-2001、2015版のAnnex Bに設定されたカップバーナー法を使用して、最小消火濃度(MEC)を決定することができる。
【0146】
多くの国内及び国際規格は、小さい過剰量を乗じた(例えば、1.3を乗じた)MECに等しい最小設計濃度(Minimum Design Concentration、MDC)を設定し、それによって、この量に通じる安全マージンを有する濃度をもたらすことが理解されるであろう。
【0147】
本明細書に開示される消火剤の、高温(例えば、約25℃以上、若しくは約30℃以上の温度)、及び/又は高湿度(例えば、少なくとも約20%の相対湿度、好ましくは少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約80%)で効果的に機能する能力は、本明細書において「密閉ドラム試験」と称される以下の方法を使用して決定することができる。
【0148】
装置
1 ドラム、開放ヘッド、55gal(208dm3)を以下のように改変した。
【0149】
1.1 開放ドラムヘッド上にクロージャをフィットさせる。クロージャは、ヒンジ付きの蓋(
図2)、又は厚さ1/2ミル(0.0127mm)のポリアミドフィルムのいずれかであってもよい。フィルムを使用する場合、フィルムを以下のように適用する。
【0150】
1.1.1 フィルムをドラムの開放端部の上に延伸させ、それを強力なゴムバンドによって定位置に保持し、これが、1lb(0.45kg)の塊をドラムの周囲の最低点から吊るしたときに、1インチ(25mm)伸張する。
【0151】
1.1.2 ドラムの頂部から2インチ(51mm)の点で始まる、フィルムの1インチ(25mm)垂直スリットを切断する。
【0152】
1.1.3 フィルムを開口部の上に引き寄せる。
【0153】
1.2 ドラムがその側部にあるとき、穴が頂部にあるような位置に、基部を通る直径1インチ(25mm)、縁部から約2インチ(51mm)の円形開口部を穴あけする。
【0154】
1.3 長さ4インチ(102mm)、幅4インチ(102mm)、及び厚さ少なくとも1/16インチ(1.6mm)の金属基部の上に、内径3インチ(76mm)及び長さ4インチ(102mm)を有するパイプを溶接する。
【0155】
1.4 任意に、6インチ(152mm)平方の開口部は、ドラム基部の中心を通って切断され、安全ガラス片でしっかりと覆われてもよい。
【0156】
方法
2.1 容器に消火剤及び窒素ガスを125psiの圧力まで充填する。容器は、容器に取り付けられ得る内径1/8インチ(3.2mm)の短長の管を有し、それを通って消火剤が放出され得る。
【0157】
2.2 ドラムをその側部に置き(
図2)、ドラムが含まれる部屋の温度を所望のレベルに調節する。
【0158】
2.3 パイプが溶接されるプレートの中心が、ドラムの各端部から半周方向に位置付けられることを確実にする。
【0159】
2.4 1インチ(25mm)の水及び99%の最小純度を有する25mLのn-ヘプタンを、金属基部に溶接されたパイプによって作り出されたカップに添加する。
【0160】
2.5 ホットプレートをドラム内に置き、次いで、熱湯のビーカーをホットプレート上に置く。所望の湿度を提供するために水を沸騰させる。相対湿度はプローブを使用して測定され、絶対湿度はこの値から計算される。
【0161】
2.6 パイプ内の燃料に直ちに点火し、クロージャを固定する。(フィルムクロージャが使用される場合、1インチ(25mm)の円形開口部を通るテーパによって燃料に着火する)
【0162】
2.7 容器を振とうし、容器を直立させるか、又は必要に応じて液体内容物をドラム内に直接噴霧することができるような位置に保持する。容器は、ドラムへの全電荷を放出するように構成される。
【0163】
2.8 可能な限り迅速に、ディスペンサを1インチ(25mm)の開口部に置き、ドラム内に直接噴霧し、火災が消火するか又は120秒までの期間のどちらかが最初に発生するまで、反対端部の中心に向けて噴霧を配向する。時間期間の測定(以下の表に報告されるように)は、消火剤が最初にドラム内に放出されたときに始まり、火災の消火で終了するか、又は別の方法で表に報告されるように終了する。
【0164】
2.9 各試験後、ドラムを開いて大気を一掃し、今後の試験に影響を及ぼし得る任意の残留物をドラムから清浄する。
【0165】
図面の説明
図1は、本発明の消火剤を使用した例示的なトータルフラッディングシステムを示す。
【0166】
消火剤は、1つ以上の容器(複数可)(2)内の閉鎖領域(複数可)(1)の外部に保管されてもよい。1つ以上の容器(複数可)(2)は、分配配管ネットワーク(3)に接続され、これにより、消火剤が閉鎖領域(複数可)(1)に送達されることを可能にする。消火剤は、分配配管ネットワーク(3)から、ノズル又はスプリンクラー(4)を介して閉鎖領域(複数可)(1)に送達され得る。
【0167】
トータルフラッディングシステムは、追加的に、閉鎖領域(複数可)(1)内の火災を検出するための1つ以上の検出器(5)を備えてもよい。
【0168】
トータルフラッディングシステムはまた、検出制御システム(6)及び/又はアラーム(7)を備えてもよい。検出制御システム(6)は、1つ以上の容器(複数可)(2)と連通していてもよく、これにより、火災が検出されると、検出制御システム(6)は、消火剤を1つ以上の容器(複数可)(2)から放出させる。
【0169】
容器(2)は、追加的に噴射剤を含んでもよい。噴射剤は、Ar、N2、He、CO2、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。噴射剤は、容器を加圧するために使用され得る。容器(2)は、21℃で約80~約800psiの圧力に加圧され得る。
【0170】
例えば、閉鎖領域(複数可)(1)内に火災が存在する場合、又は閉鎖領域(複数可)(1)が不活性化される場合、本発明の消火剤は、1つ以上の容器(複数可)(2)から分配配管ネットワーク(3)に排出されてもよい。次いで、消火剤は、分配配管ネットワーク(3)を通って移動し、次いで、ノズル又はスプリンクラー(4)を通って閉鎖領域(複数可)(1)に送達される。
【0171】
図2は、本明細書に記載される「密閉ドラム試験」で使用され得る密閉ドラムの概略図である。
【実施例】
【0172】
実施例1
HFO-1233zd(E)の最小消火濃度(MEC)は、クラスB試験火災を消火するためにNFPA-2001、2015版のAnnex Bに設定されたカップバーナー法を使用して決定した。40リットル/分の空気流量を用いた。
【0173】
燃料は、商用グレードのn-ヘプタン(最低90℃の初期沸点、100℃の最大乾燥点、及び0.69~0.73の比重)であった。HFO-1233zd(E)は、>99.8%の純度を有していた。
【0174】
周囲実験室温度(23℃±2℃)で試験を行い、カップ内の燃料を周囲実験室温度(23℃±2℃)にした。
【0175】
HFO-1233zd(E)のMECは、空気中6.5体積%であると決定された。
【0176】
実施例2
出願人らは、HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12の様々な混合物が、大気圧で実質的に蒸気の形態で、消火又は不活性化を必要とし得る潜在的な空間に放出する能力を評価する実験を実施した。この実験作業に基づいて、混合物の少なくとも約20%がHFO-1233zd(E)である、HFO-1233zd(E)とFK5-1-12との混合物は、実質的に蒸気としてのみ分配されると、火災消火剤が空間に導入される、及び/又は空間内に存在することを確実にするために必要とされる。特定の好ましい実施形態では、混合物の沸点は、約25℃以下であり、これは分注されると空間に導入される、及び/又は空間中に存在する液体の量を最小化するように作用し、出願人らは、混合物の少なくとも約20%がHFO-1233zd(E)である、HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12からなる混合物がこの結果を達成することを見出した。
【0177】
実施例3
上記の「密閉ドラム試験」は、火災抑制性能のために、HFO-1233zd(E)及びFK5-1-12の様々な配合を試験した。火災は、1.6kWの火災であった。結果を以下の表1に示す。
【0178】
【0179】
実施例2及び実施例3に報告されているような出願人らの試験作業からわかるように、出願人らは、特に組成物が、約20重量%超のHFO-1233zd(E)(FK5-1-12の約80重量%未満)及び約80重量%未満のHFO-1233zd(約20重量%超のFK5-1-12)、より好ましくは約40重量%超のHFO-1233zd(E)(約60重量%未満のFK5-1-12)、及び約60重量%のHFO-1233zd(約40重量%超のFK5-1-12)、更により好ましくは約50重量%のHFO-1233zd(E)及び約50重量%のFK5-1-12を含む、又はそれらから本質的になる、又はそれらからなるとき、比較的低い空気体積濃度で、火炎を効果的かつ迅速に抑制することができると同時に、導入されるとき及び空間内に存在するときに蒸気質である、消火剤1~15を含む本発明の消火剤を達成することが可能であることを見出した。表1の結果は、消火剤1~15を含む、本発明の好ましい消火剤は、標準温度及び湿度下のみで消火剤として効果的に機能することができるが、消火又は不活性化されている領域の温度及び湿度条件の上昇において特に良好に機能することを実証する。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
約20重量%~約80重量%の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)と、約20重量%~約80重量%の1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(FK5-1-12)と、を含む、消火剤。
[2]
前記HFO-1233zd及びFKF-1-12が共に、前記消火剤の少なくとも約90重量%を構成する、[1]に記載の消火剤。
[3]
前記HFO-1233zdが、HFO-1233zd(E)からなる、[1]に記載の消火剤。
[4]
HFO-1233zd及びFKF-1-12から本質的になる、[1]に記載の消火剤。
[5]
約50重量%~約80重量%のHFO-1233zdと、約20重量%~約50重量%のFK5-1-12と、を含む、[1]に記載の消火剤。
[6]
約40重量%~約60重量%のHFO-1233zdと、約40重量%~約60重量%のFK5-1-12と、を含む、[1]に記載の消火剤。
[7]
約50重量%のHFO-1233zdと、約50重量%のFK5-1-12と、を含む、[6]に記載の消火剤。
[8]
火炎を消火する方法であって、
(a)約20重量%~約80重量%の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)と、約20重量%~約80重量%の1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-3-ペンタノン(FK5-1-12)とを含む消火剤を提供することと、
(b)前記消火剤を、約6体積%以下の空気中の濃度をもたらす量で前記火炎に適用することと、を含む、方法。
[9]
前記消火剤が、(i)約25℃未満の沸点を有し、(ii)約20秒以下の消火速度をもたらす、[14]に記載の方法。
[10]
前記適用する工程が、約5体積%以下の空気中の前記消火剤の濃度をもたらし、前記適用することが、前記消火剤を約80°Fを超える温度及び約70%を超える相対湿度を有する領域に適用することを含む、[15]に記載の方法。